特許第6811671号(P6811671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6811671ウエブ送給方法およびそれに用いるウエブ送給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811671
(24)【登録日】2020年12月17日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】ウエブ送給方法およびそれに用いるウエブ送給装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/20 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   B65H20/20 B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-73154(P2017-73154)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172213(P2018-172213A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】一氏 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】寺地 誠喜
(72)【発明者】
【氏名】鞍田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟
(72)【発明者】
【氏名】樽野 友浩
(72)【発明者】
【氏名】河村 和典
【審査官】 五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−025567(JP,A)
【文献】 特開昭62−121167(JP,A)
【文献】 実開昭63−076756(JP,U)
【文献】 特開2013−193853(JP,A)
【文献】 特開昭56−061252(JP,A)
【文献】 特開2002−104700(JP,A)
【文献】 実開昭60−157749(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールトゥロールにおけるウエブの送給方法であって、上記ウエブを送給する少なくとも一部の区間において、上記ウエブの両側縁部のみを支持するウエブ支持部を設け、上記ウエブ支持部によって上記ウエブの両側縁部を支持することにより、上記ウエブの幅方向の中央部を最下部として撓ませ、その状態で、上記ウエブを送給することを特徴とするウエブ送給方法。
【請求項2】
上記ウエブの両側縁部の支持が、上記ウエブの長手方向に沿って所定のピッチで設けられる上記ウエブ支持部によって行われ、上記ウエブの両側縁部を支持する上記ウエブ支持部に、上記ピッチ分に相当するウエブ重量以上の張力を与えない請求項1記載のウエブ送給方法。
【請求項3】
上記ウエブの両側縁部に貫通孔を形成する工程と、その貫通孔に挿入して上記ウエブの両側縁部を支持する上記ウエブ支持部が形成されているアームを準備する工程とを備え、上記ウエブの両側縁部の支持が、上記貫通孔に、上記アームの上記ウエブ支持部を挿入することにより行われる請求項1または2記載のウエブ送給方法。
【請求項4】
上記ウエブの両側縁部を支持する上記ウエブ支持部が、上記ウエブを突き刺し可能に形成され、そのウエブ支持部を、上記ウエブの両側縁部に突き刺すことにより、上記ウエブ支持部で上記ウエブの両側縁部に貫通孔を形成すると同時に、上記ウエブの両側縁部を支持する請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエブ送給方法。
【請求項5】
上記ウエブの両側縁部を支持する上記ウエブ支持部が、上記ウエブの両側縁部を掴むものである請求項1または2記載のウエブ送給方法。
【請求項6】
上記ウエブの両側縁部を支持する上記ウエブ支持部が、そのウエブの両側縁部の下面に接触する支持ロールであり、その支持ロールの回転軸が、上記ウエブの幅方向の外側から内側に向かって徐々に下方に傾斜しており、上記支持ロールが、ウエブ重量以下の荷重で上記ウエブの両側縁部を支持する請求項1記載のウエブ送給方法。
【請求項7】
上記請求項4または5記載のウエブ送給方法に用いるウエブ送給装置であって、上記ウエブの両側縁部を支持する上記ウエブ支持部と、このウエブ支持部を上記ウエブの送給に追従させる追従手段と、上記ウエブ支持部による支持を解除する支持解除手段とを備えていることを特徴とするウエブ送給装置。
【請求項8】
上記請求項3に記載のウエブ送給方法に用いるウエブ送給装置であって、上記ウエブの両側縁部を支持する上記ウエブ支持部と、このウエブ支持部を上記ウエブの送給に追従させる追従手段と、上記ウエブ支持部による支持を解除する支持解除手段とを備えていることを特徴とするウエブ送給装置。
【請求項9】
上記追従手段が、上記アームに設けられた車輪と、この車輪が載るガイドレールとを有し、上記支持解除手段が、上記ガイドレールに形成した捩れ軌道個所、水平軌道個所、鉛直軌道個所、またはそれら軌道個所の組み合わせである請求項8記載のウエブ送給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールトゥロールにおける、金属箔,紙,フィルム等のウエブ(帯状基材)の送給方法およびそれに用いるウエブ送給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウエブ(帯状基材)に対する加熱等の処理を効率よく行うために、そのウエブをロールトゥロールにより送給することが行われている(例えば、特許文献1参照)。そのロールトゥロールとは、処理対象である上記ウエブをロール状に巻装したウエブ巻装体を準備し、そのウエブ巻装体から上記ウエブを繰り出しつつ、フリーロールやニップロール等の複数の送給用ロールに接触させながら送給し、その送給中に上記ウエブに対して処理を行い、その処理後のウエブをロール状に巻き取る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−108072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ウエブ巻装体の1個体において、ウエブ2の長手方向の長さLは、図11に示すように、ばらついている。上記ウエブ2は、その材料が金属の場合は、金属を延伸する工程等を経て製造され、その材料が樹脂フィルムの場合は、樹脂をキャストする工程等を経て製造されるが、上記ばらつきは、ウエブ2を製造する際の上記金属延伸工程や上記樹脂キャスト工程でどうしても生じるものであり、避けられない。そして、上記ばらつきがある状態で、ロールトゥロールによりウエブを送給すると、そのウエブに皺(波打ち)が発生する。
【0005】
すなわち、ロールトゥロールにおける送給中のウエブは、隣り合う送給用ロールと送給用ロールとの間において、それら両送給用ロールの外周側面に接触していることにより、幅方向が拘束されている。しかしながら、上記ウエブは、上記のように長手方向の長さがばらついているため、そのばらつきが原因で、上記両送給用ロールの間を送給中のウエブに、上記皺が発生するのである。
【0006】
しかも、その皺の状態(形状)は、上記ウエブの長手方向の位置およびロット(上記ウエブ巻装体の個体)によって異なる。そのため、上記両送給用ロールの間では、送給中のウエブの通る位置が、上記ウエブの送給過程およびロットによって異なる(従来例を示す図10参照)。このような状態で、送給中のウエブに対して処理を行うと、その処理結果が、その処理時およびロットによってばらつき、品質が安定しない。例えば、上記処理が、蒸着であれば、蒸着材料からウエブまでの距離が、上記蒸着時およびロットによって異なることから、蒸着層の厚みが、上記蒸着時およびロットによってばらつく。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ロールトゥロールにおいて、送給中のウエブの通る位置が、そのウエブの送給過程およびロットによってばらつくことなく、安定しているウエブ送給方法およびそれに用いるウエブ送給装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、ロールトゥロールにおけるウエブの送給方法であって、上記ウエブを送給する少なくとも一部の区間において、上記ウエブの両側縁部を支持することにより、上記ウエブの幅方向の中央部を最下部として撓ませ、その状態で、上記ウエブを送給するウエブ送給方法を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、上記ウエブ送給方法に用いるウエブ送給装置であって、ウエブの両側縁部を支持する支持部と、この支持部を上記ウエブの送給に追従させる追従手段と、上記支持部による支持を解除する支持解除手段とを備えているウエブ送給装置を第2の要旨とする。
【0010】
一般に、ウエブに皺が発生した場合、そのウエブを幅方向に引っ張ることにより、その皺を伸ばすことが行われ、それが技術常識となっている。これにより、ロールトゥロールにおいて、隣り合う送給用ロールと送給用ロールとの間を送給中のウエブの通る位置が安定するものの、上記ウエブに対する引っ張り荷重により、ウエブに悪影響(ウエブが変質して設計どおりの性能を発揮しない等)を及ぼすおそれがある。
【0011】
本発明者らは、上記技術常識に反し、ウエブを引っ張るのではなく、むしろ、ウエブの自重で、ウエブが幅方向に撓むようにすることを着想した。すなわち、ウエブの幅方向の断面が、その幅方向の中央部を最下部とする放物線状となるように、ウエブが撓むようにした。このようにすると、ウエブに不要な荷重がかからず、ウエブに悪影響を及ぼさないことを突き止めた。また、そのようにすることにより、ウエブに皺が発生しにくくなるとともに、隣り合う送給用ロールと送給用ロールとの間を送給中のウエブの通る位置が安定することを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウエブ送給方法では、ウエブを送給する少なくとも一部の区間において、上記ウエブの両側縁部(幅方向の両端部)を支持し、上記ウエブの幅方向の中央部を最下部として撓ませた状態で、上記ウエブを送給する。すなわち、ロールトゥロールにおけるウエブの送給では、その送給方向に、その送給に必要な張力がかかっている。この状態で、上記のようにウエブの両側縁部を支持すると、その支持により、支持されているウエブの部分では、上記送給方向の張力の影響が弱まる。そのため、両側縁部が支持された状態で送給されているウエブは、ウエブの自重で、幅方向に撓み、ウエブの幅方向の断面が、その幅方向の中央部を最下部とする放物線状となる。このような状態でウエブを送給することにより、ウエブの自重を上回る引っ張り荷重が、ウエブにかからないようにすることができるため、ウエブが変質する等の、不要な荷重によるウエブへの悪影響をなくすことができる。また、上記のように、ウエブの自重でウエブが幅方向に撓むようにすることにより、ウエブに皺が発生しにくくすることができるとともに、隣り合う送給用ロールと送給用ロールとの間を送給中のウエブの通る位置を安定させることができる。その結果、上記ウエブに対する処理を安定して行うことができ、その処理時およびロットによる品質のばらつきを小さくして、品質を安定させることができる。
【0013】
特に、上記ウエブの両側縁部の支持が、上記ウエブの長手方向に沿って所定のピッチで行われ、上記ウエブの両側縁部を支持する個所に、上記支持ピッチ分に相当するウエブ重量以上の張力を与えない場合には、上記のように、ウエブが変質する等の、不要な荷重によるウエブへの悪影響をなくすことができる。
【0014】
また、上記ウエブの両側縁部に貫通孔を形成する工程と、その貫通孔に挿入して上記ウエブの両側縁部を支持する部分が形成されているアームを準備する工程とを備え、上記ウエブの両側縁部の支持が、上記貫通孔に、上記アームの上記ウエブ支持部分を挿入することにより行われる場合には、上記ウエブ支持部分が上記貫通孔に挿入することにより、上記ウエブの両側縁部の支持の信頼性を向上させることができる。
【0015】
さらに、上記ウエブの両側縁部を支持する部分が、上記ウエブを突き刺し可能に形成され、そのウエブ支持部分を、上記ウエブの両側縁部に突き刺すことにより、上記ウエブ支持部分で上記ウエブの両側縁部に貫通孔を形成すると同時に、上記ウエブの両側縁部を支持する場合には、貫通孔の形成と、ウエブの支持とを同時にできるため、ウエブ送給を効率よく行うことができる。
【0016】
また、上記ウエブの両側縁部の支持が、上記ウエブの両側縁部を掴むことにより行われる場合には、上記貫通孔の形成を不要とすることができる。そのため、ウエブの支持を簡素化することができる。
【0017】
また、上記ウエブの両側縁部の支持が、そのウエブの両側縁部の下面に接触する支持ロールにより行われ、その支持ロールの回転軸が、上記ウエブの幅方向の外側から内側に向かって徐々に下方に傾斜しており、上記支持ロールが、ウエブ重量以下の荷重で上記ウエブの両側縁部を支持する場合にも、上記貫通孔の形成を不要とすることができ、ウエブの支持を簡素化することができる。
【0018】
そして、本発明のウエブ送給装置は、上記ウエブの両側縁部を支持する支持部と、その支持部を上記ウエブの送給に追従させる追従手段と、上記支持部による支持を解除する支持解除手段とを備えているため、本発明の上記ウエブ送給方法を実施することができる。すなわち、ウエブに皺が発生しにくくすることができるとともに、送給中のウエブの通る位置を安定させることができる。
【0019】
特に、上記追従手段が、上記アームに設けられた車輪と、この車輪が載るガイドレールとを有し、上記支持解除手段が、上記ガイドレールに形成した捩れ軌道個所、水平軌道個所、鉛直軌道個所、またはそれら軌道個所の組み合わせである場合には、上記ウエブの送給に対する上記支持部の追従性および上記支持の解除の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のウエブ送給装置の一実施の形態を用いているロールトゥロールを模式的に示す説明図である。
図2】上記ウエブ送給装置を模式的に示す斜視図である。
図3】上記ウエブ送給装置の構成である支持用のアームおよびガイドレールの一部を模式的に示す斜視図である。
図4】上記ガイドレールの捩れ軌道個所を模式的に示す斜視図である。
図5】(a)〜(d)は、それぞれ、ウエブの支持方法の他の実施の形態を模式的に示す説明図である。
図6】実施例1において送給中のウエブの通る位置を示すグラフである。
図7】実施例4において送給中のウエブの通る位置を示すグラフである。
図8】実施例5において送給中のウエブの通る位置を示すグラフである。
図9】実施例6において送給中のウエブの通る位置を示すグラフである。
図10】従来例において送給中のウエブの通る位置を示すグラフである。
図11】ウエブの長手方向の長さのばらつきを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0022】
図1は、本発明のウエブ送給装置の一実施の形態を用いているロールトゥロールを示す説明図である。このロールトゥロールでは、ウエブ(帯状基材)2をロール状に巻装したウエブ巻装体20から上記ウエブ2を繰り出しつつ、フリーロール31やニップロール32等の複数の送給用ロールに接触させながら送給し、その送給中に上記ウエブ2に対して処理し、その処理後のウエブ2をロール状に巻き取っている(符号21)。そして、上記ウエブ2に対して処理する区間に、上記ウエブ送給装置1が設けられている。
【0023】
この実施の形態のウエブ送給装置1は、図2に斜視図で示すように、隣り合うフリーロール31とテンションピックアップロール33との間に設けられている。そして、そのウエブ送給装置1の主な構成は、ウエブ2の送給方向の上流側から順に、上記ウエブ2の両側縁部に貫通孔2aを形成する穿孔機11、その貫通孔2aに挿入される突起部(ウエブ支持部分)12aが一端部上面に形成されている略L字状の複数のアーム(支持部)12、それらアーム12を上記ウエブ2の送給方向に導くガイドレール13である。それら構成は、上記ウエブ2の両側に一対となって配置されている。なお、図2では、上記ウエブ送給装置1の構成をわかりやすくするために、各構成の大きさの縮尺を変えて図示しているとともに、上記アーム12の個数を少なく図示している。
【0024】
より詳しく説明すると、図3に斜視図で示すように、上記略L字状のアーム12の一端部上面に形成された上記突起部12aは、上記ウエブ2の下側から、上記貫通孔2aに挿入されるものとなっている。その挿入により、上記ウエブ2の両側縁部を支持するようになっている。また、上記アーム12は、その略L字状の他端部の背面に、アーム12の長手方向に沿って、2個の車輪12bを有している。それら2個の車輪12bは、間をあけて設けられており、その間に上記ガイドレール13が通り、上記2個の車輪12bで、そのガイドレール13を挟んでいる(追従手段)。そして、上記アーム12は、上記車輪12bにモータ等で駆動力を与えることにより、自走するようにしてもよいし、送給されている上記ウエブ2に引っ張られて走行する(自走しない)ようにしてもよい。
【0025】
上記ガイドレール13は、2本1組の棒体からなる無端レールとなっており、上記アーム12が循環するようになっている。そして、上記循環するアーム12が、上記ガイドレール13の所定の区間13aで、上記のようにウエブ2の下側から両側縁部を支持することができるよう、上記ガイドレール13の高さ位置が設定されている。すなわち、この実施の形態では、ウエブ2の両側縁部を支持する上記区間13aの上流13bで、ガイドレール13の軌道が上昇し、それに続く下流(支持区間13a)で、ウエブ2の送給方向と平行になる高さになっている。
【0026】
また、上記ガイドレール13は、2個所で90°捩れており、そのうちの一方の(第1の)捩れ軌道個所(支持解除手段)13cは、上記支持区間13aの下流に形成されている。その第1の捩れ軌道個所13cでは、図4に斜視図で示すように、縦に並列していたガイドレール13を横に並列するように形成している。それにより、その第1の捩れ軌道個所13cを通った上記アーム12が、90°回動して、上記ウエブ2の貫通孔2aに挿入されていた上記アーム12の突起部12aが、上記貫通孔2aから抜ける(上記アーム12による支持が解除される)ようになっている。そして、他方の(第2の)捩れ軌道個所13dでは、横に並列していたガイドレール13を縦に並列するように形成している。それにより、その第2の捩れ軌道個所13dを通った上記アーム12が、再度、90°回動して、元の挿入(支持)可能状態に戻るようになっている。なお、図2では、右側に図示するガイドレール13の第1の捩れ軌道個所13c、および左側に図示するガイドレール13の第2の捩れ軌道個所13dは、捩れていることが分かりにくいが、実際は、上記のように捩れている。
【0027】
つぎに、上記ウエブ送給装置1を用いたウエブ送給方法について、図2に示す斜視図を用いて説明する。
【0028】
まず、上記穿孔機11により、送給中のウエブ2の両側縁部に、貫通孔2aを、所定のピッチ(中心間距離)で順番に形成する。このピッチは、例えば、100〜1500mmの範囲内に設定される。
【0029】
ついで、上記ガイドレール13を循環する上記アーム12を、上記貫通孔2aのピッチと同じピッチで並べ、上記ガイドレール13の軌道に沿って上記アーム12を上昇させることにより、上記アーム12の一端部の突起部12aを、上記ウエブ2の下側から、上記貫通孔2aに順番に挿入する。これにより、上記ウエブ2の下側から両側縁部を支持する。
【0030】
このとき、上記貫通孔2aの位置を検出する位置検出センサ,および上記アーム12の一端部の突起部12aを上記貫通孔2aに挿入する挿入機を用いてもよい。すなわち、上記位置検出センサで検出した上記貫通孔2aの位置情報を、上記挿入機に伝達し、その位置情報に応じて、上記挿入機が上記アーム12の一端部の突起部12aを上記貫通孔2aに挿入するようにしてもよい。このようにすると、上記突起部12aの上記貫通孔2aへの挿入がより確実になる。
【0031】
ここで、上記アーム12がウエブ2の両側縁部を支持する高さ位置(支持時の、上記突起部12aが形成されている上記アーム12の一端部上面の高さ位置)について説明する。すなわち、上記ウエブ送給装置1が設けられている、隣り合うフリーロール31とテンションピックアップロール33との間では、上記ウエブ2には、送給方向に、その送給に必要な張力(例えば、30N程度)がかかっているものの、上記両ロール31,33の間のウエブ2の自重により、そのウエブ2は撓んでいる。この状態において、上記アーム12により上記ウエブ2の両側縁部を支持する高さ位置は、上記ウエブ2が撓んでいないとする仮想の高さ位置(ウエブ2に自重がかかっていないとする仮想の状態の高さ位置)ないしその近傍に設定する。実際には上記ウエブ2は自重により撓んでいることから、上記アーム12により上記ウエブ2の両側縁部を支持する際には、上記突起部12aを上記貫通孔2aに挿入するとともに、上記アーム12の一端部上面により、上記ウエブ2の両側縁部を、下側から少し持ち上げるようにし、上記仮想の高さ位置ないしその近傍に位置決めする。
【0032】
つづいて、上記支持状態のまま、上記ウエブ2を所定距離送給する。この支持状態のウエブ2は、上記のようにウエブ2の両側縁部を支持することにより、上記送給方向の張力の影響が弱まるため、ウエブ2の自重で、幅方向に撓み、ウエブ2の幅方向の断面が、その幅方向の中央部を最下部とする放物線状となる(実施例1,4〜6を示す図6〜9参照)。それにより、ウエブ2に皺が発生しにくくなっているとともに、送給中のウエブ2の通る位置が、そのウエブ2送給過程およびロットによってばらつくことなく、安定している。
【0033】
また、上記支持状態では、上記アーム12は、ウエブ2の送給速度と同じ速度で移動する。すなわち、自走するアーム12では、ウエブ2の送給速度と同じとなるよう、車輪12bの駆動用モータを制御する。自走しないアーム12では、送給されているウエブ2に引っ張られて走行するため、自動的にウエブ2の送給速度と同じ速度となる。
【0034】
そして、上記支持状態のウエブ2に対し、蒸着,加熱,塗料の吹き付け等の処理を行う。この支持状態のウエブ2は、上記のように、皺が殆どなく、送給により通る位置が安定しているため、上記処理を安定して行うことができ、その処理時およびロットによる品質のばらつきを小さくして、品質を安定させることができる。
【0035】
例えば、上記処理が蒸着の場合、上記ウエブ2の下側に、上記ウエブ2の幅方向に沿って複数の蒸着材料を設置し、各蒸着材料と上記ウエブ2との距離に応じて、各蒸着材料にそれぞれ所定の電力を加えることが行われる。その場合、上記のように、ウエブ2の通る位置が安定していることから、各蒸着材料と上記ウエブ2との距離が安定している。そのため、各蒸着材料に加える電力も、上記蒸着時およびロットにより変更する必要がない。その結果、蒸着層の厚みは、上記蒸着時およびロットによるばらつきが小さくなり、品質が安定する。また、上記処理が高温(例えば700℃)の環境で行われる蒸着の場合、上記アーム12および上記ガイドレール13等は、その高温に耐えられる材料(例えばセラミック)からなるものが用いられる。
【0036】
つぎに、上記処理後、上記アーム12が上記ガイドレール13の第1の捩れ軌道個所13cを通ると、上記アーム12が、90°回動して(図4参照)、上記ウエブ2の貫通孔2aに挿入されていた上記アーム12の突起部12aが、上記貫通孔2aから抜け、上記アーム12による支持が解除される。
【0037】
その後、上記ウエブ2は、送給が続けられ、テンションピックアップロール33,ニップロール32等の送給用ロールを経て、ロール状に巻き取られる。
【0038】
一方、上記アーム12は、上記ガイドレール13に沿って循環するように進み、上記第2の捩れ軌道個所13dを通る際に、再度、90°回動して、元の挿入(支持)可能状態に戻る。そして、上記のようにして、上記アーム12により上記ウエブ2の両側縁部を支持した状態で、上記ウエブ2を所定距離送給することを繰り返す。ここで、先に述べたように、上記アーム12は、自走するものでも、自走しないものでもよいが、自走しないものの場合、上記アーム12が上記ガイドレール13に沿って循環するよう、上記アーム12を手動で移動させるか、上記アーム12を移動ささせる移動機(図示せず)を設ける等することが好ましい。
【0039】
このようにして、上記ウエブ送給装置1を用いたウエブ送給方法が実施される。
【0040】
なお、上記実施の形態では、貫通孔2aと突起部12a付きアーム12とにより、ウエブ2の両側縁部を支持可能としたが、その支持方法は他でもよく、例えば、図5(a)に示すように、上記突起部12a(図2参照)に替えて、フック12cを上記アーム12の一端に形成し、そのフック12cをウエブ2の両側縁部の上側から、上記貫通孔2a(図2参照)に挿入してもよい。また、図5(b)に示すように、上記突起部12a(図2参照)に替えて、上記ウエブ2を突き刺し可能な針状の突起部12dを、上記アーム12の一端部下面に形成し、その針状の突起部12dをウエブ2の両側縁部の上側から、そのウエブ2の両側縁部に突き刺すことにより、その針状の突起部12dで上記ウエブ2の両側縁部に貫通孔2a(図2参照)を形成すると同時に、上記ウエブ2の両側縁部を支持するようにしてもよい。さらに、図5(c)に示すように、上記突起部12a(図2参照)に替えて、クランプやチャック等の把持部12eを上記アーム12の一端に形成し、その把持部12eでウエブ2の両側縁部を上下から掴むようにしてもよい。この場合は、上記貫通孔2aの形成を不要とすることができる。また、図5(d)に示すように、上記アーム12(図2参照)に替えて、支持ロール14により支持してもよい。この支持ロール14は、その外周面がウエブ2の両側縁部の下面に接触するように配置され、その回転軸14aが、上記ウエブ2の幅方向の外側から内側に向かって徐々に下方に傾斜している。上記支持ロール14は、上記ウエブ2の両側縁部に対応する位置に、複数個が、上記ウエブ2の送給方向に列をなして固定されており、その支持ロール14を用いる場合、移動用の上記ガイドレール13は不要である。上記支持ロール14は、回転駆動力を有するものでも有さないもの(フリーロール)でもよい。この図5(d)に示す形態では、上記支持ロール14が、ウエブ2の両側縁部を支持しているとともに、それ自体の回転により、それ自体をウエブ2の送給に追従させている。
【0041】
また、上記実施の形態では、アーム12の形状を略L字状としたが、その形状は他でもよく、例えば、直線状のアームとしてもよい。さらに、上記実施の形態では、ウエブ2を支持するときに、上記アーム12の一端部(突起部12aが形成されている側の端部)が水平となるようにしたが、その支持によりウエブ2が変形する場合には、上記アーム12の一端部がウエブ2の撓みに沿って傾斜した状態となるよう、上記アーム12を傾斜させ、上記変形を防止してもよい。
【0042】
そして、上記実施の形態では、ガイドレール13を2本1組の棒体からなるものとしたが、そのガイドレール13は他でもよく、例えば、1本の板体からなるものとしてもよい。この場合、その板体を、アーム12の2個の車輪12bで挟むようにする。
【0043】
また、上記実施の形態では、アーム12による支持を解除し、その後再度、支持可能状態に戻すために、ガイドレール13に2個所の捩れ軌道個所13c,13dを形成し、その捩れ角度を90°としたが、その角度は、上記支持の解除および支持可能状態に戻すことができれば他でもよい。
【0044】
さらに、上記実施の形態では、支持解除手段として、ガイドレール13に第1の捩れ軌道個所13cを形成したが、その支持解除手段は他でもよく、例えば、その捩れ軌道個所13cが徐々に下降する〔捩れ軌道個所13cと水平軌道個所(送給方向軌道個所)との組み合わせ〕ようにしてもよい。また、ガイドレール13に、軌道が一度に下降する下降軌道個所(鉛直軌道個所)または徐々に下降する下降軌道個所〔水平軌道個所(送給方向軌道個所)と鉛直軌道個所との組み合わせ〕を形成し、その下降軌道個所を支持解除手段としてもよい。すなわち、その下降軌道個所を通ったアーム12が下降し、それにより、アーム12の突起部12aがウエブ2の貫通孔2aから抜け、ウエブ2の支持が解除されるようにしてもよい。この場合、アーム12を元の支持可能状態に戻す第2の捩れ軌道個所13dは、形成されない。
【0045】
先に述べた、図5(a),(b)に示す、ウエブ2の両側縁部の上側から支持する場合は、ガイドレール13に、軌道が一度に上昇する上昇軌道個所(鉛直軌道個所)または徐々に上昇する上昇軌道個所〔水平軌道個所(送給方向軌道個所)と鉛直軌道個所との組み合わせ〕を形成し、その上昇軌道個所を支持解除手段とする。また、図5(c)に示す、ウエブ2の両側縁部を把持部12eで掴むことにより支持する場合の支持解除は、上記掴みを解除するか、この解除に加えて、上記把持部12eがウエブ2から遠ざかる方向(送給方向と直角の水平方向)に移動するような水平軌道個所をガイドレール13に形成することによりなされる。そして、図5(d)に示す、ウエブ2の両側縁部を支持ロール14で支持する場合の支持解除は、上記支持ロール14が設けられている支持区間の下流に、その支持ロール14を設けないようにすることによりなされる。
【0046】
また、上記実施の形態では、ガイドレール13を無端レールとし、上記アーム12が循環するようにしたが、ガイドレール13は他でもよく、例えば、直線状としてもよい。この場合、ガイドレールの下流側には、アーム12が溜まるが、その溜まったアーム12を、ガイドレールの上流側に運び、再度、ガイドレールに載せるようにする。
【0047】
つぎに、実施例について従来例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
〔実施例1〕
ロールトゥロールに用いるウエブ巻装体として、日本工業規格(JIS)で規定されるSUS430(ステンレス)箔(幅1000mm、厚み50μm)をロール状に巻装したものを準備した。そして、図2に示す実施の形態のようにして、上記ウエブ送給装置を用い、上記SUS430箔(ウエブ)を5ロット送給した。そのときの送給方向の張力を30N、支持ピッチ(貫通孔のピッチ,アームのピッチ)を166mmとした。また、上記SUS430箔に対する処理温度を650℃とした。
【0049】
〔送給中のウエブの通る位置〕
そして、上記ウエブ送給装置により送給している上記SUS430箔の通る位置を、CCDレーザ変位計(キーエンス社製、LK−G500)を用いて測定した。その第1ロットの結果を図6のグラフに実線で示す。そして、残りの第2〜第5ロットも、ばらつき±2mm(図6に破線で示す)の範囲内で送給することができた。なお、図6のグラフにおいて、縦軸のウエブの位置の基準値(0mm)は、測定時のレーザの基準とした位置であり、測定したウエブの位置が高くなるにつれて、縦軸の数値(マイナス表示)が小さくなるようにしている(下記の図7図10のグラフについても同様)。
【0050】
〔実施例2〕
上記実施例1において、処理温度を25℃とした。それ以外の部分は、上記実施例1と同様とした。その結果、この実施例2でも、実施例1と同様に、5ロット全てが、ばらつき±2mmの範囲内で送給することができた。
【0051】
〔実施例3〕
上記実施例1において、SUS430箔の幅を300mmとしたウエブ巻装体を用いた。また、送給方向の張力を50N、支持ピッチを1000mmとした。さらに、処理温度を500℃とした。それ以外の部分は、上記実施例1と同様とした。その結果、この実施例3でも、実施例1と同様に、5ロット全てが、ばらつき±2mmの範囲内で送給することができた。
【0052】
〔実施例4〕
ウエブ巻装体として、PEN(ポリエチレンナフタレート)製フィルム(幅1000mm、厚み50μm)をロール状に巻装したものを準備した。そして、図2に示す実施の形態のようにして、上記PEN製フィルム(ウエブ)を5ロット送給した。そのときの送給方向の張力を20N、支持ピッチを150mmとした。また、上記PEN製フィルムに対する処理温度を25℃とした。その第1ロットの結果を図7のグラフに実線で示す。そして、残りの第2〜第5ロットも、ばらつき±2mm(図7に破線で示す)の範囲内で送給することができた。
【0053】
〔実施例5〕
上記実施例4において、PEN製フィルムの厚みを100μmとしたウエブ巻装体を用いた。それ以外の部分は、上記実施例4と同様とした。その第1ロットの結果を図8のグラフに実線で示す。そして、残りの第2〜第5ロットも、ばらつき±2mm(図8に破線で示す)の範囲内で送給することができた。
【0054】
〔実施例6〕
ウエブ巻装体として、PI(ポリイミド)製フィルム(幅1000mm、厚み50μm)をロール状に巻装したものを準備した。そして、図2に示す実施の形態のようにして、上記PI製フィルム(ウエブ)を5ロット送給した。それ以外の部分は、上記実施例4と同様とした。その第1ロットの結果を図9のグラフに実線で示す。そして、残りの第2〜第5ロットも、ばらつき±2mm(図9に破線で示す)の範囲内で送給することができた。
【0055】
〔従来例〕
上記実施例1と同じウエブ巻装体を用いて、従来の、ロールトゥロールにおけるウエブ送給方法(上記ウエブ送給装置を用いない方法)により、SUS430箔(ウエブ)を4ロット送給した。そして、送給中の各ウエブの通る位置を、上記実施例1と同様にして測定した。その各ロットの結果を図10のグラフに示す。その結果、従来例では、ばらつきが±2mmを超えるものであった。
【0056】
上記実施例1〜6および従来例の結果から、実施例1〜6は、送給中のウエブの通る位置が安定し、従来例は、送給中のウエブの通る位置が安定しないことがわかる。
【0057】
また、上記実施例1〜6では、各ロットにおいても、送給中のウエブの通る位置を、ばらつき±2mmの範囲内とすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のウエブ送給方法およびそれに用いるウエブ送給装置は、ロールトゥロールにおいて、送給中のウエブの通る位置を、そのウエブの送給過程およびロットによってばらつくことなく、安定させる場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
2 ウエブ
2a 貫通孔
12 アーム
12a 突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11