特許第6811563号(P6811563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6811563車両用撮影装置、及び、車両用撮影システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811563
(24)【登録日】2020年12月17日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】車両用撮影装置、及び、車両用撮影システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/04 20060101AFI20201228BHJP
   H04N 5/238 20060101ALI20201228BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20201228BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   B60R11/04
   H04N5/238
   H04N5/225
   H04N7/18 J
   H04N7/18 N
   H04N7/18 D
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-154033(P2016-154033)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-105431(P2017-105431A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-232143(P2015-232143)
(32)【優先日】2015年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 善夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄太
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−002827(JP,A)
【文献】 特開2006−025140(JP,A)
【文献】 特開2010−171777(JP,A)
【文献】 特開2009−246903(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0332441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/04
H04N 5/225
H04N 5/238
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を検知可能なカメラと、前記カメラの撮影範囲を含む領域内に赤外線を放射する複数の光源と、前記複数の光源の輝度を調整する調整部と、を備えた車両用撮影装置であって、
前記調整部は、
前記カメラによる撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、前記複数の光源の各々の輝度を個別に調整する個別輝度調整を実行可能であるように構成され、
該車両用撮影装置は、
撮影範囲の可視光における明るさを検知し、検知した値が所定値以上の場合、前記複数の光源から前記赤外線を放射させず、前記検知した値が前記所定値未満の場合、前記複数の光源から前記赤外線を放射させる、ように構成され、
前記調整部が、
前記カメラによる撮影における露光時間が所定の閾値以下である場合、前記個別輝度調整を実行する、
車両用撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用撮影装置において、
前記調整部が、
前記撮影画像を仮想的に複数の領域に分割すると共に、前記複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、前記個別輝度調整を実行する、
車両用撮影装置。
【請求項3】
車両用撮影装置と、前記車両用撮影装置と通信可能な画像分析装置と、を備えた車両用撮影システムであって、
前記車両用撮影装置は、
赤外線を検知可能なカメラと、前記カメラの撮影範囲を含む領域内に赤外線を放射する複数の光源と、前記複数の光源の各々の輝度を個別に調整可能な調整部と、を備え、
前記画像分析装置において、
前記カメラによる撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、前記複数の光源の各々の輝度が定められる輝度設定が行われ、
前記調整部は、
前記輝度設定に従って前記複数の光源の輝度を調整し、
前記車両用撮影装置は、
撮影範囲の可視光における明るさを検知し、検知した値が所定値以上の場合、前記複数の光源から前記赤外線を放射させず、前記検知した値が前記所定値未満の場合、前記複数の光源から前記赤外線を放射させ、
前記画像分析装置において、
前記カメラによる撮影における露光時間が所定の閾値以下である場合、前記輝度設定が行われる、
車両用撮影システム。
【請求項4】
請求項に記載の車両用撮影システムにおいて、
前記画像分析装置において、
前記撮影画像を仮想的に複数の領域に分割すると共に、前記複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、前記輝度設定が行われる、
車両用撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用撮影装置、及び、車両用撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の運行管理などを目的とし、車両の室内又は周辺等を撮影する車両用撮影装置が提案されている。例えば、従来の車両用撮影装置の一つ(以下「従来装置」という。)は、車両の室内の様子を撮影するべく、赤外線カメラと、赤外線を放射する複数の赤外線LED(Light Emitting Diode)と、を備え、複数の赤外線LEDから車両の室内(車内)に赤外線を放射しながら、赤外線カメラによって車内の様子を撮影するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−253987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来装置では、複数の赤外線LEDから車内に赤外線が放射されるものの、撮影対象物(例えば、乗客および内装部品など)の形状および配置等によっては、撮影範囲内における場所ごとの赤外線の照射量のばらつきが大きくなる場合がある。その場合、赤外線カメラの撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが大きくなり、撮影画像内の暗い部分が、撮影画像内の明るい部分に比べて視認し難くなる可能性がある。しかし、適切な運行管理等を行うためには、明るさのばらつきが出来る限り小さい撮影画像を得ることが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、明るさのばらつきが出来る限り小さい撮影画像を得ることが可能な車両用撮影装置、及び、そのような撮影画像を得ることが可能な車両用撮影システム、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用撮影装置は、下記(1)〜()を特徴としている。
(1)
赤外線を検知可能なカメラと、前記カメラの撮影範囲を含む領域内に赤外線を放射する複数の光源と、前記複数の光源の輝度を調整する調整部と、を備えた車両用撮影装置であって、
前記調整部は、
前記カメラによる撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、前記複数の光源の各々の輝度を個別に調整する個別輝度調整を実行可能であるように構成され、
該車両用撮影装置は、
撮影範囲の可視光における明るさを検知し、検知した値が所定値以上の場合、前記複数の光源から前記赤外線を放射させず、前記検知した値が前記所定値未満の場合、前記複数の光源から前記赤外線を放射させる、ように構成され、
前記調整部が、
前記カメラによる撮影における露光時間が所定の閾値以下である場合、前記個別輝度調整を実行する、
車両用撮影装置であること。
(2)
上記(1)に記載の車両用撮影装置において、
前記調整部が、
前記撮影画像を仮想的に複数の領域に分割すると共に、前記複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、前記個別輝度調整を実行する、
車両用撮影装置であること。
【0007】
上記(1)の構成の車両用撮影装置によれば、カメラによる撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、複数の光源の各々の輝度を個別に(換言すると、必要に応じて異なる輝度に)設定する個別輝度調整が可能となっている。そのため、複数の光源の輝度が一律に(同一の輝度にて発光するように)設定される場合に比べ、撮影画像の場所ごとの明るさのばらつきを低減できる。よって、本構成の車両用撮影装置は、調整部によって複数の光源の各々の輝度を適宜調整することにより、明るさのばらつきが出来る限り小さい撮影画像を得ることが可能である。
更に、カメラによる撮影における露光時間を考慮した上で、上述した個別輝度調整が実行される。これにより、例えば、露光時間が十分に長い場合において更に光源から撮影対象に赤外線が放射されることを避け、カメラにおける露光が過剰となること(いわゆる白飛び)を防止できる。
【0008】
上記(2)の構成の車両用撮影装置によれば、撮影画像が仮想的に複数の領域に分割された上で、それら複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、複数の光源の各々の輝度が設定される。そのため、このような仮想的な画像の分割を行わない場合に比べ、複数の光源の各々の輝度を容易に設定することが可能となる。
【0010】
なお、上述した露光時間の「所定の閾値」は、光源から放射し得る最大光量、カメラの受光素子における露光可能量(ダイナミックレンジ)、及び、車両用撮影装置が使用される環境に想定される明るさ等を考慮し、予め実験等を行うことによって定められ得る。
【0011】
更に、前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用撮影システムは、下記()〜()を特徴としている。

車両用撮影装置と、前記車両用撮影装置と通信可能な画像分析装置と、を備えた車両用撮影システムであって、
前記車両用撮影装置は、
赤外線を検知可能なカメラと、前記カメラの撮影範囲を含む領域内に赤外線を放射する複数の光源と、前記複数の光源の各々の輝度を個別に調整可能な調整部と、を備え、
前記画像分析装置において、
前記カメラによる撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、前記複数の光源の各々の輝度が定められる輝度設定が行われ、
前記調整部は、
前記輝度設定に従って前記複数の光源の輝度を調整し、
前記車両用撮影装置は、
撮影範囲の可視光における明るさを検知し、検知した値が所定値以上の場合、前記複数の光源から前記赤外線を放射させず、前記検知した値が前記所定値未満の場合、前記複数の光源から前記赤外線を放射させ、
前記画像分析装置において、
前記カメラによる撮影における露光時間が所定の閾値以下である場合、前記輝度設定が行われる、
車両用撮影システムであること。

上記()に記載の車両用撮影システムにおいて、
前記画像分析装置において、
前記撮影画像を仮想的に複数の領域に分割すると共に、前記複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、前記輝度設定が行われる、
車両用撮影システムであること。
【0012】
上記()に記載の車両用撮影システムによれば、上記(1)と同様、カメラによる撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、複数の光源の各々の輝度を個別に(換言すると、必要に応じて異なる輝度に)設定する個別輝度調整が可能となっている。そのため、複数の光源の輝度が一律に(同一の輝度にて発光するように)設定される場合に比べ、撮影画像の場所ごとの明るさのばらつきを低減できる。
更に、画像分析装置において、上記(1)と同様、カメラによる撮影における露光時間を考慮した上で、上述した個別輝度調整が実行される。これにより、例えば、露光時間が十分に長い場合において更に光源から撮影対象に赤外線が放射されることを避け、カメラにおける露光が過剰となること(いわゆる白飛び)を防止できる。
【0013】
よって、本構成の車両用撮影システムは、画像分析装置によって複数の光源の各々の輝度を適宜定めることにより、明るさのばらつきが出来る限り小さい撮影画像を得ることが可能である。
【0014】
なお、車両用撮影装置と画像分析装置とは互いに独立した別体の装置であってもよく、双方の装置の機能を備えた一体の装置として構成されてもよい。前者(別体の装置)の場合、車両用撮影装置とは別の画像分析装置を用いて光源の輝度を定めるため、光源の輝度を定めるための機能を車両用撮影装置に設ける必要がない分、車両用撮影装置の構造を簡略化(小型化・低価格化)できる。後者(一体の装置)の場合、撮影および分析の機能を一纏めに備えた装置を提供でき、システム全体の構成を簡略化できる。
【0015】
ところで、上述した画像分析装置は、車両用撮影装置と常に通信可能であるように(例えば、無線通信を用いた常時通信が可能であるように)構成されてもよく、必要に応じて適時に車両用撮影装置と通信可能であるように(例えば、有線通信を用いて、光源の輝度の設定時に限って接続されるように)構成されてもよい。更に、画像分析装置における画像の分析および光源の輝度の決定は、画像分析装置が自ら実行してもよく、画像分析装置を用いる設定担当者が行ってもよい。
【0016】
上記()の構成の車両用撮影システムによれば、画像分析装置において、上記(2)と同様、撮影画像が仮想的に複数の領域に分割された上で、それら複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、複数の光源の各々の輝度が設定される。そのため、このような仮想的な画像の分割を行わない場合に比べ、複数の光源の各々の輝度を容易に設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、明るさのばらつきが出来る限り小さい撮影画像を得ることが可能な車両用撮影装置、及び、そのような撮影画像を得ることが可能な車両用撮影システム、を提供できる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用撮影装置の使用状態を例示する説明図である。
図2図2は、図1の車両用撮影装置の正面図である。
図3図3は、図2の車両用撮影装置の機能ブロック図である。
図4図4は、図2の車両用撮影装置と外部機器(画像分析装置)とが接続されている状態を示す概略図である。
図5図5は、図4の外部機器(画像分析装置)の画像モニタ部に表示された撮影画像の表示例を示す説明図である。
図6図6は、図4の外部機器(画像分析装置)の画像モニタ部に表示された撮影画像の表示例を示す説明図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る車両用撮影装置の機能ブロック図である。
図8図8は、本発明の第3実施形態に係る車両用撮影装置の使用状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、図1図6を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る車両用撮影装置及び車両用撮影システムについて説明する。本実施形態では、車両の室内を撮影する一つの例として、バスの運行中における運転手の行動を撮影し記録するための使用態様について説明する。
【0022】
(車両用撮影装置の構成)
図1に示すように、本実施形態の車両用撮影装置100はバスB1の運転席B2の上方の天井B3に取り付けられている。車両用撮影装置100は、天井B3に取り付けられた取付金具110と、取付金具110に保持された装置本体120と、を有する。取付金具110は、ネジ等を用いて天井B3に固定されている。装置本体120は、撮影する向きを調節できるように、バスB1の前後方向(図1の左右方向)に回動可能に取付金具110に保持されている。本例では、装置本体120は、撮影する向きがバスB1のほぼ真下向きになるように調整されている。装置本体120は、図中の符号αに示す撮影画角を有している。具体的には、装置本体120は、バスB1の前後方向においては、ハンドルB4及びダッシュボードB5から運転中の運転手Hの頭部の一部が収まる範囲の撮影画角αを有しており、バスB1の横幅方向においては、運転手Hとその両側近傍が収まる範囲の画角を有している(図5及び図6参照)。
【0023】
図2に示すように、取付金具110は、取付部111と、取付部111の両端から同じ向きに直角に延びる一対の腕部112とを有する略コ字形のブラケット金具である。取付金具110の取付部111には、ねじ等を通すための挿通孔112aが複数箇所に設けられている。取付金具110の両方の腕部112の先端近傍には、支軸部材113が挿通される軸孔114が設けられている。
【0024】
装置本体120は、取付金具110の両方の腕部112の軸孔114に挿通された支軸部材113により支持されており、支軸部材113を取り外す(外側に移動させる)ことにより、取付金具110から取り外せるようになっている。
【0025】
装置本体120は、正面部122の形状が矩形状(本例では横長の長方形)の筐体121を有している。装置本体120の正面部(すなわち筐体121の正面部122)には、カメラ130と、複数(本例では6個)の赤外線LED140a〜140fと、明るさセンサ150と、が配置されている。具体的には、本例では、装置本体120の正面部中央にカメラ130が配置され、その両側近傍に3つの赤外線LEDが3個ずつ配置され、カメラ130の下方近傍に明るさセンサ150が配置されている。
【0026】
筐体121の正面部122には、カメラ130のレンズ(光入射部)に対応した開口部123、複数の赤外線LED140a〜140fの光出射部に対応した複数の開口部124、及び、明るさセンサ150の受光部に対応した開口部125が設けられている。カメラ130、複数の赤外線LED140a〜140f及び明るさセンサ150は、対応する開口部から外部を臨むように筐体121に収容されている。
【0027】
図3に示すように、装置本体120は、カメラ130、赤外線LED140a〜140f、及び、明るさセンサ150に加え、画像記録部160と、通信I/F170と、調整部180と、を有している。
【0028】
カメラ130は、可視光と赤外線との双方を検知可能なカメラである。赤外線LED140a〜140fは、カメラ130の撮影範囲を含む所定領域内に赤外線(照明光)を放射するための光源である。明るさセンサ150は、赤外線(照明光)を放射する要否を判定するべく、撮影範囲の明るさ(可視光の強度)を検知するためのセンサである。画像記録部160は、カメラ130により撮影した撮影画像の画像データを、メモリカード等の情報記録媒体に記録するための構成を有する。通信I/F170は、外部機器(後述される画像分析装置200)と車両用撮影装置100とを通信可能に接続するための構成を有する。
【0029】
調整部180は、赤外線LED140a〜140fの輝度の調整を含め、車両用撮影装置100の各部の処理及び動作を制御するための構成を有する。本例では、調整部180は、カメラ130の撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、複数のLED140a〜140fの各々の輝度を個別に設定可能であるように構成されている。なお、この輝度の設定(輝度の設定値の決定)は、後述するように、外部機器(画像分析装置200)において行われてもよく、調整部180自らが外部機器(画像分析装置200)に依存することなく行ってもよい。
【0030】
(車両用撮影装置の動作)
次いで、上記のように構成された車両用撮影装置100の動作について説明する。
【0031】
車両用撮影装置100は、カメラ130の撮影範囲の明るさ(可視光における明るさ)を明るさセンサ150によって検知し、明るさセンサ150の出力値が所定の閾値以上であれば(換言すると、可視光での撮影に適していれば)、赤外線LED140a〜140fを発光させることなく、可視光にてカメラ130により撮影を行う。一方、明るさセンサ150の出力値が所定値以下であれば(換言すると、可視光での撮影に適さなければ)、車両用撮影装置100は、赤外線LED140a〜140fを発光させ、撮影範囲に赤外線(照明光)を照射しながら、赤外線にてカメラ130により撮影を行う。カメラ130により撮影した撮影画像の画像データは、画像記録部160によって情報記録媒体に記録される。
【0032】
本例の場合、バスの運行中における運転手Hの行動が、カメラ130により撮影されて記録媒体に記録される。よって、情報記録媒体に記録された撮影画像を確認することにより、運転手Hの行動を含めた運行管理を行い得る。
【0033】
一方、バスB1の運転席B2の周辺にある内装品および機器などの配置および形状、並びに、運転席B2の位置などによっては、撮影画角α内の場所ごとの赤外線照射量にばらつきが生じる場合がある。その場合、カメラ130の撮影画像内に明るい領域と暗い領域とが生じる場合がある。即ち、撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが生じる場合がある。
【0034】
このような明るさのばらつきの度合いが十分に小さければ、たとえばらつきが生じていても、撮影画像を用いた運行管理を適切に行い得る。しかし、明るさのばらつきの度合いが過度に大きくなると(換言すると、撮影画像内の明るい領域と暗い領域との明暗の差が過度に大きくなると)、撮影画像内の暗い部分が、撮影画像内の明るい部分に比べて視認し難くなる可能性がある。その場合、運転手Hの行動を撮影画像によって正確に判別することが困難になる可能性がある。
【0035】
そこで、車両用撮影装置100は、カメラ130による撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、複数の赤外線LED140a〜140fの各々の輝度を個別に調整可能であるように構成されている。以下、この調整は「個別輝度調整」とも称呼される。この個別輝度調整について、本発明の実施態様に係る車両用撮影システム1の説明と併せ、以下に詳述する。
【0036】
図4に示すように、車両用撮影システム1は、上述した車両用撮影装置100と、外部機器である画像分析装置200と、を備えている。本例では、車両用撮影装置100と画像分析装置200とは、通信ケーブルを介して有線接続されている。具体的には、車両用撮影装置100の通信I/F170に通信ケーブルの一端が接続され、画像分析装置200の通信I/F(図示省略)に通信ケーブルの他端が接続されている。なお、車両用撮影装置100と画像分析装置200とは、常には接続されておらず、赤外線LED140a〜140fの輝度を設定するために必要な場合に限って接続される。
【0037】
画像分析装置200の画像モニタ部210には、車両用撮影装置100が撮影している撮影画像P1が表示される。なお、この撮影画像P1は、画像記録部160に記録された画像ではなく、その時点にて車両用撮影装置100が撮影しているリアルタイム画像である。
【0038】
画像分析装置200を操作している設定担当者(オペレータ)は、画像モニタ部210に表示された撮影画像P1を目視しながら、赤外線LED140a〜140fの輝度の設定値を決定する。例えば、一例として、図5に示す撮影画像P1の場合、運転手Hの足元の周辺の部分がその他の部分と比較して暗く表示されている。この場合、運転手Hの足部の動き(例えば、アクセルペダルの操作)を撮影画像P1によって正確に判別することが困難である可能性がある。
【0039】
この場合、図5に示すように、画像分析装置200は、カメラ130による撮影画像を仮想的に複数の領域(本例では、線分L1及びL2によって分割された4つの領域A、B、C及びD)に分割し、それら領域間の明るさの差が小さくなるように、赤外線LED140a〜140fの各々の輝度の設定値を決定する。
【0040】
図5に示す撮影画像P1の場合、領域A及び領域Bがその他の領域に比べて暗い領域である。そのため、設定担当者は、6個の赤外線LED140a〜140fのうち、領域A及び領域Bへの照射への寄与度が高い一又は複数の赤外線LEDの輝度をより高めるように設定値を定め、領域A及び領域Bへの照射への寄与度が低い一又は複数の赤外線LEDの輝度がより低くなるように設定値を定めることになる。なお、このような画像の分析(輝度の設定値の決定)は、車両用撮影装置100を車両(本例ではバスB1)に設置した状態にて行われる。
【0041】
このように定められた輝度の設定値に従い、車両用撮影装置100の調整部180は、赤外線LED140a〜140fの輝度を設定する。その結果、図6に示す撮影画像P2のように、図5に示す撮影画像P1と比べ、暗い部分(領域A及び領域B)と、明るい部分(領域C及び領域D)と、の明るさの差が小さくなる。即ち、明るさのばらつきが低減された撮影画像P2が得られることになる。
【0042】
なお、図6に示す撮影画像P2では、領域A及び領域Bにおける明るさが撮影画像P1に比べて高まり、領域C及び領域Dにおける明るさが撮影画像P1に比べて低くなっている。その結果、撮影画像P2は、全体として、明るさのばらつきが小さい画像となっている。
【0043】
更に、上述した赤外線LED140a〜140fの輝度の調整は、カメラ130による撮影における露光時間が所定の閾値以下である場合に限って実行されてもよい。これにより、露光時間が十分に長い(即ち、閾値よりも長い)場合に更に赤外線LED140a〜140fから撮影対象に照射され、露光過剰(いわゆる白飛び)が生じることを防止できることになる。
【0044】
上述した閾値は、赤外線LED140a〜140fの最大輝度、カメラ130の受光素子における露光可能量(ダイナミックレンジ)、及び、車両の室内の明るさ等を考慮し、予め実験等を行うことによって定められ得る。なお、受光素子が大きい(ダイナミックレンジが広い)カメラ130を用いた場合、一般に露光過剰(白飛び)が生じ難くなるため、このような露光時間の検討を行わなくとも、個別輝度調整を実行し得ることになる。
【0045】
以上に説明したように、車両用撮影装置100によれば、カメラ130による撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、複数の赤外線LED140a〜140fの各々の輝度を個別に(換言すると、異なる輝度に)設定可能となっている。そのため、複数の赤外線LED140a〜140fの輝度が一律に(同一の輝度にて発光するように)設定される場合に比べ、撮影画像の場所ごとの明るさのばらつきを低減できる。よって、車両用撮影装置100は、調整部180によって複数の赤外線LED140a〜140fの各々の輝度を適宜調整することにより、明るさのばらつきが出来る限り小さい撮影画像(P2)を得ることが可能である。更に、この個別輝度調整を行うにあたり、撮影時の露光時間の長短を考慮することにより、撮影時の露光過剰(白飛び)を防止することが可能である。
【0046】
更に、車両用撮影装置100によれば、撮影画像が仮想的に複数の領域A,B,C,Dに分割された上で、それら複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、複数の赤外線LED140a〜140fの各々の輝度が設定される。そのため、このような仮想的な画像の分割を行わない場合に比べ、複数の赤外線LED140a〜140fの各々の輝度を容易に設定することが可能となる。
【0047】
更に、このような輝度の設定に関し、車両用撮影システム1によれば、車両用撮影装置100とは別の画像分析装置200を用いて赤外線LED140a〜140fの輝度を定めるため、赤外線LED140a〜140fの輝度を定めるための機能を車両用撮影装置100に設ける必要がない分、車両用撮影装置100の構造を簡略化(小型化・低価格化)できる。
【0048】
<第2実施形態>
次いで、図7を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る車両用撮影装置及び車両用撮影システムについて説明する。本実施形態に係る車両用撮影装置は、車両用撮影装置が自らの判断によって複数の光源の各々の輝度を調整する点において、第1実施形態と異なる。
【0049】
具体的には、上述した車両用撮影システム1では、車両用撮影装置100とは異なる画像分析装置200を用いて赤外線LED140a〜140fの輝度の設定が行われている。しかし、本実施形態に係る車両用撮影装置100Aは、車両用撮影装置100Aに上述した画像分析装置200の機能を含めるように構成されている。
【0050】
具体的には、図7に示すように、車両用撮影装置100Aに設けられた画像分析部190が、撮影画像を仮想的に複数の領域に分割すると共に、複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、赤外線LED140a〜140fの各々の輝度の設定値を決定する。そして、このように定められた輝度の設定値に従い、調整部180が、赤外線LED140a〜140fの輝度を設定する。このとき、画像分析部190は、例えば、カメラ130の受光素子の各々における明度情報等に基づき、複数の領域ごとの明るさを検出する。
【0051】
このように、車両用撮影装置100Aは、設定担当者に頼ることなく、赤外線LED140a〜140fの輝度の設定を行う。これにより、赤外線LED140a〜140fの輝度がリアルタイムに設定されるため、より良質な撮影画像を得ることができる。
【0052】
なお、本実施形態において、車両用撮影装置100Aに画像分析部190を設けることに代え、調整部180が、自ら、撮影画像を仮想的に複数の領域に分割すると共に、複数の領域間の明るさの差が小さくなるように複数の光源の各々の輝度を調整してもよい。
【0053】
<第3実施形態>
次いで、図8を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る車両用撮影装置及び車両用撮影システムについて説明する。本実施形態に係る車両用撮影装置は、車両用撮影装置が車両の室外を撮影する点において、第1実施形態と異なる。
【0054】
具体的には、上述した車両用撮影システム1では、車両用撮影装置100は、車両(バスB1)の室内を撮影するようになっている。しかし、図8に示すように、本実施形態に係る車両用撮影装置100Bは、バスB1の室外をフロントガラスB6を通して撮影するように、天井B3に固定されている。更に、車両用撮影装置100Bは、第2実施形態に係る100Aと同様、車両用撮影装置100Bに画像分析装置200の機能を含めるように構成されている。その他の点において、車両用撮影装置100Bは、第1実施形態に係る車両用撮影装置100と同様に構成されている。
【0055】
これにより、車両用撮影装置100Bによれば、第1実施形態に係る車両用撮影装置100と同様、バスB1の室外を撮影する場合においても、明るさのばらつきが出来る限り小さい撮影画像を得ることが可能である。更に、この個別輝度調整を行うにあたり、撮影時の露光時間の長短を考慮することにより、撮影時の露光過剰(白飛び)を防止することが可能である。
【0056】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0057】
例えば、上述した第1実施形態では、車両用撮影装置100と画像分析装置200とを通信ケーブルによって有線接続している。しかし、車両用撮影装置100と画像分析装置200とは、無線接続されてもよい。無線接続の場合、上記同様、赤外線LED140a〜140fの輝度をリアルタイムに設定することも可能である。
【0058】
更に、上述した第1実施形態〜第3実施形態では、カメラ130による撮影画像を仮想的に4分割している。しかし、撮影画像の分割数は特に制限されない。
【0059】
更に、上述した第1実施形態〜第3実施形態では、車両用撮影装置100,100A,100Bは、可視光と赤外線との双方を検知可能なカメラ130を備えている。しかし、車両用撮影装置100,100A,100Bは、可視光を検知可能なカメラと、赤外線を検知可能なカメラ(赤外線カメラ)と、を別々に備えてもよい。
【0060】
更に、上述した第1実施形態〜第3実施形態では、車両用撮影装置100,100A,100Bは、明るさセンサ150を備えている。しかし、例えば、カメラ130の受光素子における明度の情報に基づき、撮影範囲の明るさを検知してもよい。この場合、明るさセンサ150を排除できる分、車両用撮影装置100,100A,100Bの製造コストを低減できる。更に、車両用撮影装置100,100A,100Bの筐体121に明るさセンサ150を露出させるための開口部などを設ける必要がないため、装置そのものの構成を単純化できる。
【0061】
更に、上述した第1実施形態および第2実施形態では、車両用撮影装置100,100AをバスB1の運転席B2の天井B3に取り付けて、運転手Hを上方から撮影している。しかし、車両用撮影装置100,100Aは、運転手Hを前方又は側方から撮影し得る位置、及び、運転手Hの足下を撮影し得る位置にも設置され得る。一方、第3実施形態では、車両用撮影装置100Bは、バスB1の前方を撮影するように配置されている。しかし、車両用撮影装置100Bは、バスB1の後方および側方などを撮影するように配置されてもよい。
【0062】
更に、上述した第1実施形態〜第3実施形態では、車両用撮影装置100,100A,100BがバスB1に設置されている。しかし、車両用撮影装置100,100A,100Bはタクシー及びトラック等のバスB1以外の車両の車両用に設置してもよい。
【0063】
ここで、上述した本発明に係る車両用撮影装置および車両用撮影システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(6)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
赤外線を検知可能なカメラ(130)と、前記カメラの撮影範囲を含む領域内に赤外線を放射する複数の光源(140a〜140f)と、前記複数の光源の輝度を調整する調整部(180)と、を備えた車両用撮影装置(100,100A,100B)であって、
前記調整部(180)は、
前記カメラ(130)による撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、前記複数の光源(140a〜140f)の各々の輝度を個別に調整する個別輝度調整を実行可能であるように構成されている、
車両用撮影装置。
(2)
上記(1)に記載の車両用撮影装置において、
前記調整部(180)が、
前記撮影画像を仮想的に複数の領域(A〜D)に分割すると共に、前記複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、前記個別輝度調整を実行する、
車両用撮影装置。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載の車両用撮影装置において、
前記調整部(180)が、
前記カメラ(130)による撮影における露光時間が所定の閾値以下である場合、前記個別輝度調整を実行する、
車両用撮影装置。
(4)
車両用撮影装置(100,100A,100B)と、前記車両用撮影装置と通信可能な画像分析装置(200)と、を備えた車両用撮影システム(1)であって、
前記車両用撮影装置(100,100A,100B)は、
赤外線を検知可能なカメラ(130)と、前記カメラの撮影範囲を含む領域内に赤外線を放射する複数の光源(140a〜140f)と、前記複数の光源の各々の輝度を個別に調整可能な調整部(180)と、を備え、
前記画像分析装置(200)において、
前記カメラ(130)による撮影画像における場所ごとの明るさのばらつきが小さくなるように、前記複数の光源(140a〜140f)の各々の輝度が定められる輝度設定が行われ、
前記調整部(180)は、
前記輝度設定に従って前記複数の光源(140a〜140f)の輝度を調整する、
車両用撮影システム。
(5)
上記(4)に記載の車両用撮影システムにおいて、
前記画像分析装置(200)において、
前記撮影画像を仮想的に複数の領域(A〜D)に分割すると共に、前記複数の領域間の明るさの差が小さくなるように、前記輝度設定が行われる、
車両用撮影システム。
(6)
上記(4)又は上記(5)に記載の車両用撮影システムにおいて、
前記画像分析装置(200)において、
前記カメラ(130)による撮影における露光時間が所定の閾値以下である場合、前記輝度設定が行われる、
車両用撮影システム。
【符号の説明】
【0064】
1 車両用撮影システム
100,100A,100B 車両用撮影装置
130 カメラ
140a〜140f 赤外線LED(光源)
180 調整部
190 画像分析部
200 画像分析装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8