(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状のケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に設けられた回転軸と、前記回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダが形成されたシリンダブロックと、前記シリンダブロックの各シリンダに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記シリンダブロックと前記ケーシングとの間に位置して前記ケーシングに設けられ前記各シリンダのシリンダポートと間欠的に連通する吸入ポートと吐出ポートとが一対の切換ランドを挟んで形成された弁板とからなるアキシャルピストン式油圧ポンプにおいて、
前記弁板の外周側には、前記吸入ポートおよび前記吐出ポートの径方向外側に位置して前記シリンダブロックの端面に摺接し、前記シリンダブロックと前記弁板との間に発生するスラスト力を受承する複数のスラストパッドが設けられ、
前記各スラストパッドのうち前記各ピストンが吐出行程から吸入行程に切換わる上死点位置にある上死点側スラストパッドには、その内部に圧油を導入可能な上死点側圧力ポケットが設けられ、
前記各スラストパッドのうち前記各ピストンが吸入行程から吐出行程に切換わる下死点位置にある下死点側スラストパッドには、その内部に圧油を導入可能な下死点側圧力ポケットが設けられ、
前記弁板には、前記吐出行程の最後で前記吐出ポートから遮断される前記シリンダポートを前記上死点側圧力ポケットに連通させる上死点側導油路と、前記吸入行程の最後で前記吸入ポートから遮断される前記シリンダポートを前記下死点側圧力ポケットに連通させる下死点側導油路とが設けられ、
さらに前記弁板には、前記吐出ポートから前記一対の切換ランドのうち前記上死点位置にある上死点側切換ランドに向けて延びる第1のノッチと、前記吸入ポートから前記一対の切換ランドのうち前記下死点位置にある下死点側切換ランドに向けて延びる第2のノッチとが設けられ、
前記上死点側導油路の前記上死点側切換ランド側の開口部は、前記シリンダポートが前記第1のノッチから遮断された後に連通する位置に設けられ、
前記下死点側導油路の前記下死点側切換ランド側の開口部は、前記シリンダポートが前記第2のノッチから遮断された後に連通する位置に設けられていることを特徴とするアキシャルピストン式油圧ポンプ。
前記吸入ポートは、油圧アクチュエータに設けられる一対の給排ポートのうち排出ポート側に一の油圧管路を介して接続され、前記吐出ポートは前記一対の給排ポートのうち供給ポート側に他の油圧管路を介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルピストン式油圧ポンプ。
【背景技術】
【0002】
近年、ホイール式の油圧ショベルやホイールローダ等の作業車両においては、油圧ポンプと油圧モータとを閉回路接続し、油圧ポンプによって油圧モータの動作を直接的に制御する油圧閉回路システムが採用されている。
【0003】
油圧閉回路システムに用いられるアキシャルピストン式の油圧ポンプは、一般に、筒状のケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に設けられた回転軸と、前記回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダが形成されたシリンダブロックと、前記シリンダブロックの各シリンダに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記シリンダブロックと前記ケーシングとの間に位置して前記ケーシングに設けられ前記各シリンダのシリンダポートと間欠的に連通する吸入ポートと吐出ポートとが一対の切換ランドを挟んで形成された弁板とを有している。
【0004】
油圧ポンプの吐出ポートは、油圧管路を介して油圧モータの供給(流入)側に接続され、油圧ポンプの吸入ポートは、油圧管路を介して油圧モータの排出側に接続されている。そして、油圧ポンプの回転軸が原動機によって駆動され、回転軸と一体にシリンダブロックが回転すると、シリンダブロックの各シリンダに挿嵌されたピストンは、シリンダブロックが1回転する間にシリンダ内を上死点から下死点へと摺動変位して作動油をシリンダ内に吸込む吸入行程と、下死点から上死点へと摺動変位してシリンダ内の作動油を高圧の圧油として吐出する吐出行程とを繰返す。これにより、油圧ポンプの吐出ポートから油圧モータに向けて圧油が供給され、油圧モータが回転駆動される。
【0005】
ここで、作業車両を加速するとき、油圧閉回路を構成する油圧ポンプは通常のポンプ動作を行う。即ち、油圧ポンプから吐出される圧油の流量を増やし、油圧モータに流入する圧油の流量が増える場合には、ポンプ吐出側が高圧となり、各ピストンが吐出行程においてシリンダブロックの各シリンダ内に挿入されるときに、ピストンとシリンダとの間に摺動による摩擦力が発生する。これにより、シリンダブロックに対し、弁板の上死点側に押付ける方向の力が作用する。
【0006】
一方、作業車両を減速するとき、油圧閉回路を構成する油圧ポンプはモータ動作を行う。即ち、油圧モータから排出される圧油の流量が、油圧ポンプに吸入される圧油の吸入量よりも多い場合には、ポンプ吸込側が高圧となり、各ピストンが吸入行程においてシリンダブロックの各シリンダから伸長するときに、各シリンダ内の圧力が高くなる。これにより、ピストンとシリンダとの間に摺動による摩擦力が発生し、各ピストンの上死点側でシリンダブロックを弁板から引離す方向のモーメントが作用することにより、シリンダブロックに対し、弁板の下死点側に押付ける方向の力が作用する。
【0007】
この結果、シリンダブロックが弁板に対して傾いた片当たりの状態で摺動してしまい、シリンダブロックと弁板との摺動面に焼付き、あるいは異常摩耗が発生するという問題がある。
【0008】
これに対し、従来技術によるアキシャルピストン式の油圧ポンプでは、弁板の吸入ポートおよび吐出ポートよりも内周側に複数の内側スラストパッドを設けると共に、外周側に複数の外側スラストパッドを設け、各外側スラストパッドの周方向の端部に段部またはテーパ部を設ける構成が開示されている。この従来技術によれば、シリンダブロックが回転するときに、各スラストパッドの段部またはテーパ部を通過する作動流体によって楔効果が得られ、シリンダブロックと各スラストパッドとの間の接触面圧を低減することにより、シリンダブロックと弁板との焼付き等を防止することができる(特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るアキシャルピストン式油圧ポンプを、可変容量型の斜板式油圧ポンプに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0018】
図1ないし
図4は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、可変容量型の斜板式油圧ポンプ1(以下、油圧ポンプ1という)は、後述のケーシング8、回転軸11、シリンダブロック14、斜板19、弁板23等によって構成されている。
【0019】
図1に示すように、油圧ポンプ1は、例えばエンジン等の原動機2によって回転軸11が回転駆動されることにより、一対の主管路3A,3B内に圧油を流通させるものである。そして、油圧ポンプ1は、主管路3A,3Bを介して後述の油圧モータ5に接続され、所謂HST(ハイドロスタティックトランスミッション)と呼ばれる油圧閉回路4を構成するものである。
【0020】
油圧アクチュエータとしての走行用の油圧モータ5は、例えば減速機6を介してホイール式作業車両の車輪7,7に連結されている。そして、油圧モータ5は、油圧ポンプ1からの圧油が主管路3A,3Bを介して給排されることにより、車輪7を回転駆動してホイール式作業車両を走行駆動するものである。
【0021】
油圧ポンプ1は、外殻を構成する筒状のケーシング8を有している。ケーシング8は、一端側がフロント底部9Aとなった段付筒状のケーシング本体9と、ケーシング本体9の他端側を閉塞するようにケーシング本体9に設けられたリヤケーシング10とにより構成されている。リヤケーシング10には、一対の給排通路10A,10Bが形成され、これらの給排通路10A,10Bは、
図1に示す主管路3A,3Bに接続されるものである。
【0022】
回転軸11は、ケーシング8内に回転可能に設けられている。回転軸11の軸方向の一側は、ケーシング本体9のフロント底部9Aに軸受12を介して回転可能に支持され、回転軸11の軸方向の一端11Aは、ケーシング本体9のフロント底部9Aから外部に突出している。回転軸11の軸方向の他端11Bは、リヤケーシング10に軸受13を介して回転可能に支持されている。回転軸11の一端11Aは、
図1に示す原動機2が動力伝達機構(図示せず)等を介して連結され、この原動機2によって回転軸11が回転駆動される。ここで、回転軸11の軸方向の中間部には雄スプライン部11Cが設けられ、この雄スプライン部11Cは、後述するシリンダブロック14の雌スプライン部14Dにスプライン結合されている。
【0023】
シリンダブロック14は、回転軸11の外周側に位置してケーシング8内に回転可能に設けられている。シリンダブロック14には、後述する複数のシリンダ15が穿設されている。シリンダブロック14の軸方向の一側(フロント底部9A側)には、後述の斜板19側に向けて軸方向に突出する筒状突部14Aが一体形成されている。この筒状突部14Aの外周側には、後述する球状ガイド21が軸方向に相対変位可能に挿嵌されている。シリンダブロック14の軸方向の他側(リヤケーシング10側)は、凹湾曲状の摺動面14Bとなり、この摺動面14Bは後述する弁板23に摺動可能に当接している。
【0024】
軸挿通孔14Cは、シリンダブロック14の中心部を軸方向に貫通して設けられ、回転軸11が挿通されている。軸挿通孔14Cは、筒状突部14A側に対して摺動面14B側が大径な段付孔として形成されている。軸挿通孔14Cのうち筒状突部14A側の内周面には、雌スプライン部(スプライン孔)14Dが形成され、この雌スプライン部14Dは、回転軸11の雄スプライン部11Cにスプライン結合されている。これにより、シリンダブロック14は、回転軸11と一体に回転する構成となっている。
【0025】
複数のシリンダ15は、シリンダブロック14に形成されている。各シリンダ15は、回転軸11を中心にしてシリンダブロック14の周方向に一定の間隔をもって離間し、シリンダブロック14の軸方向に延びている。これら各シリンダ15のうち斜板19と対向する一端側は、シリンダブロック14の軸方向一側(筒状突部14A側)の端面に開口している。一方、各シリンダ15の他端側には、シリンダポート15Aがそれぞれ形成され、これらのシリンダポート15Aは、後述する弁板23の吸入ポート24,吐出ポート25を介してリヤケーシング10の給排通路10A,10Bに対して間欠的に連通,遮断される。
【0026】
複数のピストン16は、シリンダブロック14の各シリンダ15内に摺動可能に挿嵌されている。これら各ピストン16は、シリンダブロック14の回転によってそれぞれのシリンダ15内を往復動し、各シリンダ15内に吸込んだ作動油を加圧した後に高圧の圧油として吐出させるものである。各ピストン16は、シリンダ15から大きく突出(伸長)した下死点と、シリンダ15内に挿入された上死点との間で往復動する。そして、各ピストン16は、シリンダブロック14が1回転する間に、シリンダ15内を上死点から下死点へと摺動変位してシリンダ15内に作動油を吸込む吸入行程と、下死点から上死点へと摺動変位してシリンダ15内の作動油を高圧の圧油として吐出する吐出行程とを繰返す。
【0027】
複数のシュー17は、シリンダ15から突出した各ピストン16の突出端部に揺動可能に設けられている。各シュー17は、ピストン16からの押付力(油圧力)によって後述する斜板19の平滑面19Aに押付けられ、この状態で回転軸11、シリンダブロック14及び各ピストン16と一緒に回転することにより、リング状軌跡を描くように平滑面19A上を摺動するものである。
【0028】
クレイドル18は、ケーシング本体9のフロント底部9Aに設けられ、斜板19を支持している。クレイドル18は、回転軸11の周囲に位置して斜板19の裏面側(平滑面19Aとは反対側の面)に配置され、ケーシング本体9のフロント底部9Aに固定されている。クレイドル18には、斜板19を傾転可能に支持する一対の傾転摺動面18Aが凹湾曲面として形成され、各傾転摺動面18Aは、回転軸11を挟んで対向配置されている。
【0029】
斜板19は、ケーシング8内に傾転可能に設けられ、油圧ポンプ1の容量可変部を構成している。斜板19は、ケーシング本体9のフロント底部9A側にクレイドル18を介して取付けられ、斜板19の表面側(シリンダブロック14側)は、各シュー17を摺動可能に案内する平滑面19Aとなっている。斜板19の中央部には、回転軸11が挿通される軸挿通孔19Bが穿設されている。斜板19の裏面側(平滑面19Aとは反対側)には凸湾曲面19Cが形成され、この凸湾曲面19Cは、クレイドル18の各傾転摺動面18Aに摺動可能に嵌合している。斜板19は、傾転アクチュエータ(図示せず)によって傾転角零の中立位置から正方向と逆方向とに傾転駆動され、油圧ポンプ1の容量(圧油の吐出量)は、斜板19の傾転角に応じて可変に制御される構成となっている。
【0030】
リテーナ20は、シリンダブロック14と斜板19の平滑面19Aとの間に設けられている。リテーナ20は環状の板体として形成され、リテーナ20の内周側には、後述の球状ガイド21が摺動可能に嵌合している。リテーナ20には、周方向に間隔をもって複数のシュー保持孔20Aが形成され、各シュー保持孔20A内には、各ピストン16の突出端部に設けられた各シュー17が保持されている。リテーナ20は、後述するスプリング22のばね力により、球状ガイド21を介して斜板19の平滑面19Aに向けて付勢されている。これにより、リテーナ20は、シュー保持孔20A内に保持されたシュー17を平滑面19Aに押付け、各シュー17を平滑面19A上でリング状軌跡を描くように案内する。
【0031】
球状ガイド21は、シリンダブロック14の筒状突部14Aとリテーナ20の内周との間に設けられている。球状ガイド21の内周側は、筒状突部14Aの外周側に摺動可能に挿嵌され、球状ガイド21の球面状の外周面には、リテーナ20の内周側が揺動(摺動)可能に嵌合している。ここで、球状ガイド21の内周側には、雌スプライン部21Aが形成され、この雌スプライン部21Aは、回転軸11の雄スプライン部11Cにスプライン結合されている。従って、球状ガイド21は、回転軸11の軸方向に移動可能な状態で回転軸11と一体に回転するものである。
【0032】
スプリング22は、シリンダブロック14の筒状突部14Aと球状ガイド21との間に設けられている。スプリング22は、回転軸11の外周側に配置された状態でシリンダブロック14と球状ガイド21とを互いに逆向きに付勢している。これにより、各シュー17が、球状ガイド21及びリテーナ20を介して斜板19の平滑面19Aに押圧されると共に、シリンダブロック14の摺動面14Bが弁板23に押付けられる構成となっている。
【0033】
弁板23は、リヤケーシング10とシリンダブロック14との間に位置してケーシング8内に設けられている。弁板23は中空な円板状に形成され、その中心部には回転軸11が挿通される軸挿通孔23Aが形成されている。弁板23の裏面側はリヤケーシング10に固定され、弁板23の表面はシリンダブロック14の摺動面14Bに摺接している。これにより、弁板23は、シリンダブロック14を回転軸11と一緒に回転可能に支持している。
図3に示すように、弁板23には後述の上死点側切換ランド23B、下死点側切換ランド23C、吸入ポート24、吐出ポート25、各スラストパッド29、上死点側圧力ポケット30、下死点側圧力ポケット31、上死点側導油路32、下死点側導油路33等が設けられている。
【0034】
ここで、弁板23の表面側には、軸挿通孔23Aを挟んで一対の上死点側切換ランド23Bと下死点側切換ランド23Cとが設けられている。これら上死点側切換ランド23Bと下死点側切換ランド23Cとは、弁板23(回転軸11)の中心Oを挟んで径方向で対向する位置に配設されている。そして、上死点側切換ランド23Bは、例えば各ピストン16の上死点側に位置し、下死点側切換ランド23Cは、例えば各ピストン16の下死点側に位置している。
【0035】
吸入ポート24と吐出ポート25は、一対の上死点側切換ランド23Bおよび下死点側切換ランド23Cを挟んで弁板23に形成されている。これら吸入ポート24と吐出ポート25は、弁板23の中心Oを中心とする仮想円26に沿ってそれぞれ眉形状をなすように配置されている。吸入ポート24は、リヤケーシング10の給排通路10Aを介して主管路3Aに接続され、吐出ポート25は、リヤケーシング10の給排通路10Bを介して主管路3Bに接続されている。
【0036】
弁板23の吸入ポート24と吐出ポート25とは、シリンダブロック14の回転時に各シリンダ15のシリンダポート15Aと間欠的に連通する。これにより、吸入ポート24から各シリンダ15内に吸込まれた作動油は、ピストン16によって加圧されることにより、高圧の圧油となって吐出ポート25から吐出される。
【0037】
吸入ポート24の上死点側切換ランド23B側の端部には、第1のノッチとしての一側ノッチ24Aが設けられている。一側ノッチ24Aは、吸入ポート24から上死点側切換ランド23Bに向けて延びるV字状の切欠きとして形成され、その先端形状はエッジ(鋭角)状をなしている。吸入ポート24の下死点側切換ランド23C側の端部には、第2のノッチとしての他側ノッチ24Bが設けられている。他側ノッチ24Bは、吸入ポート24から下死点側切換ランド23Cに向けて延びるV字状の切欠きとして形成され、その先端形状はエッジ(鋭角)状をなしている。
【0038】
吐出ポート25の上死点側切換ランド23B側の端部には、第1のノッチとしての一側ノッチ25Aが設けられている。一側ノッチ25Aは、吐出ポート25から上死点側切換ランド23Bに向けて延びるV字状の切欠きとして形成され、その先端形状はエッジ(鋭角)状をなしている。吐出ポート25の下死点側切換ランド23C側の端部には、第2のノッチとしての他側ノッチ25Bが設けられている。他側ノッチ25Bは、吐出ポート25から下死点側切換ランド23Cに向けて延びるV字状の切欠きとして形成され、その先端形状はエッジ(鋭角)状をなしている。
【0039】
吸入ポート24の一側ノッチ24Aおよび他側ノッチ24Bは、略V字状の切欠きとして形成されることにより、
図3中に二点鎖線で示すシリンダポート15Aに対し、吸入ポート24を徐々に連通,遮断させる。同様に、吐出ポート25の一側ノッチ25Aおよび他側ノッチ25Bは、略V字状の切欠きとして形成されることにより、シリンダポート15Aに対し、吐出ポート25を徐々に連通,遮断させる。これにより、各シリンダ15内では、急激な圧力変動が緩和され、圧力脈動や騒音等の発生が低減される構成となっている。
【0040】
弁板23の表面には、吸入ポート24および吐出ポート25よりも外周側に位置して環状溝27が形成されている。この環状溝27は、弁板23の中心Oを中心として弁板23の表面を環状に切欠くことにより、弁板23と同心円をなす全周溝として形成されている。また、弁板23の表面には、弁板23の中心Oを中心として放射状に延びる複数(例えば8本)の放射状溝28が形成されている。各放射状溝28は、環状溝27と弁板23の外周縁との間で弁板23の表面を直線的に切欠くことにより、弁板23の周方向に均等な間隔をもって放射状に形成され、環状溝27内の作動油を弁板23の外周側に導くものである。これにより、弁板23の表面には、環状溝27と各放射状溝28とによって囲まれた複数のスラストパッド29が形成されている。
【0041】
複数のスラストパッド29は、弁板23の外周側の表面に設けられている。これら各スラストパッド29は、環状溝27と各放射状溝28とによって弁板23の表面に画成された複数(例えば8個)の円弧状の領域として構成され、互いに等しい面積を有している。各スラストパッド29は、吸入ポート24および吐出ポート25の径方向外側に配置され、環状溝27に保持された作動油と共に静圧軸受を構成し、シリンダブロック14の摺動面14Bに摺接している。これにより、各スラストパッド29は、シリンダブロック14と弁板23との間に作用するスラスト力を受承し、弁板23に対してシリンダブロック14を円滑に回転させる構成となっている。ここで、各スラストパッド29のうち各ピストン16の上死点位置、即ち上死点側切換ランド23Bの径方向外側に位置する上死点側スラストパッド29Aには、後述する上死点側圧力ポケット30が設けられている。一方、各スラストパッド29のうち各ピストン16の下死点位置、即ち下死点側切換ランド23Cの径方向外側に位置する下死点側スラストパッド29Bには、後述する下死点側圧力ポケット31が設けられている。
【0042】
上死点側圧力ポケット30は、各スラストパッド29のうち各ピストン16の上死点位置にある上死点側スラストパッド29Aに設けられている。上死点側圧力ポケット30は、上死点側スラストパッド29Aの表面を円弧状に切欠くことにより、例えば環状溝27と同程度の深さを有する有底溝として形成されている。上死点側圧力ポケット30は、油圧ポンプ1がポンプ動作を行うときに、後述の上死点側導油路32を通じて圧油が導入されるものである。
【0043】
下死点側圧力ポケット31は、各スラストパッド29のうち各ピストン16の下死点位置にある下死点側スラストパッド29Bに設けられている。下死点側圧力ポケット31は、下死点側スラストパッド29Bの表面を円弧状に切欠くことにより、例えば環状溝27と同程度の深さを有する有底溝として形成されている。下死点側圧力ポケット31は、油圧ポンプ1がモータ動作を行うときに、後述の下死点側導油路33を通じて圧油が導入されるものである。
【0044】
上死点側導油路32は、上死点側切換ランド23Bと上死点側圧力ポケット30との間に位置して弁板23に設けられている。
図3および
図4に示すように、上死点側導油路32は、上死点側切換ランド23Bと上死点側圧力ポケット30との間を連通させるU字型の油路として形成されている。上死点側導油路32の一端側は、上死点側切換ランド23Bに開口するランド側開口部32Aとなり、上死点側導油路32の他端側は、上死点側圧力ポケット30の底面に開口するポケット側開口部32Bとなっている。
【0045】
ここで、上死点側導油路32のランド側開口部32Aは、各ピストン16が吐出行程から吸入行程に切換わるときに、シリンダポート15Aが吐出ポート25の一側ノッチ25Aから遮断された後に連通する位置に設けられている。これにより、上死点側導油路32は、油圧ポンプ1がポンプ動作を行って吐出ポート25が高圧となった場合に、各シリンダ15のシリンダポート15Aが、吐出ポート25の一側ノッチ25Aから遮断された後にランド側開口部32Aに連通することにより、シリンダ15内の圧油を上死点側圧力ポケット30内に導入させる。
【0046】
下死点側導油路33は、下死点側切換ランド23Cと下死点側圧力ポケット31との間に位置して弁板23に設けられている。下死点側導油路33は、上死点側導油路32と同様に、下死点側切換ランド23Cと下死点側圧力ポケット31との間を連通させるU字型の油路として形成されている。下死点側導油路33の一端側は、下死点側切換ランド23Cに開口するランド側開口部33Aとなり、下死点側導油路33の他端側は、下死点側圧力ポケット31の底面に開口するポケット側開口部33Bとなっている。
【0047】
ここで、下死点側導油路33のランド側開口部33Aは、各ピストン16が吸入行程から吐出行程に切換わるときに、シリンダポート15Aが吸入ポート24の他側ノッチ24Bから遮断された後に連通する位置に設けられている。これにより、下死点側導油路33は、油圧ポンプ1がモータ動作を行って吸入ポート24内が高圧になった場合に、各シリンダ15のシリンダポート15Aが、吸入ポート24の他側ノッチ24Bから遮断された後にランド側開口部33Aに連通することにより、シリンダ15内の圧油を下死点側圧力ポケット31内に導入させる。
【0048】
第1の実施の形態による斜板式油圧ポンプ1は、上述の如き構成を有するもので、以下、その作動について説明する。
【0049】
図1に示す原動機2が作動し、油圧ポンプ1の回転軸11が回転すると、回転軸11と一体にシリンダブロック14が回転する。弁板23の外周側に設けられた各スラストパッド29は、弁板23とシリンダブロック14の摺動面14Bとの間に発生するスラスト力を受承し、シリンダブロック14を円滑に回転させる。これより、各ピストン16は、斜板19の傾転角に対応したストローク量をもってシリンダブロック14の各シリンダ15内を往復動し、例えば給排通路10A側から各シリンダ15内に吸込んだ作動油を加圧した後、高圧の圧油として給排通路10B側に吐出する。各ピストン16は、シリンダブロック14が1回転する間に、シリンダ15内を上死点から下死点へと摺動変位してシリンダ15内に作動油を吸込む吸入行程と、下死点から上死点へと摺動変位してシリンダ15内の作動油を高圧の圧油として吐出する吐出行程とを繰返す。
【0050】
このとき、傾転アクチュエータ(図示せず)によって、例えば斜板19が傾転角零の中立位置から正方向(車体前進方向)に傾転駆動されると、油圧ポンプ1は、給排通路10Bから油圧閉回路4の主管路3Bに圧油を吐出する。これにより、油圧閉回路4内では、主管路3A,3B内を矢示A1方向に沿って圧油が流通し、走行用の油圧モータ5は圧油の給排によって前進方向に回転駆動される。油圧モータ5の回転出力は減速機6を介して車輪7,7に伝達され、ホイール式作業車両は、斜板19の傾転角度に応じた速度で前進方向に走行することができる。
【0051】
一方、傾転アクチュエータによって、例えば斜板19が傾転角零の中立位置から逆方向(車体後進方向)に傾転駆動されると、油圧ポンプ1は、給排通路10Aから油圧閉回路4の主管路3Aに圧油を吐出する。これにより、油圧閉回路4内では、主管路3A,3B内を矢示B1方向に沿って圧油が流通し、油圧モータ5は圧油の給排によって後進方向に回転駆動される。油圧モータ5の回転出力は減速機6を介して車輪7,7に伝達され、ホイール式作業車両は、斜板19の傾転角度に応じた速度で後進方向に走行することができる。
【0052】
ここで、例えばホイール式作業車両の前進走行時に、車体の速度が斜板19の傾転角度に応じた速度に達するまでの間は、油圧ポンプ1から吐出される圧油の流量が、油圧モータ5に供給される圧油の流量よりも多いため、油圧閉回路4の主管路3B内に圧力が発生する。これにより、油圧モータ5の供給側(流入側)および油圧ポンプ1の吐出側が高圧となって油圧モータ5が回転駆動され、ホイール式作業車両は斜板19の傾転角度に応じた速度まで加速される。この状態が、油圧閉回路4において油圧ポンプ1がポンプ動作を行う状態である。
【0053】
一方、例えばホイール式作業車両の前進走行時に、斜板19の傾転角度を小さくした場合には、車体の速度が斜板19の傾転角度に応じた速度よりも大きいため、油圧モータ5から排出される圧油の流量が、油圧ポンプ1に吸入される圧油の流量よりも多くなり、油圧閉回路4の主管路3A内に圧力が発生する。これにより、油圧モータ5の排出側および油圧ポンプ1の吸入側が高圧となって油圧モータ5の回転が減速され、ホイール式作業車両は斜板19の傾転角度に応じた速度まで減速される。この状態が、油圧閉回路4において油圧ポンプ1がモータ動作を行う状態である。
【0054】
ホイール式作業車両の走行時に、油圧ポンプ1がポンプ動作を行う場合には、上述したように、油圧閉回路4の主管路3B内に圧力が発生し、油圧モータ5供給側および油圧ポンプ1の吐出側が高圧となる。そして、シリンダブロック14が、弁板23に対して例えば
図3中の矢示C方向に回転するときに、各ピストン16が、吐出行程においてシリンダブロック14の各シリンダ15内を下死点から上死点へと摺動変位する間(ピストン16がシリンダ15内に挿入される間)に、ピストン16とシリンダ15との摺動面に摩擦力が発生する。シリンダブロック14は、この摩擦力によって弁板23の上死点側切換ランド23Bに押付けられる。
【0055】
ここで、シリンダブロック14に設けられた各シリンダ15内の圧力は、シリンダポート15Aが弁板23の吐出ポート25と連通している区間では、吐出ポート25内の圧力と等しい高圧となる。この状態で、
図3中の矢示C方向に回転するシリンダポート15Aは、吐出ポート25の一側ノッチ25Aから離脱した後に、上死点側導油路32のランド側開口部32Aに連通する。これにより、シリンダ15内の圧油は、上死点側導油路32を通じて上死点側スラストパッド29Aに設けられた上死点側圧力ポケット30内に導入される。
【0056】
この結果、上死点側圧力ポケット30内に油圧反力が発生し、弁板23の上死点側スラストパッド29Aとシリンダブロック14の摺動面14Bとの間の面圧が増大するのを抑えることができる。従って、シリンダブロック14と弁板23との摺動面の焼付き、異常摩耗等を防止し、シリンダブロック14を円滑に回転させることができる。しかも、上死点に達したシリンダ15内の圧力を、上死点側導油路32を通じて上死点側圧力ポケット30に排出することにより、シリンダポート15Aが吸入ポート24に連通したときのシリンダ15内の圧力変化を緩和することができ、油圧ポンプ1の吐出圧脈動を低減することができる。
【0057】
次に、ホイール式作業車両の走行時に、油圧ポンプ1がモータ動作を行う場合には、上述したように、油圧閉回路4の主管路3A内に圧力が発生し、油圧モータ5の排出側および油圧ポンプ1の吸入側が高圧となる。この状態では、各ピストン16が、吸入行程においてシリンダブロック14の各シリンダ15内を上死点から下死点へと摺動変位する間(ピストン16がシリンダ15から伸長する間)に、ピストン16とシリンダ15との摺動面に摩擦力が発生する。この摩擦力は、シリンダブロック14の摺動面14Bを弁板23の上死点側切換ランド23Bから引離す方向に作用し、シリンダブロック14は、この摩擦力によって弁板23の下死点側切換ランド23Cに押付けられる。
【0058】
ここで、シリンダブロック14に設けられた各シリンダ15内の圧力は、シリンダポート15Aが弁板23の吸入ポート24と連通している区間では高圧となっている。このため、矢示C方向に回転するシリンダポート15Aが、吸入ポート24の他側ノッチ24Bから離脱した後に、下死点側導油路33のランド側開口部33Aに連通すると、シリンダ15内の圧油は、下死点側導油路33を通じて下死点側スラストパッド29Bに設けられた下死点側圧力ポケット31内に導入される。
【0059】
この結果、下死点側圧力ポケット31内に油圧反力が発生し、弁板23の下死点側スラストパッド29Bとシリンダブロック14の摺動面14Bとの間の面圧が増大するのを抑えることができる。従って、油圧ポンプ1がモータ動作を行う場合でも、シリンダブロック14と弁板23との摺動面の焼付き、異常摩耗等を防止し、シリンダブロック14を円滑に回転させることができる。しかも、下死点に達したシリンダ15内の圧力を、下死点側導油路33を通じて下死点側圧力ポケット31に排出することができる。これにより、油圧ポンプ1がモータ動作を行う場合でも、シリンダポート15Aが吐出ポート25に連通したときのシリンダ15内の圧力変化を緩和することができ、油圧ポンプ1の油圧脈動を低減することができる。
【0060】
かくして、第1の実施の形態による油圧ポンプ1は、弁板23の外周側に、吸入ポート24および吐出ポート25の径方向外側に位置して複数のスラストパッド29が設けられ、各スラストパッド29のうち各ピストン16の上死点位置にある上死点側スラストパッド29Aには、その内部に圧油を導入可能な上死点側圧力ポケット30が設けられ、各スラストパッド29のうち各ピストン16の下死点位置にある下死点側スラストパッド29Bには、その内部に圧油を導入可能な下死点側圧力ポケット31が設けられ、弁板23には、吐出行程の最後で吐出ポート25から遮断されるシリンダポート15Aを上死点側圧力ポケット30に連通させる上死点側導油路32と、吸入行程の最後で吸入ポート24から遮断されるシリンダポート15Aを下死点側圧力ポケット31に連通させる下死点側導油路33とが設けられる構成としている。
【0061】
これにより、油圧ポンプ1が油圧閉回路4内でポンプ動作を行う場合に、シリンダブロック14に対して弁板23の上死点側に押付ける方向の力が作用したとしても、シリンダポート15Aが上死点側導油路32のランド側開口部32Aに連通することにより、シリンダ15内の圧油を、上死点側導油路32を通じて上死点側圧力ポケット30内に導入することができる。この結果、上死点側圧力ポケット30内に発生した油圧反力により、弁板23の上死点側スラストパッド29Aとシリンダブロック14の摺動面14Bとの間の摩擦を抑えることができる。
【0062】
一方、油圧ポンプ1が油圧閉回路4内でモータ動作を行う場合に、シリンダブロック14に対して弁板23の下死点側に押付ける方向の力が作用したとしても、シリンダポート15Aが下死点側導油路33のランド側開口部33Aに連通することにより、シリンダ15内の圧油を、下死点側導油路33を通じて下死点側圧力ポケット31内に導入することができる。この結果、下死点側圧力ポケット31内に発生した油圧反力により、弁板23の下死点側スラストパッド29Bとシリンダブロック14の摺動面14Bとの間の摩擦を抑えることができる。
【0063】
このように、第1の実施の形態による油圧ポンプ1は、ポンプ動作を行うときには、シリンダブロック14の摺動面14Bが弁板23の上死点側に片当たりするのを抑えることができ、モータ動作を行うときには、シリンダブロック14の摺動面14Bが弁板23の下死点側に片当たりするのを抑えることができる。従って、シリンダブロック14と弁板23との間に生じる摩擦力を、弁板23の上死点側及び下死点側の両方でバランス良く低減することができる。この結果、油圧ポンプ1を長期に亘って円滑に回転させることができ、油圧ポンプ1のポンプ効率を良好に保つことができる。また、シリンダブロック14および弁板23の片当たりによる異常摩耗、焼付き、かじり等を抑えることができるので、油圧ポンプ1の信頼性を高めることができると共に、寿命を延ばすことができる。
【0064】
しかも、油圧ポンプ1の弁板23には、吐出ポート25から上死点側切換ランド23Bに向けて延びる一側ノッチ25Aと、吸入ポート24から下死点側切換ランド23Cに向けて延びる他側ノッチ24Bとが設けられ、上死点側導油路32の上死点側切換ランド23B側のランド側開口部32Aは、シリンダポート15Aが一側ノッチ25Aから遮断された後に連通する位置に設けられ、下死点側導油路33の下死点側切換ランド23C側のランド側開口部33Aは、シリンダポート15Aが他側ノッチ24Bから遮断された後に連通する位置に設けられている。
【0065】
これにより、油圧ポンプ1のポンプ動作時には、吐出ポート25から吐出された後のシリンダ15内の圧油を、上死点側圧力ポケット30に導入することができる。一方、油圧ポンプ1のモータ動作時には、高圧となった吸入ポート24に連通したシリンダ15内の圧油を、下死点側圧力ポケット31に導入することができる。従って、油圧ポンプ1は、上死点側圧力ポケット30および下死点側圧力ポケット31に導入するための圧油を別途必要とせず、圧油の流量に関与しない圧油を有効利用してシリンダブロック14と弁板23との間の摩擦を低減することができる。この結果、油圧ポンプ1は、ポンプ効率を低下させることなくシリンダブロック14の円滑な回転を実現することができ、油圧ポンプ1の信頼性を高めることができる。
【0066】
次に、
図5および
図6は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、上死点側スラストパッドと隣合うスラストパッドに第2の上死点側圧力ポケットが設けられ、下死点側スラストパッドと隣合うスラストパッドに第2の下死点側圧力ポケットが設けられ、シリンダポートを第2の上死点側圧力ポケットに連通させる第2の上死点側導油路と、シリンダポートを第2の下死点側圧力ポケットに連通させる第2の下死点側導油路とが設けられていることにある。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0067】
図中、弁板23′は、第1の実施の形態による弁板23に代えて本実施の形態に用いられたものである。弁板23′は、第1の実施の形態による弁板23と同様に、軸挿通孔23A、上死点側切換ランド23B、下死点側切換ランド23C、吸入ポート24、吐出ポート25、各一側ノッチ24A,25A、各他側ノッチ24B,25Bを有している。また、弁板23′の表面側には、環状溝27、複数の放射状溝28、上死点側スラストパッド29Aおよび下死点側スラストパッド29Bを含む複数のスラストパッド29、上死点側圧力ポケット30、下死点側圧力ポケット31、上死点側導油路32、下死点側導油路33が設けられている。
【0068】
しかし、第2の実施の形態による弁板23′は、後述する第2の上死点側圧力ポケット34、第2の下死点側圧力ポケット35、第2の上死点側導油路36、第2の下死点側導油路37が設けられている点で、第1の実施の形態による弁板23とは異なるものである。
【0069】
第2の上死点側圧力ポケット34は、シリンダブロック14の回転方向(矢示C方向)において上死点側スラストパッド29Aと隣合うスラストパッド29Cに設けられている。第2の上死点側圧力ポケット34は、スラストパッド29Cの表面を円弧状に切欠くことにより、例えば環状溝27と同程度の深さを有する有底溝として形成されている。第2の上死点側圧力ポケット34は、油圧ポンプ1がポンプ動作を行うときに、第2の上死点側導油路36を通じて圧油が導入されるものである。
【0070】
第2の下死点側圧力ポケット35は、シリンダブロック14の回転方向において下死点側スラストパッド29Bと隣合うスラストパッド29Dに設けられている。第2の下死点側圧力ポケット35は、スラストパッド29Dの表面を円弧状に切欠くことにより、例えば環状溝27と同程度の深さを有する有底溝として形成されている。第2の下死点側圧力ポケット35は、油圧ポンプ1がモータ動作を行うときに、第2の下死点側導油路37を通じて圧油が導入されるものである。
【0071】
第2の上死点側導油路36は、上死点側切換ランド23Bと第2の上死点側圧力ポケット34との間に位置して弁板23′に設けられている。第2の上死点側導油路36は、上死点側切換ランド23Bと第2の上死点側圧力ポケット34との間を連通させるU字型の油路として形成され、平面視で上死点側導油路32と直交する方向に延びている。第2の上死点側導油路36は、その一端側が上死点側切換ランド23Bに開口するランド側開口部36Aとなり、他端側が第2の上死点側圧力ポケット34の底面に開口するポケット側開口部36Bとなっている。この場合、第2の上死点側導油路36のランド側開口部36Aは、上死点側導油路32のランド側開口部32Aと共通化されている。
【0072】
従って、第2の上死点側導油路36のランド側開口部36Aは、各ピストン16が吐出行程から吸入行程に切換わるときに、シリンダポート15Aが吐出ポート25の一側ノッチ25Aから遮断された後に連通する位置に設けられている。これにより、第2の上死点側導油路36は、油圧ポンプ1がポンプ動作を行って吐出ポート25が高圧となった場合に、各シリンダ15のシリンダポート15Aが、吐出ポート25の一側ノッチ25Aから遮断された後にランド側開口部36Aに連通することにより、シリンダ15内の圧油を第2の上死点側圧力ポケット34内に導入させる。
【0073】
第2の下死点側導油路37は、下死点側切換ランド23Cと第2の下死点側圧力ポケット35との間に位置して弁板23′に設けられている。第2の下死点側導油路37は、第2の上死点側導油路36と同様に、下死点側切換ランド23Cと第2の下死点側圧力ポケット35との間を連通させるU字型の油路として形成され、平面視で下死点側導油路33と直交する方向に延びている。第2の下死点側導油路37は、その一端側が下死点側切換ランド23Cに開口するランド側開口部37Aとなり、他端側が第2の下死点側圧力ポケット35の底面に開口するポケット側開口部37Bとなっている。この場合、第2の下死点側導油路37のランド側開口部37Aは、下死点側導油路33のランド側開口部33Aと共通化されている。
【0074】
従って、第2の下死点側導油路37のランド側開口部37Aは、各ピストン16が吸入行程から吐出行程に切換わるときに、シリンダポート15Aが吸入ポート24の他側ノッチ24Bから遮断された後に連通する位置に設けられている。これにより、第2の下死点側導油路37は、油圧ポンプ1がモータ動作を行って吸入ポート24内が高圧になった場合に、各シリンダ15のシリンダポート15Aが、吸入ポート24の他側ノッチ24Bから遮断された後にランド側開口部37Aに連通することにより、シリンダ15内の圧油を第2の下死点側圧力ポケット35内に導入させる。
【0075】
第2の実施の形態による油圧ポンプ1は、上述の如き弁板23′を備えるもので、その基本的作動については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0076】
然るに、第2の実施の形態によれば、油圧ポンプ1がポンプ動作を行うことにより、例えばシリンダブロック14が矢示C方向に回転すると、シリンダポート15Aは、吐出ポート25の一側ノッチ25Aから離脱した後に、上死点側導油路32のランド側開口部32A、および第2の上死点側導油路36のランド側開口部36Aに連通する。これにより、シリンダ15内の圧油は、上死点側導油路32を通じて上死点側圧力ポケット30内に導入されると共に、第2の上死点側導油路36を通じて第2の上死点側圧力ポケット34内に導入される。
【0077】
これにより、隣合う上死点側圧力ポケット30と第2の上死点側圧力ポケット34との内部に、それぞれ油圧反力が発生するので、シリンダブロック14を弁板23′の上死点側に押付ける力を、広い範囲に発生した油圧反力によって効率良く受承することができる。さらに、油圧ポンプ1の負荷条件によってシリンダブロック14から弁板23′に作用する押付け力の方向が変化し、例えば上死点から下死点側にずれた位置でシリンダブロック14を弁板23′に押付ける力が作用した場合でも、この力を第2の上死点側圧力ポケット34内の油圧反力によって受承することができる。
【0078】
一方、油圧ポンプ1がモータ動作を行う場合に、矢示C方向に回転するシリンダポート15Aが、吸入ポート24の他側ノッチ24Bから離脱した後に、下死点側導油路33のランド側開口部33A、および第2の下死点側導油路37のランド側開口部37Aに連通すると、シリンダ15内の圧油は、下死点側導油路33を通じて下死点側圧力ポケット31内に導入されると共に、第2の下死点側導油路37を通じて第2の下死点側圧力ポケット35内に導入される。
【0079】
これにより、隣合う下死点側圧力ポケット31と第2の下死点側圧力ポケット35との内部に、それぞれ油圧反力が発生するので、シリンダブロック14を弁板23′の下死点側に押付ける力を、広い範囲に発生した油圧反力によって効率良く受承することができる。さらに、油圧ポンプ1の負荷条件によってシリンダブロック14から弁板23′に作用する押付け力の方向が変化し、例えば下死点から上死点側にずれた位置でシリンダブロック14を弁板23′に押付ける力が作用した場合でも、この力を第2の下死点側圧力ポケット35内の油圧反力によって受承することができる。
【0080】
この結果、油圧ポンプ1がポンプ動作を行う場合でも、モータ動作を行う場合でも、シリンダブロック14と弁板23′との摺動面に発生する摩擦力を、弁板23′の上死点側及び下死点側の両方でバランス良く低減することができる。この結果、油圧ポンプ1を長期に亘って円滑に回転させることができ、油圧ポンプ1のポンプ効率を良好に保つことができる。また、シリンダブロック14、弁板23′の焼付き、異常摩耗、かじり等を防止することができるので、油圧ポンプ1の信頼性を高めることができる。
【0081】
なお、第2の実施の形態では、シリンダブロック14が矢示C方向に回転するときの回転方向において、上死点側スラストパッド29Aと隣合うスラストパッド29Cに第2の上死点側圧力ポケット34を設けると共に、下死点側スラストパッド29Bと隣合うスラストパッド29Dに第2の下死点側圧力ポケット35を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、シリンダブロック14が矢示C方向とは反対に回転するときの回転方向において、上死点側スラストパッド29Aと隣合うスラストパッド29に第2の上死点側圧力ポケットを設けると共に、下死点側スラストパッド29Bと隣合うスラストパッド29に第2の下死点側圧力ポケットを設ける構成としてもよい。
【0082】
さらに、上死点側スラストパッド29Aの両隣りに位置する2個のスラストパッド29C,29に、それぞれ第2の上死点側圧力ポケットを設けると共に、下死点側スラストパッド29Bの両隣りに位置する2個のスラストパッド29D,29に、それぞれ第2の下死点側圧力ポケットを設ける構成としてもよい。
【0083】
実施の形態では、油圧ポンプ1を、ホイールローダ等のホイール式作業車両における走行用油圧回路に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば旋回用の油圧回路等、種々の用途の油圧閉回路にも適用できるものである。さらに、実施の形態では、油圧ポンプ1によって駆動されるアクチュエータとして油圧モータ5を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧シリンダ等の他のアクチュエータを駆動する油圧ポンプに広く適用することができる。
【0084】
実施の形態では、アキシャルピストン式油圧ポンプとして、斜板式の油圧ポンプ1に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば斜軸式の油圧ポンプ等に適用してもよい。