(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6811401
(24)【登録日】2020年12月17日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】発酵食品の製造方法、クッキー状発酵食品の製造方法、睡眠導入剤
(51)【国際特許分類】
A21D 13/045 20170101AFI20201228BHJP
A21D 8/04 20060101ALI20201228BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20201228BHJP
A61K 36/06 20060101ALI20201228BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20201228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20201228BHJP
A23L 33/14 20160101ALN20201228BHJP
【FI】
A21D13/045
A21D8/04
A61K36/48
A61K36/06 Z
A61P25/20
A61P43/00 121
!A23L33/14
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-26641(P2020-26641)
(22)【出願日】2020年1月31日
【審査請求日】2020年1月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506200854
【氏名又は名称】株式会社元気にやせる研究所
(72)【発明者】
【氏名】中本 綾美
【審査官】
澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−312439(JP,A)
【文献】
特開2005−046049(JP,A)
【文献】
特開2014−090693(JP,A)
【文献】
特開2014−103862(JP,A)
【文献】
特開2006−143678(JP,A)
【文献】
Nutrition Journal,2015年,14,Article number: 127,[Online],URL,https://nutritionj.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12937-015-0117-x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D2/00−17/00,
A23L5/40−5/49,
A23L11/00−11/30,
A23L31/00−33/29,
A61K31/00−33/44,
A61K36/00−36/9068,
A61P1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料としてきな粉と麹を1:0.5〜2の分量比で混ぜ合わせ水またはお湯を、きな粉と麹を合わせた重量の0.8〜2倍量入れ、無塩の状態で50℃〜60℃で1日間〜7日間保存して製造する工程を少なくとも含む発酵食品の製造方法により製造される発酵食品をオーブンで焼き固めクッキー状にして製造することを特徴とする無塩のクッキー状発酵食品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のクッキー状発酵食品の製造方法により製造される発酵食品からなることを特徴とする睡眠導入剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆と麹を発酵させた原料を用いて製造する発酵食品の製造方法、クッキー状発酵食品の製造方法、睡眠導入剤、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
味噌は日本各地の気候、風土、食習慣に合わせて育まれてきた日本食に欠かせない調味料の一つである。近年、味噌は抗がん作用、抗酸化作用、血流促進、疲労回復などの効用を有することが知られており、健康食品として注目を集めている。
【0003】
味噌のこうした効用を生かした健康食品の開発が考えられるが、しかし、通常の辛口味噌の食塩濃度は約12%〜14%、白味噌でも4%〜5%であるため、塩分濃度が高くなるという問題点があった。塩分を多く含む食品が、高血圧、脳卒中の一因となることが知られていることから、減塩化が求められている。
【0004】
ところで、味噌の塩分量を減少させるために、これまでに減塩味噌や、塩を全く添加しない大豆発酵食品が開発されてきた。以下、塩を全く添加しない大豆発酵食品を無塩発酵味噌と称する。このような減塩味噌や無塩発酵味噌を示す従来技術として、例えば、特許文献1、2(特開2014−90693、特開2014−103862)には、発酵アルコールを添加して、酸敗を防止し、短時間高温で、熟成させる無塩発酵味噌の製造方法が開示されている。また、特許文献3(特開2006−143678)には、アルコール添加せずに製造する方法が開示されているが、そのまま置いておくと腐敗しやすいので、水分活性を下げるために乾燥させたり、塩などを添加する方法がとられている。更に、特許文献4(特開2015−15941)には、加圧加温下で無塩の味噌を作る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−90693号公報
【特許文献2】特開2014−103862号公報
【特許文献3】特開2006−143678号公報
【特許文献4】特開2015−15941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術として示した特許文献1〜4は、確かに無塩化、減塩化が可能であるが、摂取にあたっては不要な成分であるアルコールを添加する必要があったり、製造方法が複雑であるという問題や、装置が高額となり、省コスト化が図れないという問題があった。
また、近年、高齢者の睡眠障害が社会問題化しつつあり、改善策として医師の診断に基づく睡眠薬の処方が施されているものの、薬の副作用や医療費の高騰など、様々な副次的な問題も顕在化しつつある。このような状況から、安価で副作用がなく、自然な眠りにつける睡眠導入剤や睡眠改善方法の開発が課題となっている。このような中で、味噌などの発酵食品は、副作用がなく、これらの症状緩和をすることが期待されるが、塩分が問題となって多量に摂取することができなかったのが現状である。
そこで、本発明は、上記従来の味噌が有する問題や、高齢者に対して処方される睡眠薬が有する問題を解消し、副作用を生じる恐れが少なく、保存性が高く、手軽に食べられる無塩の発酵食品の製造方法、クッキー状発酵食品の製造方法、睡眠導入剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため本発明の発酵食品の製造方法は、
原料としてきな粉と麹を1:0.5〜2の分量比で混ぜ合わせ水またはお湯を、
きな粉と麹を合わせた重量の0.8〜2倍量入れ、
無塩の状態で50℃〜60℃で1日間〜7日間保存して製造する
工程を少なくとも含む発酵食品の製造方法により製造される発酵食品をオーブンで焼き固めクッキー状にして製造することを第1の特徴としている
。
また、本発明の睡眠導入剤は、上記
第1に記載のクッキー状発酵食品の製造方法により製造される発酵食品からなることを
第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項
1に記載
のクッキー状発酵食品の製造方法によれば、塩分を含まない発酵食品を製造することができる。更に、クッキー状発酵食品を製造できることで、自然な食品として手軽に食することができると共に、保存性が高い発酵食品を製造することができる。また、請求項
2に記載の睡眠導入剤によれば、それを食することで睡眠障害の改善をはかることができる。
また、本発明に係る発酵食品の製造方法により製造される発酵食品は、ペースト状やクッキー状としての使用だけでなく、飲料等に加工して使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【
図1】本発明に係る睡眠導入剤を食した被験者の1か月の平均睡眠時間を示す図である。
【
図2】本発明に係る睡眠導入剤を食した被験者の1か月間の日毎の睡眠時間を示す図で、本発明に係る睡眠導入剤を食した場合と食さなかった場合との違いを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
大豆と麹を1:0.5〜2 の分量比で混ぜあわせ、水またはお湯を0.8〜2倍量入れ、50℃〜60℃で1日間〜7日間保温器で保存し、ペースト状発酵食品を製造する。これにより、本発明に係る発酵食品が製造される。更に、この発酵食品をオーブンで焼き固めクッキー状にすることで、本発明に係るクッキー状発酵食品が製造される。このクッキー状発酵食品は、クッキー状睡眠導入剤として使用することができる。
なお、本発明に係る発酵食品は、このようにクッキー状発酵食品として食することが可能なことは勿論のこと、製造されたペースト状発酵食品を調味してペースト状のまま食することや、水、お茶、などの適宜の液体で薄めて飲料として使用することも可能である。つまり、本発明に係る発酵食品は、ペースト状睡眠導入剤として、または液状睡眠導入剤としても使用することができる。
また、大豆としては、大豆、きな粉、大豆粉の少なくとも1つ或いはその組み合わせを用いることが望ましい。また、麹としては、米麹又は麦麹或いはその組み合わせを用いることが望ましい。
また、お湯は、水温50℃〜60℃のものを用いることが望ましい。
【0010】
殺菌、酵素分解を高めるため、きな粉はそのまま使えるが、大豆、大豆粉は加熱処理して、大豆はそのまま、もしくは粉砕してから使用する。
【0011】
酵素の働きを良くするため、粉砕するのが好ましい。大豆を細かく粉砕することによって、麹とよく混ざり、より分解が高まる。麹に関しても、粉砕する方が分解が高まる。
【0012】
塩分を入れないことにより酵素分解が早く進む。
【0013】
50℃〜60℃の温度が酵素の働きやすさを高めることと、雑菌の増殖を抑制する。
温度が50℃より低いと雑菌が繁殖しやすくなり腐敗してしまい、60℃より高いと、酵素が失活して発酵がすすまなくなる。
この温度帯で分解させることで、無塩の状態で雑菌の繁殖を抑えることができる。
【0014】
高い温度で、分解速度も速まるため、製造日数が少なくて済み、製造コストが削減できる。1日より短い期間では分解が進まず、睡眠導入剤として有効な成分が十分にできていない。また、8日以上の期間では、分解が進み過ぎて、睡眠導入剤として有効な成分が分解されてしまう。
【0015】
出来上がったものを、オーブンで焼きクッキー状にしたものをそのまま食べる。
ふくらし粉を入れて食感を改善してもよい。発酵後、ジャムや海苔の佃煮などの様に調味して、パンやご飯と一緒に食べる形態や、飲み物やスープなどの形態で飲食してもよい。味噌汁のように料理する手間もなくそのままで簡単に食べることができる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
【0017】
米麹300g、きな粉300g、水600gを混ぜ合わせ、60度で2日間発酵分解させて発酵食品を作る。その発酵食品を、厚さ7mmの板状に延ばし、3センチの格子状に切り分け170度のオーブンで20分焼き固めてクッキー(クッキー状発酵食品)を作る。
【0018】
介護施設において、前記製造方法で製造したクッキー状発酵食品(本発明に係る睡眠導入剤)を食べた人においては以下の効果がみいだされた。
睡眠障害で、睡眠薬を常用していた女性に、睡眠薬をやめて1日2枚(1枚5g)のクッキーを食べてもらったところ、睡眠時間は<
図1>のようになった。睡眠時間は睡眠薬服用時と変わらず、クッキーを食べ忘れた日の睡眠時間は短くなっていた。<
図2>
なお、<
図1>は1ヶ月の平均睡眠時間のグラフであり、2018年7月に抗精神病剤の服用をやめ睡眠薬の服用を始めたところ、3ヶ月後の2018年10月から睡眠時間が増え8.5時間となり、さらに2019年2月に睡眠薬の服用をやめ、クッキーを食べ始めたところ、同じく3ヶ月後から睡眠時間が長くなりはじめ睡眠時間も安定してきている。睡眠薬もクッキーも服用から3ヶ月後に睡眠時間が長くなる効果が現れていることを示すものである。また<
図2>はクッキーを食べ忘れた日だけ睡眠時間が短くなっていることを示すものである。
睡眠薬服用時においては、夜中にトイレに行く際も、睡眠薬により眠らされている状態で、トイレの中で眠ってしまったり、歩きながら寝てしまったりするが、本発明に係るクッキー状発酵食品(クッキー状睡眠導入剤)を食べて寝た場合、夜中トイレに行く際も自然に目覚め、意識がはっきりしていて、足取りもしっかりとしており、ベッドに戻ってまた再び眠りにつくことができた。
睡眠薬を服用している場合、トイレに行く際も意識が眠らされていて、自分の意思で歩くことができず、つまずいたり、転倒、骨折、が懸念されている。本発明に係るクッキー状発酵食品(クッキー状睡眠導入剤)を食することで、自然な睡眠が得られることにより、このような危険性も回避でき、様々な認知症の症状が改善された。
【要約】
【課題】副作用を生じる恐れが少なく、保存性が高く、手軽に食べられる無塩の発酵食品の製造方法、クッキー状発酵食品の製造方法、睡眠導入剤の提供を課題とする。
【解決手段】原料として大豆と麹を1:0.5〜2の分量比で混ぜあわせ水またはお湯を、大豆と麹を合わせた重量の0.8〜2倍量入れ、50℃〜60℃で1日間〜7日間保存して製造する発酵食品の製造方法である。
【選択図】
図2