(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記稼働イベントが、前記燃焼エンジン(10)の吸気バルブ(62)の開放、前記吸気バルブ(62)の閉鎖、前記燃焼エンジン(10)の排気バルブ(64)の開放、前記排気バルブ(64)の閉鎖、またはピーク燃焼圧を含む、請求項1または2記載の方法。
前記燃焼エンジン(10)を基線付けし、前記稼働イベントを示す前記ADSRエンベロープ(82)を少なくとも有する前記フィンガープリント(100)を導出するステップを含む、請求項1または2記載の方法。
前記稼働イベントが発生する時の前記ADSRエンベロープ(82)の前記位置を、前記ADSRエンベロープ(82)と前記稼働イベントのインジケータデータとの交点を決定することにより導出するステップを含む、請求項5記載の方法。
前記稼働イベントのインジケータデータを、前記燃焼エンジン(10)の前記基線付け中に前記稼働イベントを監視するスイッチからの信号を介して受信するステップを含む、請求項5記載の方法。
前記稼働イベントが発生する時の前記ADSRエンベロープ(82)の前記位置が、前記ADSRエンベロープ(82)のディケイベクトルのほぼ中点である、請求項5記載の方法。
前記稼働イベントが発生する時の前記ADSRエンベロープ(82)の前記位置が、前記ADSRエンベロープ(82)のディケイベクトルの中間領域内である、請求項5記載の方法。
前記コントローラが、1つまたは複数のフィンガープリント(100)を記憶するよう構成されたメモリ(74)を備え、各フィンガープリント(100)は対応する稼働イベントを示すそれぞれADSRエンベロープ(82)を有し、
前記プロセッサ(72)が、前記ノイズ信号と前記第1の稼働イベントを示す前記第1のADSRエンベロープ(82)を少なくとも有する前記第1のフィンガープリント(100)とを相関させるために前記メモリ(74)にアクセスするよう構成される、請求項10記載のシステム。
前記プロセッサ(72)が、前記重ねられた第1のADSRエンベロープ(82)において、前記稼働イベントが発生する時の位置を導出するよう構成される、請求項10記載のシステム。
前記プロセッサ(72)が、前記重ねられた第1のADSRエンベロープ(82)のディケイベクトルの中点を決定するよう構成され、前記重ねられた第1のADSRエンベロープ(82)における前記稼働イベントが発生する時の前記位置が前記中点である、請求項12記載のシステム。
前記稼働イベントが、前記燃焼エンジン(10)の吸気バルブ(62)の開放、前記吸気バルブ(62)の閉鎖、前記燃焼エンジン(10)の排気バルブ(64)の開放、前記排気バルブ(64)の閉鎖、またはピーク燃焼圧を含む、請求項10記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つまたは複数の特定の実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の導入例の全ての特徴は本明細書では説明されないことがある。いずれのこのような実際の導入例の開発では、いずれのエンジニアリングまたは設計プロジェクトで行われるように、例えば1つの導入例と別の導入例との間で変化し得るシステム関連のおよびビジネス関連の制約を有するコンプライアンス等の開発者の特定の目標を達成するために、多数の導入例−仕様決定を実施しなければならないことを理解されたい。また、このような開発努力は複雑かつ時間のかかるものであり得るが、それにも関わらず本開示の利益を得る当業者にとっては、設計、製作および製造の慣例的な仕事であろうことを理解されたい。
【0010】
本発明の様々な実施形態の要素を紹介する際、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、要素のうちの1つまたは複数が存在することを意味することを意図している。用語「comprising(備える、含む)」、「including(含む)」および「having(有する)」は、含有することと、列挙された要素の他に追加の要素が存在し得ることとを意味することを意図している。
【0011】
開示される実施形態は、エンジンを監視、診断、および/または制御するために、センサ(例えば、ノックセンサ、音響センサ、または振動センサ)と、基線データ(例えば、音または振動のフィンガープリント)とを採用する。燃焼エンジンを監視するためにノックセンサを用いる場合、ノックセンサシステムは場合によっては、この時点では識別できない異常なまたは望ましくないノイズ等のノイズを記録する。あるいは、ノックセンサは、事前に識別および特徴付けされている正常なまたは望ましいノイズであるノイズを記録することができる。例えば、燃焼エンジンによる様々な動作の間に燃焼エンジンが発するノイズを、工場での基線付け工程中に最初に特徴付けてよい。基線付け工程中の特定の稼働イベントおよび条件(例えば、バルブ閉鎖、バルブ開放、およびピーク燃焼圧)に関するノイズ信号を加工し、1つまたは複数の稼働イベントに関連付けてデータベースに記憶することができる。燃焼エンジンの正常稼働中、データベース内に記憶された、基線付け工程中に特徴付けられた稼働イベントに関連するデータにアクセスし、稼働性ノイズが基線付け工程中に特徴付けられた稼働イベントに対応するかどうかを決定することができる。
【0012】
有利には、本明細書中で説明される技術は、特定のエンジンの音またはノイズの音の「フィンガープリント(fingerprint)」を生成することができる。フィンガープリント(例えば、プロファイル、コンパレータおよび/または基準信号)を、上述のように基線付け工程中に発達させてよく、フィンガープリントは、基線付け工程中に試験される特定の稼働イベント(例えば、バルブ閉鎖)に対応することができる。なお、基線付け工程を、燃焼エンジンの完全稼働中、または燃焼エンジンの特定の構成部品(例えば基線付けされる(1つまたは複数の)稼働イベントに関連する構成部品)のみが稼働している間に実施することができることに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、燃焼エンジンの様々な稼働イベントを、部分稼働または完全稼働中に工場で基線付けしてもよい。
【0013】
(例えば基線付けの後の)燃焼エンジンの完全稼働中に、ノックセンサによりノイズを検出してよく、かつノイズ信号を加工して、これを燃焼エンジンに関連する様々なフィンガープリント(例えば、プロファイル、サイン、コンパレータ、基準信号、一意な印(unique indicia)、一意な表現(unique representation)等)と比較することができる。フィンガープリントと加工済みノイズ信号とが対応するまたは相関する(例えば「適合する」)場合、フィンガープリントに関連する稼働イベントに対応するとして信号を確認することができる。ノイズ信号を加工し、適合したフィンガープリントおよびノイズ信号に対応する稼働イベントに関連する時間に敏感な情報を決定してもよい。例えば、ノイズ信号が排気バルブの閉鎖に対応するフィンガープリントに適合している場合、排気バルブが閉鎖された時を決定するために、ノイズ信号を時間(またはクランク角)に対してプロットすることができる。
【0014】
以下で更に詳細に説明されるように、アタック−ディケイ−サスティン−リリース(ADSR)エンベロープおよび/または時間−周波数同期技術を介して、ノイズを識別および分類するためのシステムおよび方法が提供され、ADSRエンベロープは上述のフィンガープリントのうちの少なくとも一部に対応することができる。時間−周波数同期技術としては、以下でより詳細に説明するように音響モデルまたはノイズのフィンガープリントを発達させるための、ケプストラム技術、ケフレンシ技術、チャープレット技術、および/またはウェーブレット技術を挙げることができる。
【0015】
図面に戻ると、
図1は、エンジン駆動動力発生システム8の一部の一実施形態のブロック図を示す。以下で詳細に説明されるように、システム8は、1つまたは複数の燃焼チャンバ12(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、またはそれ以上の燃焼チャンバ12)を有するエンジン10(例えば、往復内燃エンジン)を備える。給気14は、空気、酸素、酸素富化空気、酸素低減空気、またはこれらのいずれの組み合わせ等の加圧された酸化体16を各燃焼チャンバ12に提供するよう構成される。燃焼チャンバ12も、燃料供給19から燃料18(例えば、液体および/またはガス状燃料)を受容するように構成され、燃料−空気混合物は各燃焼チャンバ12内で点火して燃焼する。高温の加圧された燃焼ガスにより、各燃焼チャンバ12に隣接するピストン20はシリンダ26内で直線運動し、かつガスから発せられる圧力を回転運動に変換し、これによりシャフト22が回転する。更に、シャフト22を、シャフト22の回転を介して動力供給される負荷24に連結することができる。例えば、負荷24は、システム8の回転出力を介して電力を生成する発電機等のいずれの好適なデバイスであってもよい。加えて、以下の記述は酸化体16として空気に言及するが、開示された実施形態にいずれの好適な酸化体を用いることができる。同様に、燃料18は、例えば天然ガス、石油随伴ガス、プロパン、バイオガス、下水ガス、埋立地ガス、炭鉱ガス等のいずれの好適なガス状燃料であってもよい。
【0016】
本明細書中に開示されるシステム8を、据え付け用途(例えば、産業用発電エンジン)または移動性の用途(例えば、車または航空機)で使用するために適合させることができる。エンジン10は、2ストロークエンジン、3ストロークエンジン、4ストロークエンジン、5ストロークエンジン、または6ストロークエンジンであってもよい。エンジン10はまた、いずれの数の燃焼チャンバ12、ピストン20、および関連するシリンダ(例えば1〜24個)を備えることができる。例えば、特定の実施形態では、システム8は、シリンダ内で往復する4個、6個、8個、10個、16個、24個またはそれ以上のピストン20を有する大規模な産業用往復エンジンを備えることができる。いくつかのこのような場合では、シリンダおよび/またはピストン20は約13.5〜34センチメートル(cm)の直径を有することができる。いくつかの実施形態では、シリンダおよび/またはピストン20は、約10〜40cm、15〜25cm、または約15cmの直径を有することができる。システム8は、10kW〜10MWの範囲の電力を生成することができる。いくつかの実施形態では、エンジン10は、約1800回転/分(RPM)未満で稼働することができる。いくつかの実施形態では、エンジン10は、約2000RPM、1900RPM、1700RPM、1600RPM、1500RPM、1400RPM、1300RPM、1200RPM、1000RPM、900RPM、または750RPM未満で稼働することができる。いくつかの実施形態では、エンジン10は、約750〜2000RPM、900〜1800RPM、または1000〜1600RPMで稼働することができる。いくつかの実施形態では、エンジン10は、約1800RPM、1500RPM、1200RPM、1000RPM、または900RPMで稼働することができる。例示的なエンジン10としては、例えばゼネラルエレクトリック社のJenbacher Engine(例えば、Jenbacher2型、3型、4型、6型、またはJ920 FleXtra)またはWaukesha Engine(例えば、WaukeshaVGF、VHP、APG、275GL)を挙げることができる。
【0017】
駆動動力発生システム8は、エンジン「ノック(knock)」を検出するのに適した1つまたは複数のノックセンサ23を備えることができる。ノックセンサ23は、デトネーション、プレイグニッション、および/もしくはピンギングに起因する音または振動等のエンジン10が発生させる音または振動を感知するよう構成されたいずれのセンサであってもよい。ノックセンサ23は、エンジン制御装置(ECU)25に対して通信可能に連結されて示されている。稼働中、ノックセンサ23からの信号は、ノッキング条件(例えばピンギング)が存在するかどうかを決定するためにECU25に通信される。ECU25は続いて、特定のエンジン10のパラメータを調整し、ノッキング条件を改善または排除することができる。例えば、ECU25は、ノッキングを排除するために、点火タイミングおよび/または過給圧を調整することができる。本明細書中で更に説明するように、ノックセンサ23は、例えば望ましくないエンジン条件を検出するために更に分析されてカテゴリ分けされるべき特定の音または振動を追加で導出してよい。
【0018】
図2は往復エンジン10のシリンダ26(例えばエンジンシリンダ)内に配置されたピストン20を有するピストンアセンブリ25の一実施形態の側部断面図である。シリンダ26は、円筒形キャビティ30(例えばボア)を画定する内環状壁28を有する。ピストン20を、軸方向の軸または方向34、径方向の軸または方向36、および円周方向の軸または方向38により画定することができる。ピストン20は、上部40(例えばトップランド)を備える。上部40は一般には、ピストン20の往復運動中に燃料18および空気16、または燃料−空気混合物32が燃焼チャンバ12から逃げるのを遮断する。
【0019】
図示したように、ピストン20は、連接棒56およびピン58を介してクランクシャフト54に取り付けられる。クランクシャフト54は、ピストン20の往復直線運動を回転運動に変換する。ピストン20が移動すると、クランクシャフト54は回転し、上述したように(
図1に示す)負荷24に動力を供給する。図示したように、燃焼チャンバ12は、ピストン20のトップランド40に隣接して位置決めされる。燃料注入器60は、燃料18を燃焼チャンバ12に提供し、吸気バルブ62は、燃焼チャンバ12への空気16の送達を制御する。排気バルブ64は、エンジン10からの排気の排出を制御する。しかしながら、燃料18および空気16を燃焼チャンバ12に提供するためにならびに/または排気を排出するために、いずれの好適な要素および/または技術を利用してよく、いくつかの実施形態では燃料注入器を使用しないことを理解されたい。稼働において、燃焼チャンバ12内の燃料18の空気16との燃焼により、ピストン20は、シリンダ26のキャビティ30内を軸方向34に往復の様式で(例えば、前後に)移動する。
【0020】
稼働中、ピストン20がシリンダ26内の最も高い位置にある時、これは上死点(TDC:top dead center)と呼ばれる位置にある。ピストン20がシリンダ26内の最も低い位置にある時、これは下死点(BDC:bottom dead center)と呼ばれる位置にある。ピストン20が上から下までまたは下から上まで移動すると、クランクシャフト54は旋回の2分の1回転する。上から下までまたは下から上までのピストン20の各移動はストロークと呼ばれ、エンジン10の実施形態としては、2ストロークエンジン、3ストロークエンジン、4ストロークエンジン、5ストロークエンジン、6ストロークエンジン、またはそれ以上を挙げることができる。
【0021】
エンジン10の稼働中、吸気工程、圧縮工程、給電工程、および排気工程を含むシーケンスが発生する。吸気工程は、燃料および空気等の可燃性混合物がシリンダ26に入り込むことを可能にし、従って吸気バルブ62が開放され排気バルブ64が閉鎖される。圧縮工程は、可燃性混合物をより狭い空間に圧縮し、これにより吸気バルブ62および排気バルブ64の両方が閉鎖される。給電工程は、圧縮された燃料−空気混合物を点火し、この工程は、スパークプラグシステムを用いた火花点火、および/または圧縮熱を用いた圧縮点火を含んでよい。燃焼から得られる圧力は、続いてピストン20をBDCに移動させる。排気工程は典型的には、排気バルブ64を開放したままピストン20をTDCに戻す。排気工程は従って、排気バルブ64を通して使用済み燃料−空気混合物を吐出する。なお、2つ以上の吸気バルブ62および排気バルブ64をシリンダ26ごとに使用することができることに留意されたい。
【0022】
図示したエンジン10は、クランクシャフトセンサ66、ノックセンサ23、ならびにプロセッサ72およびメモリ74を備えるエンジン制御ユニット(ECU)25も備える。クランクシャフトセンサ66は、クランクシャフト54の位置および/または回転速度を感知する。従って、クランク角またはクランクタイミング情報を導出してよい。つまり、燃焼エンジンを監視する際、タイミングはクランクシャフト54の角度に関してしばしば表現される。例えば、4ストロークエンジン10の完全サイクルは、720°サイクルとして測定できる。ノックセンサ23は、圧電型加速度計、微小電気機械システム(MEMS)センサ、ホール効果センサ、磁歪センサ、ならびに/または振動、加速、音、および/もしくは移動を感知するよう設計されたいずれの他のセンサであってもよい。他の実施形態では、センサ23は従来の意味のノックセンサではなく、振動、圧力、加速、歪み、または移動を感知でき、かつエンジン「ノック」を検出するのに使用しなくてよい、いずれのセンサであってもよい。
【0023】
エンジン10のパーカッシブな(percussive)性質故に、ノックセンサ23はシリンダ26の外側に設置された場合でさえサインを検出可能であり得る。しかしながら、ノックセンサ23をシリンダ26内またはこの周辺の様々な位置に配置することができる。加えて、いくつかの実施形態では、単一のノックセンサ23を例えば1つまたは複数の隣接するシリンダ26と共有することができる。他の実施形態では、各シリンダ26は、1つまたは複数のノックセンサ23を備えることができる。クランクシャフトセンサ66およびノックセンサ23は、エンジン制御ユニット(ECU)25と電子通信して示されている。ECU25は、プロセッサ72およびメモリ74を備える。メモリ74は、プロセッサ72が実行できるコンピュータ命令を記憶することができる。ECU25は、例えば燃焼タイミング、バルブ62および64のタイミングを調整することにより燃料および酸化体(例えば空気)等の送達を調整し、エンジン10の稼働を監視および制御する。
【0024】
有利には、本明細書中で説明される技術は、ECU25を用いて、クランクシャフトセンサ66およびノックセンサ23からデータを受信し、続いてクランクシャフト54の位置に対してノックセンサ23のデータをプロットすることにより「ノイズ」サインを生成することができる。ECU25は続いて、通常の(例えば、公知のおよび期待されるノイズの)および異常な(例えば、未知のまたは期待されないノイズの)サインを導出するためにデータを分析する工程を経てよい。ECU25は続いて、以下により詳細に説明されるようにサインを特徴付けてよい。サイン分析を提供することにより、本明細書中で説明される技術は、エンジン10のより最適なおよびより効率的な稼働ならびに保守を可能にできる。
【0025】
図3〜6および8は、例えば
図7および9でより詳細に説明される1つまたは複数の工程を介したデータ加工中であってもよいデータを示す。
図3〜6および8のデータは、ノックセンサ23およびクランクシャフトセンサ66を介して送信されたデータを含んでよい。例えば、
図3は、ノックセンサ23が測定したノイズデータから(例えばECU25により)導出された未加工のエンジンノイズプロット75の一実施形態であり、ここでx軸76はクランクシャフト54の位置(例えばクランク角)であり、これは時間に相関している。この実施形態によると、ノイズデータは特定のエンジン10の稼働イベントまたは動作に対応することができる。例えば、ノイズデータはエンジン10のバルブ、例えば排気バルブ64の開放または閉鎖に対応することができる。あるいは、ノイズデータはピーク燃焼圧に対応してよく、このピーク燃焼圧は、燃焼中の燃焼チャンバ12における最高圧を指す。
【0026】
プロット75は、ECU25がエンジン10の稼働中にノックセンサ23から受信したデータとクランクシャフトセンサ66から受信したデータとを組み合わせた時に生成される。図示した実施形態では、振幅軸78でノックセンサ23の信号の振幅曲線77が示されている。つまり、振幅曲線77は、ノックセンサ23を介して感知された振動データ(例えばノイズ、音データ)の、クランク角に対してプロットされた振幅測定値を含む。これは、(例えば排気バルブ64の閉鎖に対応する)サンプルのデータ集合の単なるプロットであり、ECU25が生成するプロットを限定することを意図したものではないことを理解されたい。
図4に示されるように更に加工するために曲線77を続いて基準化することができる。
【0027】
図4は、ECU25が導出し得る基準化済みエンジンノイズプロット79の一実施形態である。基準化済みプロット79では、
図3に示された振幅プロット75からの未加工のエンジンノイズを基準化し、基準化済み振幅曲線80を導出する。この場合、基準化済み振幅曲線80の最大の正の値が1となるように単一の乗数が各データポイントに適用されている。なお、最大の正の値1を提供するために曲線80の各ポイントに適用された乗数は、−1未満またはこれより大きい負の値をもたらし得ることに留意されたい。即ち、
図4で示される基準化済みエンジンノイズプロット79に示されるように、例えば最大の負の値は−0.5であり得、または−1.9であり得る。
【0028】
図5は、プロットの上部を覆うアタック、ディケイ、サスティン、リリース(ADSR)エンベロープ82の4つの基本パラメータを用いた基準化済みエンジンノイズプロット81の一実施形態である。ADSRエンベロープ82は典型的には、楽器の音を模倣するための音楽シンセサイザで使用される。有利には、本明細書中で説明される技術は、ADSRエンベロープ82をノックセンサ23のデータに適用し、以下に更に説明するように、より迅速にかつ効率的に特定のノイズ分析を提供する。例えば、基準化済み曲線80は、エンジン10の特定の稼働イベント(例えば、燃焼チャンバ12内のバルブ62、64の開閉またはピーク燃焼圧)の特徴であってもよく(または特徴を含んでよく)、基準化済み曲線80のために発達させたADSRエンベロープ82を、エンジン10の稼働中の稼働イベントの後の分析に利用することができる。
【0029】
ADSRエンベロープの4つの基本パラメータは、アタック83、ディケイ84、サスティン85、およびリリース86である。アタック83は、ノイズの開始から基準化済み曲線80のピーク振幅87まで発生する。ディケイ84は、ピーク振幅から指定のサスティン85レベル(これは最大振幅の特定のいくらかのパーセントであってもよい)までの下降において発生する。4つのパラメータの順序は、アタック、ディケイ、サスティン、リリースである必要はないことを理解されたい。例えばいくつかのノイズについては、順序はアタック、サスティン、ディケイ、リリースであってもよい。このような場合、ADSRの代わりにADSRエンベロープを適用すべきである。簡略化の目的で、これを「ADSRエンベロープ」と呼ぶことになるが、用語はパラメータの順序に関係なくノイズに適用されることを理解されたい。サスティン85レベルは、ノイズの持続時間の主要なレベルである。いくつかの実施形態では、サスティン85レベルは、最大振幅の55%で発生することができる。他の実施形態では、サスティン85レベルは、最大振幅の35%、40%、45%、50%、60%、または65%と少なくとも同じか、これ以上であってもよい。ユーザまたはECU25は、サスティン85レベルがサインの持続時間の少なくとも15%の間保持されるかどうかを決定することにより、サスティンレベルが所望のようなものであるかどうかを確認する。サスティン85がサインの持続時間の15%より長く続く場合、サスティン85レベルは所望のように設定されている。リリース86は、サスティン85レベルからゼロへの下降中に発生する。なお、いくつかの実施形態では、ノイズ信号(例えば基準化済み振幅曲線80)をハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、またはバンドパスフィルタを介してフィルタリングし、稼働イベントの特徴がない周波数を有する信号の一部を減衰させることができることに留意されたい。ノイズ信号に適用される特定のフィルタは、監視されている稼働イベントに左右され得る。例えば、バルブ62、64のイベント(例えば開放および閉鎖)を監視する場合、ハイパスフィルタ(例えば10キロヘルツ(kHz)超)またはバンドパスフィルタ(例えば10〜20キロヘルツ(kHz))をノイズ信号に適用することができる。燃焼イベント(例えばピーク燃焼圧)を監視する場合、ローパスフィルタ(例えば2キロヘルツ(kHz)未満)をノイズ信号に適用することができる。
【0030】
図6は、
図4および5で示されたものと同一の、特定のトーンがオーバーレイされた(例えば重ねられた)基準化済みエンジンノイズプロット79を示す。ADSRエンベロープ82を適用した後、ECU25はノイズ中の最も強い周波数のうちの3〜5個を抽出し、音楽のトーンに変換することができる。例えば、音楽のトーンに対する周波数範囲をマッピングしたルックアップテーブルを使用することができる。加えてまたはあるいは、調律の平均律システムについてピッチが典型的には周波数の対数として認識されるという観測に基づいて等式を使用してよく、または他の音律システムのための等式を使用することができる。他の実施形態では、いくらかの周波数を抽出することができる。
図6に示されるプロット81では、3つの突出した(例えば抽出された)トーンはC#5、E4、およびB3である。しかしながら、これらの3つのトーンは、あり得るトーンの単なる例であり、どのトーンが記録されたノイズに存在し得るかを限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0031】
図7は、ノックセンサ23を介して感知されたノイズ等のノイズを特徴付けるための工程88の一実施形態を示すフローチャートである。ノイズを特徴付けることにより、後の分析および/またはリアルタイムの分析を含む分析のために、ノイズのログを記録し、これをソートできる。例えば、いくつかの実施形態では、工程88は、ピーク燃焼圧または吸気バルブ62もしくは排気バルブ64の開閉等のエンジン10の特定の稼働イベントまたは動作に関連するノイズを特徴付けるために用いることができる。更に、エンジン10が通常稼働またはフルタイム稼働のために実装される前、例えば売却される前、現場に配備される前、現場に実装される前等の基線付け工程(例えば工場での基線付け工程)中にノイズをまず特徴付けてよい。例えば、エンジン10の通常稼働の前に、(1つまたは複数の)稼働イベント中に発せられる(およびノックセンサ23が検出する)ノイズを分析することにより、様々な稼働イベント(例えばピーク燃焼圧、吸気/排気の開閉)を試験してよく、ここでノイズ信号またはノイズ信号のADSRエンベロープ82を、試験される稼働イベントに関連するようにフィンガープリント付けでき、よって基線を生成する。なお、ノイズ信号の加工を簡略化するためにエンジン10が完全に稼働していない時に工程88(例えば基線付け工程)を利用することができることに留意されたい。例えば、バルブ(例えば排気バルブ64または吸気バルブ62)を開放するまたは閉鎖する間のみ工程88を利用し、バルブ(例えば排気バルブ64または吸気バルブ62)の開放または閉鎖に対応するノイズを特徴付けてよい。他の実施形態では、部分的または完全なエンジン10稼働中に工程88を利用することができる。
【0032】
図示した実施形態では、メモリ74に記憶され、ECU25のプロセッサ72により実行可能なコンピュータ命令または実行可能なコードとして工程88を実装してもよい。ブロック90では、ノックセンサ23およびクランクシャフトセンサ66を用いてデータのサンプルが取得される。例えば、センサ66、23は、基線付け中に稼働イベント(例えば排気バルブ64の閉鎖)のデータを収集し、このデータをECU25に伝送する。上述したように、工程88は基線付け工程であってもよく、エンジン10の特定の構成部品のみの稼働中に実施することができる。例えば排気バルブ64(または吸気バルブ62)の開放および/または閉鎖中に工程88を実施してよく、これにより、例えば排気バルブ64の閉鎖中に発せられるノイズを容易に加工できる。続いてECU25は、データ収集の開始時および終了時のクランクシャフト54の角度と、最大(例えば振幅87)および最小の振幅の時間および/またはクランクシャフトの角度とをログに記録する。実際、基線付け工程中、連続的にクランクシャフト54の角度をログに記録してよく、これによりクランクシャフト54の角度に対するノイズデータの連続的なプロットが可能になる。
【0033】
ブロック92では、ECU25はノックセンサ23のデータを
事前調整する。このブロック92は、未加工のノックセンサ23のデータをクランクシャフト54の位置または角度に対して(またはいくつかの実施形態では時間に対して)プロットするステップを含む。サンプルの未加工のエンジンノイズプロットを振幅プロット75として
図3に示した。このブロック92は、未加工のエンジンノイズデータを基準化するステップも含む。データを基準化するために、ECU25は正の1の最大振幅をもたらすような乗数を決定する。なお、最大の負の値は、乗数の選択に影響しないことに留意されたい。続いてECU25は、各データポイント(例えば振幅曲線77におけるデータポイント)を上記乗数で乗算し、
図4に示されるような基準化済み振幅曲線80を導出する。基準化済み振幅曲線80を示す
図4の基準化済みエンジンノイズプロット79は、単なる一例であり、本開示の範囲を基準化済みエンジンノイズプロット79と同じまたは同様の見た目のプロットに限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0034】
ブロック94では、ECU25はADSRエンベロープ82をエンジンノイズ信号に適用する。このブロックにおける加工は、
図5の説明で記載した。ADSRエンベロープ82は、ノイズデータ集合を4つの異なるパラメータまたはフェーズ(アタック83、ディケイ84、サスティン85、リリース86)に分割するために使用される。上述したように、4つのパラメータの順序は、アタック、ディケイ、サスティン、リリースである必要はないことを理解されたい。例えばいくつかのノイズについては、順序はアタック、サスティン、ディケイ、リリース、またはいずれの他の可能な順序であってもよい。簡略化の目的で、これを「ADSRエンベロープ」と呼ぶことになるが、用語はパラメータの順序に関係なくノイズに適用されることを理解されたい。元来、ADSRエンベロープ82は、トランペットの楽音のような楽音を再現する工程で使用される。しかしながら、本明細書中で説明される技術では、ノイズをカテゴリ分けおよび特徴付けするためにADSRエンベロープを使用してよく、これにより後の分析、リアルタイム分析のいずれか、またはいくつかの他の目的のためにノイズをカテゴリ分けおよび順序付けできる。ADSRエンベロープ82の4つの基本パラメータは、アタック83、ディケイ84、サスティン85、およびリリース86である。アタック83は、ノイズの開始からピーク振幅87まで発生する。ディケイ84は、ピーク振幅87から指定のサスティン85レベル(これは最大振幅の特定のいくらかのパーセントである)までの下降において発生する。サスティン85レベルは、ノイズの持続時間の主要なレベルである。いくつかの実施形態では、サスティン85レベルは、最大振幅の55%で発生することができる。他の実施形態では、サスティン85レベルは、最大振幅の35%、40%、45%、50%、60%、または65%と少なくとも同じか、これ以上であってもよい。ユーザまたはECU25は、サスティン85レベルがサインの持続時間の少なくとも15%の間保持されるかどうかを決定することにより、サスティンレベルが所望のようなものであるかどうかを確認する。サスティン85がサインの持続時間の15%より長く続く場合、サスティン85レベルは所望のように設定されている。リリース86は、サスティン85レベルからゼロへの下降中に発生する。ブロック94では、ECU25はゼロから最大振幅87(最大振幅は1の値を有するべきである)までの時間を測定する。ECU25は続いて、最大振幅87から指定のサスティンレベル85までの下降時間を測定する。ECU25は続いて、ノイズが持続するレベルおよび時間を測定する。最後に、ECU25は、ノイズがサスティンレベル85からゼロまで下降するのにかかる時間を測定する。ECU25は続いて、ADSRエンベロープ82を定義するADSRベクトルまたはセグメントをログに記録する。
【0035】
ブロック96では、ECU25は、データからトーン情報(例えば音楽のトーン)を導出する。このブロックは、
図6の説明で述べた。このブロック中、ECU25は、例えばデータ中の3〜5個の最も強いトーンを識別するトーン情報をデータから抽出する。別の実施形態では、いずれの数のトーン、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはこれ以上のトーンを識別することができる。
図6は信号から導出された3つのトーン、C#5、E4、およびB3を示す。ECU25は、データから5つ以上のトーンを導出してよい。
図6はトーンC#5、E4、およびB3を示すが、これらのトーンは例であり、ECU25はデータからいずれのトーンを導出してよいことを理解されたい。ECU25は続いて導出されたトーン情報をログ記録し、このトーン情報は、導出された基本トーンの周波数(即ち最も低い周波数のトーン)、導出された基本トーンの順序、導出された倍音トーンの周波数(即ち、基本周波数の整数倍である周波数のトーン)、導出された倍音トーンの順序、およびいずれの他の関連するトーン情報を含んでよい。
【0036】
ブロック98では、ECU25は、ADSRエンベロープ82ならびにブロック94および96で導出されたトーン情報に基づいてフィンガープリント100を生成する。フィンガープリント100は、ノイズを構成部分(例えば、バルブの開閉イベントおよび/またはピーク燃焼圧を識別する役に立ち得るADSRエンベロープ82の構成要素83、84、85、86)に分解し、かつこれらの部分を定量化するノイズの特徴を含み、これによりノイズをカタログ化、カテゴリ分け、および順序付けできる。工程のこのポイントでは、フィンガープリント100はブロック94のADSRエンベロープおよびブロック96で導出されたトーン情報に主として基づいている。
【0037】
ブロック102では、フィンガープリント100を識別および確認する。後に説明することになる多数の技術を用いて、フィンガープリント100を修正または追加し、続いて再び確認することができる。なお、上述したように、フィンガープリント100をエンジン10の特定の稼働イベントまたは動作に関してログ記録することができる。例えば、工程88は、エンジン10の稼働中に発生し得る特定の稼働イベントに関するノイズ信号を特徴付ける基線付け工程に対応することができる。特に、工程88中に検出されたノイズ信号は、ピーク燃焼圧、排気バルブ64の閉鎖または開放、吸気バルブ62の閉鎖または開放、またはこれらの組み合わせに関連することができる。フィンガープリント100は、試験されている(例えば基線付けされている)特定の稼働イベントまたは条件に対応させてECU25のメモリ74に記憶することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、工程88(例えば基線付け工程)は、ノイズ信号またはADSRエンベロープ82を更に加工し、エンジン10の稼働イベント(例えば排気バルブ64もしくは吸気バルブ62の開放または閉鎖)または動作に関連する追加の情報を提供する、1つまたは複数の追加のステップを含んでよい。例えば、明確化のために、
図8は、
図7の工程による、エンジン稼働イベント(例えばバルブの開放または閉鎖)に対応する基準化済み振幅曲線80、エンジン稼働イベントに対応する稼働イベントインジケータ103、およびエンジン稼働イベントに対応するADSRエンベロープ82を用いた基準化済みエンジンノイズプロット81の一実施形態である。なお、上述したように、エンジン稼働イベントおよび
図8の対応するプロット81を、エンジン10が部分的に稼働している間に試験して(例えば工程88を介して基線付けして)よいことに留意されたい。よって、図示した振幅曲線80の変動は、稼働イベントに対応して予測可能な回数で発生し、より簡潔な加工が可能となる。換言すると、いくつかの実施形態では、エンジン10の構成部品または稼働イベントはいずれも、試験されている(例えば基線付けされている)構成部品または稼働イベントの他にはノイズを発生させることができない。加えてまたはあるいは、ノイズ信号をハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、またはバンドパスフィルタを介してフィルタリングし、稼働イベントの特徴がない周波数を有する信号の一部を減衰させることができる。ノイズ信号に適用される特定のフィルタは、監視されている稼働イベントに左右され得る。例えば、バルブ62、64のイベント(例えば開放および閉鎖)を監視する場合、ハイパスフィルタ(例えば10キロヘルツ(kHz)超)またはバンドパスフィルタ(例えば10〜20キロヘルツ(kHz))をノイズ信号に適用することができる。燃焼イベント(例えばピーク燃焼圧)を監視する場合、ローパスフィルタ(例えば2キロヘルツ(kHz)未満)をノイズ信号に適用することができる。
【0039】
図7に示す工程88を参照すると、
図8に示す(例えばアタック83、ディケイ84、サスティン85、およびリリース86を用いる)ADSRエンベロープ82の情報を有するフィンガープリント100は、フィンガープリント付けされるまたは基線付けされる稼働イベントに関する追加情報を含んでよい。例えば、工程88(例えば基線付け工程)中、稼働イベントインジケータ103も、基準化/正規化済みエンジンノイズプロット81にかぶせてプロットすることができる。稼働イベントインジケータ103は例えば、基線付け工程(例えば工程88)中に稼働イベントを指標付けするためにハイとローとの間を変調するスイッチ(例えば制限スイッチ)により提供されるプロットであってもよい。例えば、基線付け工程中に稼働イベントが発生するたびにスイッチが起動することができる。しかしながら、一般には、スイッチおよびノックセンサ23の両方を備えることは、余分かつ高価であり得るのでエンジン10の通常稼働中はスイッチをエンジン10に備えなくてよい。よって、スイッチおよび対応する稼働イベントインジケータ103を、基線付け工程(例えば工程88)中に使用し、稼働イベントが具体的に発生する(例えば稼働イベントに応じてクランクシャフト54の角度が2〜4度以内の)時のADSRエンベロープ82の位置をより正確に決定してよく、これによりADSRエンベロープ82をECU25に記憶して、後にエンジン10の通常稼働中に稼働イベントがADSRエンベロープ82内でより具体的に発生する時のクランクシャフト54の角度またはタイミングを決定するために利用できる。
【0040】
図示した実施形態では、稼働イベントは
図2に示された排気バルブ64の閉鎖である。排気バルブ64が閉鎖すると、スイッチが起動され、これにより制限スイッチがロー(例えば低圧)からハイ(例えば高圧)に移動する。スイッチは、稼働イベントインジケータ103の信号をECU25に伝送し、ECU25は稼働イベントインジケータ103を基準化済みエンジンノイズプロット81上にプロットすることができる。稼働イベントインジケータ103とADSRエンベロープ82との交点105を、稼働イベント(例えば排気バルブ64の閉鎖)に対応するフィンガープリント100と共に記憶することができる。図示した実施形態では、交点105は、ディケイ84ベクトルのほぼ中点(例えば中点からディケイ84ベクトルの5〜10パーセントの長さの範囲)に位置する。一般には、排気バルブ64の閉鎖は、ディケイ84ベクトルの中点または中間領域で発生し(例えば、ここで中間領域はディケイ84ベクトルの5〜10パーセントの長さで画定される、ディケイ84ベクトルの中点のいずれかの側のエリアである)、ディケイ84ベクトルの中点の座標は幾何学的中点の関係、例えばP
i=[(X
1+X
2)/2,(Y
1+Y
2)/2]を用いて計算でき、ここでP
iは中点(かつ、従って交点105)であり、X
1およびX
2はディケイ84ベクトルのいずれかの端部における軸76に沿ったX座標であり、Y
1およびY
2はディケイ84ベクトルのいずれかの端部における軸78に沿ったY座標である。なお、図示した実施形態では軸78は時間を含んでいるが、別の実施形態では、軸78はクランクシャフトセンサ66からのクランクシャフト54の角度(例えばクランク角)情報を含んでよく、この情報は時間と相関していることに留意されたい。
【0041】
(排気バルブ64の閉鎖に関連する図示した実施形態では、ADSRエンベロープ82のディケイ84ベクトルの中点である)交点105の決定後、(例えばADSRエンベロープ82情報および交点105情報を有する)フィンガープリント100を後の分析のために記憶することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、フィンガープリント100が正確かつ燃焼エンジン10の通常稼働中の稼働イベントの識別に使用できることを保証するために、フィンガープリント100を確認するのが有益であり得る。例えば、
図9は、
図7に図示されたフィンガープリント100を識別および確認する工程102の一実施形態の更なる詳細を示すフローチャートである。メモリ74に記憶され、ECU25のプロセッサ72により実行可能なコンピュータ命令または実行可能なコードとして工程102を実装することができる。決定104では、ECU25は、ノイズ信号が変調している(即ちあるトーンから別のトーンに変更している)かどうかを決定する。信号が変調していない場合(決定104)、続いてECU25はブロック112に移動し、マッチングウェーブレットを探すよう試みる。ウェーブレット、効果的にはウェーブの一部または構成要素は、ゼロから開始して増加し、減少しまたは増加減少し、ゼロに戻る振幅を有するウェーブ状の振動である。ウェーブレットは、周波数、振幅、および持続時間を調整することにより修正でき、これによりウェーブレットを信号加工において極めて有用にする。例えば、連続的なウェーブレット変換では、様々な修正された周波数要素に亘って統合することにより所定の信号を再構築することができる。例えば「マザー(mother)」ウェーブレットとしては、Meyerウェーブレット、Morletウェーブレット、およびMexican hatウェーブレットが挙げられる。しかしながら、マザーウェーブレットが一致しない場合は新規のウェーブレットを生成することができる。
【0043】
音が変調している場合(決定104)、ECU25は、決定108に移動して、ノイズ信号がチャープレットに一致するかどうかを決定する。チャープは、時間と共に周波数が増加または減少する信号である。ウェーブレットがウェーブの一部であるのと同様に、チャープレットはチャープの一部である。ウェーブレットと同様、信号に近づけるために、チャープレットの特徴を修正し、続いて複数のチャープレットを組み合わせること(即ちチャープレット変換)ができる。チャープレットは、上方または下方に変調することができる(即ち、周波数を変化させることができる)。決定108では、ECU25は、チャープレットをノイズ信号と一致させるためにチャープレットの変調を調整することができる。チャープレットの変調の調整後に、ECU25がチャープレットを調整してノイズ信号を一致させることができた場合、続いてECU25は信号に一致するチャープレットが存在したかどうかをログに記録し、その場合、チャープレットの第1の周波数、チャープレットの第2の周波数、および周波数/(クランク角)または毎秒周波数のチャープレット変調のレートをログに記録する。ECU25は続いて、フィンガープリント100を確認するためにECU25がノイズ信号を位相シフトするブロック110に移動する。ブロック110では、ECU25は、ADSRエンベロープ82ベクトルまたは他の構成要素、抽出されたトーン情報、およびチャープレットまたはウェーブレット一致に基づいて、生成されたノイズ信号を作成する。ECU25は続いて、生成された信号を例えば180度フェーズから外れるようにシフトする(ブロック110)。ノイズ信号の特徴が正しい場合、位相シフトされた生成されたノイズ信号は、ノイズ信号を打ち消すはずである。
【0044】
ノイズ信号がチャープレットに一致しない場合(決定108)、ECU25はブロック112に移動して、ウェーブレットをノイズ信号に一致させるよう試みる。ブロック112では、ECU25は、ノイズ信号に一致することができる1つまたは複数のウェーブレットを選択する。選択された1つまたは複数のウェーブレットは、Meyerウェーブレット、Morletウェーブレット、Mexican hatウェーブレット、またはいくつかの他の好適なウェーブレットであってもよい。決定114では、ECU25は、選択された1つまたは複数のウェーブレットがノイズ信号に一致するかどうかを決定する。選択されたウェーブレットが一致する場合(決定114)、ECU25は、ウェーブレット一致が存在したこと、マザーウェーブレットタイプ、ウェーブレットの第1の目盛範囲、およびウェーブレットの第2の目盛範囲をログに記録する。ウェーブレットが一致する場合(決定114)、ECU25は、フィンガープリント100を確認するためにECU25がノイズ信号を位相シフトするブロック110に移動する。選択されたウェーブレットのうちの1つがノイズ信号と一致しない場合(決定114)、ECU25はブロック116に移動してウェーブレットを作成することができる。決定118では、ECU25は、新規に作成されたウェーブレットがノイズ信号と一致するかどうかを決定する。作成されたウェーブレットが一致する場合(決定118)、ECU25は、ウェーブレット一致が存在したこと、ウェーブレットの第1の目盛範囲、およびウェーブレットの第2の目盛範囲をログに記録する。作成されたウェーブレットがノイズ信号と一致する場合(決定118)、ECU25は、フィンガープリント100を確認するためにECUがノイズ信号を位相シフトするブロック110に移動する。新規のウェーブレットが一致しない場合(決定118)、ECU25は、ノイズ信号を広帯域ノイズとして特徴付けるブロック120に移動する。
【0045】
ここでブロック110に戻り、ECU25がノイズ信号に一致するチャープレットまたはウェーブレットを発見した場合、ECU25はノイズ打消しを試みることにより一致を確認する。従って、ブロック110では、ECU25は、ADSRエンベロープ82ベクトルまたは他の構成要素、抽出されたトーン情報、およびチャープレットまたはウェーブレット一致に基づいて、生成されたノイズ信号を作成する。ECU25は続いて、生成された信号を180度シフトする(ブロック110)。ECU25は続いて、シフトされた信号が所望の許容誤差内でオリジナルのノイズ信号を打ち消すかどうかを決定する(決定122)。シフトされた信号が所望の許容誤差内でオリジナルのノイズ信号を打ち消す場合(決定122)、ECU25は、フィンガープリント100が「良好な(good)」フィンガープリント126であると決定して、ECU25が係数および関連するデータ(信号の2乗平均平方根(RMS)値またはRMSエラーを含んでよい)をログ記録するブロック128に移動する。ECU25は他のデータも同様にログに記録してよく、このデータとしては、信号の開始または終了時のクランクシャフト角、ASDRエンベロープ82ベクトルまたは他のADSR構成要素、基本スペクトルトーン、倍音スペクトルトーン、スペクトルトーンの順序、倍音トーンの順序、チャープレット一致かどうか、第1のチャープレット周波数、第2のチャープレット周波数、チャープレット変調のレート、ウェーブレット一致かどうか、マザーウェーブレットタイプ、ウェーブレットの第1の目盛範囲、ウェーブレットの第2の目盛範囲、最大振幅値および時間、最小振幅値および時間、信号のRMS値、生成された信号に対する信号のRMSエラー、ならびにノイズが広帯域ノイズに分類されるかどうか、が挙げられるがこれらに限定されない。更に、上述したように、ECU25は
図8で示されるような、ADSRエンベロープ82上の交点105のログを記録することができる。このログ記録されたデータ、およびECU25によりログ記録された他のデータにより、ECU25は(例えば本開示で説明される特定の稼働イベントに対応する)公知のノイズを特徴付けるおよびカテゴリ分けすることができ、これらのノイズをECU25のメモリ構成要素74に記憶でき、あるいはいくつかの他のメモリデバイスにこれを伝送し、後の分析のためにデータベースにログ記録および記憶できる。一方、ECU25がシフトされた信号が所望の許容誤差内でオリジナルのノイズ信号を打ち消さなかったと決定した場合(決定122)、ECU25は、ノイズ信号が広帯域ノイズとして特徴付けられるブロック124に移動する。
【0046】
なお、実施形態に応じて、基線付け方法(例えば工程88)の後に
図9の工程102を採用しなくてもよいことに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、工程102を採用することなくフィンガープリント100が「良好なフィンガープリント126」であると決定することができる。いずれの場合でも、検証済みフィンガープリント130(例えばフィンガープリント100および/または良好なフィンガープリント126)を、
図10の工程134の実施形態に示されるように、エンジン監視工程134中の後のアクセスのためにデータベース132に記憶することができる。例えば、図示した工程134中に、エンジン10からのノイズが感知される(例えば検出されるまたは記録される)(ブロック136)。上述したように、ノックセンサ23またはエンジン10のノイズもしくは振動を検出するよう構成されたいくつかの他のセンサを介してノイズを感知することができる。
図3〜5の説明により、加工のためにノイズ信号を
事前調整(例えば、基準化、正規化、および/またはフィルタリング)することができる。クランクシャフトセンサ66も、クランクシャフト54の位置を(例えばクランク角で)感知、検出、または記録することができる。従って、ノイズ信号(例えば
事前調整されたノイズ信号)をクランクシャフト54の位置に対してECU25を介してプロットすることができる。上述したように、特定の実施形態では、ノイズ信号をクランクシャフト54の位置ではなく時間に対してプロットすることができる。
【0047】
工程134は、データベース132内のフィンガープリント130にアクセスするステップ(ブロック138)を更に含む。例えば、ECU25は、工程134を介して監視されている特定の稼働イベントに関連するフィンガープリント130にアクセスすることができる。この実施形態によると、稼働イベント(または条件)は、ピーク燃焼圧、吸気バルブ62の開放、吸気バルブ62の閉鎖、排気バルブ64の開放、排気バルブ64の閉鎖、またはエンジン10のいくつかの他の稼働イベント(または条件)であってもよい。
【0048】
工程134を介してECU25により監視されている稼働イベント(または条件)に対応するフィンガープリント130へのアクセス後、ECU25はフィンガープリント130とノイズ信号(例えば
事前調整されたノイズ信号)とを相関させ、ノイズ信号がフィンガープリント130と適合する一部を含むかどうかを決定することができる。例えば、上述したように、フィンガープリント130は、監視されているおよび基線付け工程(例えば工程88)中に生成された稼働イベントに関連するADSRエンベロープ82を含んでよい。フィンガープリント130のADSRエンベロープ82をノイズ信号(例えば
事前調整されたノイズ信号)の時間またはクランクシャフト54の位置の軸に沿ってシフトしまたはずらし、フィンガープリント130がノイズ信号のいずれの部分と適合するかどうかを決定することができる。例えば、フィンガープリント130のADSRエンベロープ82を、ノイズ信号の一部と直接的に比較または適合させてよく、または(例えば
図5および6の記述により)ノイズ信号の一部について1つもしくは複数の稼働ADSRエンベロープを生成し、フィンガープリント130のADSRエンベロープ82と比較することができる。更に、一般には、時間または(例えばクランク角の)クランクシャフト54の位置の公知の範囲内で稼働イベントが発生し得る。よって、ノイズ信号の一部がフィンガープリント130に適合するかどうかを決定するためにECU25により加工されたノイズ信号の一部を、時間またはクランクシャフト54の位置の公知の範囲まで低減することができる。なお、フィンガープリント130とノイズ信号との適合は、フィンガープリント130とノイズ信号との完全適合でなくてよいことに留意されたい。例えば、フィンガープリント130はノイズ信号の一部に実質的に適合してよく、かつこれを適合の正確性のパーセンテージにより評価することができる。(例えばECU25のメモリ74に記憶された)閾値は、フィンガープリント130とノイズ信号との適合の正確性のパーセンテージがフィンガープリント130とノイズ信号が適合していると考えるのに実質的に十分であるかどうかをECU25が決定することを可能にできる。閾値は、75%適合、80%適合、85%適合、90%適合、95%適合、97%適合、98%適合、99%適合、または100%適合と少なくとも同じかこれ以上であってもよい。
【0049】
決定142では、ECU25は、フィンガープリント130がノイズ信号(例えば
事前調整されたノイズ信号)のいずれの部分と適合するかどうかをブロック136から決定する。ブロック140での相関が決定142の適合である場合、監視されている稼働イベントは検証済みとなる。更に、ブロック144で示すように、(例えば時間でまたはクランクシャフト54のクランク角で)稼働イベントの特定の位置を決定することができる。例えば、上述したように、稼働イベントは
図8の(例えばADSRエンベロープ82と稼働イベントインジケータ103との)交点105において発生してよく、いくつかの実施形態では、この交点105はADSRエンベロープ82のディケイ84ベクトルの中点に相当する。従って、ECU25は、クランクシャフト54の位置に対してプロットされたノイズ信号の上に、フィンガープリント130のADSRエンベロープ82を重ねて、稼働イベントがADSRエンベロープ82の交点105のx座標(例えば、時間またはクランクシャフト54の位置の座標)で発生したと決定することができる。
【0050】
フィンガープリント130が決定142においてノイズ信号のいずれの部分にも適合しない場合、工程134は(例えばエンジンノイズを感知する)ブロック136に戻るか、(データベース中の(1つまたは複数の)フィンガープリントにアクセスする)ブロック138に戻ってよい。例えば、いくつかの実施形態では、工程134を利用して複数の稼働イベントを監視することができる。従って、工程134は、ノイズ信号との相関のために複数のフィンガープリント130にアクセスするステップを含んでよい。複数のフィンガープリント130に1つのステップで全てにアクセスしてよく、または各フィンガープリント130に個別にアクセスして続いてノイズ信号に相関させ、稼働イベントを決定および検証することができる。
【0051】
なお、本開示によると、(1つまたは複数の)稼働イベントおよび条件は、エンジン10のいずれの稼働イベントまたは条件であってもよいことに留意されたい。例えば、稼働イベントは排気バルブ64の開放、排気バルブ64の閉鎖、吸気バルブ62の開放、吸気バルブ62の閉鎖、ピーク燃焼圧、またはエンジン10のいずれの他の稼働イベントであってもよい。なお、更に、稼働イベントが発生する時のクランク角を、上述したものと同じまたは同様の処理ステップにより決定することができることに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、稼働イベントは、ディケイ84ベクトルに沿って、またはADSRエンベロープ82の他のベクトルのうちの1つに沿って、異なるポイントで発生することができる。
図8に示された稼働イベントインジケータ103を、限定スイッチにより、または通常稼働中にはエンジン10に備えられていなくてよい、基線付け工程(例えば工程88)中に稼働イベントを検出するよう構成されたいくつかの他の機構により、ECU25に提供することができる。なお、更に、各稼働イベントに関連付けられたフィンガープリント100、126、130は、各稼働イベントについて異なっていてよく、エンジン10の各モデル、製造、またはシリーズについて異なっていてよいことに留意されたい。よって、様々な稼働イベントについてフィンガープリント100、126、130を決定する基線付け工程(例えば工程88)を、各特定のエンジン10について実行してよく、各エンジン10は、同じ稼働イベントについて異なるフィンガープリント100、126、130を含んでよい。
【0052】
本発明の技術的効果は、ノイズ信号を特徴付けるステップと、ノイズ信号からサインまたはフィンガープリントを導出するステップとを含み、追加で、ノイズ信号を
事前調整するステップと、ノイズ信号にADSRエンベロープを適用するステップと、ノイズ信号からトーン情報(例えば音楽のトーン)を抽出するステップと、ノイズ信号をチャープレットおよび/またはウェーブレットに一致させるステップとを含んでよい。更に、本発明の技術的効果は、ノイズ信号の特徴ならびにノイズ信号からの(1つまたは複数の)サインおよび/またはフィンガープリントの導出に基づいて、クランク角に対する特定の稼働イベントのタイミングを決定するステップを含んでよい。
【0053】
この記載された説明は、本発明を開示するために、かついずれのデバイスまたはシステムを作製および使用すること、ならびにいずれの組み込まれた方法を実施することを含む本発明をいずれの当業者が実施できるようにするために、最良のモードを含む例を用いる。本発明の特許性のある範囲は請求項により定義され、当業者に想起される他の例を含んでよい。このような他の例は、請求項の文字上の言葉と異ならない構造的要素を有する場合、または請求項の文字上の言葉と少しの本質的な違いを有する同等の構造的要素を含む場合、請求項の範囲内に入ることを意図したものである。