(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6811503
(24)【登録日】2020年12月17日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】杭吊下治具
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20201228BHJP
B66C 1/66 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
B66C1/66 K
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-100851(P2020-100851)
(22)【出願日】2020年6月10日
【審査請求日】2020年6月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520190481
【氏名又は名称】藤友株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 安生
【審査官】
田島 拳士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−312978(JP,A)
【文献】
特開平10−95591(JP,A)
【文献】
特開平11−116180(JP,A)
【文献】
実開昭59−167831(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−7/30
E02D 9/00−9/04
E02D 11/00
E02D 13/00−13/10
B66C 1/00−1/68
B66C 3/00−3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンと、チェーンの一端に設けるトグルと、チェーンの他端に設ける連結材と、からなり、
トグルは、チェーンの一端に挿通する長尺の折曲片と、折曲片に固定する固定片と、からなり、
トグルの折曲片は、中央を山状に折曲した折曲部と、折曲部の両端から同軸心状に突設した水平部と、を有する、
杭吊下治具。
【請求項2】
トグルの固定片の両端は、端部に向けて縮径していることを特徴とする、
請求項1に記載の杭吊下治具。
【請求項3】
連結材に取り付ける略楕円状の端部リングを有する、
請求項1又は2に記載の杭吊下治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に取り付けて使用する杭吊下治具に関する。
【背景技術】
【0002】
山留め工事において、バイブロハンマを備えた杭打機によりH鋼杭やシートパイル等の山留め杭を把持し、バイブロハンマを動作させながら打設する工法(RG工法)が知られている。
このとき、山留め杭は、杭打機の先端に取り付けた山留め杭クランプ装置により把持する。
杭クランプ装置は山留め杭の上端を把持するが、そのためには一度、山留め杭を鉛直に立ち上げる必要がある。
【0003】
山留め杭は、地面に横置きした状態で上端側となる端部に取り付けた吊下具を、地面近くまで降下させた山留め杭クランプ装置に連結し、山留め杭クランプ装置を上昇させることにより立ち上げる。
吊下具はワイヤーであり、山留め杭がH鋼杭の場合、H鋼杭のウェブと杭クランプ装置それぞれに設けた貫通孔にワイヤーを挿通することで、H鋼杭と杭クランプ装置を連結する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の吊下具であるワイヤーは細いため、吊り下げ時に切断してしまうおそれがある。
また、貫通孔に挿通したワイヤーの端部を固定する作業が必要となる。
【0005】
本発明は、容易にかつ安全に山留め杭を吊り下げることができる、杭吊下治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願発明は、チェーンと、チェーンの一端に設けるトグルと、チェーンの他端に設ける連結材と、からなり、トグルは、チェーンの一端に挿通する長尺の折曲片と、折曲片に固定する固定片と、からなり、トグルの折曲片は、中央を山状に折曲した折曲部と、折曲部の両端から同軸心状に突設した水平部と、を有する、杭吊下治具を提供する。
トグルの固定片の両端は、端部に向けて縮径していてもよい。
また、連結材に取り付ける略楕円状の端部リングを有してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)杭吊下治具はチェーンで構成されているため、ワイヤーのように吊り下げ時に切断することがなく、安全に山留め杭を吊り下げることができる。
(2)予め杭吊下治具を杭クランプ装置に取り付けておくことで、トグルを山留め杭の挿通孔に挿通するだけで、容易に山留め杭を吊り下げることができる。
(3)使用後は、トグルを挿通孔に通して抜くだけで、山留め杭から取り外すことができ、再利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の杭吊下治具を詳細に説明する。
【0010】
[実施例1]
(1)全体構成
本発明の杭吊下治具は、チェーン1と、チェーン1の一端に設けるトグル2と、チェーン1の他端に設ける連結材3と、連結材3に取り付ける端部リング4と、からなる(
図1)。
【0011】
(2)トグル
トグル2は、チェーン1の一端に挿通する長尺の折曲片21と、折曲片21に固定する固定片22と、からなる。
折曲片21は、中央を山状に折曲した折曲部211と、折曲部211の両端から同軸心状に突設した水平部212と、を有する。
固定片22は棒状の部材であり、折曲片21をチェーン1に挿通した状態で、折曲片21の水平部212に平行に溶接等により固定する。
固定片22の両端は、端部に向けて縮径するように形成する。
【0012】
(3)トグルとH鋼杭の係合
トグル2は、H鋼杭5のウェブ51に設けた挿通孔52に挿通する(
図2、3)。
トグル2は、折曲片21の折曲部211と固定片22を合わせた高さHを挿通孔の直径Dよりも低くすることで、挿通孔52に挿通できる大きさとする。
そして、トグル2を挿通孔52に挿通してウェブ51と平行にすることにより、H鋼杭5と係合する。
トグル2の長さLは挿通孔52の直径Dよりも長く、H鋼杭5のウェブ51の幅よりも短くする。
【0013】
(4)連結材及び端部リング
チェーン1のトグル2と逆側の端部に、リング状の連結材3を取り付ける。
連結材3には略楕円状の端部リング4を設ける。
端部リング4は、杭クランプ装置7に固定した吊り具係合治具6の係止ロッド61と係合する(
図4)。
端部リング4を略楕円状にするとともに、連結材3をリング状とすることにより、吊り具係合治具6に対して、端部リング4、連結材3及びチェーン1の可動範囲を大きくでき、チェーン1の端部に取り付けたトグル2の可動範囲も大きくなる。
【0014】
(5)H鋼杭の吊り下げ
H鋼杭5を地面に横置きした状態で、予め杭クランプ装置7に取り付けた杭吊下治具を地面近くまで降下させ、トグル2をH鋼杭5のウェブ51の挿通孔52に挿通する(
図4)。
そして、そのまま杭クランプ装置7を上昇させることにより、トグル2が挿通孔52と係合した状態でH鋼杭5が持ち上がり、H鋼杭5を吊り下げることができる(
図3、5)。
本発明の杭吊下治具はチェーン1で構成されているため、ワイヤーのように吊り下げ時に切断することがなく、安全にH鋼杭5を吊り下げることができる。
また、予め杭吊下治具を杭クランプ装置7に取り付けておくことで、トグル2をH鋼杭5の挿通孔52に挿通するだけで、容易にH鋼杭5を吊り下げることができる。
使用後は、トグル2を挿通孔52に通して抜くだけで、H鋼杭5から取り外すことができ、再利用することができる。
なお、本実施例において、山留め杭をH鋼杭5としたが、挿通孔52があれば、シートパイル等の他の山留め杭にも、本発明の杭吊下治具を適用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 チェーン
2 トグル
21 折曲片
211 折曲部
212 水平部
22 固定片
3 連結材
4 端部リング
5 H鋼杭
51 ウェブ
52 挿通孔
6 吊り具係合治具
61 係合ロッド
7 杭クランプ装置
【要約】
【課題】容易にかつ安全に山留め杭を吊り下げることができる、杭吊下治具を提供する。
【解決手段】チェーン1と、チェーン1の一端に設けるトグル2と、チェーン1の他端に設ける連結材3と、からなり、トグル2は、チェーン1の一端に挿通する長尺の折曲片21と、折曲片21に固定する固定片22と、からなり、トグル2の折曲片21は、中央を山状に折曲した折曲部211と、折曲部211の両端から同軸心状に突設した水平部212と、を有する、杭吊下治具。
【選択図】
図1