特許第6811235号(P6811235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811235
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】高精度工作機械用のチャック
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/36 20060101AFI20201228BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20201228BHJP
   B23B 5/00 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   B23B31/36 C
   B23Q11/00 B
   B23B5/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-511612(P2018-511612)
(86)(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公表番号】特表2018-529533(P2018-529533A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】EP2015070034
(87)【国際公開番号】WO2017036523
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】518068017
【氏名又は名称】ヴィーランツ ユーピーエムティー
(73)【特許権者】
【識別番号】518068028
【氏名又は名称】ダブリューエスエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーランツ、マルク
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−269594(JP,A)
【文献】 登録実用新案第358335(JP,Z2)
【文献】 米国特許第3685845(US,A)
【文献】 特開2010−234460(JP,A)
【文献】 特開昭60−141443(JP,A)
【文献】 特開2001−347406(JP,A)
【文献】 特開平11−179601(JP,A)
【文献】 実開昭51−054886(JP,U)
【文献】 特開昭58−087442(JP,A)
【文献】 特開平06−170624(JP,A)
【文献】 特開2004−042252(JP,A)
【文献】 特開2005−324287(JP,A)
【文献】 特開2011−178162(JP,A)
【文献】 特表2014−503369(JP,A)
【文献】 特開平02−212004(JP,A)
【文献】 特開2006−035360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00−25/06
B23B 31/00−33/00
B23Q 1/00−1/76
B23Q 3/00−3/154
B23Q 3/16−3/18
B23Q 9/00−9/02
B23Q 11/00−13/00
G02B 1/00−1/08
G02B 3/00−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(19)を備えた回転スピンドル(14)を有する工作機械用のチャックであって、前記チャックは、工作物などの対象物(13)を前記回転軸(19)に対して関連する位置に位置決めするように構成され、また前記チャックは、その上に位置決めされた前記対象物と共に、前記回転軸(19)と一致するように構成され得る慣性主軸を有するように構成されている、チャックにおいて、
前記チャックを前記回転スピンドル(14)に設置するための設置手段を有するベースプレート(1)と、
前記ベースプレート(1)上に前記回転軸(19)に対して偏心的に設置され、且つ前記回転軸(19)と平行に延びる第1の回転軸(20)を有する第1の回転可能プレート(2)であって、前記第1の回転軸(20)が前記回転スピンドル(14)の前記回転軸(19)に対してずらされている、第1の回転可能プレート(2)と、
前記対象物(13)と合わせた前記チャックの前記慣性主軸が前記回転スピンドル(14)の前記回転軸(19)と実質的に一致するように、前記チャック上に位置決めされた前記対象物(13)と合わせた前記チャックの重心を前記回転軸(19)に関してバランス取りするように構成されたバランス取り手段(6、11)と、
第1の保持機構(17)および第2の保持機構(18)を含む保持機構(17、18)であって、前記第1の保持機構(17)が前記第1の回転可能プレート(2)を前記ベースプレート(1)に固定する、保持機構(17、18)と、
前記回転軸(19)に対して前記対象物(13)の位置を変えることができるように、前記第1の回転可能プレート(2)を前記第1の回転軸(20)の周りで第1の回転角度にわたって角変位させるように構成された作動機構と、
を有し、
前記チャックは、前記対象物(13)を受けるように構成された第2の回転可能プレート(3)を有し、前記第2の回転可能プレート(3)は、前記第1の回転軸(20)に対して偏心的に前記第1の回転可能プレート(2)上に設置され、且つ前記回転軸(19)および前記第1の回転軸(20)に対して平行に延びる第2の回転軸(21)を有し、前記第2の回転軸(21)は前記第1の回転軸(20)に対してずらされ、また第2の回転可能プレート(3)は、前記第2の保持機構(18)によって前記第1の回転可能プレート上に固定され、
前記作動機構は、前記回転軸(19)に対して前記対象物(13)の前記位置を変えることができるように、前記第2の回転可能プレート(3)を前記第2の回転軸(21)の周りで第2の回転角度にわたって角変位させるように構成され、また
前記作動機構は、前記第1の回転可能プレート(2)および/または第2の回転可能プレート(3)の前記角変位を監視するように構成された少なくとも1つの回転エンコーダ(4、10)を有し、前記作動機構は、前記第1および/または第2の回転可能プレート(2、3)を角変位させるように構成された少なくとも1つのモータ(5、9)を有し、また前記作動機構は、前記少なくとも1つのモータ(5、9)を制御するように構成された制御装置(12)を有している、チャック。
【請求項2】
前記第1の回転可能プレート(2)の少なくとも1つの回転角度において、前記第2の回転軸(21)が前記回転軸(19)と実質的に一致するように配置される、請求項1に記載のチャック。
【請求項3】
前記保持機構(17、18)が保持力を生成するように構成されている、請求項1または2に記載のチャック。
【請求項4】
前記保持機構(17、18)が磁石構成を有する、請求項3に記載のチャック。
【請求項5】
前記バランス取り手段が釣り合いおもり構成(6、11)を有し、前記釣り合いおもり構成(6、11)が調節可能であり、前記釣り合いおもり構成が、第1の部分(6)と、第2の部分(11)とを有し、前記釣り合いおもり構成の前記第1の部分(6)が、前記ベースプレート1上の第1の場所に位置決めされ、また前記釣り合いおもり構成の前記第2の部分(11)が、前記第1の部分(6)の前記第1の場所に対して前記第1の回転可能プレート(2)上の第2の場所に位置決めされる、請求項1から4までいずれか一項に記載のチャック。
【請求項6】
前記チャックが空気圧式の構成を有し、前記空気圧式の構成が、前記対象物(13)を前記第2の回転可能プレート(3)上に固定するための吸引力を生成するように構成され、前記空気圧式の構成が、前記第1の保持機構(17)によって生成される保持力を上回る持ち上げ力を生成するように構成され、それにより前記第1の回転可能プレート(2)が、前記第1の回転軸(20)を中心として前記ベースプレート(1)に対して持ち上げられ、また前記空気圧式の構成が、前記第2の保持機構(18)によって生成される保持力を上回る持ち上げ力を生成するように構成されることで、前記第2の回転可能プレート(3)が、前記第2の回転軸(21)を中心として前記第1の回転可能プレート(2)に対して持ち上げられる、請求項1から5までのいずれか一項に記載のチャック。
【請求項7】
前記工作物(13)の表面に少なくとも1つの穴(24)を形成するために前記工作物(13)を旋削するおよび/または研磨するための工作機械であって、請求項1から6までのいずれか一項に記載のチャックを有する工作機械。
【請求項8】
前記回転軸(19)に対して関連する位置に、工作物などの前記対象物(13)を位置決めするために、請求項1から6までのいずれか一項に記載のチャックを有する工作機械の使用。
【請求項9】
工作物(13)を旋削または研磨するための請求項に記載の使用。
【請求項10】
別のステップにおいて少なくとも1つのレンズ型穴(24)が、前記工作物(13)の表面に形成され、別のステップにおいて少なくとも一列のレンズ型穴(24)が、前記工作物(13)の表面に形成される、請求項またはに記載の工作機械の使用。
【請求項11】
別のステップにおいて前記工作物から複製部片が形成される、請求項から10までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
別のステップにおいて少なくとも1つのレンズが形成される、請求項から11までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
別のステップにおいて前記レンズがレンズ構成内に設置される、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を回転軸に対して適切な位置に位置決めするように構成された工作機械用チャックに関する。より具体的には、本発明は、工作機械のスピンドルに取り付けるのに好適な位置決めまたは割り出し(indexing)デバイスに関する。本発明はまた、旋盤などの工作機械、特に小型レンズアレイ、ウェーハ光学部品、多数個取りダイ、および光学レンズの複製のための金型の旋削および研磨仕上げ作業専用の超精密工作機械に関する。本発明はまた、例えば工作物などの対象物の位置決めまたは割り出しのため、および多数個取りダイ(die)または金型(mould)を機械加工するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドターニングは、モノリシックレンズアレイの生産に従来利用されており、モノリシックレンズアレイは、レンズ間の位置決めが非常に重要な様々な用途で利用される。ダイヤモンドターニング工程は、モノリシックレンズアレイが製造される基板を、次のレンズが機械加工される前に新たな位置へ移動させる必要があるため、操作者は、基板を移動させ、整列させ、その後、各々のレンズの位置に対して再度作業スピンドルの均衡を保つ(バランスを取る)必要がある。結果として、軸上のダイヤモンドターニングの利用は一般に生産時間の増大が必要であり、レンズとレンズの位置決めの精度を達成することが難しいため、大型のモノリシックレンズアレイの製造には適さないと考えられている。必要な製造時間を短縮するために、モノリシックレンズアレイの生産には自由曲面(freeform)技術が利用される場合がある。
【0003】
「Comparison of Freeform Manufacturing Techniques in the Production of Monolithic Lens Arrays」においてGregg等は、モノリシックレンズアレイの製造において使用することができる様々な自由曲面製造プロセスの比較を提供しており、これは以下でより詳細に考察される。自由曲面ダイヤモンド機械加工によって、レンズアレイを単一の設備において製造することが可能になる。基板の中間移動がないため、レンズ間の位置決めは、プログラムと、機械の精度に固有である。このような自由曲面機械加工技術は一般に、スローツールサーボ(STS)、ファストツールサーボ(FTS)およびダイヤモンドマイクロフライス(DMM)として知られている。しかしながら上記に列挙した自由曲面機械加工技術には、表面形成の精度、表面の幾何学形状および必要とされる生産時間に関して制限がある。
【0004】
ダイヤモンドマイクロフライス加工は、球形のダイヤモンド工具を用いて、工作物の表面に小さい特徴部(feature)を高精度に機械加工するのに利用される有効な方法である。マイクロフライス加工によって、万能の自由曲面機械加工が可能になり、また工作物が回転しないという利点も有する。しかしながらマイクロフライス加工工程の精度は、スピンドル、機械の運動学的誤差、スピンドル軸上の工具シャフトの調整不良、切断工具のダイヤモンドボール端部の波打ち、および切断作業が中断された状況によって生じる切断工具の振動に関連する特定の要因によって影響を受ける場合がある。たとえ先に挙げた要因によって生じる体系化された誤差が修正サイクルを利用して修正されたとしても、マイクロフライス加工後の表面の表面品質は、ダイヤモンドターニング後の表面の表面品質より一般に低くなる。ダイヤモンドマイクロフライス加工の別の欠点は、工作物の表面上に小さい特徴部を機械加工するのにかなり長い時間が必要とされる点である。したがって一列の1000個の小型レンズの工作物の表面での機械加工は、数日間の継続的な機械加工作業にまで及ぶ場合がある。
【0005】
スローツールサーボとも呼ばれるスロースライドサーボおよびファストツールサーボは、多軸同期を利用し、これにより作業スピンドルは、自由曲面面を機械加工するために旋盤上で1軸として利用される。しかしながらこのような方法は、ダイヤモンド工具の隙間が制限されることから、急勾配の傾斜を機械加工することができず、機械運動学によって速度が制限され、工具経路内の切れ目が原因で重大な表面誤差を生み出す。
【0006】
対象物にある小さな特徴部、例えば一体式の工作物にあるレンズアレイなどの精密な機械加工における別の態様は、例えば切断工具などの特定の工具に対して対象物を正確に位置決めする能力である。工作物の割り出し作業は、工作物の特有の位置を、正確な機械加工作業を行うために、例えば切断工具などの工具に対して位置決めするのに利用される既知の方法である。工具または工作物の自動の位置決めおよび割り出しは、フライス加工、ドリル穿孔、レーザ機械加工、点検、計測などの多くの作業に関して従来技術から知られている。このようなシステムは一般に、 ガイドウェイ、例えばモータなどの作動装置、および位置測定器具を組み込む一方で、制御システムは、組み込まれる場合と、あるいは外部にある場合がある。しかしながら、従来技術の自動割り出しまたは位置決めデバイスは、新たな位置に達する度に回転スピンドル上で工作物の均衡を保つためのバランス取り手段(bバランス取り手段)を組み込んでいない。結果として、従来技術の位置決めおよび割り出しの解決策は、作業スピンドルの回転軸上で正確にバランス取りされることを必要とする回転する精密な作業スピンドル上に設置されるのには適していない。従来技術の自動位置決めおよび割り出しの解決策はさらに、スピンドルが比較的高速で、典型的には1分あたり300から2000回転(RPM)、例えば300から1000PRMで回転しつつ、工具または工作物をその軸外の位置に正確に且つしっかりと維持するのにも適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、対象物をスピンドルの回転軸に対して各々移動させた後、デバイスのバランスを再度取る必要なしに、対象物を、例えば回転スピンドルのロータ上のスピンドルの回転軸に対して自動的に位置決めおよび割り出しするように構成された、例えばチャックなどの工作機械のためのデバイスを提供することである。このデバイスは、一体型レンズアレイを機械加工するためのシングルポイントダイヤモンドターニングおよび研磨作業など超高精度の機械加工法と組み合わせた場合にとりわけ有益であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、最初の請求項の技術的な特徴を示すチャックを利用して本発明によって達成される。
【0009】
より具体的には、本発明の実施形態によると、チャックは、回転軸(main axis of rotation)を備えた回転スピンドルを有する工作機械用、詳細には旋盤用に設けられる。チャックは、例えば工作物などの対象物を、回転軸に対して関連する位置に位置決めするように構成される。チャックはその上に対象物が位置決めされた状態で慣性主軸を有する。チャックは、ある慣性主軸が、チャック上に設置された対象物の位置とは関係なく、例えば軸外の位置とは関係なく工作物の回転軸とほぼ一致するように、またはさらにはぴったり一致するように構成される。実施形態によると、チャックは、チャックを工作物に設置するための設置手段を備えるベースプレートを備えている。実施形態によると、第1の回転可能プレートが、回転軸に対して偏心式にベースプレート上に設置されており、また、工作物の回転軸に対してずらされるように回転軸に平行に位置決めされた第1の回転軸を有している。その上に対象物が位置決めされた状態のチャックの慣性主軸を整列させるためにバランス取り手段が設けられることで、この慣性主軸はスピンドルの回転軸とほぼ一致、またはさらにはぴったり一致する。チャックには、第1の回転可能プレートをベースプレートに固定するように構成された保持機構が備わっている。回転軸に対して対象物の位置を変化させるために作動機構が設けられており、これは第1の回転可能プレートを第1の回転軸の周りで回転の第1の角度にわたって角変位(回転移動)させるように構成される。本発明の実施形態によると、チャックは、対象物を受けるように構成された第2の回転可能プレートを備える。第2の回転可能プレートは、第1の回転軸に対して偏心式に第1の回転可能プレート上に設置されており、保持機構を利用して第1のプレート上に固定される。作動機構は、回転軸に対して対象物の位置を変えることができるように、第2の回転可能プレートを第2の回転軸の周りで第2の回転の角度にわたって角変位させるように構成されており、それによって第2の回転軸が第1の回転軸に対してずらされており、また第2の回転軸は回転軸および第1の回転軸に対して平行に延びている。
【0010】
第1および/または第2のディスクを回転させることによって回転軸に対して対象物の位置が変えられた場合でも、そのような構成は、チャックの慣性主軸およびそこに位置決めされた対象物を回転軸に沿って維持することを可能にすることがわかっているため、そのそれぞれの回転軸の周りで角変位させることができるそのような第1および第2の偏心式に位置決めされた回転可能プレートを設けることによって、対象物が新たな位置にずらされた後、回転軸上で再度チャックのバランス取りをする必要なしに回転軸に対して対象物の位置を正確に変えることができる。これは、回転軸上で対象物と共にチャックの均衡を保つ(バランス取りする)ように構成されたバランス取り手段を利用することによって達成される。バランス取り手段を設けることによって、チャックの各プレートが、そのそれぞれの軸上でバランス取りされ、これにより対象物と組み合わせたチャックの質量中心が、対象物の全ての関連する位置に関して回転軸上でバランス取りされることを可能にし、且つ対象物を組み合わせたチャックの回転軸が、回転軸と実質的に整列されること、またはさらには整列されることを可能にすることがさらに保証され得る。結果として、チャックのバランスは、第1および/または第2の回転可能プレートの角変位によって影響を受けることがなく、これは各々の回転可能プレートの慣性主軸がその回転軸と整列されたならば、プレートがいかなる選択された角度まで回転されてもその質量中心は移動しないためであり、これにより対象物が新たな位置に移動される毎に回転軸上で再度チャックのバランス取りをする必要なしに対象物を様々な位置に移動させることを可能にする。したがって本発明の実施形態によるチャックによって、回転軸に対する対象物の各々の移動の後、再度チャックのバランス取りをする必要なしに、例えば工作物などの対象物の動的な精密な位置決めまたは割り出しが可能になる。結果として、スピンドル回転軸に直交する面内での対象物の位置決めは、マイクロメーターの精度で動的に制御することができるため、例えば表面または小型レンズアレイなどの特徴部をマイクロメートルのレンズ間の位置の精度で、軸上で機械加工することができる。結果として、本発明のシステムによって、高い機械加工精度を保証しつつ、基板上で一体型レンズアレイを製造するのに必要とされる時間を有意に短縮することができる。さらに工作物を割り出しすることによって、各々のレンズ面が、切断の間にスピンドル軸に対して連続して移動される。結果として、本発明の使用によって、全ての軸上の機械加工可能な面の幾何学形状、例えば急勾配の縁部スロープ、非球面、自由型、フレネルレンズ、回折構造などを生み出すことができることを保証しつつ、精密な旋削および研磨作業を最適な軸上の切断状況において行うことができる。デバイスは、高精度の作動装置と、計測デバイスとを装備することでミクロン精度のレンズとレンズの位置を保証することができ、作業スピンドルを停止させたり減速させたりさせずに位置決めまたは割り出しを動的に行うことで、作業スピンドルの熱安定性を保証し、且つ位置決めの時間を最小限にすることによって機械加工の時間を最適化することができる。
【0011】
本発明の実施形態によると、対象物の少なくとも1つの位置において、第2の回転軸は回転軸と一致する。例えば第1の回転可能プレートの少なくとも1つの回転の角度に関して、例えば第2の回転軸が回転軸と一致する位置になるように第1の回転可能プレートを回転させることができるように第1および第2のプレートを設置することによって、第2の回転軸は、回転軸とほぼ一致するように、またはさらにはぴったり一致するように配置される。このような構成は、その独自の中心点を含め、対象物上のいかなる地点も、回転軸と整列させることができるように、第2の回転軸と回転軸を整列させることを可能にする。
【0012】
本発明の実施形態によると、保持機構が保持力を生成するために配置される。この方法において、第1および第2の回転可能プレートは、例えばチャックが回転スピンドルに設置される間、回転軸に対する対象物の位置決めを可能にするために所望される位置に固定されてよい。例えば保持機構は、永久磁石または電磁石構成を備えてよく、これは、第1および第2の回転可能プレートを所望される場所に固定するためにチャック上の様々な場所に位置決めされてよい。保持機構はまた、磁石構成の代わりに、またはそれに加えて、第1および第2の回転可能プレートを所望される位置に固定するための吸引力を生成するように、または互いに対してディスクを持ち上げる持ち上げ力を生成するように構成された真空状態を生み出すために空気圧式の構成(装置)を備える場合もある。空気圧式の構成は、例えばポンプを備えることができ、これは例えばチャックを備える工作機械の一部としてチャック上に設けることができるが、またチャックの外側に設けられる場合もある。保持機構は、本発明の実施形態に従って保持力を生成するのに適した当業者に既知の他の要素を利用して実現される場合もあることが提起されている。
【0013】
本発明の実施形態によると、保持機構は、例えばたわみばねなどの軸方向の移動機構を備え、これは例えば第1および第2の回転プレートの、そのそれぞれの回転軸に沿った移動を可能にすることで、回転プレートを互いと、またはベースプレートと係合するように移動させたり、係合から外れるように移動させたりすることができ、その結果、例えば回転プレートを、そのそれぞれの回転軸の周りで互いとまたはベースプレートとの係合から外れるように回転させることができる。
【0014】
本発明の実施形態によると、ディスクは、ころ軸受、空気軸受、静圧軸受などのうちの1つまたは複数によってそのそれぞれの回転軸に対して設置される。
【0015】
本発明の実施形態によると、バランス取り手段は、釣り合いおもり構成を備えてよい。釣り合いおもり構成は、チャックの重心が、異なる質量または質量配分を有する対象物に関して回転軸上でバランス取りすることができるように調節可能であってよい。結果として、チャックと対象物の慣性主軸を回転軸と整列させるために回転可能プレートの構成を変えることなく、異なる質量配分を有する置き換え可能な対象物と共にチャックを使用することができる。例えばチャックのバランス取りは、対象物と合わせて、且つ機械加工作業が行われる前に行われることが提起されている。結果として、先に考察したように、チャックは、対象物が新たな位置に移動される毎に再度バランス取りをする必要がなく、これは従来技術の解決策とは対照的である。本発明の実施形態によると、釣り合いおもり構成は調節可能である。例えば釣り合いおもり構成は、対象物と合わせたチャックの所望されるバランス状態を達成するために、釣り合いおもり構成の質量を変更することによって、ならびに/あるいは例えば釣り合いおもりの本体を適合させることによって、すなわち本体の位置を回転軸に平行する方向、高さ方向とも呼ばれる方向に沿って適合させることによって、および/または本体の位置を回転軸に直交する方向、半径方向とも呼ばれる方向に沿って適合させることによって釣り合いおもりの構成を回転軸に対して変更することによって調節されてよい。釣り合いおもりの本体の高さを調節することによって、回転軸の回転中の遠心力から生じる傾斜モーメントが、例えば工作物などの対象物と組み合わせたチャックの慣性主軸を回転軸と一致するように整列させることによって相殺されてよい。釣り合いおもり構成は、釣り合いおもり構成の釣り合いおもりとして金属などの固い材料から作製されたおもりを備えてよい。さらに釣り合いおもり構成は、釣り合いおもり構成の釣り合いおもりとして所定の粘度を有する液体などの流体を含む場合もある。
【0016】
本発明の実施形態によると、釣り合いおもり構成は、複数の釣り合いおもり部分、例えば第1および第2の部分などを備える場合がある。例えば第1の部分は、ベースプレート上の所定の場所に位置決めされてよく、第2の部分は、第1の回転可能プレートの上に、第1の部分の場所に対して所定の場所に位置決めされてよい。釣り合いおもり構成はまた、第3の部分を備える場合もあり、これは、例えば対象物が第2の回転軸と整列されたその独自の慣性主軸を持たない場合、対象物の重量をさらに相殺するために第2の回転可能プレート上に位置決めされてよい。本発明の実施形態による釣り合いおもり構成を設けることによって、チャックの各プレートが、そのそれぞれの軸上でバランス取りされ、これにより対象物と組み合わせたチャックの質量中心が、対象物の全ての関連する位置に関してメインの回転軸上でバランス取りされることを可能にすること、ならびに対象物と組み合わせたチャックの慣性主軸が、回転軸とほぼ整列される、またはさらには整列されることを可能にすることがさらに保証されてよい。結果として、チャックのバランスは、第1および/または第2の回転可能プレートの角変位によって影響を受けないため、対象物が新たな位置に移動される毎にメインの回転軸上で再度チャックのバランス取りをする必要なしに対象物を様々な位置に移動させることを可能にする。
【0017】
本発明の実施形態によると、チャックは、対象物を第2のプレートの上に固定するための対象物設置手段を備える。対象物設置手段は例えば、第2のプレート上に対象物を吸引する空気圧、接着剤などを利用する、例えばボルトなどの任意の1つまたは複数の機械的装着部を備える。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の回転可能プレートと第2の回転可能プレートの間に、例えば第2のプレートを第1のプレートから持ち上げる持ち上げ力を提供することによって、第1および/または第2の回転可能プレートの、そのそれぞれの回転軸の周りでの角度をより容易に変えることができ、これは、プレート間の接触が緩和される、またはさらには接触がなくなることによって回転可能プレートのロータとステータの間の摩擦が低下するためである。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によると、第1および/または第2の回転可能プレートの角変位(角度移動)は、工作機械の作動を中断させることなく行うことができ、これにより対象物を回転軸に対して位置決めする間の工作機械のダウンタイムをかなり短縮させることができる。さらに、工作機械の作動を中断させずに第1および/または第2の回転可能プレートを角変位させることによって、スピンドルの回転が、対象物を位置決めする間一定の速度に維持されることが保証され、これにより機械加工工程に対する熱によるスピンドルの影響(これは機械加工工程の精度に影響を及ぼす可能性がある)を最小限にするために、スピンドルが安定した熱レジームで作動することを保証する。
【0020】
本発明の実施形態によると、チャックは、空気圧式の構成を備える。空気圧式の構成は、対象物を第2の回転可能プレート上に固定するために吸引力、言い換えれば上記に記載したような対抗する持ち上げ力を生成するように構成されてよく、またこれによりそのような実施形態においては、対象物設置手段の一部である。空気圧式の構成は、プレートを互いに対して、およびベースプレートに対して固定するために吸引力を生成するように構成されてよく、またこれによりそのような実施形態においては保持機構の一部である。空気圧式の構成はまた、保持機構によって生成される保持力を上回る持ち上げ力を生成するように設けられる場合もある。例えばポンプを備える空気圧式の構成は例えば、回転可能プレートの間、および/または第1の回転可能プレートとベースプレートの間に加圧空気の薄膜を生成するように、チャック上、例えば第1および/または第2の回転プレート内に設けられた空気軸受を通るように特定の量の加圧空気を誘導し、これにより回転可能プレートの間、および/または第1の回転可能プレートとベースプレートの間に非常に低摩擦の耐荷重性の境界面を提供するように構成される。
【0021】
本発明の実施形態によると、空気圧式の構成には、空気圧式の構成によって生成されるおよび/または空気圧式の構成を通って流れる空気流を制御するための一揃いの(一式の)弁が備わっていてよい。例えば、弁は、第1および/または第2の回転プレート上に設けられた空気軸受を通るように加圧空気を誘導することで、回転可能プレートの間に持ち上げ力が生成されるように構成されてよい。本発明の実施形態によると、一揃いの弁は、制御装置を利用して電子的に制御される。例えば制御装置は、コンピュータデバイスから受信した一揃いの命令に従って制御されてよい。一揃いの命令を利用して制御装置を制御することによって、一揃いの弁、およびこれによりポンプによって生成される持ち上げ力が、手作業が介入することなく自動的に制御されてよい。例えばチャックの少なくとも1つの制御装置を操作するための命令を含むコンピュータソフトウェアプログラムが、一揃いの弁を電子的に制御するために設けられる場合がある。コンピュータソフトウェアプログラムは典型的には、制御装置にあるEPROMまたはEEPROMに記憶されるが、例えばコンピュータハードディスクドライブ、USBスティック、CDなどの任意のコンピュータプログラム製品に記憶される場合もある。
【0022】
本発明の実施形態によると、第1および/または第2の回転可能プレートを角変位させるように構成された作動手段には、少なくとも1つの角度センサまたは変換器が備わっていてよい。角度センサまたは変換器は、第1および/または第2の回転可能プレートの角変位を監視するように構成されてよい。少なくとも1つの角度センサまたは変換器は、例えばアブソリュート回転エンコーダ、インクリメンタルエンコーダ、リゾルバなどの任意の好適なデジタルまたはアナログ式であってよい。
【0023】
本発明の実施形態によると、作動機構はモータを備えてよい。例えば、作動手段は、第1および/または第2の回転可能プレートを所定の角度で第1および/または第2の回転可能軸の周りで角変位させるように構成されたダイレクトドライブまたはギヤードDCブラシレスモータなどを備える場合がある。本発明の実施形態によると、作動機構は、第1の回転可能プレートおよび/または第2の回転可能プレートの角変位を制御するように構成された制御装置を備える。例えば制御装置は、コンピュータデバイスからの一揃いの命令に従って第1および/または第2の回転可能プレートの角度付きの移動を制御するように構成されてよい。この方法において、第1および/または第2の回転可能プレートの角変位は、コンピュータデバイス上で稼働するコンピュータソフトウェアプログラムを利用して自動的に制御されてよい。コンピュータソフトウェアプログラムは、コンピュータハードディスクドライブ、USBスティック、CDなどのコンピュータプログラム製品に記憶されてよい。
【0024】
本発明の実施形態によると、工作機械のチャックは、工作機械の対応する部分に対して関連する位置に対象物を位置決めするように構成されてよい。例えばチャックは、回転軸に対して関連する位置に工作物を位置決めすることによって、例えばダイヤモンドターニングツールまたはダイヤモンド砥石などの切断工具に対して関連する位置に工作物を位置決めするように構成されてよい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の回転可能プレートおよび/または第2の回転可能プレートの回転における何らかの理想との食い違いから生じる位置決め誤差は、ルックアップテーブルまたは補償アルゴリズムを利用して補償される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によると、工作物は、チャックに起因する位置決め誤差を測定し、この位置決め誤差を補償する計測学的方法において使用される。このような方法は例えば、チャックに関連するパラメータ、例えばチャックの構成要素の位置に関連する任意のパラメータを測定し、この測定値に従ってこれに対応するように補償することを含んでよい。
【0027】
本発明の実施形態によると、工作物などの対象物は、例えばチャックが回転軸を回る回転運動をしている間に同時に、例えば工作物を旋削するまたは研磨するなどの作業のために回転軸に対して関連する位置に位置決めされる。
【0028】
本発明の実施形態によると、工作機械は、工作物を旋削するまたは研磨するために準備されてよい。例えば工作機械は、例えばレンズを製造するのに使用される型穴(mould cavity)などの少なくとも1つの穴または一列の穴を工作物の表面に機械加工するように構成されてよい。工作機械には、工作物を回転軸に対して関連する位置に位置決めするために本発明の実施形態によるチャックが備わっていてよい。
【0029】
本発明の実施形態によると、工作物は、本発明の実施形態による工作機械によって生み出すことができる。例えば工作物は、例えばレンズを製造するのに使用される型穴など少なくとも1つの穴または一列の穴を備える場合がある。
【0030】
本発明の実施形態によると、本発明の実施形態によるチャックを有する工作機械から作製された工作物から複製部片(replication piece)が形成されてよい。
【0031】
本発明の実施形態によると、少なくとも1つのレンズが、少なくとも1つの型穴から作製されてよく、この型穴は、本発明の実施形態に従って工作物または複製部片上に設けられてよい。本発明の実施形態によると、レンズはレンズ構成の中に設置されてよく、このレンズ構成は、カメラ、電話、望遠鏡またはレンズ構成を利用する他の装置の中に設置されてよい。
【0032】
本発明はまた、工作物を旋削するまたは研磨するために、本発明によるチャックを備える工作機械の利用(使用)に関する。別の実施形態によると、別のステップにおいて少なくとも1つの穴、例えば型穴、例えばレンズ型が工作物の表面に形成される。別の実施形態によると、別のステップにおいて、少なくとも一列の穴、例えば型穴、例えばレンズ型が工作物の表面に形成される。別の実施形態によると、別のステップにおいて工作物から複製部片が形成される。本発明の実施形態によると、別のステップにおいて、少なくとも1つのレンズが形成される。本発明の実施形態によると、別のステップにおいて、レンズは、レンズ構成の中に設置される。本発明の実施形態によると、レンズ構成は、カメラ、電話機、望遠鏡またはレンズ構成を利用する他の装置の中に設置されてよい。
【0033】
以下の説明および添付される図面を利用して本発明をさらに説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】スピンドル上に設置された本発明の実施形態によるチャックの一例の概略図である。
図2図1のチャックを概略的に示す断面図である。
図3】第1および/または第2の回転可能プレートを角変位させることによって対象物の位置を変化させる概略的な例を示す図である。
図4】第1および/または第2の回転可能プレートを角変位させることによって対象物の位置を変化させる概略的な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本開示は、それに限定されるものではなく、特許請求の範囲のみによって限定される。記載される図面は、単に概略的なものであり、非制限的である。図面において、要素の一部のサイズは、例示の目的で誇張される場合があり、縮尺通りに描かれない場合がある。寸法および相対的な寸法は、本開示を実施するための実際の縮小に必ずしも一致しない。
【0036】
さらに記載および請求項における第1の、第2の、第3のなどの用語は、同様の要素を区別するために使用されており、必ずしも連続したまたは時系列的な順番を記述するものではない。これらの用語は、適切な状況下で相互に入れ替え可能であり、本開示の実施形態は、本明細書に記載されるまたは例示されるもの以外の順序で機能する場合もある。
【0037】
さらに、記載および特許請求の範囲における頂部、底部、上に、下になどの用語は、説明する目的で使用されており、必ずしも相対的な位置を記述するものではない。そのように使用される用語は、適切な条件の下に相互に入れ替え可能であり、本明細書に記載される開示の実施形態は、ここに記載されるまたは例示される配向以外で機能する場合もある。
【0038】
さらに種々の実施形態は、「好ましいもの」として参照されるが、本開示が実装され得る一例の様式として解釈されるべきであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0039】
特許請求の範囲において使用される「備える、有する(comprising)」という用語は、その後に列挙される要素または手段に対する限定として解釈されるべきではなく、それは他の要素またはステップを除外するものではない。それは、記載される特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を参照されるように特定するものとして解釈される必要があるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素あるいはその集合の存在または追加を妨げるものではない。よって「Aと、Bを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素Aと、Bのみで構成されるデバイスに限定されるべきではなく、むしろ本開示に関しては、単にデバイスの列挙される構成要素がAと、Bであるだけであり、さらにクレームは、そのような構成要素の等価物も含むように解釈されるべきである。
【0040】
本発明を図1から図4に示される一例の実施形態を利用して説明することにし、これらの図は、以下により詳細に記載される。
【0041】
図1および図2は、本発明によるチャックの一例を示す。チャックは、回転軸19を中心に回転するように配置された作業スピンドルなどのスピンドル14を有する工作機械上に設置されるように構成されてよい。スピンドル14の回転速度は、工作機械が使用される用途に応じて決められてよい。例えばスピンドル14の回転速度は、100から1000RPMの間の範囲内であり得る。チャックは、設置用の境界プレート15を利用してスピンドル14上に設置されてよく、この設置用の境界プレートは、装着手段によってスピンドル14に装着されるように構成されてよい。例えば設置用の境界プレート15は、一揃いのねじを利用して、またはゼロ点設置システムを利用してスピンドル14に固定されてよく、または代替として設置用境界プレート15は、スピンドル14の一部である場合もある。チャックは、例えば工作物などの対象物13を回転軸19に対して適切な位置に位置決めするように構成されてよい。チャックは、好ましくは対象物13がチャック上に配置された後、慣性主軸の1つが、スピンドル14の回転軸19とほぼ一致するように、またはさらにはぴったり一致するように構成されてよい。チャックには、設置手段によって設置用の境界プレート15の上に設置されるように構成されたベースプレート1が備わっていてよい。例えば設置手段は、設置用の境界プレート15上に設けられた対応する孔と併せて一揃いのねじを備える、またはベースプレート1をスピンドル14の設置用の境界プレート15に固定するのに適した当業者に知られた任意の他の設置手段を備える場合もある。ベースプレート1の頂部に、第1の回転可能プレート2が偏心式に設置されてよい。第1の回転可能プレート2は、第1の回転軸20を中心として回転するように構成されてよく、この回転軸は、スピンドル14の回転軸19に対してずらされてよい。第1の回転可能プレートは、保持機構17および22を利用して、より詳細には第1の保持機構と呼ばれる保持機構の第1の部分17を利用してベースプレート上に固定されてよい。第2の回転可能プレート3が、保持機構18および23を利用して、より詳細には第2の保持機構と呼ばれる保持機構の第2の部分18を利用して第1の回転可能プレート2の頂部に偏心式に設置されてよい。第2の回転可能プレート3は、例えば工作物などの対象物13を収容し、第2の回転軸21を中心に回転するように構成されてよい。第2の回転軸21は、第1の回転軸20に対して平行に延び、第1の回転可能プレート2の第1の回転軸20に対してずらされるように配置されてよい。保持機構は、図2に示されるように、チャックの適切な場所で保持力を生成するように配置された、例えば電磁石などの一セットの磁石17および18を備える場合がある。例えば一セットの電磁石17は、第1の回転可能プレート2をベースプレート1上に固定するために第1の回転可能プレート2上と、ベースプレート1の対向する面に位置決めされてよく、第2のセットの電磁石18は、第2の回転可能プレート3を第1の回転可能プレート2上に固定するために、第1の回転可能プレート2と、第2の回転可能プレート3上の対向する面に位置決めされてよい。さらに保持機構17および18は、当業者に既知のチャックのプレートの間の適切な場所で所望される保持力を提供するための他の手段を備える場合もあることを理解されたい。例えば保持機構は、第1および/または第2の回転可能プレート2および3を所望される位置に固定するために吸引力を生成するために構成された真空状態を利用して実現される場合もある。好ましくは第1および第2のディスクは、互いに対して持ち上げることができることで、例えばディスクを互いに対してより回転し易くすることを可能にすることを理解されたい。それに加えて、ディスクを軸方向に移動させるのを可能にする、例えばたわみばね22、23が設けられる。
【0042】
対象物13と合わせたチャックの慣性主軸を回転軸19に対して整列させるために、バランス取り手段が設けられてよい。バランス取り手段6および11を設けることによって、チャックの慣性主軸は、好ましくはチャック上に対象物13を位置決めした後、スピンドル14の回転軸19とほぼ一致するように、またはさらにはぴったり一致するように配置されてよい。結果として、チャックは、バランス取り手段6および11を利用することによって、対象物の位置に関係なく回転軸19上で変わらず均衡が保たれた(バランス取り去れた)状態のままである。例えばバランス取り手段6および11は、第1および第2の回転可能プレート2および3を偏心式に配置することによって生じるチャックの重心のずれを相殺するように構成された釣り合いおもり構成を備えてよい。釣り合いおもり構成には、ベースプレート1上の第1の場所に位置決めされ得る第1の部分6と、第1の釣り合いおもり部分6の場所に対して第1の回転可能プレート2上の第2の場所に位置決めされ得る第2の部分11とが備わっていてよい。釣り合いおもり構成を設けることによって、チャックの各プレートが各々それぞれの軸上でバランス取りされることが保証されることにより、チャックが、第1および/または第2の回転可能プレート2および3の角変位に関係なく変わらず均衡が保たれた状態であることが保証される。釣り合いおもり構成にはさらに、第3の部分が備わっている場合があり、これは示されていないが、対象物13の重量をバランス取りするために第2の回転可能プレート3上の特定の場所に位置決めされ、これにより対象物13がその面上に位置決めされる際、第2の回転可能プレート3がその軸21上でバランス取りされることを保証するように構成される。例えば釣り合いおもり構成は、異なる質量配分を有する対象物13に関してチャックの重心を回転軸19と整列させることができるように調節可能であってよい。結果として、回転軸19上でチャックのバランス取りのために、回転可能プレートの構成を変える必要なしに、異なる質量配分を有する置き換え可能な対象物13と共にチャックを使用することができる。本発明の実施形態によると、釣り合いおもり構成は、対象物13と合わせてチャックの所望されるバランス状態を達成するように釣り合いおもり構成の釣り合いおもりの質量を変更することによって調節されてよい。さらに、釣り合いおもり構成の釣り合いおもりは、釣り合いおもり構成の釣り合いおもりの高さを変更することによって調節される場合もある。釣り合いおもりの高さを調節することによって、チャックを回転軸の周りで回転させる際の遠心力から生じる傾斜モーメントが補償(相殺)されてよい。釣り合いおもり構成は、釣り合いおもりとして、金属などの固い材料から作製されたおもりを備える場合がある。釣り合いおもり構成は、半径方向の位置および/または高さの位置においてそれ自体が作動されてよい。さらに釣り合いおもり構成は、釣り合いおもりとして所定の粘度を有する液体などの流体を含む場合もある。
【0043】
本発明の実施形態によると、釣り合いおもり部分6および11の質量および高さの位置は、チャックが、対象物または工作物がそこに装着されていない状態で完璧にバランス取りされるように、チャックを組み立てる際に正確に決められてよい。釣り合いおもり部分6および11はその後、第2の回転可能プレート3の上に据え付けられる対象物または工作物13の質量および幾何学形状に対して調節されてよい。対象物または工作物は、第2の回転可能プレート3が第2の回転軸上で完璧にバランス取りされた状態のままであるように、それ自体がバランス取りされるように考慮されてよい。釣り合いおもり構成の必要とされる調節は、対象物または工作物対象物13の質量および重心ならびにシステムの幾何学形状の正確な値を知ることによって計算することができる。例えば水平軸を備えた摩擦のない空気軸受作業スピンドルの場合、システムのバランスは、第1の回転軸20および第2の回転軸21の周りで第1および/または第2の回転可能プレートの全ての角変位に関して統計的に検証することができる。精密な磁場均衡機器または超精密機械の回転軸19上に誘発される振動の分析を利用した動的なバランスは最新技術の方法であり、これを使用して、スピンドル14の作動速度に対してチャックのバランスを最適化することができる。動的なバランスを利用して、残存するアンバランス(不均衡)を50g.mm未満ほどの低い値まで低下させることができる。回転軸19に対して対象物13の位置を変えることができるように、チャックには、第1の回転可能プレート2を第1の回転軸20の周りで第1の回転角度にわたって角変位させるように構成された作動機構が備わっていてよい。作動手段はさらに、回転軸19に対して対象物13の位置をさらに変えることができるように、第2の回転可能プレート3を第2の回転軸21の周りで回転の第2の角度にわたって角変位させるために設けられてよい。
【0044】
図2に示されるようにチャックには、空気圧式の構成が備わっている場合があり、これは、スピンドル14上に設けられた空気/真空チャネル25と協働するように構成されてよい。チャックと、スピンドル14の空気/真空チャネル25の間の空気圧式の接続は、設置用の境界プレート15に設けられた空気圧式の接続部26を介して形成されてよい。空気圧式の構成は、対象物および/またはチャックの回転可能プレートのいずれかを固定するために吸引力を生成するように構成されてよい。空気圧式の構成は、保持機構17および18によって生成される保持力を上回るように構成され得る、例えば持ち上げ力など正の空気圧を生成するようにさらに構成される場合もある。例えば第1の回転可能プレート2とベースプレート1の間に持ち上げ力を生成することによって、回転軸19に対して対象物13の位置を変更するために、第1の回転可能プレート2が、第1の回転軸上でベースプレート1に対して少なくともわずかに持ち上げられ、これにより作動機構が、第1の回転可能プレート2を第1の回転軸20の周りで角変位させることを可能にすることができる。同様に空気圧式の構成によって生成される持ち上げ力は、第2の回転可能プレートを第2の回転軸21の周りで角変位させることにより回転軸19に対して対象物13の位置を変更するために、第2の回転可能プレート3を第2の回転軸21上で第1の回転可能プレート2に対して持ち上げるのにも利用されてよい。例えば空気圧式の構成には、少なくとも1つのポンプ、例えば微小なベンチュリポンプなどが備わっている場合があり、これは第2の回転可能プレート3上に対象物13を固定するために吸引力を生成するように構成されてよい。少なくとも1つのポンプはさらに、第1および/または第2の回転可能プレート2および3上に設けられた空気軸受に対して正の空気圧を生成するように構成される場合もある。生成された空気圧は、1から10バールの間であってよく、好ましくは3から7バール、およびより好ましくはおおよそ5バールであってよい。例えばポンプは、第1および/または第2の回転可能プレート2および3上に設けられた空気軸受に空気を誘導することで加圧空気の薄膜を生成して回転可能プレート2と回転可能プレート3の間に極めて低摩擦の耐荷重性の境界面を提供するように構成されてよい。空気圧式の構成は、空気圧式の構成によって生成される持ち上げ力および/または吸引力を制御するように構成された、例えば微小な電磁弁などの一揃いの弁を備えてよい。一揃いの弁の作動を制御するために、少なくとも1つの制御装置12が設けられる場合があり、これは電子的に制御されてよい。制御装置12は、コンピュータデバイスから受信した一揃いの命令に従って弁の作動を制御するように構成されてよい。例えばコンピュータデバイスには、空気圧式の構成の一揃いの弁を電子的に制御するために、チャックの少なくとも1つの制御装置12を操作するための命令を記憶するように構成された、例えばハードディスクドライブ、USBなどのコンピュータプログラム製品が備わっていてよい。制御装置12はさらに、空気圧式の構成の動作を制御するように構成される場合もある。
【0045】
本発明の実施形態によると、作動機構には、例えばダイレクトドライブまたはギヤードDCブラシレスモータ、あるいは当業者に既知の任意の他の好適なタイプのモータ構成などの少なくとも1つのモータ5および9が備わっている場合がある。少なくとも1つのモータ5および9は、第1および/または第2の回転可能プレート2および3をそのそれぞれの回転軸を中心として角変位させるように構成されてよい。例えば各プレートには、各回転可能プレート2および3上の所望される場所に位置決めされたそれぞれのモータ5および9が備わっていてよい。各モータ5および9は、それぞれの回転可能プレート2および3を、そのそれぞれの回転軸20および21の周りで角変位させることにより対象物13の位置を回転軸19に対して変更することを可能にするように構成されている。各々の回転可能プレート2および3には、回転エンコーダ4および10が備わっていてよく、これらは、各それぞれの回転可能プレートの回転の角度を検出するように構成されている。回転エンコーダ4および10は、第1の回転可能プレート2および/または第2の回転可能プレート3の角変位を監視するように構成されており、第1および/または第2の回転可能プレート2および3の、そのそれぞれの回転軸20および21の周りでの現在の回転の角度を示す対応するアナログまたはデジタル出力信号を生成することができる。回転エンコーダは、例えばアブソリュート回転エンコーダ、インクリメンタルエンコーダ、リゾルバなどの任意の好適なデジタルまたはアナログ式であってよい。作動機構は、第1の回転可能プレート2および/または第2の回転可能プレート3の角変位を制御するように構成された制御装置12を備えてよい。例えば制御装置12は、第1の回転可能プレート2および3のそのそれぞれの回転軸20および21の周りでの所望される角変位に相当する一揃いの関連する制御信号をモータ5および9に提供することによって、第1および/または第2の回転可能プレート2および3の角変位を制御するように構成されてよい。制御装置12は、制御装置のメモリ(EPROMまたはEEPROMなど)に記憶された、あるいはコンピュータデバイスから受信した一揃いの命令に従って第1および/または第2の回転可能プレート2および3の角変位を制御するように構成される場合もある。例えばコンピュータデバイスには、チャックの作動装置機構を操作するための命令を記憶するように構成された、例えばハードディスクドライブ、USBスティック、CDなどのコンピュータプログラム製品が備わっていることにより、第1および/または第2の回転可能プレート2および3の角変位を電子式に制御する場合もある。
【0046】
本発明の実施形態によると、設置用の境界プレート15には、回転する間様々な電子部品を作動させるために、電力を超精密旋盤の静止部分からチャックに伝達することができるように、チャックの対応する導電性の面と協働するように構成されたスリップリング16が備わっていてよい。対応する導電性の面は、一揃いのブラシを備えてよく、これらは、作動装置を利用して重要な機械加工動作の間後退させられるように構成されてよい。結果として、スリップリングに当たるブラシ16の摩擦または圧力によって生じるスピンドル14の回転運動の乱れを回避することができる。代替として、電力は誘導コイルを利用してチャックに供給される場合がある、あるいはチャックまたは設置用境界上に据え付けられた電池から供給される場合もある。
【0047】
本発明の実施形態によるチャックは、対象物が新たな位置に移動される毎に回転軸19上でチャックの再バランス取り(リバランス)の必要なしに、工作物などの対象物を回転軸19に対して様々な場所に位置決めするように構成される。これは、回転軸に対して対象物13の位置を変えることができることように、第1および第2の回転可能プレート2および3を偏心式に設置することによって達成される。第1および第2の回転可能プレートの必要な回転角度は、回転軸19と整列させるために工作物の特定の地点の所望されるデカルト座標を考慮すると、以下の方程式または任意の等価変換を利用して計算することができる。
【数1】

ここで、
eは、第2の回転軸21である回転軸Bと、第1の回転軸20である回転軸Aの間の偏心距離であり、
アルファ(α)は、回転軸Aの角度であり(好ましくは0から360°)
ベータ(β)は、回転軸Bの角度であり(好ましくは0から180°)
ガンマ(γ)は、誘発される回転角度である。
さらに、軸Aは、第1の回転可能プレートの特定の位置に関して回転軸19とほぼ一致する、またはさらにはぴったり一致することが想定される。上記の方程式を用いて、対象物13を軸に対して様々な場所に移動させることができる。これは図3および図4に概略的に示されている。アルファの角度(好ましくは0から360°)およびベータの角度(好ましくは0から180°)に関して上記で挙げた角度範囲を用いていかなる位置にも達することができるが、このような角度はまた360°にわたって連続する場合もある。図3では、対象物は、第1および/または第2の回転可能プレート2および3を角変位させることによって軸19が第2の回転軸21とほぼ一致するように、またはさらにはぴったり一致するように位置決めされる。回転軸19のその場所で切断工具を利用して穴24が形成されてよい。図4では、第1の回転可能プレート2は、第1の回転角度を回るように回転され、第2の回転可能プレート3は第2の回転角度を回るように回転されることで、新たな対象物13が回転軸19に対して新たな場所に位置決めされ、この場所で切断工具を利用して新たな穴24が形成されてよい。第1および/または第2の回転可能プレート2および3をそれぞれの回転角度を回るように継続的に回転させることによって、対象物を回転軸19に対する新たな位置に移動させることができ、この位置に新たな穴24が形成されてよい。さらに対象物を軸に対して正確に配置することが可能であることによって、高精度の方法、例えばダイヤモンドターニングなどを使用することができる。
【0048】
本発明の実施形態によると、第1の回転軸20と第2の回転軸21の間の距離および第1の回転軸20とメインの回転軸19の間の距離として定義される2つの回転可能プレートの偏心距離が所定の範囲内にあるように、第2の回転可能プレート3は第1の回転可能プレート2の上に位置決めされる。例えば、第1の回転可能プレート2の少なくとも1つの回転角度に関して、第2の回転軸21が回転軸19とほぼ一致するように配置される際、偏心距離は、工作物にある2つの穴の間の最大ピッチ、すなわち中心間の距離(d)の1/4まで短くなるように構成されてよい。
【0049】
本発明の実施形態によると、工作物を旋削および/または研磨するための工作機械が設けられてよい。工作機械は、工作物の表面に少なくとも1つの穴24または一列の穴24を形成するように構成されてよい。例えば少なくとも1つの穴は、レンズの製造のための型穴(mould cavity)であってよい。工作機械は、本発明の実施形態によるチャックを備えてよく、これは工作物を機械のスピンドルの回転軸19に対して関連する位置に位置決めすることで、機械加工作業を工作物の表面上で行うことができるように構成されてよい。本発明の実施形態による工作機械によって作製された工作物を利用して複製部片が形成されてよく、これはレンズなどの成型製品を製造するのに使用されてよい。工作物または複製部片のいずれかから製造されたレンズは、携帯電話、カメラ、望遠鏡、顕微鏡に設けられるものなどのレンズ構成においてその後利用されてよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ベースプレート
2 第1の回転可能プレート
3 第2の回転可能プレート
4 第2のエンコーダ
5 第2のモータ
6 第1の釣り合いおもり
7 第1のローラ軸受
8 第2のローラ軸受
9 第1のモータ
10 第1のエンコーダ
11 第2の釣り合いおもり
12 制御装置
13 対象物/工作物
14 スピンドル
15 設置用の境界プレート
16 スリップリング
17 第1の保持機構
18 第2の保持機構
19 主回転軸
20 第1の回転軸
21 第2の回転軸
22 第1のたわみばね
23 第2のたわみばね
24 穴
25 空気チャネル
26 空気圧式接続部
図1
図2
図3
図4