(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
具体的な実施の形態を説明するのに先立って、この発明の投射光学系と画像表示装置とを説明する。
上記の如く、この発明の投射光学系は、屈折光学系と反射光学系とを有し、屈折光学系は
6群のレンズ群を有し、反射光学系は「屈折力を有する反射光学素子」を少なくとも1個有する。
「複数のレンズ群を有する屈折光学系」を構成するレンズのうちに、正レンズP1と正レンズP2との2種の正レンズが、それぞれ1枚以上含まれる。即ち、正レンズP1と正レンズP2とは、一方もしくは双方が2枚以上含まれていてもよい。
正レンズP1は、以下の条件(1)、(2)を満足するレンズ材料で形成される。
(1) 2<dndTP1
(2) 60<vdP1
条件(1)における「dndTP1」は、20℃〜40℃の範囲における「D線(波長589.29nm)における相対屈折率の温度係数」であり、条件(2)における「vdP1」は、アッベ数である。
【0008】
正レンズP2は、以下の条件(3)、(4)を満足するレンズ材料で形成される。
(3) 50<vdP2
(4) 0.004<ΔθgF2
条件(3)における「vdP2」は、アッベ数である。
条件(4)における「ΔθgF2」は、以下の式(A)により定義される。
【0009】
(A) ΔθgF2=θgF2−(−0.001618×vdP2+0.6415)
式(A)における「vdP2」は、上記の如く正レンズP2のレンズ材料のアッベ数である。また、「θgF2」は、正レンズP2のレンズ材料の「部分分散比」であり、該レンズ材料のg線(波長435.83nm)での屈折率:Ng、F線(波長486.13nm)での屈折率:NF、d線(波長587.56nm)での屈折率:Nd、C線(波長656.27nm)での屈折率:NC、により、以下の式(B)で定義される。
θgF2=(ng−nF)/(nF−nC)
条件(4)のパラメータ:ΔθgFは「異常分散性を表す式」としてよく知られており、縦軸に部分分散比:θgF、横軸にアッベ数:vdを取り、OHARA社のNSL7(511605)とPBM2(620363)を結ぶ直線の式と各硝種のθgFとの差を表している。
【0010】
条件(3)、(4)を満足するレンズ材料は「異常分散性の高い硝材」であり、このような材料により形成される正レンズP2を「屈折光学系中に1枚以上用いる」ことにより、高度な色収差補正が可能になり、「高精細な画像を表示できる画像表示素子」を用いて「高精細なカラーの投射画像」を得ることが可能となる。
しかしながら、条件(3)、(4)を満足するレンズ材料は、一般的に「屈折率温度係数の値が負で大きな値」を持つ。このため、温度変化による「屈折力の負の変化」が大きくなる。このため正レンズP2の正の屈折力が、投射光学系の温度上昇の影響を受けて弱まる方向へ変化する。
条件(1)、(2)を満足する正レンズP1は、条件(1)を満足することにより、正の屈折力が温度上昇により増加する方向に変化する。
従って、投射光学系の温度上昇による「正レンズP2における正の屈折力の減少傾向を、正レンズP1における正の屈折力の増加傾向により相殺する」ことにより、投射光学系の解像性能を「投射光学系の温度変化に拘らず良好に維持」することが可能となる。
【0011】
条件(1)ないし(4)の各パラメータは、より好ましくは、以下の条件(1A)ないし(4A)を満足するのが良い。
(1A) 3<dndTP1
(2A) 62<vdP1
(3A) 72<vdP2
(4A) 0.0048<ΔθgF2
条件(2)、(4)の各パラメータは、より好ましくは、以下の条件(2B)、(4B)を満足するのが良い。
(2B) 62<vdP1<70
(4B) 0.007<ΔθgF2 。
【0012】
2種の正レンズP1および正レンズP2は、さらに、以下の条件(5)を満足することが好ましい。
(5) 0.1<FP2/FP1<2
条件(5)において、「FP1」は正レンズP1のd線における焦点距離、「FP2」は正レンズP2のd線における焦点距離である。
条件(5)は正レンズP1と正レンズP2の屈折力(ともに正である。)の比の好適な範囲を規制している。
投射距離が短い投射光学系による投射画像の結像は、被投射面における焦点深度が狭く、解像度の高い高精細な投射画像を結像させようとすると、高度な温度補正が必要になる。
条件(5)の下限値を下回ると、正レンズP2の屈折力に対して、正レンズP1の屈折力が相対的に小さくなり、温度上昇に伴う正レンズP2の屈折力の減少を、正レンズP1の屈折力の増加で補償することが困難となり易い。逆に、条件(5)の上限を上回ると、正レンズP2の屈折力が、正レンズP1の屈折力に対して相対的に小さくなり、温度上昇に伴う正レンズP2の屈折力の減少に対して、正レンズP1の屈折力の増加が過剰となって適正な温度補正が困難になり易く、解像性能を劣化させ易い。
【0013】
条件(5)のパラメータは、より好ましくは以下の条件:
(5A) 0.1<FP2/FP1<2
を満足することが好ましい。
【0014】
前述のごとく、正レンズP1は1枚以上用いることができるが、条件(1)、(2)を満足するレンズ材料による正レンズP1を、低コストで実現できる「球面レンズ」として形成すると、投射光学系のコスト低減に有効であり、正レンズP1を2枚以上用いても投射光学系のコスト上昇を抑制できる。
【0015】
正レンズP2は、その「20℃ないし40℃の温度範囲におけるD線に対する相対屈折率の温度係数:dndTP2が、条件:
(6) 0> dndTP2
を満足することが好ましい。
条件(1)を満足する正レンズP1とともに、条件(6)を満足する正レンズP2を用いることにより、投射距離が極めて短い「超短投射プロジェクタ」においても、温度変化による像面移動量を小さくできる。
条件(6)のパラメータは、より好ましくは、以下の条件:
(6A) −3> dndTP2
を満足することが好ましい。
【0016】
屈折光学系は上述の如く「複数のレンズ群」を有し、正レンズP1、正レンズP2は、基本的には、複数のレンズ群中に適宜に配置することができる。
投射光学系が光源等の熱源からの熱の影響を受けた場合、熱源と屈折光学系の位置関係により、屈折光学系内で温度が均一にならずに、レンズ群の配列方向に温度勾配が発生しやすい。このような点を鑑みると、正レンズP1と正レンズP2とは「同一のレンズ群内」に含まれることが好ましい。正レンズP1と正レンズP2とを同一のレンズ群に含めると、これらの正レンズの距離が小さくなり、温度勾配によるレンズ間の温度差が小さくなって、温度変化による性能劣化の補償を効率よく行うことができる。
なお、ここで「レンズ群」とは、1つのレンズ保持部材により保持された複数のレンズを言う。
【0017】
正レンズP1と正レンズP2とはまた、開口絞りを含むレンズ群に含めるのが良い。開口絞りを含むレンズ群内に、含まれる正レンズP1が条件(2)を満足し、正レンズP2が条件(3)、(4)を満足することにより、色収差、特に「軸状色収差」を高度に補正することができる。
一方において、開口絞りの近傍は「光束が絞られる」ことにより昇温しやすく、温度が高くなり易い。このような位置に配置される正レンズP1が条件(1)を満足することにより、投射光学系の温度変化による像面移動も高度に補正することが可能となる。
【0018】
なお、「開口絞り位置」は、屈折光学系を通る「画像表示素子全域からの光線の束(全体光束)の太さが最も細くなる位置」をいう。
【0019】
正レンズP1はまた「開口絞りよりも縮小側」に配置するのが良い。開口絞りの縮小側は特に温度が高くなりやすく、正レンズP1を「開口絞りの縮小側」に配置することにより、良好な温度補償を行うことが可能となる。
【0020】
また、正レンズP1、正レンズP2ともに「最も縮小側のレンズ群」に含めるのが良い。最も縮小側のレンズ群は照明光学系等の熱源に近くなり易く、特に高温になりやすい。正レンズP1、正レンズP2を最も縮小側のレンズ群に配置することにより、温度変化に対する性能補償が容易になる。
【0021】
さらに、フォーカシングに伴い移動する「移動レンズ群」が複数ある場合に、正レンズP1、正レンズP2を移動レンズ群に設ける場合には、正レンズP1、正レンズP2を「同一の移動レンズ群」に含めることが好ましい。フォーカシングに伴いレンズ群が変位しても、正レンズP1と正レンズP2との相対的な位置関係を不変に保てるので、温度変化に伴う補正が容易になるからである。
【0022】
より好ましくは、正レンズP1、正レンズP2は「フォーカシングに際して移動しないレンズ群」に配置されることが好ましい。フォーカシングに伴う変位や、位置関係の変化を考慮せずに温度補正が可能となる。
【0023】
正レンズP1および正レンズP2は「金属による保持部材により保持する」ことが好ましい。正レンズP1と正レンズP2とを保持する保持部材が金属製であると、金属の持つ高い熱伝導率により、正レンズP1と正レンズP2の温度差を迅速に減少させることができ、温度変化による光学特性の補正が容易になる。
【0024】
屈折光学系とともに投射光学系を構成する反射光学系の「屈折力を持つ反射光学素子」としては「凹面ミラー」を好適に用いることができる。反射光学素子は1個に限らず、複数個用いることもできる。また「光路を屈曲する平面鏡」を投射光学系内に適宜に配置できる。反射光学素子として凹面ミラーを用いると、凹面ミラーの屈折力を屈折光学系の結像機能に組み合わせて、良好な投射画像を実現することが容易である。
【0025】
この場合、屈折光学系により「画像形成部に表示された画像に共役な中間像」を、屈折光学系と凹面ミラーとの間に結像させ、この中間像を凹面ミラーで拡大して被投射面上に拡大画像として結像させることができる。
【0026】
屈折光学系を構成する複数のレンズ群としては、種々の構成が可能である。
屈折光学系は、例えば「縮小側から拡大側に向かって順次、第1ないし第6レンズ群を配して構成」することができ、また「縮小側から拡大側に向かって順次、第1ないし第4レンズ群を配して構成」することもできる。勿論、屈折光学系のレンズ群構成はこれらの例に限定されるものではない。
【0027】
この発明の画像表示装置(プロジェクタ)は、画像表示素子の画像形成部に表示される画像を投射光学系により被投射面上に拡大投影して画像表示する画像表示装置であって、上に説明した投射光学系を用いるものである。
画像表示装置に用いる投射光学系が「屈折力を持つ反射光学素子」として1枚の凹面ミラーを用いる場合には、条件:
(7) TR<0.35
を満足することが好ましい。
条件(7)のパラメータ「TR」は、凹面ミラーと結像光線との交点のうち「被投射面と垂直な方向において被投射面までの距離が最大となる交点P」から、被投射面までの「被投射面に垂直な方向における距離:PL」と、被投射面に投射される最大画像の横幅:Wとの比:PL/Wである。
「被投射面に投射される最大画像」は、被投射面に投射される投射画像の最大のものであり、投射距離が「遠距離」のときの投射画像である。
最大画像の横幅:Wが大きいほど「投射画像のサイズ」が大きく、距離:PLが短いほど、凹面ミラーと被投射面との間隔(これを以下において「投射距離」ともいう。)が小さくなる。条件(7)を満足することにより、短い投射距離で大きな投射画像を表示できる。
【0028】
なお、パラメータ:TRは、より好ましくは、以下の条件:
(7A) TR<0.30
を満足するのが良い。
画像表示装置はまた、条件:
(8) BF/Y<3.5
を満足するのがよい。
条件(8)のパラメータにおける「BF」は、投射光学系における屈折光学系の光軸と画像形成部の交点と、屈折光学系の「画像形成部に最も近いレンズ」の画像形成部との間の光軸上の距離である。
即ち、「BF」は屈折光学系の縮小側の「バックフォーカス」である。
また「Y」は、屈折光学系の光軸と画像形成部との距離の最大値である。
補足すると、屈折光学系は複数の光軸対称なレンズを有する。これら光軸対称なレンズの複数個が共通の光軸を共有するとき、共有された光軸を「屈折光学系の光軸」と称する。屈折光学系を構成する複数のレンズのうちには、他のレンズと「光軸を共有しないレンズ」が1以上存在してもよく。このような場合には、このようなレンズ以外の「光軸を共有するレンズ」により共有された光軸を「屈折光学系の光軸」とする。
条件(8)を満足させることにより、バックフォーカス(BF)を短くできることにより、投射光学系の「より小型化」が可能となる。バックフォーカスを短くすると、照明光源等の熱源に近い「最も縮小側のレンズ群」が昇温し易く、温度変化による像面移動が起こり易くなるが、正レンズP1、正レンズP2を用いることにより、温度変化による像面移動を抑えることが可能となる。
【0029】
また、上記「Y」は、画像表示素子の「画素ピッチ:PT」とともに、条件:
(9) PT/Y<0.001
を満足することが好ましい。
条件(9)を満足するような画像表示素子は「画素ピッチ:PTが小さく」、従って、高精細な画像の表示が可能である。画素ピッチが小さいと、被投射面における焦点深度も小さくなり、温度変化による像面の変位が温度変化に敏感になるが、正レンズP1と正レンズP2とを用いることにより、上述した如く、良好な投射を実現できる。
画像表示装置はまた、条件:
(10) 10<PLQ/Y<30
を満足することが好ましい。
条件(10)のパラメータにおける「PLQ」は、屈折光学系よりも拡大側にある光学素子と結像光線との交点のうち、画像形成部に直交する方向において「画像形成部からの距離が最大となる交点Q」と画像形成部との間の「画像形成部に直交する方向」における距離であり、「Y」は、上記の如く、屈折光学系の光軸と画像形成部との距離の最大値である。
条件(10)は、投射光学系全体の好適な大きさの範囲を規定している。
上限値を上回ると、投射光学系の「屈折光学系の光軸方向のサイズ」が大きくなって、画像表示装置の大型化を招来する。条件(10)の下限を下回ると、投射光学系のサイズが小さくなり、画像表示装置のコンパクト化には有利となるが、屈折光学系を構成するレンズ群の屈折力を大きくする必要が生じ、製造感度誤差が高くなり易い。
条件(10)のパラメータは、より好ましくは以下の条件:
(10A) 10<PLQ/Y<30
を満足することが好ましい。
【0030】
以下に、画像表示装置と投射光学系の実施の形態を3例説明する。
図1、
図9、
図15はそれぞれ、画像表示装置の実施の形態を説明図的に示している。これらの実施の形態において用いられる投射光学系は、図の順序で、後述する投射光学系の具体的な実施例1ないし3に対応する。
なお図15に示す例は、屈折光学系が4群のレンズ群で構成されているので「参考例」であるが、混同の恐れはないと思われるので、以下において実施例3として説明する。
繁雑を避けるため、
図1、
図9、
図15において、混同の恐れが無いと思われるものについて符号を共通化する。
これらの図において、符号Hは「画像表示装置」を示す。符号LVは画像表示素子の「画像形成部」、符号LSは「照明光学系」、符号Fは「透明平行平板」は、符号Prは「プリズム」を示し、符号SCは「被投射面」の実体をなすスクリーンを示している。透明平行平板Fは、画像形成部LVのカバーガラス(シールガラス)を想定している。
図1における符号11、
図9における符号21、
図15における符号31は、それぞれ「屈折光学系」を示し、
図1における符号12、
図9における符号22、
図15における符号32、33はそれぞれ「反射光学系」を示す。
図1、
図9に示す実施の形態においては、反射光学系は1枚の凹面ミラー12、22で構成されており、
図15に示す実施の形態においては、反射光学系は平面ミラー32と凹面ミラー33により構成されている。
【0031】
さらに、
図1における符号13、
図9における符号23、
図15における符号34はそれぞれ「防塵ガラス」を示す。
【0032】
また、
図1、
図9、
図15における符号Sは、屈折光学系中に配置された「開口絞り」を示す。
【0033】
図1、
図9、
図15に示すように直交3軸X、Y、Zを設定する。X方向は「図面に直交」する方向であり、Y方向は「図の上下方向に平行」な方向、Z方向は「図の左右方向に平行」な方向である。
【0034】
これらの図に示すように、Z方向はスクリーンSCおよび画像形成部LVに直交する方向であり、スクリーンSCおよび画像形成部LVはXY面に平行である。
【0035】
またこれらの図において「点P」とあるのは、上に条件(7)のパラメータに関連して説明した「凹面ミラー12、22、33と結像光線との交点のうち被投射面SCと垂直な方向において被投射面SCまでの距離が最大となる交点P」であり、この交点PとスクリーンSCとのZ方向に平行な方向の距離が「投射距離」であり、上に条件(7)のパラメータ「TR」に関連して説明した距離:PLである。
また、
図1、
図9、
図15において「点Q」とあるのは、上に条件(10)のパラメータにおける「PLQ」に関連して説明した、屈折光学系11、21、31よりも拡大側にある光学素子と結像光線との交点のうち、画像形成部LVに直交する方向(Z方向)において「画像形成部LVからの距離が最大となる交点Q」である。
【0036】
「点Q」は、
図1および
図9の実施の形態においては上に説明した「点P」と合致している。
図15に示す実施の形態においては、点Qは、防塵ガラス34において「結像光線が防塵ガラス34と交わる交点のうちで、画像形成部LVからZ方向の距離が最大となる交点」である。
即ち、
図1、
図9の実施の形態では、点Qを定める「屈折光学系よりも拡大側にある光学素子」は凹面ミラー12、22であるが、
図15に示す実施の形態においては、点Qを定める「屈折光学系よりも拡大側にある光学素子」は「防塵ガラス34」である。
【0037】
画像表示素子は「DMD」、「透過型液晶パネル」、「反射型液晶パネル」等のライトバルブを適宜に用いることができ、その画像形成部LVに画像が表示される。
照明光学系LSは、画像表示素子が自ら発光する機能を持たない場合に、画像形成部LVに形成された画像を照明するためのものであり、画像表示素子が「発光素子の2次元アレイ」のように「生成させた画像を発光させる機能を有する自己発光方式」のものを利用する場合は不要である。
【0038】
以下に説明する実施形態例では、画像表示素子として「DMD」を想定し、DMDにおける2次元的なマイクロミラーアレイにおける個々のマイクロミラーの傾きにより形成される画像を、照明光学系LSからの照明光で照明する。照明光学系LSとしては画像形成部LVを効率よく照明する機能を有するものが好ましく、また、照明をより均一にするため、例えばロッドインテグレータやフライアイインテグレータを用いることが出来る。
【0039】
照明の光源としては、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、LEDなどの白色光源を用いることができ、また単色発光LED、LDなどの単色光源も用いることが出来る。
【0040】
以下に実施の形態を説明する画像表示装置はスクリーンSCに「カラー画像」を投射するものが想定されている。
【0041】
図1および
図9に示す画像表示装置では、3個のDMDが画像表示素子として用いられ、これら3個のDMDの画像形成部に、カラー画像の赤色成分画像、緑色画像成分、青色画像成分が形成されて表示され、これらの色画像成分が、対応する色の照明光により照明される。
各照明光は、各色画像成分により変調され、プリズムPrにより「色合成」されて結像光束として投射光学系に入射する。
図15に示す画像表示装置では、画像表示素子としては1個のDMDが用いられ、その画像形成部LVに、カラー画像の赤色成分画像、緑色画像成分、青色画像成分がサイクリックに表示され、表示される各色成分画像にタイミングを合わせて、対応する色の照明光が順次に照射される。各照明光は、各色画像成分により変調され、結像光束として投射光学系に入射する。
【0042】
結像光束は、屈折光学系11、21、31を透過し、反射光学系12、22、「32と34」により反射され、防塵ガラス13、23、34を介してスクリーンSCに向かって照射され、スクリーンSC上に「カラーの拡大画像」を結像する。
図15の画像表示装置の場合は、カラーの拡大画像は、赤・緑・青の投射画像が順次に切り替わり、視覚によりカラーの拡大画像」として合成される。
【0043】
ここで、画像表示素子における「画像形成部」と、被投射面の実体をなすスクリーンの画像表示領域につき、
図2と
図3を参照して説明する。
図2は、画像表示素子の画像形成部LVを示している。図において、X、Yの各方向は、上に説明した如くであり、
図2の図面に直交する方向がZ方向であって、このZ方向は屈折光学系の光軸に平行な方向であり、図の如く図面に直交する「光軸」を、XY面の原点としている。
画像形成部LVは図示の如く、X方向に長い矩形形状であり、その中心(画像形成部中心)は、図の如く、Y方向の正の方向(図の上方)へ光軸位置からシフトしている。
図における「光軸」と画像形成部LVとの距離のうちで最大になる距離が条件(9)および(10)における「Y」であり、この距離「Y」は、Y方向とは関わりない。
図3は、スクリーン上における「画像形成部領域」を説明図的に示している。画像形成部領域は、
図2に示す画像形成部LVを拡大したものであるから、画像形成部と相似形状であるが、その大きさは「投射光学系による拡大倍率」により異なる。
【0044】
画像形成部領域内に、図の如く代表的な13点、F1〜F13を定め、これらを画角F1〜F13と呼ぶ。
【0045】
「投射光学系の実施例」
以下、
図1、
図9、
図15に実施の形態を示した画像表示装置に用いられている投射光学系の具体例を実施例1ないし3として説明する。
これら実施例1ないし3の投射光学系に用いられている屈折光学系11、21、31はいずれも複数の光軸回転対称なレンズで構成され、すべてのレンズは図中に示すように「光軸を共有」している。
【0046】
実施例1と実施例2では、反射光学系として「1枚の凹面ミラー」が用いられ、実施例3で反射光学系として「1枚の平面ミラーと1枚の凹面ミラー」が用いられている。
【0047】
実施例1における屈折光学系の構成と、遠距離側から近距離側へのフォーカシングの伴うレンズ群の変位を
図4に示す。
また、実施例2における屈折光学系の構成と、遠距離側から近距離側へのフォーカシングの伴うレンズ群の変位を
図10に、実施例3における屈折光学系の構成と、遠距離側から近距離側へのフォーカシングの伴うレンズ群の変位を
図16に示す。
繁雑を避けるため、これらの
図4、
図10、
図16において、混同の恐れが無いと思われるものにつき符号を共通化する。これらの図の左方が「縮小側」、右方が「拡大側」
である。符号LVは前述の如く画像形成部、符号BFは、前述の条件(8)におけるBF(屈折光学系のバクフォーカス)である。
符号I〜VIにより、順次、第1レンズ群Iないし第6レンズ群VIを表す。実施例1と実施例2では、屈折光学系は第1〜第6レンズ群I〜VIで構成され、実施例3では、第1〜第4レンズ群I〜IVによって屈折光学系が構成されている。
符号P1により正レンズP1を表し、符号P2により正レンズP2を表す。
【0048】
実施例に関する以下の説明において、記号の意味は以下の通りである。
f:全系の焦点距離
NA:開口数
ω:半画角(deg)
R:曲率半径(非球面にあっては近軸曲率半径)
D:面間隔
Nd:屈折率
νd:アッベ数
K:非球面の円錐定数
Ai:i次の非球面定数
C:近軸曲率(近軸曲率半径の逆数)
Cj:自由曲面係数 。
【0049】
実施例1と実施例2では、反射光学系をなす凹面ミラーの面形状に「非球面」が用いられ、実施例3においては、反射光学系中の凹面ミラーの面形状に「自由曲面」が用いられている。
「非球面の形状」は、近軸曲率:C、軸からの高さ:H、円錐定数:K、各次数の非球面係数:Aiを用い、ξを「軸方向における非球面量」として、周知の式:
ξ=CH
2/[1+√(1−(1+K)C
2H
2)]+ΣAiH
i
により表し、C、K、Aiを与えて形状を特定する。
「自由曲面の形状」は、近軸曲率:C、軸からの高さ:H、円錐定数:K、自由曲面係数:Cjを用い、ηを光軸方向における自由曲面量として、周知の式:
η=CH
2/[1+√(1−(1+K)C
2H
2)]+ΣCjx
my
n
により表す。
xおよびyは、自由曲面上で(H=0)を「原点」とする凹面ミラーに固定した座標系の座標位置を表し、自由曲面係数:Cjにおける「j」は、
j=[{(m+n)
2+m+3n}/2]+1
で定義される。
近軸曲率半径と円錐定数、自由曲面係数を与えることにより自由曲面の形状を特定する。なお、以下において、長さの次元を有する量に関して、特に断らない限り単位は「mm」である。
「実施例1」
実施例1の投射光学系における屈折光学系は、
図4に示す如く、画像形成部LV側から拡大側に向かって順次に、正の屈折力を有する第1レンズ群Iと、正の屈折力を有する第2レンズ群IIと、正の屈折力を有する第3レンズ群IIIと、正の屈折力を有する第4レンズ群IVと、負の屈折力を有する第5レンズ群Vと、負の屈折力を有する第6レンズ群VIを有してなる。屈折光学系の拡大側に、
図1の如く凹面ミラー21が配置されている。
遠距離側から近距離側へのフォーカシングに際しては、第2レンズ群IIと第4レンズ群IV、第5レンズ群Vが画像形成部LV側に移動し、第3レンズ群IIIが拡大側に移動する。第1レンズ群Iと第6レンズ群VIとはフォーカシングに際し、移動しない。
【0050】
第1レンズ群Iは縮小側から順に、両凸レンズ、両面非球面両凸レンズと、「両凸レンズと両凹レンズと正メニスカスレンズを接合した3枚接合レンズ」と、両面非球面両凸レンズと、「負メニスカスレンズと両凸レンズを接合した接合レンズ」と、開口絞りと、「負メニスカスレンズと拡大側により強い凸面を向けた両凸レンズを接合した接合レンズ」と、「正メニスカスレンズと両凹レンズを接合した接合レンズ」を配してなる。
【0051】
第1レンズ群Iにおける上記「3枚接合レンズ」の拡大側の正メニスカスレンズが正レンズP1であり、上記開口絞りの縮小側の接合レンズにおける両凸レンズが正レンズP1である。
【0052】
第2レンズ群IIは「両凸レンズと両凹レンズを接合した接合レンズ」によりなり、第3レンズ群IIIは、「両凸レンズと「正メニスカスレンズと負メニスカスレンズを接合した接合レンズ」とからなり、第4レンズ群IVは、両面非球面正メニスカスレンズ1枚からなり、第5レンズ群Vは両凸レンズと、負メニスカスレンズと、両面非球面両凹レンズとからなり、第6レンズ群VIは1枚の両凹レンズからなる。
【0053】
以下に、投射光学系の実施例1のデータを示す。
開口数:0.2273
実施例1のデータを表1に示す。一番左側の欄に示す「面番号」は、画像形成部LVを面番号1とし、以下、透明平行平板F、プリズムPrの面を面番号2〜5としている。面番号6が屈折光学系の最も縮小側のレンズ面である。この点は、以下の実施例2においても同様である。
【0055】
「フォーカシングに伴う可変間隔」
近距離、基準距離(基準と表示)、遠距離におけるフォーカシングに伴う可変間隔を表2に示す。
【0057】
「非球面データ」
非球面は、上記データ中の面番号に「*印」を付した面であり(この点は以下の他の実施例でも同様である。)、そのデータを表3に示す。
【0059】
上記の表記において、例えば「2.8853E-10」は、「2.8853×10
-10」を意味する。以下においても同様である。
【0060】
「パラメータ:TRの値」
投射距離に対するパラメータ:TRの値を表4に示す。
【0062】
実施例1において、画像形成部LVの仕様は以下の通りである。
【0063】
ドットサイズ:5.4μm
横方向(X方向)長さ:14.6664mm
縦方向(Y方向)長さ:8.2512mm
光軸から画像形成部中心へのY方向の距離(シフト量):5.5256mm 。
【0064】
図3に示した各画角F1〜F13に対応したスポットダイアグラムを、
図5〜
図8に示す。各スポットダイアグラムは、スクリーン面での結像特性(mm)を波長:638nm(赤)、550nm(緑)、455nm(青)について示している。
図5〜
図7の各スポットダイアグラムは、温度が20℃の時のものであり、
図8に示すスポットダイアグラムは、温度が20℃昇温して40℃となったときの画面サイズ150インチにおけるものである。温度が20℃のときのもの(
図5)と差異がなく、実施例1の投射光学系は「良好な温度補正」がなされていることが明らかである。
【0065】
実施例1においては、開口絞りより縮小側に配置された正レンズP1に条件(1)および(2)を満たす硝材として「OHARA社のL−BSL7 nd:1.51633、vd:64.06、dndT:4.7、θgF:0.5333)を用い、温度変化による焦点距離の変動と、メカ保持部の熱による膨張とのバランスをとっている。
また、正レンズP1を球面レンズとすることで、コストの低減を図っている。また、開口絞りより縮小側に配置された正レンズP2に条件(3)および(4)を満たす硝材として「OHARA社のS−FPL51 nd:1.49700、vd:81.54、dndT:−6.2、θgF:0.5375、ΔθgF:0.028」を用い、色収差の発生を抑えている。
【0066】
屈折率温度係数が「負で大きい」材料の正レンズP2と、屈折率温度形成が「正で大きい」材料の正レンズP1を用いることにより、温度補償を行っている。
【0067】
「実施例2」
実施例2の投射光学系における屈折光学系は、
図10に示す如く、画像形成部LV側から拡大側に向かって順次に、正の屈折力を有する第1レンズ群Iと、負の屈折力を有する第2レンズ群IIと、正の屈折力を有する第3レンズ群IIIと、負の屈折力を有する第4レンズ群IVと、負の屈折力を有する第5レンズ群Vと、負の屈折力を有する第6レンズ群VIとを有してなる。屈折光学系の拡大側に、
図9の如く凹面ミラー22が配置されている。
遠距離側から近距離側へのフォーカシングに際しては、第2レンズ群IIと第4レンズ群IV、第5レンズ群Vが画像形成部LV側に移動し、第3レンズ群IIIが拡大側に移動する。第1レンズ群Iと第6レンズ群VIはフォーカシングに際し、移動しない。
【0068】
第1レンズ群Iは縮小側から順に、両凸レンズと、両面非球面両凸レンズと、「両凸レンズと両凹レンズと両凸レンズとを接合した3枚接合レンズ」と、両面非球面両凸レンズと、「両凹レンズと正メニスカスレンズを接合した接合レンズ」と、開口絞りと、両凸レンズと、「正メニスカスレンズと両凹レンズを接合した接合レンズ」とからなる。
第1レンズ群Iにおける前記「3枚接合レンズ」における縮小側の両凸レンズが正レンズP1であり、拡大側の両凸レンズが正レンズP2である。
【0069】
第2レンズ群IIは「両凸レンズと、その拡大側に接合された両凹レンズとの接合レンズ」からなり、第3レンズ群IIIは、両凸レンズと、「両凸レンズと負メニスカスレンズを接合した接合レンズ」とからなり、第4レンズ群IVは、両面非球面両凸レンズと、負メニスカスレンズとからなり、第5レンズ群Vは、両凸レンズと、「正メニスカスレンズと両凹レンズを接合した接合レンズ」と両面非球面両凹レンズとからなり、第6レンズ群VIは1枚の負メニスカスレンズからなる。
【0070】
以下に、投射光学系の実施例2のデータを示す。
開口数:0.2222
実施例2のデータを表5に示す。
【0072】
「フォーカシングに伴う可変間隔」
近距離、基準距離、遠距離におけるフォーカシングに伴う可変間隔を表6に示す。
【0074】
「非球面データ」
非球面のデータを表7に示す。
【0076】
「パラメータ:TRの値」
投射距離に対するパラメータ:TRの値を表8に示す。
【0078】
実施例2において、画像形成部LVの仕様は、光軸から画像形成部中心へのY方向の距離(シフト量):5.5256mmを含めて、実施例1のものと同じである。
【0079】
図3に示した各画角F1〜F13に対応したスポットダイアグラムを、
図11〜
図14に示す。実施例1のものと同じく、各スポットダイアグラムは、スクリーン面での結像特性(mm)を波長:638nm(赤)、550nm(緑)、455nm(青)について示している。
図11〜
図13の各スポットダイアグラムは、温度が20℃の時のものであり、
図8に示すスポットダイアグラムは、温度が20℃昇温して40℃となったときの画面サイズ150インチにおけるものである。温度が20℃のときのもの(
図11)と差異がなく、実施例2の投射光学系は「良好な温度補正」がなされていることが明らかである。
【0080】
実施例2においては、開口絞りより縮小側に配置された正レンズP1に条件(1)および(2)を満たす硝材として「光ガラス社のJ−PKH1 nd:1.5186、vd:69.89、dndT:3.6、θgF:0.5318)を用い、温度変化による焦点距離の変動と、メカ保持部の熱による膨張とのバランスをとっている。
また、正レンズP1を球面レンズとすることで、コストの低減を図っている。また、開口絞りより縮小側に配置された正レンズP2に条件式(3)および(4)を満たす硝材として「OHARA社のS−FPL51 nd:1.49700 vd:81.54、dndT:−6.2、θgF:0.5375、ΔθgF:0.028」を用いることで、色収差の発生を抑えている。
【0081】
屈折率温度係数が「負で大きい」材料の正レンズP2と、屈折率温度形成が「正で大きい」材料の正レンズP1を用いることにより、温度補償を行っている。
【0082】
「実施例3」
実施例3の投射光学系における屈折光学系は、
図16に示す如く、画像形成部LV側から拡大側に向かって順次に、正の屈折力を有する第1レンズ群Iと、正の屈折力を有する第2レンズ群IIと、負の屈折力を有する第3レンズ群IIIと、正の屈折力を有する第4レンズ群IVとを有してなる。
図15に示す如く、屈折光学系31の拡大側には、
図15に示す如くの如く屈折光学系として、平面ミラー32と凹面ミラー33が配置されている。
この実施例3においては、凹面ミラー33の鏡面形状として自由曲面が採用されている。
遠距離側から近距離側へのフォーカシングに際しては、第2レンズ群IIと第3レンズ群IIIが画像形成部側に移動し、第4レンズ群IVが拡大側に移動する。第1レンズ群Iはフォーカシングに際し、移動しない。
【0083】
第1レンズ群Iは縮小側から順に、両面非球面両凸レンズと正メニスカスレンズと、負メニスカスレンズと「負メニスカスレンズと正メニスカスレンズを接合した接合レンズ」と、開口絞りと、負メニスカスレンズと、両面非球面両凸レンズと、負メニスカスレンズと、「両凸レンズと両凹レンズを接合した接合レンズ」と、両凸レンズからなる。
【0084】
縮小側から2枚目の凸面を拡大側に向けた正メニスカスレンズが正レンズP1であり、開口絞りの縮小側に設けられた接合レンズにおける正メニスカスレンズが正レンズP2である。
【0085】
第2レンズ群IIは、1枚の正メニスカスレンズからなり、第3レンズ群IIIは、両凹レンズと、両凹レンズと、両面非球面負メニスカスレンズからなり、第4レンズ群IVは、1枚の両面非球面正メニスカスレンズからなる。
【0086】
以下に、投射光学系の実施例3のデータを示す。
開口数:0.200
実施例3のデータを表9に示す。一番左側の欄に示す「面番号」は、画像形成部LVを面番号1とし、以下、透明平行平板Fの面を面番号2、3としている。面番号4が屈折光学系の最も縮小側のレンズ面である。
【0088】
「フォーカシングに伴う可変間隔」
近距離、基準距離、遠距離におけるフォーカシングに伴う可変間隔を表10に示す。
【0090】
「非球面データ」
非球面のデータを表11に示す。
【0092】
「自由曲面のデータ」
自由曲面は、上記データ中の面番号に「**印」を付した面であり、そのデータを表12に示す。
【0094】
「パラメータ:TRの値」
投射距離に対するパラメータ:TRの値を表13に示す。
【0096】
実施例3において、画像形成部LVの仕様は以下の通りである。
【0097】
ドットサイズ:7.56um
横方向(X方向)長さ:14.5152mm
縦方向(Y方向)長さ:8.1648mm
光軸から画像形成部中心へのY方向の距離(シフト量):5.3024mm
投射画像が最大となる合焦状態で、最も拡大側にあるレンズ面の頂点から、平面ミラー32、凹面ミラー33、防塵ガラス34の入射側面の「X方向、Y方向の座標」と、傾き角:α(面法線と光軸(Z方向)とのなす角(度) 時計回りが+である。)を、表14に示す。
【0099】
35面(凹面ミラー33)の面法線は、前述の自由曲面の定義式におけるη軸と光軸とのなす角である。
図3に示した各画角F1〜F13に対応したスポットダイアグラムを、
図17〜
図20に示す。実施例1のものと同じく、各スポットダイアグラムは、スクリーン面での結像特性(mm)を波長:638nm(赤)、550nm(緑)、455nm(青)について示している。
図17〜
図19の各スポットダイアグラムは、温度が20℃の時のものであり、
図20に示すスポットダイアグラムは、温度が20℃昇温して40℃となったときの画面サイズ100インチにおけるものである。温度が20℃のときのもの(
図11)と差異は微差であり、実施例3の投射光学系も「良好な温度補正」がなされていることが明らかである。
【0100】
実施例3においては、開口絞りより縮小側に配置された正レンズP1に条件(1)および(2)を満たす硝材として「OHARA社のL−BSL7 nd:1.51633、vd:64.06、dndT:4.7、θgF:0.5333」を用い、温度変化による焦点距離の変動と、メカ保持部の熱による膨張とのバランスをとっている。
また、正レンズP1を球面レンズとすることで、コストの低減を図っている。また、開口絞りより縮小側に配置された正レンズP2に条件式(3)および(4)を満たす硝材として「S−FPM3 nd:1.53775、vd:74.70、dndT:−4.3、θgF:0.5392、ΔθgF:0.0186」を用いることで、色収差の発生を抑えている。
屈折率温度係数が「負で大きい」材料の正レンズP2と、屈折率温度形成が「正で大きい」材料の正レンズP1を用いることにより、温度補償を行っている。
【0101】
上に挙げた実施例1〜3の投射光学系における条件:(1)〜(10)のパラメータの値を表15に示す。
【0103】
表15から明らかなように、実施例1〜3の投射光学系およびこれらを用いる画像表示装置は何れも、条件(1)〜(10)を満足している。
正レンズP1に好適な光学ガラスとしては、他に、例えば「住田ガラス社のK−PBK40 nd:1.51760、vd:63.50、dndT:4.4、θgF:0.5340」等も挙げられる。勿論、これに限定されるものではない。
正レンズP2に好適な光学ガラスとしては、上記以外に表16に示すごとき硝種を挙げることができる。勿論、これらの硝材に限定されるものではない。
【0105】
上に挙げた実施例1〜3では、屈折光学系を通った光は「画像形成部LVに形成された画像情報に共役な中間像」を凹面ミラーよりも画像形成部LV側に結像する。中間像は平面像として結像する必要はなく、実施例1〜3においても「曲面像」として形成している。中間像を「最も拡大側に配置した凹面ミラー12、22、33により拡大投影し、スクリーンSC上に投射する。
「中間像」は像面湾曲、歪曲を持っているが、凹面ミラーに非球面や自由曲面を用いることにより補正出来る。このため、屈折光学系の収差補正の負担が減り、設計の自由度が増して投射光学系ひいては画像表示装置の小型化等に有利となる。
【0106】
上に説明した画像表示装置の実施の形態では、凹面ミラーとスクリーンとの間に防塵ガラス13、23、34が設置されている。上記実施の形態においては防塵ガラスとして「平板ガラス」を用いているが、曲率を有してもよく、またレンズ等「屈折力を持った光学素子」としてもよい。また、Y軸に対して傾けて配置しているが、この角度は任意でよく「Y軸に対して直交」してもよい。
【0107】
また、実施例1〜3においては反射光学系の「屈折力を有する反射光学素子」として「1枚の凹面ミラー」を用いているが、複数の凹面ミラーを用いてもよい。実施例3では反射光学系を平面ミラーと凹面ミラーで構成しているが、平面ミラー32に曲率をつけて屈折力を持たせてもよい。
【0108】
また、実施例1〜3においては正レンズP1、正レンズP2を「フォーカシングに際して移動しない第1レンズ群Iに配置しているが、これに限らず、フォーカシングに際して不動または移動する1以上の移動レンズ群に、正レンズP1および正レンズP2を配置してもよい。
実施例1〜3において、正レンズP1、正レンズP2を保持する鏡筒は「熱伝導率の高いアルミニウム」により構成されている。
【0128】
以上、発明の好ましい実施の形態について説明したが、この発明は上述した特定の実施形態・実施例に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
この発明の実施の形態・実施例に記載された効果は、発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、発明による効果は「実施の形態に記載されたもの」に限定されるものではない。