特許第6811549号(P6811549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6811549-積層フィルム、及び画像表示装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811549
(24)【登録日】2020年12月17日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】積層フィルム、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20201228BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20201228BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20201228BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
   B32B7/023
   B32B27/30 102
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-102808(P2016-102808)
(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-211434(P2017-211434A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】▲鯖▼江 岬
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和也
(72)【発明者】
【氏名】北村 吉紹
(72)【発明者】
【氏名】新保 史枝
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5871408(JP,B1)
【文献】 国際公開第2016/052540(WO,A1)
【文献】 特開2008−249901(JP,A)
【文献】 特開2016−62032(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/030203(WO,A1)
【文献】 特開2012−73580(JP,A)
【文献】 特開2016−85444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00−43/00
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層、偏光フィルム、及び輝度向上フィルムをこの順に含む積層フィルムであって、
前記偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する偏光子の片面のみに保護フィルムを有する偏光フィルムであり、
前記積層フィルムは、前記粘着剤層、前記保護フィルム、前記偏光子、及び前記輝度向上フィルムをこの順に含み、
前記偏光子の厚みが10μm以下であり、かつ、単体透過率が43.0%以上であり、
前記輝度向上フィルムの偏光度が90%以上であり、
前記粘着剤層のクリープ値(クリープ値とは、粘着剤層を、接着面積10mm×10mmで基板に固着し、500gの荷重をかけるクリープ試験から得られる1時間後の粘着剤層のズレ量(μm)である。)が100〜150μmであり、
前記積層フィルムを、85℃で500時間放置した後の前記偏光子の吸収軸方向の加熱収縮率が、0.5%以下であり、
前記保護フィルムの厚みが25μm以下であり、かつ、下記方法で測定された透湿度が200g/(m・day)以下であることを特徴とする積層フィルム。
<保護フィルムの透湿度>
保護フィルムの透湿度の測定は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定する。直径60mmに切断したサンプルを15gの塩化カルシウムを入れた透湿カップにセットし、40℃、90%の恒温機に入れ、24時間放置した前後の塩化カルシウムの重量増加を測定することで透湿度(g/m・day)を求める。
【請求項2】
前記偏光子のホウ酸含有量が、18〜24重量%であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記偏光子と保護フィルムが接着剤層を介して積層されており、
前記接着剤層の以下の式より求められるバルク吸水率(バルク吸水率とは、硬化した接着剤層を23℃の純水に24時間浸漬した場合の吸水率である。)が10重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム。
バルク吸水率(%)=[{(浸漬後の接着剤層の重量)−(浸漬前の接着剤層の重量)}/(浸漬前の接着剤層の重量)]×100
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の積層フィルムを有することを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、及び前記積層フィルムを含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種画像表示装置においては、画像表示のために偏光フィルムが用いられている。例えば、液晶表示装置(LCD)は、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光フィルムを配置することが必要不可欠である。このような偏光フィルムとしては、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性材料からなる偏光子の片面又は両面に、保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤等により貼り合わせたものが用いられている。
【0003】
近年、液晶表示装置等の画像表示装置においては、軽量化、薄型化の要求が強く、画像表示装置において使用される偏光フィルム等の各種光学部材に対しても、薄型化、軽量化することが要望されており、薄型偏光フィルムが種々検討されている。
【0004】
しかしながら、薄型偏光フィルムは高温高湿下での耐久性が低く、反りやクラックが発生してしまうという問題があった。このような反りを抑制し、高温高湿下での耐久性に優れた薄型偏光板として、例えば、第1の接着層、特定の透湿度を有する樹脂フィルムから形成される透明保護層、特定のバルク吸水率を有する第2の接着層、厚み10μm以下の偏光膜がこの順に積層された偏光板が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5871408号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
偏光子は、薄くすればするほど、加湿環境下における水分の影響を受けやすく、当該水分により偏光子が劣化し、偏光子の偏光度が低下し、当該偏光子を用いた偏光フィルムを使用した画像表示装置において表示ムラが視認されやすくなる。このような表示ムラを抑制する方法としては、低透湿な保護フィルムを使用して、偏光子の水分による劣化を抑制することが考えられる。
【0007】
近年、解像度を上げる動きの中でパネルの高精細化が進んでいる。高精細化によりパネル透過率が落ちるため、モジュールトータルとして輝度アップの要望が加速しており、偏光板にも透過率の向上が求められている。加えてモジュール全体の薄型化、狭額縁化といったデザイン面に特化した要望もきており、信頼性後の低収縮化、偏光板全体の薄型化の要望も強くなっている状況である。前記要望に対して薄型偏光子による改善を図っている。しかしながら、厚み10μm以下の薄型偏光子において、白輝度向上のために単体透過率を43%以上とした場合、低透湿な保護フィルムを用いても、画像表示装置において加湿試験後に往々にして表示ムラが視認されてしまい、ムラ抑制の点で十分ではなかった。
【0008】
前記特許文献1では、単体透過率が43%以上のきわめて高透過の薄型偏光子を用いる場合に制限されておらず、そのような薄型偏光子を用いた場合にのみ生じ得る表示ムラの課題に関しては、何ら言及されていない。
【0009】
そこで、本発明においては、厚さ10μm以下の偏光子を用いた場合においても、白輝度を向上させることができ、かつ加湿試験後に表示ムラが発生することを抑制できる薄型の積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記積層フィルムを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、粘着剤層、偏光フィルム、及び輝度向上フィルムをこの順に含む積層フィルムであって、
前記偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する偏光子の少なくとも片面に保護フィルムを有する偏光フィルムであり、
前記偏光子の厚みが10μm以下であり、かつ、単体透過率が43.0%以上であり、
前記輝度向上フィルムの偏光度が90%以上あり、
前記保護フィルムの厚みが25μm以下であり、かつ、透湿度が200g/(m・day)以下であることを特徴とする積層フィルムに関する。
【0012】
前記偏光子のホウ酸含有量が、18〜24重量%であることが好ましい。
【0013】
前記粘着剤層のクリープ値が100〜150μmであり、
前記積層フィルムを、85℃で500時間放置した後の前記偏光子の吸収軸方向の加熱収縮率が、0.5%以下であることが好ましい。
【0014】
前記偏光子と保護フィルムが接着剤層を介して積層されており、
前記接着剤層のバルク吸水率が10重量%以下であることが好ましい。
【0015】
前記偏光フィルムが、偏光子の片面のみに保護フィルムを有する偏光フィルムであり、
前記積層フィルムが、粘着剤層、保護フィルム、偏光子、及び輝度向上フィルムをこの順に含むか、又は、粘着剤層、偏光子、保護フィルム、及び輝度向上フィルムをこの順に含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記積層フィルムを有することを特徴とする画像表示装置に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層フィルムは、厚さ10μm以下であり、かつ、単体透過率43%以上の偏光子を用いているため、白輝度を向上させることができる。さらに、偏光度90%以上の輝度向上フィルムを使用しているため、厚さ10μm以下であり、かつ、単体透過率43%以上の偏光子を用いた場合の問題点(加湿試験後の表示ムラの発生)を抑制することができる。具体的には、輝度向上フィルムはバックライトからの光を偏光に変換するため、下板偏光子には偏光が入射される。従って、加湿環境下により偏光子が劣化し、偏光度が低下したとしても、偏光が入射されるため、前記偏光子の偏光度劣化が視認性に及ぼす影響を小さくすることができるものである。
【0018】
本発明の積層フィルムを、液晶表示装置のバックライト側偏光板として使用することにより、白輝度が高く、かつ、光学信頼性が高い薄型の液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の積層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】(a)本発明の積層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。(b)本発明の積層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.積層フィルム
本発明の積層フィルムは、粘着剤層、偏光フィルム、及び輝度向上フィルムをこの順に含み、
前記偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する偏光子の少なくとも片面に保護フィルムを有する偏光フィルムであり、
前記偏光子の厚みが10μm以下であり、かつ、単体透過率が43.0%以上であり、
前記輝度向上フィルムの偏光度が90%以上あり、
前記保護フィルムの厚みが25μm以下であり、かつ、透湿度が200g/(m・day)以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明の積層フィルムの構成について、図1、2を参照しながら詳細に説明する。なお、図1、2における各構成の寸法は、その一例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
図1図2に示すように、本発明の積層フィルム1は、粘着剤層4、偏光フィルム2、輝度向上フィルム3をこの順に有している。前記偏光フィルム2は、図1に示すように、偏光子2aの両面に保護フィルム2b、2cを有する両保護偏光フィルムであってもよく、図2に示すように、偏光子2aの片面のみに保護フィルム2bを有する片保護偏光フィルムであってもよい。偏光フィルム2が片保護偏光フィルムの場合、図2(a)に示すように、粘着剤層4、偏光子2a、保護フィルム2b、輝度向上フィルム3をこの順に有していてもよく、図2(b)に示すように、粘着剤層4、保護フィルム2b、偏光子2a、輝度向上フィルム3をこの順に有していてもよい。
【0023】
本発明においては、前記偏光フィルム2は、両保護偏光フィルム、片保護偏光フィルムのいずれであってもよいが、薄膜化の観点からは片保護偏光フィルムであることが好ましい。さらに、偏光子の劣化抑制の観点からは、バックライト側に保護フィルム2bを有する態様(前記図2(a))が好ましい。また、本発明の積層フィルム1は、前記各層が接していてもよく、各層の間に他の層(例えば、粘着剤層や接着剤層、易接着剤層等の層)を有していてもよい。
【0024】
以下、それぞれの構成要素について説明する。
【0025】
(1)偏光フィルム
(1−1)偏光子
本発明で用いる偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、厚みが10μm以下であり、かつ、単体透過率が43.0%以上であるものであればよい。
【0026】
前記偏光子の単体透過率は、43.0%以上である。偏光子の単体透過率が43.0%以上であることで、白輝度を向上させることができ、液晶表示装置(LCD)の白表示状態の輝度上昇による消費電力の低下を図れるため好ましい。また、単体透過率の上限値は特に限定されるものではないが、偏光度低下抑制の観点から、44.5%以下であることが好ましい。
【0027】
偏光子の厚みは、10μm以下であればよいが、例えば、8μm以下であるのが好ましく、さらには7μm以下、さらには6μm以下であるのが好ましい。一方、偏光子の厚みは2μm以上、さらには3μm以上であるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0028】
偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を用いたものが使用される。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好適である。
【0029】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0030】
薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
等に記載されている薄型偏光子又はこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光子を挙げることができる。
【0031】
前記薄型偏光子としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されているこ
とにより延伸による破断等の不具合なく延伸することが可能となる。
【0032】
本発明で用いる高透過偏光子のホウ酸含有量は、特に限定されないが、例えば、偏光子の重量に対して18〜24重量%であることが好ましく、18〜23重量%であることがより好ましく、18重量%を超え23重量%以下であることがさらに好ましい。ホウ酸含有量が24重量%を超えると、偏光子のポリビニルアルコール分子鎖間の結合が強固になりすぎ、加湿試験における、偏光子の収縮、膨張等の際に発生する応力を解放することができず、偏光子にクラックが発生する場合がある。加えて偏光子の内部応力が溜まりやすいためパネル反りに対しても悪化傾向がある。また、前記ホウ酸含有量が18%より少ない場合、偏光子のポリビニルアルコール分子鎖間の結合が弱くなる傾向があり、加湿試験後の偏光度低下が大きくなったり、偏光子の耐久性が低下する場合がある。また、前記偏光子のホウ酸含有量は、偏光子製造時のホウ酸処理(例えば、不溶化処理、架橋処理)に用いるホウ酸水溶液のホウ酸濃度、水中延伸を経て偏光子を製造する場合における延伸浴(ホウ酸水溶液)のホウ酸濃度等により調整することができる。ホウ酸含有量の測定方法は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0033】
(1−2)保護フィルム
本発明で用いる保護フィルムを形成する材料としては、透明性を有し、かつ、透湿度が200g/(m・day)以下にすることができる材料であればよく、特に限定されない。
【0034】
本発明で用いる保護フィルム透湿度は、200g/(m・day)以下であり、150g/(m・day)以下が好ましく、130g/(m・day)以下がより好ましく、120g/(m・day)以下がさらに好ましい。また、透湿度の下限値は特に限定されるものではないが、理想的には、水蒸気を全く透過させないこと(すなわち、0g/(m・day))が好ましい。保護フィルムの透湿度が前記範囲であれば、偏光子が水分により劣化し、偏光度劣化することを抑制することができる。前記透湿度の測定方法は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0035】
前述する通り、保護フィルムの透湿度は、200g/(m・day)以下であればよいが、偏光子の単体透過率が43.9%を超える場合には、表示ムラが視認されるおそれがあるため、保護フィルムの透湿度が50g/(m・day)以下であることが好ましく、40g/(m・day)以下であることがより好ましく、30g/(m・day)以下であることがさらに好ましい。
【0036】
保護フィルムの厚みは、25μm以下であり、20μm以下であることが好ましい。また、保護フィルムの厚みの下限値は特に限定されないが、通常、1μm程度以上である。保護フィルムの厚みが25μm以下であることにより、偏光フィルムを薄膜化できるため好ましい。
【0037】
保護フィルムを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ラクトン変性アクリル系ポリマー等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は、前記ポリマーのブレンド物等も前記保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0038】
(1−3)接着剤層
前記偏光子と保護フィルムとは、通常、接着剤層を介して密着している。
【0039】
前記接着剤層のバルク吸水率が、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましく、0.05〜2重量%であることが特に好ましい。バルク吸水率が10重量%以下であれば、高温高湿下での耐久性に優れる偏光フィルムを得ることができる。より具体的には、高温高湿の環境下においた時の偏光子への水の浸入が抑制され、偏光子の透過率変化、偏光度低下を抑制することができる。一方、バルク吸水率を0.05重量%以上とすることにより、偏光子と接触した際に、偏光子に含まれる水分を適度に吸収し得る接着剤層を形成することができ、得られる偏光フィルムの外観不良(ハジキ、気泡等)を抑制することができる。なお、バルク吸水率は、JIS K 7209に記載の吸水率試験方法に準じて測定される。具体的には、硬化した接着剤層を23℃の純水に24時間浸漬した場合の吸水率であり、以下の式より求められる。
バルク吸水率(%)=[{(浸漬後の接着層の重量)−(浸漬前の接着層の重量)}/(浸漬前の接着層の重量)]×100
【0040】
前記バルク吸水率を満足することができる接着剤としては、ラジカル重合硬化型接着剤、カチオン重合硬化型接着剤等の硬化型接着剤を挙げることができる。
【0041】
(ラジカル重合硬化型接着剤)
前記ラジカル重合硬化型接着剤は、硬化性化合物としてのラジカル重合性化合物を含む。ラジカル重合性化合物は、活性エネルギー線により硬化する化合物であってもよく、熱により硬化する化合物であってもよい。活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。
【0042】
前記ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の炭素−炭素2重結合を有するラジカル重合性官能基を有する化合物が挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、多官能ラジカル重合性化合物が好ましく用いられる。ラジカル重合性化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、多官能ラジカル重合性化合物と単官能ラジカル重合性化合物を併用してもよい。
【0043】
前記重合性化合物として、logP値(オクタノール/水分配係数)が高い化合物を用いることが好ましく、ラジカル重合性化合物としても、logP値が高い化合物を選択することが好ましい。ここで、logP値とは、物質の親油性を表す指標であり、オクタノール/水の分配係数の対数値を意味する。logP値が高いということは、親油性であることを意味し、すなわち、吸水率が低いことを意味する。logP値は測定することも可能(JIS−Z−7260記載のフラスコ浸とう法)であるし、硬化型接着剤の構成成分(硬化性成分等)である各化合物の構造をもとに計算によって算出(ケンブリッジソフト社製のChemDraw Ultra)することもできる。
【0044】
ラジカル重合性化合物のlogP値は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が特に好ましい。このような範囲であれば、偏光子の水分による劣化を防止することができ、高温高湿下での耐久性に優れる偏光フィルムを得ることができる。
【0045】
前記多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートと多価アルコールとのエステル化物;9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン;エポキシ(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
前記多官能ラジカル重合性化合物の中でも、logP値の高い多官能ラジカル重合性化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリート(logP=3.05)、イソボルニル(メタ)アクリレート(logP=3.27)等の脂環(メタ)アクリレート;1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート(logP=3.68)、1,10−デカンジオールジアクリレート(logP=4.10)等の長鎖脂肪族(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物(logP=3.35)、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート(logP=3.92)等の多分岐(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(logP=5.46)、ビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物ジ(メタ)アクリレート(logP=5.15)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物ジ(メタ)アクリレート(logP=6.10)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド4モル付加物ジ(メタ)アクリレート(logP=6.43)、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(logP=7.48)、p−フェニルフェノール(メタ)アクリレート(logP=3.98)等の芳香環を含有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
多官能ラジカル重合性化合物と単官能ラジカル重合性化合物とを併用する場合、多官能ラジカル重合性の含有割合は、ラジカル重合性化合物の全量に対して、20〜97重量%が好ましく、50〜95重量%がより好ましく、75〜92重量%がさらに好ましく、80〜92重量%が特に好ましい。このような範囲であれば、高温高湿下での耐久性に優れる偏光フィルムを得ることができる。
【0048】
前記単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体を用いれば、接着性に優れる粘着剤層を高い生産性で形成することができる。(メタ)アクリルアミド誘導体の具体例としては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−N−プロパン(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド等のN−アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のN−メルカプトアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。また、(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体として、例えば、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等を用いてもよい。これらの中でも、N−ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0049】
また、前記単官能ラジカル重合性化合物として、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等の窒素含有複素環を有するビニル系モノマー等を用いてもよい。
【0050】
多官能ラジカル重合性化合物と単官能ラジカル重合性化合物とを併用する場合、単官能ラジカル重合性の含有割合は、ラジカル重合性化合物の全量に対して、3〜80重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましく、8〜25重量%がさらに好ましく、8〜20重量%が特に好ましい。このような範囲であれば、高温高湿下での耐久性に優れる偏光フィルムを得ることができる。
【0051】
前記ラジカル重合硬化型接着剤は、その他の添加剤をさらに含み得る。ラジカル重合硬化型接着剤が活性エネルギー線により硬化する硬化性化合物を含む場合、該接着剤は、例えば、光重合開始剤、光酸発生剤、シランカップリング剤等をさらに含み得る。また、ラジカル重合硬化型接着剤が熱により硬化する硬化性化合物を含む場合、該接着剤は、熱重合開始剤、シランカップリング剤等をさらに含み得る。また、その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0052】
(カチオン重合硬化型接着剤)
前記カチオン重合硬化型接着剤は、硬化性化合物としてのカチオン重合性化合物を含む。カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物が好ましく用いられる。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物(芳香族系エポキシ化合物)、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物(脂環式エポキシ化合物)等が挙げられる。
【0053】
前記カチオン重合硬化型接着剤は、光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始する。また、カチオン重合硬化型接着剤は、前記添加剤をさらに含み得る。
【0054】
前記接着剤層は、偏光子上又は保護フィルム上に前記硬化型接着剤を塗布し、次いで、偏光膜と前記樹脂フィルム(透明保護層)とを貼り合わせ、その後、該硬化型接着剤を硬化して形成することができる。
【0055】
前記偏光子、保護フィルムには、前記硬化型接着剤を塗布する前に、表面改質処理を行ってもよい。当該表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、ケン化処理による処理等が挙げられる。
【0056】
前記硬化型接着剤の塗布方法としては、該接着剤の粘度、所望とする接着層等の厚みに応じて、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト、リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等による塗布が挙げられる。また、デイッピング方式による塗布を採用してもよい。
【0057】
前記硬化型接着剤の硬化方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。硬化型接着剤が活性エネルギー線により硬化する硬化性化合物を含む場合、偏光膜側又は透明保護層側から活性エネルギー線を照射して、該接着剤を硬化させることができる。偏光膜劣化を防止する観点から、透明保護層側から活性エネルギー線を照射することが好ましい。活性エネルギー線の波長、照射量等の条件は、用いる硬化性化合物の種類等に応じて、任意の適切な条件に設定され得る。硬化型接着剤が熱により硬化する硬化性化合物を含む場合、該接着剤は加熱により硬化させることができる。加熱の条件は、用いる硬化性化合物の種類等に応じて、任意の適切な条件に設定され得る。例えば、60〜200℃の温度で、30秒〜5分間加熱して、硬化させることができる。
【0058】
また、接着剤として、通常用いられている水系接着剤を用いることもできる。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0059】
前記接着剤層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜3μm程度であることが好ましく、0.3〜2μm程度であることがより好ましい。接着剤層の厚みが前記範囲にあることで、接着性、外観に優れた偏光板を得ることができるため好ましい。
【0060】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0061】
(2)粘着剤層
本発明で使用する粘着剤層は、特に限定されるものではなく、公知の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を使用することができる。
【0062】
前記粘着剤層のクリープ値は、100〜150μmであることが好ましく、120〜140μmであることがより好ましい。クリープ値が前記範囲にあることで、加熱験後に偏光フィルムの収縮を抑制することができ、応力解放による反り、クラックの抑制できるため好ましい。ここで、クリープ値とは、粘着剤層を、接着面積10mm×10mmで基板に固着し、500gの荷重をかけるクリープ試験から得られる1時間後の粘着剤層のズレ量(μm)のことをいう。
【0063】
粘着剤層としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。このような粘着剤層としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性等に優れているため、好ましい。
【0064】
前記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、炭素数4〜24のアルキル基をエステル基の末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合することにより得られたものを挙げることができる。なお、アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0065】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数4〜24のアルキル基を有すものを例示でき、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数4〜9のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが、粘着特性のバランスがとりやすい点で好ましい。これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、単官能性モノマー成分として、前記アルキル(メタ)アクリレート以外の共重合モノマーを含有することができる。このような共重合モノマーとしては、例えば、環状窒素含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、環状エーテル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0067】
また、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、前記単官能性モノマーの他に、粘着剤の凝集力を調整するために、必要に応じて多官能性モノマーを含有することができる。前記多官能性モノマーは、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を少なくとも2つ有するモノマーであり、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、紫外線重合等の放射線重合、塊状重合、乳化重合等の各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
【0069】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は特に限定されず、本分野において通常用いられる公知のものを適宜選択して使用することができる。また、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0070】
本発明で用いる(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は40万〜400万であるのが好ましい。重量平均分子量を40万より大きくすることで、粘着剤層の耐久性を満足させたり、粘着剤層の凝集力が小さくなって糊残りが生じるのを抑えることができる。一方、重量平均分子量が400万よりも大きくなると貼り合せ性が低下する傾向がある。さらに、粘着剤が溶液系において、粘度が高くなりすぎ、塗工が困難になる場合がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。なお、放射線重合で得られた(メタ)アクリル系ポリマーについては、分子量測定は困難である。
【0071】
本発明で用いる粘着剤組成物には、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、過酸化物等の架橋剤を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく用いられる。
【0072】
前記架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記架橋剤を0.01〜10重量部の範囲で含有することが好ましい。
【0073】
本発明において用いる粘着剤組成物には、接着力を向上させるために、(メタ)アクリル系オリゴマーを含有させることができる。さらに、本発明において用いる粘着剤組成物には、粘着剤層のガラス等の親水性被着体に適用する場合における界面での耐水性を上げるためにシランカップリング剤を含有することができる。
【0074】
さらに本発明で用いる粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、例えば、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物、着色剤、顔料等の粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物等を使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0075】
粘着剤層の形成方法としては、公知の方法により行うことができるものであり、特に限定されないが、例えば、粘着剤層を形成するフィルム(偏光子、保護フィルム)上に直接粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥等により溶媒等を除去することにより、粘着剤層を形成することができる。また、支持体等に形成した粘着剤層を、前記フィルム(偏光子、保護フィルム)上に転写することもできる。
【0076】
粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0077】
前記加熱乾燥温度は、30℃〜200℃程度が好ましく、40℃〜180℃程度がより好ましく、80℃〜150℃程度がさらに好ましい。加熱温度を前記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。前記乾燥時間は、5秒〜20分程度が好ましく、30秒〜10分程度がより好ましく、1分〜8分がさらに好ましい。
【0078】
前記支持体としては、例えば、剥離処理したシート(セパレーター)を用いることができる。剥離処理したシートとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。
【0079】
セパレーターの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等を挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0080】
前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0081】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型、及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜行うことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0082】
なお、前記積層フィルムの作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま積層フィルムのセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0083】
また、前記積層フィルムにおいて、粘着剤層の形成にあたっては、粘着剤層を形成するフィルム(偏光子、保護フィルム)の表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理等の各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0084】
粘着剤層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、10〜30μmであることが好ましく、15〜25μmであることが好ましい。
【0085】
(3)輝度向上フィルム
本発明で使用する輝度向上フィルムは、偏光度が90%以上であり、95%以上であることが好ましい。本発明においては、偏光度が90%以上の輝度向上フィルムを用いるため、ムラ視認性を軽減することができる。輝度向上フィルムはバックライトからの光を偏光に変換するため、偏光フィルムには偏光が入射される。すなわち、高温高湿環境により偏光フィルムの偏光度が劣化しても、高い偏光度を有する輝度向上フィルムを通過して偏光が入射されるため、偏光フィルムの偏光度劣化の影響が小さく、表示ムラの発生を抑制できるものである。
【0086】
前記輝度向上フィルムとしては、反射型偏光板を挙げることができる。前記反射型偏光板は、直線偏光分離型の偏光板である。その代表例としては、グリッド型偏光板、屈折率の異なる2種以上の材料の多層薄膜積層偏光板、屈折率の異なる蒸着多層薄膜、屈折率の異なる2種以上の材料の複屈折層多層薄膜積層体、屈折率差を有する2種以上の樹脂を用いた2種以上の樹脂積層体を延伸したもの、直線偏光を直交する軸方向で反射/透過することで分離する偏光板(直線偏光分離型反射偏光板)が挙げられる。これらの中でも直線偏光分離型反射偏光板が好適に用いられる。このような反射型偏光板としては、例えばスリーエム製の商品名「APF−V3」(偏光度:95%)、「APF−V4」(偏光度:92%)として市販されているものを用いることもできる。
【0087】
前記輝度向上フィルムは、偏光子又は保護フィルムに、接着剤層又は粘着剤層を介して積層することができる。接着剤層又は粘着剤層は、特に限定されるものではなく、公知のいかなるものも使用することができる。また、本明細書に記載の接着剤層又は粘着剤層を使用することができる。
【0088】
本発明の積層フィルムは、画像表示装置において好適に用いることができ、特に、液晶表示装置のバックライト側偏光フィルムとして好適に用いることができる。その場合、前記粘着剤層を介して、液晶セルに貼り付けることができる。
【0089】
本発明の積層フィルムを、85℃環境下で500時間放置した後の前記偏光子の吸収軸方向の加熱収縮率は、0.5%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがより好ましい。本発明の積層フィルムは前記加熱収縮率を有することで、パネルの反りやクラック発生を抑制することができパネル狭額縁対応も可能になるため好ましい。
【0090】
2.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、前記積層フィルムを有することを特徴とする。本発明の積層フィルムは、液晶表示セルのバックライト側偏光フィルムとして好適に用いることができる。
【0091】
本発明の画像表示装置は、本発明の積層フィルムを含むものであればよく、その他の構成については、従来の画像表示装置と同様のものを挙げることができる。
【0092】
本発明の画像表示装置は、前記積層フィルムを含むため、高い信頼性を有するものである。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部及び%はいずれも重量基準である。
【0094】
製造例1(厚さ5μmの偏光子(1)の製造)
非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体をヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬して着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65℃のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された5μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された高機能偏光膜を構成する、厚さ5μmのPVA層(偏光子)(1)を含む光学フィルム積層体を生成した。得られた光学フィルム積層体のPVA層の透過率は43.3%であり、ホウ酸含有量は23重量%であった。
【0095】
製造例2(厚さ5μmの偏光子(2)の製造)
ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度を0.2%に変更した以外は、製造例1と同様にして、厚さ5μmのPVA層(偏光子)(2)を含む光学フィルム積層体を生成した。得られた光学フィルム積層体のPVA層の透過率は44.0%であり、ホウ酸含有量は23重量%であった。
【0096】
製造例3(厚さ5μmの偏光子(3)の製造)
ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度を0.23%に変更した以外は、製造例1と同様にして、厚さ5μmのPVA層(偏光子)(3)を含む光学フィルム積層体を生成した。得られた光学フィルム積層体のPVA層の透過率は43.7%であり、ホウ酸含有量は23重量%であった。
【0097】
製造例4(厚さ5μmの偏光子(4)の製造)
ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度を0.23%に変更した以外は、製造例1と同様にして、厚さ5μmのPVA層(偏光子)(4)を含む光学フィルム積層体を生成した。得られた光学フィルム積層体のPVA層の透過率は42.8%であり、ホウ酸含有量は23重量%であった。
【0098】
製造例5(厚さ7μmの偏光子(5)の製造)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み20μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥を行い、厚さ7μmの偏光子(5)を得た。得られた偏光子の透過率は43.3%であり、ホウ酸含有量は23重量%であった。
【0099】
製造例6(厚さ12μmの偏光子(6)の製造)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み30μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥を行い、厚さ12μmの偏光子(6)を得た。得られた偏光子の透過率は43.5%であり、ホウ酸含有量は23重量%であった。
【0100】
製造例7(硬化型接着剤の作製)
ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、logP=−0.56、ホモポリマーのTg=123℃、興人社製)10重量部、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート(FA−THFM、logP=1.13、ホモポリマーのTg=45℃、日立化成(株)製)10重量部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名:ライトアクリレートDCP−A、logP=3.05、ホモポリマーのTg=134℃、共栄社化学(株)製)80重量部、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名:IRGACURE907、logP=2.09、BASF社製)3重量部、ジエチルチオキサントン(商品名:KAYACURE DETX−S、logP=5.12、日本化薬(株)製)3重量部を混合して50℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線により硬化し得る硬化型接着剤を得た。
【0101】
製造例8(アクリル系保護フィルムの作製)
グルタルイミド環単位を有するメタクリル樹脂ペレットを、100.5kPa、100℃で12時間乾燥させ、単軸の押出機にてダイス温度270℃でTダイから押出してフィルム状に成形した。さらに当該フィルムを、その搬送方向に、樹脂のTgより10℃高い雰囲気下で延伸し、次いでフィルム搬送方向と直交する方向に樹脂のTgより7℃高い雰囲気下で延伸して、アクリル系樹脂から構成される保護フィルムを得た。得られたフィルムの透湿度は、150g/(m・day)であり、厚みは20μmであった。
【0102】
実施例1
製造例1で得られた光学フィルム積層体の偏光膜の表面に、製造例7で製造した硬化型粘着剤を塗布し、コロナ処理した厚さ20μmのアクリルフィルムを貼合せた。その後、アクリルフィルム側から、IRヒーターを用いて50℃に加温し、可視光線をアクリルフィルム側に照射して前記硬化型接着剤を硬化させた後、70℃で3分間熱風乾燥して、非晶性PET基材/偏光子/接着剤層(厚み:1μm)/アクリルフィルムからなる積層体を得た。得られた積層体から、非晶性PET基材を剥離して、アクリルフィルム面に、厚さ5μmのアクリル系接着剤層を介して、輝度向上フィルム(商品名:APF−V4、偏光度:92%、3M製)を貼り合わせた。得られた積層体の偏光子面に、厚さ20μmの粘着剤層(商品名:No.58、日東電工(株)製)を貼り合せ、積層フィルムを得た。なお、この積層フィルムの構成(粘着剤層/偏光子/保護フィルム/輝度向上フィルム)を構成Aという。
【0103】
実施例2
製造例1で得られた光学フィルム積層体の偏光膜の表面に、製造例7で製造した硬化型粘着剤を塗布し、コロナ処理した厚さ20μmのアクリルフィルムを貼合せた。その後、アクリルフィルム側から、IRヒーターを用いて50℃に加温し、可視光線をアクリルフィルム側に照射して前記硬化型接着剤を硬化させた後、70℃で3分間熱風乾燥して、非晶性PET基材/偏光子/接着剤層(厚み:1μm)/アクリルフィルムからなる積層体を得た。得られた積層体の偏光子面に、厚さ5μmのアクリル系接着剤層を介して、輝度向上フィルム(商品名:APF−V4、偏光度:92%、3M製)を貼り合わせた。得られた積層体から、非晶性PET基材を剥離して、アクリルフィルム面に、厚さ20μmの粘着剤層(商品名:No.58、日東電工(株)製)を貼り合せ、積層フィルムを得た。なお、この積層フィルムの構成(粘着剤層/保護フィルム/偏光子/輝度向上フィルム)を構成Bという。
【0104】
実施例3
製造例5で得られた偏光子(5)の片面に、製造例7で製造した硬化型粘着剤を塗布し、コロナ処理した厚さ20μmのアクリルフィルムを貼合せた。その後、アクリルフィルム側から、IRヒーターを用いて50℃に加温し、可視光線をアクリルフィルム側に照射して前記硬化型接着剤を硬化させた後、70℃で3分間熱風乾燥して、偏光子/接着剤層(厚み:1μm)/アクリルフィルムからなる積層体を得た。得られた積層体のアクリルフィルム面に、厚さ5μmのアクリル系接着剤層を介して、輝度向上フィルム(商品名:APF−V4、偏光度:92%、3M製)を貼り合わせた。得られた積層体の偏光子面に、厚さ20μmの粘着剤層(商品名:No.58、日東電工(株)製)を貼り合せ、積層フィルムを得た。
【0105】
実施例4
製造例2で得られた光学フィルム積層体を用い、コロナ処理した厚さ13μmのCOPフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0106】
実施例5
製造例3で得られた光学フィルム積層体を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0107】
実施例6
輝度向上フィルムにAPF−V3を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0108】
比較例1〜4
用いた偏光子、保護フィルム、粘着剤層、輝度向上フィルムを表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを形成した。
【0109】
実施例及び比較例で得られた積層フィルムについて以下の測定を行った。
【0110】
<偏光子の厚みの測定>
実施例及び比較例で使用したPVA層(偏光子)の厚みは、デジタルマイクロメーター(KC-351C、アンリツ社製)を用いて測定した。
【0111】
<偏光子の単体透過率>
実施例及び比較例で使用したPVA層(偏光子)の単体透過率Tは、紫外可視分光光度計(V7100、日本分光(株)製)を用いて測定した。これらの透過率は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
【0112】
<偏光子のホウ酸含有量>
実施例及び比較例で使用したPVA層(偏光子)を加熱乾燥(120℃、2時間)し、その後、粉砕して、重量1gの評価用サンプルを得た。95℃の水500mLに、該評価用サンプル1gをすべて溶解させた。得られた水溶液に、マンニトール10gと、ブロモチモールブルー溶液(BTB溶液)2mLを加えて、サンプル溶液を調製した。このサンプル溶液に、中和点を迎えるまで、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムを滴下し、その滴下量から、下記式に基づき、ホウ酸含有量(重量%)を算出した。
【数1】
【0113】
<保護フィルムの透湿度>
保護フィルムの透湿度の測定は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定した。直径60mmに切断したサンプルを約15gの塩化カルシウムを入れた透湿カップにセットし、40℃、90%の恒温機に入れ、24時間放置した前後の塩化カルシウムの重量増加を測定することで透湿度(g/m・day)を求めた。
【0114】
<クリープ試験>
実施例及び比較例で使用した粘着剤を用いて、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。得られた厚さ25μmの粘着剤層を10mm巾×30mmに切断したものをサンプルとした。このサンプルの上部の10mm×10mmを、ベーク板に貼着し、50℃、50atmで15分間のオートクレーブ処理をした後、室温(23℃)で1時間放置した。その後、サンプルに、500gの荷重を負荷(垂下方向への引張り剪断応力の負荷)し、1時間後のサンプルのズレ量(μm)を測定した。
【0115】
<接着剤層のバルク吸水率>
実施例及び比較例で使用した硬化型接着剤を、実施例と同様の条件で硬化させて、厚み100μmの評価用硬化物(重量:Mg)を作製した。該評価用硬化物を、23℃の純水に24時間浸漬させ、その後、取り出して表面の水を拭き取った後、浸漬後の該評価用硬化物の重量(Mg)を測定した。浸漬前の評価用硬化物の重量Mgと、浸漬後の評価用硬化物の重量Mから、以下の式によりバルク吸水率を算出した。
【数2】
【0116】
<輝度向上フィルムの偏光度>
輝度向上フィルムの単体透過率T、平行透過率Tp、直交透過率Tcを紫外可視分光光度計(日本分光(株)製のV7100)を用いて測定した。これらの透過率は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。輝度向上フィルムの偏光度Pを上記の透過率を用い、次式により求めた。
偏光度P(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0117】
<加熱収縮率>
実施例、比較例で得られた積層フィルムを、偏光子の延伸方向が0°になるように、100mm×100mmのサイズにカットし、厚み1mmのガラス板上に、粘着剤層を介して貼り合わせて測定サンプルとし、偏光フィルムの四隅に印をつけた。(株)ミツトヨ製の画像測定機(クイックビジョン)により、偏光フィルムの四隅の印間の長さLを測定した。測定したサンプルを、85℃の加熱オーブン中に500時間投入したのち、再度、偏光フィルムの四隅の印間の長さL500を測定した。寸法変化率は次式により算出した。
寸法変化率(%)={(L500−L)/L}×100
【0118】
<糊打痕>
実施例及び比較例で得られた積層フィルムの外観検査において、糊打痕の発生を目視で確認した。1mあたりの糊打痕の発生数をカウントした。
【0119】
<ムラ>
厚さ0.3mmの無アルカリガラスの一方に、実施例及び比較例で得られた積層フィルム、他方に、厚さ12μmのPVAフィルムを用いた偏光板(商品名:GRT1794KUHC3、透過率:43.0%、日東電工(株)製)を、それぞれの偏光子の吸収軸が直交になるように貼り合わせて、60℃、R.H.90%の環境下に500時間投入した。取り出した後、暗室でバックライト輝度(7000cd/cm又は10000cd/cm)の上での面内スジ状ムラを目視にて確認した。
◎:10000cd/cmのバックライトを用いた場合であってもスジ状ムラなし。
〇:7000cd/cmのバックライトを用いた場合にスジ状ムラなし。
△:7000cd/cmのバックライトを用いた場合にスジ状ムラ一部にあり。
×:7000cd/cmのバックライトを用いた場合にスジ状ムラ全面にあり。
【0120】
<クラック>
得られた積層フィルムを100mm×100mmのサイズに切り出しサンプルを作製した。得られたサンプルをガラス板に貼り合わせ、ヒートサイクル試験(−40℃〜85℃/30分)を200サイクル行い、クラック発生の有無を目視で確認した。
〇:クラック発生なし。
×:クラック発生あり。
【0121】
<白輝度>
iPad(登録商標)Air(Apple社製)パネルのTFT側の偏光板を剥がして、実施例、比較例の偏光板を貼り合わせた後に、白表示状態時の輝度をSR−UL1(TOPCON CORPORATION)を用いて暗室で測定を行った。
【0122】
<反り>
厚さ0.3mmの無アルカリガラスの一方に、実施例及び比較例で得られた積層フィルム、他方に、厚さ12μmのPVAフィルムを用いた偏光板(商品名:GRT1794KUHC3、日東電工(株)製)を、それぞれの偏光子の吸収軸が直交になるように貼り合わせて、85℃の環境下に500時間投入した。取り出した後、QVA606−PRO−AE10((株)ミツトヨ製)を用いて反り量を測定した。
〇:反りが発生しないか、又は、問題とならない程度の反りが発生した。
×:顕著な反りが発生した。
【0123】
【表1】
【0124】
表1中、各略記は以下の通りである。
(積層フィルムの構成)
構成A:粘着剤層/偏光子/保護フィルム/輝度向上フィルム
構成B:粘着剤層/保護フィルム/偏光子/輝度向上フィルム
(偏光子)
偏光子(1)〜(6):製造例1〜6で得られた偏光子(1)〜(6)
(輝度向上フィルム)
APF−V4:輝度向上フィルムの商品名、偏光度:92%、3M製
APF−V3:輝度向上フィルムの商品名、偏光度:95%、3M製
DBEF−QV2:輝度向上フィルムの商品名、偏光度:88%、3M製
AF−film:輝度向上フィルムの商品名、偏光度:62%、Extend製
(保護フィルム)
アクリル系:製造例8で得られたアクリル系保護フィルム、透湿度:150g/(m・day)、厚み:20μm
COP:シクロオレフィン系保護フィルム、透湿度:30g/(m・day)、厚み:13μm、商品名:ZF14−013、日本ゼオン製
TAC系保護フィルム、透湿度:800g/(m・day)、厚み:25 μm、商品名:TJ25UL、富士フィルム製
(粘着剤層)
No.58:商品名、クリープ値:120μm、日東電工(株)製
【符号の説明】
【0125】
1 積層フィルム
2 偏光フィルム
2a 偏光子
2b 保護フィルム
2c 保護フィルム
3 輝度向上フィルム
4 粘着剤層
図1
図2