特許第6811310号(P6811310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811310
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20201228BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20201228BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   H01L23/48 S
   H01L25/04 C
   H01L23/48 G
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-513030(P2019-513030)
(86)(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公表番号】特表2019-531600(P2019-531600A)
(43)【公表日】2019年10月31日
(86)【国際出願番号】EP2017067094
(87)【国際公開番号】WO2018046165
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2019年5月13日
(31)【優先権主張番号】102016217007.4
(32)【優先日】2016年9月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ライプナット,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ネト,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー,ロニー
【審査官】 多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−332579(JP,A)
【文献】 特開平09−213878(JP,A)
【文献】 特開平05−160339(JP,A)
【文献】 特開2015−046416(JP,A)
【文献】 特開2007−081155(JP,A)
【文献】 特開2006−093255(JP,A)
【文献】 特開2002−164503(JP,A)
【文献】 特開2014−183242(JP,A)
【文献】 特開平06−216288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48−23/50、25/00−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス(1)リードフレームマトリックス(7)とを含むパワーモジュールであって、
前記半導体デバイス(1)が、上面に複数の接触箇所(2)を有し、
前記リードフレームマトリックス(7)が、マトリックス材料中に封止されるとともに、互いに分離された複数の導体路(4)を有し、
前記複数の導体路(4)が、前記マトリックス材料から下方に突出する複数の弾性接点を有し、
前記複数の接触箇所(2)と前記複数の弾性接点が、接触圧力により電気的に接触させられた、
パワーモジュール。
【請求項2】
前記複数の導体路(4)が銅製導体路であることを特徴とする請求項記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記マトリックス材料がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記複数の導体路(4)がマトリックスで封止するために容器内に収納可能にされ、容器とリードフレームマトリックス(7)から成る結合体がDCB上に取り付けられることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項5】
容器とリードフレームマトリックス(7)から成る前記結合体が弾性的に接触されるとともに、電気的に絶縁性の軟性封止材で充填されることを特徴とする請求項記載のパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下面が金属層の上に配置され、上面に接触素子を有し、この接触素子上に半導体デバイスが位置決めされている導体素子を備えたパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
この場合の関心は特に、パワーエレクトロニクス分野で使用されるパワーモジュールにある。パワーエレクトロニクス分野は通常はスイッチング半導体デバイスによる電気エネルギーの変換を対象としている。パワーエレクトロニクスデバイスとも呼ばれるこの種の半導体デバイスは、たとえばパワーダイオード、パワーMUSFETまたはIGBTとして形成することができる。この場合チップとも呼ばれる1つまたは複数の半導体デバイスは、1つの基板上に配置され、従っていわゆるパワーモジュールを形成することができる。1つまたは複数の半導体デバイスを結合および接続技術によりその上に機械的に取り付ける基板は、半導体デバイスの電気的接続にも用いることができる。この種の基板はたとえばセラミックから成る導体素子を有することができ、この導体素子は半導体デバイスの電気的接触および機械的固定のためにたとえば銅から形成される導体路および電気的接触素子とともに成層されている。
【0003】
パワーモジュールに形成されるこのような半導体デバイスはたとえば整流機能を果たすことができ、たとえば電気自動車の駆動技術などモバイル電子機器の分野で使用することができる。特にモバイル電子機器の分野ではパワーモジュールの動作時間および寿命に関する高い要求が存在する。この場合パワーモジュールはとりわけ従来用いられている結合および接続技術では要求されている動作時間並びに寿命を達成することはできない。
【0004】
特に半導体デバイスの上面における電気的接触に際しては、端子もしくは接触素子との確実な電気的接続および通流を確立する必要がある。半導体デバイスもしくはチップの上面と基板の接触素子との間の電気的接続の特性は、しばしばパワーモジュールの耐久性の制約となる。従来技術ではたとえば、このような電気的接続のために相応するアルミニウム製の太線ワイヤを使用し、このワイヤを半導体デバイスおよび接触素子の上にボンド付けすることが知られている。最近の技術ではたとえば銅・太線ワイヤボンディングまたはいわゆる「テープ片ボンディング」が用いられている。他の解決手段は焼結・金属化された合成樹脂箔から成る。さらに太い銅製のろう付けリードが知られている。さらにいわゆるSiPLITテクノロジー(Siemens Planar Interconnect Technology)が知られている。
【0005】
これらの全ての解決手段は、使用される材料の熱膨張係数が基板および半導体デバイスの熱膨張係数と著しく異なるという欠点を有する。従って、動作中に境界層間に著しい機械的応力が生じ、パワーモジュールの故障を招く恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、半導体デバイスの電気的接触を改良したパワーモジュールを作ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明によれば請求項1の特徴を有するパワーモジュールによって解決される。個々にまたは互いに組み合わせて使用することのできる有利な実施形態は従属請求項の対象である。
【0008】
本発明によれば上記の課題は、下面が金属層の上に配置され、上面に接触素子を有し、接触素子の上に半導体デバイスが位置決めされている導体素子を備えたパワーモジュールにおいて解決すべきものである。この場合本発明は、半導体デバイスが上面でリードフレームマトリックスを介して押圧力で電気的に接触させられることを特徴としている。
【0009】
チップの上面とリードフレームとの間の接続箇所の負荷を軽減するために、リードフレームはチップの上面に押し付けられるだけで強固に接続せずに、すなわちたとえば焼結すべきでない。実際の例ではリードフレームは互いに離された多数の銅製の導体路から成っている。本発明によればリードフレーム導体路はたとえばエポキシ樹脂のようなマトリックス材料中に封止される前に鋳造される。マトリックス材料は、リードフレームの銅製導体路をその場に保持し正確な接触位置に定めるとともに、導体路間の電気的絶縁を保証する特性を有する。マトリックス材料からは部分的に非絶縁リードフレームが接触のため上面および下面に突出する。このような下面の接触では限定された力がチップの上面に及ぼされる。すなわちマトリックス材料にはリードフレームとチップとの間の永続的な接触を保証するべく限定された力が及ぼされる。またリードフレームが先ず合成材料容器に入れられ、次いでマトリックスに封止されるようにすることも可能である。このような合成材料容器とリードフレームとの結合体が後にDCB上に押し付けられ、弾性的に接触されるとともに、電気絶縁性の軟性封止材で充填される。
【0010】
封止されたリードフレームは、互いに分離されたリードフレーム導体路がマトリックス材料中にあるので、取り扱いを簡単にすることができる。さらにリードフレームはマトリックス材料により保護され、外部からの小から中程度の力に耐えることができる。結合体は従ってより強固になる。その上にリードフレームは個々のすべてのチップ上に直接押し付ける必要はなくなる。マトリックス材料への限定された力は接触箇所に力を均等に配分する。接続素子のろう付けや焼結に対する利点は標準的なチップ表面の使用にある。これによりコスト的に有利な半導体が使用できることになる。さらにリードフレームはチップに強固に接続されないので、熱応力の発生がなくなる。
【0011】
本発明の構想の発展形態は、リードフレームマトリックスが互いに分離された多数の導体路から形成されることにある。
【0012】
このような本発明の構想の特殊な形態は、導体路が銅製の導体路であることにある。
【0013】
本発明構想の有利な実施形態は、導体路がマトリックス材料中に封止される前に鋳造により作られることにある。
【0014】
このような本発明構想の発展形態は、マトリックス材料がエポキシ樹脂であることにある。
【0015】
このような本発明構想の特殊な形態は、非絶縁導体路がリードフレームマトリックスから突出するように形成されることにある。
【0016】
このような本発明構想の有利な実施形態は、導体路がマトリックスに封止されるために容器中に収納可能にされ、容器とリードフレームマトリックスから成る結合体がDCP上に載置されることにある。
【0017】
本発明構想の発展形態は、容器とリードフレームマトリックスからなる結合体が弾性的に接着され、電気絶縁軟性封止材で充填されることにある。
【0018】
本発明によるパワーモジュールは導体素子を有し、この素子は下面が金属層の上に配置され、上面に接触素子を備え、この接触素子の上に半導体デバイスが位置決めされるようにすることができる。半導体デバイスは好適にはプレート片として形成され、集積接触箇所を有するようにされる。半導体デバイスの接触箇所は上面でリードフレームマトリックスを介して押圧力で接触され、焼結プロセスや同様の接触プロセスを実施する必要がない。リードフレームマトリックスは互いに分離された多数の導体路、好適には銅製の導体路から形成され、マトリックス材料、特にエポキシ樹脂により封止される。非絶縁導体路はこのリードフレームマトリックスから突出している。
【0019】
本発明の更なる実施形態と利点は以下に実施例と図面により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は接触箇所を備えた半導体デバイスの概略斜視図である。
図2図2は本発明によるリードフレームと半導体デバイスの接触箇所との間の電気的接触を示す概略斜視図である。
図3図3はリードフレームと半導体デバイスの接触箇所との間の電気的接触を示す概略断面図である。
図4図4は半導体デバイスを備えた本発明によるリードフレームマトリックスの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は接触箇所2を備えたプレート片の形の半導体デバイス1を示す。
【0022】
図2は本発明によるリードフレーム3と半導体デバイス1の接触箇所2との間の電気的接触を示す。リードフレーム3は多数の導体路4、好適には銅製の導体路から形成される。導体路4は一つの平面に平坦に作られるのではなく、斜片6を介して好適には2つの導体路4を異なる平面において互いに接続する延長片5を有する。斜片6は接触箇所2に直接導くこともできる。
【0023】
図3図2の断面図である。この図3から分かるように、斜片6は導体路4の2つの延長片5を異なる平面において互いに接続するか、または斜片6は半導体デバイス1の接触箇所2に導かれる。
【0024】
図4は半導体デバイス1を備えた本発明によるリードフレームマトリックス7を示す。導体路4は一つの容器内に設置可能であり、たとえばエポキシ樹脂から成るマトリックスで封止することもできるので、容器とリードフレームマトリックス7から成る結合体は半導体デバイス1のDCB上に取り付け可能である。リードフレームマトリックス7は上面に接触箇所8を有する。半導体デバイス1に向かう下面では弾性接点が非絶縁導体路4の形でマトリックス材料から突出し、半導体デバイス1の接触箇所2を接触させている。半導体デバイス1の接触箇所2は従って上面ではリードフレームマトリックス7を介して単に押圧力だけで接触させられている。
【0025】
上面でリードフレームマトリックスを介して接触させられる本発明による半導体デバイスを備えたパワーモジュールは、封止されたリードフレームマトリックスが簡単な取り扱いを可能にすることを特徴とする。なぜなら互いに分離されたリードフレーム導体路がマトリックス材料中にあるからである。さらにリードフレームはマトリックス材料により保護され、外部からの小程度から中程度の力に耐えることができるからである。結合体はこれによりさらに強固になる。その上にリードフレームは個々のチップ上に直接押し付ける必要はなくなる。マトリックス材料への限定された圧力は均等に力を接触箇所上に分布させる。接続部材の従来のろう付けおよび焼結に対する利点は標準的なチップ表面を利用できることにある。これによりコスト的に有利な半導体が使用できることになる。さらにリードフレームはチップに強固に接続されていないので、熱応力の発生は生じない。
【符号の説明】
【0026】
1 半導体デバイス
2 接触箇所
3 リードフレーム
4 導体路
5 延長片
6 斜片
7 リードフレームマトリックス
8 接触箇所
図1
図2
図3
図4