【課題を解決するための手段】
【0012】
一側面において、本発明は、ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む糖尿病の治療または予防のための薬学的組成物を提供する。
【0013】
前記ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩は、AMPK活性化を誘導することができる。
【0014】
前記ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩は、PPAR−δまたはPGC−1αの発現を誘導することができる。
【0015】
前記薬学的組成物は、インスリンをさらに含みうる。
【0016】
前記薬学的組成物は、薬学的組成物全体重量部に対して、ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩20〜40重量部;及びインスリン60〜80重量部;を含みうる。
【0017】
一態様において、本発明は、ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩を薬剤学的に有効な量で個体に投与する段階を含む糖尿病治療方法を提供する。
【0018】
他の態様において、本発明は、糖尿病治療または予防のための薬剤製造のためのミドドリンの用途を提供する。
【0019】
他の側面において、本発明は、ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む高脂血症の治療または予防のための薬学的組成物を提供する。
【0020】
前記ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩は、AMPK活性化を誘導することができる。
【0021】
前記ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩は、PPAR−δまたはPGC−1αの発現を誘導することができる。
【0022】
一態様において、本発明は、ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩を薬剤学的に有効な量で個体に投与する段階を含む高脂血症治療方法を提供する。
【0023】
他の態様において、本発明は、高脂血症治療または予防のための薬剤製造のためのミドドリンの用途を提供する。
【0024】
本発明において、α1−アドレナリン受容体(α1−AR)効能剤は、α1−アドレナリン受容体に作用して活性化させる物質であれば、特に制限はない。アドレナリン受容体は、α1、α2、βという3種のタイプがあり、本発明では、α1タイプの受容体を活性化させる公知の化合物を制限なしに利用することができるが、望ましくは、ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩であり得る。
【0025】
ミドドリン化合物は、アマチン(amatine)、プロアマチン(proamatine)、グトロン(gutron)などの商標名で販売され、そのIUPAC名は、(RS)−N−[2−(2,5−ジメトキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル]グリシンアミド((RS)−N−[2−(2,5−dimethoxyphenyl)−2−hydroxyethyl]glycinamide)であって、下記化学式Iで表示される。
【0026】
【化1】
【0027】
ミドドリンは、投与後、生体内で目的化合物に変化される薬物前駆体(prodrug)であり、生体内投与後、活性代謝産物であるデスグリミドドリン(desglymidodrine)に変化されて、α1−アドレナリン受容体を活性化させ、引き続きAMPK活性化、PPAR−δ、またはPGC−1αの発現を誘導を通じて最終的に運動類似効果を誘導することができる。
【0028】
前記化学式1で表される化合物は、「薬学的に許容可能な塩」を形成しうる。適した薬学的に許容可能な塩は、酸付加塩のように、本発明が属する技術分野で通常使われるものであって、特に制限されるものではない。望ましい薬学的に許容可能な酸付加塩としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、または臭素酸のような無機酸;酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フマル酸、マイレン酸、マロン酸、フタル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、シトロン酸、グルコン酸、酒石酸、サリチル酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、エンボン酸、アスパラギン酸、またはグルタミン酸のような有機酸が挙げられる。有機塩基付加塩の製造に使われる有機塩基としては、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどを例として挙げられる。アミノ酸付加塩基の製造に使われるアミノ酸としては、アラニン、グリシンなどの天然アミノ酸を例として挙げられる。
【0029】
前記ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩は、AMPK活性化を誘導するものである。
AMPKは、生体内エネルギー状態を感知して、それを一定のレベルに保持させるエネルギーセンサー(energy sensor)の役割を行い、例えば、代謝性ストレスや運動によって細胞内のエネルギーが減少する場合、すなわち、ATPが枯渇してAMP/ATP比率が増加する場合に活性化されて、ATPを消費する過程(例えば、脂肪酸酸化と当該過程)を促進する。AMPKの活性化は、筋肉のような主要標的臓器に代謝的に重要な結果を誘導するが、特に、骨格筋で脂肪酸の酸化と糖吸収とを促進すると知られている。
【0030】
前記ミドドリンまたはその薬学的に許容可能な塩は、PPAR−δまたはPGC−1αの発現を誘導するものである。
PPAR−δは、AMPKを調節して細胞内異化的エネルギー代謝を促進し、抗炎症作用など生体代謝の均衡(恒常性)保持に必須的な役割を行うと知られている。
【0031】
PGC−1αは、ミトコンドリア増殖の主な調節物質であって、運動、飢え、寒さのような激しい代謝的変化に反応して発現が誘導され、AMPK、PPAR−δ、NAD−dependent deacetylase sirtuin−1(SIRT1)などの調節を受けると知られている。
【0032】
本発明による有効成分は、運動類似効果を誘導し、前記運動類似効果は、AMPK活性化が必要な疾患の予防または治療効果であり得る。
本発明において、運動類似効果とは、筋肉のインスリン鋭敏度増加及び酸化リン酸化機能増進、心臓機能改善(収縮力増加)、酸化リン酸化機能増進、コレステロール減少、脂肪蓄積及び体重減少など運動時に発揮される生理効果を意味し、特に制限はない。
【0033】
本発明において、AMPK活性化が必要な疾患とは、AMPKの非活性化によって生じうる多様な疾患であって、特に制限はなく、例を挙げれば、糖尿病及び/または高脂血症を含む代謝性疾患であり得る。
【0034】
本発明において、「薬学的組成物」は、既存の治療活性成分、その他の補助剤、薬剤学的に許容可能な担体などの成分をさらに含みうる。前記薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、及びエタノールなどを含む。
【0035】
前記組成物は、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、座剤及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して使われる。
【0036】
本発明において、「投与量」は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与回数、投与方法、排泄率及び疾患の重症度などによって、その範囲が多様に調節されうるということは当業者には明白である。
【0037】
本発明において、「個体」とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、犬、猫、馬及び牛などの哺乳類を意味する。
【0038】
本発明において、「薬学的有効量」は、投与される疾患の種類及び重度度、患者の年齢及び性別、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使われる薬物を含んだ要素、及びその他の医学分野によく知られた要素によって決定され、前記要素をいずれも考慮して副作用なしに最大効果が得られる量で、当業者によって容易に決定されうる。
【0039】
本発明の組成物は、目的組織に到達することができる限り、「投与方法」には制限もない。例を挙げれば、経口投与、動脈注射、静脈注射、経皮注射、鼻腔内投与、経気管支投与または筋肉内投与などが含まれる。一日投与量は、約0.0001〜100mg/kgであり、望ましくは、0.001〜10mg/kgであり、一日一回ないし数回分けて投与することが望ましい。
【0040】
本発明の一実施例において、ミドドリン及びインスリンを混合投与時に、細胞内ブドウ糖吸収が増加して、糖尿病の予防または治療に有効であることを確認した。
【0041】
本発明の一実施例では、α1−AR刺激効果が、心筋細胞、骨格筋細胞で運動類似遺伝子の発現に及ぼす効果を分析し、それをヒトの代謝症侯群と類似した症状を示す動物である自発性高血圧ラット(SHR)を使用して、インビボ(in vivo)で心臓、骨格筋及び肝に及ぼす効果と比較した。
その結果、ヒトの代謝症侯群に該当する自発性高血圧ラット(SHR)は、ミドドリンによってα1−ARを刺激時に、心臓、骨格筋、肝でAMPK、PPAR−δ、PGC−1αの活性化及び発現増加を引き起こすという事実を明らかにした。
【0042】
また、α1−AR刺激時に、心筋でAMPK刺激に対するPPAR−δ及びPGC−1αの活性化の比率が、骨格筋と肝での数値よりもさらに高いということを確認した。このような結果は、運動類似AMPK−PPAR−δの活性化と関連し、α1−AR刺激による筋肉収縮効果とは独立したことであることを意味し、薬理学的に刺激された心筋収縮作用が心臓AMPK−PPAR−δ−PGC−1αの活性化に寄与するという点を初めて報告したものである。
【0043】
本発明では、インビトロ(in vitro)及びインビボ実験を通じて、筋肉運動とは無関係に、ミドドリンを通じるα1−AR刺激が骨格筋でAMPK−PPAR−δ−PGC−1αの発現を活性化させるという点を初めて明らかにした。このような運動関連遺伝子発現が、持久的運動(endurance exercise)を保持するための適応反応のうちの1つであるという点に対しては既に報告されている。
【0044】
本発明では、ミドドリンを通じるα1−AR刺激時に、肝でAMPK−PPAR−δ−PGC−1αの活性化が誘導されることを確認した。本発明は、ミドドリンとインスリンとの複合投与によってブドウ糖吸収が増加するということを確認したので、これにより、糖尿病の予防または治療に有効であるということが分かる。
【0045】
さらに、既存の糖尿病治療剤は、副作用として体重増加及び心不全が発生したが、ミドドリン使用時には、血糖減少と共に体重減少、心不全の予防及び抗炎症効果が共に発揮されて、既存の糖尿病治療剤に比べて糖尿調節に非常に有利である。
【0046】
本発明では、α1−AR効能剤であるミドドリンが、α1−AR刺激によってAMPKを活性化させるものと独立して、PPAR−δ及びPGC−1αの発現を増加させて心臓機能を向上させることを確認したので、これは、運動訓練が心臓断片短縮を40〜50%まで増加させ、収縮及び弛緩両者の速度をいずれも向上させるためである。
したがって、α1−AR効能剤は、心臓収縮の直接的刺激に対する三重効果及びその運動効果を通じて、また、心臓、筋肉及び肝を含む多器官でのα1−AR刺激による運動類似AMPK−PPAR−δの活性化という間接的効果を通じて心臓機能を向上させることにより、インビボで運動耐性の向上に寄与すると判断される。
【0047】
このように、ミドドリンを通じるα1−AR刺激によってAMPK−PPAR−δの活性化という心臓運動類似効果が表われ、付加的にPPAR−δ及びPGC−1αの発現増加という他の運動類似プログラムを作動させるAMPK−独立的心臓運動効果が表われるという事実は、本発明で初めて明らかにしたものである。
【0048】
本発明の一実施例では、ミドドリンを通じるα1−AR刺激効果が、心筋細胞、骨格筋細胞で運動類似遺伝子の発現に及ぼす効果を分析し、それをヒトの代謝症侯群と類似した症状を示す動物である自発性高血圧ラット(SHR)を使用して、インビボで心臓、骨格筋及び肝に及ぼす効果と比較した。
また、α1−AR刺激効果が、心臓機能/サイズ、アディポネクチン及び脂肪レベルなどに及ぼす効果を観察した。
【0049】
その結果、ヒトの代謝症侯群に該当する自発性高血圧ラット(SHR)は、ミドドリンによってα1−ARを刺激時に、心臓、骨格筋、肝でAMPK、PPAR−δ、PGC−1αの活性化及び発現増加を引き起こし、心臓肥大または追加的な血圧上昇なしに心臓収縮性を増加させるという事実を明らかにした。
【0050】
また、ミドドリンを通じるα1−AR刺激時に、血液でコレステロールレベルが減少し、心筋でAMPK刺激に対するPPAR−δ及びPGC−1αの活性化の比率が、骨格筋と肝での数値よりもさらに高いということを確認した。このような結果は、運動類似AMPK−PPAR−δの活性化と関連し、α1−AR刺激による筋肉収縮効果とは独立したことであることを意味し、薬理学的に刺激された心筋収縮作用が心臓AMPK−PPAR−δ−PGC−1αの活性化に寄与するという点を初めて報告したものである。
【0051】
また、本発明では、ミドドリンが、他の運動類似効果誘発薬物(アテノロール)に比べて、さらに効果的であるという事実を明らかにした。これは、ミドドリンが心臓収縮性を向上させる二重効果を有する一方に、他の薬物は、心臓筋肉収縮に対する直接的なエネルギー代謝作用なしに運動類似効果のみを発揮するためである。また、他の運動類似剤は、それぞれの機能を高めるために、多様な薬物を混合して使われているが、α1−AR効能剤は、一種の物質でも、このような運動効果を多器官に同時多発的に表わすという長所がある。
【0052】
また、本発明では、ミドドリンで処理されたラットで左心室拍出係数がアテノロール処理された動物ほど増加したが、心臓でのリン酸化されたAMPKは、実験グループの間に差があることを明らかにした。α1−ARが心臓に対して友好的な効果を表わすにもかかわらず、α1−AR刺激の程度が長期的予後面では重要であると判断されるが、これは、心臓α1−ARドライブの高度に持続した補強が収縮性機能障害、漸進的纎維化及び母細胞タンパク質遺伝子の再活性化に対して病理的リモデリングを引き起こすためである。
【0053】
また、本発明では、α1−AR刺激にもかかわらず、心臓肥大が表われないということを明らかにし、さらに、本発明によれば、左心室質量は、アテノロール処理された群でよりもミドドリン処理された群でさらに小さく、これは、心臓ATI発現の差として説明される。
【0054】
また、本発明では、インビトロ及びインビボ実験を通じて、筋肉運動とは無関係に、α1−AR刺激が骨格筋でAMPK−PPAR−δ−PGC−1αの発現を活性化させるという点を初めて明らかにした。このような運動関連遺伝子発現が、持久的運動を保持するための適応反応のうちの1つであるという点に対しては既に報告されている。
【0055】
また、本発明では、ミドドリンを通じるα1−AR刺激時に、肝でAMPK活性化が誘導され、総コレステロール、LDL−コレステロール、及びHDL−コレステロールレベルが著しく減少するということを確認したので、これにより、高脂血症の予防または治療に有効であるということが分かる。
【0056】
また、本発明では、ミドドリンを通じるα1−AR刺激時に、脂肪細胞内脂肪含有量が減少し、脂肪合成/蓄積が抑制され、体重及び腹部脂肪が減少するということを確認した。
【0057】
さらに、高脂血症に対する効果は、コレステロール低下剤であるスタチン(statin)が副作用として糖尿が来ることとは異なって、ミドドリン使用時に、コレステロールの減少と共に糖尿が予防になるので、副作用がなく、効果に優れた新たな高脂血症治療剤として適用することができる。
【0058】
さらに他の側面において、本発明は、ミドドリンを含む血糖降下用健康補助食品を提供する。
【0059】
さらに他の側面において、本発明は、ミドドリンを含む高脂血症改善用健康補助食品を提供する。
【0060】
本発明の健康補助食品は、ミドドリンに各種の副材料及び食品添加物が添加される。この際、健康補助食品は、食品総重量でミドドリンを0.1〜90重量%を含有することができる。
【0061】
食品添加物として、例えば、単糖類、二糖類、多糖類、糖アルコールなどの糖類と、タウマチン、ステビア抽出物、サッカリン、アスパルテームなどの香味剤と、営養剤、ビタミン、食用電解質、風味剤、着色剤、増進剤(例、チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸、アルギン酸、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸化剤などが用いられうる。
【0062】
本発明の健康補助食品は、多様な形態で剤型が可能なので、その形態は、特に制限されるものではない。したがって、飲物、顆粒、錠剤、パウダー、丸、カプセルのうちから選択された何れか1つの剤型で形成されうる。飲物、顆粒、錠剤、パウダー、丸、カプセルの剤型を有する健康補助食品は、携帯が簡便であり、いつでもどこでも随時に摂取することが容易である。
【0063】
本発明の健康補助食品の剤型の一例として、飲物は、ミドドリン0.1〜40重量%、精製水60〜99.9重量%に組成される。また、飲物に添加物としてタウリン、クエン酸、ビタミンCなどをさらに添加することができる。
【0064】
それ以外にも、通常の飲物のように、さまざまな香味剤が追加成分として含有されうる。香味剤としてタウマチン、ステビア抽出物などの天然香味剤を使用することができる。
【0065】
顆粒、錠剤、パウダー、丸、カプセルなどの剤型は、ミドドリンを1〜50重量%を含有し、その他の粘着剤、香味料、ビタミン、炭水化物などをさらに含有することができる。