(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する。
【0025】
<1.錠剤印刷装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る錠剤印刷装置1の構成を示した図である。この錠剤印刷装置1は、医薬品である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。
図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、ホッパー10、フィーダ部20、搬送ドラム30、第1印刷部40、第2印刷部50、搬出コンベア60、および制御部70を有する。
【0026】
ホッパー10は、多数の錠剤9を一括して装置内に受け入れるための投入部である。ホッパー10は、錠剤印刷装置1の筐体100の最上部に配置されている。ホッパー10は、筐体100の上面に位置する開口部11と、下方へ向かうにつれて徐々に収束する漏斗状の傾斜面12とを有する。開口部11へ投入された複数の錠剤9は、傾斜面12に沿って直進フィーダ21へ流れ込む。
【0027】
フィーダ部20は、ホッパー10へ投入された複数の錠剤9を、搬送ドラム30まで搬送する機構である。本実施形態のフィーダ部20は、直進フィーダ21、回転フィーダ22、および傾斜フィーダ23を有する。直進フィーダ21は、平板状の振動トラフ211を有する。ホッパー10から振動トラフ211に供給された複数の錠剤9は、振動トラフ211の振動によって、回転フィーダ22側へ搬送される。回転フィーダ22は、円板状の回転台221を有する。振動トラフ211から回転台221の上面に落下した複数の錠剤9は、回転台221の回転による遠心力で、回転台221の外周部付近へ集まる。
【0028】
傾斜フィーダ23は、回転台221の外周部から搬送ドラム30まで、斜め下向きに延びる板状のスロープ231を有する。
図2は、搬送ドラム30付近の斜視図である。
図2に示すように、スロープ231の上面には、複数(
図2の例では8本)の搬送溝232が設けられている。回転台221の外周部へ搬送された複数の錠剤9は、それぞれ、複数の搬送溝232のいずれか1つに供給され、搬送溝232に沿って斜め下向きに流れ落ちる。このように、複数の錠剤9は、複数の搬送溝232に分散供給されることによって、複数の搬送列に整列される。そして、各搬送列の複数の錠剤9が、先頭のものから順に搬送ドラム30へ供給される。
【0029】
搬送ドラム30は、傾斜フィーダ23から第1搬送コンベア41へ、複数の錠剤9を受け渡す機構である。搬送ドラム30は、略円筒形状の外周面を有する。搬送ドラム30は、図示を省略したモータから得られる動力により、幅方向に延びる回転軸を中心として、
図1および
図2中の矢印の方向へ回転する。
図2に示すように、搬送ドラム30の外周面には、複数の吸着孔31が設けられている。複数の吸着孔31は、上述した複数の搬送列の各々に対応する幅方向位置において、搬送ドラム30の外周面に、周方向に沿って配列されている。
【0030】
搬送ドラム30の内部には、図示を省略した吸引機構が設けられている。吸引機構を動作させると、複数の吸着孔31のそれぞれに、大気圧よりも低い負圧が生じる。吸着孔31は、当該負圧によって、傾斜フィーダ23から供給される錠剤9を、1つずつ吸着保持する。また、搬送ドラム30の内部には、図示を省略したブロー機構が設けられている。ブロー機構は、搬送ドラム30の内側から後述する第1搬送コンベア41側へ向けて、局所的に加圧された気体を吹き付ける。これにより、第1搬送コンベア41に対向しない吸着孔31においては、錠剤9の吸着状態を維持しつつ、第1搬送コンベア41に対向する吸着孔31のみにおいて、錠剤9の吸着が解除される。搬送ドラム30は、このように、傾斜フィーダ23から供給される複数の錠剤9を吸着保持しつつ回転し、それらの錠剤9を、第1搬送コンベア41へ受け渡すことができる。
【0031】
搬送ドラム30の外周部には、第1割線検出カメラ32が備えられている。第1割線検出カメラ32は、印刷前の錠剤9の状態を撮影する撮像部である。第1割線検出カメラ32は、搬送ドラム30により搬送される錠剤9を撮影し、得られた画像を制御部70へ送信する。制御部70は、受信した画像に基づいて、各吸着孔31における錠剤9の有無や、吸着孔31に保持された錠剤9の表裏および回転角度を検出する。
【0032】
第1印刷部40は、錠剤9の一方の面に画像を印刷するための処理部である。
図1に示すように、第1印刷部40は、第1搬送コンベア41、第2割線検出カメラ42、第1ヘッドユニット43、第1検査カメラ44および第1定着部45を有する。
【0033】
第1搬送コンベア41は、一対のプーリ411と、一対のプーリ411の間に掛け渡された環状の搬送ベルト412とを有する搬送機構である。搬送ベルト412は、その一部分が、搬送ドラム30の外周面に近接して対向するように配置される。一対のプーリ411の一方は、図示を省略したモータから得られる動力で回転する。これにより、搬送ベルト412が、
図1および
図2中の矢印の方向へ回動する。このとき、一対のプーリ411の他方は、搬送ベルト412の回動に伴い従動回転する。
【0034】
図2に示すように、搬送ベルト412には、複数の吸着孔413が設けられている。複数の吸着孔413は、複数の搬送列の各々に対応する幅方向位置において、搬送方向に配列されている。すなわち、複数の吸着孔413は、幅方向および搬送方向に、それぞれ間隔をあけて配列されている。搬送ベルト412における複数の吸着孔413の幅方向の間隔は、搬送ドラム30における複数の吸着孔31の幅方向の間隔と等しい。
【0035】
搬送ベルト412には、図示を省略した吸引機構が設けられている。吸引機構を動作させると、複数の吸着孔413のそれぞれに、大気圧よりも低い負圧が生じる。吸着孔413は、当該負圧によって、搬送ドラム30から渡される錠剤9を、1つずつ吸着保持する。これにより、第1搬送コンベア41は、複数の錠剤9を、幅方向に間隔をあけた複数の搬送列に整列された状態で保持しつつ、搬送する。また、搬送ベルト412には、図示を省略したブロー機構が設けられている。ブロー機構を動作させると、後述する第2搬送コンベア51に対向する吸着孔413の気圧が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔413における錠剤9の吸着が解除され、第1搬送コンベア41から第2搬送コンベア51へ、錠剤9が受け渡される。
【0036】
第2割線検出カメラ42は、第1ヘッドユニット43よりも搬送方向の上流側において、印刷前の錠剤9の状態を撮影する撮像部である。第2割線検出カメラ42は、第1搬送コンベア41により搬送される錠剤9を撮影し、得られた画像を制御部70へ送信する。制御部70は、受信した画像に基づいて、各吸着孔413における錠剤9の有無や、吸着孔413に保持された錠剤9の表裏および回転角度を検出する。
【0037】
第1ヘッドユニット43は、第1搬送コンベア41により搬送される錠剤9の表面に向けてインク滴を吐出する、インクジェット方式のヘッドユニットである。第1ヘッドユニット43は、搬送方向に沿って配列された4つのヘッド431を有する。4つのヘッド431は、錠剤9の表面に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が記録される。なお、各ヘッド431から吐出されるインクには、食品衛生法で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0038】
図3は、1つのヘッド431の下面図である。
図3には、搬送ベルト412と、搬送ベルト412に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。
図3中に拡大して示したように、ヘッド431の下面には、インク滴を吐出可能な複数のノズル430が設けられている。本実施形態では、ヘッド431の下面に、複数のノズル430が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル430は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル430を二次元的に配置すれば、各ノズル430の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル430は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0039】
ノズル430からのインク滴の吐出方式には、例えば、圧電素子であるピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル430内のインクを加圧して吐出させる、いわゆるピエゾ方式が用いられる。本実施形態のヘッド431は、ピエゾ素子に加える電圧の大きさによって、ノズル430から吐出されるインク滴のサイズを切り替えることができる。具体的には、最も微細なインク滴である「サイズ小」、最も大きいインク滴である「サイズ大」、および中間の大きさのインク滴である「サイズ中」の3種類のインク滴のうち、任意のインク滴を吐出することができる。ただし、吐出可能なインク滴のサイズは、1〜2種類であってもよく、4種類以上であってもよい。また、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル430内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0040】
図1に戻る。第1検査カメラ44は、第1ヘッドユニット43による印刷結果を確認するための撮像部である。第1検査カメラ44は、第1ヘッドユニット43よりも搬送方向の下流側において、第1搬送コンベア41により搬送される複数の錠剤9の表面を撮影し、得られた画像データを制御部70へ送信する。制御部70は、受信した画像データに基づいて、各錠剤9の表面に印刷された画像に、位置ずれやドット欠けなどの印刷欠陥が無いかどうかを判断する。
【0041】
第1定着部45は、第1ヘッドユニット43から吐出されたインクを、錠剤9に定着させる機構である。本実施形態では、第1検査カメラ44よりも搬送方向の下流側に、第1定着部45が配置されている。ただし、第1ヘッドユニット43と第1検査カメラ44との間に、第1定着部45が配置されていてもよい。第1定着部45には、例えば、第1搬送コンベア41により搬送される錠剤9へ向けて、熱風を吹き付ける熱風乾燥式のヒータが用いられる。錠剤9の表面に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面に定着する。
【0042】
第2印刷部50は、第1印刷部40による印刷後に、錠剤9の他方の面に画像を印刷するための処理部である。
図1に示すように、第2印刷部50は、第2搬送コンベア51、第3割線検出カメラ52、第2ヘッドユニット53、第2検査カメラ54および第2定着部55を有する。第2搬送コンベア51は、第1搬送コンベア41から受け渡された複数の錠剤9を保持しつつ搬送する。第3割線検出カメラ52は、第2ヘッドユニット53よりも搬送方向の上流側において、第2搬送コンベア51により搬送される複数の錠剤9を撮影する。第2ヘッドユニット53は、第2搬送コンベア51により搬送される錠剤9の表面に向けてインクを吐出する。第2検査カメラ54は、第2ヘッドユニット53よりも搬送方向の下流側において、第2搬送コンベア51により搬送される複数の錠剤9の表面を撮影する。第2定着部55は、第2ヘッドユニット53の各ヘッド531から吐出されたインクを、錠剤9に定着させる。
【0043】
第2搬送コンベア51、第3割線検出カメラ52、第2ヘッドユニット53、第2検査カメラ54、および第2定着部55の各々の詳細については、上述した第1搬送コンベア41、第2割線検出カメラ42、第1ヘッドユニット43、第1検査カメラ44、および第1定着部45と同等であるため、重複説明を省略する。
【0044】
搬出コンベア60は、印刷後の複数の錠剤9を、錠剤印刷装置1の筐体100の外部へ搬出する機構である。搬出コンベア60の上流側の端部は、第2搬送コンベア51の下方に位置する。搬出コンベア60の下流側の端部は、筐体100の外部に位置する。搬出コンベア60には、例えば、ベルト搬送機構が用いられる。第2印刷部50における印刷処理の後、複数の錠剤9は、吸着孔の吸引が解除されることによって、第2搬送コンベア51から搬出コンベア60の上面に落下する。そして、搬出コンベア60によって、複数の錠剤9が、筐体100の外部へ搬出される。
【0045】
制御部70は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。
図4は、制御部70と、錠剤印刷装置1内の各部との接続を示したブロック図である。
図1中に概念的に示したように、制御部70は、CPU等の演算処理部701、RAM等のメモリ702、および、ハードディスクドライブ等の記憶部703を有するコンピュータにより構成される。記憶部703内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムPが、インストールされている。
【0046】
また、
図4に示すように、制御部70は、上述した直進フィーダ21、回転フィーダ22、搬送ドラム30(モータ、吸引機構、およびブロー機構を含む)、第1割線検出カメラ32、第1搬送コンベア41(モータ、吸引機構、およびブロー機構を含む)、第2割線検出カメラ42、第1ヘッドユニット43(各ヘッド431の複数のノズル430を含む)、第1検査カメラ44、第1定着部45、第2搬送コンベア51、第3割線検出カメラ52、第2ヘッドユニット53(各ヘッド531の複数のノズルを含む)、第2検査カメラ54、第2定着部55、および搬出コンベア60と、それぞれ通信可能に接続されている。また、制御部70は、データ処理装置80と通信可能に接続されている。
【0047】
制御部70は、記憶部703に記憶されたコンピュータプログラムPやデータDをメモリ702に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、演算処理部701が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9に対する印刷処理が進行する。
【0048】
データ処理装置80は、錠剤印刷装置1へ入力する印刷データを処理するための手段である。
図1中に概念的に示したように、データ処理装置80は、CPU等の演算処理部801、RAM等のメモリ802、および、ハードディスクドライブ等の記憶部803を有するコンピュータにより構成される。記憶部803内には、データ処理を実行するためのコンピュータプログラムPdが、インストールされている。
【0049】
データ処理装置80は、記憶部803に記憶されたコンピュータプログラムPdやデータDdをメモリ802に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPdに基づいて、演算処理部801が演算処理を行うことにより、後述するデータ処理を行う。これにより、印刷データを作成するためのデータ処理が進行する。
【0050】
<2.データ処理装置および制御部の構成について>
次に、データ処理装置80および錠剤印刷装置1の制御部70の詳細な構成について説明する。この錠剤印刷装置1の制御部70には、データ処理装置80により作成された印刷データD5が入力される。錠剤印刷装置1は、印刷データD5に基づいて、錠剤9への回転角度に応じた印刷処理を行う。
図5は、錠剤印刷装置1およびデータ処理装置80の回転角度に応じた印刷処理に関わる構成を、概念的に示したブロック図である。
【0051】
図5に示すように、本実施形態のデータ処理装置80は、ベクトル回転処理部81、画像変換処理部82および間引き処理部83を有する。ベクトル回転処理部81、画像変換処理部82および間引き処理部83の各機能は、上述したコンピュータプログラムPdに従って、データ処理装置80としてのコンピュータが動作することによって実現される。
【0052】
ベクトル回転処理部81には、外部から、印刷すべき画像を表すベクトルデータである入力データD1が入力される。ベクトル回転処理部81は、入力データD1を所定の複数の回転角度にベクトル回転させる。これにより、ベクトル回転処理部81は、複数の回転角度に応じた複数のベクトル回転データD2を生成する。
【0053】
本実施形態のベクトル回転処理部81では、2°毎に入力データD1をベクトル回転させてベクトル回転データD2を生成する。すなわち、ベクトル回転処理部81は、回転角度が0°(無回転)、2°、4°、6°、…、358°までの180個のベクトル回転データD2を生成する。なお、ベクトル回転データD2を生成する回転角度は2°毎に限られない。ベクトル回転データD2を生成する回転角度は1°毎であってもよいし、1.5°毎、3°毎、あるいは、他の角度毎であってもよい。
【0054】
画像変換処理部82は、ベクトル回転処理部81の生成した複数のベクトル回転データD2のそれぞれをラスタライズし、ラスターデータD3に変換する。これにより、複数の回転角度に応じた複数のラスターデータD3が生成される。ラスターデータD3は、格子状に配列された領域ごとにインク吐出量が定められたデータである。
【0055】
間引き処理部83は、画像変換処理部82の生成した複数のラスターデータD3のそれぞれを間引きデータD4に変換する。これにより、複数の回転角度に応じた複数の間引きデータD4が生成される。間引きデータD4は、ラスターデータD3よりもインクを吐出すべき画素数(以下「インク吐出画素数」と称する)の少ないラスターデータである。すなわち、間引きデータD4におけるインクを吐出すべき領域(以下「インク吐出領域」と称する)は、ラスターデータD3におけるインク吐出領域よりも小さい。
【0056】
本実施形態のデータ処理装置80は、間引き処理部83の生成した間引きデータD4を印刷データとして錠剤印刷装置1の制御部70へと出力する。しかしながら、本発明はこれに限られない。本発明のデータ処理装置は、間引き処理部を有していなくてもよい。その場合、データ処理装置は、画像変換処理部82の生成したラスターデータを、印刷データとして錠剤印刷装置1の制御部70へと出力する。
【0057】
なお、本実施形態の錠剤印刷装置1のように、錠剤9の表面と裏面の両方に対して印刷処理を行う場合、データ処理装置において表面用の印刷データと、裏面用の印刷データとの双方を生成しておく必要がある。
【0058】
また、本実施形態の制御部70は、印刷データ保持部71、回転角度検出部72、印刷データ選択部73および吐出制御部74を有する。印刷データ保持部71の機能は、上述した記憶部703により実現される。回転角度検出部72、印刷データ選択部73および吐出制御部74の各機能は、上述したコンピュータプログラムPに従って、制御部70としてのコンピュータが動作することによって実現される。
【0059】
印刷データ保持部71は、データ処理装置80から入力された間引きデータD4を印刷データD5として記憶する。
【0060】
回転角度検出部72は、第1割線検出カメラ32および第2割線検出カメラ42から入力される錠剤9の画像データD6に基づいて、第1搬送コンベア41の各吸着孔413に保持される錠剤9の有無、表裏および回転角度を検出する。また、回転角度検出部72は、第1割線検出カメラ32、第2割線検出カメラ42および第3割線検出カメラ52から入力される錠剤9の画像データD6に基づいて、第2搬送コンベア51の各吸着孔に保持される錠剤9の有無、表裏および回転角度を検出する。
【0061】
印刷データ選択部73は、回転角度検出部72の検出結果D7に基づいて、各錠剤9に印刷すべき印刷データD5を印刷データ保持部71から選択し、吐出制御部74へと引き渡す。
【0062】
吐出制御部74は、印刷データ選択部73から受け取った印刷データD5に基づいて、第1ヘッドユニット43および第2ヘッドユニット53の各ノズルにおけるインクの吐出を制御し、各錠剤9の表面にインクを吐出させる。
【0063】
<3.データ処理装置におけるデータ処理の流れについて>
以下では、
図6を参照しつつ、データ処理装置80および錠剤印刷装置1における回転角度に応じた印刷処理の流れについて説明する。
図6は、データ処理装置80におけるデータ処理の流れを示したフローチャートである。後述する錠剤印刷装置1における印刷処理に先駆けて、
図6に示すデータ処理装置80のデータ処理が行われる。
【0064】
図6に示すように、データ処理装置80のデータ処理において、まず、ベクトルデータである入力データD1がベクトル回転処理部81へ入力される(ステップS101)。
【0065】
次に、ベクトル回転処理部81が、入力データD1を所定の複数の回転角度にベクトル回転させて、複数のベクトル回転データD2を生成する(ステップS102)。
【0066】
続いて、画像変換処理部82が、複数のベクトル回転データD2のそれぞれをラスタライズし、複数のラスターデータD3を生成する(ステップS103)。
【0067】
ここで、ベクトルデータの回転とラスタライズとの順番について、
図7〜
図9の例を参照しつつ説明する。
図7は、無回転のベクトルデータをラスタライズした例を示した図である。
図8は、ベクトルデータをラスタライズ後に回転し、その後再度ラスタライズした例を示した図である。
図9は、ベクトルデータをベクトル回転後にラスタライズした例を示した図である。なお、
図7〜
図9では、2値データにラスタライズしている。
【0068】
インクジェットプリンタである錠剤印刷装置1では、縦横の格子状に並んだインク吐出領域ごとにインクジェット式のヘッド431,531からインク滴を吐出する。これにより、インク吐出領域ごとに1つのインク滴が吐出される。このため、錠剤印刷装置1における印刷処理には、インク吐出領域ごとにインク滴の有無およびインク滴のサイズを規定した印刷データを用意する必要がある。したがって、入力されたベクトルデータを縦横の格子状に並んだピクセル毎に表現されたラスターデータへ変換する必要がある。
【0069】
回転角度が0°(無回転)の場合、
図7に示すように、画像データを回転させる必要がないため、ベクトルデータを単にラスタライズしたラスターデータを印刷用データとして用いることができる。
【0070】
回転角度が0°以外である場合、いずれかのタイミングで画像データを回転させることと、最終的な印刷用データとして所定の方向にラスタライズされたラスターデータを用意する必要がある。
【0071】
図8に示すように、ベクトルデータをラスタライズして得た第1ラスターデータを回転してラスター回転データを生成する場合、ラスター回転データの各ピクセルは、縦横方向に対して傾斜した格子状に配置される。このため、ラスター回転データは印刷用データとして用いることができない。したがって、ラスター回転データを縦横方向のピクセルデータへ変換するために、再度ラスタライズする必要がある。再ラスタライズにより得られた第2ラスターデータは、回転角度が0°(無回転)の場合のラスターデータと比べてがたつきが大きく、印刷品質が低下する虞がある。
【0072】
そこで、本実施形態のデータ処理装置80では、
図9に示すように、ベクトルデータをベクトル回転して得たベクトル回転データをラスタライズすることにより、ラスターデータを生成する。このようにすれば、回転角度が0°(無回転)の場合と同等の品質のラスターデータを得ることができる。したがって、印刷品質が低下するのが抑制される。
【0073】
回転により印刷品質が低下する場合、検査カメラ44,54による印刷結果の検査の際に、厳しい閾値を用いて行うことができない。このように、回転による印刷品質の低下が抑制されれば、検査カメラ44,54により印刷結果の検査に、厳しい閾値を用いて行うことができる。したがって、印刷品質の低下をより抑制できる。
【0074】
ステップS103において画像変換処理部82が複数のラスターデータD3を生成した後、間引き処理部83が、複数のラスターデータD3のそれぞれを変換し、複数の間引きデータD4を生成する(ステップS104)。そして、間引きデータD4を印刷データD5として錠剤印刷装置1の制御部70へと出力する(ステップS105)。
【0075】
ここで、間引き処理部83による変換処理について、
図10〜
図21を参照しつつ説明する。
図10〜
図12は、ラスターデータD3の吐出領域が連続する部位にインク滴を吐出した様子を示す概念図である。
図10は、インク吐出領域の全てに対して「サイズ中」のインク滴を吐出した例を示した図である。
図11は、インク吐出領域の全てに対して「サイズ小」のインク滴を吐出した例を示した図である。
図12は、インク吐出領域を、インク吐出領域とインク非吐出領域とを交互に配置したものに変換した上で、変換後のインク吐出領域に対して「サイズ中」のインク滴を吐出した例を示した図である。
図10〜
図12中、直線で囲まれた四角い領域がそれぞれ1つのインク滴に対応する領域である。
【0076】
錠剤9が糖衣錠等の表面に光沢を有する錠剤である場合、吐出されたインク滴が錠剤9の表面上を移動しやすい。このため、インク滴が流れて隣り合うインク滴と繋がるモットリングと呼ばれる現象が起りやすい。モットリングは、錠剤9の搬送速度が大きくなるにつれて生じやすくなる。
図10には、モットリングが生じて、隣り合うインク滴91同士が繋がって流動するインク流動部92が示されている。
【0077】
モットリングの発生を低減するためには、
図11に示すように、インク吐出領域のそれぞれに吐出するインク滴91の大きさを小さくするという方法を用いることができる。また、本発明では、
図12に示すように、インク吐出領域が連続しないように、連続するインク吐出領域を、インク吐出領域と非吐出領域とを交互に配置したものに変換するという方法を用いる。以下では、
図10および
図11に示すように、インク吐出領域が連続するパターンをベタパターンと称する。また、
図12に示すように、インク吐出領域と非吐出領域とを交互に配置したパターンを市松パターンと称する。
【0078】
図13は、本実施形態の錠剤印刷装置1を用いて行った実験において、液滴サイズおよびパターンごとの、搬送速度とモットリングの発生状態との関係を示した図である。
図13中、「サイズ中/ベタ」は、
図10に示すように、「サイズ中」のインク滴でベタパターンを印刷した場合、「サイズ小/ベタ」は、
図11に示すように、「サイズ小」のインク滴でベタパターンを印刷した場合、「サイズ中/市松」は、
図12に示すように、「サイズ中」のインク滴で市松パターンを印刷した場合を示している。また、
図13中、「○」はモットリングが発生していない状態、「△」はモットリングの発生量が所定量以下である状態、「×」はモットリングの発生量が所定量以上である状態、「−」は実験を行っていないことを示している。
【0079】
図13に示すように、「サイズ小/ベタ」では、「サイズ中/ベタ」と比べて、モットリングが発生する搬送速度が大きい。すなわち、「サイズ小/ベタ」では、「サイズ中/ベタ」よりもモットリングが発生しにくい。また、「サイズ中/市松」では、「サイズ小/ベタ」と比べて、モットリングが発生する搬送速度がさらに大きい。すなわち、「サイズ中/市松」では、「サイズ小/ベタ」よりも、さらにモットリングが発生しにくい。これより、インク吐出領域と非吐出領域とを交互に配置したパターンは、モットリングの発生抑制に非常に効果があることがわかる。
【0080】
このように、インク吐出領域の数を少なくすることにより、モットリングが生じるのが抑制される。そこで、本実施形態のデータ処理装置80では、ステップS104において、複数のラスターデータD3を、各ラスターデータD3よりもインク吐出画素数の少ない間引きデータD4へと変換する。そして、この間引きデータD4を印刷データとして用いることにより、錠剤印刷装置1における印刷処理時にモットリングが発生するのを抑制できる。
【0081】
また、上記のようにインク吐出領域と非吐出領域とを交互に配置したパターンを用いることにより、モットリングが生じるのがさらに抑制される。そこで、本実施形態のデータ処理装置80では、ステップS104において、複数のラスターデータD3を、インク吐出領域と非吐出領域とを交互に配置した複数の間引きデータD4へと変換する。このような間引きデータD4を印刷データとして用いることにより、錠剤印刷装置1における印刷処理時にモットリングが発生するのをさらに抑制できる。また、このような間引きデータD4を印刷データとして用いることにより、錠剤9上に吐出されたインクを迅速に乾燥させることができる。さらに、このような間引きデータD4を印刷データとして用いることにより、インクの使用量を低減できる。
【0082】
ここで、実際に間引きデータD4に用いられるパターンの例をいくつか紹介する。
図14は、50%間引きパターンの一例である。
図15は、
図14に示す50%間引きパターンを用いた間引きデータD4の一例である。
図14および
図15の例のパターンは、1つのインク吐出領域と1つの非吐出領域とを、縦方向および横方向に交互に配置した、いわゆる市松模様状のパターンである。このようなパターンを用いた場合、間引きデータD4におけるインク吐出画素数は、ラスターデータD3におけるインク吐出画素数の約50%となる。
【0083】
図16は、62.5%間引きパターンの一例である。
図17は、
図16に示す62.5%間引きパターンを用いた間引きデータD4の一例である。
図16および
図17の例のパターンは、十字状に並んだ5つのインク吐出領域と、1つずつの非吐出領域とを、縦方向および横方向に交互に配置したものである。このようなパターンを用いた場合、間引きデータD4におけるインク吐出画素数は、ラスターデータD3におけるインク吐出画素数の約62.5%となる。
図16の例の62.5%間引きパターンを用いれば、
図14の例の50%間引きパターンよりも濃く印刷できる。
【0084】
図18は、37.5%間引きパターンの一例である。
図19は、
図18に示す37.5%間引きパターンを用いた間引きデータD4の一例である。
図18および
図19の例のパターンは、1つずつのインク吐出領域と、十字状に並んだ5つの非吐出領域とを、縦方向および横方向に交互に配置したものである。このようなパターンを用いた場合、間引きデータD4におけるインク吐出画素数は、ラスターデータD3におけるインク吐出画素数の約37.5%となる。
図18の例の35%間引きパターンを用いれば、
図14の例の50%間引きパターンよりもモットリングをさらに抑制できる。
【0085】
図20は、
図14とは異なる50%間引きパターンの一例である。
図14の50%間引きパターンでは、1つのインク吐出領域と、1つの非吐出領域とが交互に配置されていた。一方、
図19の50%間引きパターンでは、正方形状に配置された4つのインク吐出領域と、正方形状に配置された4つの非吐出領域とが交互に配置された、市松模様状のパターンである。間引きデータD4は、このようなパターンにより構成されてもよい。
【0086】
また、間引きデータD4は、
図14〜
図19に例示したパターン以外のパターンにより構成されてもよい。例えば、間引きデータD4に使用されるパターンにおいて、隣り合うインク吐出領域で構成されるインク吐出グループの形状が複数あってもよいし、隣り合う非吐出領域で構成される非吐出グループの形状が複数あってもよい。
【0087】
<4.錠剤印刷装置における印刷処理の流れについて>
以下では、
図21を参照しつつ、錠剤印刷装置1における回転角度に応じた印刷処理の流れについて説明する。
図21は、錠剤印刷装置1における印刷処理の流れを示したフローチャートである。
【0088】
図21に示すように、錠剤印刷装置1における印刷処理において、まず、データ処理装置80から制御部70に複数の間引きデータD4が入力される。これにより、印刷データ保持部71が、入力された複数の間引きデータD4を印刷データD5として記憶する(ステップS201)。
【0089】
図22は、印刷データ保持部71に記憶される印刷データD5の一例を示した図である。
図22に示すように、印刷データ保持部71では、回転角度と、各印刷データD5とを対応させたテーブルデータが保存される。
【0090】
次に、制御部70は、錠剤印刷装置1における錠剤9の搬送を開始する(ステップS202)。搬送開始後、第1割線検出カメラ32、第2割線検出カメラ42および第3割線検出カメラ52が、搬送される錠剤9の画像の取得を開始し、取得した画像データD6を制御部70へと出力する。当該画像データD6が制御部70に入力されると、回転角度検出部72は、第1搬送コンベア41および第2搬送コンベア51の各吸着孔に保持される錠剤9の有無、表裏および回転角度を検出する(ステップS203)。そして、回転角度検出部72は、その検出結果D7を印刷データ選択部73へと引き渡す。
【0091】
続いて、印刷データ選択部73は、検出結果D7に基づいて、第1搬送コンベア41および第2搬送コンベア51に保持される各錠剤9に印刷すべき印刷データD5を印刷データ保持部71から選択し、吐出制御部74へと引き渡す(ステップS204)。
【0092】
そして、吐出制御部74は、印刷データ選択部73から受け取った印刷データD5に基づいて、第1ヘッドユニット43および第2ヘッドユニット53に印刷処理を行わせる(ステップS205)。これにより、搬送される複数の錠剤9の各々に、表裏および回転角度に応じた画像が記録される。
【0093】
この錠剤印刷装置1では、印刷工程を行う前に、予め回転角度ごとの印刷データD5を用意している。これにより、錠剤9の表裏や回転角度の検出結果D7を取得した後、印刷データD5を遅滞なく用意することができる。したがって、錠剤印刷装置1における印刷処理の処理速度を向上できる。
【0094】
また、この錠剤印刷装置1では、印刷データD5として、単なるラスターデータD3ではなく、ラスターデータD3に間引き処理を行った間引きデータD4を用いている。これにより、モットリングの発生を抑制させ、錠剤印刷装置1における印刷処理の処理速度を向上できる。
【0095】
<5.変形例>
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0096】
上記の錠剤印刷装置1は、第1印刷部40および第2印刷部50によって、錠剤9の両面に印刷を行う装置であった。しかしながら、本発明の錠剤印刷装置は、錠剤9の片面のみに印刷を行う装置であってもよい。
【0097】
また、上記のデータ処理装置80と錠剤印刷装置1の制御部70とは、通信可能に接続されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、データ処理装置80により生成された印刷データD5は、CD−ROM等の記憶媒体を介して制御部70に入力されてもよい。
【0098】
また、上記の錠剤印刷装置1は、データ処理装置80とは別個の装置であったが、本発明はこれに限られない。本発明の錠剤印刷装置は、制御部70内にデータ処理装置80の各部の機能を備えるものであってもよい。
【0099】
また、錠剤印刷装置1の細部の構成については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。