特許第6811213号(P6811213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811213
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】酒さの治療のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/327 20060101AFI20201228BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20201228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20201228BHJP
【FI】
   A61K31/327
   A61P17/00
   A61P29/00
   A61K9/06
   A61K9/50
   A61K9/107
   A61K47/04
   A61K47/10
   A61K47/14
   A61K47/34
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-126584(P2018-126584)
(22)【出願日】2018年7月3日
(62)【分割の表示】特願2015-543565(P2015-543565)の分割
【原出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2018-168178(P2018-168178A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2018年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】512080295
【氏名又は名称】ソル − ゲル テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セルトチョック、ハナン
(72)【発明者】
【氏名】トレダノ、オファー
(72)【発明者】
【氏名】バー − シマントフ、ハイム
【審査官】 飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−503056(JP,A)
【文献】 特表2010−517996(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/057411(WO,A1)
【文献】 特表2010−520853(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/049547(WO,A1)
【文献】 特表2006−519178(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0064135(US,A1)
【文献】 特表2016−501205(JP,A)
【文献】 特表2011−522820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 17/00
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象の酒さの治療における局所使用のための唯一の医薬活性剤として過酸化ベンゾイルを含む組成物であって、
前記組成物中に重量比で5%の固体の過酸化ベンゾイルを含み、
前記固体の過酸化ベンゾイルが、カプセルに封入された過酸化ベンゾイルであり、
前記カプセルに封入された過酸化ベンゾイルは、コアシェルマイクロカプセルに封入され、前記コアシェルマイクロカプセルのシェルは少なくとも1種類の無機ポリマーを含み、
前記組成物は、1日1回投与され、20%以上の治療の成功率を示すことを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、
前記組成物は、クリーム製剤、水中油型エマルジョン、及びゲル製剤からなる群から選択される製剤であることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であって、
前記組成物は、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸グリセリル及び少なくとも1種類の脂肪アルコールを含み、前記ステアリン酸ポリオキシルと前記ステアリン酸グリセリルとの比が、0.1:10〜10:0.1の範囲内である水中油型エマルジョンであることを特徴とする組成物。
【請求項4】
それを必要とする対象の酒さの治療における局所使用のための唯一の医薬活性剤として過酸化ベンゾイルを含む組成物であって、
前記組成物中に重量比で5%の固体の過酸化ベンゾイルを含み、
前記固体の過酸化ベンゾイルが、カプセルに封入された過酸化ベンゾイルであり、
前記カプセルに封入された過酸化ベンゾイルは、コアシェルマイクロカプセルに封入され、前記コアシェルマイクロカプセルのシェルは少なくとも1種類の無機ポリマーを含み、
前記組成物は、12週間にわたって1日1回投与され、20%以上の治療の成功率を示すことを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物であって、
前記成功率は、約30%であることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の組成物であって、
前記組成物は、クリーム製剤、水中油型エマルジョン、及びゲル製剤からなる群から選択される製剤であることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、
前記組成物は、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸グリセリル及び少なくとも1種類の脂肪アルコールを含み、前記ステアリン酸ポリオキシルと前記ステアリン酸グリセリルとの比が、0.1:10〜10:0.1の範囲内である水中油型エマルジョンであることを特徴とする組成物
【請求項8】
それを必要とする対象の酒さの治療における局所使用のための唯一の医薬活性剤として過酸化ベンゾイルを含む組成物であって、
前記組成物中に重量比で5%の固体の過酸化ベンゾイルを含み、
前記固体の過酸化ベンゾイルが、カプセルに封入された過酸化ベンゾイルであり、
前記カプセルに封入された過酸化ベンゾイルは、コアシェルマイクロカプセルに封入され、前記コアシェルマイクロカプセルのシェルは少なくとも1種類の無機ポリマーを含み、
前記組成物は、1日1回投与され、20%以上の治療の成功率を示し、
前記治療が40%以下の有害事象値を有することを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物であって、
前記組成物は12週間にわたって1日1回投与され、30%以上の治療の成功率を示すことを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の組成物であって、
前記組成物は、クリーム製剤、水中油型エマルジョン、及びゲル製剤からなる群から選択される製剤であることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物であって、
前記組成物は、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸グリセリル及び少なくとも1種類の脂肪アルコールを含み、前記ステアリン酸ポリオキシルと前記ステアリン酸グリセリルとの比が、0.1:10〜10:0.1の範囲内である水中油型ジョンであることを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項1、4、及び8のいずれかに記載の組成物であって、
前記成功率は、30%〜70%であることを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項1、4、及び8のいずれかに記載の組成物であって、
前記成功率は、50%以上であることを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項1、4、及び8のいずれかに記載の組成物であって、
前記成功率での治療の成功は、ベースラインと比べて、疾患のクリア又はほぼクリアな状態を達成することを特徴とする組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒さ並びにこれに関連する症状及び状態等の皮膚状態及び苦痛を治療するための、局所使用のための医薬組成物(皮膚用組成物など)に関する。
【背景技術】
【0002】
酒さは、ある特定の成人の顔の中央部及び眼瞼が主に罹患する、炎症性皮膚炎の慢性疾患である。これは、毛細血管拡張性紅斑、皮膚の乾燥、丘疹及び膿疱を特徴とする。従来、酒さは、30〜50歳の成人で発症し、女性の方がより高頻度で罹患するが、この状態は、一般に、男性においてより重症になる。酒さはもともと血管系の状態であり、その炎症段階は、通常のざ瘡に特徴的な嚢胞及び面皰を欠く。
【0003】
酒さの発症に寄与する可能性があるものとして説明されてきた因子としては、例えば、ニキビダニ(Demodex folliculorum)等の寄生虫の存在、ピロリ菌(Helicobacter pylori)(胃腸障害に関連する細菌)等の細菌の存在、ホルモン因子(内分泌因子等)、気候性及び免疫学的因子その他が挙げられる。
【0004】
酒さは、温度の変動、アルコール、香辛料、太陽光及びストレスへの曝露によって増悪される攣縮(spasms)において、数年間かけて4段階で発達する。
【0005】
この疾患の様々な段階を次に示す。
段階1:紅斑が出現する段階。患者は、顔の細動脈の突発的な拡張による紅色症攣縮を有し、これは続いてうっ血性の赤らんだ外観を呈する。このような攣縮は、情動、食事及び温度変化が原因で起こる。
段階2:赤鼻(couperosis)、即ち、毛細血管拡張症を伴う永続的な紅斑の段階。ある特定の患者は、頬及び前頭部に浮腫も有する。
段階3:炎症性丘疹及び膿疱の外観を伴うが、皮脂腺濾胞に影響せず、よって嚢胞及び面皰がない炎症段階(丘疹膿疱性酒さ)。
段階4:鼻瘤段階。この後期は、基本的に男性が罹患する。患者は、皮脂腺過形成及び結合組織の線維性再構築を伴うでこぼこした大きく赤らんだ鼻を有する。
【0006】
酒さの典型的な治療は、テトラサイクリン等の抗生物質、サリチル酸、抗真菌剤、ステロイド、メトロニダゾール(抗細菌剤)、或いは重症例においてはイソトレチノイン、更にはアゼライン酸等の抗感染剤の経口又は局所投与を含む。
【0007】
US20110052515は、少なくとも1種のエバーメクチン化合物及び過酸化ベンゾイル(BPO:benzoyl peroxide、抗ざ瘡剤)を含む、酒さを治療するための医薬/皮膚用の局所適用可能な製剤について記載した。
【0008】
Brenemanら(Int.J.Derma.43、381〜387(2004))は、中等度から重度の酒さの治療における、1日1回のBPO及びクリンダマイシン局所用ゲルの二重盲検、無作為化、媒体対照臨床治験の結果を報告した。
【0009】
Montesら(Cutis、32、185〜190(1983))は、酒さの治療のための、アセトンゲル製剤に溶解したBPOの使用を開示した。
【0010】
Westerら(J.Am.Acad.Derma.24、720〜726(1991))は、ざ瘡の治療における、多孔性マイクロスフェアポリマー系からのBPOの放出制御に関連した。
【0011】
BPO単独又は他の薬剤を併用したこれらの以前の酒さ治療は、特に長期間投与される場合、刺激作用及び不耐性現象等の深刻な弱点を有することが示された。一方でこれらの治療は、単に抑制的であり、根治的ではなく、特に炎症段階において発生する膿疱性攣縮に作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
酒さの慢性的性質を考慮すると、安全且つ有効な様式での、上記疾患、その症状及び関連する状態の治療の長期使用が求められている。よって、酒さの治療において改善された有効性を示し、活性成分に対してより優れた忍容性を付与し、先行技術に記載された副作用がない組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、酒さの治療における局所使用のための過酸化ベンゾイルを含む組成物であって、前記過酸化ベンゾイルが固体状である上記組成物を提供する。
【0014】
一部の実施形態において、前記BPOは、組成物の約2.5重量%〜約5重量%を構成する。一部の実施形態において、BPOは、組成物中の単一の医薬活性剤である。他の実施形態において、組成物は、更なる別の活性剤(医薬活性剤又は美容活性剤)を更に含む。
【0015】
用語「局所使用」は、皮膚、粘膜及び/又は外皮に適した、当業界公知のいずれかの方式で、又は本明細書で開示される製剤で組成物を製剤化することによる本発明の組成物の局所投与を包含することを企図している。
【0016】
本発明は、酒さの治療における局所使用のための過酸化ベンゾイルを含む組成物であって、組成物からの過酸化ベンゾイルの溶解速度が、約80%重量/時間未満である上記組成物を更に提供する。本態様の一部の実施形態において、前記過酸化ベンゾイルは、前記組成物中の単一の医薬活性剤である。
【0017】
一部の実施形態において、前記溶解速度は、約20%重量/時間〜約80%重量/時間である。他の実施形態において、前記溶解速度は、約40〜60%重量/時間である。更に他の実施形態において、前記溶解速度は、約40%重量/時間未満である。更なる実施形態において、前記溶解速度は、約20%重量/時間未満である。一部の更なる実施形態において、前記溶解速度は、約10%重量/時間〜約50重量%/時間である(即ち、10、15、20、25、30、35、40、45、50%/時間)。
【0018】
本発明の文脈において、用語「溶解速度」は、本発明の組成物から周囲の直近の環境への固体BPOの溶解の時間当たりの重量単位で表される速度に関する。本願に開示されている溶解速度は、後述する例5に開示されている通りに測定される。
【0019】
本発明は、酒さの治療における局所使用のための過酸化ベンゾイルを含む組成物であって、組成物からの過酸化ベンゾイルの溶解速度が、約40mg/時間未満である上記組成物を更に提供する。
【0020】
本願の発明者らによって、約80%/時間未満の溶解速度を有するBPOを含む組成物が、より速く溶解する類似量の医薬活性剤を有する組成物と比較して、忍容性及び有害作用に関してより安全且つより有効な酒さ治療を提供することが見出された。本願の発明者らによって、BPOの溶解速度が、80%/時間未満まで低減されると、酒さ等の慢性皮膚疾患とそれに伴うその症状及び状態等の治療が劇的に改善されたことが示されたが、その理由として、医薬活性剤の放出制御が、長期間にわたる医薬活性剤の放出制御及び持続放出を達成するのに十分に緩徐であり、酒さに関連する疾患、症状及び/又は状態を治療できるBPOの量を放出しつつ、他方では、不耐性又は有害作用を出現させなかったことが挙げられる。一部の実施形態において、組成物が、単一の医薬活性剤としてBPOを含む場合、酒さの治療結果は、BPO及び抗細菌剤を含む当業界公知の組成物に匹敵した。
【0021】
本発明は、単一の医薬活性剤として固体状の過酸化ベンゾイルを含む、皮膚用組成物などの医薬組成物を開示する。一部の実施形態において、前記組成物は、生理的に許容される形態へと製剤化される。
【0022】
更なる実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1種の更なる別の医薬活性剤を(BPOに加えて)含むことができる。
【0023】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、抗生物質剤、テトラサイクリン剤、レチノイド、抗菌剤及びこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の更なる別の医薬活性剤を含む。
【0024】
一部の実施形態において、前記少なくとも1種の更なる別の医薬活性剤は、次の非限定的な列挙から選択される:クリンダマイシン又はエリスロマイシン等の抗生物質。ミノサイクリン又はドキシサイクリン等のテトラサイクリン系。レチノイド並びにオールトランスレチノイン酸(トレチノイン)、タザロテン、アダパレン、アシトレチン、13シスレチノイン酸(イソトレチノイン)、9シスレチノイン酸(アリトレチノイン)又はベキサロテン(betaxorene)等のRAR及び/又はRXR受容体に結合及びこれを活性化する他の化合物、並びにこれらの代謝及び化学誘導体。メトロニダゾール、ナトリウムスルファセタミド−硫黄又はアゼライン酸(azaleic acid)等の抗菌剤、ブリモニジン、オキシメタゾリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、キシロメタゾリン、フェニレフリン、メトキサミン、メフェンテルミン、メタラミノール、ミドドリン、エピネフリン、クロニジン又はノルエピネフリン等のα−アドレナリン作動性受容体アゴニスト。
【0025】
このような実施形態において、前記少なくとも1種の更なる別の医薬活性剤のうち少なくとも1種及び/又は前記BPOは、マイクロカプセルに封入される。
【0026】
本発明は、皮膚状態、特に酒さを改善、予防及び/又は治療するための医薬として製剤化された、治療期間を実質的に短縮し、酒さの症状のより優れた低減をもたらす組成物も特色とする。
【0027】
一部の実施形態において、前記過酸化ベンゾイルは、組成物の少なくとも約1.0重量%の量で組成物に存在する。
【0028】
一部の更なる実施形態において、前記過酸化ベンゾイルは、組成物の約2.5重量%〜約10重量%の量で組成物に存在する。更なる実施形態において、前記過酸化ベンゾイルは、組成物の約2.5重量%〜約5重量%の量で組成物に存在する。
【0029】
更なる実施形態において、前記過酸化ベンゾイルは、結晶形態である。
【0030】
一部の実施形態において、前記酒さは、丘疹膿疱性酒さである(即ち、炎症性酒さ、Rapini、Ronald P.ら(2007)Dermatology:全2巻、St. Louis:Mosby and James、Williamら(2005).Andrews'Diseases of the Skin:Clinical Dermatology.(第10版).Saunders 245頁を参照)。
【0031】
他の実施形態において、本発明の前記組成物は、酒さの治療における局所使用後に、約50%以下(未満)の有害事象値(adverse events value)を実証する。一部の実施形態において、前記組成物は、酒さの治療における局所使用後に、約40%、30%、20%以下(未満)の有害事象値を実証する。
【0032】
用語「有害事象値」は、本発明の組成物による酒さの治療に関連する(通常、本発明の組成物で治療した対象の皮膚における)何らかの有害事象を経験する対象の平均パーセンテージを指す。このような有害事象の非限定的な列挙として、刺激作用、乾燥、落屑性、そう痒、灼熱感、及び刺痛が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物は、IGA(医師による総合評価(Investigator General Assessment))において、高パーセンテージの2グレードの改善を示す対象を実証することが示され、12週目にベースラインと比べて疾患のクリア又はほぼクリアな状態を達成した。
【0034】
一部の実施形態において、IGAにおける前記2グレードの改善は、約20%〜約80%であり、一部の他の実施形態においては、30%〜70%であり、一部の更なる実施形態においては、40〜60%であった。
【0035】
用語「組成物からのBPOの溶解速度」は、時間(h)当たりのBPOのmg数の単位で表される、本発明の組成物から溶解されるBPOの定量的な量を指す。
【0036】
本願の発明者らは、驚くべきことに、本発明の組成物からの約80%重量/時間未満のBPOの溶解速度の制御が、酒さ等の慢性皮膚疾患の安全で忍容性のある有効な治療を提供し、長期使用した後でも皮膚に最小の有害作用しか起こさないことを見出したことを理解されたい。
【0037】
一部の更なる実施形態において、本発明の組成物は、キレート剤、抗酸化剤、日焼け止め、保存料、フィラー、電解質、保水剤、色素、無機若しくは有機の酸若しくは塩基、香料、精油、保湿剤、ビタミン、必須脂肪酸、スフィンゴ脂質、セルフタンニング化合物、鎮静剤(calmative)及び皮膚保護剤、浸透促進剤(pro−penetrating agent)並びにゲル化剤又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の非医薬活性添加物を更に含む。
【0038】
他の実施形態において、本発明の組成物は、(a)水、アルコール、油、脂肪性物質及びワックスからなる群から選択される少なくとも1種の要素;並びに(b)キレート剤、抗酸化剤、日焼け止め、保存料、フィラー、電解質、保水剤、色素、鉱酸、鉱物塩基、有機酸、有機塩基、香料、精油、保湿剤、ビタミン、必須脂肪酸、スフィンゴ脂質、セルフタンニング化合物、鎮静剤、皮膚保護剤、浸透促進剤、ゲル化剤、乳化剤、共乳化剤及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加物からなる、局所的に適用可能な生理的に許容される基剤に製剤化される。
【0039】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、エマルション(水中油型エマルション、油中水型エマルション、多重エマルション及びマイクロエマルションを含む)へと製剤化される。他の実施形態において、本発明の組成物は、クリームへと製剤化される。更なる実施形態において、本発明の組成物は、ゲルへと製剤化される。
【0040】
本発明に係る組成物は、医薬組成物、特に皮膚用組成物であり、これは、局所適用に従来から用いられているガレヌス製剤の形態、特に、水性ゲル及び水溶液又は水性アルコール溶液の形態であってもよい。これは、脂肪性又は油性相を加えることにより、ローション若しくはセラムタイプの分散液、水性相に脂肪性相を分散させること(O/W)若しくはその逆(W/O)によって得られるミルクタイプの液体若しくは半液体の稠度のエマルション、又は柔らかい半液体若しくは固体の稠度のクリーム、ゲル若しくは軟膏タイプの懸濁液若しくはエマルション、又は多重エマルション(W/O/W又はO/W/O)、マイクロエマルション、マイクロカプセル、微粒子、又はイオン性及び/若しくは非イオン性タイプの小胞分散液若しくはワックス/水性相分散液の形態にしてもよい。これらの組成物は、通常の方法に従って製剤化される。
【0041】
更なる実施形態において、酒さの治療における局所使用のための、単一の医薬活性剤として固体状の過酸化ベンゾイルを含む本発明の組成物は、ステアリン酸ポリオキシル及びステアリン酸グリセリルを含む水中油型エマルションである。
【0042】
一部の実施形態において、前記ステアリン酸ポリオキシルと前記ステアリン酸グリセリルとの比は、0.1:10〜10:0.1の範囲内である。
【0043】
また更なる実施形態において、前記ステアリン酸ポリオキシルは、ステアリン酸ポリオキシル8、ステアリン酸ポリオキシル20、ステアリン酸ポリオキシル40及びステアリン酸ポリオキシル100からなる群から選択される。
【0044】
更なる実施形態において、前記ステアリン酸グリセリルは、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
他の実施形態において、前記組成物における前記ステアリン酸ポリオキシルは、約0.1%w/w〜約30%w/wの範囲内である。
【0046】
更なる実施形態において、前記組成物における前記ステアリン酸グリセリルの量は、約0.1%w/w〜約30%w/wの範囲内である。
【0047】
他の実施形態において、前記組成物は、少なくとも1種の脂肪アルコールを更に含む。
【0048】
他の実施形態において、前記少なくとも1種の脂肪アルコールは、オクチルアルコール、2−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデカノール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレニルアルコール、リシノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘネイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、リグノセリルアルコール、セリルアルコール、モンタニルアルコール、クルイチルアルコール、ミリシルアルコール、メリシルアルコール、ゲジル(geddyl)アルコール、セテアリルアルコール及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
更なる実施形態において、前記組成物における前記少なくとも1種の脂肪アルコールの量は、約0.2%w/w〜約50%w/wの範囲内である。
【0050】
更に他の実施形態において、前記組成物は、ポリアクリル酸ホモポリマー又はコポリマーを更に含む。
【0051】
他の実施形態において、前記水中油型エマルションにおける前記油は、パラフィン油、ミリスチン酸イソプロピル、(カプリル酸/カプリン酸)トリグリセリド、スクアラン、スクアレン、アーモンド油、ヒマシ油、オリーブ油、ホホバ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ブドウ種子油、ジメチコン、シクロメチコン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0052】
更なる実施形態において、前記油は、約0.05%w/w〜約50%w/wの範囲内の量で組成物に存在する。
【0053】
一部の実施形態において、前記水中油型エマルションにおける前記水は、少なくとも1種の水溶性保水剤を更に含む。
【0054】
他の実施形態において、前記少なくとも1種の水溶性保水剤は、プロピレングリコール、グリセリン及びポリエチレングリコール−Xからなる群から選択され、式中Xは、200〜10,000の範囲内である。
【0055】
更に他の実施形態において、酒さの治療における局所使用のための、単一の医薬活性剤として固体状の過酸化ベンゾイルを含む本発明の組成物は、少なくとも1種の非イオン性ポリマー分散剤及び少なくとも1種の増粘剤を含むゲル形態である。
【0056】
一部の実施形態において、前記少なくとも1種の非イオン性ポリマー分散剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン−co−酢酸ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0057】
一部の更なる実施形態において、前記少なくとも1種の増粘剤は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシルエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシルメチルセルロース(HMC)、ポリアクリル酸ホモポリマー、ポリアクリル酸コポリマー、脂肪アルコール、シリカ及びその誘導体、キサンタンゴム、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ビーガム(veegum)、ラポナイト(laponite)、粘土並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0058】
他の実施形態において、前記少なくとも1種の増粘剤は、非イオン性剤である。
【0059】
更なる実施形態において、前記少なくとも1種の増粘剤は、イオン性剤である。
【0060】
他の実施形態において、前記少なくとも1種の増粘剤は、約0.01%w/w〜約10%w/wの範囲内の量で組成物に存在する。
【0061】
更なる実施形態において、前記組成物は、グリセリンを更に含む。
【0062】
他の実施形態において、前記非イオン性ポリマー分散剤は、約0.05%w/w〜約20%w/wの範囲内の量で組成物に存在する。
【0063】
一部の実施形態において、本発明の前記組成物は、前記固体BPOを含み、前記固体BPOは、放出制御薬物送達系に存在する。
【0064】
更なる実施形態において、前記放出制御又は持続放出薬物送達系は、マイクロカプセルにおける封入であり、前記固体BPOは、前記マイクロカプセルに包埋されている。
【0065】
「放出制御又は持続放出薬物送達系」について言及する場合、規定の期間にわたる所定の量の医薬活性剤の放出を可能にする送達系(本発明においては、局所送達系である)に関するものと理解されたい。一部の実施形態において、前記系は、例えば、マイクロスポンジ等のマイクロカプセル又は多孔性マトリックス構造のコアシェル系である。
【0066】
用語「包埋されている」は、組成物における医薬活性剤、即ち、BPOとその周囲の環境との間に障壁を設ける不活性系を包含しているものと理解されたい。一部の実施形態において、前記薬剤は、前記放出制御系において捕捉及び/又は封入される。
【0067】
一部の実施形態において、前記マイクロカプセルの前記コアは、前記固体BPOからなる。
【0068】
一部の更なる実施形態において、前記マイクロカプセルは、コアシェルマイクロカプセルである。シェルは、少なくとも1種の無機ポリマーを含む。一部の他の実施形態において、前記シェルの前記無機ポリマーは、金属酸化物又は半金属酸化物シェル(層)である。
【0069】
本発明の一部の実施形態において、前記マイクロカプセルは、金属酸化物又は半金属酸化物コーティング又は層(シェル)と、固体BPOからなるコアとからなる。
【0070】
一部の実施形態において、金属酸化物又は半金属酸化物コーティング又は層(シェル)と、固体BPOからなるコアとからなる前記マイクロカプセルは、
(a)固体BPO粒子状物質をイオン性添加物及び水性基剤と接触させて、表面に正電荷を有する前記粒子状物質の分散液を得るステップと、
(b)粒子状物質の表面への金属酸化物塩の沈殿を含むコーティング手順で粒子状物質を処理して、その上に金属酸化物層を形成し、これにより、金属酸化物コーティング層によってコーティングされた粒子状物質を得るステップと、
(c)ステップ(b)を少なくとも更に4回反復するステップと、
(d)前記コーティング層を時効処理(aging)するステップと
を含むプロセスによって調製される。
【0071】
本明細書において、用語「固体BPO粒子状物質」は、室温(20℃)で1%w/w未満、典型的には、0.5%未満、場合によっては、0.1%w/w未満の水溶解性を有する固体BPOを指す。
【0072】
「固体BPO粒子状物質」は、プロセスによって得られる粒子の「コア」を構成する。固体BPO粒子状物質は、一部の実施形態において、水に懸濁され得るような細区画の状態において、例えば、一部の実施形態において、0.3〜50ミクロンの範囲内のD90(後述する定義を参照)を有する微粉の形態である。このような粒子状物質は、界面活性剤使用又は不使用で撹拌することにより、水性系に容易に懸濁することができる。
【0073】
用語「固体BPO粒子状物質」及び「粒子状物質」は、同じ意味で用いられる。
【0074】
本発明において、用語「層」、「コーティング」又は「シェル」及び同様の用語は、粒子又は粒子状物質の周りに形成された金属酸化物又は半金属酸化物の層を指す。層又はコーティングは、常に完全又は均一とは限らず、必ずしも粒子状物質又は粒子表面の完全な被覆を生じない。コーティングステップの反復により、コーティングプロセスが進行するにつれ、粒子状物質のより均一なコーティング及びより完全な被覆が得られることが認められる。
【0075】
本明細書において、プロセスのステップ(a)における用語「分散液」は、水性基剤中の粒子状物質の固体分散液を指す。
【0076】
プロセスのステップ(a)は、例えば、粉砕又はホモジナイズすることにより、粒子状物質の粒子径を所望の粒子径まで低下させるサブステップを更に含むことができる。
【0077】
コア(即ち、固体BPO粒子状物質)は、いかなる形状であってもよく、例えば、棒状、板状、楕円体、立方体又は球状の形状であってもよい。
【0078】
粒子サイズの言及は、そのD90によって為され、これは、粒子の90%が、記述されている寸法又はそれ以下(体積によって測定)を有することを意味する。よって、例えば、10マイクロメータ(「ミクロン」)の直径を有すると記述されている球状粒子に関して、これは、粒子が、10ミクロンのD90を有することを意味する。D90は、レーザー回折によって測定することができる。球以外の形状を有する粒子に関して、D90は、複数の粒子の直径の平均値を指す。
【0079】
球状形を有するコアの場合、直径(D90)は、0.3〜90ミクロン、一部の実施形態においては、0.3〜50ミクロン、一部の他の実施形態においては、1〜50、一部の更なる実施形態においては、5〜30ミクロンの範囲内であってもよい。
【0080】
用語「D90は、0.3〜90ミクロンの範囲内であってもよい」とは、体積で粒子(この場合、粒子のコア)の90%が、0.3〜90ミクロンの範囲内の値以下となり得ることを意味する。
【0081】
一般に立方体形のコア又は立方体に似た形状を有するコアに関して、一辺の平均サイズは、0.3〜80ミクロン、一部の実施形態においては、0.3〜40ミクロン、一部の更なる実施形態においては、0.8〜40、一部の更なる実施形態においては、4〜15ミクロンの範囲内であってもよい。
【0082】
棒状形、楕円体形及び板状形のコアに関して、最大の(最長軸の)寸法は、典型的には、10〜100ミクロン、一部の実施形態においては、15〜50ミクロンの範囲内であり、最小の寸法は、典型的には、0.5〜20ミクロン、一部の更なる実施形態においては、2〜10ミクロンの範囲内である。
【0083】
本明細書において、他に断りがなければ、用語「粒子」は、金属酸化物又は半金属酸化物コーティングされた粒子状物質を指す。
【0084】
プロセスによって得られる粒子のいくつかは、場合によっては、固体BPO粒子状物質の本来の粒子2個以上から形成することができ、従って、場合によっては、2個以上のコアを含むことができ、このようなコアは、金属酸化物領域によって互いに分離されていることが認められる。
【0085】
粒子の総重量に基づく固体BPO粒子状物質(コア材料)の重量は、99%〜50%w/wの範囲内、一部の実施形態においては、97%〜50%w/wの範囲内であってもよい。コア材料は、結晶形態、アモルファス形態又はこれらの組み合わせであってもよい。コア材料は、美容、医薬又は農業化学活性成分であってもよい。
【0086】
一部の実施形態において、上述のプロセスのステップ(c)は、4〜約1000回反復される。これは、一部の実施形態において、上述のプロセスのステップ(b)が、4〜約1000回反復されることを意味する。
【0087】
更なる実施形態において、プロセスは、ステップ(c)を4〜約300回、一部の更なる実施形態においては、4〜約100回反復するステップを含む。一部の他の実施形態において、上述のプロセスのステップ(c)は、5〜80回、一部の実施形態においては、5〜50回反復される。これは、一部の実施形態において、ステップ(b)が、ステップ(c)に関して上述された通りに反復されることを意味する。
【0088】
用語「4〜約1000回反復される」とは、プロセスが、4、5、6、7、8、9・・・回等、最大で約1000回を含む回数反復され得ることを意味する。
【0089】
本発明の一部の実施形態において、ステップ(d)は、時効処理後に、濾過、遠心分離又はデカンテーション等により、分散している水性基剤からコーティングされた粒子状物質を分離するサブステップと、必要に応じて、得られたコーティングされた粒子状物質を水性基剤で濯いで再分散させるサブステップとを更に含む。
【0090】
一部の実施形態において、コーティングプロセスにおいて、水性基剤における粒子状物質(医薬活性剤)含量の少なくとも50%は、コーティングプロセスにおいて固体状態である。
【0091】
本発明の一部の実施形態において、プロセスは、
(a)固体BPO粒子状物質を第1のカチオン性添加物及び水性基剤と接触させて、表面に正電荷を有する前記粒子状物質の分散液を得るステップと、
(b)粒子状物質の表面への金属酸化物塩の沈殿を含むコーティング手順で粒子状物質を処理して、粒子状物質に金属酸化物コーティング層を形成するステップと、
(b1)水性基剤中に、コーティングされた粒子状物質を、(i)第2のカチオン性添加物及び(ii)非イオン性添加物のうち一方又は両方である表面接着添加物と接触させるステップと、
(b2)ステップ(b1)において得られた粒子状物質をステップ(b)と同様のコーティング手順で処理するステップと、
(c)ステップ(b1)及び(b2)を少なくとも更に3回反復するステップと、
(d)金属酸化物コーティング層を時効処理するステップと
を含む。
【0092】
一部の実施形態において、プロセスは、ステップ(c)を3〜約1000回反復するサブステップを含む。
【0093】
一部の他の実施形態において、プロセスは、ステップ(c)を3〜約300回、また更なる実施形態においては、3〜約100回反復するサブステップを含む。
【0094】
本明細書において、用語「ステップ(c)を3〜約1000回反復する」とは、プロセスが、3、4、5、6、7、8、9...回等、最大約1000回を含む回数反復され得ることを意味する。
【0095】
これは、一部の実施形態において、ステップ(b1)及び(b2)が、ステップ(c)に関して上述された通りに反復されることを意味する。
【0096】
その上、本発明の一部の実施形態において、プロセスは、
(a)固体BPO粒子状物質を、アニオン性添加物、第1のカチオン性添加物及び水性基剤と接触させて、表面に正電荷を有する前記粒子状物質の分散液を得るステップと、
(b)粒子状物質の表面への金属酸化物塩の沈殿を含むコーティング手順に粒子状物質を付して、粒子状物質に金属酸化物コーティング層を形成するステップと、
(b1)水性基剤中に、コーティングされた粒子状物質を、(i)第2のカチオン性添加物及び(ii)非イオン性添加物のうち一方又は両方である表面接着添加物と接触させるステップと、
(b2)ステップ(b1)において得られた粒子状物質を、ステップ(b)と同様のコーティング手順で処理するステップと、
(c)ステップ(b1)及び(b2)を少なくとも更に3回反復するステップと、
(d)金属酸化物コーティング層を時効処理するステップと
を含む。
【0097】
プロセスのステップ(a)において、アニオン性添加物及び第1のカチオン性添加物が用いられる場合、一部の実施形態において、アニオン性添加物は、第1のカチオン性添加物の前に添加される。
【0098】
ステップ(c)は、3〜約1000回反復され得る。一部の実施形態において、ステップ(c)は、3〜約300回、一部の他の実施形態においては、3〜約100回反復される。これは、一部の実施形態において、ステップ(b1)及び(b2)が、ステップ(c)に関して上述された通りに反復されることを意味する。
【0099】
プロセスのステップ(a)において用いられるイオン性添加物(第1のカチオン性添加物等)は、二重の効果を有する:後述する通り、粒子状物質の表面に正電荷を形成し、また、湿潤剤として機能し、これにより、個別のコア粒子として粒子状物質が分散することを可能にし、各コア粒子は、水性基剤中に個々に懸濁される。
【0100】
プロセスのステップ(a)は、例えば、(i)粒子状物質を乾燥したイオン性添加物と接触させ、続いて両者を水性基剤に懸濁して、表面に正電荷を有する前記粒子状物質の分散液を得ることによって、或いは、(ii)イオン性添加物を含む水性基剤中に固体BPO粒子状物質を懸濁して、表面に正電荷を有する前記粒子状物質の分散液を得ることによって行うことができる。
【0101】
別の実施形態において、プロセスは、(a)固体BPO粒子状物質を、(i)アニオン性添加物、(ii)第1のカチオン性添加物及びこれらの組み合わせから選択されるイオン性添加物並びに水性基剤と接触させて、表面に正電荷を有する前記粒子状物質の分散液を得るステップを含むことができ、(b)、(b1)、(b2)、(c)、(d)は、本明細書に記載されている通りのものである。
【0102】
分散液中のイオン性添加物の濃度は、約0.001%〜約30%、一部の実施形態においては、約0.01%〜約10%w/w、一部の他の実施形態においては、約0.1%〜最大約5%w/wであってもよい。
【0103】
水分散液の固体含量は、約0.1%〜約80%w/w、一部の実施形態においては、約1%〜約60%w/w、一部の更なる実施形態においては、約3%〜約50%w/wであってもよい。
【0104】
ステップ(a)の目的は、金属酸化物層の付着に対して反応性が付与されるように、イオン性添加物を用いて粒子状物質の電荷を改変することである。
【0105】
粒子のコア材料を調製するために、粒子状物質は、沈殿した金属酸化物塩に付着できるように、イオン性添加物(例えば、カチオン性添加物)で適宜コーティングされるべきである。
【0106】
一部の実施形態において、イオン性添加物は、カチオン性添加物、アニオン性添加物及びこれらの組み合わせから選択される。カチオン性添加物は、カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーであってもよい。アニオン性添加物は、アニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性ポリマーであってもよい。
【0107】
例えば粒子状物質をカチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマー又はアニオン性界面活性剤及びカチオン性添加物(例えば、カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマー)の溶液と混合することにより、粒子状物質をイオン性添加物と接触させる。カチオン性及びアニオン性界面活性剤は、粒子状物質の表面に吸着される場合に特に有効である。イオン性添加物は、カチオン性添加物と組み合わせて用いられるアニオン性ポリマーであってもよい。カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーと、必要に応じて更にアニオン性界面活性剤(又はアニオン性ポリマー)は、粒子状物質の表面に正電荷をもたらすのに十分な量で用いる必要がある。コーティングは、必ずしも連続していなくてもよい。少なくともカチオン性添加物のスポットが存在すれば十分である。そのような場合、これらのスポットは、金属酸化物層の付着のための繋留部として機能すると予想される。一部の実施形態において、金属酸化物層が構築される際に、これを架橋してコアに堅固に付着させられるように、コア表面にこれらの繋留ポイントが均一に分布している。
【0108】
一部の実施形態において、前記第1及び前記第2のカチオン性添加物は同じものである。
【0109】
別の実施形態において、前記第1及び前記第2のカチオン性添加物は、異なるものである。
【0110】
一部の他の実施形態において、第1のイオン性添加物は、アニオン性界面活性剤であり、第2のイオン性添加物は、カチオン性ポリマーである。一部の更なる実施形態において、第1のカチオン性添加物は、カチオン性界面活性剤であり、第2のカチオン性添加物は、カチオン性ポリマーである。
【0111】
更なる実施形態において、第1のカチオン性添加物は、カチオン性界面活性剤であり、ステップ(b1)における添加物は、非イオン性添加物(例えば、非イオン性ポリマー)である。
【0112】
一部の更なる実施形態において、コーティングされた粒子状物質及び第2のカチオン性添加物は、混合され、最も好ましい前記混合は、激しい撹拌(例えば、1000rpmを上回る撹拌機スピード)によるものである。
【0113】
本発明の好ましい実施形態において、プロセスは、ステップ(d)の後に次のステップ:(e)水性基剤からコーティングされた粒子状物質を分離し、必要に応じて、コーティングされた粒子状物質を水性基剤で濯いで再分散させるステップを更に含む。
【0114】
一部の実施形態において、コーティングされた粒子状物質の分離は、濾過、遠心分離、デカンテーション、透析又は水性基剤の蒸発等の方法によって行われる。
【0115】
その上、本発明の好ましい実施形態において、ステップ(b)は、金属酸化物塩を水性基剤に添加するサブステップと、必要に応じて、水性基剤を酸性化するサブステップとを含む。
【0116】
更に、本発明の一部の実施形態において、ステップ(b2)は、金属酸化物塩を水性基剤に添加するサブステップと、必要に応じて、水性基剤を酸性化するサブステップとを含む。
【0117】
一部の実施形態において、ステップ(b1)は、(b)において得られた分散液のpHを、第2のカチオン性添加物を添加する前に、金属酸化物の等電点よりも高い値へと、一部の更なる実施形態においては、第2のカチオン性添加物を添加する前に、金属酸化物の等電点よりも少なくとも約1単位高いpH値へと調整するサブステップを更に含む。
【0118】
一部の実施形態において、ステップ(b1)は、(b)において得られた分散液のpHを、(i)第2のカチオン性添加物及び(ii)非イオン性添加物のうち一方又は両方を添加する前に、金属酸化物の等電点よりも高い値へと、一部の実施形態においては、(i)第2のカチオン性添加物及び(ii)非イオン性添加物のうち一方又は両方を添加する前に、金属酸化物の等電点よりも少なくとも約1単位高いpH値へと調整するサブステップを更に含む。
【0119】
例えば、金属酸化物がシリカ(例えば、1.7〜2.5の範囲内の等電点を有する)である場合、好ましいpHは、少なくとも約2.5〜6.5の範囲内であってもよい。
【0120】
金属酸化物の等電点よりも高い値へと分散液のpHを調整する目的は、粒子状物質表面に負の電荷を持つ金属酸化物を形成することであり、これは、第2のカチオン性添加物の正電荷に結合し、よって、粒子状物質の表面への第2のカチオン性添加物の付着を可能にすると予想される。
【0121】
非イオン性添加物は、表面に接着するものの一種である(「表面接着性」)。その一例は、非イオン性ポリマーである。非イオン性添加物は、単独で、或いは第2のカチオン性界面活性剤に加えて用いることができる。理論に制約されることは望まないが、表面接着特性は、ヒドロキシル又はアミン基等、水素結合基を介することができる。これは、先に沈殿させた金属酸化物層への金属酸化物の更なる別の層の接着を可能にする。
【0122】
一部の実施形態において、ステップ(b)又は(b2)のそれぞれにおける粒子状物質/金属酸化物塩の重量比は、約5,000/1〜約20/1であり、一部の実施形態においては、約5,000/1〜約30/1又は約5,000/1〜約40/1であり、一部の更なる実施形態においては、約1,000/1〜約40/1であり、また一部の更なる実施形態においては、約500/1〜約80/1である。
【0123】
一部の実施形態において、ステップ(b1)における粒子状物質/カチオン性添加物の比は、約25,000/1〜約50/1であり、好ましくは、約5,000/1〜約100/1であり、最も好ましくは、約2000/1〜約200/1である。
【0124】
一部の実施形態において、ステップ(b)又は(b2)のそれぞれにおける粒子状物質/金属酸化物塩の重量比は、約5,000/1〜約65/1であり、一部の更なる実施形態においては、約1000/1〜約100/1である。
【0125】
一部の実施形態において、ステップ(b1)における粒子状物質/カチオン性添加物の重量比は、約10,000/1〜約100/1であり、一部の更なる実施形態においては、約5000/1〜約200/1である。
【0126】
ステップ(d)における時効処理は、強化された高密度の金属酸化物層を得るために重要である。
【0127】
一部の実施形態において、ステップ(d)は、3〜9の範囲内の値までpHを上げて、そのpHで懸濁液を混合するサブステップを含む。
【0128】
本発明の好ましい実施形態において、ステップ(d)は、3〜9の範囲内の値までpHを上げて、少なくとも2時間の期間、そのpHで懸濁液を混合するサブステップを含む。
【0129】
本発明の一部の実施形態において、ステップ(d)は、3〜9の範囲内、一部の更なる実施形態においては、5〜7の範囲内の値までpHを上げて、例えば、撹拌することにより、例えば、少なくとも2時間(2h)の期間、そのpH範囲で懸濁液(分散液)を混合するサブステップを含む。一部の実施形態において、撹拌は、2〜96時間、一部の実施形態においては、2〜72時間、一部の他の実施形態においては、少なくとも10時間(例えば、10〜72時間)行われる。一部の実施形態において、撹拌は、穏やかな撹拌であり、一部の実施形態においては、200〜500rpmの範囲内である。
【0130】
時効処理が完了したら、分離(例えば、濾過、遠心分離又はデカンテーション)は、容易に行うことができ(形成された硬い金属酸化物層により)、得られたケーキ(cake)又は濃縮された分散液は、水性基剤中に容易に再分散して、粒子の分散液を形成することができよう。
【0131】
ステップ(d)における時効処理の目的は、強化されたより高密度の金属酸化物層を得ることである。
【0132】
沈殿による金属酸化物塩は、分離及び洗浄又は機械的撹拌により崩壊又は侵食され得る金属酸化物のゲル層を形成するため、時効処理ステップの非存在下において、より薄くより柔らかい金属酸化物層が得られると予想される。
【0133】
時効処理は、4〜90℃、一部の実施形態においては、15〜60℃の温度で行うことができ、更なる実施形態においては、時効処理は、20℃〜40℃の温度で行われる。
【0134】
よって、プロセス終了時でのコーティング及び時効処理の反復ステップは、より厚くより強い金属酸化物層の成長も可能にする。一部の実施形態において、時効処理は、反復コーティングステップの間(即ち、反復コーティングステップ(b)の間)に行われないが、プロセス終了時にのみ行われる。よって、一部の実施形態において、時効処理は、本明細書に記載されているプロセス終了時にのみ行われる。
【0135】
ある特定の実施形態において、プロセスは、コーティング手順において、コロイド性金属酸化物懸濁液、一部の実施形態においては、水性ベースの懸濁液(ナノメートルレベルの金属酸化物(金属酸化物のナノ粒子)を含む)を添加するステップを更に含むことができる。一部の実施形態において、コロイド性金属酸化物懸濁液は、コロイド性シリカ懸濁液、コロイド性チタニア懸濁液、コロイド性アルミナ懸濁液、コロイド性ジルコニア懸濁液、コロイド性ZnO懸濁液及びこれらの混合物から選択される。コロイド性金属酸化物懸濁液は、コーティングプロセス(例えば、その反復ステップの1回又は複数回のステップ(b)における)において添加することができる。一部の他の実施形態において、ナノメートルレベルの金属酸化物の直径のサイズは、5〜100nm(平均粒子径の直径)の範囲内である。ナノメートルレベルの金属酸化物対金属酸化物塩の重量比は、95:5〜1:99、一部の実施形態においては、80:20〜5:95、一部の他の実施形態においては、70:30〜10:90、更に他の実施形態においては、約60:40〜20:80の範囲内であってもよい。ナノメートルレベルの金属酸化物対金属酸化物塩の重量比は、約50:50であってもよい。
【0136】
他の実施形態において、プロセスは、コーティングプロセスにおけるコロイド性金属酸化物懸濁液の添加を含まない。本実施形態において、ナノメートルレベルの金属酸化物粒子(金属酸化物のナノ粒子)は、コーティングプロセスにおいて添加されない。
【0137】
本明細書において、用語「金属酸化物コーティング層」又は「金属酸化物層」は、単一加工ステップの生成物と、最初にコーティングされた粒子が上述のステップ(c)の反復加工ステップによって更に加工されるプロセスの生成物との両方を包含する。
【0138】
本開示を理解し、実際に実施する方式を理解するために、次に、添付の図面を参照しつつ、単なる非限定的な例として実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
図1】12週間の期間にわたる、媒体単独と比較した、本発明のBPO組成物(例1に記載されている1%及び5%封入BPO)の時間毎の平均IGAを示すグラフである。
図2】12週間の期間にわたる、媒体単独と比較した、本発明のBPO組成物(例1に記載されている1%及び5%封入BPO)の時間毎の平均炎症性病変数を示すグラフである。
図3】60分間の期間にわたる、本発明の組成物(例3に従って作製された5%E−BPO)並びにBenzac(登録商標)AC 5%BPO及びNeoBenz(登録商標)Micro 5.5%のBPOの溶解速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0140】
(例1)
BPOの封入
ステップ1:粉砕:110gの含水BPO 75%(Sigma製USPグレード)を、0.001%シリコン消泡剤を含有する152gの0.4%CTAC溶液に懸濁した。固定子ローター撹拌機(Kinematika polytron 6100、15,000rpm/25m/sにて操作)を用いてBPOを粉砕した。懸濁液の粒子径分布(PSD)がd(0.9)<35μmになったら、或いは温度が50℃に達したら、粉砕を停止した。最終懸濁液を室温まで冷却した。
【0141】
ステップ2a:コーティングのオプション番号1:コーティング手順において、機械的溶解機、80mmにより、常に500RPMにて懸濁液を撹拌した。NaOH 5N溶液を用いて、粉砕したBPO懸濁液のpHを8に補正した。1gの15%ケイ酸ナトリウム溶液(15%w/w、SiOとして)の一部を添加し、懸濁液を5分間撹拌した。1gの3%ポリクオタニウム7の一部を添加し、懸濁液を5分間撹拌した。5N HCl溶液を用いてpHを6〜7に調整した。
【0142】
BPOの周りに異なる厚さを有する一連のシリカ層を作製するために、この手順を5〜100回反復した。
【0143】
ステップ2b:コーティングのオプション番号2:コーティング手順において、機械的溶解機、80mmにより、常に500RPMにて懸濁液を撹拌した。NaOH 5N溶液を用いて、粉砕したBPO懸濁液のpHを8に補正した。2.5gの15%ケイ酸ナトリウム溶液(15%w/w、SiOとして)の一部を添加し、懸濁液を5分間撹拌した。2.5gの3%ポリクオタニウム7の一部を添加し、懸濁液を5分間撹拌した。5N HCl溶液を用いてpHを6〜7に調整した。
【0144】
BPOの周りに異なる厚さを有する一連のシリカ層を作製するために、この手順を5〜100回反復した。
【0145】
時効処理ステップ:pH6.5のコーティングしたBPO懸濁液を、時効処理のために室温(25℃+/−2)にて穏やかな揺動下、24時間維持した。
【0146】
(例2)
封入されたBPO(15%E−BPO水懸濁液)の調製
a)過酸化ベンゾイル分散液及び酸カクテルの調製
125.67グラムのCTAC CT−429(塩化セトリモニウム30%)、3008グラムの含水過酸化ベンゾイル及び5200グラムの水を高剪断下で混合することにより、過酸化ベンゾイル(BPO)分散液を調製した。60分間33℃(45℃以下)で分散液をホモジナイズし、続いて水酸化ナトリウム溶液(20%)を用いて分散液のpHを7.0に調整した。
【0147】
493グラムの塩酸(37%)、98グラムの無水クエン酸、147グラムの乳酸(90%)及び794グラムの水を用いて酸カクテルを調製した。
【0148】
b)コーティングサイクル
38グラムのケイ酸ナトリウム溶液、超高純度(28%)を高剪断下でステップa)において調製した過酸化ベンゾイル分散液に添加し、続いて、ステップ(a)において調製した酸カクテルを添加して、6.8よりも低くなるようpHを調整し、続いて、57グラムのPDAC(3%)溶液を混合物に添加することにより、コーティングサイクルを開始した。混合物を高剪断下で17時間撹拌しつつ、このサイクルを50回反復した。50サイクル終えた後に、酸カクテルを用いて混合物のpHを5.0に調整し、混合物の総重量が15キログラムに完成するまで水を添加した。最終BPO水懸濁液生成物の組成を表1に示す。
【表1】
【0149】
(例3)
封入されたBPO(5%)ゲルの製剤(製剤I)の調製
油相:720.0グラムのシクロメチコン5−N、540.0グラムのセチルアルコール、360.0グラムのステアリン酸ポリオキシル100及び540.0グラムのモノステアリン酸グリセリルを70℃で混合した。
【0150】
水相:18.0グラムのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を6500グラムの水に溶解した。720.0グラムのグリセリン(99.5%)をこの溶液に添加した。溶液を70℃まで加熱した後、72.0グラムのCarbopol 980 NFを添加し、得られた混合物を3300rpmで10分間ホモジナイズして、確実に全材料を完全に融解及び溶解させた。次に、76.5グラムの水酸化ナトリウム(20%)を添加し、混合物を高剪断下で10分間、70℃以上で撹拌した。
【0151】
油相を水相に高剪断下で78℃にて添加し、得られたエマルションを3300rpmで10分間ホモジナイズした。72.0グラムのクエン酸及び例2に記載されている通りに作製された6,000グラムの封入されたBPO 15%水懸濁液を混合した。得られた混合物をエマルションに65℃で添加し、1400rpmで10分間混合した。エマルションを35℃まで冷却し、HCl 5N溶液を用いてエマルションのpHを4.0に調整した。エマルションを1400rpmで10分間撹拌し、続いてエマルションの総重量が18キログラムに達するまで水を添加した。本例において調製された製剤の組成を表2に示す。
【表2】
【0152】
(例4)
封入されたBPO水懸濁液のプラセボの調製
a)プラセボ分散液及び酸カクテルの調製
125.67グラムのCTAC CT−429(塩化セトリモニウム30%)及び5200グラムを混合することによりプラセボ分散液を調製し、続いて水酸化ナトリウム溶液(20%)を用いて溶液のpHを7.0に調整した。
【0153】
493グラムの塩酸(37%)、98グラムの無水クエン酸、147グラムの乳酸(90%)及び794グラムの水を用いて酸カクテルを調製した。
【0154】
b)コーティングサイクル
38グラムのケイ酸ナトリウム溶液、超高純度(28%)を高剪断下でステップa)において調製したプラセボ溶液に添加し、続いて、ステップ(a)において調製した酸カクテルを添加して、6.8よりも低くなるようpHを調整し、続いて、57グラムのPDAC(3%)溶液を混合物に添加することにより、コーティングサイクルを開始した。混合物を高剪断下で17時間撹拌しつつ、サイクルを50回反復した。50サイクル終えた後に、酸カクテルを用いて混合物のpHを5.0に調整し、混合物の総重量が15キログラムに完成するまで水を添加した。最終プラセボ水懸濁液生成物の組成を表3に示す。
【表3】
【0155】
(例5)
封入されたBPOゲルの媒体の製剤(製剤II)の調製
油相:720.0グラムのシクロメチコン5−N、540.0グラムのセチルアルコール、360.0グラムのステアリン酸ポリオキシル100及び540.0グラムのモノステアリン酸グリセリルを70℃で混合した。
【0156】
水相:18.0グラムのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を6500グラムの水に溶解した。720.0グラムのグリセリン(99.5%)をこの溶液に添加した。溶液を70℃まで加熱した後、72.0グラムのCarbopol 980 NFを添加し、得られた混合物を3300rpmで10分間ホモジナイズして、確実に全材料を完全に融解及び溶解させた。次に、76.5グラムの水酸化ナトリウム(20%)を添加し、混合物を高剪断下で10分間、70℃以上で撹拌した。
【0157】
油相を水相に高剪断下で78℃にて添加し、得られたエマルションを3300rpmで10分間ホモジナイズした。72.0グラムのクエン酸及び例4に記載されている通りに作製された6,000グラムの封入されたBPO水懸濁液のプラセボを混合した。得られた混合物をエマルションに65℃で添加し、1400rpmで10分間混合した。エマルションを35℃まで冷却し、HCl 5N溶液を用いてエマルションのpHを4.0に調整した。エマルションを1400rpmで10分間撹拌し、続いてエマルションの総重量が18キログラムに達するまで水を添加した。本例において調製された製剤の組成を表4に示す。
【表4】
【0158】
(例6)
封入されたBPO(1%)ゲルの製剤(製剤III)の調製
油相:720.0グラムのシクロメチコン5−N、540.0グラムのセチルアルコール、360.0グラムのステアリン酸ポリオキシル100及び540.0グラムのモノステアリン酸グリセリルを70℃で混合した。
【0159】
水相:18.0グラムのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を6500グラムの水に溶解した。720.0グラムのグリセリン(99.5%)をこの溶液に添加した。溶液を70℃まで加熱した後、72.0グラムのCarbopol 980 NFを添加し、得られた混合物を3300rpmで10分間ホモジナイズして、確実に全材料を完全に融解及び溶解させた。次に、76.5グラムの水酸化ナトリウム(20%)を添加し、混合物を高剪断下で10分間、70℃以上で撹拌した。
【0160】
油相を水相に高剪断下で78℃にて添加し、得られたエマルションを3300rpmで10分間ホモジナイズした。72.0グラムのクエン酸、例2に記載されている通りに作製された1200グラムの封入されたBPO 15%水懸濁液及び例4に記載されている4800グラムの封入されたBPO水懸濁液のプラセボを混合した。得られた混合物をエマルションに65℃で添加し、1400rpmで10分間混合した。エマルションを35℃まで冷却し、HCl 5N溶液を用いてエマルションのpHを4.0に調整した。エマルションを1400rpmで10分間撹拌し、続いてエマルションの総重量が18キログラムに達するまで水を添加した。本例において調製された製剤の組成を表5に示す。
【表5】
【0161】
(例7)
本発明の組成物におけるBPOの有効性試験
多施設、二重盲検、無作為化、媒体対照、用量範囲試験を行った。試験期間は、12週間であり、軽症から重症の顔面酒さ患者に対し、封入された過酸化ベンゾイルゲル、1%(例6に記載)及び5%(例3に記載)並びに媒体ゲル(例5に記載)を1日1回用いた。
【0162】
総計92名の対象を、5%E−BPOゲル、1%E BPOゲル又は媒体ゲルに対し1:1:1の比率で無作為に割り付けた。
【0163】
治験責任医師は、スクリーニング時、ベースライン時、並びに4週目、8週目及び12週目(試験終了)に、医師による包括的評価(Investigator Global Assessment)(IGA)及び炎症性病変(丘疹及び膿疱)の計数を行った。
【0164】
有効性の評定:
試験生成物の最初の適用は、治験施設(investigational site)において、ベースライン来診の終わりに(0日目)、任命された治験施設スタッフの監督及び指導の下に適用した。治験責任医師は、スクリーニング時、ベースライン時、並びに4週目、8週目及び12週目(試験終了)に、医師による包括的評価(IGA)及び炎症性病変(丘疹及び膿疱)の計数を行い、ベースライン時、並びに4週目、8週目及び12週目(試験終了)に、紅斑及び毛細血管拡張症評価を行った。評定者は、ベースライン時、並びに2週目、4週目、8週目及び12週目(試験終了)に、局所適用部位刺激作用(乾燥、落屑性、そう痒、刺痛及び灼熱感)も評価した。選択された治験施設(単数又は複数)において、ベースライン時、並びに8及び12週目(試験終了)に、顔面酒さの標準化された写真も撮った。全来診時に有害事象(AE)に関する情報を収集した。
【0165】
有効性エンドポイントは以下の通りである:12週目のIGAがクリア又はほぼクリアな、12週目における、ベースラインと比べたIGAにおける2グレードの改善として定義される、成功の主要尺度を有する対象の比率。12週目における炎症性病変数の変化。
【0166】
結果:
ベースライン特徴:ベースライン特徴は、IGA及び毛細血管拡張症に関して、処置群間で同様であった。炎症性病変数の中央値は、処置群間で同様であったが、平均炎症性病変数は、1%E−BPOゲルが5%E−BPOゲルよりも、また、1%E−BPOゲル及び5%E−BPOゲルが媒体ゲルよりも数値的により高く、1%E−BPOゲルにおいて5%E−BPOゲルよりも、また、1%E−BPOゲル及び5%E−BPOゲルにおいて媒体ゲルよりも数値的により高い比率の対象が、ベースラインにおいて重症炎症性病変紅斑を有した。1%E−BPOゲル及び5%E−BPOゲルにおいて、媒体ゲルよりも数値的により高い比率の対象が、重症酒さ紅斑を有した。
【0167】
主要有効性解析
主要有効性エンドポイント:
成功の主要尺度(12週目のIGAがクリア又はほぼクリアな、12週目におけるベースラインと比べたIGAにおける2グレードの改善として定義される)を示す対象の比率は、媒体ゲルが20.0%(6/30)、1%E−BPOゲルが37.5%(12/32)、5%E−BPOゲルが53.3%(16/30)であった。平均IGAにおける改善は、図1に説明されている。
【0168】
第2の成功の主要尺度(12週目におけるベースラインからの平均炎症性病変数パーセント変化として定義)を有する対象の比率は、媒体ゲルが約30.0%、1%E−BPOゲル及び5%E−BPOゲルが60%超であった。炎症性病変数における改善は、図2に説明されている。
【0169】
(例8)
本発明の組成物からのBPOの溶解速度の測定
試料の秤量
40mgのBPOに等しい量におけるそのBPO含量に従って試料を秤量した。試料の重量の例を下表に示す。
【表6】
【0170】
試料の調製及び測定手順
250mLエルレンマイヤーフラスコにおいて試料を秤量し、200mLの「基剤」を添加し、3.0cmの長さの磁気棒を入れ、フラスコを撹拌機の上に置き、400rpmにおける撹拌を開始した。規定の時間間隔で2mLを取り除き、0.2μm GHP Acrodiscシリンジフィルターを通して濾過した(最初の1mLは廃棄)。各時間間隔(C)において溶解したBPOの濃度(%w/w単位)を計算した。
【0171】
550mLの水を450mLのアセトニトリルと混合することにより、「基剤」を調製し、次にこれを外界温度まで平衡化した。
【0172】
次式に従って溶解速度を測定した:
溶解速度(%)=(C/C)*100%
【0173】
本発明の組成物におけるBPOの溶解速度
例3に従って作製された5%E−BPOを含む本発明の組成物の溶解速度を、Benzac(登録商標)AC 5%BPO及びNeoBenz(登録商標)Micro 5.5%の溶解と比較した。図3に示す結果から分かる通り、本発明の組成物の溶解速度は、上述の市販の製品の溶解よりもはるかに低かった。
図1
図2
図3