(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記自動操向制御部は、前記自動操向オン状態において、目標方位に対する自機方位との方位偏差に方位ゲインを乗算して前記走行装置の操向制御量を算出するように構成され、
前記自動操向制御部は、前記切換操作具により前記自動操向オフ状態から前記自動操向オン状態に切り換えられてから前記走行機体が所定距離だけ走行するまで前記方位ゲインを通常時よりも減少させるように構成されている請求項1または2に記載の作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術では、オペレータの感覚に適合しない位置に目標ラインが設定された場合、微調整スイッチを手動操作して、目標ラインの位置を手動調整する必要があり、オペレータの手間となっていた。
【0005】
上記実情に鑑み、手間をかけずにオペレータの感覚に適合した位置に目標ラインを設定して好適な自動操向制御を行うことができる作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車は、
走行機体を走行させる走行装置と、
対地作業を行うことが可能な作業装置と、
衛星測位システムを用いて位置情報を取得可能な受信装置と、
前記受信装置で取得された前記位置情報を含む測位情報に基づいて目標ラインに沿って前記走行機体を走行させるように前記走行装置を自動操向する自動操向オン状態と、前記走行装置を自動操向しない自動操向オフ状態と、を切り換え可能な自動操向制御部と、
前記自動操向制御部を前記自動操向オフ状態から前記自動操向オン状態へ手動操作に基づいて切り換え操作可能な切換操作具と、
前記目標ラインを、前記切換操作具により前記自動操向オフ状態から前記自動操向オン状態に切り換えられた際の前記受信装置の位置に前記走行機体の前方側の離間距離を加算した値に基づいて求められる補正位置上に設定する目標設定部と、が備えられているものである。
【0007】
本発明によると、切換操作具が手動操作されて自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換わるタイミングで、目標ラインが設定される。この際に、切換操作具が手動操作されるのは、例えば畦際等における旋回直後である状況であることが多く、目標ラインを設定する方向に対して走行機体の進行方向がズレている状況が多く発生すると想定される。このため、目標ラインを、アンテナユニットの位置上ではなく、オペレータの目線の先にあるアンテナユニットの位置からアンテナユニットの位置に走行機体の前方側の離間距離を加算した値に基づいて求められる補正位置上に設定するようにする。これにより、例えば、目標ラインを設定する方向に対して走行機体の進行方向がズレていたとしても、操向によりそのズレを解消した位置に、好適に目標ラインを設定できる。これにより、自動操向を開始する際に、手間をかけずにオペレータの感覚に適合した位置に目標ラインを設定して好適な自動操向制御を行うことができる。さらに、目標ラインを設定する方向に対して走行機体の進行方向がズレていたとしても、操向によりそのズレを解消した箇所に目標ラインが設定されるので、自動操向制御の開始時に、走行機体が蛇行することを回避できる。
したがって、本発明によれば、手間をかけずにオペレータの感覚に適合した位置に目標ラインを設定して好適な自動操向制御を行うことができるものとなる。
【0008】
本発明の作業車は、
走行機体を走行させる走行装置と、
対地作業を行うことが可能な作業装置と、
衛星測位システムを用いて位置情報を取得可能な受信装置と、
前記受信装置で取得された前記位置情報を含む測位情報に基づいて目標ラインに沿って前記走行機体を走行させるように前記走行装置を自動操向する自動操向オン状態と、前記走行装置を自動操向しない自動操向オフ状態と、を切り換え可能な自動操向制御部と、
前記自動操向制御部を前記自動操向オフ状態から前記自動操向オン状態へ手動操作に基づいて切り換え操作可能な切換操作具と、
前記目標ラインを、前記切換操作具により前記自動操向オフ状態から前記自動操向オン状態に切り換えられた際の前記受信装置の位置に目標方位に対する自機方位の方位偏差
と前記走行機体の前方側の離間距離とに基づいて算出される偏差距離を加算した値に基づいて求められる修正位置上に設定する目標設定部と、が備えられているものである。
【0009】
本発明によると、切換操作具が手動操作されて自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換わるタイミングで、目標ラインが設定される。この際に、切換操作具が手動操作されるのは、例えば畦際等における旋回直後である状況であることが多く、目標ラインを設定する方向に対して走行機体の進行方向がズレている状況が多く発生すると想定される。このため、目標ラインを、アンテナユニットの位置上ではなく、アンテナユニットの位置に目標方位に対する自機方位の方位偏差に基づいて算出される偏差距離を加算した値に基づいて求められる修正位置上に設定するようにする。これにより、例えば、目標ラインを設定する方向に対して走行機体の進行方向がズレていたとしても、操向によりそのズレを解消した位置に、好適に目標ラインを設定できる。これにより、自動操向を開始する際に、手間をかけずにオペレータの感覚に適合した位置に目標ラインを設定して好適な自動操向制御を行うことができる。さらに、目標ラインを設定する方向に対して走行機体の進行方向がズレていたとしても、操向によりそのズレを解消した箇所に目標ラインが設定されるので、自動操向制御の開始時に、走行機体が蛇行することを回避できる。
したがって、本発明によれば、手間をかけずにオペレータの感覚に適合した位置に目標ラインを設定して好適な自動操向制御を行うことができるものとなる。
【0010】
上記構成において、
前記自動操向制御部は、前記自動操向オン状態において、目標方位に対する自機方位との方位偏差に方位ゲインを乗算して前記走行装置の操向制御量を算出するように構成され、
前記自動操向制御部は、前記切換操作具により前記自動操向オフ状態から前記自動操向オン状態に切り換えられてから前記走行機体が所定距離だけ走行するまで前記方位ゲインを通常時よりも減少させるように構成されていると好適である。
【0011】
例えば、オペレータは、畦際等における旋回完了直後に、切換操作具を手動操作して自動操向オン状態に切り換えることが多いが、この段階では、目標方位に対して自機方位の方位偏差が残っている場合が多い。本構成によれば、自動操向オン状態に切り換えられてから走行機体が所定距離だけ走行するまでは、走行装置の操向制御量を算出するために、方位偏差に乗算される方位ゲインを通常時よりも減少させるようになっている。このため、自動操向を開始してから急激な自動操向制御が実行されることが回避され、圃場の荒れやオペレータの乗車負担を軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示すように、農作業車のうちの植播系水田作業車である乗用型の田植機(「作業車」の一例)には、走行機体Cを走行させる走行装置Aと、圃場に対する対地作業を行うことが可能な作業装置と、が備えられている。田植機の作業装置は、圃場に対する苗の植え付けが可能な苗植付装置Wである。なお、
図2に示す矢印Fが走行機体Cの「前」、矢印Bが走行機体Cの「後」、矢印Lが走行機体Cの「左」、矢印Rが走行機体Cの「右」である。
【0014】
図1に示すように、走行装置Aとしては、左右一対の前輪10と左右一対の後輪11とが備えられている。走行機体Cには、走行装置Aにおける左右の前輪10を操向可能なステアリング機構Uが備えられている。
【0015】
図1、
図2に示すように、走行機体Cの前部には、開閉式のボンネット12が備えられている。ボンネット12内には、エンジン13が備えられている。ボンネット12の先端位置には、指標ラインLN(
図5等参照)を確認するための棒状のセンターマスコット14が備えられている。
図1に示すように、走行機体Cには、前後方向に沿って延びる枠状の機体フレーム15が備えられている。機体フレーム15の前部には、支持支柱フレーム16が立設されている。
【0016】
図1に示すように、苗植付装置Wは、油圧シリンダで構成される昇降シリンダ20の伸縮作動により昇降作動するリンク機構21を介して、走行機体Cの後端に昇降自在に連結されている。
【0017】
図1、
図2に示すように、苗植付装置Wには、4個の伝動ケース22、各伝動ケース22の後部の左側部及び右側部に回転自在に支持された回転ケース23、各回転ケース23の両端部に備えられた一対のロータリ式の植付アーム24、圃場の田面を整地する複数の整地フロート25、植え付け用のマット状苗が載置される苗載せ台26等が備えられている。つまり、苗植付装置Wは、8条植え型式に構成されている。
【0018】
このように構成された苗植付装置Wは、苗載せ台26を左右に往復横送り駆動しながら、伝動ケース22から伝達される動力により各回転ケース23を回転駆動して、苗載せ台26の下部から各植付アーム24により交互に苗を取り出して圃場の田面に植え付けるようになっている。
【0019】
図1、
図2に示すように、走行機体Cにおけるボンネット12の左右側部には、苗植付装置Wに補給するための予備苗を載置可能な複数の予備苗台28が備えられている。また、走行機体Cにおけるボンネット12の左右側部には、各予備苗台28を支持する左右一対の予備苗フレーム30と、左右の予備苗フレーム30の上部に亘って連結される連結フレーム31と、が備えられている。
【0020】
図1に示すように、苗植付装置Wの左右側部には、それぞれ、圃場の田面に指標ラインLN(
図5等参照)を形成するためのマーカ装置33が備えられている。左右のマーカ装置33は、それぞれ、圃場の田面に接地して走行機体Cの走行に伴い圃場の田面に指標ラインLNを形成する作用姿勢、及び、圃場の田面から上方に離れた格納姿勢に操作自在に構成されている。
【0021】
図1、
図2に示すように、走行機体Cの中央部には、各種の運転操作が行われる運転部40が備えられている。運転部40には、運転者が着座可能な運転座席41、操縦塔42、前輪10の手動の操向操作用のステアリングホイールにより構成されるステアリングハンドル43、前後進の切り換え操作や走行速度を変更操作が可能な主変速レバー44、操作レバー45等が備えられている。運転座席41は、走行機体Cの中央部に備えられている。操縦塔42に、ステアリングハンドル43、主変速レバー44、操作レバー45等が操作自在に備えられている。
【0022】
図1、
図2に示す操作レバー45は、ステアリングハンドル43の下側の右横側に備えられている。詳細な図示はしないが、操作レバー45は中立位置から、上方の上昇位置、下方の下降位置、後方の右マーカ位置、及び、前方の左マーカ位置、の十字方向に操作自在に構成され、中立位置に付勢されている。
【0023】
操作レバー45を上昇位置に操作すると、植付クラッチ(図示なし)が遮断状態に操作されて、苗植付装置Wが上昇し、左右のマーカ装置33が格納姿勢に操作される。操作レバー45を下降位置に操作すると、苗植付装置Wが下降し、操作レバー45を下降位置に再度操作すると、植付クラッチ(図示なし)が伝動状態に操作される。
【0024】
操作レバー45を右マーカ位置に操作すると、右のマーカ装置33が格納姿勢から作用姿勢になる。操作レバー45を左マーカ位置に操作すると、左のマーカ装置33が格納姿勢から作用姿勢になる。
【0025】
運転部40の操縦塔42には、人為操作可能な切換操作具50(
図4参照)が備えられている。切換操作具50は、ステアリング機構Uの自動操向の入り切りの切り換え操作を行うことが可能に構成されている。切換操作具50は、例えば、押圧操作式のボタンスイッチで構成され、主変速レバー44の握り部に配置されている。また、運転部40には、ステアリング機構Uの自動操向制御に用いる基準となるティーチング方向T(
図5等参照)を登録するために、押圧操作式の始点登録スイッチ52A及び押圧操作式の終点登録スイッチ52B(
図4参照)が備えられている。
【0026】
〔ステアリング機構について〕
図3に示すように、ステアリング機構Uには、ステアリングハンドル43に連動連結されるステアリング操作軸54、ステアリング操作軸54の回動に伴って揺動するピットマンアーム55、ピットマンアーム55に連動連結される左右の連繋機構56、ギヤ機構57等が備えられている。ステアリングハンドル43は、ステアリング操作軸54に連動連結され、手動操作に基づいてステアリング機構Uを操作可能となっている。電動モータである操向モータ58は、ギヤ機構57を介して、ステアリング操作軸54に連動連結され、制御信号に基づいてステアリング機構Uを操作可能となっている。
【0027】
図3に示すように、エンジン13の動力は、伝動ベルト36を介して静油圧式の無段変速装置37、及び、ミッションケース38に伝達され、ミッションケース38の内部の副変速装置から、前輪10のデフ機構(図示せず)及び前車軸ケース39の内部の伝動軸(図示せず)を介して、左右の前輪10に伝達される。ミッションケース38の動力は、苗植付装置Wにも伝達される。
【0028】
図3に示すように、ステアリング操作軸54は、ピットマンアーム55、左右の連繋機構56を介して、左右の前輪10に、それぞれ、連動連結されている。ステアリング操作軸54の回転量は、ステアリング操作軸54の下端部に備えられるロータリエンコーダからなる切れ角センサ60(
図4参照)により検出されるようになっている。言い換えると、切れ角センサ60は、ステアリングハンドル43の切れ角を検出可能となっている。
【0029】
図3、
図4に示すように、操向モータ58は、制御装置75からの制御信号に基づいてステアリング機構Uを操作可能となっている。また、操向モータ58は、制御信号に基づく出力結果としてのモータ回転角を検出するレゾルバ58Aを有している。
【0030】
図3に示すように、ステアリング機構Uの手動操向を行う場合には、運転者がステアリングハンドル43を操作する操作力に、操向モータ58によるステアリングハンドル43の操作に応じた補助力を付与してステアリング操作軸54を回動操作し、前輪10の切れ角を変更するようになっている。一方、ステアリング機構Uの自動操向を行う場合には、操向モータ58を駆動して、操向モータ58の駆動力によりステアリング操作軸54を回動操作し、前輪10の切れ角を変更するようになっている。
【0031】
〔受信装置を有するアンテナユニットと慣性計測装置について〕
図1、
図2、
図4に示すように、走行機体Cには、衛星測位システムを用いて走行機体Cに関する位置情報を取得可能な受信装置63及び主に走行機体Cの傾き(ピッチ角、ロール角)を検出可能な副慣性計測装置64を有するアンテナユニット61と、慣性情報を計測する主慣性計測装置62と、が備えられている。
【0032】
主慣性計測装置62、及び、副慣性計測装置64は、それぞれ、IMU(Inertial Measurement Unit)により構成されている。
【0033】
受信装置63及び副慣性計測装置64を有するアンテナユニット61と、主慣性計測装置62と、は走行機体Cにおける異なる箇所に配置されている。また、受信装置63及び副慣性計測装置64を有するアンテナユニット61と、主慣性計測装置62と、は走行機体Cにおける左右中心線CL上に配置されている。
【0034】
上述の衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satelite System)には、その代表的なものとしてGPS(Global Positioning System)が挙げられる。GPSは、地球の上空を周回する複数のGPS衛星から受信装置63で位置情報を受信し、受信装置63を搭載した走行機体Cの自機位置等を算出するために用いられる。
【0035】
図1、
図2に示すように、受信装置63を有するアンテナユニット61は、連結フレーム31に取り付けられている。
【0036】
本実施形態では、
図4に示すように、受信装置63において複数のGPS衛星から直接受信したデータを、受信装置63において基準局を介して複数のGPS衛星から受信したデータで補正する、いわゆるデファレンシャルGPS測位方式が採用されている。
【0037】
図4に示す副慣性計測装置64は、走行機体Cの前後方向の傾き(ピッチ角)、走行機体Cの左右方向の傾き(ローリング角)を検出する。副慣性計測装置64で検出されたピッチ角及びローリング角に基づいて、受信装置63の位置情報を補正するようになっている。
【0038】
図4に示すように、主慣性計測装置62には、主に、走行機体Cのヨー角度(走行機体Cの旋回角度)の角速度を検出可能なジャイロスコープ70と、互いに直交する3軸方向の加速度を検出可能な加速度計71と、が備えられている。つまり、主慣性計測装置62により計測される慣性情報には、ジャイロスコープ70により検出される方位変化情報と、加速度計71により検出される位置変化情報と、が含まれている。上述のように、主慣性計測装置62を、走行機体Cの進行方向の旋回中心の近傍に配置していることから、ジャイロスコープ70に生じる方位変化情報の積算誤差を小さく抑えることが可能になるとともに、加速度計71による位置変化情報の検出精度が高いものとなる。
【0039】
〔制御構成について〕
図4に示すように、走行機体Cには、ステアリング機構Uの自動操向の制御を行う制御装置75が備えられている。制御装置75には、位置方位算出部76と、基準設定部77と、目標設定部78と、自動操向制御部79と、が備えられている。
【0040】
位置方位算出部76は、アンテナユニット61及び主慣性計測装置62から取得する情報に基づいて、走行機体Cの自機位置NM及び自機方位NAを算出するように構成されている。
【0041】
基準設定部77は、始点登録スイッチ52Aの操作時にアンテナユニット61で取得されている始点の位置情報、及び、終点登録スイッチ52Bの操作時にアンテナユニット61で取得されている終点の位置情報に基づいて、始点と終点を通るティーチング方向Tを設定するようになっている。
【0042】
目標設定部78は、目標ラインLMを、切換操作具50により自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換えられた際の受信装置63の位置に走行機体Cの前方側の離間距離B1を加算した値に基づいて求められる補正位置M1上に設定するようになっている。
【0043】
自動操向制御部79は、受信装置63で取得された位置情報と主慣性計測装置62で取得された慣性情報を含む測位情報に基づいて目標ラインLMに沿って走行機体Cを走行させるように走行装置Aを自動操向する自動操向オン状態と、走行装置Aを自動操向しない自動操向オフ状態と、を切り換え可能となっている。自動操向制御部79は、切換操作具50の操作に基づいて、自動操向オン状態と、自動操向オフ状態を切り換え可能になっている。具体的には、自動操向制御部7
9は、切換操作具50の手動操作に基づいて、自動操向オフ状態から自動操向オン状態への切り換えと、自動操向オン状態から自動操向オフ状態への切り換えを両方行うことができる。自動操向オフ状態では、操向モータ58による自動操向は行わない。自動操向オン状態になると、操向モータ58に制御信号を出力して、走行機体Cが目標ラインLMに沿って走行するように操向モータ58を制御し、ステアリング機構Uの自動操向を行う。
【0044】
自動操向制御部79は、
図6に示すように、自動操向オン状態において、目標方位TAに対する自機方位NAとの方位偏差θに方位ゲインを乗算した乗算結果及び目標ラインLMに対する自機位置NMとの位置偏差に位置ゲインを乗算した乗算結果に基づいて走行装置Aの操向制御量を算出するように構成されている。
【0045】
自動操向制御部79は、
図5に示すように、切換操作具50により自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換えられてから走行機体Cが所定距離Dだけ走行するまで方位ゲインを通常時よりも減少させるように構成されている。
【0046】
〔自動操向制御について〕
一例として、水田において苗の植え付け作業を行う場合について説明する。
図5に示すように、まず、走行機体Cを圃場内の畦際の或る第一位置Q1に位置させ、始点登録スイッチ52A(
図4参照)を操作する。そして、苗植付装置Wを上昇させ、且つ、整地フロート25を接地させた状態で、第一位置Q1から側部側の畦際の直線形状に沿って、走行機体Cを直進走行させ、反対側の畦際近くの第二位置Q2まで移動させてから、終点登録スイッチ52B(
図4参照)を操作する。これにより、第一位置Q1において受信装置63により取得された位置情報と第二位置Q2において受信装置63により取得された位置情報とから、始点となる第一位置Q1と終点となる第二位置Q2とを結ぶ方向であるティーチング方向Tが設定される。
【0047】
次に、
図6に示すように、ステアリングハンドル43の操作により、走行機体Cを手動で旋回させる。切れ角センサ60により、走行機体Cの旋回開始が検出されると、苗植付装置W、整地フロート25、マーカ装置33とが、圃場の田面から自動的に上昇し、非作業状態となる。走行機体Cの旋回が終了すると、走行機体Cの旋回完了位置Q3が、切れ角センサ60の検出結果に基づいて検出される。
【0048】
なお、
図6等に示すように、受信装置63は、走行機体Cの前部に配置されているが、データ処理の基準となる自機位置NMは、受信装置63の実際の設置位置ではなく、主慣性計測装置62の近傍位置に設定されている。データ処理の基準となる自機位置NMの設定は、受信装置63と自機位置NMとする箇所までの距離、及び、受信装置63や主慣性計測装置62に基づいて算出される自機方位NAに基づいて求められるようになっている。目標ラインLMに沿って正確に走行させたいのは、苗植付装置Wであるので、自機位置NMを、このように、苗植付装置Wの近傍に設定することにより、苗植付装置Wが目標ラインLMに沿って正確に走行するように、走行機体Cの自動操向制御を行うことができるものとなる。
【0049】
切換操作具50が操作されると、受信装置63における位置情報に基づく走行機体Cの自機位置NM、自機方位NAが記憶される。そして、目標ラインLMを、切換操作具50により自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換えられた際の受信装置63の位置に走行機体Cの前方側の離間距離B1を加算した値に基づいて求められる補正位置M1上に目標ラインLMが設定される。離間距離B1は、センターマスコット14の位置とオペレータがセンターマスコット14を通じて走行機体Cの進行方向(自機方位NAの方向)に地面を見た際に視線が地面と交差する位置との間の距離に設定されている。補正位置M1は、自動走行制御を開始する制御開始位置Q4となっている。これとともに、主慣性計測装置62により計測される情報が、受信装置63により取得された自機位置NMの位置情報、及び、受信装置63により取得された自機位置NMの位置情報と直前位置の位置情報に基づいて算出された自機方位NAに基づいて補正される。
【0050】
なお、
図5では、図示の都合上、マーカ装置33により形成された指標ラインLNと、目標ラインLMとを少しずらしてあるが、実際は、運転者の目線が、センターマスコット14の先端部と指標ラインLNとが一致するように、手動の位置合わせが行われるので、目標ラインLMは、指標ラインLNと略一致するように設定される。
【0051】
そして、これとともに、主に主慣性計測装置62に基づく、走行機体Cの自動操向制御が開始される。つまり、自動操向制御においては、主慣性計測装置62の慣性情報が主に用いられ、受信装置63の位置情報が主慣性計測装置62の慣性情報の補正用に用いられる。具体的には、受信装置63により取得された位置情報に基づく自機位置NMと自機方位NAと、主慣性計測装置62のジャイロスコープ70により計測される角速度を積分処理して求められる方位変化情報と、主慣性計測装置62の加速度計71により計測される加速度を積分処理して求められる位置変化情報と、に基づいて、現在の自機位置NMや自機方位NAが逐次算出される。そして、現在の自機位置NMや自機方位NAが、目標ラインLM、ティーチング方向Tと合致するようにステアリング機構Uの自動操向が行われ、走行機体Cの自動操向制御が行われる。
【0052】
走行機体Cの自動操向制御中に、自機方位NAとティーチング方向Tとの角度偏差(ズレ角度)がなく、自機位置NMと目標ラインLMとの距離偏差(ズレ距離)がない場合、ステアリング機構Uは操向制御されない。
また、走行機体Cの自動操向制御中に、自機方位NAとティーチング方向Tとの角度偏差(ズレ角度)があり、自機位置NMと目標ラインLMとの距離偏差(ズレ距離)がない場合、ステアリング機構Uは、自機方位NAとティーチング方向Tとの角度偏差(ズレ角度)をなくす方向に操向制御される。
また、走行機体Cの自動操向制御中に、自機方位NAとティーチング方向Tとの角度偏差(ズレ角度)があり、自機位置NMと目標ラインLMとの距離偏差(ズレ距離)がある場合には、ステアリング機構Uは、自機方位NAとティーチング方向Tとの角度偏差(ズレ角度)をなくす方向に操向制御される。
また、走行機体Cの自動操向制御中に、自機方位NAとティーチング方向Tとの角度偏差(ズレ角度)がなく、自機位置NMと目標ラインLMとの距離偏差(ズレ距離)がある場合、ステアリング機構Uは、自機位置NMと目標ラインLMとの距離偏差(ズレ距離)をなくす方向に操向制御される。
これにより、走行機体Cが、目標ラインLMに沿って正確に走行するものとなる。
【0053】
このように、走行機体Cの自動操向制御中には、受信装置63により取得される位置情報が必須ではないので、仮に、走行機体Cの自動操向制御中に、受信装置63に電波障害等が発生した場合であっても、主慣性計測装置62により計測される慣性情報に基づいて走行機体Cの自動操向制御を継続でき、苗植付装置Wによる苗の植え付けを目標ラインLMに沿って正確に行うことができる。
【0054】
また、この場合、
図5に示すように、切換操作具50により自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換えられてから走行機体Cが所定距離Dだけ走行するまで方位ゲインを通常時よりも減少させるように構成されている。
【0055】
そして、苗植付装置Wによる苗の植付作業を行いながら走行機体Cを自動操向制御で直進走行させ(作業走行)、走行機体Cが畦際に接近すると、運転者が切換操作具50を操作することにより、走行機体Cの自動操向制御が停止され、手動操向に切り換わる。そして、畦際において同様に非作業状態で旋回操作を行い、同様の操作を繰り返して、圃場への苗の植え付けを行ってゆく。
【0056】
このように、切換操作具50を操作した際の走行機体Cの状態に応じたオペレータの感覚に適合した箇所に目標ラインLMを設定して適切に自動操向制御を行うので、乗車感を損なわず、違和感の少ない自動操向制御を行うことができるものとなる。
【0057】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態について説明する。下記の各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してもよい。なお、本発明の範囲は、これら実施形態の内容に限定されるものではない。
【0058】
(1)上記実施形態では、目標設定部78が、目標ラインLMを、切換操作具50により自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換えられた際の受信装置63の位置に走行機体Cの前方側の離間距離B1を加算した値に基づいて求められる補正位置M1上に設定するようになっているものを例示しているが、これに限られない。例えば、
図7に示すように、目標ラインLMを、切換操作具50により自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換えられた際の受信装置63の位置に目標方位TAに対する自機方位NAの方位偏差θに基づいて算出される偏差距離B2を加算した値に基づいて求められる修正位置M2上に設定するように目標設定部78が構成されていてもよい。
【0059】
この場合においても、
図5に示すものと同様に、自動操向制御部79は、切換操作具50により自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換えられてから走行機体Cが所定距離Dだけ走行するまで方位ゲインを通常時よりも減少させるように構成されている。
【0060】
(2)上記実施形態では、自動操向制御部が、自動操向オン状態において、目標方位TAに対する自機方位NAとの方位偏差θに方位ゲインを乗算して走行装置Aの操向制御量を算出するように構成されているものを例示しているが、これに限られない。例えば、このような方位ゲインを乗算しない態様で方位偏差θに基づいて走行装置の操向制御量を算出するようにしてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、切換操作具50により自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換えられてから走行機体Cが所定距離Dだけ走行するまで方位ゲインを通常時よりも減少させるように構成されているものを例示しているが、これに限られない。切換操作具50により自動操向オフ状態から自動操向オン状態に切り換えられた直後に通常の方位ゲインを用いて自動操向制御を行うものであってもよい。
【0062】
(4)上記実施形態では、切換操作具50の操作に基づいて、自動操向オン状態から自動操向オフ状態への切り換えを行うことができるものを例示しているが、これに限られない。例えば、切換操作具50の操作に基づいて、自動操向オン状態から自動操向オフ状態への切り換えを行わないものであってもよい。その場合は、苗植付装置Wが下降作業状態から上昇非作業状態になることにより、自動操向オン状態から自動操向オフ状態への切り換えを行うことができる。また、ステアリングハンドル43の切れ角が所定角度以上になって旋回が開始されることにより、自動操向オン状態から自動操向オフ状態への切り換えを行うことができる。
【0063】
(5)上記実施形態では、デファレンシャルGPS測位方式を例示しているが、これに限られない。例えば、RTK測位方式等の他の測位方式であってもよい。
【0064】
(6)上記実施形態では、自動操向制御において、主慣性計測装置62が主に用いられ、受信装置63が主慣性計測装置62の補正用に用いられるものを例示しているが、これに限られない。例えば、自動操向制御において、受信装置63の位置情報が主に用いられ、主慣性計測装置62の慣性情報が受信装置63の位置情報の補正用に用いられるものであってもよい。