(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
射出成形機が備える金型は、一般に固定型と可動型とで構成され、その金型は型締装置により型締されて使用されている。型締装置は、位置が固定された固定盤と、位置が変位する可動盤とで構成され、固定盤には固定型が取り付けられ、可動盤には可動型が取付けられている。射出成形機は竪型射出成形機と横型射出成形機とに分類され、金型は各形態の射出成形機に取り付けられて使用される。
【0003】
横型射出成形機への金型の取り付け方法には上入れ方式と横入れ方式とがある。上入れ方式は、金型をクレーン等で吊り上げ、金型を射出成形機の上方から降ろして固定盤に固定する方式であり、横入れ方式は、金型を射出成形機の横側からスライドさせて固定盤に固定する方式である。この横入れ方式には、例えば手押しのリフタ等で射出成形機の横まで運んできた金型を固定盤の位置までスライドさせる方法や、駆動ローラ等を備えた自走式の移動装置で射出成形機の横まで運んできた金型を固定盤の位置まで手動又は自動でスライドさせる方法等があり、射出成形機の大きさや工場設備等の事情により様々な形態が提案されている。
【0004】
横入れ方法では、金型の取り付けを効率的に行なうため、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。この技術は、固定盤の盤面の下部と可動盤の盤面の下部とに夫々金型の下端を水平方向に移動可能に支持する受けガイド及び1対のクランプ装置を設け、固定盤の盤面の上部と可動盤の盤面の上部にも夫々1対のクランプ装置を設け、且つ固定盤の盤面と可動盤の盤面の少なくとも一方の金型搬入前進端に金型停止位置規制用ストッパを設けてなる金型の位置決め技術(従来技術1)が提案されている。
【0005】
また、現に実用化されている技術として、固定盤及び可動盤の搬送方向の所定の位置に金型を位置決めするために、金型の下方に油圧シリンダで昇降可能にした係合ピンを設け、この係合ピンを金型の下端に設けられた係合溝に係合させることにより、金型を搬送方向の所定の位置に位置決めする技術(従来技術2)が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金型の取り付けにはより高い精度が求められており、設置決め精度を高めるために、金型の固定盤側端面に設けられた係合溝と、固定盤の金型側端面に設けられた係合ピンとを係合させる位置決め方法が適用されている。この位置決め方法について、上入れ方式では、取り付け時にキー溝の側面と位置決めピンの側面とにクリアランスを設け、そのクリアランスを測定し、測定されたクリアランスを等分した位置に位置決めして取り付けていた。しかし、横入れ方式では、上入れ方式で測定し易かったクリアランス測定が難しく、測定されたクリアランスを等分した位置に位置決めして取り付けることが困難な場合があった。
【0008】
こうした問題に対し、本発明者は、キー溝の側面と位置決めピンとのクリアランスを無くし、位置決めピンだけで金型の横方向位置のセンタリングを行いながら金型を精度よく位置決めしようと試みた、しかしながら、横入れ方式で金型を横方向から固定盤に取り付ける際、金型が固定盤に隙間なく密着せず、固定盤の盤面に対して金型が少し傾いている場合には、位置決めピンがキー溝に挿入できず、金型を精度よく固定盤に取り付けることができないことがあった。なお、ここでいう横方向とは、
図6中の左右方向Yのことである。
【0009】
詳しくは、
図6(A)に示すように、金型10に設けられた係合溝13と、その係合溝13に係合するように固定盤11側に設けられた係合ピン31とは、移動させた金型10が固定盤11の盤面11aに対して角度θだけ傾いて配置されることがある。こうした傾きは、係合溝13と係合ピン31とがきちんと係合するのを阻害し、金型10の精度のよい位置決めを困難にさせていた。具体的には、
図6(A)(B)に示すように、係合溝13と係合ピン31との接触部位が、傾きの存在によってピン先端部分の左右対角の2点接触となる。このとき、金型10が受ける左右方向Yの力は、その2点で逆方向になって打ち消しあうため、金型10は左右方向Yに動くことができず、係合ピン31も所定の位置まで上下方向Zに上昇することができない。そして、その結果として係合ピン31と係合溝13とがきちんと係合させて位置決めすることができなかった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、横型射出成形機の固定盤及び可動盤に金型を位置決め精度よく取り付ける際の金型取り付け方法及び射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記現象、すなわち金型10が左右方向Yに動くことができないという現象を防ぐために、
図5(A)(B)に示すように、係合ピン31の先端部分と係合溝13のテーパー面とが、左右方向Yの一方の側(
図5では右側)で線当たりさせる方法を開発した。こうした方法によって、線あたりにより上下方向Zと左右方向Yとが分力を受け、金型10は固定盤11の左右方向Y(
図5では右側)に移動することができ、その移動によって係合ピン31は所定の位置まで上下方向Zに上昇して、係合ピン31と係合溝13とがきちんと係合することを可能にした。
【0012】
(1)本発明に係る金型取り付け方法は、固定型及び可動型からなる金型を射出成形機の外から搬入して固定盤及び可動盤の所定の位置に位置決めする金型取り付け方法であって、
前記位置決めが、金型搬入ステップ、第1次型締めステップ、位置矯正ステップ、第2次型締ステップ、及び金型固定ステップをその順で有する少なくとも5段階のステップを有し、
前記金型搬入ステップは、搬入した前記金型を前記所定の位置で停止させるステップであり、前記第1次型締めステップは、前記可動盤で前記金型を押圧型締めして前記金型の型面を前記固定盤の盤面に密着させるステップであり、前記位置矯正ステップは、前記可動盤を移動して所定位置まで退避させた後、前記固定盤側に設けられた係合ピンを上昇させて前記金型の下端面に設けられた係合溝に係合して位置矯正するステップであり、前記第2次型締めステップは、前記位置矯正した前記金型に前記可動盤を押圧型締めするステップであり、前記金型固定ステップは、型締された前記金型をクランプして固定するステップである、ことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、上記した金型搬入ステップ、第1次型締めステップ、位置矯正ステップ、第2次型締ステップ、及び金型固定ステップをその順で有する少なくとも5段階のステップを有するので、金型が固定盤に対して角度θだけ傾いて配置された場合であっても、第1次型締めステップで金型の型面を固定盤の盤面に密着させることができ、位置矯正ステップによって係合ピンと係合溝とを係合して位置矯正して金型を左右方向Yに移動させることができる。そして、その後に第2次型締めステップによって位置決めを正確に行うことができ、金型を位置決め精度よく取り付けることができる。
【0014】
本発明に係る金型取り付け方法において、前記第1次型締めステップでの押圧力は、前記第2次型締めステップでの押圧力よりも小さい。
【0015】
この発明によれば、第1次型締めステップでの押圧力が第2次型締めステップでの押圧力よりも小さいので、第1次型締めステップはその後の位置矯正ステップ前の仮締めステップとして作用し、第2次型締めステップは位置決めされた後の金型を型締めするステップとして作用する。
【0016】
本発明に係る金型取り付け方法において、前記金型搬入ステップ(S3)における前記所定の位置での前記金型の停止を、突き当てピン及びセンサの一方又は両方で行うことが好ましい。この発明によれば、突き当てピン及びセンサの一方又は両方により、搬入した金型を所定の位置で精度よく停止することができる。
【0017】
本発明に係る金型取り付け方法において、前記位置矯正ステップにおける前記可動盤を移動して所定位置までへの退避が、センサで前記可動盤の位置を検出して行う。この発明によれば、可動盤の所定位置までの移動を正確に行うことができる。
【0018】
本発明に係る金型取り付け方法において、前記係合溝は、テーパー形状又は曲面形状を内面に有し、前記可動盤の移動方向に延びた凹形状の溝であり、前記係合ピンは、テーパー形状又は曲面形状を先端部に有し、前記係合溝に係合可能な凸形状のピンである。
【0019】
この発明によれば、係合溝と係合ピンとが係合して位置決めされる。さらに、係合溝と係合ピンとが可動盤の移動方向に延びた凹形状と凸形状であるので、金型が固定盤に対して角度θだけ傾いて配置された場合であっても、上記第1次型締めステップで金型の型面を固定盤の盤面に密着した後に、係合ピンと係合溝とが係合して位置矯正される。そして、その後においては、第2次型締めステップによって位置決めを正確に行うことができ、金型を位置決め精度よく取り付けることができる。
【0020】
本発明に係る金型取り付け方法において、前記した少なくとも5段階のステップを一連の動作として自動制御することが好ましい。
【0021】
この発明によれば、前記した少なくとも5段階のステップを一連の動作として自動制御するので、誤操作や工程間での設定値入力間違い等を排除することができ、高い安全性を確保することができる。なお、制御を実行するための操作パネルには、例えば「金型固定側寄せ」等の名称で、型締めされた金型を固定盤に精度よく位置決めするための各種のスイッチを設けてもよい。
【0022】
(2)本発明に係る射出成形機は、上記本発明に係る金型取り付け方法を備えることを特徴とする。この発明によれば、横型射出成形機において、固定盤及び可動盤に金型を位置決め精度よく取り付けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、横型射出成形機の固定盤及び可動盤に金型を位置決め精度よく取り付ける際の金型取り付け方法及び射出成形機を提供することができる。特に、高度な位置決め精度での金型の取り付けを、横入れ方式でも可能になる。さらに、従来の係合ピンは金型が傾いたまま型締めしたので摩耗しやすく、摩耗による位置決め精度の低下が生じる場合があったが、この発明によれば、そうした問題も解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る金型取り付け方法及び射出成形機について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形形態や応用形態を包含する。
【0026】
[金型の取り付け方法]
本発明に係る金型の取り付け方法は、
図1に例示した横型射出成形機1の型締め部2に金型(固定型12と可動型22)を位置決め精度よく取り付けるための金型取り付け方法である。詳しくは、各図に示すように、金型10を横型射出成形機1の外から搬入して固定盤11及び可動盤21の所定の位置に位置決めする金型取り付け方法である。
【0027】
この金型取り付け方法において、位置決めは、特に
図4及び
図7に示すように、金型搬入ステップ(S3)、第1次型締めステップ(S4)、位置矯正ステップ(S5〜S7)、第2次型締ステップ(S9)、及び金型固定ステップ(S10)をその順で有する少なくとも5段階のステップを有している。金型搬入ステップ(S3)は、搬入した金型10を所定の位置で停止させるステップであり、第1次型締めステップ(S4)は、可動盤21で金型10を押圧型締めして金型10の型面を固定盤11の盤面に密着させるステップであり、位置矯正ステップ(S5〜S7)は、可動盤21を移動して所定位置まで退避させた後に固定盤側に設けられた係合ピン31を上昇させて金型10の下端面12bに設けられた係合溝13に係合して位置矯正するステップであり、第2次型締めステップ(S9)は、位置矯正した金型10に可動盤21を押圧型締めするステップであり、金型固定ステップ(S10)は、型締された金型10をクランプして固定するステップである。
【0028】
この金型取り付け方法は、上記した金型搬入ステップ、第1次型締めステップ、位置矯正ステップ、第2次型締ステップ、及び金型固定ステップをその順で有する少なくとも5段階のステップを有するので、金型10が固定盤11に対して角度θだけ傾いて配置された場合であっても、第1次型締めステップで金型10の型面を固定盤11の盤面に密着させることができ、位置矯正ステップによって係合ピン31と係合溝13とを係合して位置矯正して金型10を左右方向Yに移動させることができる。そして、その後に第2次型締めステップによって位置決めを正確に行うことができ、金型10を位置決め精度よく取り付けることができる。特に、高度な位置決め精度での金型10の取り付けが、横型射出成形機1への横入れ方式でも可能になった。さらに、従来の係合ピンは金型10が傾いたまま型締めしたので摩耗しやすく、摩耗による位置決め精度の低下が生じる場合があったが、この金型取り付け方法では、そうした問題も解消することができた。
【0029】
以下、各構成要素について図面を参照して説明する。なお、以下において、符号Xは、固定盤11と可動盤21とが対向する「前後方向」のことを指し、符号Yは、固定盤11と可動盤21との間の金型10の設置位置に金型10を搬入する方向、及び係合ピン31と係合溝13とが係合して金型10が移動する方向であって、前記前後方向Xに直交する「左右方向」のことを指し、符号Zは、係合ピン31は係合溝13に向かって係合する「上下方向」を指している。なお、他の箇所での前後方向X、左右方向Y、上下方向Zの記載は、この定義に基づいた相対方向を意味している。
【0030】
<横型射出成形機の基本的な構成>
横型射出成形機1の基本的構成は、
図1に示すように、ベッド部5上に、型締め部2と射出部3とを備えている。型締め部2には、
図4に示すような固定型12と可動型22とからなる金型10が配置されている。型締め部2は、
図1(A)では主に固定盤11と可動盤21との位置関係を示しており、通常は保護カバーで覆われている。上面側の保護カバー2a(
図1(A)参照)は設置位置を示しており、カバー自体は省略している。手前側面や奥側側面には、金型10を搬入・搬出等する際に開閉するカバー(2b,2c)が必要に応じて設けられている。また、作業者が作業する側には、ディスプレイを備えた操作パネル4が取り付けられており、この操作パネル4によって、作業者が射出成形機1を操作する。この操作パネル4は、作業者の操作位置に応じた位置に任意に設けることができる。なお、符号9は、タイバーであり、固定盤11及び可動盤21を支え、金型10の開閉を案内する棒状部材である。符号Lは、固定盤と可動盤との間の空間長さである。
【0031】
射出部3は、通常、外周面にヒータを付設した加熱筒3aを備え、この加熱筒3aの前記型締め部2の側は射出ノズル(図には現れない)を有するとともに、加熱筒3aの後部は樹脂材料が供給されるホッパ3bを備えている。射出成形機1には、一般的な射出成形機が備える各種の機器や部材等を任意に備えているが、ここではそれらの説明は省略する。
【0032】
図2(A)は固定型12が設置される固定盤11を盤面側から見た一例を示す説明図であり、
図2(B)は可動型22が設置される可動盤21を盤面側から見た一例を示す説明図である。また、
図3は、金型10を固定盤11の所定の位置まで搬入する装置の一例であり、この形態では、金型搬入装置51として、必要に応じて各種ローラ53(駆動ローラ、遊動ローラ等)を取り付けたローラブロック54を例示している。ローラブロック54には、
図2及び
図3に示すように、任意の位置に各種ローラ53が設けられており、これら各種ローラ53は、金型10を型締め部2の所定の位置に搬入するように機能する。
【0033】
図2及び
図3の金型搬入装置51は一例であり、これらの形態に限定されるものではなく、各種の形態であってもよい。例えば、
図2(A)の例は、ローラブロック54が左側に設けられており、金型10が左側から搬入される形態になっているが、右側から搬入するようにローラブロック54を右側に配置したものであってもよい。また、
図3では、ベルトで金型10を搬送できる形態を例示しているが、このような形態に限定されるものでもなく、各種の形態を適用することができる。
【0034】
<金型の取り付けの各ステップ>
金型取り付け方法は、
図7に示すフローチャートの手順(ステップS1〜S11)で行われる。具体的には、金型搬入ステップ(S3)、第1次型締めステップ(S4)、位置矯正ステップ(S5〜S7)、第2次型締ステップ(S9)、及び金型固定ステップ(S10)をその順で有する少なくとも5段階のステップを有していることに特徴がある。
図4は、
図7に示す各ステップで動作する金型10、固定盤11及び可動盤21の位置態様を示す説明図である。
【0035】
図7中、S1は、金型交換時における金型取り付けの開始ステップである。S2は、固定型12と可動型22とからなる金型10を型締め部2に搬入する前に可動盤21を退避位置に退避させるステップである。S3は、金型10を金型搬入装置51で型締め部2に搬入し、搬入した金型10を所定の位置で停止させる金型搬入ステップである。S4は、可動盤21で金型10を押圧型締めして金型10の型面を固定盤11の盤面に密着させる第1次型締めステップである。S5は、その後の位置矯正ステップS6を行うために可動盤21を移動して所定位置まで退避させる退避ステップである。S6は、固定盤側に設けられた係合ピン31を上昇させて金型10の下端面12bに設けられた係合溝13に係合して位置矯正する位置矯正ステップである。S7は、係合ピン31と係合溝13とが係合するまでを確認する確認ステップである。S8は、係合を確認できない場合に第2次型締めを行わないことを出力するステップである。S9は、係合を確認できた場合に、位置矯正した金型10に可動盤21を押圧型締めする第2次型締めステップである。S10は、型締め後に金型(固定型12と可動型22)をクランプするステップであり、S11は、型締された金型10をクランプして固定し、クランプが完了して射出成形の準備ができたことを出力する金型固定ステップである。なお、
図8は、本発明の特徴を有しない従来のフローチャートである。以下、順に説明する。
【0036】
<S1ステップ>
S1ステップでは、金型交換時における金型取り付けを開始するステップであり、射出成形機1の金型10を交換する際の最初の工程である。このS1ステップの後に、S11までのステップが順次行われる。
【0037】
<S2ステップ>
S2ステップでは、
図4(A)に示すように、金型10を型締め部2に搬入する前に可動盤21を移動m1して退避位置に退避させる。可動盤21を退避させることにより、退避空間(空間長さL1)に金型10を移動m2して搬入することができる。可動盤21の退避は、油圧又は空気圧の駆動シリンダで行うことができる。可動盤21の退避位置は、近接スイッチやその他センサで検出して、所定位置に到達したときに移動を停止し、所定の退避位置に退避させることができる。なお、金型10は、固定型12と可動型22とが合わさった一体物となっており、これら一体化した金型10が搬送される。
【0038】
<S3ステップ>
S3ステップでは、型締め部2内に搬入した金型10を所定の位置で停止させる。型締め部2内への金型10の搬入は、
図2及び
図3に示すように、駆動ローラや遊動ローラ等を任意に組み合わせたローラブロック54等を備えた金型搬入装置51で行うことができる。金型搬入装置51の構造や配置は特に限定されないが、例えば
図2及び
図3について既に説明したように、各種の形態とすることができる。金型10は所定の位置まで移動m2して搬入されるが、その停止位置は、例えば
図2及び
図3に例示するような近接スイッチ43やストッパ/ガイド44によって、搬入した金型10を所定の位置で精度よく停止することができる。
【0039】
型締め部2内では、
図4(A)に示すように、可動盤21は、所定位置まで退避してある程度の余裕をもった空間(空間長さL1)に、金型10を移動m2して搬入される。搬入された金型10は、ほぼ固定盤11に密接するように搬入されるので、
図4(A)中の間隔G1だけ可動盤21が退避した状態になっている。
【0040】
<S4ステップ>
S4ステップは、第1次型締めステップであり、可動盤21で金型10を押圧型締めして金型10の型面(固定盤側型面12a)を固定盤11の盤面(固定型側盤面11a)に密着させる。ここでの押圧力F1は、後述する第2次型締めステップでの型締めの押圧力F2よりも小さい。そのため、S4ステップは、その後の位置矯正ステップ前の仮締めステップとして作用する。なお、後述する第2次型締めを行うS9ステップは、位置決めされた後の金型10を型締めするステップとして作用する。このS4ステップにより、金型10が固定盤11に対して角度θだけ傾いて配置された場合であっても、金型10の型面12aを固定盤11の盤面11aに密着させることができる。そのため、後述の位置矯正ステップ(S6ステップ)によって係合ピン31と係合溝13とを係合して位置矯正して、金型10を左右方向Yに移動させることができる。
図4(B)は、型締め部2内において、押圧力F1で第1次型締めが行われる形態を示している。
【0041】
<S5〜S7ステップ>
S5〜S7ステップは、可動盤21を移動して所定位置まで退避させた後、固定盤11側に設けられた係合ピン31を上昇させて金型10の下端面12bに設けられた係合溝13に係合して位置矯正するステップである。このS5〜S7ステップそれぞれは以下のとおりである。
【0042】
(S5ステップ)
S5ステップでは、後のS6ステップ(係合ピン31と係合溝13との係合)の前に、
図4(C)に示すように、可動盤21を移動m3して退避させる。退避手段は、S2ステップと同様であり、油圧又は空気圧の駆動シリンダで行うことができる。可動盤21の退避位置は、近接スイッチやその他センサで検出して、所定位置に到達したときに移動を停止し、所定の退避位置に退避させることができる。なお、その退避位置は、
図4(C)に示すように、金型10を余裕を持って搬入するS2ステップでの間隔G1よりも、狭い間隔G2を有する空間(空間長さL2)であればよい。その理由は、後のS6ステップにおいて、係合ピン31と係合溝13との係合に支障が生じなければよいためであり、間隔G1ほどの必要はない。
【0043】
(S6ステップ)
S6ステップでは、
図4(C)の状態のまま、固定盤11側に設けられた係合ピン31を上昇させて金型10の下端面12bに設けられた係合溝13に係合して位置矯正する。係合ピン31の上昇は、
図2(A)及び
図5に示す作動装置32(位置決めシリンダ)を作動させて行うことができる。このときの作動装置32も油圧又は空気圧の駆動シリンダで行うことができる。
【0044】
このS6ステップでは、係合ピン31が上昇することにより、
図5(A)(B)に示すように、例えば係合ピン31の先端部分と係合溝13のテーパー面とが左右方向Yの一方の側(
図5では右側)で線当たりし、その線あたりにより上下方向Zと左右方向Yとが分力を受け、金型10は固定盤11の左右方向Y(
図5では右側)に移動することが可能となり、その移動によって係合ピン31は所定の位置まで上下方向Zに上昇して、係合ピン31と係合溝13とがきちんと係合する。これにより、金型10が左右方向Yに動くことができないという従来の現象を防ぐことができる。
【0045】
係合溝13は、係合ピン31と係合する溝形状であればよく、例えば
図6(A)(B)に示すように、テーパー形状又は曲面形状を内面に有し、可動盤21の移動方向である前後方向Xに延びた凹形状の溝であることが好ましい。一方の係合ピン31も、係合溝13に係合するピン形状であればよく、例えば
図6(A)(B)に示すように、テーパー形状又は曲面形状を先端部に有し、係合溝13に係合可能な凸形状のピンであることが好ましい。こうした係合溝と係合ピンとが係合して金型10が位置決めされる。そして、係合溝13と係合ピン31とが可動盤21の移動方向(前後方向X)に延びた凹形状と凸形状であるので、金型10が固定盤11に対して角度θだけ傾いて配置された場合であっても、第1次型締めステップで金型10の型面を固定盤11の盤面に密着した後に、係合ピン31と係合溝13とが係合して位置矯正されることになる。そして、その後においては、第2次型締めステップによって位置決めを正確に行うことができ、金型10を位置決め精度よく取り付けることができることになる。
【0046】
(S7ステップ)
S7ステップでは、係合ピン31と係合溝13とが係合するまでを確認する。このステップは、金型10が設計どおりに係合したことを確認するステップである。係合ピン31の上昇確認は、各種の方法が可能であるが、例えばシリンダのストローク長をセンサ等で検出することにより行うことができる。
【0047】
<S8ステップ>
S8ステップでは、係合ピン31と係合溝13とが設計どおりに係合したことを確認できない場合に、次の第2次型締めステップを行わないことを出力する。その確認は、S7ステップでの係合ピン31のストローク長の測定等で行うことができる。第2次型締めを行わないとする出力は、制御部に送られ、その出力によってS3の金型搬入ステップ又はS4の第1次型締めステップまで戻る。
【0048】
<S9ステップ>
S9ステップでは、S7ステップで係合ピン31と係合溝13とが設計どおりに係合できたことを確認した場合に、金型10に可動盤21を押圧型締め(第2次型締め)する。このときの第2次型締めは、
図4(D)に示すように、位置矯正ステップS6で位置決めした金型10に可動盤21を押圧して行われる。このステップでの押圧は、金型10を型締めするに足る押圧力F2が必要であり、前記したS4における第1次型締めでの押圧力F1よりも大きい。その大きさは、通常適用される型締め圧力であればよく、特に限定されない。
【0049】
<S10ステップ>
S10ステップでは、
図4(E)に示すように、型締め後に金型10(固定型12と可動型22のぞれぞれ)をクランプする。クランプ部材41は、
図2及び
図3に示すように、固定盤11及び可動盤21に設けられている。図示の例では、固定盤11及び可動盤21のそれぞれに上下2カ所(それぞれ計4カ所)設けられているが、その数や位置は特に限定されない。なお、クランプ部材41は、油圧又は空気圧で作動するものを適宜採用することができる。また、クランプ部材41の先端に設けられて金型10をクランプする位置決め突起42の大きさや形状も特に限定されず、従来適用されている大きさや形態を採用することができる。
【0050】
<S11ステップ>
S11ステップでは、
図4(E)に示すように、型締された金型10をクランプして固定し、クランプが完了して射出成形の準備ができたことを出力する。この出力は、制御部に送られ、その出力によって射出成形における金型交換が完了したことを示す。
【0051】
<操作パネル>
図9は、以上説明した本発明に係る金型取り付け方法を実行する操作パネル60の一例を示す模式図である。操作パネル60には、複数のスイッチを設けることができ、そうしたスイッチ配列も任意に設計することができる。
図9の例では、第1スイッチ列61、第2スイッチ列62、第3スイッチ列63、第4スイッチ列64等を任意に設けることができる。また、具体的には,金型交換スイッチ(手動)65、金型交換スイッチ(自動)66、第1次型締めスイッチ67等の名称でスイッチを設けても良く、上記したステップ毎の名称を付したスイッチを設けてもよい。
【0052】
例えば、「金型固定側寄せ」等の名称で、型締めされた金型10を固定盤11及び可動盤21に精度よく位置決めするためのスイッチを設けてもよい。本発明では、少なくとも上記した5段階のステップ(金型搬入ステップ、第1次型締めステップ、位置矯正ステップ、第2次型締ステップ及び金型固定ステップ)をその順で有する少なくとも5段階のステップを一連の動作として自動制御することが好ましい。そうすることにより、誤操作や工程間での設定値入力間違い等を排除することができ、高い安全性を確保することができる。なお、一連の動作を自動で行う自動モードの選択スイッチを設けておくことも可能である。
【0053】
以上説明したように、本発明に係る金型取り付け方法によれば、横型射出成形機1の固定盤11及び可動盤21に金型10を位置決め精度よく取り付けることができる。こうした高度な位置決め精度での金型10の取り付けを、横入れ方式でも可能とし、さらに、従来の係合ピンのように金型が傾いたまま型締めしたので摩耗しやすく、摩耗による位置決め精度の低下が生じることを解決することもできる。特に、係合ピン31と係合溝13とを係合する前に、低圧型締めして金型10の傾きを矯正した後、一旦型開きして戻してから、係合ピン31と係合溝13とを係合している。こうした型開きは、可動盤21と金型10との隙間G2をセンサ等で監視する等、インタロック機能を追加することで実現可能とすることができる。その後、高圧の第2次型締めし、さらにクランプして動作を完了させることができる。