(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の温冷感推定処理方法及び前記第2の温冷感推定処理方法の両方を用いた温冷感の推定は、前記第1の温冷感推定処理方法による温冷感の推定結果と、前記第2の温冷感推定処理方法による温冷感の推定結果とを、所定の値により重み付け平均することによ
り行われる、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の温冷感推定方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様に係る温冷感推定方法は、人が暑さ又は寒さを感じる度合いを示す温冷感を推定する温冷感推定装置における温冷感推定方法であって、前記人及び前記人の周囲の少なくとも一方の温熱環境に関する温熱環境情報を取得し、前記温熱環境情報に基づき、温冷感を推定するための処理方法として、(1)第1の温冷感推定処理方法のみ、(2)第2の温冷感推定処理方法のみ、(3)前記第1の温冷感推定処理方法及び前記第2の温冷感推定処理方法の両方、のいずれかを選択し、前記選択された処理方法を用いて温冷感を推定する。
【0014】
本態様によれば、第1の温冷感推定処理方法及び第2の温冷感推定処理方法の中から、温熱環境に応じた最適な温冷感推定処理方法を選択し、選択された温冷感推定処理方法を用いて温冷感を推定することにより、温熱環境に応じて温冷感を正確に推定することができる。
【0015】
例えば、前記第1の温冷感推定処理方法は、前記人の放熱量に基づく温冷感推定処理方法であり、前記第2の温冷感推定処理方法は、前記人の表面温度に基づく温冷感推定処理方法であるように構成してもよい。
【0016】
本態様によれば、人の放熱量に基づく第1の温冷感推定処理方法及び人の表面温度に基づく第2の温冷感推定処理方法の中から温熱環境に応じた最適な温冷感推定処理方法を選択することができる。これにより、温熱環境に応じて温冷感を正確に推定することができる。
【0017】
例えば、前記温熱環境情報は、前記人が存在する部屋の室外と室内との気温差であるように構成してもよい。
【0018】
本態様によれば、温熱環境情報として、室外と室内との気温差を用いることができる。
【0019】
例えば、前記気温差が第1の閾値以上であるか否かを判定し、前記気温差が前記第1の閾値以上である場合において、前記人による前記室内への入室から所定の時間が経過するまでは前記第2の温冷感推定処理方法を選択し、前記所定の時間が経過した後は前記第1の温冷感推定処理方法を選択するように構成してもよい。
【0020】
本態様によれば、気温差が第1の閾値以上である場合において、人による室内への入室から所定の時間が経過するまでは、着衣表面からの放熱量が皮膚からの放熱量と等しいとみなせない温熱環境であるため、第2の温冷感推定処理方法を選択する。また、気温差が第1の閾値以上である場合において、所定の時間が経過した後は、着衣表面からの放熱量が皮膚からの放熱量と等しいとみなせる温熱環境であるため、第1の温冷感推定処理方法を選択する。その結果、温熱環境に応じて温冷感を正確に推定することができる。
【0021】
例えば、前記気温差が第1の閾値以上であるか否かを判定し、前記気温差が前記第1の閾値以上である場合、さらに、前記人の表面温度と前記室内の気温との差分値が第2の閾値以上であるか否かを判定し、前記人の表面温度と前記室内の気温との差分値が前記第2の閾値以上である場合には、前記第2の温冷感推定処理方法を選択し、前記人の表面温度と前記室内の温度との差分値が前記第2の閾値未満である場合には、前記第1の温冷感推定処理方法を選択するように構成してもよい。
【0022】
本態様によれば、気温差が第1の閾値以上であり、且つ、人の表面温度と室内の気温との差分値が第2の閾値以上である場合には、着衣表面からの放熱量が皮膚からの放熱量と等しいとみなせない温熱環境であるため、第2の温冷感推定処理方法を選択する。また、気温差が第1の閾値以上であり、且つ、人の表面温度と室内の温度との差分値が第2の閾値未満である場合には、着衣表面からの放熱量が皮膚からの放熱量と等しいとみなせる温熱環境であるため、第1の温冷感推定処理方法を選択する。その結果、温熱環境に応じて温冷感を正確に推定することができる。
【0023】
例えば、前記温熱環境情報は、前記人の足部の表面温度であり、前記足部の表面温度が第3の閾値以上であるか否かを判定し、前記足部の表面温度が前記第3の閾値以上である場合には、前記第1の温冷感推定処理方法を選択し、前記足部の表面温度が前記第3の閾値未満である場合には、前記第2の温冷感推定処理方法を選択するように構成してもよい。
【0024】
本態様によれば、足部の表面温度が第3の閾値以上である場合には、人の放熱量に応じた温冷感が得られるため、第1の温冷感推定処理方法を選択する。また、足部の表面温度が第3の閾値未満である場合には、人の放熱量に応じた温冷感が得られないため、第2の温冷感推定処理方法を選択する。その結果、温熱環境に応じて温冷感を正確に推定することができる。
【0025】
例えば、前記温熱環境情報は、前記人の足部の周囲の気温であり、前記足部の周囲の気温が第4の閾値以上であるか否かを判定し、前記足部の周囲の気温が前記第4の閾値以上である場合には、前記第1の温冷感推定処理方法を選択し、前記足部の周囲の気温が前記第4の閾値未満である場合には、前記第2の温冷感推定処理方法を選択するように構成してもよい。
【0026】
本態様によれば、足部の周囲の気温が第4の閾値以上である場合には、人の放熱量に応じた温冷感が得られるため、第1の温冷感推定処理方法を選択する。また、足部の周囲の気温が第4の閾値未満である場合には、人の放熱量に応じた温冷感が得られないため、第2の温冷感推定処理方法を選択する。その結果、温熱環境に応じて温冷感を正確に推定することができる。
【0027】
例えば、前記温熱環境情報は、前記人の手部の表面温度であり、前記手部の表面温度が第5の閾値以上であるか否かを判定し、前記手部の表面温度が前記第5の閾値以上である場合には、前記第1の温冷感推定処理方法を選択し、前記手部の表面温度が前記第5の閾値未満である場合には、前記第2の温冷感推定処理方法を選択するように構成してもよい。
【0028】
本態様によれば、手部の表面温度が第5の閾値以上である場合には、人の放熱量に応じた温冷感が得られるため、第1の温冷感推定処理方法を選択する。また、手部の表面温度が第5の閾値未満である場合には、人の放熱量に応じた温冷感が得られないため、第2の温冷感推定処理方法を選択する。その結果、温熱環境に応じて温冷感を正確に推定することができる。
【0029】
例えば、前記第1の温冷感推定処理方法は、前記人の露出部分の少なくとも一部と前記人の着衣部分の少なくとも一部とを含む領域である人体領域の表面温度と、前記人の周囲の気温との差分値を算出し、前記差分値に所定の値を乗じることにより前記人からの放熱量を算出し、前記人からの放熱量に基づき、温冷感を推定することにより行われるように構成してもよい。
【0030】
本態様によれば、人の放熱量に基づき、温冷感を容易に推定することができる。
【0031】
例えば、前記人体領域の表面温度は、サーモカメラにより撮影された前記人を含む領域の熱画像を用いて算出されるように構成してもよい。
【0032】
本態様によれば、熱画像を用いて人体領域の表面温度を容易に算出することができる。
【0033】
例えば、前記第2の温冷感推定処理方法は、前記人の露出部分の少なくとも一部と前記人の着衣部分の少なくとも一部とを含む領域である人体領域の表面温度を取得し、前記人体領域の表面温度と第6の閾値との比較結果に基づき、温冷感を推定することにより行われるように構成してもよい。
【0034】
本態様によれば、人の表面温度に基づき、温冷感を容易に推定することができる。
【0035】
例えば、前記人体領域の表面温度は、サーモカメラにより撮影された前記人を含む領域の熱画像を用いて算出されるように構成してもよい。
【0036】
本態様によれば、熱画像を用いて人体領域の表面温度を容易に算出することができる。
【0037】
例えば、前記人は車両に搭乗しており、前記人の周囲は前記車両の室内及び室外の少なくとも一方であるように構成してもよい。
【0038】
本態様によれば、例えば人が車両に搭乗している温熱環境において、温冷感を正確に推定することができる。
【0039】
例えば、前記第1の温冷感推定処理方法及び前記第2の温冷感推定処理方法の両方を用いた温冷感の推定は、前記第1の温冷感推定処理方法による温冷感の推定結果と、前記第2の温冷感推定処理方法による温冷感の推定結果とを、所定の値により重み付け平均することにより行われるように構成してもよい。
【0040】
本態様によれば、温冷感をより正確に推定することができる。
【0041】
例えば、前記推定された温冷感に基づき、空気調和機の風量、風温及び風向のいずれかを制御するための指示情報を前記空気調和機に出力するように構成してもよい。
【0042】
本態様によれば、例えば温冷感が暑くも寒くもないという値に近付くように、空気調和機を制御することができる。これにより、空気調和機による空調が冷やし過ぎ又は暖め過ぎとなるのを抑制することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0043】
本発明の一態様に係る温冷感推定装置は、人が暑さ又は寒さを感じる度合いを示す温冷感を推定する温冷感推定装置であって、前記温冷感推定装置は、プロセッサとメモリとを備え、前記プロセッサは、前記人及び前記人の周囲の少なくとも一方の温熱環境に関する温熱環境情報を取得し、前記温熱環境情報に基づき、温冷感を推定するための処理方法として、(1)第1の温冷感推定処理方法のみ、(2)第2の温冷感推定処理方法のみ、(3)前記第1の温冷感推定処理方法及び前記第2の温冷感推定処理方法の両方、のいずれかを選択し、前記選択された処理方法を用いて温冷感を推定する。
【0044】
本態様によれば、第1の温冷感推定処理方法及び第2の温冷感推定処理方法の中から、温熱環境に応じた最適な温冷感推定処理方法を選択し、選択された温冷感推定処理方法を用いて温冷感を推定することにより、温熱環境に応じて温冷感を正確に推定することができる。
【0045】
本発明の一態様に係る空気調和機は、上述した温冷感推定装置を備え、前記温冷感推定装置により推定された温冷感に基づき、風量、風温及び風向のいずれかを制御する。
【0046】
本態様によれば、例えば温冷感が暑くも寒くもないという値に近付くように、空気調和機を制御することができる。これにより、空気調和機による空調が冷やし過ぎ又は暖め過ぎとなるのを抑制することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0047】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、人が暑さ又は寒さを感じる度合いを示す温冷感を推定する温冷感推定装置として機能させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、前記人及び前記人の周囲の少なくとも一方の温熱環境に関する温熱環境情報を取得し、前記温熱環境情報に基づき、温冷感を推定するための処理方法として、(1)第1の温冷感推定処理方法のみ、(2)第2の温冷感推定処理方法のみ、(3)前記第1の温冷感推定処理方法及び前記第2の温冷感推定処理方法の両方、のいずれかを選択し、前記選択された処理方法を用いて温冷感を推定することを実行させる。
【0048】
本態様によれば、第1の温冷感推定処理方法及び第2の温冷感推定処理方法の中から、温熱環境に応じた最適な温冷感推定処理方法を選択し、選択された温冷感推定処理方法を用いて温冷感を推定することにより、温熱環境に応じて温冷感を正確に推定することができる。
【0049】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD−ROM等の記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0050】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0051】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0052】
(実施の形態1)
[1−1.温冷感推定装置の構成]
まず、
図1及び
図2を参照しながら、実施の形態1に係る温冷感推定装置10の構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る温冷感推定装置10の使用例を示す図である。
図2は、実施の形態1に係る温冷感推定装置10の構成を示すブロック図である。
【0053】
図1に示すように、温冷感推定装置10は、例えば自動車20(車両の一例)の車室201内(部屋の室内の一例)に設置されている。温冷感推定装置10は、例えば冬季(又は夏季)において外気に曝された状態の人30が暖房運転中(又は冷房運転中)の車室201内に搭乗した場合において、自動車20のシート202に着座した人30(運転者等)の温冷感を推定する。後述するように、温冷感推定装置10により推定された温冷感は、カーエアコン40の風量、風温及び風向のいずれかの制御に利用される。
【0054】
ここで、
図1に示すように、カーエアコン40は、自動車20の車室201内の空調を行うための空気調和機である。カーエアコン40は、冷房運転時には人30の上半身に向けて冷風を吹き出し、暖房運転時には人30の上半身及び足元に向けて温風を吹き出す。
【0055】
図1及び
図2に示すように、温冷感推定装置10は、第1のサーモカメラ101と、第2のサーモカメラ102と、第1の温冷感推定部103と、第2の温冷感推定部104と、車内温度センサ105と、車外温度センサ106と、温冷感推定方法判定部107と、制御部108とを備えている。
【0056】
第1のサーモカメラ101及び第2のサーモカメラ102の各々は、物体から放射される赤外線を検出することにより、空間内の温度分布を示す熱画像を撮影するサーモカメラである。
図1に示すように、第1のサーモカメラ101は、例えば車室201内のダッシュボードに設置され、シート202に着座している人30の正面側における下半身の熱画像を撮影する。第2のサーモカメラ102は、例えば車室201内のルームミラーに設置され、シート202に着座している人30の正面側における上半身の熱画像を撮影する。第1のサーモカメラ101及び第2のサーモカメラ102は、人30の正面側における下半身の熱画像と人30の正面側における上半身の熱画像とを合成することにより、人30の正面側における全身を含む領域の熱画像を取得する。
【0057】
第1の温冷感推定部103は、人30の放熱量に基づく第1の温冷感推定処理方法を用いて、人30の温冷感を推定する。第1の温冷感推定部103は、放熱量算出部109と、温冷感推定部110とを有している。
【0058】
放熱量算出部109は、人30の全身が外界に対して放熱する全体放熱量を算出する。一般に、人30が外界に放熱する経路には、a)対流(伝導を含む)、b)放射、c)呼気又は汗の蒸発の3種類がある。平静状態では、呼気又は汗の蒸発は一定であると考えられる。そのため、放熱量算出部109は、温冷感に支配的な項目である対流による放熱量(以下、「対流放熱量」という)と放射による放熱量(以下、「放射放熱量」という)とを算出する。
【0059】
対流放熱量は、空気と人30との対流による放熱量である。対流放熱量は、人体領域のうち人30の全身の平均表面温度と、車室201内の気温(人の周囲の気温の一例)との差分値に、対流熱伝達率(所定の値の一例)を乗じることにより算出される。なお、人体領域は、人30の露出部分の少なくとも一部と人30の着衣部分の少なくとも一部とを含む領域である。人30の全身の平均表面温度は、第1のサーモカメラ101及び第2のサーモカメラ102により撮影された熱画像から求められる。車室201内の気温は、例えば、車室201内に設置された車内温度センサ105により計測された値が用いられる。なお、車室201内の気温として、熱画像のうち人30を除いた背景画像の平均温度を用いてもよい。対流熱伝達率は、予め設定された固定値である。
【0060】
放射放熱量は、人体領域のうち人30の全身の平均表面温度と人30を取り囲む平均放射温度との差分値に、放射熱伝達率を乗じることにより算出される。平均放射温度及び人30の全身の平均表面温度は、第1のサーモカメラ101及び第2のサーモカメラ102により取得された熱画像から求められる。このとき、平均放射温度としては、熱画像のうち人30を除いた背景画像の平均温度を用いてもよい。あるいは、車室201内に設置されたグローブ温度計(図示せず)により平均放射温度を求めてもよい。放射熱伝達率は、予め設定された固定値である。
【0061】
放熱量算出部109は、上述した対流放熱量と放射放熱量とを加算し、この加算結果に所定の面積比を乗じることにより、全体放熱量を算出する。放熱量算出部109の具体的な計算手法については後述する。
【0062】
温冷感推定部110は、放熱量算出部109により算出された全体放熱量に基づき、人30の温冷感(以下、「第1の温冷感」ともいう)を推定する。温冷感推定部110の具体的な推定手法については後述する。
【0063】
第2の温冷感推定部104は、人30の表面温度に基づく第2の温冷感推定処理方法を用いて、人30の温冷感(以下、「第2の温冷感」ともいう)を推定する。具体的には、第2の温冷感推定部104は、人体領域のうち人30の全身の平均表面温度と第6の閾値とを比較し、平均表面温度が第6の閾値未満である場合には温冷感は低いと推定し、平均表面温度が第6の閾値以上である場合には温冷感は高いと推定する。なお、人30の全身の平均表面温度は、第1のサーモカメラ101及び第2のサーモカメラ102により取得された熱画像から求められる。なお、このような第2の温冷感推定処理方法は、公知の技術を用いることができる。
【0064】
温冷感推定方法判定部107は、人30が存在する車室201内の気温と車室201外(部屋の室外の一例)の気温との気温差(人30の周囲の温熱環境に関する温熱環境情報の一例)に基づき、実行すべき温冷感推定処理方法として、(1)第1の温冷感推定処理方法のみ、及び、(2)第2の温冷感推定処理方法のみ、のいずれかを選択する。温冷感推定方法判定部107は、選択した温冷感推定処理方法により推定された温冷感(第1の温冷感又は第2の温冷感)を制御部108に送信する。
【0065】
具体的には、温冷感推定方法判定部107は、気温差が第1の閾値未満である場合には、第1の温冷感推定処理方法を選択する。また、温冷感推定方法判定部107は、気温差が第1の閾値以上であり、且つ、人体領域のうち人30の全身の平均表面温度と車室201内の気温との差分値が第2の閾値未満である場合には、第1の温冷感推定処理方法を選択する。さらに、温冷感推定方法判定部107は、気温差が第1の閾値以上であり、且つ、人体領域のうち人30の全身の平均表面温度と車室201内の気温との差分値が第2の閾値以上である場合には、第2の温冷感推定処理方法を選択する。温冷感推定方法判定部107は、選択した温冷感推定処理方法に基づき、第1の温冷感及び第2の温冷感のいずれかを制御部108に送信する。なお、車室201内の気温は、例えば車室201内に設置された車内温度センサ105により計測された値が用いられる。また、車室201外の気温は、例えば車室201外に設置された車外温度センサ106により計測された値が用いられる。
【0066】
ここで、温冷感推定方法判定部107による温冷感推定処理方法の選択基準について説明する。人30は、皮膚から着衣を通じて外界に放熱する。このとき、着衣が定常熱伝導状態であると仮定した場合、着衣表面から外界に放熱される放熱量は、皮膚から放熱される放熱量と等しいとみなせるので、着衣表面温度と外界温度(気温)との差分値を求めれば、人30の放熱量を算出することができる。この放熱量と産熱量(代謝量)とがつり合っている場合には、熱収支のバランスがとれているので、人30は温熱的に中性であると推定することができる。一方、放熱量が産熱量よりも大きい場合には、人30は寒く感じると推定することができ、放熱量が産熱量よりも小さい場合には、人30は暑く感じると推定することができる。したがって、人30の放熱量に基づく第1の温冷感推定処理方法では、着衣表面からの放熱量が皮膚からの放熱量と等しいとみなせることが条件となる。換言すると、着衣表面からの放熱量が皮膚からの放熱量と等しいとみなせる場合には、第1の温冷感推定処理方法が有効であるため、温冷感推定方法判定部107は、第1の温冷感推定処理方法を選択する。
【0067】
しかしながら、例えば、人30が気温0℃の室外から気温20℃の室内に入ってきた場合には、着衣表面温度は0℃近くになっているため、20℃の温熱環境から0℃の着衣表面に対して熱の移動が開始する。このとき、着衣表面から外界に対する放熱量はマイナス(受熱)と算出されるが、皮膚から0℃の着衣表面に対する放熱量はプラス(放熱)と算出される。すなわち、着衣表面からの放熱量と皮膚からの放熱量とは全く異なっている。したがって、この場合には、第1の温冷感推定処理方法は有効ではないため、温冷感推定方法判定部107は、第2の温冷感推定処理方法を選択する。
【0068】
なお、人30の温冷感は着衣量に依存するので、第2の温冷感推定処理方法による温冷感の推定精度は、第1の温冷感推定処理方法による温冷感の推定精度に比べて高いとは言えない。しかしながら、上述したように、着衣表面からの放熱量が皮膚からの放熱量と等しいとみなせない状況においては、第2の温冷感推定処理方法は、第1の温冷感推定処理方法よりも現実の温冷感を反映しているとみなせる。
【0069】
制御部108は、温冷感推定方法判定部107から送信された温冷感(第1の温冷感又は第2の温冷感)に基づき、カーエアコン40の風量、風温及び風向の少なくとも一つを制御するための指示情報をカーエアコン40に送信(出力)する。
【0070】
なお、第1の温冷感推定部103、第2の温冷感推定部104及び温冷感推定方法判定部107の一部又は全部は、温冷感推定装置10が備えるプロセッサ(図示せず)がプログラムを実行することでソフトウェア的に実現されてもよいし、専用回路によりハードウェア的に実現されてもよい。また、上記各構成要素が処理に用いる情報は、温冷感推定装置10が備えるメモリ(図示せず)又はストレージ(図示せず)に格納されている。
【0071】
[1−2.温冷感推定装置の動作]
次に、
図3を参照しながら、実施の形態1に係る温冷感推定装置10の動作(温冷感推定方法)について説明する。
図3は、実施の形態1に係る温冷感推定装置10の動作の流れを示すフローチャートである。
【0072】
図3に示すように、まず、人30が自動車20に搭乗し(S101)、シート202に着座する。その後、第1のサーモカメラ101及び第2のサーモカメラ102は、人30の正面側における全身の熱画像を取得する(S102)。
【0073】
その後、第1の温冷感推定部103の放熱量算出部109は、ステップS102で取得された熱画像に基づき、人30の全身の平均表面温度Tclを求める。また、放熱量算出部109は、車室201内に設置された車内温度センサ105により計測された車室201内の気温Taを取得する。放熱量算出部109は、次式1に示すように、人30の全身の平均表面温度Tclと気温Taとの差分値に、対流熱伝達率hcを乗じることにより、対流放熱量Hcを算出する(S103)。
【0074】
Hc=hc×(Tcl−Ta) (式1)
Hc:対流放熱量
hc:対流熱伝達率
Ta:気温
Tcl:人の全身の平均表面温度
【0075】
その後、放熱量算出部109は、ステップS102で取得された熱画像に基づき、平均放射温度Tr及び人30の全身の平均表面温度Tcを求める。放熱量算出部109は、次式2に示すように、人30の全身の平均表面温度Tcと平均放射温度Trとの差分値に、放射熱伝達率hrを乗じることにより、放射放熱量Hrを算出する(S104)。
【0076】
Hr=hr×(Tc−Tr) (式2)
Hr:放射放熱量
hr:放射熱伝達率
Tc:人の全身の平均表面温度
Tr:平均放射温度
【0077】
その後、放熱量算出部109は、次式3に示すように、対流放熱量Hcと放射放熱量Hrとを加算する。さらに、放熱量算出部109は、次式3に示すように、人30の断熱部301(シート202により断熱されている人30の部分)の面積Wbと全身の面積Wtとの面積比をWs(=Wb/Wt)としたとき、上記加算結果に1−Wsを乗じることにより、全体放熱量Hを算出する(S105)。
【0078】
H=(Hc+Hr)×(1−Ws) (式3)
H:全身放熱量
Ws:断熱部301の面積と全身の面積との面積比
【0079】
その後、第1の温冷感推定部103の温冷感推定部110は、次式4に示すように、全体放熱量Hに基づき第1の温冷感Ts1を推定する(S106)。なお、第1の温冷感Ts1は、例えば「−4」(寒い)〜「+4」(暑い)の値を指標とする。第1の温冷感Ts1の中央の値の「0」(中立)は、暑くも寒くもない快適状態を示す。
【0080】
Ts1=a×H+b (式4)
Ts1:第1の温冷感
a:係数
b:Y切片
【0081】
その後、第2の温冷感推定部104は、ステップS102で取得された熱画像に基づき、人30の全身の平均表面温度Tclを求める。第2の温冷感推定部104は、平均表面温度Tclと第6の閾値との差分値に基づき、第2の温冷感Ts2を推定する(S107)。なお、第2の温冷感Ts2は、第1の温冷感Ts1と同様に、例えば「−4」(寒い)〜「+4」(暑い)の値を指標とする。
【0082】
その後、温冷感推定方法判定部107は、車室201内に設置された車内温度センサ105により計測された車室201内の気温Taを取得する。また、温冷感推定方法判定部107は、車室201外に設置された車外温度センサ106により計測された車室201外の気温Tbを取得する。温冷感推定方法判定部107は、車室201内の気温Taと車室201外の気温Tbとの気温差が第1の閾値以上であるか否かを判定する(S108)。
【0083】
気温差が第1の閾値未満である場合には(S108でNO)、温冷感推定方法判定部107は、第1の温冷感推定処理方法を選択し(S109)、第1の温冷感Ts1を制御部108に送信する(S110)。なお、気温差が第1の閾値未満である状況としては、例えば春季又は秋季においてカーエアコン40の運転を停止しており、人30が気温20℃の車室201外から気温20℃の車室201内に入ってきた場合等が考えられる。
【0084】
ステップS108に戻り、気温差が第1の閾値以上である場合には(S108でYES)、温冷感推定方法判定部107は、人30の全身の平均表面温度Tclと車室201内の気温Taとの差分値が第2の閾値以上であるか否かを判定する(S111)。平均表面温度Tclと車室201内の気温Taとの差分値が第2の閾値未満である場合には(S111でNO)、温冷感推定方法判定部107は、第1の温冷感推定処理方法を選択し(S109)、第1の温冷感Ts1を制御部108に送信する(S110)。なお、気温差が第1の閾値以上であり、且つ、差分値が第2の閾値未満である状況としては、例えば冬季においてカーエアコン40が暖房運転を行っており、人30が気温0℃の車室201外から気温20℃の車室201内に入ってきて、着衣表面温度が20℃に近い場合等が考えられる。
【0085】
ステップS111に戻り、平均表面温度Tclと車室201内の気温Taとの差分値が第2の閾値以上である場合には(S111でYES)、温冷感推定方法判定部107は、第2の温冷感推定処理方法を選択し(S112)、第2の温冷感Ts2を制御部108に送信する(S113)。なお、気温差が第1の閾値以上であり、且つ、差分値が第2の閾値以上である状況としては、例えば冬季においてカーエアコン40が暖房運転を行っており、人30が気温0℃の車室201外から気温20℃の車室201内に入ってきて、着衣表面温度が0℃に近い場合等が考えられる。
【0086】
その後、制御部108は、推定された第1の温冷感Ts1又は第2の温冷感Ts2に基づき、カーエアコン40に指示情報を送信する(S114)。これにより、例えば第1の温冷感Ts1又は第2の温冷感Ts2が暑くも寒くもないという値(中立の値)に近付くように、カーエアコン40の風量、風温及び風向の少なくとも一つが制御される。
【0087】
[1−3.効果]
上述したように、例えば車室201内の気温よりも車室201外の気温が低く、且つ、人30の着衣表面温度よりも車室201内の気温が高い場合には、着衣表面からの放熱量が皮膚からの放熱量と等しいとみなせない。このような場合、温冷感推定方法判定部107は、人30の放熱量に基づく第1の温冷感推定処理方法を選択せず、人30の表面温度に基づく第2の温冷感推定処理方法を選択する。これにより、第1の温冷感推定処理方法では温冷感を正確に推定することができない温熱環境においても、温冷感を一定の精度で推定することができる。
【0088】
また、例えば温冷感推定装置10を自動車20に搭載することにより、温冷感が暑くも寒くもないという値に近付くように、カーエアコン40を制御することができる。これにより、カーエアコン40による空調が冷やし過ぎ又は暖め過ぎとなるのを抑制することができ、省エネルギー化を図ることができる。その結果、従来カーエアコン40で消費されていた余分なエネルギーを自動車20の走行エネルギーに充てることができ、自動車20の航続距離を伸ばすことができる。
【0089】
なお、本実施の形態では、寒い車室201外から暖かい車室201内に人30が移動する場合について説明したが、これとは反対に、暑い車室201外から寒い車室201内に人30が移動する場合にも、上述した効果を得ることができる。
【0090】
また、第2の温冷感推定部104は、人30の全身の平均表面温度を用いて第2の温冷感を推定したが、これに限定されず、例えば人30の足部302又は手部303の平均表面温度を用いて第2の温冷感を推定してもよい。なお、人30は寒さを感じると、手部303及び足部302等の末端部における血管を収縮させて放熱を抑制するような適応反応を行うので、全身の平均表面温度よりも、末端部の平均表面温度の方が温冷感との相関が高くなる。この場合、末端部の皮膚温度を直接計測することが望ましいが、皮膚と着衣とが密着している場合には着衣表面温度を計測してもよい。なお、顔面の皮膚温度も比較的温冷感と相関が高いため、人30の顔面の平均表面温度を用いて第2の温冷感を推定してもよい。
【0091】
また、本実施の形態では、上述したステップS111において、温冷感推定方法判定部107は、人30の全身の平均表面温度Tclと車室201内の気温Taとの差分値が第2の閾値以上であるか否かを判定したが、これに限定されない。ステップS111に代えて、温冷感推定方法判定部107は、気温差が第1の閾値以上である場合に、人30が車室201内に入ってきてから所定の時間が経過するまでは第2の温冷感推定処理方法を選択し、所定の時間が経過した後は第1の温冷感推定処理方法を選択してもよい。これは、例えば人30が気温0℃の室外から気温20℃の室内に入ってきてから所定の時間が経過するまでは、着衣表面温度は0℃近くまで低下していることにより、着衣表面からの放熱量と皮膚からの放熱量とが異なるためである。
【0092】
(実施の形態2)
[2−1.温冷感推定装置の構成]
次に、
図4及び
図5を参照しながら、実施の形態2に係る温冷感推定装置10Aの構成について説明する。
図4は、実施の形態2に係る温冷感推定装置10Aの使用例を示す図である。
図5は、実施の形態2に係る温冷感推定装置10Aの構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態では、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0093】
本実施の形態では、冬季においてカーエアコン40が暖房運転を行う場合について説明する。
図4に示すように、自動車20のシート202には、人30の背面を温めるためのシートヒータ203が設置されている。
【0094】
図4及び
図5に示すように、温冷感推定装置10Aは、上記実施の形態1で説明した構成要素に加えて、熱流計111を備えている。熱流計111は、
図4で示すように、シートヒータ203に設置され、シートヒータ203から人30への放熱量(熱移動量)を計測する。なお、熱流計111に代えて例えば温度計をシートヒータ203に設置し、温度計により計測された温度に基づき放熱量を推定してもよい。あるいは、熱流計111を省略し、例えばシートヒータ203へ供給された電力(電流)に基づき放熱量を推定してもよい。
【0095】
第1の温冷感推定部103Aの放熱量算出部109Aは、人体領域のうちシートヒータ203に接触する領域であるシート部304における伝導放熱量を算出する。具体的には、放熱量算出部109Aは、熱流計111により計測されたシートヒータ203から人30への放熱量の反数を、シート部304における伝導放熱量として算出する。
【0096】
第2の温冷感推定部104Aは、人30の足部302の平均表面温度を用いて第2の温冷感を推定する。具体的には、第2の温冷感推定部104Aは、足部302の平均表面温度と閾値とを比較し、足部302の平均表面温度が閾値よりも低い場合には温冷感は低いと推定し、足部302の平均表面温度が閾値以上である場合には温冷感は高いと推定する。なお、足部302の平均表面温度は、第1のサーモカメラ101及び第2のサーモカメラ102により取得された熱画像から求められる。
【0097】
温冷感推定方法判定部107Aは、人30の足部302の平均表面温度(人の温熱環境に関する温熱環境情報の一例)と第3の閾値との比較結果に基づき、実行すべき温冷感推定処理方法として、(1)第1の温冷感推定処理方法のみ、及び、(2)第2の温冷感推定処理方法のみ、のいずれかを選択する。具体的には、温冷感推定方法判定部107Aは、足部302の平均表面温度が第3の閾値以上である場合には、第1の温冷感推定処理方法を選択する。一方、温冷感推定方法判定部107Aは、足部302の平均表面温度が第3の閾値未満である場合には、第2の温冷感推定処理方法を選択する。なお、足部302の平均表面温度は、第1のサーモカメラ101及び第2のサーモカメラ102により取得された熱画像から求められる。
【0098】
ここで、
図6A及び
図6Bを参照しながら、温冷感推定方法判定部107Aによる温冷感推定処理方法の選択基準について説明する。
図6A及び
図6Bは、被験者の全身の放熱量に基づき推定した推定温冷感と、被験者に申告させた申告温冷感との関係を示すグラフである。なお、
図6Aにおいて円形の枠線Pで囲まれた複数の点は、被験者の足部が冷えている場合の実験結果である。
図6Bにおいて円形の枠線Qで囲まれた複数の点は、被験者の足部をアンカ(行火)で温めた場合の実験結果である。
【0099】
図6A及び
図6Bにおける実線のグラフは、推定温冷感と申告温冷感との理想的な相関であり、高い相関を示している。
図6Aの枠線Pで示す実験結果から、足部が極端に冷えている場合には、放熱量(受熱量)相当の申告温冷感が得られていないことが分かった。一方、
図6Bの枠線Qで示す実験結果から、足部をアンカで温めることにより足部の冷えが改善された場合には、放熱量(受熱量)に応じた申告温冷感が得られることが分かった。すなわち、足部が冷えている場合には、第1の温冷感推定処理方法では温冷感の推定誤差が大きくなるため、第2の温冷感推定処理方法で温冷感を推定した方が、現実の温冷感を反映しているとみなせる。
【0100】
[2−2.温冷感推定装置の動作]
次に、
図7を参照しながら、実施の形態2に係る温冷感推定装置10Aの動作(温冷感推定方法)について説明する。
図7は、実施の形態2に係る温冷感推定装置10Aの動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図7において、上記実施の形態1の
図3と同一のステップには同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0101】
まず、上記実施の形態1で説明したのと同様に、ステップS101〜S104が実行される。その後、第1の温冷感推定部103Aの放熱量算出部109Aは、熱流計111により計測されたシートヒータ203から人30への放熱量の反数を、シート部304における伝導放熱量Hcdとして算出する(S201)。なお、シート部304は、人体領域のうち人30がシートヒータ203に接触する領域である。
【0102】
その後、放熱量算出部109Aは、次式5に示すように、対流放熱量Hcと放射放熱量Hrと伝導放熱量Hcdとを、面積比Wstによって重み付け平均することにより、全体放熱量Hを算出する(S202)。
【0103】
H=(Hc+Hr)×(1−Wst)+Wst×Hcd (式5)
H:全体放熱量
Wst:シート部304の面積と全身の面積との面積比
Hcd:伝導放熱量
【0104】
その後、上記実施の形態1で説明したのと同様に、ステップS106が実行される。その後、第2の温冷感推定部104Aは、ステップS102で取得された熱画像から求めた足部302の平均表面温度Tftに基づき、第2の温冷感Ts2を推定する(S203)。
【0105】
その後、温冷感推定方法判定部107Aは、足部302の平均表面温度Tftが第3の閾値以上であるか否かを判定する(S204)。足部302の平均表面温度Tftが第3の閾値以上である場合には(S204でYES)、温冷感推定方法判定部107Aは、第1の温冷感推定処理方法を選択し(S109)、第1の温冷感Ts1を制御部108に送信する(S110)。なお、足部302の平均表面温度Tftが第3の閾値以上である状況としては、例えば冬季においてカーエアコン40が暖房運転を行っており、人30が足部302をアンカ等で温めている場合等が考えられる。
【0106】
ステップS204に戻り、足部302の平均表面温度Tftが第3の閾値未満である場合には(S204でNO)、温冷感推定方法判定部107Aは、第2の温冷感推定処理方法を選択し(S112)、第2の温冷感Ts2を制御部108に送信する(S113)。なお、足部302の平均表面温度Tftが第3の閾値未満である状況としては、例えば冬季においてカーエアコン40が暖房運転を行っており、人30の足部302が冷えている場合等が考えられる。
【0107】
その後、上記実施の形態1で説明したのと同様に、ステップS114が実行される。
【0108】
[2−3.効果]
上述したように、本実施の形態の温冷感推定装置10Aでは、例えば冬季において人30の放熱量(受熱量)としては暖かいと感じるべきところを、人30の足部302が冷えていることにより暖かいと感じられない場合に、足部302の平均表面温度に基づく第2の温冷感推定処理方法により第2の温冷感を推定する。これにより、放熱量に応じた温冷感が得られない場合においても、温冷感を正確に推定することができる。
【0109】
なお、例えば夏季において人30の放熱量としては涼しいと感じるべきところを、人30の足部302が冷えていないことにより涼しいと感じられない場合にも、上述と同様の効果を得ることができる。
【0110】
また、本実施の形態では、温冷感推定方法判定部107Aは、人30の足部302の平均表面温度と第3の閾値との比較結果に基づき、実行すべき温冷感推定処理方法を選択したが、人30の足部302の周囲の気温(人の周囲の温熱環境に関する温熱環境情報の一例)と第4の閾値との比較結果に基づき、実行すべき温冷感推定処理方法を選択してもよい。この場合、温冷感推定方法判定部107Aは、足部302の周囲の気温が第4の閾値以上である場合には、第1の温冷感推定処理方法を選択する。一方、温冷感推定方法判定部107Aは、足部302の周囲の気温が第4の閾値未満である場合には、第2の温冷感推定処理方法を選択する。
【0111】
さらに、温冷感推定方法判定部107Aは、人30の手部303の平均表面温度(人の温熱環境に関する温熱環境情報の一例)と第5の閾値との比較結果に基づき、実行すべき温冷感推定処理方法を選択してもよい。この場合、温冷感推定方法判定部107Aは、手部303の平均表面温度が第5の閾値以上である場合には、第1の温冷感推定処理方法を選択する。一方、温冷感推定方法判定部107Aは、手部303の平均表面温度が第5の閾値未満である場合には、第2の温冷感推定処理方法を選択する。
【0112】
(変形例)
以上、一つ又は複数の態様に係る温冷感推定方法等について、上記実施の形態1及び2に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態1及び2に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を実施の形態1及び2に施したものや、異なる実施の形態1又は2における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。例えば、上記実施の形態1及び2をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【0113】
例えば、上記各実施の形態では、温冷感推定方法判定部107(107A)は、温熱環境情報に基づき、実行すべき温冷感推定処理方法として、(1)第1の温冷感推定処理方法のみ、及び、(2)第2の温冷感推定処理方法のみ、のいずれかを選択したが、これに限定されない。温冷感推定方法判定部107(107A)は、温熱環境情報に基づき、実行すべき温冷感推定処理方法として、(1)第1の温冷感推定処理方法のみ、(2)第2の温冷感推定処理方法のみ、(3)第1の温冷感推定処理方法及び第2の温冷感推定処理方法の両方、のいずれかを選択してもよい。温冷感推定方法判定部107(107A)は、第1の温冷感推定処理方法及び第2の温冷感推定処理方法の両方を選択した場合、例えば第1の温冷感推定処理方法による温冷感の推定結果と、第2の温冷感推定処理方法による温冷感の推定結果とを、所定の値により重み付け平均することにより、温冷感を推定する。例えば、足部の表面温度Cを判定するための閾値に、A℃からB℃(A<B)までの範囲を持たせる。足部の表面温度CがA℃よりも低い場合には、第2の温冷感推定処理結果Ts2を選択する。一方、足部の表面温度CがB℃よりも高い場合には、第1の温冷感推定処理結果Ts1を選択する。足部の表面温度CがA℃からB℃の範囲内である場合には、次式6で示す、第1の温冷感推定処理結果Ts1と第2の温冷感推定処理結果Ts2との重み付け平均を温冷感推定結果とする。
【0114】
(Ts1×(B−C)+Ts2×(C−A))/(B−A) (式6)
【0115】
例えば、上記各実施の形態では、空気調和機をカーエアコン40で構成したが、これに限定されず、空気調和機を例えば居室内に設置されたスポットエアコンで構成してもよい。
【0116】
例えば、上記各実施の形態では、車両を自動車20で構成したが、これに限定されず、車両を例えば電車又は航空機等で構成してもよい。
【0117】
例えば、上記各実施の形態では、温冷感推定装置10(10A)を自動車20に搭載したが、これに限定されず、例えば住居の居室内に搭載してもよい。
【0118】
上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしても良い。前記ICカード又は前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカード又は前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしても良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカード又は前記モジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしても良い。
【0119】
本発明は、上記に示す方法であるとしても良い。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしても良いし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしても良い。また、本発明は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ等に記録したものとしても良い。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしても良い。また、本発明は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしても良い。また、前記プログラム又は前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、前記プログラム又は前記デジタル信号を、前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。