特許第6811264号(P6811264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6811264移動対象のRADARおよび超音波センサ・ベースのリアルタイム追跡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811264
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】移動対象のRADARおよび超音波センサ・ベースのリアルタイム追跡
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/86 20060101AFI20201228BHJP
   G01S 13/58 20060101ALI20201228BHJP
   G01S 15/42 20060101ALI20201228BHJP
   G01S 15/66 20060101ALI20201228BHJP
   G01S 15/87 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   G01S13/86
   G01S13/58 210
   G01S15/42
   G01S15/66
   G01S15/87
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-13828(P2019-13828)
(22)【出願日】2019年1月30日
(65)【公開番号】特開2019-158870(P2019-158870A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】201821008857
(32)【優先日】2018年3月9日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】510337621
【氏名又は名称】タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TATA Consultancy Services Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】チョウドゥリー アリジット
(72)【発明者】
【氏名】ラクシット ラージ
(72)【発明者】
【氏名】チャクラヴァルティ タパス
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−156219(JP,A)
【文献】 特開2011−247596(JP,A)
【文献】 特開平01−265183(JP,A)
【文献】 米国特許第05577006(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/64
G01S 13/00−17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察中の移動対象のリアルタイム追跡のためにプロセッサに実装された方法(200)であって、前記方法は、
観察中の前記移動対象が移動対象検出器の視野(FOV)中で検出されていることを示唆する前記移動対象検出器からの第1のエコー応答を受信するステップ(202)と、
前記第1のエコー応答に基づいて前記移動対象の速さをログするステップ(204)と、
前記移動対象を前記移動対象検出器によって検出した際に、移動対象追跡器によって、前記移動対象をリアルタイムで連続的に追跡するステップ(206)と、を含み、前記追跡するステップは、
前記移動対象追跡器の方位を最後にロックインされた姿勢または0°の回転角のいずれかから、前記移動対象が前記移動対象追跡器の動眼視野(FOR)中で検出されるまで、予め構成された値で、インクリメンタルに変化させるステップ(206A)と、
前記移動対象が前記移動対象追跡器の前記FOR中で検出されたときに前記移動対象追跡器からの第2のエコー応答を受信するステップ(206B)と、
前記第2のエコー応答に基づいて、前記移動対象の前記移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび前記移動対象追跡器の現在の方位とともにログするステップ(206C)と、
前記ログされた距離および前記関連するタイムスタンプに基づいて前記移動対象の速さを計算するステップ(206D)と、
前記移動対象追跡器によって追跡された前記移動対象が前記移動対象検出器によって検出された前記移動対象と同じであることを確認するために、前記移動対象の前記計算された速さを前記移動対象検出器によって前記ログされた速さと比較するステップ(206E)と、
前記比較に基づいて前記移動対象追跡器の前記方位を前記現在の方位にロックするステップであって、前記現在の方位は、前記移動対象が前記FORから出る前に前記最後にロックインされた姿勢である、前記ロックするステップ(206F)と、を含む、
プロセッサに実装された方法。
【請求項2】
前記移動対象追跡器の方位をインクリメンタルに変化させる前記ステップは、その回転の角速度と関連付けられ、回転の前記角速度は、前記移動対象の前記移動対象検出器からの最後にログされた距離と前記最後にロックインされた姿勢と関連する回転角との関数である、請求項1に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項3】
前記移動対象の前記移動対象追跡器からの前記距離を関連するタイムスタンプおよび前記移動対象追跡器の現在の方位とともにログする前記ステップは、観察されている前記対象の経験的知識に基づいて予め構成され、かつ前記移動対象の前記移動対象追跡器からの前記最後にログされた距離に逆比例する、適応的に変化するサンプリング周波数で行われる、請求項2に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項4】
第1のエコー応答を受信する前記ステップは、観察中の前記移動対象がその前記FOV中にあるように前記移動対象検出器を配置するステップによって先行される、請求項1に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項5】
前記移動対象検出器は、無線検出および測距(RADAR)、音響航法および測距(SONAR)ならびに光検出および測距(LIDAR)のうちの1つである、請求項4に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項6】
前記移動対象を移動対象追跡器によってリアルタイムで連続的に追跡する前記ステップは、観察中の前記移動対象がその前記FOR中にあるように前記移動対象追跡器を配置するステップによって先行される、請求項1に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項7】
前記移動対象追跡器は、2つの超音波センサを備え、各超音波センサは、前記移動対象追跡器の前記方位をインクリメンタルに変化させるように構成された対応するステッパモータへ機械的に結合された、請求項6に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項8】
前記移動対象追跡器の方位をインクリメンタルに変化させる前記ステップは、共通の回転軸を有する前記2つの超音波センサを、前記2つの超音波センサのいずれかについて最大許容回転角に到達するまで、前記予め構成された値で逆方向に回転させるステップを含む、請求項7に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項9】
前記移動対象の前記移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび前記移動対象追跡器の現在の方位とともにログする前記ステップは、前記2つの超音波センサのうちの第1の超音波センサの1つの前記現在の方位を前記移動対象を検出した前記2つの超音波センサのうちの第2の超音波センサの前記現在の方位とアラインさせるステップと、その前記現在の方位をロックするステップとを含む、請求項8に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項10】
追跡装置(300)であって、前記装置は、
移動対象検出器(302)であって、観察中の移動対象がその視野(FOV)中にあるように配置された無線検出および測距(RADAR)、音響航法および測距(SONAR)ならびに光検出および測距(LIDAR)のうちの1つである、移動対象検出器(302)と、
前記移動対象検出器に近接して位置する移動対象追跡器(304A、304B)であって、共通の回転軸を有する2つの超音波センサを備え、各超音波センサは、前記2つの超音波センサを、前記2つの超音波センサのいずれかについて最大許容回転角に到達するまで、逆方向に予め構成された回転角でインクリメンタルに回転させるように構成された対応するステッパモータ(306A、306B)へ機械的に結合された、移動対象追跡器(304A、304B)と、
コントローラユニット(308)であって、
命令を記憶するように構成された1つ以上のデータ記憶デバイス、および、
前記1つ以上のデータ記憶デバイスへ作動的に結合された1つ以上のハードウェアプロセッサを備える、コントローラユニット(308)と、
を備え、前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、
前記移動対象が前記移動対象検出器の前記視野(FOV)中で検出されていることを示唆する前記移動対象検出器からの第1のエコー応答を受信し、
前記第1のエコー応答に基づいて前記移動対象の速さをログして、
前記移動対象を前記移動対象検出器によって検出した際に、移動対象追跡器によって、前記移動対象をリアルタイムで連続的に追跡する、
ように前記命令によって構成され、前記移動対象は、
前記移動対象追跡器の方位を最後にロックインされた姿勢または0°の回転角のいずれかから、前記移動対象が前記移動対象追跡器の動眼視野(FOR)中で検出されるまで、予め構成された値で、インクリメンタルに変化させるステップと、
前記移動対象が前記移動対象追跡器の前記FOR中で検出されたときに前記移動対象追跡器からの第2のエコー応答を受信するステップと、
前記第2のエコー応答に基づいて、前記移動対象の前記移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび前記移動対象追跡器の現在の方位とともにログするステップと、
前記ログされた距離および前記関連するタイムスタンプに基づいて前記移動対象の速さを計算するステップと、
前記移動対象追跡器によって追跡された前記移動対象が前記移動対象検出器によって検出された前記移動対象と同じであることを確認するために、前記移動対象の前記計算された速さを前記移動対象検出器によって前記ログされた速さと比較するステップと、
前記比較に基づいて前記移動対象追跡器の前記方位を前記現在の方位にロックするステップであって、前記現在の方位は、前記移動対象が前記FORから出る前に前記最後にロックインされた姿勢である、ロックするステップと、
によって、リアルタイムで連続的に追跡される、
追跡装置(300)。
【請求項11】
観察中の移動対象のリアルタイム追跡のためのシステム(100)であって、前記システムは、
1つ以上のデータ記憶デバイス(102)を備え、前記データ記憶デバイス(102)は、1つ以上のハードウェアプロセッサ(104)へ作動的に結合されて、前記1つ以上のハードウェアプロセッサによる実行のために、
観察中の前記移動対象が移動対象検出器の視野(FOV)中で検出されていることを示唆する前記移動対象検出器からの第1のエコー応答を受信し、
前記第1のエコー応答に基づいて前記移動対象の速さをログして、
前記移動対象を前記移動対象検出器によって検出した際に、移動対象追跡器によって、前記移動対象をリアルタイムで連続的に追跡する、
ように構成された命令を記憶するように構成され、前記移動対象は、
前記移動対象追跡器の方位を最後にロックインされた姿勢または0°の回転角のいずれかから、前記移動対象が前記移動対象追跡器の動眼視野(FOR)中で検出されるまで、予め構成された値で、インクリメンタルに変化させるステップと、
前記移動対象が前記移動対象追跡器の前記FOR中で検出されたときに前記移動対象追跡器からの第2のエコー応答を受信するステップと、
前記第2のエコー応答に基づいて、前記移動対象の前記移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび前記移動対象追跡器の現在の方位とともにログするステップと、
前記ログされた距離および前記関連するタイムスタンプに基づいて前記移動対象の速さを計算するステップと、
前記移動対象追跡器によって追跡された前記移動対象が前記移動対象検出器によって検出された前記移動対象と同じであることを確認するために、前記移動対象の前記計算された速さを前記移動対象検出器によって前記ログされた速さと比較するステップと、
前記比較に基づいて前記移動対象追跡器の前記方位を前記現在の方位にロックするステップであって、前記現在の方位は、前記移動対象が前記FORから出る前に前記最後にロックインされた姿勢である、ステップと、
によって、リアルタイムで連続的に追跡される、
システム(100)。
【請求項12】
前記移動対象追跡器の方位をインクリメンタルに変化させるステップは、その回転の角速度と関連付けられ、回転の前記角速度は、前記移動対象の前記移動対象検出器からの最後にログされた距離と前記最後にロックインされた姿勢と関連する回転角との関数である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記移動対象の前記移動対象追跡器からの前記距離を関連するタイムスタンプおよび前記移動対象追跡器の現在の方位とともに予め構成された適応的に変化するサンプリング周波数でログするステップは、観察されている前記対象の経験的知識に基づいて予め構成され、かつ前記移動対象の前記移動対象追跡器からの前記最後にログされた距離に逆比例する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、観察中の前記移動対象がその前記FOV中にあるように前記移動対象検出器を配置するようにさらに構成された、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記移動対象検出器は、無線検出および測距(RADAR)、音響航法および測距(SONAR)ならびに光検出および測距(LIDAR)のうちの1つである、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、観察中の前記移動対象がその前記FOR中にあるように前記移動対象追跡器を配置するようにさらに構成された、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記移動対象追跡器は、2つの超音波センサを備え、各超音波センサは、前記移動対象追跡器の前記方位をインクリメンタルに変化させるように構成された対応するステッパモータへ機械的に結合された、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、共通の回転軸を有する前記2つの超音波センサを、前記2つの超音波センサのいずれかについて最大許容回転角に到達するまで、前記予め構成された値で逆方向に回転させることによって前記移動対象追跡器の前記方位をインクリメンタルに変化させるようにさらに構成された、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、前記2つの超音波センサのうちの第1の超音波センサの現在の方位を前記移動対象を検出した前記2つの超音波センサのうちの第2の超音波センサの前記現在の方位とアラインさせるステップと、その前記現在の方位をロックするステップとによって、前記移動対象の前記移動対象追跡器からの前記距離を関連するタイムスタンプおよび前記移動対象追跡器の前記現在の方位とともにログするようにさらに構成された、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2018年3月9日出願のインド特許出願第201821008857号からの優先権を主張する。前述の出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本明細書における開示は、一般に、移動対象の検出に関し、より詳しくは、移動対象の無線検出および測距(RADAR:RAdio Detection And Ranging)ならびに超音波センサ・ベースのリアルタイム追跡のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
対象の動きを典型的に小部屋内で目立ちすぎないやり方で自動的に追跡することは、人が転倒するなど緊急事態が警報されなければならないことある一人暮らしで医療処置中の高齢者のモニタリングのようなシナリオに用途を見出す。従来、かかる用途にはドップラー無線検出および測距(RADAR)ベースのシステムが利用できる。パルス・ドップラーRADARもしくは周波数変調連続波RADAR(FMCW:Frequency Modulated Continouous Wave)によって距離および速さの両方を測定できるが、特に、観測中の区域が非常に狭く、高いレンジ分解能が必要とされるときには回路および計算の複雑さが難題である。従って、位置の推定ならびに動きの追跡には複数のRADARモジュールが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態は、本発明者らによって認識された従来のシステムにおける上述の技術的問題のうちの1つ以上への解決法としての技術的改良を提示する。
【0005】
ある態様において、プロセッサに実装された方法が提供され、この方法は、観察中の移動対象が移動対象検出器の視野(FOV:field of view)中で検出されていることを示唆する移動対象検出器からの第1のエコー応答を受信するステップと、第1のエコー応答に基づいて移動対象の速さをログするステップと、移動対象を移動対象検出器によって検出した際に、移動対象追跡器によって、移動対象をリアルタイムで連続的に追跡するステップとを含み、追跡するステップは、移動対象追跡器の方位を最後にロックインされた姿勢または0°の回転角のいずれかから、移動対象が移動対象追跡器の動眼視野(FOR:field of regard)中で検出されるまで、予め構成された値で、インクリメンタルに変化させるステップと、移動対象が移動対象追跡器のFOR中で検出されたときに移動対象追跡器からの第2のエコー応答を受信するステップと、第2のエコー応答に基づいて、移動対象の移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび移動対象追跡器の現在の方位とともにログするステップと、ログされた距離および関連するタイムスタンプに基づいて移動対象の速さを計算するステップと、移動対象追跡器によって追跡された移動対象が移動対象検出器によって検出された移動対象と同じであることを確認するために、移動対象の計算された速さを移動対象検出器によってログされた速さと比較するステップと、この比較に基づいて移動対象追跡器の方位を現在の方位にロックするステップであって、現在の方位は、移動対象がFORから出る前に最後にロックインされた姿勢であるロックするステップとを含む。
【0006】
別の態様では、追跡装置が提供され、この追跡装置は、移動対象検出器であって、観察中の移動対象がその視野(FOV)中にあるように配置された無線検出および測距(RADAR)、音響航法および測距(SONAR:SOund Navigation And Ranging)ならびに光検出および測距(LIDAR:LIght Detection And Ranging)のうちの1つである移動対象検出器と、移動対象検出器に近接して位置する移動対象追跡器であって、共通の回転軸を有する2つの超音波センサを備え、各超音波センサは、2つの超音波センサを、2つの超音波センサのいずれかについて最大許容回転角に到達するまで、逆方向に予め構成された回転角でインクリメンタルに回転させるように構成された対応するステッパモータへ機械的に結合された移動対象追跡器と、コントローラユニットであって、命令を記憶するように構成された1つ以上のデータ記憶デバイス、および1つ以上のデータ記憶デバイスへ作動的に結合された1つ以上のハードウェアプロセッサを備えるコントローラユニットとを備え、1つ以上のハードウェアプロセッサは、移動対象が移動対象検出器の視野(FOV)中で検出されていることを示唆する移動対象検出器からの第1のエコー応答を受信し、第1のエコー応答に基づいて移動対象の速さをログして、移動対象を移動対象検出器によって検出した際に、移動対象追跡器によって、移動対象をリアルタイムで連続的に追跡するようにそれらの命令によって構成され、移動対象は、移動対象追跡器の方位を最後にロックインされた姿勢または0°の回転角のいずれかから、移動対象が移動対象追跡器の動眼視野(FOR)中で検出されるまで、予め構成された値で、インクリメンタルに変化させるステップと、移動対象が移動対象追跡器のFOR中で検出されたときに移動対象追跡器からの第2のエコー応答を受信するステップと、第2のエコー応答に基づいて、移動対象の移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび移動対象追跡器の現在の方位とともにログするステップと、ログされた距離および関連するタイムスタンプに基づいて移動対象の速さを計算するステップと、移動対象追跡器によって追跡された移動対象が移動対象検出器によって検出された移動対象と同じであることを確認するために、移動対象の計算された速さを移動対象検出器によってログされた速さと比較するステップと、この比較に基づいて移動対象追跡器の方位を現在の方位にロックするステップであって、現在の方位は、移動対象がFORから出る前に最後にロックインされた姿勢であるロックするステップとによってリアルタイムで連続的に追跡される。
【0007】
さらに別の態様では、システムが提供され、このシステムは、1つ以上のデータ記憶デバイスを備え、このデータ記憶デバイスは、1つ以上のプロセッサへ作動的に結合されて、1つ以上のプロセッサによる実行のために、観察中の移動対象が移動対象検出器の視野(FOV)中で検出されていることを示唆する移動対象検出器からの第1のエコー応答を受信し、第1のエコー応答に基づいて移動対象の速さをログして、移動対象を移動対象検出器によって検出した際に、移動対象追跡器によって、移動対象をリアルタイムで連続的に追跡するように構成された命令を記憶するように構成され、移動対象は、移動対象追跡器の方位を最後にロックインされた姿勢または0°の回転角のいずれかから、移動対象が移動対象追跡器の動眼視野(FOR)中で検出されるまで、予め構成された値で、インクリメンタルに変化させるステップと、移動対象が移動対象追跡器のFOR中で検出されたときに移動対象追跡器からの第2のエコー応答を受信するステップと、第2のエコー応答に基づいて、移動対象の移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび移動対象追跡器の現在の方位とともにログするステップと、ログされた距離および関連するタイムスタンプに基づいて移動対象の速さを計算するステップと、移動対象追跡器によって追跡された移動対象が移動対象検出器によって検出された移動対象と同じであることを確認するために、移動対象の計算された速さを移動対象検出器によってログされた速さと比較するステップと、この比較に基づいて移動対象追跡器の方位を現在の方位にロックするステップであって、現在の方位は、移動対象がFORから出る前に最後にロックインされた姿勢であるロックするステップとによってリアルタイムで連続的に追跡される。
【0008】
移動対象追跡器のインクリメンタルに変化する方位がその回転の角速度と関連付けられる、本開示のある実施形態において、回転の角速度は、移動対象の移動対象検出器からの最後にログされた距離と最後にロックインされた姿勢と関連する回転角との関数である。
【0009】
本開示のある実施形態において、1つ以上のハードウェアプロセッサは、移動対象の移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび移動対象追跡器の現在の方位とともに、観察されている対象の経験的知識に基づいて予め構成され、かつ移動対象の移動対象追跡器からの最後にログされた距離に逆比例する、適応的に変化するサンプリング周波数でログするステップを行うようにさらに構成される。
【0010】
本開示のある実施形態において、1つ以上のハードウェアプロセッサは、観察中の移動対象がそのFOV中にあるように移動対象検出器を配置するようにさらに構成される。
【0011】
本開示のある実施形態において、移動対象検出器は、無線検出および測距(RADAR)、音響航法および測距(SONAR)ならびに光検出および測距(LIDAR)のうちの1つである。
【0012】
本開示のある実施形態において、1つ以上のハードウェアプロセッサは、観察中の移動対象がそのFOR中にあるように移動対象追跡器を配置するようにさらに構成される。
【0013】
本開示のある実施形態において、移動対象追跡器は、2つの超音波センサを備え、各超音波センサは、移動対象追跡器の方位をインクリメンタルに変化させるように構成された対応するステッパモータへ機械的に結合される。
【0014】
本開示のある実施形態において、1つ以上のハードウェアプロセッサは、共通の回転軸を有する2つの超音波センサを、2つの超音波センサのいずれかについて最大許容回転角に到達するまで、予め構成された値で逆方向に回転させることによって移動対象追跡器の方位をインクリメンタルに変化させるようにさらに構成される。
【0015】
本開示のある実施形態において、1つ以上のハードウェアプロセッサは、2つの超音波センサのうちの第1の超音波センサの現在の方位を移動対象を検出した2つの超音波センサのうちの第2の超音波センサの現在の方位とアラインさせるステップと、その現在の方位をロックするステップとによって、移動対象の移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび移動対象追跡器の現在の方位とともにログするようにさらに構成される。
【0016】
理解されるべきは、前述の一般的な記載および以下の詳細な記載がいずれも例示的かつ説明的であるに過ぎず、請求されるような、本開示の実施形態を限定しないことである。
【0017】
本開示に組み込まれてその一部を構成する、添付図面は、例示的な実施形態を示し、本記載と併せて、開示される原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示のある実施形態による、移動対象の無線検出および測距(RADAR)ならびに超音波センサ・ベースのリアルタイム追跡のためのシステムの例示的なブロック図を示す。
図2A】本開示のある実施形態による、移動対象のRADARおよび超音波センサ・ベースのリアルタイム追跡のためのコンピュータに実装された方法を示す例示的なフロー図である。
図2B】本開示のある実施形態による、移動対象のRADARおよび超音波センサ・ベースのリアルタイム追跡のためのコンピュータに実装された方法を示す例示的なフロー図である。
図3】本開示のある実施形態による追跡装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して例示的な実施形態が記載される。図中で、参照番号の最上位桁(単数または複数)は、その参照番号が最初に現われる図を特定する。便利であればどこでも、同じまたは同様の部分を指すために複数の図面を通じて同じ参照番号が用いられる。開示される原理の例および特徴が本明細書に記載されるが、開示される実施形態の趣旨および範囲から逸脱することなく変更、適合、および他の実装が可能である。以下の詳細な記載は、例示に過ぎないと見做されることが意図され、真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【0020】
本開示は、特に小部屋、例えば、5m×5mの面積において対象の動きを最小数のセンサを用いて目立ちすぎないやり方で自動的に追跡する技術的問題に取り組み、それによって、簡単で低コストの解決法を提供する。連続波(CW:continuous wave)ドップラーRADARは、構築するのが最も簡単で非常に低コストである。加えて、CWドップラーRADARは、速度を高精度で測定できるが、(家具のような)静的物体からの2次反射を完全に無視する。しかし、CWドップラーRADARの主な不利点は、レンジ、すなわち、移動対象のRADARからの距離をそれが測定できないことである。そのうえ、対象がレーダビームに対して斜めに動くならば、測定される速さがその実際の速さとは全く異なる。他方では、パルス・ドップラーRADARまたは周波数変調CW(FMCW)RADARのいずれかによって距離および速さの両方を測定できる。しかし、これらのRADARのいずれについても、観察中の区域が非常に近く(およそ5m)、それゆえに、期待されるレンジ分解能が0.2mまたはそれより良いかもしれないという事実に起因して、回路および計算の複雑さが難題である。Xバンド(10.525GHz)における標準的なFMCW RADARモジュールでは、0.75GHz/Vの周波数同調勾配が必要とされるかもしれず、すなわち、1Vの外部電圧を印加すると、レーダの動作周波数が0.75GHzシフトするかもしれない。これは、Xバンドではなくずっとより高い周波数で達成する方が容易かもしれない。同様に、パルスRADARは、通常は達成されえない1nsec未満のパルス幅を必要とするかもしれない。例として、0.2mの分解能を1.33nsのパルスを用いて達成できる。その角度広がりが広いという事実にも係わらず、これらの難題が移動対象を追跡するためにCWドップラーRADARの単一ユニットを用いることを不可能にする。
【0021】
超音波センサは、対象が動いているかまたは静止しているかどうかに係わらず、対象の距離を測定することを容易にする。そのうえ、角速度も狭い(典型的に15度)。本開示によれば、移動対象の速さならびにセンサからのその距離を追跡することを容易にするためにはドップラーRADARが超音波センサと組み合わされるとよい。しかしながら、距離測定ユニットとしての1つの超音波センサと1つのCW RADARとを組み合わせた簡単なシステムでは、実生活のシナリオにおいて不可避的にかなりの難題に直面するであろう。両方のセンサは、静的であり、すなわち、対象が動き回るにつれてそれらの視野(FOV)が変化しない。対象が超音波センサのFOV内にある限り、距離を測定できるが、対象が出て行くや否や、信号が反対側の壁から反射されることになり、距離の測定結果は、変化しないままであり、それによって、誤った測定値を与える。
【0022】
本開示によれば、静止している無線検出および測距(RADAR)が2つの回転する超音波センサとともにこの目的を達成する。RADARは、移動対象の速さを検出し、移動対象の検出の際には、超音波センサが移動対象を追跡し始め、動きの方向に基づいて、FOVを必要に応じて変化させて、観察中の対象の角度およびレンジの両方の観点から、対象の位置を特定するように、超音波センサをトリガする。「ビームステアリング」またはアンテナビームの電子的なステアリングも採用されてもよい、しかしながら、電子的なビームステアリングは、位相シフタおよびコントローラをもつ大きいアンテナアレイを必要として、大規模な配備には装置が高価で非効果的になることに気付くであろう。かかるシステムは、一人暮らしの高齢者または医療処置中の個人を追跡するために用いられるとよく、従って、緊急事態に際しては警報を発生させるために追跡に関する情報がさらに用いられるとよい。本開示の文脈では、「対象」という表現は、人間、ベルトコンベヤ上の、例えば、自動化されたパッケージ移送のための対象、またはさらなる解析または動作のためにその動きを観察することが必要なロボットも指してよい。以下の考察は、小部屋または閉じた区域に言及するかもしれないが、以下に記載されるシステム、方法および装置は、用いられるセンサの視野(FOV)によって主として制限される、観察中の任意の区域に適用されてよいことが当業者には理解されるであろう。観察中のより大きい区域には、より大きい区域の一部分を各装置がカバーする複数のかかる装置が配備されてよく、統一的な解析がその後に行われてよい。
【0023】
次に、複数の図を通じて同様の参照文字が対応する特徴を一貫して表す、図面、より詳しくは、図1から3を参照して、好ましい実施形態が示され、これらの実施形態が以下の例示的なシステムおよび方法の文脈で記載される。
【0024】
図1は、移動対象のRADARおよび超音波センサ・ベースのリアルタイム追跡のためのシステム100の例示的ブロック図を示す。ある実施形態において、システム100は、1つ以上のプロセッサ104、通信インターフェース・デバイス(単数または複数)もしくは入力/出力(I/O)インターフェース(単数または複数)106、および1つ以上のプロセッサ104へ作動的に結合された1つ以上のデータ記憶デバイスまたはメモリ102を含む。ハードウェアプロセッサである1つ以上のプロセッサ104を1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央処理装置、ステートマシン、グラフィックスコントローラ、ロジック回路素子、および/または動作命令に基づいて信号を操作する任意のデバイスとして実装できる。他の機能のうちでも、プロセッサ(単数または複数)は、メモリに記憶されたコンピュータ可読命令をフェッチして実行するように構成される。ある実施形態では、システム100を様々なコンピューティングシステム、例えば、ラップトップコンピュータ、ノートブック、ハンドへルドデバイス、ワークステーション、メインフレームコンピュータ、サーバ、ネットワーククラウドおよび同様のものなどに実装できる。
【0025】
I/Oインターフェース・デバイス(単数または複数)106は、様々なハードウェアおよびソフトウェアインターフェース、例えば、ウェブインターフェース、グラフィカルユーザインターフェースおよび同様のものを含むことができて、有線ネットワーク、例えば、LAN、ケーブルなど、およびWLAN、セルラまたは衛星のような、無線ネットワークを含めて、多種多様なネットワークN/Wおよびプロトコル・タイプ内の複数の通信を容易にすることができる。ある実施形態において、I/Oインターフェース・デバイス(単数または複数)は、いくつかのデバイスを互いにまたは別のサーバへ接続するための1つ以上のポートを含むことができる。
【0026】
メモリ102は、例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM:static random access memory)およびダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM:dynamic random access memory)のような揮発性メモリ、および/またはリードオンリメモリ(ROM:read only memory)、消去可能プログラマブルROM、フラッシュメモリ、ハードディスク、光ディスク、および磁気テープのような不揮発性メモリを含めて、当技術分野で知られた任意のコンピュータ可読媒体を含んでよい。ある実施形態では、メモリ102にシステム100の1つ以上のモジュール(図示されない)を記憶できる。
【0027】
ある実施形態において、システム100は、1つ以上のプロセッサ104へ作動的に結合されて、1つ以上のプロセッサ104による方法200のステップの実行のために構成された命令を記憶するように構成された1つ以上のデータ記憶デバイスまたはメモリ102を含む。
【0028】
図2A図2Bは、本開示のある実施形態による、移動対象のRADARおよび超音波センサ・ベースのリアルタイム追跡のためのコンピュータに実装された方法を示す例示的なフロー図200であり、図3は、本開示のある実施形態による、追跡装置の概略図を示す。次に、図3の追跡装置の構成要素および図1のシステム100を参照して方法200のステップが詳細に説明される。プロセス・ステップ、方法ステップ、技術、または同様のものがシーケンス順に記載されるかもしれないが、かかるプロセス、方法および技術は、交互順に機能するように構成されてもよい。言い換えれば、記載されるかもしれないステップの任意のシーケンスまたは順序は、それらのステップがその順序で行われる必要条件を必ずしも示さない。本明細書に記載されるプロセスのステップは、任意の実際的な順序で行われてよい。さらに、いくつかのステップが同時に行われてもよい。
【0029】
本開示のある実施形態によれば、1つ以上のプロセッサ104は、観察中の移動対象が移動対象検出器の視野(FOV)中で検出されていることを示唆する移動対象検出器(図3の302)からの第1のエコー応答を、ステップ202において、受信するように構成される。ある実施形態において、移動対象検出器は、RADAR、音響航法および測距(SONAR)ならびに光検出および測距(LIDAR)のうちの1つであってよい。1つ以上のプロセッサ104は、第1のエコー応答に基づいて、ステップ204において、移動対象の速さをログし、移動対象を移動対象検出器によって検出した際に、ステップ206において、移動対象追跡器によって移動対象をリアルタイムで連続的に追跡するステップを始動するようにさらに構成される。本開示のある実施形態において、移動対象追跡器は、共通の回転軸を有する2つの超音波センサ(図3の304Aおよび304B)を備え、各超音波センサは、図3に一般的に表現されるように移動対象追跡器の方位をインクリメンタルに変化させるように構成された対応するステッパモータ(図3の306Aおよび306B)へ機械的に結合される。組立品全体は、ベースがコントローラユニット(図3の308)によるさらなる計算のための固定された基準を提供するように配置される。観察中の対象がRADARのFOV中にあり、その対象を2つの超音波センサの動眼視野(FOR)中でキャプチャできるように、RADARおよび2つの超音波センサが互いに近接近して配置される。さらに、実際上、移動対象のRADARへの距離は、2つの超音波センサへの距離に等しいと見なされてよい。本開示のある実施形態において、コントローラユニットは、命令を記憶するように構成された1つ以上のデータ記憶デバイス(図示されない)、および1つ以上のデータ記憶デバイスへ作動的に結合された1つ以上のデータハードウェアプロセッサ(図示されない)を備え、1つ以上のデータハードウェアプロセッサは、本明細書に先に記載されたステップ204〜206を以下に記載されるステップ206のサブステップ(206A〜206F)とともに行うようにそれらの命令によって構成される。
【0030】
説明を容易にするために、以下の記載は、連続波(CW)ドップラーRADARが移動対象検出器として、移動対象追跡器としての役割を果たす2つの超音波センサとともに用いられる好ましい簡単で低コストの実施形態を特に取り扱う。しかしながら、本開示の範囲内で他のタイプの移動対象検出器および移動対象追跡器が採用されてもよい。本開示によれば、追跡するステップは、2つのフェーズ―探索フェーズおよびロックイン・フェーズで動作する。任意の対象が近傍で動いた際に、静止しているRADARが対象を検出してその速さをログし、一方では2つの超音波センサがトリガされて探索フェーズに入り、対象を検出する。超音波センサは、360度の検出カバレッジを可能にするために逆方向に回転する―一方のセンサが時計回りに回転し、他方が反時計回りに回転する。
【0031】
本開示のある実施形態によれば、1つ以上のプロセッサ104は、観察中の移動対象がそのFOV中にあるよう移動対象検出器を配置するように構成され、観察中の移動対象がそのFOR中にあるよう移動対象追跡器を配置するようにさらに構成されてよい。
【0032】
本開示のある実施形態によれば、1つ以上のプロセッサ104は、探索フェーズの一部として、ステップ206Aにおいて、移動対象追跡器の方位をインクリメンタルに変化させるように構成される。システム100が始動されたときに、2つの超音波センサは、アラインされており、それ自体の座標系において0°である同じ方向に焦点が合わされている。方位は、0°の姿勢から、またはロックイン・フェーズの最後にロックインされた姿勢から始めて、移動対象が移動対象追跡器の動眼視野(FOR)中で検出されるまで、予め構成された値で、変化する。検索フェーズが始まった直後に移動対象が検出されるならば、移動対象追跡器の方位に変化はない。
【0033】
ある実施形態では、移動対象が移動対象追跡器のFOR中で一旦検出されると、1つ以上のプロセッサ104は、第2のエコー応答をステップ206Bで受信するように構成される。ある実施形態では、ステップ206Cにおいて、第2のエコー応答に基づいて移動対象の移動対象追跡器からの距離が関連するタイムスタンプおよび移動対象追跡器の現在の方位とともに連続的にログされる。1つ以上のプロセッサは、ログされた距離および関連するタイムスタンプに基づいて、ステップ206Dにおいて、移動対象の速さを計算するようにさらに構成される。
【0034】
移動対象追跡器によって追跡されている移動対象が移動対象検出器によって検出された移動対象と同じであるかどうかを確認することが必須である。これは、ステップ206Eにおいて、移動対象追跡器によって追跡された移動対象が移動対象検出器によって検出された移動対象と同じであることを確認するために、1つ以上のプロセッサによって、ステップ206Dで計算された移動対象の速さをステップ204で移動対象検出器によってログされた速さと比較することにより達成される。ステップ206Eにおける比較の結果としての確認に基づいて、ステップ206Fでは移動対象追跡器の方位が現在の方位にロックされる。ある実施形態では、現在の方位は、移動対象がFORから出る前に最後にロックインされた姿勢である。別の実施形態では、移動対象がまさに開始時に始動されたのであれば、現在の方位が0°の姿勢であったかもしれず、それによって、方位を変化させる必要なしに、移動対象追跡器の方位をそのインスタンスにロックすることにつながる。従って、ロックインされた姿勢について、移動対象の位置を特定する不確実性は、d*θと表現されてよく、dは、移動対象の移動対象追跡器からの距離であり、θは、移動対象追跡器の現在の方位である。従って、移動対象が移動対象追跡器からさらに遠くなるほど(すなわち、dの値が大きくなるほど)、(そのインスタンスではθが一定であることを考慮して)不確実さが増加する。
【0035】
ある実施形態において、移動対象の速さvは、本明細書では移動対象追跡器によってログされた距離および関連するタイムスタンプに基づいて以下に表現されるように計算される:
v=median(v,v,・・・・・・,vn−1
ここでv=(d−d(i−1))/δt、平均距離d=average(d,d,・・・d)、δtは、n個の測定についてログされた連続した測定の間の時間差である。
(ステップ206Dで)計算された速さv==ステップ204で移動対象検出器によってログされた速さ(±0.1m/s以内)であれば、そのときには移動対象追跡器がロックイン・フェーズへスイッチして、検出された移動対象を追跡し続け、そうでなければ、検出された移動対象が捨てられて、移動対象追跡器は、移動対象の検出を続けるために探索フェーズへ戻る。
【0036】
本開示のある実施形態によれば、移動対象追跡器の方位をインクリメンタルに変化させるステップは、共通の回転軸を有する2つの超音波センサを、2つの超音波センサのいずれかについて最大許容回転角(±θmax)に到達するまで、予め構成された値で逆方向に回転させるステップを含み、θおよびθは、2つの超音波センサの方位であり、dは、移動対象の2つの超音波センサからの距離である。
従って、両方の超音波センサは、平行面内でそれらの角速度のベクトル和がゼロであるように同じ角速度ではあるが逆方向に回転する。
【0037】
観察中の対象は、動いているので、効率的な追跡を確実にするために超音波センサのFOVを適宜に変化させる必要がある。本開示のある実施形態によれば、移動対象追跡器の方位をインクリメンタルに変化させるステップは、移動対象追跡器の回転の角速度と関連付けられ、回転の角速度は、移動対象の移動対象検出器からの最後にログされた距離と最後にロックインされた姿勢と関連する回転角との関数である。これは、以下に示されるように表現される。
【0038】
【数1】
【0039】
角速度は、θの回転と合わせて0.4秒の停止および計算時間とに一致するように適切にセットされる。従って、平均で一回転に(θ/ω+0.05)かかり、θ/ωがその回転に要する時間を表し、0.05が測定に割り当てられた時間を表す。例として、4ラジアン/秒の角速度は、全走査時間を180度について0.6+0.785=1.385秒として与える。
【0040】
本開示のある実施形態によれば、移動対象の移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび移動対象追跡器の現在の方位とともにログするステップは、2つの超音波センサのうちの第1の超音波センサの現在の方位を移動対象を検出した2つの超音波センサのうちの第2の超音波センサの現在の方位とアラインさせるステップと、現在の方位をロックするステップとを含む。従って、図3における超音波センサ304Bが移動対象の位置を特定すれば、超音波センサ304Aは、それ自体を超音波センサ304Bとアラインさせて、両方の超音波センサが移動対象のそれ自体からの距離をログし始める。
【0041】
本開示の実施形態による探索フェーズは、以下のように表されてよい。
【0042】
【数2】
【0043】
本開示のある実施形態によるロックイン・フェーズは、以下のように表されてよい。移動対象が移動対象検出器によって検出され、移動対象追跡器を構成している両方の超音波センサが同様の方位にロックインされた時に、移動対象の超音波センサからの距離dが連続的にログされる。移動対象がいずれかの超音波センサのFOVから出れば、探索フェーズが始動される。
【0044】
本開示のある実施形態によれば、移動対象の移動対象追跡器からの距離を関連するタイムスタンプおよび移動対象追跡器の現在の方位とともにログするステップは、観察されている対象の経験的知識に基づいて予め構成され、かつ移動対象の移動対象追跡器からの最後にログされた距離(d)に逆比例する、適応的に変化するサンプリング周波数で行われる。例示的な予め構成された表が(用いられるセンサに依存しない)以下のように与えられてよい。
【0045】
【表1】
【0046】
移動対象の速さが増加するにつれて、サンプリング周波数も増加することに気付くであろう。追跡周波数は、観察されている対象の経験的知識に基づくダウンサンプリング周波数である。
【0047】
本開示のシステムおよび方法は、制御された環境における移動対象のリアルタイム追跡のための簡単でコスト効果の高い解決法を提供する。提案されるような様々な手段が移動対象検出器および移動対象追跡器に用いられてよいが、好ましい組み合わせは、ドップラーRADARおよび2つの超音波センサを含む。
【0048】
これらの実施形態を当業者が作って用いることを可能にするために、本明細書では文書による記述が主題を説明する。主題の実施形態の範囲は、請求項によって既定され、当業者に想起される他の変更を含んでよい。かかる他の変更は、それらが請求項の文言と異ならない同様の要素を有するかまたは請求項の文言と非実質的にしか相違しない同等の要素を含むならば、請求項の範囲内にあることが意図される。
【0049】
理解されるべきは、保護の範囲がかかるプログラムへ、加えてメッセージをその中に有するコンピュータ可読手段へ拡張され、そのプログラムがサーバもしくはモバイルデバイスまたは任意の適切なプログラマブルデバイス上で作動するときには、かかるコンピュータ可読記憶手段が方法の1つ以上のステップの実装のためのプログラムコード手段を含むことである。ハードウェアデバイスは、例えば、サーバもしくはパーソナルコンピュータ、または同様のもの、あるいはそれらの任意の組み合わせなどの任意の種類のコンピュータを含めて、プログラムできる任意の種類のデバイスとすることができる。デバイスは、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC:application−specific integrated circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field−programmable gate array)のような、例えば、ハードウェア手段、あるいはハードウェアとソフトウェア手段との組み合わせ、例えば、ASICおよびFPGA、または少なくとも1つのマイクロプロセッサおよびその中にソフトウェア・モジュールがある少なくとも1つのメモリとすることができる手段も含んでもよい。従って、これらの手段は、ハードウェア手段およびソフトウェア手段の両方を含むことができる。本明細書に記載される方法の実施形態をハードウェアおよびソフトウェアで実装できるであろう。デバイスがソフトウェア手段を含んでもよい。代わりに、これらの実施形態が種々のハードウェアデバイス上で、例えば、複数のCPUを用いて実施されてもよい。
【0050】
本明細書における実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェア要素を含むことができる。ソフトウェアで実装される実施形態は、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含むがそれらには限定されない。本明細書に記載される様々なモジュールによって行われる機能が他のモジュールまたは他のモジュールの組み合わせで実装されてもよい。この記載の目的のために、コンピュータで利用可能な媒体またはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによって、またはそれらと接続して用いるためのプログラムを含みうる、記憶、通信、伝搬または輸送しうる任意の装置とすることができる。
【0051】
図示されるステップは、示される例示的な実施形態を説明するために提示され、予想されるべきは、特定の機能が行われるやり方を進行する技術開発が変化させるであろうということである。本明細書ではこれらの例が、限定ではなく、説明のために提示される。さらに、本明細書では、記載の便宜上、機能的ビルディングブロックの境界が任意に定義された。指定される機能およびそれらの関係が適切に行われる限り、代わりの境界を定義できる。(本明細書に記載されるものの等価物、拡張、変形、逸脱などを含む)選択肢は、関連技術分野(単数または複数)における当業者には本明細書に含まれる教示に基づいて明らかであろう。かかる選択肢は、開示される実施形態の範囲および趣旨の範囲内に入る。さらに、単語「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(containing)」および「含む(including)」、ならびに他の同様の語形は、意味が同等であることが意図され、これらの単語のいずれかに続く単数または複数の項目がかかる単数または複数の項目の網羅的なリスティングであることを意味せず、またはリストされた単数または複数の項目のみに限定されることも意味しないという点で非限定的であることが意図される。本明細書および添付される請求項では、文脈が明らかに別様に指示しない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「該(前記)(the)」が複数の参照を含むことも留意されるべきである。
【0052】
そのうえ、本開示に適合する実施形態を実装するときに1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体が利用されてよい。コンピュータ可読記憶媒体は、プロセッサによって可読な情報またはデータが記憶されてよい任意のタイプの物理メモリを指す。従って、コンピュータ可読記憶媒体は、本明細書に記載される実施形態に適合するステップまたは段階をプロセッサ(単数または複数)に行わせるための命令を含めて、1つ以上のプロセッサによる実行のための命令を記憶してよい。用語「コンピュータ可読媒体」は、有形の品目を含み、搬送波および過渡信号を除く、すなわち、非一時的であると理解されるべきである。例は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードドライブ、CD ROM、DVD、フラッシュドライブ、ディスクおよび任意の他の既知の物理記憶媒体を含む。
【0053】
本開示および例は、例示的であるに過ぎないと見なされ、開示される実施形態の真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。

図1
図2A
図2B
図3