(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811580
(24)【登録日】2020年12月17日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20201228BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-205720(P2016-205720)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-67644(P2018-67644A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川村 大地
(72)【発明者】
【氏名】増田 徹
(72)【発明者】
【氏名】楠川 順平
【審査官】
豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−322784(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/006065(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L25/00−25/07
25/10−25/11
25/16−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体チップを収容する絶縁ケースと、
前記パワー半導体チップを搭載する絶縁基板と、
前記絶縁基板を搭載し、接着剤により前記絶縁ケースと接続される第1の導体と、
一部が前記絶縁ケース内に配置され、前記パワー半導体チップの引き出し電極となる第2の導体と、
前記絶縁ケース内において、前記第1の導体と前記第2の導体の間に配置される第3の導体と、を備え、
前記第1の導体と前記第3の導体間の電位差は、前記第1の導体と前記第2の導体間の電位差よりも小さく、
前記第3の導体の前記第1の導体と対向する面の面積は、前記第2の導体の前記第1の導体と対向する面の面積よりも広いことを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールであって、
前記第1の導体と前記第3の導体は同電位であることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパワー半導体モジュールであって、
前記第1の導体は、さらにネジにより前記絶縁ケースと接続され、
前記絶縁ケースに設けられるネジ穴の空隙部分は、前記第1の導体と前記第3の導体の間に配置されることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールであって、
前記第3の導体の一部が前記絶縁ケース内に露出し、当該露出した第3の導体は、第4の導体を介して、前記第1の導体と電気的に接続されることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールであって、
前記第3の導体の一部が前記絶縁ケース外に露出し、当該露出した第3の導体は、第4の導体を介して、前記第1の導体と電気的に接続されることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項6】
請求項4に記載のパワー半導体モジュールであって、
前記第4の導体は、ボンディングワイヤであることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項7】
請求項4に記載のパワー半導体モジュールであって、
前記第4の導体は、半田であることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項8】
請求項5に記載のパワー半導体モジュールであって、
前記第3の導体の一部は、前記絶縁ケースの上面側に露出していることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項9】
請求項5に記載のパワー半導体モジュールであって、
前記第3の導体の一部は、前記絶縁ケースの側面側に露出していることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体モジュールの構造に関し、特に、コロナ放電を抑制しパワー半導体モジュールの絶縁信頼性向上に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールの絶縁体中に空隙やクラックなどの欠陥部が存在すると、電圧印加時にその欠陥部へ電界が集中し、コロナ放電と呼ばれる微弱な放電が発生する。コロナ放電が発生した状態で電圧を印加し続けると空隙やクラックを起点として絶縁劣化が進展し、最終的には絶縁破壊してパワー半導体モジュールの故障に至る。
【0003】
そこで、コロナ放電を抑制し絶縁信頼性を担保することが、パワー半導体モジュール(特に3.3kV以上の高電圧を扱う電鉄向け等のパワー半導体モジュール)には求められている。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、「絶縁ケースに設けられたネジ穴部分に空気より大きい比誘電率を有する絶縁樹脂を封入して空隙領域を低減し、コロナ放電を抑制する半導体装置」が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、「絶縁ケースの内壁に突出部を設けて突出部の下面と絶縁シートとの間に第1の隙間を形成し、その第1の隙間に封止樹脂を充填することで、絶縁シートへの水分の浸入を抑制し、絶縁シートの吸湿による絶縁性能の低下を防止するパワーモジュール」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−74284号公報
【特許文献2】特開2014−203978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、パワー半導体モジュールにおいては、絶縁部分でのコロナ放電の発生を防止し絶縁信頼性を向上することが、製品の信頼性を維持し、製造歩留りを向上する上で重要な課題である。
【0008】
上記特許文献1では、ネジ穴部分に封入した絶縁樹脂中に気泡などの空隙があると、その空隙部分でコロナ放電が生じてしまう。
【0009】
また、上記特許文献2では、隙間の狭い部分まで十分に封止樹脂が充填されずに空隙ができ、コロナ放電が生じる可能性がある。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、絶縁部分に空隙やクラックなどの欠陥が存在する場合であっても、欠陥部でのコロナ放電の発生を抑制し、絶縁信頼性の高いパワー半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願発明のパワー半導体モジュールの主な特徴は、以下の通りである。
【0012】
パワー半導体チップを収容する絶縁ケースと、前記パワー半導体チップを搭載する絶縁基板と、前記絶縁基板を搭載し、接着剤により前記絶縁ケースと接続される第1の導体と、一部が前記絶縁ケース内に配置され、前記パワー半導体チップの引き出し電極となる第2の導体と、前記絶縁ケース内において、前記第1の導体と前記第2の導体の間に配置される第3の導体と、を備え、前記第1の導体と前記第3の導体間の電位差は、前記第1の導体と前記第2の導体間の電位差よりも小さ
く、前記第3の導体の前記第1の導体と対向する面の面積は、前記第2の導体の前記第1の導体と対向する面の面積よりも広いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁部分に空隙やクラックなどの欠陥が存在する場合であっても、欠陥部でのコロナ放電の発生を抑制し、絶縁信頼性の高いパワー半導体モジュールを実現することができる。
【0014】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一般的なパワー半導体モジュールの構造例を示す断面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係るパワー半導体モジュールの構造を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るパワー半導体モジュールの構造を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るパワー半導体モジュールの構造を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るパワー半導体モジュールの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において、同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0017】
先ず、
図1を参照して、本発明の対象となる一般的な電鉄(電気鉄道)向けパワー半導体モジュールについて説明する。
図1は一般的なパワー半導体モジュールの断面構造を示している。
【0018】
パワー半導体モジュール100は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOS(Metal Oxide Semiconductor)等のパワー半導体チップ1が絶縁基板2を介して放熱性を持つ金属ベース板4に搭載されている。絶縁基板2と金属ベース板4の間には、絶縁基板2の裏面電極である裏面の導体パターン3が設けられている。パワー半導体チップ1と絶縁基板2は絶縁ケース5の中に収容され、絶縁ケース5内は絶縁ゲル6で封止されており、絶縁ゲル6と絶縁ケース5の上面の間には空間14が存在する。
【0019】
金属ベース板4と絶縁ケース5は、接着剤7とネジ8を用いて接続されている。パワー半導体チップ1のコレクタ電極(ドレイン電極)、エミッタ電極(ソース電極)やゲート電極は、ボンディングワイヤ9〜11、絶縁基板上の導体パターン12、引き出し電極である端子13を介して絶縁ケース5外に引き出されている。端子13の一部は絶縁ケース5の中にインサートされている。
【0020】
一般的なパワー半導体モジュールでは、
図1に示すように、高電位部(絶縁基板上の導体パターン12、ボンディングワイヤ9〜11、端子13)と低電位部(金属ベース板4、ネジ8)との間に絶縁体(絶縁基板2、絶縁ケース5、絶縁ゲル6)を設けることで、高電位部−低電位部間の絶縁が図られている。
【0021】
しかしながら、高電位部と低電位部との間に空隙(例えば絶縁体中の気泡)が存在する場合には、そこへ電界が集中し、空隙への印加電圧がその絶縁破壊強度を上回るとコロナ放電が発生してしまう。パワー半導体モジュールのコロナ放電の一例としては、絶縁ケース5に設けられたネジ穴の空隙部分16でコロナ放電が生じることが知られている。ネジ穴の空隙部分16でのコロナ放電を抑制するために、例えば上記特許文献1では、絶縁ケースに設けられたネジ穴の空隙部分に絶縁樹脂を封入して空隙領域を低減しコロナ放電を抑制する様にしている。
【0022】
次に、
図2Aおよび
図2Bを参照して、本実施例のパワー半導体モジュールについて説明する。
図2Aは本実施例のパワー半導体モジュールの断面構造を示し、
図2Bは
図2Aの上面図(A−A’矢視図)を示している。なお、
図2Bでは平面構造が分かり易いように要部のみを示す。
【0023】
図2A,
図2Bに示すように、本実施例のパワー半導体モジュール200は、パワー半導体チップ1と、パワー半導体チップを搭載する絶縁基板2と、絶縁基板2を搭載する金属ベース板4と、パワー半導体チップ1と絶縁基板2を収容する絶縁ケース5と、絶縁ケース5と金属ベース板4を接続するネジ8と、パワー半導体チップ1と端子13とを接続するためのボンディングワイヤ9と絶縁基板上の導体パターン12と、パワー半導体チップ1の電極を絶縁ケース5外へ引き出すための引き出し電極である端子13と、絶縁ケース5内に充填する絶縁ゲル6と、金属ベース板4と端子13との間に配置する導体(シールド)15、導体(シールド)15と金属ベース板4とを接続するボンディングワイヤ17、とから構成されている。
【0024】
また、絶縁基板2と金属ベース板4の間には、絶縁基板2の裏面電極である裏面の導体パターン3が設けられている。パワー半導体チップ1と絶縁基板2は絶縁ケース5の中に収容され、絶縁ケース5内は絶縁ゲル6で封止されており、絶縁ゲル6と絶縁ケース5の上面の間には空間14が存在する。
【0025】
金属ベース板4と絶縁ケース5は、接着剤7とネジ8を用いて接続されている。パワー半導体チップ1のコレクタ電極(ドレイン電極)、エミッタ電極(ソース電極)やゲート電極は、ボンディングワイヤ9〜11、絶縁基板上の導体パターン12、引き出し電極である端子13を介して絶縁ケース5外に引き出されている。端子13と導体(シールド)15の一部は絶縁ケース5の中にインサートされている。
【0026】
上記構成部材のうち、パワー半導体チップ1、ボンディングワイヤ9〜11、絶縁基板上の導体パターン12と端子13とが高電位部であり、金属ベース板4とネジ8とが低電位部となる。高電位部と低電位部との間に空隙が存在すると、そこへ電界が集中し、空隙への印加電圧がその絶縁破壊強度を上回るとコロナ放電が発生し易くなる。
図2Aでは、ネジ穴の空隙部分16が、高電位部である端子13と、低電位部であるネジ8との間に位置するためコロナ放電が生じ得る。
【0027】
そこで本実施例では、上記コロナ放電の発生を抑制するために、端子13とネジ8との間に、ネジ8および金属ベース板4と同電位となる導体(シールド)15が設けられている。導体(シールド)15の一部は絶縁ケース5の内面に露出しており、その露出部分と金属ベース板4とがボンディングワイヤ17により電気的に接続されている。金属ベース板4とネジ8は同電位であるから、導体(シールド)15とネジ8は同電位となる。つまり、金属ベース板4(第1の導体)と導体(シールド)15(第3の導体)間の電位差は、金属ベース板4(第1の導体)と端子13(第2の導体)間の電位差よりも小さくなる。
【0028】
そのため、導体(シールド)15とネジ8との間にあるネジ穴の空隙部分16には電圧は印加されず、したがってコロナ放電は生じ得ない。以上から、本構成によりネジ穴に空隙部分が存在する場合でも、上記空隙部分でのコロナ放電を抑えることが可能となる。
【0029】
なお、端子13と導体(シールド)15との距離は、その間にある絶縁ケース5の絶縁破壊が生じない程度に離すのが望ましい。例えば、絶縁ケース5の絶縁破壊強度が10kV/mmであり、端子13に10kV印加し、導体(シールド)15をGND電位とする場合は、端子13と導体(シールド)15との距離は少なくとも1mm以上を離す様にする。
【0030】
また、
図2Bに示すように、パワー半導体モジュール200を平面視した場合、導体(シールド)15の面積が端子13の面積よりも広くなるように、導体(シールド)15設けるのが望ましい。言い換えると、導体(シールド)15(第3の導体)の金属ベース板4(第1の導体)と対向する面の面積は、端子13(第2の導体)の金属ベース板4(第1の導体)と対向する面の面積よりも広くするのが望ましい。金属ベース板4と端子13との間において、導体(シールド)15の電界シールドの効果を十分に得るためである。
【実施例2】
【0031】
図3を参照して、実施例2のパワー半導体モジュールについて説明する。
図3は本実施例のパワー半導体モジュールの断面構造を示している。
【0032】
図3に示すように、本実施例のパワー半導体モジュール300は、実施例1(
図2A)の構成と比較すると、導体(シールド)15の一部が絶縁ケース5の内側側壁から露出し、その露出部と金属ベース板4とが半田18により電気的に接続されている点を除き、その他の構成は実施例1(
図2A)と略同様である。
【0033】
本構成により、導体(シールド)15とネジ8が同電位となり、導体(シールド)15とネジ8との間にあるネジ穴の空隙部分16には電圧は印加されず、したがってコロナ放電は生じ得ない。以上から、実施例1と同様に、ネジ穴に空隙が存在する場合でも、上記空隙部分でのコロナ放電を抑えることが可能となる。
【実施例3】
【0034】
図4を参照して、実施例3のパワー半導体モジュールについて説明する。
図4は本実施例のパワー半導体モジュールの断面構造を示している。
【0035】
図4に示すように、本実施例のパワー半導体モジュール400は、実施例1(
図2A)の構成と比較すると、導体(シールド)15の一部が絶縁ケース5の外側上面に引き出され、導体(シールド)15と金属ベース板4とが導体19により電気的に接続されている点を除き、その他の構成は実施例1(
図2A)と略同様である。
【0036】
本構成により、導体(シールド)15とネジ8が同電位となり、導体(シールド)15とネジ8との間にあるネジ穴の空隙部分16には電圧は印加されず、したがってコロナ放電は生じ得ない。以上から、実施例1と同様に、ネジ穴に空隙が存在する場合でも、上記空隙部分でのコロナ放電を抑えることが可能となる。
【実施例4】
【0037】
図5を参照して、実施例4のパワー半導体モジュールについて説明する。
図5は本実施例のパワー半導体モジュールの断面構造を示している。
【0038】
図5に示すように、本実施例のパワー半導体モジュール500は、実施例1(
図2A)と比較すると、導体(シールド)15の一部が絶縁ケース5の外側側壁面へ引き出され、導体(シールド)15と金属ベース板4とが導体20により電気的に接続されている点を除き、その他の構成は実施例1(
図2A)と略同様である。
【0039】
本構成により、導体(シールド)15とネジ8が同電位となり、導体(シールド)15とネジ8との間にあるネジ穴の空隙部分16には電圧は印加されず、したがってコロナ放電は生じ得ない。以上から、実施例1と同様に、ネジ穴に空隙が存在する場合でも、上記空隙部分でのコロナ放電を抑えることが可能となる。
【0040】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…パワー半導体チップ、2…絶縁基板、3…裏面電極(裏面の導体パターン)、4…金属ベース板、5…絶縁ケース、6…絶縁ゲル、7…接着剤、8…ネジ、9,10,11,17…ボンディングワイヤ、12…絶縁基板上の導体パターン、13…端子、14…空間、15…導体(シールド)、16…ネジ穴の空隙部分、18…半田、19,20…導体、100,200,300,400,500…パワー半導体モジュール。