(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
かかる圧力変動吸着式水素製造方法は、水素成分および水素成分以外の可燃性成分を含む原料ガスから水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着することにより、水素濃度の高い製品ガスを製造するものであり、また、吸着塔から排出されるオフガスには、可燃性成分が含まれているため、オフガスタンクに回収したオフガスを燃焼装置に供給して燃焼させるものである。
【0003】
すなわち、水素成分および水素成分以外の可燃性成分を含む原料ガスから水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスを生成する複数の吸着塔を設け、
前記各吸着塔において、吸着対象成分を吸着する吸着工程と、吸着対象成分を脱着して吸着塔を再生する脱着工程とを交互に行い、脱着工程において回収したオフガスを燃焼装置に供給する制御装置を設けた圧力変動吸着式水素製造装置は、複数の吸着塔が、原料ガスから吸着工程および脱着工程を交互に繰り返し、原料ガス中のオフガス成分を吸着して排出する工程を、周期をずらせて順次行うことにより、ほぼつねに、いずれかの吸着塔において脱着工程が行われるように運転することが可能となるので、排出されるオフガスを燃焼装置に供給するのに適した構成となる。
【0004】
このような圧力変動吸着式水素製造方法の従来例として、都市ガスを改質処理する改質器から供給される改質ガスを原料ガスとして製品ガスを製造し、製品ガスを燃料電池に供給し、改質器を加熱する燃焼装置にオフガスを供給するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の圧力変動吸着式水素製造方法においては、脱着工程として、脱着工程の吸着塔の内部ガスをオフガスとしてオフガスタンクに排出するブロー工程、および、均圧用排出工程の吸着塔の内部ガスを脱着工程の吸着塔を通して流動させて、オフガスとしてオフガスタンクに排出するパージ工程を順次行うようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧力変動吸着式水素製造方法においては、脱着工程において、脱着工程の吸着塔の吸着剤に吸着された吸着対象成分を的確に離脱させることによって、吸着対象成分の回収効率を高めることが望まれるものである。
そのための方法として、脱着工程の吸着塔に対して吸引作用する真空ポンプを設けることによって、吸着対象成分を的確に離脱させるようにする圧力変動吸着式水素製造方法が考えられるが、この方法においては、燃焼装置に対してオフガスを適切に供給できない虞があった。
【0008】
すなわち、本願の発明者は、真空ポンプによって脱着工程の吸着塔を吸引する圧力変動吸着式水素製造方法を考えたが、単に、真空ポンプによって吸着塔を吸引するだけでは、燃焼装置に対してオフガスを適切に供給できないタイミングが発生する虞があることを見出した。
【0009】
燃焼装置に対する上述のオフガスの供給不良は、圧力変動吸着式水素製造装置が複数の吸着塔において、それぞれ吸着対象成分を吸着する吸着工程と、吸着対象成分を脱着して吸着塔を再生する脱着工程とを交互に行い、その脱着工程におけるオフガスを供給する際、その脱着工程初期と終期とで吸着塔から脱着されるオフガス量が大きく変動することに起因し、下記のように単に吸引ポンプとオフガスタンクとを設けるだけではこの変動を安定化できないためと考えられる。
【0010】
詳述すると、燃焼装置に対するオフガスの供給圧はほぼ大気圧とされるのに対して、吸着塔は吸着工程において昇圧されているから、脱着工程初期においては、各吸着塔から十分量のオフガスが生成し、吸着塔と燃焼装置との圧力差により効率よくオフガスを供給できる。これに対して、脱着工程終期では吸着塔内の圧力が大気圧に近づくため、オフガス生成量が少なく、かつ圧力差による燃焼装置へのオフガス供給が不十分となりやすい。そこで、減圧路に第一オフガスタンクを設けると、第一オフガスタンクによってオフガスを貯留し、第一オフガスタンクから安定的に燃焼装置に対するオフガス供給が可能になるように思われる。しかし、第一オフガスタンクにおいて有圧を維持する構成を採用すると、吸着塔の脱着工程終期における圧力も比較的高い状態にとどまることになり、脱着工程を行う主たる目的としての吸着塔の再生が十分に行えないことになる。そこで、前記吸着塔を真空ポンプでさらに減圧吸引してオフガスを回収する真空減圧路を前記減圧路と別に設けるとともに、前記真空減圧路における真空ポンプの下流側に第二オフガスタンクを設けることが考えられる。しかし、真空ポンプは、その性質上、ある程度低い低圧状態にまで減圧させられた吸着塔からは、ガスを吸引できるものの、やや高めの低圧状態に保持される吸着塔から減圧しようとする場合、大きな負荷を負うことになるため、吸引動作を安定的に行うことができず、結局のところ、前記吸着塔が十分低圧になるのを待って、真空ポンプの動作を始めなければならない事情があり、吸着塔の圧力低下を待つのに時間を要してしまうため、燃焼装置に対するオフガス供給の安定化のために真空ポンプを効率よく利用することにはならないと考えられる。
【0011】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、燃焼装置に対してオフガスを安定供給しつつ、吸着対象成分の回収効率を高めることができる圧力変動吸着式水素製造装
置の運転方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の
圧力変動吸着式水素製造装置の運転方法は、
水素成分および水素成分以外の可燃性成分を含む原料ガスから水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスを生成する複数の吸着塔を設け、
前記各吸着塔において、吸着対象成分を吸着する吸着工程と、吸着対象成分を脱着して吸着塔を再生する脱着工程とを交互に行い、脱着工程において回収したオフガスを燃焼装置に供給する制御装置を設けた圧力変動吸着式水素製造装置
において、
前記脱着工程において、前記吸着工程で昇圧された吸着塔の圧力を用いて、オフガスを回収する減圧路を設けるとともに、前記減圧路に第一オフガスタンクを設け、前記吸着塔を真空ポンプでさらに減圧吸引してオフガスを回収する真空減圧路を設けるとともに、前記真空減圧路に第二オフガスタンクを設け、
前記真空減圧路における真空ポンプの上流側にバッファタンクを設けるとともに、前記吸着塔から前記バッファタンクに至る流路に開閉弁を設け、
前記減圧路で回収されるオフガスを、前記第一オフガスタンクをバイパスしかつ前記第二オフガスタンクを経由することなく前記燃焼装置に供給するバイパス路を設け
てある圧力変動吸着式水素製造装置の運転方法であって、
前記各吸着塔において、吸着対象成分を吸着する吸着工程と、吸着対象成分を脱着して吸着塔を再生する脱着工程とを交互に行うにあたり、
前記脱着工程は、前記減圧路を介して前記吸着塔と前記第一オフガスタンクとの圧力差によりオフガスを前記第一オフガスタンクに回収する第一減圧工程と、前記バイパス路を介して前記吸着塔と前記燃焼装置との圧力差によりオフガスを直接燃焼装置に供給し且つ前記開閉弁の閉状態で前記真空ポンプを作動させる第二減圧工程と、前記開閉弁の開状態で前記真空ポンプを作動させて、前記真空減圧路の前記バッファタンクおよび前記真空ポンプを通じてオフガスを前記第二オフガスタンクに回収する真空減圧工程とを含む点にある。
【0013】
〔作用効果1〕
上記構成によると、前述の通り、水素成分および水素成分以外の可燃性成分を含む原料ガスから水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスを生成する複数の吸着塔において、吸着対象成分を吸着する吸着工程と、吸着対象成分を脱着して吸着塔を再生する脱着工程とを交互に行い、脱着工程において回収したオフガスを燃焼装置に供給する制御装置を設けた圧力変動吸着式水素製造装置は、複数の吸着塔が、原料ガスから吸着工程および脱着工程を交互に繰り返し、原料ガス中のオフガス成分を吸着して排出する工程を、周期をずらせて順次行うことにより、ほぼ常に、いずれかの吸着塔において脱着工程が行われるように運転することが可能となるので、排出されるオフガスを燃焼装置に供給するのに適した構成となる。
【0014】
ここで、前記吸着工程において昇圧された吸着塔の圧力を用いて、前記脱着工程において、オフガスを回収する減圧路を設けると、前記脱着工程においてオフガスが十分に排出される。しかし脱着工程において、吸着塔の圧力のみを用いて吸着塔からオフガスを排出しようとすると、脱着工程の終期においてオフガスの脱着速度が遅くなり効率よくオフガスの回収が行えない。そこで、前記吸着塔を真空ポンプでさらに減圧吸引してオフガスを回収する真空減圧路を設け、前記真空減圧路に第二オフガスタンクを設けることにより、オフガスの脱着速度が低下した場合であっても、真空ポンプにより前記吸着塔内を効率よく減圧排気し、第二オフガスタンクに回収することができる。この際、従来の技術において詳述したように、吸着塔内の圧力が十分に低下していない状態で、前記真空ポンプを作用させると、前記真空ポンプに大きな負荷がかかり吸引動作を長期的に安定して行えなくなる虞がある。
【0015】
しかし、前記真空減圧路における真空ポンプの上流側にバッファタンクを設けるとともに、前記吸着塔から前記バッファタンクに至る流路に開閉弁を設けてあれば、開閉弁を閉じ、真空ポンプを駆動することにより、あらかじめバッファタンクを減圧しておくことができる。この状態で、ある程度圧力の低下した吸着塔を真空減圧路に接続し、前記開閉弁を開放すると、前記は吸着塔は、減圧された前記バッファタンクによって減圧されるとともに、前記真空ポンプは前記吸着塔の比較的高い圧力にさらされることなく、前記バッファタンクを減圧し続けることができる。そのため、前記吸着塔を、ある程度圧力の低下された状態から、直接真空減圧路に接続してさらに減圧できることになる。なお、開閉弁としては、減圧弁、遮断弁等の流路を開閉可能な弁であれば、任意のものが利用できる。
【0016】
すなわち、前記バッファタンクを設けることにより、前記吸着塔の脱着工程を、前記減圧路から放圧する際に必要以上に時間をかけることなく、効率よく真空減圧路を介する減圧に切り替えられるようになり、真空ポンプに大きな負荷をかけることなく、自然放圧されただけである程度低い定圧状態にとどまっている吸着塔を、早期から減圧し始めることができ、効率よく吸着塔を最低圧状態にまで減圧することができる。これによりオフガスを十分量第二オフガスタンクに得ることができるとともに、前記吸着塔の再生をより一層十分に行えることになる。
【0017】
したがって、吸着塔の再生が効率よくおこなわれるから、吸着対象成分の回収効率を高めることができ、オフガスを効率よく第一タンクおよび第二タンクに貯留できるようになる。そのため、貯留されたオフガスを効率よく燃焼装置に供給できるようになった。
【0019】
又、前記減圧路で回収されるオフガスは、第一オフガスタンクに一旦貯留することができる。ここで、前記第一オフガスタンクの内圧がやや高めの低圧状態に達した時点で、第一オフガスタンクに供給されるオフガスが、第一オフガスタンクを通過できず前記減圧路から燃焼装置に供給されなくなる状態となる。この状態では、前記吸着塔の内圧は十分に低下しきっているとは言えない状態であるので、吸着塔をそのまま、真空減圧路に切替接続すると、前記バッファタンクに過剰のオフガスが急激に流れ込むため、真空ポンプの負荷が十分に軽減されないことになる。そのため、この負荷を十分に緩和するため、前記バッファタンクを比較的大容量に設定しておく必要がある。そこで、やや高めの低圧状態となっている吸着塔を、第一オフガスタンクを介さず排出可能にバイパスして燃焼装置に供給するように接続するバイパス路を設けることにより、第一オフガスタンクの内圧によらず、前記吸着塔の内圧を燃焼装置の内圧近傍のある程度低い低圧状態にまで低下可能に構成することができる。したがって、第一オフガスタンクにより、オフガスを貯留する機能を確保しながら、吸着塔の内圧を燃焼装置の内圧近傍のある程度低い低圧状態にまで低下させられるようになり、前記真空減圧路による減圧を大きなバッファタンクによることなくコンパクトな構成で行えるようになる。
【0026】
前記脱着工程において、減圧工程、真空減圧工程を行うにあたって、前記減圧工程が第一、第二減圧工程を行う構成としてあれば、第一減圧工程から、真空減圧工程に切り替えるにあたり、吸着塔の内圧が比較的高い脱着工程初期は、昇圧された吸着塔の内圧と、大気圧に近い第一オフガスタンクとの圧力差により、吸着塔内のガスを排気することができる。その後、第一オフガスタンクの内圧がある程度上昇して、吸着塔と第一オフガスタンクとの圧力差が小さくなってしまった場合には、第二減圧工程として、バイパス路を介して前記吸着塔と、前記燃焼装置との圧力差によりオフガスを直接燃焼装置に供給することができる。そのため、第一減圧工程で十分量のオフガスを貯留した後、第一オフガスタンクの内圧が高くなって、吸着塔の再生効率が低下したときに、吸着塔の内圧がまだ真空減圧工程を行うのに十分低下していないような状態であっても、あらかじめ第二減圧工程を行い、吸着塔の内圧を低下した後、真空減圧工程を行えるようになる。
【0027】
そのため、吸着塔内の圧力がより高圧で、排出されるオフガス量がより大量である場合であっても、安定して吸着塔の再生を効率よく行えるとともに、安定して燃焼装置にオフガスを供給できるようになった。
【0028】
なお、本発明において「吸着工程と脱着工程とを交互に行う」という場合、吸着工程と脱着工程とが時期的に常に連続して交互に行われる場合に限らず、たとえば、いわゆる均圧工程、昇圧工程等、吸着工程と脱着工程とには含まれにくいほかの工程が介在している場合も「交互に行う」と考えるものとする。
【0029】
また、吸着塔の再生が効率よく行われるようになると、吸着塔の運転条件を短サイクルで稼働できるようになり、タイムサイクルを効率化することにより吸着対象成分の回収率も向上させることが容易となる。
【0030】
また、吸着塔は複数塔設ければよく、2塔以上であれば吸着工程と脱着工程とを交互に行うことにより安定してオフガスを燃焼装置に供給できるようになる。
【発明の効果】
【0031】
したがって、燃焼装置に対してオフガスを安定供給しつつ、吸着対象成分の回収効率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明のガス精製装置を説明する。なお、以下に好適な実施形態を記すが、これら実施形態はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0034】
〔ガス精製装置〕
ガス精製装置は、
図1に示すように、吸着剤A11〜A41を充填した吸着塔A1〜A4を備える。各吸着塔A11〜A41には、天然ガスから水素ガスを製造する改質装置Rから供給される改質ガス(メタン含有水素ガス)を原料ガスとして供給する原料ガス供給路L1、吸着剤A11〜A41に吸着されなかった精製対象ガスとしての水素を製品ガスとして回収する製品ガス回収路L2および製品ガスタンクT2、吸着剤A11〜A41に吸着した雑ガスとしてのメタンを含むオフガスを脱着させて排気する減圧路としてのオフガス排出路L3が設けられる。本実施形態では、吸着塔A1〜A4の4塔を備える構成としたが、塔数は複数であれば限定されるものではなく、3塔、5塔その他、適宜必要に応じ選択することが可能である。
【0035】
原料ガス供給路L1へのガス供給は、供給ポンプP1を用いて行い、吸着塔A1〜A4を昇圧する際の圧力を安定制御可能に構成してある。前記原料ガス供給路L1に供給された原料ガスは切換弁V11〜V41を備えた供給路L11〜L41を介して各吸着塔A1〜A4に供給される。
【0036】
前記吸着塔A1〜A4から排出された製品ガスは、切換弁V12〜V42を備えた回収路L12〜L42を通じて製品ガス回収路L2に流入する。前記製品ガス回収路L2には、圧力制御弁Vc2が設けられている。前記圧力制御弁Vc2により、前記吸着塔A1〜A4から製品ガスタンクT2に回収される製品ガスの圧力を制御することにより、吸着塔A1〜A4における原料ガスの供給圧との関係から前記吸着塔A1〜A4からの製品ガス回収圧を制御可能に構成してある。
【0037】
前記吸着塔A1〜A4で吸着された雑ガスは、減圧されることにより吸着剤A11〜A41から脱離し、切換弁V13〜V43を備えた排ガス路L13〜L43を通じて前記オフガス排出路L3から排出される。前記オフガス排出路L3は燃焼装置Bに接続されるとともに、第一オフガスタンクT3aを備え前記吸着塔A1〜A4と第一オフガスタンクT3aとの圧力差により前記吸着塔A1〜A4を減圧する減圧路L3aと、前記第一オフガスタンクT31をバイパスして前記吸着塔A1〜A4と前記燃焼装置Bとの圧力差によりオフガスを直接燃焼装置Bに供給するバイパス路L3bとを備える。前記減圧路L3aおよびバイパス路L3bには、減圧弁V3a、V3bと流量調整弁Vc3a、Vc3bとが設けられ、燃焼装置Bに対してオフガスを安定的に供給可能に構成される。
【0038】
また、前記吸着塔A1〜A4で吸着された雑ガスを前記減圧路L3aおよびバイパス路L3bから排出してある程度低い低圧状態になった吸着塔A1〜A4からさらに吸着ガスを真空ポンプP4でさらに減圧吸引してオフガスを回収する真空減圧路L4を前記減圧路とは別に設けるとともに、前記真空減圧路L4に減圧弁V4aおよび第二オフガスタンクT4aを設けてある。また、前記減圧弁V4aと真空ポンプP4aとの間にバッファタンクT4bを設けてある。すなわち、各吸着塔A1〜A4と燃焼装置Bとを接続する真空減圧路L4に上流側(吸着塔A1〜A4側)から減圧弁V4a、バッファタンクT4b、真空ポンプP4a、第二オフガスタンクT4aを順に設け、真空ポンプP4aの吸引力によりオフガスを第二オフガスタンクT4aに回収するとともに、燃焼装置Bに供給自在に構成してある。
【0039】
また、各吸着塔A1〜A4には均圧路L5が設けられ、各均圧(降圧)工程において吸着塔A1〜A4の上部から排出されるガスを各均圧(昇圧)工程の行われる吸着塔A1〜A4の上部に移送可能に構成してある。
【0040】
また、各吸着塔A1〜A4には、吸着塔A1〜A4内部を昇圧用ガスとしての製品ガスを供給するための昇圧路L6が設けてある。すなわち、昇圧工程において、T2から供給される製品ガスは、昇圧路L6から切換弁V16〜V46を備える昇圧路L16〜L46を介して各吸着塔A1〜A4に流入する。この際、前記昇圧路L6には、開閉弁および圧力制御弁Vc6が設けられており、製品ガスタンクT2の保有圧に基づき吸着塔A1〜A4内に製品ガスを移流させて昇圧可能に構成してある。
【0041】
また、ガス精製装置には、制御装置Cが設けられている。この制御装置Cは、前記吸着塔A1〜A4と、前記原料ガス供給路L1、前記製品ガス回収路L2、前記オフガス排出路L3、前記真空減圧路L4、前記均圧路L5、前記昇圧路L6の各配管L11〜L46に設けられた切換弁V11〜V46等を開閉制御する。これにより、P1、P4を用いて各吸着塔A1〜A4において各吸着工程を行う吸脱着制御装置Cとして働く。
【0042】
なお、ここでは、前記吸着剤A11〜A41としては、改質ガス中のメタンを含む雑ガスを選択的に吸着できる吸着剤A11〜A14が好適に用いられる。このような吸着剤A11〜A41としては、活性炭、モレキュラーシーブカーボン、ゼオライト、多孔性の金属錯体から選ばれる少なくとも一種の材料を主成分とするものが用いられる。
【0043】
なお、ここで用いる原料ガスとしての改質ガスは、主成分が水素、二酸化炭素およびメタンであり、水素を99%以上含有する製品ガスを得るためのガス精製を行う。上記吸着剤を用いた場合、たとえば、水素73%、メタン6%、一酸化炭素1%、二酸化炭素20%を含む改質ガスを流量8000L/minで供給したときに、純度99.999%の水素ガスを流量5000L/minで得られる程度のガス分離能力を有する。
【0044】
〔吸着塔〕
吸着塔A1〜A4は、それぞれ、吸着剤A11〜A41を充填してなる。各吸着塔A1〜A4の下部には、改質装置Rから供給ポンプP1により改質ガスを供給する供給路L11〜L41を設けて原料ガス供給路L1を構成する。また、各吸着塔A1〜A4の上部に、吸着塔A1〜A4に供給された改質ガスのうち吸着剤A11〜A41に吸着されなかった精製対象ガスとしての水素を回収する回収路L12〜L42を設けて製品ガス回収路L2を構成してある。これにより、原料ガス供給路L1から吸着塔A1〜A4に改質ガスを供給するとともに、吸着剤A11〜A14に吸着されなかった水素を製品ガス回収路L2から排出することによって、吸着剤A11〜A14に雑ガスを吸着して水素と分離可能に構成してある。また、前記吸着塔A1〜A4には、吸着剤A11〜A14に吸着された雑ガスを排出する排ガス路L13〜L43を各吸着塔A1〜A4の下部に設けて前記オフガス排出路L3を構成してあり、原料ガス供給路L1から供給された改質ガスのうち吸着剤A11〜A41に吸着され、濃縮後の高濃度の純水素を取出し可能に構成する。
【0045】
なお、各ガス路L11〜L46には、切換弁V11〜46を設けてあり、各ポンプP1、P4の動作により、各吸着塔A1〜A4へのガスの供給、排出、停止の切換を、制御装置Cから一括して制御可能に構成してある。
【0046】
〔水素精製方法〕
前記制御装置Cは、表1下段に示すように、前記各切換弁V11〜V46および各ポンプP1、P4を制御して、表1上段にしたがって、各吸着塔A1〜A4で、
前記各吸着塔A1〜A4において、吸着対象成分を吸着する吸着工程と、吸着対象成分を脱着して吸着塔A1〜A4を再生する脱着工程とを交互に行い、脱着工程において回収したオフガスを燃焼装置Bに供給する。ここで、前記脱着工程は、前記減圧路L3aを介して前記吸着塔A1〜A4と前記第一オフガスタンクT3aとの圧力差によりオフガスを前記第一オフガスタンクT3aに回収する第一減圧工程と、前記バイパス路L3bを介して前記吸着塔A1〜A4と前記燃焼装置との圧力差によりオフガスを直接燃焼装置に供給する第二減圧工程と、前記真空減圧路の前記バッファタンクおよび前記真空ポンプP4を通じてオフガスを前記第二オフガスタンクT4aに回収する真空減圧工程とを含む。
【0048】
この圧力揺動運転にあたり、具体的には表1上段に示すように、
吸着塔A1〜A4下部から供給ポンプP1にて昇圧済みの改質ガスを前記吸着剤A11〜A41に供給し、メタンを含む雑ガスを吸着するとともに、精製対象ガスとしての製品水素ガスを吸着塔A1〜A4上部から放出する前記吸着工程を行い、(たとえば吸着塔A1におけるステップ1〜4、以下同様)
吸着工程の後、高圧状態の吸着塔A1〜A4内の、比較的雑ガス濃度の低いガスを、当該吸着塔A1〜A4より低圧の中間圧状態の他の吸着塔A1〜A4に移送して、吸着塔A1〜A4内の圧力を高圧側の中間圧状態とする初段均圧(降圧)工程(ステップ5、6)、
吸着塔A1〜A4の動作を行わない休止工程(ステップ7)、
低圧状態より高圧側の中間圧状態の吸着塔A1〜A4内の、初段均圧(降圧)工程に比べて雑ガス濃度のやや高められたガスを、低圧状態の他の吸着塔A1〜A4に移送して、吸着塔A1〜A4内の圧力を低圧側の中間圧状態とする最終均圧(降圧)工程(ステップ8)、
均圧(降圧)工程により塔内圧力が低下した後、さらに前記吸着塔と前記第一オフガスタンクとの圧力差により、前記吸着剤A11〜A41を低圧状態まで減圧して、前記吸着剤A11〜A41に吸着された雑ガスを、前記減圧路を介して脱着させて吸着塔A1〜A4下部から第一オフガスタンクに回収する第一減圧工程(ステップ9)、
さらに、前記バイパス路を介して前記吸着塔と前記燃焼装置との圧力差によりオフガスを直接燃焼装置に供給する第二減圧工程(ステップ10)、
前記真空減圧路の前記バッファタンクおよび前記真空ポンプを通じてオフガスを前記第二オフガスタンクに回収する真空減圧工程(ステップ11)
低圧状態の吸着塔A1〜A4内に、前記高圧側の中間圧状態の吸着塔A1〜A4内のガスを受け入れて、吸着塔A1〜A4内の圧力を低圧側の中間圧状態とする最終均圧(昇圧)工程と(ステップ12)、
低圧側の中間圧状態の吸着塔A1〜A4内に、高圧状態の他の吸着塔A1〜A4内のガスを受け入れて、吸着塔A1〜A4内の圧力を高圧側の中間圧状態とする初段均圧(昇圧)工程(ステップ13、14)と、
初段均圧(昇圧)工程により塔内圧力を上昇した後、さらに、前記吸着塔A1〜A4内に吸着塔A1〜A4上部から製品ガスを供給して、前記吸着剤A11〜A41を雑ガスを選択的に吸着可能な高圧状態に復元する昇圧工程(ステップ15)、
休止工程(ステップ16)、
を順に行うように運転制御する。この際の他の塔の工程は、表1上段に対応し、その際各開閉弁等の動きについては表1下段のとおりである。
【0049】
さらに具体的には、吸着塔A1に対して以下のステップにしたがって制御する。他の吸着塔A2〜A4についても位相をずらせて同様の動作を行うことになるが、説明が重複するので表1および
図2の説明をもって詳細な説明を省略する。また、以下の説明における<番号>は、表1におけるステップ番号を示している。また、下記に具体的に示す運転条件は例示であって、本発明は、下記具体例により限定されるものではない。
【0050】
<1〜4>吸着工程
表1に示すように、吸着塔A1に改質ガスを導入する。また、供給路L11の切換弁V11を介してメタンを含む雑ガスを前記吸着剤A11に吸着させつつ、水素を製品ガスタンクT2に回収する。
【0051】
なお、この時、吸着塔A2では、後述の初段均圧(昇圧)工程ののち、昇圧工程、休止工程と移行し、吸着塔内が吸着工程を行える準備段階を完了する。また、吸着塔A3では、後述の第一減圧工程、第二減圧工程、真空減圧工程からなる脱着工程を行い、さらに、最終均圧(昇圧)工程を行い、次の吸着工程を行うための準備段階を開始している。また吸着塔A4では、吸着塔A2との初段均圧(降圧)工程ののち、休止工程を挟んで、最終均圧(降圧)工程が行われ、次の脱着工程の準備段階が行われている。
【0052】
また、このときの製品ガス中の水素純度は吸着工程の時間設定等により設定することができ、99.999%以上とすることができる。
8000L/minで水素約73%、メタン約6%、一酸化炭素1%、二酸化炭素20%を含む改質ガスを処理したところ、
吸着工程を、供給圧を0.75MPaG程度として60秒間行った場合、水素濃度99.999%、圧力0.70MPaG程度の製品ガスを製品ガスタンクT2に回収することができた。
【0053】
<5、6>初段均圧(降圧)工程
吸着工程を終えた吸着塔A1では、最終均圧(昇圧)工程を終えた吸着塔A3との間で初段均圧(降圧)工程を行う。すなわち、表1に示すように、均圧路L15の切換弁V15を介して、塔内の非吸着ガスを排出し、均圧路L35の切換弁V35を介して吸着塔A3に移送する構成となっている。これにより吸着塔A1は、
図2に示すように、低圧側の中間圧状態の吸着塔A3と圧力平衡が行われる。
【0054】
なお、このとき、吸着塔A2では吸着工程を行っており、吸着塔A4では脱着工程の第一減圧工程、第二減圧工程を行っている。
【0055】
また、この初段均圧(降圧)工程は、15秒間行われ、約0.45MPaGの高圧側の中間圧状態に移行する。
【0056】
<7>休止工程
次に、吸着塔A1は休止状態となり、高圧側の中間圧状態が維持される。
【0057】
このとき、吸着塔A2は吸着工程を行っており、また、吸着塔A3は、昇圧工程に移行し、吸着塔A4は真空減圧工程に移行する。
【0058】
また、この待機工程は、約60秒間行われ、上記高圧側の中間圧状態が維持される。
【0059】
<8>最終均圧(降圧)工程
次に、表1に示すように、吸着塔A1は、脱着工程を終え、初段均圧(昇圧)工程を行う吸着塔A4との間で最終均圧(降圧)工程を行う。すなわち、均圧路L15の切換弁V15を介して、塔内の非吸着ガスおよび吸着剤A11から初期に脱着し始める雑ガスを排出し、均圧路L45の切換弁V45を介して吸着塔A4に移送する構成となっている。これにより、吸着塔A1は、脱着工程を終えて低圧状態の吸着塔A4と圧力平衡が行われる。
【0060】
なお、このとき、吸着塔A2は吸着工程を行っており、吸着塔A3は昇圧工程を行っている。
【0061】
また、この最終均圧(降圧)工程は、約30秒間行われ、吸着塔A1の内圧は約0.17MPaGの低圧側の中間圧状態に移行する。
【0062】
<9>第一減圧工程
次に、吸着塔A1は、吸着塔A1を第一オフガスタンクT3aを経由して燃焼装置Bに接続し、前記吸着塔の内圧を、第一オフガスタンクT3aとの圧力差により減圧する第一減圧工程を行う。この時、吸着塔A2、A4は初段均圧(降圧)工程および初段均圧(昇圧)工程を行っており、吸着塔A3は吸着工程を行っている。
【0063】
この第一減圧工程は、7.5秒間行われ、吸着塔A1の内圧は約0.08MPaGのやや高めの低圧にまで移行する。
【0064】
<10>第二減圧工程
次に、吸着塔A1は、吸着塔A1を直接燃焼装置Bに接続して、前記吸着塔の内圧を、燃焼装置Bの内圧との圧力差により減圧する第二減圧工程を行う。このとき、吸着塔A2、A4は初段均圧(降圧)工程および初段均圧(昇圧)工程を継続しており、吸着塔A3は吸着工程を継続している。
【0065】
この第二減圧工程は、7.5秒間行われ、吸着塔A1の内圧は約0.04MPaGのある程度低い低圧にまで移行する。
【0066】
<11>真空減圧工程
ある程度低い定圧状態にまで減圧された吸着塔A1は、バッファタンクT4bを介して、真空ポンプP4により減圧する真空減圧工程に移行する。これにより、吸着塔A1の吸着剤A11は、吸着したメタンを含む雑ガスを、オフガスとして排出し、再生される。このとき吸着塔A2は休止工程にあり、吸着塔A3は吸着工程、吸着塔A4は昇圧工程にある。
【0067】
この真空減圧工程は、約60秒間行われ、吸着塔A1の内圧は約−0.09MPaGの最低圧にまで移行する。
【0068】
<12>最終均圧(昇圧)工程
表1、
図2に示すように、低圧状態となって、吸着したメタンを放出し、吸着剤A11を再生された吸着塔A1では、吸着塔A2との間で初段均圧(昇圧)工程を行うことにより、塔内の圧力を回復するとともに、吸着塔A2における最終均圧(降圧)工程で排出された、吸着剤A11からの脱離ガスにより比較的メタンを含有しない排ガスを受け入れる。すなわち、均圧路L5において、均圧路L25における切換弁V25を介して高圧側の中間圧状態の吸着塔A2から排出される塔内ガスを、均圧路L15における切換弁V15より受け入れる。これにより吸着塔A1は、
図2に示すように、最低圧状態から低圧側の中間圧状態にまで圧力を回復する。
【0069】
なお、このとき吸着塔A3では、吸着工程を継続しており、吸着塔A4では休止工程を行っている。
【0070】
この初段均圧(昇圧)工程は、約15秒間行われ、吸着塔A1は約0.17MPaGの低圧側の中間圧状態まで圧力を回復する。
【0071】
<13、14>初段均圧昇圧工程
低圧側の中間圧状態にまで圧力を回復した吸着塔A1は、次に吸着工程を終えた直後で初段均圧(降圧)工程を行う吸着塔A3との間で初段均圧(昇圧)工程を行うことにより、さらに塔内の圧力の回復を図る。すなわち、均圧路L15〜L35において、切換弁V17、V37を介して、高圧状態の吸着塔A3から排出される塔内ガスを受け入れる。これにより吸着塔A1は、
図2に示すように、低圧側の中間圧状態から高圧側の中間圧状態にまで圧力を回復する。
【0072】
なお、このとき吸着塔A2では脱着工程の第一、第二減圧工程を行っており、吸着塔A4では吸着工程を行っている。
【0073】
この最終均圧(昇圧)工程は、約15秒間行われ、吸着塔A1内は、約0.45MPaGにまで昇圧される。
【0074】
<15>昇圧工程
高圧側の中間圧状態にまで圧力を回復した吸着塔A1では、塔内圧力を、吸着工程の行える高圧状態にまで昇圧する昇圧工程を行う。すなわち、製品ガスタンクT2から昇圧路L6を通じて吸着塔A1に製品ガスを流入し、吸着塔A1内を昇圧する。なお、このとき、吸着塔A2は真空減圧工程、吸着塔A3は休止工程、吸着塔A4は吸着工程を行っている。
【0075】
この昇圧工程は、約30秒行われ、吸着塔A1内は、約0.75MPaGにまで昇圧される。
【0076】
<16>休止工程
高圧状態になった吸着塔A1は吸着工程開始までのあいだ休止工程が行われる。このとき、吸着塔A2、A3では、最終均圧昇圧工程、最終均圧降圧工程が行われ、吸着塔A4では吸着工程が行われる。
【0077】
上記のとおり、吸着塔A1〜A4内が0.17MPaの状態で第一減圧工程(ステップ9)を開始するとともに、吸着塔A1〜A4内が0.08MPaの状態で第二減圧工程(ステップ10)を行い、吸着塔A1〜A4内が0.04MPaの状態で、容量600Lの吸着塔A1〜A4に対して、容量1000Lのバッファタンク内をあらかじめ−0.09MPaの状態としておくことにより、効率よく真空減圧工程(ステップ11)を開始することができる。
【0078】
このような構成により、改質ガスとして、表2に示す組成の混合ガスを8000L/minで、供給した場合に、製品ガスとして、純度99.999%の水素ガスを回収率85%で得ることができるとともに、表3に示す組成のオフガスを、3000L/minで安定的に燃焼装置Bに供給することができることが分かった。すなわち、本発明によれば、燃焼装置Bに対してオフガスを安定供給しつつ、吸着対象成分の回収効率を高めることができる圧力変動吸着式水素製造装置およびその運転方法を提供することができることが分かった。
【0081】
〔別実施形態〕
(1)
上記ガス精製装置には、圧力センサ、温度センサ等は適宜設けることができる。具体的には、通常、原料ガスの供給圧や、製品ガスのメタン濃度などをモニタする圧力センサやガスセンサを設けるのであるが、上述の実施形態においては詳細な説明を省略してあるものとする。
【0082】
(2)
上記実施形態では4塔の吸着塔A1〜A4を備えたガス精製装置としたが、これに限らず2塔、3塔で交互に処理する方式のものであっても良く、複数塔備えて連続的な圧力変動吸着運転が行える構成であればよい。たとえば、5塔であれば、
図3のように構成することができ、表4のような運転サイクルを採用することができる。