(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態に係るロータ、モータ、及び圧縮機を添付図面を参照して説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の圧縮機を鉛直面で切ったときの断面図を模式的に示す。
【0021】
圧縮機1は、密閉容器2と、この密閉容器2内に配置された圧縮機構部3と、密閉容器2内に配置され、圧縮機構部3をシャフト4を介して駆動するモータ5とを備える。この圧縮機1は、例えば空気調和機に使用可能である。
【0022】
圧縮機1は、いわゆる縦型の高圧ドーム型のロータリ圧縮機であって、密閉容器2内の下側に圧縮機構部3を配置し、その圧縮機構部3の上側にモータ5を配置している。このモータ5のロータ10によってシャフト4を介して圧縮機構部3を駆動するようにしている。シャフト4は、本開示に係る回転軸の一例である。
【0023】
圧縮機構部3は、圧縮機1が空気調和機に使用されるとき、アキュムレータ6から吸入管7を通して冷媒ガスを吸入する。この冷媒ガスは、冷凍システムの一例としての空気調和機を構成する図示しない凝縮器、膨張機構、及び蒸発器を圧縮機1と共に制御することによって得られる。
【0024】
また、圧縮機1は、圧縮した高温高圧の冷媒ガスを、圧縮機構部3から吐出して密閉容器2の内部に満たす。この冷媒ガスは、モータ5のロータ10とステータ20との間の隙間などを通って、モータ5の上側に設けられた吐出管8から外部に吐出するようになっている。また、密閉容器2内の高圧領域の下部には、潤滑油が溜められた油溜まり部9が形成されている。
【0025】
圧縮機構部3は、密閉容器2の内面に取り付けられるシリンダ3aと、このシリンダ3aの上下の開口端のそれぞれに取り付けられている上側の端板部材3bおよび下側の端板部材3cとを備える。シリンダ3aと上側の端板部材3bと下側の端板部材3cによって、シリンダ室3dを形成する。
【0026】
図2は、本実施形態に係るモータをモータの軸方向から見た図である。
【0027】
図2を参照すると、本実施形態のモータ5は、いわゆる6極9スロットのインナーロータ型である。モータ5は、ロータ10と、ロータ10の外周面を囲むように配置されたステータ20とを備える。ステータ20と、ロータ10との間には、ロータ10の周方向において不均一なエアギャップ(いわゆる不等ギャップ)が設けられている。また、ロータ10とステータ20とは、ロータ10の中心とステータ20の中心とが一致するように、配置されている。
【0028】
ステータ20は、ステータコア21と、ステータコア21の後述するティース部23に巻回されたステータコイル(図示せず)とを備える。上記ステータコイルに電流を流したとき、ステータ20に発生する電磁力によって、ロータ10がシャフト4(
図1に示す)とともに回転する。
【0029】
本実施形態のステータコア21は、環状のヨーク部22と、ヨーク部22の内周面からステータコア21の半径方向内側に突出する9つのティース部23とを有する。
【0030】
ティース部23は、ステータコア21の周方向に沿って等間隔に配置されている。具体的には、ティース部23は、ステータコア21の軸心を中心として、ステータコア21の周方向に沿って40度間隔で配置されている。言い換えれば、9つのティース部23は、ステータコア21の軸心に対して9回対称となる位置に配置されている。また、ティース部23は、ヨーク部22の内周面からステータコア21の軸心に向かって延びている。
【0031】
また、ステータコア21の周方向に隣接する2つのティース部23の間には、スロット24が形成されている。言い換えれば、ステータコア21は、ステータコア21の周方向に沿って等間隔に配置された9つのスロット24を備える。具体的には、スロット24は、軸心を中心としてステータコア21の周方向に40度間隔で配置されている。すなわち、9つのスロット24は、ステータコア21の軸心に対して9回対称となる位置に配置されている。
【0032】
図3は、本実施形態に係るロータ10をロータ10の軸方向から見た図である。
【0033】
ロータ10は、円柱状のロータコア11と、ロータコア11の6つの磁石挿通孔15(後述する)にそれぞれ挿入された6つの永久磁石30とを備える。
【0034】
本実施形態のロータコア11は、軸孔12と、6つの通風孔13と、6つのリベット孔14と、6つの磁石挿通孔15とを備える。軸孔12と、通風孔13と、リベット孔14と、磁石挿通孔15とは、ロータコア11の軸方向にロータコア11を貫通している。
【0035】
軸孔12は、ロータコア11の中心部分に設けられている。また、軸孔12は、モータ5のシャフト4(
図1に示す)を挿入できるように構成されている。
【0036】
通風孔13は、ロータコア11の周方向に沿って等間隔に配置されている。具体的には、通風孔13は、ロータコア11の軸心O1を中心として、ロータコア11の周方向に沿って60度間隔で設けられている。言い換えれば、6つの通風孔13は、ロータコア11の軸心O1に対して6回対称となる位置に配置されている。
【0037】
リベット孔14は、ロータコア11の周方向に沿って等間隔に配置されている。具体的には、リベット孔14は、ロータコア11の軸心O1を中心として、ロータコア11の周方向に沿って60度間隔で設けられている。言い換えれば、6つのリベット孔14は、ロータコア11の軸心O1に対して6回対称となる位置に配置されている。リベット孔14は、リベット(図示せず)を挿入できるように構成されている。
【0038】
磁石挿通孔15は、ロータコア11の軸方向から見て、ロータコア11の半径方向と直交するように延びる略長方形状であり、永久磁石30を挿入できるように構成されている。磁石挿通孔15は、通風孔13に対してロータコア11の半径方向の外側に設けられ、ロータコア11の周方向に沿って等間隔に配置されている。具体的には、磁石挿通孔15は、ロータコア11の軸心O1を中心として、ロータコア11の周方向に沿って60度間隔で配置されている。言い換えれば、6つの磁石挿通孔15は、ロータコア11の軸心O1に対して6回対称となる位置に配置されている。磁石挿通孔15は、ロータコア11の軸方向から見て、六角形を描くように設けられている。
【0039】
また、磁石挿通孔15は、延在方向の両端部において、永久磁石30の磁束の短絡を防止する磁束短絡防止部15aを備える。磁束短絡防止部15aは、磁石挿通孔15内において、永久磁石30が配置されていない空間である。
【0040】
永久磁石30は、ロータコア11の軸方向から見て長方形状であり、磁石挿通孔15に挿通されている。永久磁石30は、ロータコア11の周方向に沿って等間隔に配置されている。具体的には、永久磁石30は、ロータコア11の軸心O1を中心として、ロータコア11の周方向に沿って60度間隔で配置されている。言い換えれば、6つの永久磁石30は、ロータコア11の軸心O1に対して6回対称となる位置に配置されている。永久磁石30は、磁石挿通孔15に挿通されていることで、ロータコア11の軸方向から見て、六角形を描くように設けられている。
【0041】
また、ロータコア11は、永久磁石30の長手方向の中点と、ロータコア11の軸心O1とを結ぶ線に相当するd軸を有する。d軸は、ロータコア11の軸方向から見て、永久磁石30を二等分する線である。また、d軸が延びる方向は、磁束が流れ難い方向である。d軸は、後述するq軸に対して機械角で30degをなす方向に延びている。
【0042】
また、ロータコア11は、ロータコア11の周方向に隣接する2つの磁石挿通孔15の互いに対向する端部の間の中点と、ロータコア11の軸心O1とを結ぶ線に相当するq軸を有する。q軸が延びる方向は、磁束が流れやすい方向である。前述したように、q軸は、d軸に対して機械角で30degをなす方向に延びている。
【0043】
(ロータコアの外形形状)
以下、本実施形態に係るロータコア11の1極分の外形形状を説明する。
図4は、本実施形態に係るモータ5の要部拡大図である。
図4では、軸孔12、通風孔13、リベット孔14は省略している。
【0044】
図4を参照すると、本実施形態のロータコア11は、d軸と交差するように設けられた第1円弧部40と、q軸と直交するように設けられた直線部41と、第1円弧部40と直線部41とを接続する湾曲部42とを備える。直線部41と湾曲部42とは、第1円弧部40を一部に含む仮想円VC1よりも半径方向の内側に配置されている。
【0045】
第1円弧部40は、ロータコア11の軸心O1を中心とする曲率半径CR1の円弧状である。また、第1円弧部40は、第1円弧部40の周方向の中央においてd軸と交差している。第1円弧部40は、永久磁石30に対してロータコア11の半径方向の外側に配置されている。
【0046】
ロータ10とステータ20との間のエアギャップGは、第1円弧部40において、一定かつ最小である。
【0047】
直線部41は、直線状であり、直線部41の延在方向の中央でq軸と直交するように延びる。また、直線部41は、磁石挿通孔15の磁束短絡防止部15aに対してロータコア11の半径方向外側に配置されている。ロータコア11の軸方向から見たとき、直線部41の延在方向は、ロータコア11の半径方向と直交する。
【0048】
また、前述したように、直線部41は、第1円弧部40を一部に含む仮想円VC1よりも半径方向の内側に配置されている。言い換えれば、ロータコア11の軸心O1と直線部41の延在方向の中央との間の距離dは、第1円弧部40の曲率半径CR1よりも小さい。具体的には、ロータ10の回転時の流体抵抗(攪拌損失)の観点から、ロータコア11の軸心O1と直線部41の延在方向の中央との間の距離dは、第1円弧部40の曲率半径CR1の0.97倍以上であれば好ましい。これにより、ロータコア11の外形形状は、直線部41において、ロータコア11の半径方向の内側に凹んだ形状になっている。なお、例えば空気調和機の圧縮機にモータ5を用いた場合、冷媒、霧状の潤滑油などを含む流体と、ロータコア11との間に生じる抵抗が、上記流体抵抗に相当する。
【0049】
ロータ10とステータ20との間のエアギャップGは、直線部41において、直線部41の延在方向の両端部から中央に向かって次第に広がっており、直線部41の延在方向の中央において最大となる。
【0050】
本実施形態の湾曲部42は、ロータコア11の半径方向の外側に膨出した曲率半径CR2(
図5に示す)の円弧状である第2円弧部43からなる。第2円弧部43の曲率半径CR2は、第1円弧部40の曲率半径CR1よりも小さい。湾曲部42は、第1円弧部40を一部に含む仮想円VC1の半径方向の内側に配置されている。
【0051】
ロータ10とステータ20との間のエアギャップGは、湾曲部42の第2円弧部43において、第1円弧部40側から直線部41側に向かって、次第に広がっている。
【0052】
前述したように、ロータ10とステータ20との間のエアギャップGは、第1円弧部40において最小且つ一定であり、湾曲部42の第2円弧部43及び直線部41において次第に広がり、直線部41の中央において最大となる。湾曲部42の第2円弧部43におけるエアギャップGの変化量は、直線部41におけるエアギャップGの変化量よりも大きい。言い換えれば、エアギャップGは、直線部41において、湾曲部42の第2円弧部43よりも緩やかに広がる。
【0053】
図5は、本実施形態に係るロータコア11の外形形状を示す模式的な図である。
図5では、ロータコア11の軸孔12、通風孔13、リベット孔14、及び磁石挿通孔15の図示を省略している。
【0054】
図5を参照すると、第2円弧部43は、中心点O2を中心とする円弧状である。中心点O2は、第1円弧部40の端点40aとロータコア11の軸心O1を結ぶ線L1と、直線部41の端点41aを通り、直線部41の延在方向と直交する方向に延びる直線L2との交点である。第2円弧部43の中心点O2をこのように設定することで、第2円弧部43は、第1円弧部40と直線部41とを滑らかに接続する。また、第2円弧部43の中心点O2をこのように設定することで、第2円弧部43の曲率半径CR2は、第1円弧部40の曲率半径CR1よりも小さくなっている。
【0055】
ロータコア11の軸心O1から見て、第1円弧部40の角度範囲θ1は、直線部41の角度範囲θ2よりも小さい。また、ロータコア11の軸心O1から見て、湾曲部42の角度範囲θ3は、直線部41の角度範囲θ2より大きい。すなわち、第1円弧部40の角度範囲θ1と、直線部41の角度範囲θ2と、湾曲部42の角度範囲θ3との間には、θ3>θ2>θ1の関係が成り立っている。
【0056】
本実施形態の第1円弧部40と第2円弧部43とは、直接接続されている。具体的には、第1円弧部40は、第1円弧部40の端点40aで第2円弧部43と接続されており、第2円弧部43は、第2円弧部43の第1円弧部40側の端点43aで第1円弧部40と接続されている。
【0057】
また、第1円弧部40と第2円弧部43とは、滑らかに接続されている。具体的には、第1円弧部40の第2円弧部43と接続された端点40aにおける第1円弧部40の接線T1は、第2円弧部43の第1円弧部40と接続された端点43aにおける第2円弧部43の接線T2と一致する。
【0058】
ここで、第1円弧部40の第2円弧部43と接続された端点40aにおける第1円弧部40の接線T1は、第1円弧部40を一部に含む仮想円VC1の第1円弧部40の第2円弧部43側の端点40aにおける接線である。
【0059】
同様に、第2円弧部43の第1円弧部40と接続された端点43aにおける第2円弧部43の接線T2は、第2円弧部43を一部に含む仮想円VC2の第2円弧部43の第1円弧部40側の端点43aにおける接線である。
【0060】
本実施形態の直線部41と第2円弧部43とは、直接接続されている。具体的には、直線部41は、直線部41の端点41aで第2円弧部43と接続されており、第2円弧部43は、第2円弧部43の直線部41側の端点43bで直線部41と接続されている。
【0061】
また、直線部41と第2円弧部43とは、滑らかに接続されている。具体的には、第2円弧部43の直線部41と接続された端点43bにおける第2円弧部43の接線T3が延びる方向は、直線部41の延びる方向と一致している。
【0062】
ここで、第2円弧部43の直線部41と接続された端点43bにおける第2円弧部43の接線T3とは、第2円弧部43を一部に含む仮想円VC2の第2円弧部43の直線部41側の端点43bにおける接線である。
【0063】
本実施形態のロータコア11では、ロータコア11の軸心O1と直線部41の延在方向の中央との間の距離d(
図4に示す)と、ロータコア11の軸心O1から見た直線部41の角度範囲θ2と、第1円弧部40の曲率半径CR1を決定すれば、ロータコア11の軸心O1から見た第1円弧部40の角度範囲θ1と、第1円弧部40と直線部41とを滑らかに接続する湾曲部42(第2円弧部43)とは、一意に決定できる場合がある。あるいは、ロータコア11の軸心O1と直線部41の延在方向の中央との間の距離dと、第1円弧部40の曲率半径CR1と、ロータコア11の軸心O1から見た第1円弧部40の角度範囲θ1とを決定すれば、ロータコア11の軸心O1から見た直線部41の角度範囲θ2と、第1円弧部40と直線部41とを滑らかに接続する湾曲部42(第2円弧部43)とは、一意に決定できる場合がある。
【0064】
図6は、本実施形態のロータ10の周方向位置と、ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力との関係を示すグラフである。
図6のグラフの横軸の角度[deg]は、ロータ10のd軸を基準とした機械角α(−30deg≦α≦30deg)である。すなわち、横軸のα=0degがd軸に対応し、α=−30deg,30degがq軸に対応する。また、
図6のグラフの縦軸は、ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力[任意目盛]である。ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力は、ロータ10とステータ20との間のエアギャップの逆数の二乗に比例する。
【0065】
図6に示すグラフは、α=0degに対して対称であるので、以下、0deg≦α≦30degの範囲について主に説明する。
図6を参照すると、ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力は、0deg≦α≦30degの範囲で単調減少している。
【0066】
0deg≦α≦α1の範囲(
図6中の領域A1)で、ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力は、一定である。ここで、
図5と
図6を併せて参照すると、α=α1は、第1円弧部40の端点40a(又は湾曲部42の第2円弧部43の端点43a)に対応しており、領域A1は、ロータコア11の外形形状のうち、第1円弧部40に対応する。
【0067】
領域A1においてロータ10とステータ20との間に発生する電磁力が一定であるのは、第1円弧部40がロータコア11の軸心O1を中心とする円弧状であるため、第1円弧部40において、ロータ10とステータ20との間のエアギャップG(
図4に示す)が一定であるからである。
【0068】
また、
図6を参照すると、α1<α≦α2の範囲(
図6中の領域A2)で、ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力は、ロータ10のd軸を基準とした機械角αが大きくなるに従って減少している。ここで、
図5と
図6を併せて参照すると、α=α2は、湾曲部42の第2円弧部43の端点43b(又は直線部41の端点41a)に対応しており、領域A2は、ロータコア11の外形形状のうち、湾曲部42の第2円弧部43に対応する。
【0069】
領域A2においてロータ10とステータ20との間に発生する電磁力がロータ10のd軸を基準とした機械角αが大きくなるに従って減少するのは、湾曲部42の第2円弧部43において、第1円弧部40側から直線部41側に向かって、ロータ10とステータ20との間のエアギャップG(
図4に示す)が大きくなっているからである。
【0070】
また、ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力は、領域A1と領域A2との間で滑らかに変化している。これは、第2円弧部43が第1円弧部40と滑らかに接続されているからである。
【0071】
さらに、α2<α≦30degの範囲(
図6中の領域A3)で、ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力は、ロータ10のd軸を基準とした機械角αが大きくなるに従って減少しており、α=30degで最小になっている。ここで、
図5と
図6を併せて参照すると、領域A3は、ロータコア11の外形形状のうち、直線部41に対応する。また、α=30degは、ロータコア11の外形形状のうち、直線部41の延在方向の中央に対応する。
【0072】
領域A3においてロータ10とステータ20との間に発生する電磁力がロータ10のd軸を基準とした機械角αが大きくなるに従って減少するのは、直線部41においてロータ10とステータ20との間のエアギャップG(
図4に示す)が直線部41の延在方向の両端部から中央に向かって小さくなっているからである。
【0073】
また、領域A3におけるロータ10とステータ20との間に発生する電磁力の変化は、領域A2におけるロータ10とステータ20との間に発生する電磁力の変化よりもなだらかである。これは、ロータ10とステータ20との間のエアギャップG(
図4に示す)が、直線部41において、湾曲部42の第2円弧部43よりも緩やかに広がるからである。
【0074】
また、ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力は、領域A2と領域A3との間で滑らかに変化している。これは、第2円弧部43が直線部41と滑らかに接続されているからである。
【0075】
上記構成によれば、第2円弧部43の曲率半径CR2が、第1円弧部40の曲率半径CR1よりも小さいため、第2円弧部43からなる湾曲部42によって、第1円弧部40と直線部41とは滑らかに接続される。このため、ロータ10の回転に伴うロータ10とステータ20との間のエアギャップGの急激な変化が抑制されることで、ロータ10とステータ20との間に発生する電磁力の急激な変化が抑制されるので、高次の電磁力が減る。その結果、上記高次の電磁力に起因した振動を効果的に抑制できる。
【0076】
上記実施形態によれば、第1円弧部40と第2円弧部43とが滑らかに接続されているので、振動を効果的に抑制しつつロータ10の回転時の流体抵抗(攪拌損失)を低減できる。
【0077】
上記実施形態によれば、第2円弧部43と直線部41とが滑らかに接続されているので、振動を効果的に抑制しつつロータ10の回転時の流体抵抗(攪拌損失)を低減できる。
【0078】
また、
図6から明らかなように、ロータコア11のd軸付近の領域(
図6における領域A1)でロータ10とステータ20との間に発生する電磁力が最大且つ一定であるので、モータ5の特性(発生トルク)を十分に発揮できている。一方で、ロータコア11のq軸付近の領域(
図6における領域A3)でロータ10とステータ20との間に発生する電磁力を落とせているので、モータ5とロータ10との間に発生する電磁力に起因する振動を抑制できる。すなわち、本実施形態のモータ5のロータ10によれば、モータ5の発生トルクの低下を抑制しつつ、モータ5とステータ20との間に発生する電磁力に起因する振動を抑制でき、騒音を抑制できる。
【0079】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るロータコア111は、湾曲部142の構成を除いて上記第1実施形態と同様である。第2実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成には、同一の参照番号を付して、その説明を省略する。
【0080】
図7は、第2実施形態に係るロータコア111の外形形状を模式的に示す図である。
【0081】
図7を参照すると、本実施形態の湾曲部142は、第1円弧部40を一部に含む仮想円VC1の半径方向の内側に配置されている。また、本実施形態の湾曲部142は、半径方向の外側に膨出した円弧状である第2円弧部143からなる。第2円弧部143の曲率半径は、第1円弧部40の曲率半径CR1よりも小さい。
【0082】
本実施形態の第1円弧部40と第2円弧部143とは、直接接続されている。具体的には、第1円弧部40は、第1円弧部40の端点40aで第2円弧部143と接続されており、第2円弧部143は、第2円弧部143の第1円弧部40側の端点143aで第1円弧部40と接続されている。
【0083】
また、第1円弧部40と第2円弧部143とは、実質的に滑らかに接続されている。具体的には、第1円弧部40の第2円弧部143と接続された端点40aにおける第1円弧部40の接線T1の傾きは、第2円弧部143の第1円弧部40と接続された端点143aにおける第2円弧部143の接線T21の傾きと実質的に一致する。
【0084】
ここで、第2円弧部143の第1円弧部40と接続された端点143aにおける第2円弧部143の接線T21は、第2円弧部143を一部に含む仮想円VC21の第2円弧部143の第1円弧部40側の端点143aにおける接線である。
【0085】
第1円弧部40の上記接線T1の傾きが、第2円弧部143の上記接線T21の傾きに実質的に一致するとは、上記接線T1と上記接線T21とのなす角度βが0deg<β≦2degのことをいう。
【0086】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0087】
また、上記実施形態によれば、第1円弧部40と第2円弧部143とが実質的に滑らかに接続されているので、振動を抑制しつつロータの回転時の流体抵抗(攪拌損失)を低減できる。
【0088】
[第3実施形態]
第3実施形態に係るロータコア211は、湾曲部242の構成を除いて上記第1実施形態と同様である。第3実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成には、同一の参照番号を付して、その説明を省略する。
【0089】
図8は、第3実施形態に係るロータコア211の外形形状を模式的に示す図である。
【0090】
図8を参照すると、本実施形態の湾曲部242は、第1円弧部40側に配置された第2円弧部243と、直線部41側に配置された直線部分244とを備える。本実施形態の第2円弧部243は、中心点O2を中心とする曲率半径CR2の円弧状である。
【0091】
本実施形態の第1円弧部40と第2円弧部243とは、直接接続されている。具体的には、第1円弧部40は、第1円弧部40の端点40aで第2円弧部243と接続されており、第2円弧部243は、第2円弧部243の第1円弧部40側の端点243aで第1円弧部40と接続されている。
【0092】
また、第1円弧部40と第2円弧部243とは、滑らかに接続されている。具体的には、第1円弧部40の第2円弧部243と接続された端点40aにおける第1円弧部40の接線T1は、第2円弧部243の第1円弧部40と接続された端点243aにおける第2円弧部243の接線T22と一致する。
【0093】
ここで、第2円弧部243の第1円弧部40と接続された端点243aにおける第2円弧部243の接線T22は、第2円弧部243を一部に含む仮想円VC22の第2円弧部243の第1円弧部40側の端点243aにおける接線である。
【0094】
本実施形態の直線部41と第2円弧部243とは、湾曲部242の直線部分244を介して接続されている。具体的には、直線部41は、直線部41の端点41aで湾曲部242の直線部分244と接続されており、第2円弧部243は、第2円弧部243の直線部41側の端点243bで湾曲部242の直線部分244と接続されている。
【0095】
上記第3実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0096】
[第4実施形態]
第4実施形態に係るロータコア311は、湾曲部342の構成を除いて上記第1実施形態と同様である。第4実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成には、同一の参照番号を付して、その説明を省略する。
【0097】
図9は、第3実施形態に係るロータコア311の外形形状を模式的に示す図である。
【0098】
図9を参照すると、本実施形態の湾曲部342は、直線部41側に配置された第2円弧部343と、第1円弧部40側に配置された直線部分344とを備える。本実施形態の第2円弧部343は、中心点O2を中心とする曲率半径CR2の円弧状である。
【0099】
本実施形態の直線部41と第2円弧部343とは、直接接続されている。具体的には、直線部41は、直線部41の端点41aで第2円弧部343と接続されており、第2円弧部343は、第2円弧部343の直線部41側の端点343bで直線部41と接続されている。
【0100】
また、直線部41と第2円弧部343とは、滑らかに接続されている。具体的には、第2円弧部343の直線部41と接続された端点343bにおける第2円弧部343の接線T33が延びる方向は、直線部41の延びる方向と一致している。
【0101】
ここで、第2円弧部343の直線部41と接続された端点343bにおける第2円弧部343の接線T33とは、第2円弧部343を一部に含む仮想円VC23の第2円弧部343の直線部41側の端点343bにおける接線である。
【0102】
本実施形態の第1円弧部40と第2円弧部343とは、湾曲部342の直線部分344を介して接続されている。具体的には、第1円弧部40は、第1円弧部40の端点40aで湾曲部342の直線部分344と接続されており、第2円弧部343は、第2円弧部343の第1円弧部側の端点343aで湾曲部342の直線部分344と接続されている。
【0103】
上記第4実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0104】
[第5実施形態]
第5実施形態に係るロータコア411は、湾曲部442の構成を除いて上記第1実施形態と同様である。第5実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成には、同一の参照番号を付して、その説明を省略する。
【0105】
図10は、第5実施形態に係るロータコア411の外形形状を模式的に示す図である。
【0106】
図10を参照すると、本実施形態の湾曲部442は、第1円弧部40側に配置された第2円弧部443と、直線部41側に配置された第3円弧部444と、第2円弧部443と第3円弧部444とを接続する直線部分445とを備える。本実施形態の第2円弧部443は、中心点O2を中心とする曲率半径CR2の円弧状である。同様に、本実施形態の第3円弧部444は、中心点O2を中心とする曲率半径CR2の円弧状である。
【0107】
本実施形態の第1円弧部40と第2円弧部443とは、直接接続されている。具体的には、第1円弧部40は、第1円弧部40の端点40aで第2円弧部443と接続されており、第2円弧部443は、第2円弧部443の第1円弧部40側の端点443aで第1円弧部40と接続されている。
【0108】
また、第1円弧部40と第2円弧部443とは、滑らかに接続されている。具体的には、第1円弧部40の第2円弧部443と接続された端点40aにおける第1円弧部40の接線T1は、第2円弧部443の第1円弧部40と接続された端点443aにおける第2円弧部443の接線T24と一致する。
【0109】
ここで、第2円弧部443の第1円弧部40と接続された端点443aにおける第2円弧部443の接線T24は、第2円弧部443を一部に含む仮想円VC24の第2円弧部443の第1円弧部40側の端点443aにおける接線である。
【0110】
本実施形態の直線部41と第3円弧部444とは、直接接続されている。具体的には、直線部41は、直線部41の端点41aで第3円弧部444と接続されており、第3円弧部444は、第3円弧部444の直線部41側の端点444bで直線部41と接続されている。
【0111】
また、直線部41と第3円弧部444とは、滑らかに接続されている。具体的には、第3円弧部444の直線部41と接続された端点444bにおける第3円弧部444の接線T34が延びる方向は、直線部41の延びる方向と一致している。
【0112】
ここで、第3円弧部444の直線部41と接続された端点444bにおける第3円弧部444の接線T34とは、第3円弧部444を一部に含む仮想円VC34の第3円弧部444の直線部41側の端点444bにおける接線である。
【0113】
上記第5実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0114】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。例えば、本開示のロータの極数は、上記第1〜第5実施形態のような6極に限定されず、他の極数(例えば4極)であってもよい。上記他の極数にする場合は、極数比(他の極数をXとしたとき、6/X)に基づいて、ロータの形状を定めてよい。