【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
患者の心臓の中に人工弁を固着する方法であって、
該方法は、
該人工弁を提供することであって、該人工弁は、アンカーを備え、該アンカーは、心房スカート、環状領域、心室スカート、および複数の弁尖を有し、該アンカーは、該心臓に送達するための折畳み構成、および該心臓と固着するための拡張構成を有する、ことと、
該患者の心臓の中に該人工弁を設置することと、
該患者の自然僧帽弁の上面の上に横たわるように、半径方向外向きに該心房スカートを拡張し、該心房の一部分に対して該心房スカートを固着することと、
自然僧帽弁輪と一致するように、およびそれに係合するように、該アンカーの該環状領域を半径方向に拡張させることと、
該心室スカートを半径方向に拡張し、それにより、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させることと
を含む、方法。
(項目2)
前記人工弁の少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記人工弁を設置することは、前記心臓の右心房から左心房まで該人工弁を経中隔的に送達することを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記人工弁を設置することは、前記心臓の外側の領域から該心臓の前記左心室まで該人工弁を経心尖的に送達することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記心房スカートを拡張させることは、該心房スカートから離れるように制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、該心房スカートの半径方向拡張を可能にすることを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記心房スカートは、前記制約シースが該心房シースから除去されたときに自己拡張する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記人工弁に力を印加することをさらに含み、該力を印加することにより、前記心房スカートが前記僧帽弁の前記上面に係合することを確実にする、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記心房スカートは、複数の鉤を備え、該心房スカートを拡張することは、前記僧帽弁の前記上面の中に該鉤を固着することを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記心房スカートを拡張することは、前記自然僧帽弁の前記上面に対して該心房スカートを密閉することを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記環状領域を半径方向に拡張することは、該環状領域から離れるように制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、該環状領域の半径方向拡張を可能にすることを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記環状領域は、前記制約シースが該環状領域から除去されたときに自己拡張する、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記環状領域を半径方向に拡張することは、該環状領域を非対称的に拡張することを含み、該非対称に拡張することにより、該環状領域の前方部分は実質的に平坦であり、該環状領域の後方部分は円筒形状である、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記心室スカートは、該心室スカートの前方部分上に三角固着タブをさらに備え、該心室スカートを半径方向に拡張することは、前記自然僧帽弁の前尖の第1の側面上の第1の
線維三角に対して該三角固着タブを固着することを含み、該三角固着タブを固着することにより、該自然前尖および隣接腱索が、該三角固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉される、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記心室スカートは、該心室スカートの前記前方部分上に第2の三角固着タブをさらに備え、該心室スカートを半径方向に拡張することは、前記第1の
線維三角の反対側の第2の
線維三角に対して該第2の三角固着タブを固着することを含み、該第2の三角固着タブを固着することにより、前記自然前尖および隣接腱索が、該第2の三角固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉される、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記心室スカートは、該心室スカートの後方部分上に後方心室固着タブをさらに備え、該心室スカートを半径方向に拡張することは、前記自然僧帽弁の後尖を覆って該後方心室固着タブを固着することを含み、該後方心室固着タブを固着することにより、該心室スカートは、該後尖と前記心臓の心室壁との間に着座する、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記心室スカートを半径方向に拡張することは、該心室スカートから離れるように制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、該心室スカートの半径方向拡張を可能にすることを含む、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記心室スカートは、前記制約シースが該心室スカートから除去されたときに自己拡張する、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記心室スカートは、複数の鉤を備え、該心室スカートを拡張することは、心臓組織の中に該鉤を固着することを含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記人工弁は、複数の人工弁尖を備え、前記心室スカートを半径方向に拡張することは、前記自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させ、それにより、該人工弁尖への該自然僧帽弁尖の干渉を防止することを含む、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記心室スカートを半径方向に拡張することは、心室壁に接触することなく、および左心室流出路を塞ぐことなく、前記自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させることを含む、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記心室スカートを半径方向に拡張することは、該心室スカートを非対称的に拡張することを含み、該非対称に拡張することにより、該心室スカートの前方部分は実質的に平坦であり、該心室スカートの後方部分は円筒形状である、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記心房スカートは、整列要素を備え、前記方法は、前記患者の弁に対して該整列要素を整列させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記弁は、僧帽弁を備え、前記整列させることは、前記整列要素を大動脈起始部と整列させ、該僧帽弁の前尖の2つの
線維三角の間に該整列要素を配置することを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記整列させることは、前記人工弁を回転させることを含む、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記人工弁は、交連に連結される複数の人工弁尖を備え、前記方法は、送達カテーテルから該交連を解放することを含む、項目1に記載の方法。
(項目26)
前記人工弁は、三尖弁尖構成を備える、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記人工弁は、開放構成および閉鎖構成を有し、該開放構成において、前記人工弁尖が相互から離れて配置され、該閉鎖構成において、該人工弁尖が相互に係合し、血液は、該開放構成における該人工弁を通って自由に流れ、該人工弁を横断する逆行血流は、該閉鎖構成において実質的に妨げられる、項目1に記載の方法。
(項目28)
僧帽弁逆流を低減または排除することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目29)
前記人工弁は、治療薬を備え、前記方法は、該人工弁から隣接組織の中に該治療薬を溶出することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目30)
人工心臓弁であって、
該人工心臓弁は、
心房スカート、環状領域、および心室スカートを有するアンカーであって、該アンカーは、心臓に送達するための折畳み構成、および該人工心臓弁を患者の心臓に固着するための拡張構成を有する、アンカーと、
複数の人工弁尖であって、該弁尖の各々は、第1端および自由端を有し、該第1端は、該アンカーと連結され、該自由端は、該第1端の反対側にある、人工弁尖と
を備え、
該人工心臓弁は、開放構成および閉鎖構成を有し、該開放構成において、該人工弁尖の該自由端が相互から離れて配置されることにより、順行血流がそれを通り越すことを可能にし、該閉鎖構成において、該人工弁尖の該自由端が相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する、人工心臓弁。
(項目31)
前記心房スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目32)
前記心房スカートは、それに連結される複数の鉤を備え、該複数の鉤は、前記患者の僧帽弁の上面の中に該心房スカートを固着するようにさらに適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目33)
前記心房スカートは、折畳み構成および拡張構成を有し、該折畳み構成は、前記患者の心臓に送達するために適合され、該拡張構成は、該折畳み構成に対して半径方向に拡張されており、該患者の自然僧帽弁の上面の上に横たわるように適合されており、それにより、心房の一部分に対して該心房スカートを固着する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目34)
前記心房スカートは、拘束されていないときに、前記折畳み構成から前記半径方向拡張構成まで自己拡張する、項目33に記載の人工心臓弁。
(項目35)
前記心房スカートは、1つ以上の放射線不透過性マーカーを備える、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目36)
前記心房スカートは、複数の軸方向に配向された支柱を備え、該複数の支柱は、コネクタ要素によって一緒に接続され、該複数の相互接続された支柱は、一連の頂点および谷間を形成する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目37)
前記環状領域の少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目38)
前記環状領域は、折畳み構成および拡張構成を有し、該折畳み構成は、前記患者の心臓に送達するために適合され、該拡張構成は、該折畳み構成に対して半径方向に拡張されており、自然僧帽弁環に順応し、それに係合するように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目39)
前記環状領域は、拘束されていないときに、前記折畳み構成から前記拡張構成まで自己拡張する、項目38に記載の人工心臓弁。
(項目40)
前記環状領域は、非対称的なD字形の断面を備え、該非対称的なD字形の断面は、実質的に平坦な前方部分と、円筒形状の後方部分とを有する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目41)
前記環状領域は、複数の軸方向に配向された支柱を備え、該複数の支柱は、コネクタ要素によって一緒に接続され、該複数の相互接続された支柱は、一連の頂点および谷間を形成する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目42)
前記軸方向に配向された支柱のうちの1つ以上は、それを通って延在する1つ以上の縫合糸穴を備え、該縫合糸穴は、縫合糸を受容するようにサイズ決定される、項目41に記載の人工心臓弁。
(項目43)
前記心室スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われている、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目44)
前記心室スカートは、非対称的なD字形の断面を備え、該断面は、実質的に平坦な前方部分と、円筒形状の後方部分とを有する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目45)
前記心室スカートは、折畳み構成および拡張構成を有し、該折畳み構成は、前記患者の心臓に送達するために適合され、該拡張構成は、該折畳み構成に対して半径方向に拡張されており、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させるように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目46)
前記心室スカートは、拘束されていないときに、前記折畳み構成から前記拡張構成まで自己拡張する、項目45に記載の人工心臓弁。
(項目47)
前記心室スカートは、該心室スカートの前方部分上に配置された三角固着タブをさらに備え、該三角固着タブは、前記患者の僧帽弁の前尖の第1の側面上の第1の
線維三角に対して固着されるように適合され、それにより、該前尖および隣接腱索が、該三角固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目48)
前記心室スカートは、該心室スカートの前記前方部分上に配置される第2の三角固着タブをさらに備え、該第2の三角固着タブは、前記第1の
線維三角の反対側の第2の
線維三角に対して固着されるように適合されることにより、前記前尖および隣接腱索が、該第2の三角固着タブと前記アンカーの前面との間に捕捉される、項目47に記載の人工心臓弁。
(項目49)
前記心室スカートは、該心室スカートの後方部分上に配置される後方心室固着タブをさらに備え、該後方心室固着タブは、前記患者の僧帽弁の後尖を覆って固着されるように適合され、それにより、該後方心室固着タブは、該後尖と該患者の心臓の心室壁との間に着座させられる、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目50)
前記心室スカートは、それに連結される複数の鉤をさらに備え、該複数の鉤は、心臓組織の中に該心室スカートを固着するように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目51)
前記心室スカートは、複数の支柱を備え、該複数の支柱は、コネクタ要素によって一緒に接続され、該複数の相互接続された支柱は、一連の頂点および谷間を形成する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目52)
前記支柱のうちの1つ以上は、それを通って延在する1つ以上の縫合糸穴を備え、該縫合糸穴は、縫合糸を受容するようにサイズ決定される、項目51に記載の人工心臓弁。
(項目53)
前記複数の人工弁尖は、三尖弁尖構成を備える、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目54)
1つ以上の人工弁尖の少なくとも一部分は、組織または合成材料を備える、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目55)
前記複数の人工弁尖のうちの1つ以上は、1つ以上の支柱に連結され、該1つ以上の支柱は、前記心室スカートに対して半径方向内向きに付勢される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目56)
前記1つ以上の支柱は、それを通って延在する1つ以上の縫合糸穴を備え、該縫合糸穴は、縫合糸を受容するようにサイズ決定される、項目55に記載の人工心臓弁。
(項目57)
前記人工弁尖のうちの1つ以上は、交連柱に連結され、該交連柱は、該交連柱を送達デバイスと解放可能に係合させるように適合される交連タブを有する、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目58)
前記アンカーの前方部分に連結される整列要素をさらに備え、該整列要素は、前記患者の心臓の大動脈起始部と整列させられ、該患者の僧帽弁の前尖の2つの
線維三角の間に配置されるように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目59)
前記整列要素は、前記心房スカートと連結される、項目58に記載の人工心臓弁。
(項目60)
前記人工心臓弁は、それに連結される治療薬をさらに備え、該治療薬は、そこから溶出されるように適合される、項目30に記載の人工心臓弁。
(項目61)
人工心臓弁を患者の心臓に送達するための送達システムであって、
該システムは、
管腔が自身を通って延在している内側ガイドワイヤシャフトであって、該管腔は、ガイドワイヤを摺動可能に受容するように適合されている、内側ガイドワイヤシャフトと、
該内側ガイドワイヤシャフトを覆って同心円状に配置されるハブシャフトと、
該ハブシャフトを覆って摺動可能および同心円状に配置されるベルシャフトと、
該ベルシャフトを覆って摺動可能および同心円状に配置されるシースと、
該送達システムの近位端付近のハンドルであって、該ハンドルは、アクチュエータ機構を備え、該アクチュエータ機構は、該ベルシャフトおよび該シースを前進および後退させるように適合される、ハンドルと
を備える、システム。
(項目62)
前記人工心臓弁をさらに備え、該人工心臓弁は、半径方向の折畳み構成で前記シースの中に収納される、項目61に記載のシステム。
(項目63)
前記人工心臓弁は、
心房スカート、環状領域、および心室スカートを有するアンカーと、
複数の人工弁尖であって、該弁尖の各々は、第1端および自由端を有し、該第1端は、該アンカーと連結され、該自由端は、該第1端の反対側にあり、該人工心臓弁は、開放構成および閉鎖構成を有し、該開放構成において、該人工弁尖の該自由端が相互から離れて配置されることにより、順行血流がそれを通り越すことを可能にし、該閉鎖構成において、該人工弁尖の該自由端が相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する、人工弁尖と
を備える、項目62に記載のシステム。
(項目64)
前記ベルシャフトに対する前記シースの近位への後退は、前記人工心臓弁から拘束を除去し、それにより、該人工心臓弁が自己拡張して前記患者の自然心臓組織と係合することを可能にする、項目62に記載のシステム。
(項目65)
前記人工心臓弁は、前記ハブシャフトと解放可能に連結され、該ハブシャフトに対する前記ベルシャフトの近位への後退は、該ハブシャフトから該人工心臓弁を解放する、項目62に記載のシステム。
(項目66)
前記アクチュエータ機構は、回転ホイールを備える、項目61に記載のシステム。
(項目67)
前記ハブシャフトに連結される組織貫通遠位先端をさらに備え、該組織貫通遠位先端は、前記患者の心臓を通過し、該患者の心臓の切開を拡張するように適合される、項目61に記載のシステム。
(項目68)
ピンロック機構をさらに備え、該ピンロック機構は、前記ハンドルと解放可能に連結され、該ピンロック機構は、前記シースの近位への後退を制限する、項目61に記載のシステム。
本発明は、概して、医療デバイスおよび方法に関し、より具体的には、僧帽弁逆流を治療するために使用される人工弁に関する。本開示は、僧帽弁逆流を治療するための人工弁の使用に焦点を当てているが、これは、限定的となることを目的としない。本明細書で開示される人工弁は、また、他の心臓弁または静脈弁を含む他の身体弁を治療するために使用されてもよい。例示的な心臓弁は、大動脈弁、三尖弁、または肺動脈弁を含む。
【0013】
本主題の実施形態では、経カテーテル人工僧帽弁、ならびに同人工弁を配備する経カテーテル方法および方法が提供される。ある実施形態では、人工僧帽弁は、薄型心房スカート領域の中に拡張する幾何学形状を有する、自己拡張式または拡張可能アンカー(すなわち、フレーム)部分内に付加される複数の弁尖を備える組織型人工一方向弁構造と、概して自然僧帽弁輪に一致するように寸法決定される環状領域と、自然僧帽弁尖を変位させる心室スカート領域と、弁輪下心室空間の中に(すなわち、人工弁を通る血液の流出の方向に)延在し、人工弁構造の効率およびその弁尖上の負荷分配を最適化するように構成される、複数の弁尖交連とを備える。アンカー部分はまた、好ましい実施形態では、その長手軸に沿って非対称であってもよく、心房スカート領域、環状領域、および/または心室スカート領域は、典型的な自然僧帽弁器官の非対称的な輪郭および特徴の密接した適応を促進するために、異なって構成された前面および後面を有する。この非対称性は、本質的に、以下でさらに論議されるように、および/または製造過程中に採用される成形あるいは形成ステップの結果として、アンカー部分の構造的構成に起因してもよい。
【0014】
人工弁構造は、好ましい実施形態では、部分的に、人工僧帽弁の製造を単純化するために、二尖弁または三尖弁を備えてもよいが、当業者に容易に明白となるように、他の構成が可能である。弁尖は、凍結または化学保存した心膜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、カンガルー)等の1つまたは複数の標準生物人工弁材料から、あるいは当技術分野で周知である標準の好適な合成人工弁材料(例えば、繊維強化基質材料)から加工されてもよく、任意の標準の好適な方式で弁尖を形成するように、アンカーに縫い付けられ、または別様に接着されてもよい。
【0015】
人工弁の効率および人工弁尖上の負荷分配を最適化するために、交連は、弁輪下空間の中へ下流に、カンチレバー型様式で略軸方向に延在し、人工弁構造を通る血流と関連付けられる力を分配するように、それらの軸方向長さに沿って半径方向および横方向に屈曲することが可能である。いくつかの実施形態では、(人工僧帽弁が延長状態であるときに)交連は、心室の収縮中の人工弁構造の閉鎖に役立つために、血流の順方向に沿って狭くなる、いくぶん切頭円錐形の開口を画定する。効率および弁尖上の負荷分配をさらに最適化するために、交連は、弓形の継ぎ目に沿って弁尖の付着を提供するよう、成形および寸法決定されてもよく、また、例えば、補強支柱の追加または削除を通して、あるいは選択された領域中の交連の厚さの変動を通して、それらの軸方向長さに沿った異なる点またはゾーンで選択的に可撓性にされてもよい。
【0016】
人工僧帽弁のアンカー部分は、好ましくは、人工僧帽弁が、小型の略管状送達構成に圧縮され、本明細書でさらに説明される配備構成に拡張されることを可能にするよう切断されている、単一の金属材料から加工される。自己拡張式実施形態では、人工僧帽弁のアンカー部分は、ニッケルチタン合金ニチノール等の形状記憶合金(SMA)から加工されてもよく、拡張可能実施形態では、アンカー部分は、体内に埋め込むために好適である、クロム合金またはステンレス鋼等の任意の金属材料から加工されてもよい。いくつかの実施形態では、金属材料は、アンカー部分の全体を通して単一の厚さであってもよく、他の実施形態では、ある領域中でアンカー部分の可撓性を増加または減少させるように、および/または配備に備えた圧縮過程および配備中の拡張の過程を制御するように、その特定の領域中でアンカー部分によって及ぼされる半径方向力の変動を促進するよう、厚さが異なってもよい。
【0017】
配備されたときに、人工僧帽弁の心房スカート領域は、自然僧帽弁輪の心房表面に対して平坦に横たわり、心房表面を覆うよう、および心臓の隣接心房表面の少なくとも一部分に対して人工僧帽弁を固着するよう、略半径方向外向きに延在する。心房スカート領域は、血流中の潜在的血栓形成乱流を最小化するために、薄型軸方向外形を有し(心臓の心房の中にわずかにのみ延在する)、好ましい実施形態では、心房表面に対して心房スカート領域を密閉するため、および人工僧帽弁を通して心房血液を注ぎ込むことを促進するために、上記で説明される種類の標準生物または合成人工弁材料で覆われてもよい。いくつかの実施形態では、心房スカート領域はさらに、心房心臓表面への配備した人工弁の固着をさらに促進するように、心房鉤または突起を備える。配備時に自然僧帽弁内の人工僧帽弁の配向および整列を促進するために、アンカー部分が縦方向に非対称である実施形態では、人工僧帽弁のアンカー部分の心房スカート領域は、好ましくは、(血管造影法、コンピュータ断層撮影法等によって)心房スカート領域の残りの部分と区別され、それにより、配備中に配向ガイドとして使用されてもよい、整列構造をさらに備えてもよい。最も好ましくは、整列構造は、半径方向に拡張して心房表面の大動脈起始部分に適応するように構成される、心房スカート領域の前面の伸長を備えてもよい。
【0018】
人工僧帽弁の環状領域は、上述のように、配備されたときに、概して自然僧帽弁輪に一致し、かつ自然僧帽弁輪に対して固着するように寸法決定される。好ましい実施形態では、配備した環状領域は、典型的な自然僧帽弁の輪郭に適合するために好適な略D字形の輪を画定してもよく、自然僧帽弁輪に対して環状領域を密閉するように、以前に説明された種類の標準生物または合成人工弁材料で覆われてもよい。
【0019】
心室スカート領域は、心室空間中で配備されたときに、自然僧帽弁に対して略半径方向外向きに拡張するが、左心室流出路を塞ぐまで、または心室壁に接触するまでは拡張しない。心室空間中で変位した自然弁尖に対して人工僧帽弁を固着するために、完全配備心室スカート領域の最大半径方向変位は、自然僧帽弁の円周よりもわずかに大きくなるように選択される。好ましい実施形態では、心室スカート領域はまた、そこへ配備した人工弁をさらに固着するように、心室および/または自然弁尖鉤または突起部を備える。最も好ましくは、心室スカート領域は、非対称性であり、その突起部は、自然僧帽弁の前尖の両側で
線維三角に対して固着するために、心室スカート領域の前面に位置する2つの三角固着タブと、自然僧帽弁の後尖を覆って固着するために、心室スカート領域の後面に位置する1つの後方心室固着タブとを備える。これらのタブには、以下でさらに詳細に説明されるような配備制御領域が関連付けられる。
【0020】
心室スカート領域はまた、いくつかの実施形態では、変位した自然弁尖に対して心室スカート領域を密閉するので、それにより、心室の収縮中にその閉鎖を支援するように、人工弁構造に向かって(心室の収縮中に)心室血液を注ぎ込むために、以前に説明された種類の標準生物または合成人工弁材料で覆われてもよい。
【0021】
心室空間中の心房表面に対する人工僧帽弁、自然弁輪、および変位した自然弁尖の複合3ゾーン固着(好ましい実施形態では、三角および後方心室固着からの第4の固着ゾーンによって補足される)は、心房または心室の収縮中に、人工弁が移動すること、または自然弁輪内から外れることを防止し、単一の固着ゾーンのみで、またはこれら4つの固着ゾーンの任意の組み合わせで固着される人工弁と比較して、任意の所与の固着ゾーンで印加されるために必要とされる固着圧力を低下させる。各ゾーンで自然構造に対して及ぼされるために必要とされる半径方向力の結果として生じる低減は、自然僧帽弁器官の変位によって引き起こされる、近くの大動脈弁または大動脈起始部の閉塞または衝突の危険性を最小化する。人工僧帽弁の複合3または4ゾーン固着はまた、以下で説明されるように、人工僧帽弁の設置および/または再配置を促進する。
【0022】
自然僧帽弁器官内で人工僧帽弁を配備するために、人工弁は、最初に圧縮され、当業者に周知である種類の好適に適合された従来のカテーテル送達システムの中に搭載される。好ましくは、後の配備を促進するために、人工弁の交連および関連人工弁構造は、カテーテル送達システムの内側管腔内で捕捉され、アンカー領域の残りの部分は、カテーテル送達システムの二次外側管腔内で捕捉される。次いで、搭載した人工僧帽弁は、従来のカテーテル送達システムを使用して、その圧縮形態で、心臓の左心房の中に送達される(典型的には経中隔的または経心尖的に)。人工弁は、その交連を介してカテーテル送達システムに解放可能に付着され、心房空間の中への通行中に、その(好ましくは二重管腔)送達シースによって遮蔽される。いったん人工弁が左心房の中に誘導されると、人工弁の種々の領域の拡張が進むことを可能にするために、カテーテル送達システムの送達シースは、以下で説明されるように後退させられる。当然ながら、自己拡張式実施形態では、人工弁の拡張は、送達シースの後退時に自発的に起こり、拡張可能実施形態では、バルーン等のカテーテル膨張構造が、拡張を達成するために必要とされる。
【0023】
人工僧帽弁の配備は、配備されている人工弁の特定の実施形態の特徴に応じて、異なって進んでもよい。例えば、心室スカート領域中に三角固着タブおよび後方心室固着タブ(ならびに、好ましくは、心房領域中の整列構造)を備える、非対称実施形態では、これらのタブは、好ましくは、それぞれ、自然
線維三角および後尖に対するこれらのタブの固着を促進するために、心室スカート領域の残りの部分の配備の前に配備されてもよい。
【0024】
第1の一般配備ステップでは、人工僧帽弁の心房スカート領域は、心臓の左心房内でカテーテル送達シースの対応部分を後退させることによって拡張することを許可され(または、送達シースの対応部分の後退後にバルーン拡張され)、次いで、拡張した心房スカート領域は、自然僧帽弁の心房表面を覆って設置され、心臓の隣接心房表面の少なくとも一部分に対して固着される。心房スカート領域が整列構造を備える、好ましい実施形態では、この第1の一般配備ステップはさらに、2つのサブステップに分けられてもよく、カテーテル送達シースは、最初に、(所望の位置に人工僧帽弁を配向するような方法で、送達システムの操作を促進するよう可視化されてもよいように)整列構造の拡張を可能にするまでのみ後退させられ、次いで、いったん人工弁の初期整列が満足いくように思われると、心房スカート領域の残りの部分の拡張、設置、および固着を可能にするようにさらに後退させられる。整列構造が心房スカート領域の後面の伸長を備える、実施形態では、そのような初期整列は、大動脈起始部に隣接し、かつ自然前尖の
線維三角の間に設置されるように、整列構造の回転および/または整列を含む。
【0025】
次に、人工弁の環状領域は、第2の固着ゾーンを作成するため、および人工弁構造を通る血流のための好適な開口部を作成するために、自然僧帽弁輪に係合するよう(すなわち、少なくともその大部分の全体を通して自然弁輪に接触するよう)カテーテル送達シースのさらなる後退によって拡張することが許可される。
【0026】
次いで、心室スカート領域中の三角固着タブおよび後方心室固着タブを備える実施形態では、カテーテル送達シースは、タブが拡張することを可能にするまでさらに後退させられる一方で、タブの配備制御領域を含む、人工弁の心室スカート領域の残りの部分は、覆われたままとなる。配備制御領域が依然として送達システム内で保持され、心房スカート領域が心房表面に対して固着されると、タブは、自然僧帽弁の対応特徴との係合を促進するように半径方向外向きに突出する。後方心室固着タブは、後尖への腱索付着が欠けている、僧帽弁の後尖の中央で整列させられ、後尖と心室壁との間に着座するように後尖を通り越させられる。2つの三角固着タブは、それらの頭部が
線維三角に設置された状態で、前尖の両側に設置される。人工弁のわずかな回転および再整列がこのときに起こり得る。
【0027】
いったんアセンブリが満足に設置され、タブが整列させられると、カテーテル送達シースは、心室スカート領域の残りの部分の拡張を可能にして、僧帽弁器官内で人工弁を固定し、僧帽弁輪を密閉するようにさらに後退させられてもよい。外側カテーテル送達シースの完全後退は、心室スカート領域を解放し、固着タブがそれらの固着場所に近接することを可能にする。人工弁が拡張するにつれて、三角タブが
線維三角に対して固着し、タブと人工弁アセンブリの前面との間に自然前尖および腱索を捕捉し、後方心室タブが心室壁と後尖との間に固着し、後方心室タブと人工弁アセンブリの後面との間に後尖を捕捉する。心室スカート領域の残りの部分は、自然僧帽弁尖および隣接生体構造に対して拡張し、それにより、自然弁尖内で密閉漏斗を作成し、人工弁機能の閉塞を回避するように、人工交連から自然弁尖を変位させる。人工弁の交連が依然として送達システム内で捕捉されると、正確な設置、固着、および密閉を確保するように、非常に軽微な調整が依然として行われてもよい。
【0028】
心室スカート領域中の三角固着タブおよび後方心室固着タブを備えない実施形態では、心室スカート領域からのカテーテル送達シースの後退は、当然ながら、人工弁の心室スカート領域が自然僧帽弁に対して拡張することを可能にするように、および加えて、心室空間中の変位した自然弁尖に対して人工弁を固着するように、人工弁の心房スカートおよび環状領域が最初に固着された後に、1ステップで行われてもよい。任意で、この時点では依然として、その交連を介してカテーテル送達システムに解放可能に付着される、人工僧帽弁は、心房スカート領域と心臓の心房表面との間で、より大きい着座力を生成するように、および心室スカート領域に存在してもよい任意の心室および/または自然弁尖鉤の付加的な購入を提供するように、心室空間の中にさらに下流に、わずかに駆動されてもよい。心房スカート領域、環状領域、および心室スカート領域のうちの1つ以上が好適な生物または合成人工弁材料で覆われる、実施形態では、シールもまた、人工弁のそれぞれの領域と自然僧帽弁器官の関連ゾーンとの間に形成されてもよい。
【0029】
最終的に、いったん人工弁の満足できる設置が達成されると、交連がカテーテル送達システムから解放され、カテーテル送達システムが引き出されることを可能にし、自然僧帽弁器官の機能的代替として、人工僧帽弁を定位置に残す。交連の解放時に、人工弁はさらに、送達システムによって及ぼされる残存圧力が放出されるにつれて、短縮および着座の最終段階を受けてもよい。心房スカート領域は、この圧力の放出からわずかに反動し、人工弁をわずかにさらに左心房の中まで入れ、それにより、任意の関連鉤、突起部、またはタブを含む、心室スカート領域をさらに着座させる。三角固着タブを備える実施形態では、その着座は、人工弁に対して捕捉した前尖を堅く引き、それにより、左心室流出路(LVOT)の閉塞を回避または最小化し、弁傍漏出を防止するように弁輪の中で心室スカート領域をしっかりと着座させる。いったん最終配備が完了すると、送達システムが後退させられ、除去される。
【0030】
本発明の第1の側面では、患者の心臓の中で人工弁を固着する方法は、人工弁を提供するステップであって、人工弁は、心房スカート、環状領域、心室スカート、および複数の弁尖を有する、アンカーを備え、アンカーは、心臓に送達するための折畳み構成と、心臓と固着するための拡張構成とを有する、ステップと、患者の心臓の中に人工弁を設置するステップとを含む。方法はまた、患者の自然僧帽弁の上面の上に横たわるよう、半径方向外向きに心房スカートを拡張し、心房の一部分に対して心房スカートを固着するステップと、自然僧帽弁輪と一致するように、およびそれに係合するように、アンカーの環状領域を半径方向に拡張するステップとを含む。方法はまた、心室スカートを半径方向に拡張し、それにより、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させるステップも含む。
【0031】
人工弁の少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われてもよい。人工弁を設置するステップは、心臓の右心房から左心房へ人工弁を経中隔的に送達するステップ、または心臓の外側の領域から心臓の左心室へ人工弁を経心尖的に送達するステップを含んでもよい。
【0032】
心房スカートを拡張するステップは、心房スカートから離して制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、その半径方向拡張を可能にするステップを含んでもよい。心房スカートは、制約シースがそこから除去されたときに自己拡張してもよい。方法はさらに、心房スカートが僧帽弁の上面に係合することを確実にするように、人工弁に力を印加するステップを含んでもよい。心房スカートは、複数の鉤を備えてもよく、心房スカートを拡張するステップは、僧帽弁の上面の中に鉤を固着するステップを含んでもよい。心房スカートを拡張するステップは、自然僧帽弁の上面に対して心房スカートを密閉するステップを含んでもよい。
【0033】
環状領域を半径方向に拡張するステップは、環状領域から離して制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、その半径方向拡張を可能にするステップを含んでもよい。環状領域は、制約シースがそこから除去されたときに自己拡張してもよい。環状領域を半径方向に拡張するステップは、環状領域の前方部分が実質的に平坦であり、環状領域の後方部分が円筒形状であるように、環状領域を非対称的に拡張するステップを含んでもよい。
【0034】
心室スカートはさらに、心室スカートの前方部分上に三角固着タブを備えてもよく、心室スカートを半径方向に拡張するステップは、自然僧帽弁の前尖の第1の側面上の第1の
線維三角に対して三角固着タブを固着するステップを含んでもよい。自然前尖および隣接腱索は、三角固着タブとアンカーの前面との間で捕捉されてもよい。心室スカートはさらに、心室スカートの前方部分上に第2の三角固着タブを備えてもよく、心室スカートを半径方向に拡張するステップは、第1の
線維三角の反対側の第2の
線維三角に対して第2の三角固着タブを固着するステップを含んでもよい。自然前尖および隣接腱索は、第2の三角固着タブとアンカーの前面との間で捕捉されてもよい。心室スカートはさらに、心室スカートの後方部分上に後方心室固着タブを備えてもよい。心室スカートを半径方向に拡張するステップは、後尖と心臓の心室壁との間に着座するように、自然僧帽弁の後尖を覆って後方心室固着タブを固着するステップを含んでもよい。心室スカートを半径方向に拡張するステップは、心室スカートから離して制約シースを摺動可能に移動させ、それにより、その半径方向拡張を可能にするステップを含んでもよい。心室スカートは、制約シースがそこから除去されたときに自己拡張してもよい。
【0035】
心室スカートは、複数の鉤を備えてもよく、心室スカートを拡張するステップは、心臓組織の中に鉤を固着するステップを含んでもよい。人工弁は、複数の人工弁尖を備えてもよく、心室スカートを半径方向に拡張するステップは、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させ、それにより、人工弁尖への自然僧帽弁尖の干渉を防止するステップを含んでもよい。心室スカートを半径方向に拡張するステップは、心室壁に接触することなく、および左心室流出路を塞ぐことなく、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させるステップを含んでもよい。心室スカートを半径方向に拡張するステップは、心室スカートの前方部分が実質的に平坦であり、心室スカートの後方部分が円筒形状であるように、心室スカートを非対称的に拡張するステップを含んでもよい。
【0036】
心房スカートは、整列要素を備えてもよく、方法はさらに、患者の弁に対して整列要素を整列させるステップを含んでもよい。弁は、僧帽弁を備えてもよく、整列させるステップは、整列要素を大動脈起始部と整列させ、前記僧帽弁の前尖の2つの
線維三角の間に整列を配置するステップを含んでもよい。整列させるステップは、人工弁を回転させるステップを含んでもよい。人工弁は、1つ以上の交連に連結される複数の人工弁尖を備えてもよく、方法は、送達カテーテルから交連を解放するステップをさらに含んでもよい。人工弁は、三尖弁尖構成を備えてもよい。
【0037】
人工弁は、人工弁尖が相互から離れて配置される、開放構成と、人工弁尖が相互に係合する、閉鎖構成とを有してもよい。血液は、開放構成の人工弁を通って自由に流れ、人工弁を横断する逆行血流は、閉鎖構成において実質的に妨げられる。方法は、僧帽弁逆流を低減または排除するステップを含んでもよい。人工弁は、治療薬を備えてもよく、方法は、人工弁から隣接組織の中に治療薬を溶出するステップをさらに含んでもよい。
【0038】
本発明の別の側面では、人工心臓弁は、心房スカート、環状領域、および心室スカートを有する、アンカーを備える。アンカーは、前記心臓に送達するための折畳み構成と、人工心臓弁を患者の心臓に固着するための拡張構成とを有する。人工弁はまた、複数の人工弁尖も備え、弁尖のそれぞれは、第1端と、自由端とを有し、第1端は、アンカーと連結され、自由端は、第1端の反対側にある。人工心臓弁は、人工弁尖の自由端が、相互から離れて配置されることにより、順行血流がそれを通り越すことを可能にする開放構成と、人工弁尖の自由端が相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する閉鎖構成とを有する。
【0039】
心房スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われてもよい。心房スカートはさらに、それに連結される複数の鉤を備えてもよく、複数の鉤は、患者の僧帽弁の上面の中に心房スカートを固着するように適合される。心房スカートは、折畳み構成と、拡張構成とを備えてもよい。折畳み構成は、患者の心臓に送達するために適合されてもよく、拡張構成は、折畳み構成に対して半径方向に拡張され、患者の自然僧帽弁の上面の上に横たわるように適合されてもよく、それにより、心房の一部分に対して心房スカートを固着する。心房スカートは、拘束されていないときに、折畳み構成から半径方向拡張構成へ自己拡張してもよい。心房スカートは、1つ以上の放射線不透過性マーカーを備えてもよい。心房スカートは、コネクタ要素でともに接続される、複数の軸方向に配向された支柱を備え、それにより、一連の頂点および谷間を形成してもよい。頂点および谷間のうちのいくつかは、心房スカートの他の部分よりもさらに軸方向外向きに延在し、それにより、整列要素を形成してもよい。
【0040】
環状領域の少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われてもよい。環状領域は、折畳み構成と、拡張構成とを有してもよい。折畳み構成は、患者の心臓に送達するために適合されてもよく、拡張構成は、折畳み構成に対して半径方向に拡張され、自然僧帽弁環と一致するように、およびそれに係合するように適合されてもよい。環状領域は、拘束されていないときに、折畳み構成から拡張構成へ自己拡張してもよい。環状領域は、実質的に平坦な前方部分、および円筒形状の後方部分を有する、非対称的にD字形の断面を備えてもよい。環状領域は、コネクタ要素でともに接続される、複数の軸方向に配向された支柱を備え、それにより、一連の頂点および谷間を形成してもよい。軸方向に配向された支柱のうちの1つ以上は、それを通って延在する1つ以上の縫合糸穴を備えてもよく、縫合糸穴は、縫合糸を受容するようにサイズ決定される。
【0041】
心室スカートの少なくとも一部分は、組織または合成材料によって覆われてもよい。心室スカートは、実質的に平坦な前方部分、および円筒形状の後方部分を有する、非対称的にD字形の断面を備えてもよい。心室スカートは、折畳み構成と、拡張構成とを有してもよい。折畳み構成は、患者の心臓に送達するために適合されてもよく、拡張構成は、折畳み構成に対して半径方向に拡張されており、自然僧帽弁尖を半径方向外向きに変位させるように適合されてもよい。心室スカートは、拘束されていないときに、折畳み構成から拡張構成へ自己拡張してもよい。
【0042】
心室スカートは、心室スカートの前方部分上に配置された三角固着タブをさらに備えてもよい。三角固着タブは、患者の僧帽弁の前尖の第1の側面上の第1の
線維三角に対して固着されるように適合されてもよい。したがって、前尖および隣接腱索は、三角固着タブとアンカーの前面との間で捕捉されてもよい。心室スカートは、心室スカートの前方部分上に配置されてもよい第2の三角固着タブをさらに備えてもよい。前尖および隣接腱索が、第2の三角固着タブとアンカーの前面との間で捕捉されるように、第2の三角固着タブは、第1の
線維三角の反対側の第2の
線維三角に対して固着されるように適合されてもよい。心室スカートは、心室スカートの後方部分上に配置される後方心室固着タブをさらに備えてもよい。後方心室固着タブが、後尖と患者の心臓の心室壁との間に着座されるように、後方心室固着タブは、患者の僧帽弁の後尖を覆って固着されるように適合されてもよい。心室スカートは、それに連結され、心臓組織の中に心室スカートを固着するようにさらに適合されてもよい、複数の鉤を備えてもよい。心室スカートは、コネクタ要素でともに接続される、複数の支柱を備え、それにより、一連の頂点および谷間を形成してもよい。支柱のうちの1つ以上は、それを通って延在し、縫合糸を受容するようにサイズ決定されてもよい、1つ以上の縫合糸穴を備えてもよい。
【0043】
複数の人工弁尖は、三尖弁尖構成を備えてもよい。1つ以上の人工弁尖の少なくとも一部分は、組織または合成材料を備えてもよい。複数の人工弁尖のうちの1つ以上は、心室スカートに対して半径方向内向きに付勢される1つ以上の交連柱または支柱を覆って配置されてもよい。1つ以上の交連柱または支柱は、それを通って延在し、縫合糸を受容するようにサイズ決定されてもよい、1つ以上の縫合糸穴を備えてもよい。1つ以上の人工弁尖は、交連柱または支柱を送達デバイスと解放可能に係合させるように適合される交連タブを有する交連柱または支柱に連結されてもよい。
【0044】
人工心臓弁はさらに、アンカーの前方部分に連結される整列要素を備えてもよい。整列要素は、患者の心臓の大動脈起始部と整列させられ、患者の僧帽弁の前尖の2つの
線維三角の間に配置されるように適合されてもよい。整列要素は、心房スカートと連結されてもよい。人工心臓弁は、それに連結され、そこから制御可能に溶出されるように適合される治療薬をさらに備えてもよい。
【0045】
本発明のなおも別の側面では、人工心臓弁を患者の心臓に送達するための送達システムは、それを通って延在し、ガイドワイヤを摺動可能に受容するように適合される管腔を有する内側ガイドワイヤシャフトと、内側ガイドワイヤシャフトを覆って同心円状に配置されるハブシャフトとを備える。送達システムはまた、ハブシャフトを覆って摺動可能かつ同心円状に配置されるベルシャフトと、ベルシャフト覆って摺動可能かつ同心円状に配置されるシースと、送達システムの近位端付近のハンドルとを備える。ハンドルは、ベルシャフトおよびシースを前進および後退させるように適合されるアクチュエータ機構を備える。
【0046】
システムは、半径方向の折畳み構成でシースに収納され得る人工心臓弁をさらに備えてもよい。人工心臓弁は、心房スカート、環状領域、および心室スカートを有するアンカーを備えてもよい。人工弁はまた、複数の人工弁尖を備えてもよい。弁尖のそれぞれは、第1端と、自由端とを有してもよい。第1端は、アンカーと連結されてもよく、自由端は、第1端の反対側にあってもよい。人工心臓弁は、人工弁尖の自由端が、相互から離れて配置されることにより、順行血流がそれを通り越すことを可能にする開放構成を有してもよい。弁は、人工弁尖の自由端が相互に係合して、逆行血流がそれを通り越すことを実質的に防止する閉鎖構成を有してもよい。
【0047】
ベルシャフトに対するシースの近位後退は、人工心臓弁から拘束を除去し、それにより、人工心臓弁が、患者の自然心臓組織と係合するように自己拡張することを可能にしてもよい。人工心臓弁は、ハブシャフトと解放可能に連結されてもよく、ハブシャフトに対するベルシャフトの近位後退は、そこから人工心臓弁を解放してもよい。アクチュエータ機構は、回転ホイールを備えてもよい。システムは、ハブシャフトに連結される組織貫通遠位先端をさらに備えてもよい。組織貫通遠位先端は、患者の心臓を通過し、そこで切開を拡張するように適合されてもよい。システムは、ハンドルと解放可能に連結される、ピンロック機構をさらに備えてもよい。ピンロック機構は、シースの近位後退を制限してもよい。
【0048】
これらおよび他の実施形態は、添付図面に関係する以下の説明でさらに詳細に説明される。
【0049】
図面中、類似の参照数字は、類似または同様のステップまたは構成要素を指定する。