特許第6811299号(P6811299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6811299BセグメントとKセグメントからなるセグメントセット、切り開きトンネル及びその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6811299
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】BセグメントとKセグメントからなるセグメントセット、切り開きトンネル及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20201228BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   E21D11/04 A
   E21D9/06 301D
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-207368(P2019-207368)
(22)【出願日】2019年11月15日
【審査請求日】2020年9月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大石 憲寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 直俊
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 和義
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−182696(JP,A)
【文献】 実公昭46−031785(JP,Y1)
【文献】 特開2006−112065(JP,A)
【文献】 特開2010−024795(JP,A)
【文献】 特開2019−060168(JP,A)
【文献】 特開2019−127728(JP,A)
【文献】 特開2019−060195(JP,A)
【文献】 特開2008−267118(JP,A)
【文献】 特開2006−152644(JP,A)
【文献】 特開2005−290916(JP,A)
【文献】 特開2004−143917(JP,A)
【文献】 特開平11−101094(JP,A)
【文献】 特開2019−065473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設する二本のトンネルを繋ぐ切り開きトンネルを構成し、各トンネル側に配設されるBセグメントと、左右の該Bセグメントの間の隙間に挿入されて設置されるKセグメントとを有する、BセグメントとKセグメントからなるセグメントセットであって、
前記Kセグメントの少なくとも一方のセグメント継手面が、径方向に傾斜する第一テーパー面であり、
前記Bセグメントにおいて、前記Kセグメントの前記第一テーパー面と当接するセグメント継手面が、径方向に傾斜する第二テーパー面であり、
前記切り開きトンネルの周方向において、前記Kセグメントの左右にある前記Bセグメントよりも該Kセグメントの径方向の高さが高く、
前記第二テーパー面に開設されている、前記Kセグメントと接続する第一セグメント継ぎボルト孔が、前記Bセグメントの径方向に長い長孔であり、
前記第一テーパー面に、前記Bセグメントと接続する第二セグメント継ぎボルト孔が開設されており、
左右の前記Bセグメントの間の前記隙間の相違に応じて、前記長孔である前記第一セグメント継ぎボルト孔の異なる位置に前記第二セグメント継ぎボルト孔が位置決めされ、セグメント継ぎボルトが挿通されてボルト接合されることにより、左右の前記Bセグメントの間の前記隙間の相違に応じて、前記Bセグメントと前記Kセグメントが前記切り開きトンネルの径方向の異なる位置で接合自在であることを特徴とする、BセグメントとKセグメントからなるセグメントセット
【請求項2】
前記Kセグメントにおける左右の前記セグメント継手面がいずれも、前記第一テーパー面であることを特徴とする、請求項1に記載のBセグメントとKセグメントからなるセグメントセット
【請求項3】
前記Kセグメントの前記セグメント継手面に、第一シール材が収容される第一シール溝が設けられており、
前記Bセグメントのセグメント継手面に設けられている、第二シール材が収容される第二シール溝よりも前記第一シール溝の径方向の長さが長いことを特徴とする、請求項1又は2に記載のBセグメントとKセグメントからなるセグメントセット
【請求項4】
請求項3に記載の前記セグメントセットを構成する前記Kセグメントと、該Kセグメントの左右の前記第一テーパー面に対して、請求項3に記載の前記セグメントセットを構成する二つの前記Bセグメントの前記第二テーパー面が当接している、切り開きトンネルであって、
前記第一テーパー面に開設されている前記第二セグメント継ぎボルト孔と、前記第二テーパー面に開設されている前記長孔である前記第一セグメント継ぎボルト孔が連通し、セグメント継ぎボルトが挿通されてボルト接合されており、
前記第二シール溝に前記第二シール材が収容され、前記第一シール溝に該第二シール材よりも径方向の長さが長い前記第一シール材が収容され、該第二シール材と該第一シール材が当接してシール構造を形成していることを特徴とする、切り開きトンネル。
【請求項5】
前記長孔に前記セグメント継ぎボルトが挿通されている際に形成される隙間に、間詰材が設けられていることを特徴とする、請求項に記載の切り開きトンネル。
【請求項6】
二本のトンネルが並設して施工された後、二本の該トンネルを繋ぐ切り開きトンネルを施工する、切り開きトンネルの施工方法であって、
二本の前記トンネル側にそれぞれBセグメントを設置する、Bセグメント設置工程と、
双方の前記Bセグメントの間にKセグメントを径方向に挿入して設置するKセグメント設置工程と、を有し、
前記Kセグメントにおける左右のセグメント継手面がいずれも、径方向に傾斜する第一テーパー面であり、
前記Bセグメントにおける前記第一テーパー面と当接するセグメント継手面が、径方向に傾斜する第二テーパー面であり、
前記切り開きトンネルの周方向において、前記Kセグメントの左右にある前記Bセグメントよりも該Kセグメントの径方向の高さが高くなっており、
前記第二テーパー面において、前記Kセグメントと接続するセグメント継ぎボルト孔が前記Bセグメントの径方向に長い長孔であり、
前記Kセグメント設置工程において、前記第一テーパー面に開設されているセグメント継ぎボルト孔と、前記第二テーパー面に開設されている前記長孔が連通され、セグメント継ぎボルトが挿通されてボルト接合されることを特徴とする、切り開きトンネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BセグメントとKセグメントからなるセグメントセット、切り開きトンネル及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、軟弱な地盤が分布する都市部において道路トンネルを施工する場合、開削工法の適用が一般的であるものの、開削工法は、工事中の騒音や振動、交通規制等の課題を内在している。また、都市部の道路下空間は、複数の地下鉄や共同溝等の埋設物が輻輳していることから、新たに施工しようとするトンネルの設置深度は往々にして深くなる傾向にあり、設置深度の深層化は建設費の増大に直結する。このような背景の下、道路トンネルの施工に際してシールド工法を適用するケースが増加している。ところで、この道路トンネルの施工に当たり、一般の道路トンネルの施工では、例えば一台のシールド掘進機の掘進によって断面円形の本線トンネルが施工されることで足りる。一方、道路トンネルの分合流部の施工では、本線トンネルとランプトンネルの各断面を包括する、極めて大規模な地中拡幅が必要になり、その施工方法には様々な工夫を講じる必要がある。施工方法の一例として、本線トンネルとランプトンネルの2つのトンネル間に円弧状もしくは直線状のパイプルーフを架け渡して先受け支保工を施工する方法が挙げられる。この先受け支保工を施工した後、トンネル内を支保工にて支持し、上方のパイプルーフ直下を掘削しながらトンネルの一部を撤去することにより、例えば多連円弧状の大断面空間が形成される。そして、このように形成された大断面空間において、上記する道路トンネルの分合流部等の構造物を構築することができる。
【0003】
ここで、図1及び図2を参照して、この大断面トンネルの施工方法を詳説する。図1は、道路トンネルの分合流部の施工方法及び仮設構造を説明する縦断面図であり、図2は、図1と同様に道路トンネルの分合流部の施工方法と本設構造を説明する縦断面図である。道路トンネルの分合流部の施工方法においては、まず、地中に間隔を置いて、相対的に小断面のランプトンネル100と、相対的に大断面の本線トンネル200とを並設施工する。本線トンネル200とランプトンネル100はいずれも、シールド工法にて施工され、複数のセグメント20がリング方向に接続されてセグメントリングを形成するとともに、複数のセグメントリングがトンネルの延伸方向に接続されることにより所定延長に亘るトンネルを形成している。各セグメント20は、周方向に延びる湾曲した複数の主桁21と、主桁21の外周面に溶接にて接続されたスキンプレート24と、主桁21の周方向端部において当該主桁21とスキンプレート24に溶接にて接続された継手板22と、主桁21同士を繋いでセグメント20を補強する縦リブ23と、を有する。
次に、ランプトンネル100と本線トンネル200の各トンネル内において、パイプルーフ300との交差位置を起点として鉛直方向に延設する支保柱60(鉛直支保工)を施工する。次に、ランプトンネル100と本線トンネル200の上方において双方のトンネル間にパイプルーフ300を架け渡す。パイプルーフ300は、ランプトンネル100を発進側トンネルとし、ランプトンネル100から鋼管30を順次推進させながら到達側トンネルである本線トンネル200の手前まで湾曲線形を有して延設している。尚、ランプトンネル100が到達側トンネルであり、本線トンネル200が発進側トンネルであってもよい。また、直線状のパイプルーフが施工されてもよい。ランプトンネル100と本線トンネル200の下方位置においても、一点鎖線で示す下方のパイプルーフ300Aを必要に応じて施工する。そして、ランプトンネル100と本線トンネル200の下方位置には、双方のトンネル間に跨る先行仮設下部受け400を架け渡す。尚、支保柱60の施工は、パイプルーフ300,300Aの架け渡しの後で行ってもよい。
仮設構造ではないが、ランプトンネル100と本線トンネル200にはそれぞれ、上方斜め支保工70と下方斜め支保工80を仮設段階で施工する。これらの部材はいずれも、図中の建築限界の外周側に位置しており、この建築限界の外周側に施工されるコンクリート等に埋設される部材となり得る。上方斜め支保工70は、図中の一点鎖線で示す本設の切り開きトンネル700(もしくは、切り拡げトンネル)の軸線に沿う方向に延びて、本設トンネル供用後に切り開きトンネル700から作用する軸力を逃がす部材である。一方、下方斜め支保工80も、図中の一点鎖線で示す本設の切り開きトンネル700の軸線に沿う方向に延びて、本設トンネル供用後に切り開きトンネル700から作用する軸力を逃がす部材である。
本線トンネル200とランプトンネル100のうち、先行仮設下部受け400の端部が嵌め込まれる箇所には予めセグメント20に対して凹陥部20aが設けられ、例えばこの凹陥部20aは、トンネル施工当初はコンクリート等で閉塞されている。その施工方法の詳細は省略するが、例えば、ランプトンネル100の凹陥部20a(発進部)から折れ機構を有して曲線施工対応の掘進機を発進させ、地山を掘進しながら鋼管50の推進を実行して鋼管50同士を繋ぐことにより、先行仮設下部受け400が施工される。この施工において、鋼管の推進に適用された掘進機は、本線トンネル200の凹陥部20aまで到達して先行仮設下部受け400の施工を完了した後、例えば縮径して、先行仮設下部受け400を構成する複数の鋼管50の内部を介して発進側トンネル100内に引き戻されて回収される。また、本線トンネル200とランプトンネル100において、切り開きトンネル700の端部が接続される箇所のセグメント20においても、それぞれ凹陥部20b,20cが予め設けられている。
発進側トンネル100側においては、パイプルーフ300を構成する複数の鋼管30のうち、後端に位置する鋼管30の端部32と、セグメント20に固定されている鋼製の収容開口部に固定されている伝達部材10もしくはキャップ部材17と、鋼管30の端部32と伝達部材10もしくはキャップ部材17とを接続するコンクリート体40と、により、パイプルーフと発進側トンネルの接続構造600が形成される。一方、到達側トンネル200側においては、到達側トンネル200の手前で先端31が止まっている鋼管30と、セグメント20から地山G内に突出している鋼製の突出部と、鋼管30の先端31と鋼製の突出部とを巻き込んで一体化しているコンクリート体40と、により、パイプルーフと到達側トンネルの接続構造500が形成される。
【0004】
次に、図2に示すように、パイプルール300,300Aを支保工として、パイプルール300の下方やパイプルール300Aの上方を透かし掘り等して施工空間SPを形成し、切り開きトンネル700用のセグメント同士を継手部を介して接続しながら、本線トンネル200とランプトンネル100に掛け渡す。ここで、切り開きトンネル700用のセグメントは、本線トンネル200もしくはランプトンネル100側に取り付けられるAセグメント20A及びBセグメント20Bと、左右のBセグメント20Bのテーパー状の端面の間に、施工空間SP側からX方向に落とし込まれる(もしくは差し込まれる)ことにより取り付けられるKセグメント20Cとにより形成される。図2に示すようなAセグメント20AとBセグメント20BとKセグメント20Cは相互にセグメント継手を介して接続され、切り開き区間に亘り、各セグメントがリング継手を介して接続されることにより、切り開きトンネル700が形成される。
切り開きトンネル700により本線トンネル200とランプトンネル100が繋がれた後、本線トンネル200とランプトンネル100双方の内側の建築限界と干渉する領域を撤去することにより、大断面トンネルが施工される。
【0005】
ところで、図2に示す切り開きトンネル700の施工においては、本線トンネル200側から切り開きトンネル700の周方向であるY方向にAセグメント20AとBセグメント20Bを施工し、ランプトンネル100側から同様に周方向であるY方向にBセグメント20Bを施工した後、最後にKセグメント20Cを径方向であるX方向に落とし込む等することにより、図2に示す周方向の構造が形成される。そして、この周方向の構造が、トンネル100,200の延伸方向に亘り、リング継手を介して複数接続されることにより、切り開きトンネル700が施工される。
この切り開きトンネル700の施工において、最後に径方向にKセグメント20Cが落とし込まれる(もしくは差し込まれる)隙間が誤差のない態様で施工されている場合は、Kセグメント20Cが隙間に速やかに落とし込まれ、Bセグメント20BとKセグメント20Cの双方のセグメント継手面に開設されている複数組のボルト孔にボルトが挿通され、ボルト接合される。また、Bセグメント20BとKセグメント20Cのセグメント継手面の外周側には、シール溝が開設されており、双方のシール溝にシール材が収容され、双方のシール材が相互に圧縮された態様で当接することにより、シール構造が形成される。
しかしながら、最後に径方向にKセグメント20Cが落とし込まれる隙間が誤差のある態様(隙間が周方向に短い態様、もしくは周方向に長い態様)で施工されている場合は、Bセグメント20BとKセグメント20Cの双方のセグメント継手面において、ボルト孔が位置合わせできず、さらには、シール材同士を当接させることができない危険性がある。
【0006】
ここで、特許文献1には、ボルト接合方式のセグメントの継手について、組立て精度の向上と、目違いの調整に適したセグメントの継手構造と目違い調整用セグメントが開示されている。具体的には、少なくとも一つの継手面に、互いに接合すべきセグメントの相対する継手面に設けられている長孔のボルト孔と交差する長孔のボルト孔が形成されている、トンネルリングの目違い調整用セグメントである。又、互いに接合すべきセグメント同士をそれぞれの継手面に設けられたボルト孔を貫通するボルトによって接合するセグメントの継手構造において、接合部における一方の継手面のボルト孔と他方の継手面のボルト孔を互いに交差する長孔とした、セグメントの継手構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−56535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のセグメントの継手構造と目違い調整用セグメントによれば、リング継手面における目違いの調整を図ることができるものの、上記するように、切り開きトンネルの周方向において施工誤差がある場合であっても、最後にKセグメントを設置して切り開きトンネルを施工するといった課題を解消できるものではない。
【0009】
本発明は、並設する二本のトンネルを繋ぐ切り開きトンネルの施工において、その周方向に施工誤差がある場合であっても、最後にKセグメントを設置して切り開きトンネルの施工を可能とする、BセグメントとKセグメントからなるセグメントセット、切り開きトンネル及びその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明によるBセグメントとKセグメントからなるセグメントセットの一態様は、
並設する二本のトンネルを繋ぐ切り開きトンネルを構成し、各トンネル側に配設されるBセグメントと、左右の該Bセグメントの間の隙間に挿入されて設置されるKセグメントとを有する、BセグメントとKセグメントからなるセグメントセットであって、
前記Kセグメントの少なくとも一方のセグメント継手面が、径方向に傾斜する第一テーパー面であり、
前記Bセグメントにおいて、前記Kセグメントの前記第一テーパー面と当接するセグメント継手面が、径方向に傾斜する第二テーパー面であり、
前記切り開きトンネルの周方向において、前記Kセグメントの左右にある前記Bセグメントよりも該Kセグメントの径方向の高さが高く、
前記第二テーパー面に開設されている、前記Kセグメントと接続する第一セグメント継ぎボルト孔が、前記Bセグメントの径方向に長い長孔であり、
前記第一テーパー面に、前記Bセグメントと接続する第二セグメント継ぎボルト孔が開設されており、
左右の前記Bセグメントの間の前記隙間の相違に応じて、前記長孔である前記第一セグメント継ぎボルト孔の異なる位置に第二セグメント継ぎボルト孔が位置決めされ、セグメント継ぎボルトが挿通されてボルト接合されることにより、左右の前記Bセグメントの間の前記隙間の相違に応じて、前記Bセグメントと前記Kセグメントが前記切り開きトンネルの径方向の異なる位置で接合自在であることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、Kセグメントの少なくとも一方のセグメント継手面が径方向に傾斜する第一テーパー面であり、かつ、Kセグメントの左右にあるBセグメントよりもKセグメントの径方向の高さが高いことにより、施工誤差により、例えば左右のBセグメント間の隙間が長過ぎる場合には、Kセグメントがこの隙間に入り込んでBセグメントとKセグメントの双方のセグメント継手面におけるセグメント継ぎボルト孔を位置合わせすることが可能になる。
ここで、第一テーパー面が径方向に傾斜することに関し、この傾斜方向は、切り開きトンネルの内側から外側に向かって末広がりに傾斜している形態と、その逆の形態が含まれる。例えば、上記するように、上方のパイプルーフ側から下方にKセグメントを落とし込むようにして左右のBセグメント間の隙間にKセグメントを設置する場合は、前者の形態が適用される。
【0012】
また、本発明によるBセグメントとKセグメントからなるセグメントセットの他の態様は、前記Kセグメントにおける左右の前記セグメント継手面がいずれも、前記第一テーパー面であることを特徴とする。
本態様によれば、Kセグメントにおける左右のセグメント継手面がいずれも第一テーパー面であることにより(従って、左右のBセグメントがともにKセグメントに対応するテーパー面を有する)、左右のBセグメントのテーパー面に対してKセグメントの左右の第一テーパー面を係止させることができるため、施工誤差がある場合であっても効率的にKセグメントの設置を行うことが可能になる。
【0013】
また、本発明によるBセグメントとKセグメントからなるセグメントセットの他の態様は、前記Kセグメントの前記セグメント継手面に、第一シール材が収容される第一シール溝が設けられており、
前記Bセグメントのセグメント継手面に設けられている、第二シール材が収容される第二シール溝よりも前記第一シール溝の径方向の長さが長いことを特徴とする。
本態様によれば、Bセグメントの有する第二シール溝よりも径方向の長さの長い第一シール溝をKセグメントが有していることにより、第一シール溝内には、第二シール溝内に収容されるシール材よりも径方向に長いシール材を収容することが可能になる。そのため、上記する施工誤差がある場合であっても、Bセグメントのセグメント継手面の第二シール溝内に収容されている第二シール材に対して、Kセグメントのセグメント継手面の第一シール溝内に収容されている第一シール材を確実に接触させることができ、シール構造を形成することが可能になる。
【0014】
また、本発明によるBセグメントとKセグメントからなるセグメントセットの一態様は、
前記Kセグメントの前記第一テーパー面と当接する第二テーパー面を備えている、Bセグメントであって、
前記第二テーパー面において、前記Kセグメントと接続するセグメント継ぎボルト孔が開設されており、
前記セグメント継ぎボルト孔が前記Bセグメントの径方向に長い長孔であることを特徴とする。
本態様によれば、Bセグメントの第二テーパー面に開設されているセグメント継ぎボルト孔が、径方向に長い長孔であることにより、上記するように周方向に施工誤差がある場合であっても、Kセグメントのセグメント継手面に開設されているセグメント継ぎボルト孔との位置合わせが可能となり、双方のセグメント継ぎボルト孔にボルトを確実に挿通させてボルト接合することができる。
【0015】
また、本発明による切り開きトンネルの一態様は、
前記セグメントセットを構成する前記Kセグメントと、該Kセグメントの左右の前記第一テーパー面に対して、前記セグメントセットを構成する二つの前記Bセグメントの前記第二テーパー面が当接している、切り開きトンネルであって、
前記第一テーパー面に開設されている前記第二セグメント継ぎボルト孔と、前記第二テーパー面に開設されている前記長孔である前記第一セグメント継ぎボルト孔が連通し、セグメント継ぎボルトが挿通されてボルト接合されており、
前記第二シール溝に前記第二シール材が収容され、前記第一シール溝に該第二シール材よりも径方向の長さが長い前記第一シール材が収容され、該第二シール材と該第一シール材が当接してシール構造を形成していることを特徴とする。
本態様によれば、前記Kセグメントと、該Kセグメントの左右の第一テーパー面に対して二つの前記Bセグメントの第二テーパー面が当接していることにより、上記するように周方向に施工誤差がある場合であっても、Kセグメントのセグメント継手面に開設されているセグメント継ぎボルト孔との位置合わせが可能となり、双方のセグメント継ぎボルト孔にセグメント継ぎボルトが確実に挿通されてボルト接合された切り開きトンネルが形成される。さらに、第二シール溝に第二シール材が収容され、第一シール溝に該第二シール材よりも径方向の長さが長い第一シール材が収容されていることにより、上記するように周方向に施工誤差がある場合であっても、第二シール材と第一シール材が当接されてなるシール構造を確実に有する切り開きトンネルが形成される。
【0016】
また、本発明による切り開きトンネルの他の態様は、前記長孔に前記ボルトが挿通されている際に形成される隙間に、間詰材が設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、長孔にセグメント継ぎボルトが挿通されている際に形成される隙間に間詰材が設けられていることにより、長孔の隙間内におけるセグメント継ぎボルトのずれを解消することができる。ここで、間詰材としては、鋼棒や鋼線、鉄筋、無収縮モルタル等の充填材等が挙げられる。
【0017】
また、本発明による切り開きトンネルの施工方法の一態様は、
二本のトンネルが並設して施工された後、二本の該トンネルを繋ぐ切り開きトンネルを施工する、切り開きトンネルの施工方法であって、
二本の前記トンネル側にそれぞれBセグメントを設置する、Bセグメント設置工程と、
双方の前記Bセグメントの間にKセグメントを径方向に挿入して設置するKセグメント設置工程と、を有し、
前記Kセグメントにおける左右のセグメント継手面がいずれも、径方向に傾斜する第一テーパー面であり、
前記Bセグメントにおける前記第一テーパー面と当接するセグメント継手面が、径方向に傾斜する第二テーパー面であり、
前記切り開きトンネルの周方向において、前記Kセグメントの左右にある前記Bセグメントよりも該Kセグメントの径方向の高さが高くなっており、
前記第二テーパー面において、前記Kセグメントと接続するセグメント継ぎボルト孔が前記Bセグメントの径方向に長い長孔であり、
前記Kセグメント設置工程において、前記第一テーパー面に開設されているセグメント継ぎボルト孔と、前記第二テーパー面に開設されている前記長孔が連通され、セグメント継ぎボルトが挿通されてボルト接合されることを特徴とする。
本態様によれば、周方向に施工誤差がある場合であっても、KセグメントとBセグメントの双方のセグメント継手面に開設されている対応するセグメント継ぎボルト孔の位置合わせが可能となり、双方のセグメント継ぎボルト孔にセグメント継ぎボルトが確実に挿通されてボルト接合された切り開きトンネルを施工することができる。また、既述するように、第二シール溝に第二シール材が収容され、第一シール溝に第二シール材よりも径方向の長さが長い第一シール材が収容されていて、Kセグメントを落とし込む等してKセグメントとBセグメントの双方のセグメント継手面を当接させた際に、第二シール材と第一シール材が当接して、シール構造を確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のBセグメントとKセグメントからなるセグメントセット、切り開きトンネル及びその施工方法によれば、並設する二本のトンネルを繋ぐ切り開きトンネルの施工において、その周方向に施工誤差がある場合であっても、最後にKセグメントを設置して切り開きトンネルを施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】道路トンネルの分合流部の施工方法及び仮設構造を説明する縦断面図である。
図2】道路トンネルの分合流部の施工方法と本設構造を説明する縦断面図である。
図3】実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントの一例を主桁側から見た正面図である。
図4図3のIV方向矢視図であって、実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントの一例をセグメント継手側から見た側面図である。
図5】実施形態に係るセグメントセットを構成するBセグメントの一例を主桁側から見た正面図である。
図6図5のVI方向矢視図であって、実施形態に係るセグメントセットを構成するBセグメントの一例を周方向の軸心に対して傾斜したテーパー面であるセグメント継手側から見た側面図である。
図7図5のVII方向矢視図であって、実施形態に係るセグメントセットを構成するBセグメントの一例を周方向の軸心に対して垂直なセグメント継手側から見た側面図である。
図8】切り開きトンネルの周方向に施工誤差のない隙間に、実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントが落とし込まれて形成された、実施形態に係る切り開きトンネルの一例の一部を説明する縦断面図である。
図9】切り開きトンネルの周方向に大き目の施工誤差のある隙間に実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントが落とし込まれて形成された、実施形態に係る切り開きトンネルの一例の一部を説明する縦断面図である。
図10】切り開きトンネルの周方向に小さ目の施工誤差のある隙間に実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントが落とし込まれて形成された、実施形態に係る切り開きトンネルの一例の一部を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、各実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントBセグメント、切り開きトンネル及びその施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0021】
[実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメント]
まず、図3及び図4図8を参照して、実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントの一例について説明する。ここで、図3は、実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントの一例を主桁側から見た正面図であり、図4は、図3のIV方向矢視図であって、実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントの一例をセグメント継手側から見た側面図である。また、図8は、切り開きトンネルの周方向に施工誤差のない隙間に、実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントが落とし込まれて形成された、実施形態に係る切り開きトンネルの一例の一部を説明する縦断面図である。ここで、実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントを説明するに当たり、実施形態に係る切り開きトンネルの一例を参照することにより、Kセグメントの特徴構成の理解が容易になることから、図8を適宜参照することにする。
【0022】
Kセグメント20Dは、図8に示すように、並設する二本のトンネル100,200を繋ぐ切り開きトンネル700Aにおいて、その周方向に配設されている左右のBセグメント20Bの間の隙間に、切り開きトンネル700Aの径方向に落とし込まれる(もしくは差し込まれる)セグメントである。
【0023】
Kセグメント20Dは、図3及び図8に示すように、周方向に延設する所定の曲率を備えた2つの鋼製の主桁25と、2つの主桁25の外周側(形成されるセグメントリングの外側(地山側))において主桁25同士を繋いで周方向に延設する鋼製のスキンプレート26と、主桁25及びスキンプレート26の両端部に取付けられている鋼製の継手板27A,27B(セグメント継手面の一例)とを有する。
【0024】
主桁25は、その側面に複数のリング継ぎボルト孔25aを備えている。Kセグメント20Dにおいて、リング継ぎボルト孔25aは、径方向に長い長孔として形成されている。また、2つの主桁25の間には、これら主桁25に亘る幅を有する鋼製の縦リブ28が配設されており、縦リブ28により、箱型のKセグメント20Dの剛性が高められている。
【0025】
継手板27A,27Bのうち、主桁25の外周側には、径方向に長い、長さt1'の第一シール溝27aが形成されている。また、継手板27A,27Bのうち、第一シール溝27aよりも主桁25の径方向内側には、所定間隔を置いて、丸孔からなる複数のセグメント継ぎボルト孔27bが開設されている。尚、図示例は、一列に四つのセグメント継ぎボルト孔27bが二列設けられている形態であるが、ボルト孔の数や列には多様な形態がある。また、セグメント継ぎボルト孔は、径方向に長い長孔であってもよい。
【0026】
Kセグメント20Dにおいて、左右のセグメント継手面27A,27Bはいずれも、外周側に向かって末広がりの第一テーパー面となっている。そして、第一テーパー面におけるテーパー方向の長さt1は、以下で詳説するBセグメント20B(図5等参照)の第二テーパー面におけるテーパー方向の長さt2よりも長い。ここで、図8に示すように、図示例のKセグメント20Dは、上方の施工空間SPから径方向の下方に落とし込まれるようにして左右のBセグメント20B間の隙間に設置されることから、図3及び図8に示すように外周側に向かって末広がりの第一テーパー面となっているが、Kセグメントが内側から径方向の上方に差し込まれる場合は、図3とは異なり、径方向の内側に向かって末広がりのテーパー面を有する形態となる。
【0027】
図8に示すように、Kセグメント20Dの径方向の高さは、Kセグメント20Dの左右にあるBセグメント20Bの径方向の高さよりも高く設定されている。最後に落とし込まれるKセグメント20Dの径方向の高さが隣接するBセグメント20Bの径方向の高さよりも高く設定されていることにより、図9及び図10を参照して以下で詳説するように、Kセグメント20Dを落とし込むに当たり、左右のBセグメント20B間の隙間が施工誤差によって周方向に大き過ぎたり、あるいは小さ過ぎる場合であっても、Bセグメント20BとKセグメント20Dの双方のセグメント継手面において、双方のボルト孔の位置合わせを行うことができる。そのため、切り開きトンネル700Aの施工において、Kセグメント20Dの設置前の施工段階で周方向に施工誤差がある場合であっても、セグメント継ぎボルトにてBセグメント20BとKセグメント20Dをボルト接合することが可能になる。
【0028】
[実施形態に係るセグメントセットを構成するBセグメント]
次に、図5乃至図7、及び図8を参照して、実施形態に係るセグメントセットを構成するBセグメントの一例について説明する。ここで、図5は、実施形態に係るセグメントセットを構成するBセグメントの一例を主桁側から見た正面図である。また、図6は、図5のVI方向矢視図であって、実施形態に係るセグメントセットを構成するBセグメントの一例を周方向の軸心に対して傾斜したテーパー面であるセグメント継手側から見た側面図である。さらに、図7は、図5のVII方向矢視図であって、実施形態に係るセグメントセットを構成するBセグメントの一例を周方向の軸心に対して垂直なセグメント継手側から見た側面図である。尚、実施形態に係るセグメントセットを構成するBセグメントの説明においても、その理解が容易になることから、図8を適宜参照することにする。
【0029】
Bセグメント20Bは、図8に示すように、並設する二本のトンネル100,200を繋ぐ切り開きトンネル700Aにおいて、その周方向に最後に落とし込まれるKセグメント20Dの両側に配設されて、Kセグメント20Dと接合されるセグメントである。
【0030】
Bセグメント20Bは、図5及び図8に示すように、周方向に延設する所定の曲率を備えた2つの鋼製の主桁25Aと、2つの主桁25Aの外周側において主桁25A同士を繋いで周方向に延設する鋼製のスキンプレート26Aと、主桁25A及びスキンプレート26Aの両端部に取付けられている鋼製の継手板27C,27D(セグメント継手面の一例)とを有する。
【0031】
主桁25Aは、その側面に、丸孔からなる複数のリング継ぎボルト孔25bを備えている。また、2つの主桁25Aの間には、これら主桁25Aに亘る幅を有する複数の鋼製の縦リブ28Aが配設されており、複数の縦リブ28Aにより、箱型のBセグメント20Bの剛性が高められている。
【0032】
継手板27Cのうち、主桁25Aの外周側には、Kセグメント20Dの有する第一シール溝27aよりも径方向の長さが短い、長さt2'の第二シール溝27cが形成されている。また、継手板27Cのうち、第二シール溝27cよりも主桁25Aの径方向内側には、所定間隔を置いて、長孔からなる複数のセグメント継ぎボルト孔27dが開設されている。尚、図示例は、図4に示すKセグメント20Dの有する八つのセグメント継ぎボルト孔27bに対応する位置に、同様に八つのセグメント継ぎボルト孔27dが開設されている。
【0033】
一方、継手板27Dのうち、主桁25Aの外周側には、継手板27Cと同様に径方向の長さが短い、長さt2'の第二シール溝27cが形成されている。また、継手板27Dのうち、第二シール溝27cよりも主桁25Aの径方向内側には、所定間隔を置いて、丸孔からなる複数のセグメント継ぎボルト孔27eが開設されている。
【0034】
Bセグメント20Bにおいて、Kセグメント20Dと接続されるセグメント継手面27Cは、Kセグメント20Dの第一テーパー面27A,27Bと当接する第二テーパー面27Cを有している。そして、図5及び図6に示すように、第二テーパー面27Cのテーパー方向に沿う長さt2は、Kセグメント20Dの第一テーパー面27A,27Bのテーパー方向に沿う長さt1よりも短く設定されている。
【0035】
一方、Bセグメント20Bにおいて、例えば、図8に示すように、Aセグメント20Aの有する継手板27Eに接続される継手板27Dは、周方向の軸線に直交する垂直面となっており、図5及び図7に示すように、継手板27の長さ(Bセグメント20Bの径方向の高さ)はt3である。
【0036】
[実施形態に係る切り開きトンネルとその施工方法]
次に、図8乃至図10を参照して、実施形態に係る切り開きトンネルとその施工方法の一例について説明する。ここで、図8は、切り開きトンネルの周方向に施工誤差のない隙間に、実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントが落とし込まれて形成された、実施形態に係る切り開きトンネルの一例の一部を説明する縦断面図である。また、図9は、切り開きトンネルの周方向に大き目の施工誤差のある隙間に実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントが落とし込まれて形成された、実施形態に係る切り開きトンネルの一例の一部を説明する縦断面図である。さらに、図10は、切り開きトンネルの周方向に小さ目の施工誤差のある隙間に実施形態に係るセグメントセットを構成するKセグメントが落とし込まれて形成された、実施形態に係る切り開きトンネルの一例の一部を説明する縦断面図である。
【0037】
図8に示す切り開きトンネル700Aは、切り開きトンネル700Aの周方向に、施工誤差のない態様でAセグメント20AやBセグメント20Bが施工され、左右のBセグメント20B間の誤差のない隙間にKセグメント20Dが落とし込まれることにより、切り開きトンネル700Aが形成されている。
【0038】
切り開きトンネル700Aは、図1に示すように、ランプトンネル100と本線トンネル200といった二本のトンネル100,200を施工した後、パイプルーフ300直下を透かし掘り等して施工空間SPを形成し、切り開きトンネル700用の各種セグメントをトンネル100側及びトンネル200側からそれぞれ搬送しながら、順次設置していく。より具体的には、図2に示すように、トンネル100,200側(図2に示す例では、トンネル100側)にAセグメント20Aを設置し、さらに、Aセグメント20Aの周方向内側にBセグメント20Bを設置するとともに、トンネル200側においてもBセグメントを設置する(Bセグメント設置工程)。尚、設置されるAセグメント20Aの数に限定はなく、複数のAセグメント20Aが設置されてもよいが、少なくとも、Kセグメント20Dの左右にBセグメント20Bが設置されることを要する。
【0039】
このBセグメント設置工程では、図8に示すように、左右のBセグメント20B間にKセグメント20Dを設置するための隙間を設けておく。図8に示す例では、この隙間が施工誤差のない態様で形成されている。次に、施工空間にKセグメント20Dを搬送し、施工誤差のないBセグメント20B間の隙間にKセグメント20Dを径方向の下方に落とし込むことにより、Kセグメント20Dの設置を行う(Kセグメント設置工程)。
【0040】
図8に示す状態において、Kセグメント20Dの有する第一テーパー面であるセグメント継手面27A,27Bに開設されているセグメント継ぎボルト孔27bは、Bセグメント20Bの有する第二テーパー面であるセグメント継手面27Cに開設されているセグメント継ぎボルト孔27d(長孔)と位置合わせされており、対応するセグメント継ぎボルト孔27b、27dにセグメント継ぎボルト95が挿通され、ボルト接合されている。
【0041】
さらに、図8に示す状態において、セグメント継手面27A,27Bに設けられている第一シール溝27aに収容されている第一シール材91と、セグメント継手面27Cに設けられている第二シール溝27cに収容されている第一シール材92が相互に圧縮された態様で当接され、シール構造が形成されている。
【0042】
対応するセグメント継ぎボルト孔27b、27dにセグメント継ぎボルト95が挿通されている状態において、セグメント継ぎボルト孔27dは長孔であることから、施工誤差のない図示例の状態では、例えば長孔27dの中央位置にセグメント継ぎボルト95が挿通され、その両側には隙間が存在する。そこで、この隙間に間詰材96を設けることにより、長孔27dの隙間内におけるセグメント継ぎボルト95のずれを解消することができる。ここで、間詰材96としては、鋼棒や鋼線、鉄筋、無収縮モルタル等の充填材等が挙げられる。
【0043】
図8に示すようにして切り開きトンネル700Aの周方向の構造が形成され、複数の当該周方向の構造がリング継手面において相互にボルト接合されることにより、所定延長の切り開きトンネル700Aが形成される。より具体的には、切り開きトンネル700Aの延長方向に隣接するBセグメント20B同士の対応するリング継ぎボルト孔25bにリング継ぎボルト(図示せず)が挿通され、同様に対応するKセグメント20D同士のリング継ぎボルト孔25aにリング継ぎボルト(図示せず)が挿通され、それぞれボルト接合される。ここで、Kセグメント20Dの有するリング継ぎボルト孔25aは径方向に長い長孔であることから、隣接するKセグメント20D間に施工誤差がある場合であっても、リング継ぎボルトによるボルト接合が可能になる。
【0044】
これに対し、図9は、切り開きトンネル700Aの周方向に、大き目の施工誤差のある態様でAセグメント20AやBセグメント20Bが施工され、左右のBセグメント20B間の大き目の誤差のある隙間にKセグメント20Dが落とし込まれることにより、切り開きトンネル700Aが形成されている。
【0045】
図9に示す切り開きトンネル700Aでは、周方向の隙間が大き過ぎることから、Kセグメント20Dが図8に示す誤差のない場合よりも径方向内側に落ち込んで設置される。しかしながら、Bセグメント20Bに比べてKセグメント20Dの径方向の高さが高いことから、Kセグメント20Dのスキンプレート26は、左右のBセグメント20Bのスキンプレート26Aよりも外周に突出した態様、もしくは面一の態様で、左右のBセグメント20Bの第二テーパー面27Cに対してKセグメント20Dの左右の第一テーパー面27A,27Bが係止される(図9に示す例では、スキンプレート26が若干外側に突出している)。
【0046】
そして、図9に示す状態において、Bセグメント20Bの有する第二シール溝27cとそこに収容されている第二シール材92に対して、Kセグメント20Dの有する第一シール溝27aとそこに収容されている第一シール材91が径方向に長いことから、第一シール材91と第二シール材92は相互に圧縮された態様で当接されることができ、図8に示す状態と同様にシール構造を形成することができる。具体的には、図9に示すように、第一シール材91の上部と第二シール材92が相互に当接して、シール構造を形成する。
【0047】
さらに、Bセグメント20Bのセグメント継手面27Cに開設されているセグメント継ぎボルト孔27dが径方向に長い長孔であることにより、このセグメント継ぎボルト孔27dと、Kセグメント20Dのセグメント継手面27A,27Bに開設されているセグメント継ぎボルト孔27bを位置合わせすることができ、対応するセグメント継ぎボルト孔27b、27dにセグメント継ぎボルト95を挿通してボルト接合することができる。図9に示す切り開きトンネル700Aにおいては、長孔であるセグメント継ぎボルト孔27dの上方に隙間が形成されることから、この隙間に間詰材96が設けられている。
【0048】
このように、Kセグメント20Dの設置前の施工段階において、周方向に大き目の施工誤差がある場合であっても、Bセグメント20BとKセグメント20Dを適用することにより、Bセグメント20BとKセグメント20Dのセグメント継手面において、第一シール材91と第二シール材92によるシール構造を形成することが保証され、かつ、セグメント継ぎボルトによるボルト接合が保証される。
【0049】
図9に対し、図10は、切り開きトンネル700Aの周方向に、小さ目の施工誤差のある態様でAセグメント20AやBセグメント20Bが施工され、左右のBセグメント20B間の小さ目の誤差のある隙間にKセグメント20Dが落とし込まれることにより、切り開きトンネル700Aが形成されている。
【0050】
図10に示す切り開きトンネル700Aでは、周方向の隙間が小さ過ぎることから、Kセグメント20Dが図8に示す誤差のない場合よりも径方向外側に突出して設置される。しかしながら、Bセグメント20Bに比べてKセグメント20Dの径方向の高さが高いことから、Kセグメント20Dの下端は、左右のBセグメント20Bの下端よりも内側に突出した態様、もしくは面一の態様で、左右のBセグメント20Bの第二テーパー面27Cに対してKセグメント20Dの左右の第一テーパー面27A,27Bが係止される(図10に示す例では、Kセグメント20Dの下端が若干内側に突出している)。
【0051】
そして、図10に示す状態において、Bセグメント20Bの有する第二シール溝27cとそこに収容されている第二シール材92に対して、Kセグメント20Dの有する第一シール溝27aとそこに収容されている第一シール材91が径方向に長いことから、第一シール材91と第二シール材92は相互に圧縮された態様で当接されることができ、図8に示す状態と同様にシール構造を形成することができる。具体的には、図10に示すように、第一シール材91の下部と第二シール材92が相互に当接して、シール構造を形成する。
【0052】
さらに、Bセグメント20Bのセグメント継手面27Cに開設されているセグメント継ぎボルト孔27dが径方向に長い長孔であることにより、このセグメント継ぎボルト孔27dと、Kセグメント20Dのセグメント継手面27A,27Bに開設されているセグメント継ぎボルト孔27bを位置合わせすることができ、対応するセグメント継ぎボルト孔27b、27dにセグメント継ぎボルト95を挿通してボルト接合することができる。図10に示す切り開きトンネル700Aにおいては、長孔であるセグメント継ぎボルト孔27dの下方に隙間が形成されることから、この隙間に間詰材96が設けられている。
【0053】
このように、Kセグメント20Dの設置前の施工段階において、周方向に小さ目の施工誤差がある場合であっても、Bセグメント20BとKセグメント20Dを適用することにより、Bセグメント20BとKセグメント20Dのセグメント継手面において、第一シール材91と第二シール材92によるシール構造を形成することが保証され、かつ、セグメント継ぎボルトによるボルト接合が保証される。
【0054】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0055】
20:セグメント
20A:Aセグメント
20B:Bセグメント
20C,20D:Kセグメント
25,25A:主桁
25a:リング継ぎボルト孔
26,26A:スキンプレート
27A,27B:継手板(セグメント継手面、第一テーパー面)
27C:継手板(セグメント継手面、第二テーパー面)
27D、27E:継手板(セグメント継手面)
27a:第一シール溝
27b:セグメント継ぎボルト孔
27c:第二シール溝
27d:セグメント継ぎボルト孔(長孔)
27e,27f:セグメント継ぎボルト孔
28,28A:縦リブ
91:第一シール材
92:第二シール材
95:セグメント継ぎボルト
96:間詰材
100:ランプトンネル(トンネル)
200:本線トンネル(トンネル)
300,300A:パイプルーフ
700,700A:切り開きトンネル
【要約】
【課題】並設する二本のトンネルを繋ぐ切り開きトンネルの施工において、その周方向に施工誤差がある場合であっても、最後にKセグメントを設置して切り開きトンネルの施工を可能とする、Kセグメント、Bセグメント、切り開きトンネル及びその施工方法を提供する。
【解決手段】並設する二本のトンネル100,200を繋ぐ切り開きトンネル700Aを構成する、Bセグメント20BとKセグメント20Dのうち、各トンネル100,200側に配設されるBセグメント20Bの間に挿入されて設置される、Kセグメント20Dであり、Kセグメント20Dの少なくとも一方のセグメント継手面27A(27B)が、径方向に傾斜する第一テーパー面であり、切り開きトンネル700Aの周方向において、Kセグメント20Dの左右にあるBセグメント20BよりもKセグメント20Dの径方向の高さが高い。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10