(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のバッテリを駆動源とする作業車では、算出されたSOCを用いて、バッテリの保護を目的としたバッテリの充放電制御が手動または自動で行われている。しかしながら、バッテリの寿命や放電時間などは、運転者による運転の仕方、作業地の状態や天候、などにも影響されるにもかかわらず、作業車または運転者毎に、バッテリにとって適正な運転がされているかどうか、つまり、バッテリの劣化傾向が適切なものであるかどうかをチェックする情報が収集されていなかった。このため、運転者を含む作業車の管理者は、バッテリの劣化傾向が、適正なものであるかどうかを知ることができず、このため、バッテリの寿命を短くするような作業走行を繰り返してしまうという問題が生じうる。
このことから、作業車に搭載されたバッテリの劣化傾向が適切なものであるかどうかの判断が可能な情報を与えることができる作業車及び作業車管理システムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
バッテリを駆動源として作業走行する作業車を管理する、本発明による作業車管理システムは、前記作業車の作業走行における、前記バッテリの使用状況を示すバッテリ作業情報を生成するバッテリ作業情報生成部と、前記バッテリ作業情報を経時的に診断して、前記作業車に固有の前記バッテリの劣化傾向を示すバッテリ劣化情報を生成するバッテリ劣化情報生成部と、前記バッテリ劣化情報を前記作業車の管理者に報知する報知部とを備え
、前記作業走行において作業負荷別に分けられた作業モードが選択可能に設けられ、前記バッテリ作業情報には、前記作業走行を実施した作業地の場所、作業日時、及び前記作業走行の作業負荷レベルが含まれ、かつ前記バッテリ劣化情報の属性情報として、前記作業地の場所及び前記作業日時に基づく前記作業地の環境状況と、前記作業走行において選択された前記作業モードに基づく前記作業負荷レベルとが加えられる。
【0007】
この構成によれば、特定の作業車におけるバッテリの使用状況は、バッテリ作業情報に含まれているので、このバッテリ作業情報を経時的に収集し、収集されたバッテリ作業情報を、例えば統計的な手法を用いて評価することで、作業車毎に固有のバッテリの劣化傾向を診断することができる。例えば、多くの作業車におけるバッテリの使用状況の平均値である基準使用状況と特定の作業車のバッテリの使用状況とを比較することにより、特定の作業車のバッテリの劣化傾向を診断することができる。そのようにして得られたバッテリ劣化情報は、診断対象となった作業車の運転手を含む管理者に報知されるので、管理者は、バッテリの劣化傾向を客観的に確認することができる。
また、GPSなどの衛星測位モジュールを搭載することによって、簡単に作業車側で取得できる、作業車の作業走行時の自車位置及びその作業日時から、ウエブサービスなどを通じて、当日の作業地の地面状態や天候などの環境状況が導出される。また、作業車には、作業負荷別に分けられた作業モードが選択可能に設けられている場合、その選択された作業モードから作業走行の負荷レベルが決定できる。また、作業車に電動モータの負荷を検出する機能や作業量を検出する機能が備えられていれば、検出されたモータ負荷や作業量から作業走行の負荷レベルが決定できる。このような構成を採用することにより、バッテリ劣化情報で示された内容が、どのような作業環境下で実施された作業により生じたものであるかを、作業車の管理者はバッテリ劣化情報の属性情報から把握することができる。これにより、バッテリを駆動源として作業走行する作業車の今後の改善された利用計画が可能となる。
【0008】
本発明の好適な実施形態では、前記バッテリ作業情報生成部及び前記報知部は前記作業車の制御系に備えられ、かつ前記バッテリ劣化情報生成部は、前記制御系とデータ通信可能なデータ処理装置に備えられている。この構成では、データ処理装置を、例えば、クラウドサービスを行うコンピュータ内に構築すれば、多くの作業車のバッテリ作業情報を格納して、これらのバッテリ作業情報を統計的に処理することで、各作業車のバッテリ劣化情報を生成することができる。生成されたバッテリ劣化情報を、データ処理装置が、作業車の制御系からのリクエストに基づいて送出する。受け取られたバッテリ劣化情報は報知部によってスピーカやディスプレイを通じて報知されることで、作業車の管理者(運転者)は自分の作業車の使用状況、特にバッテリの使用状況(劣化状況)を把握することができる。
【0009】
本発明の好適な実施形態では、前記バッテリ作業情報には、温度履歴データと、SOC履歴データと、電圧履歴データと、充放電回数データとのうちの少なくとも1つのデータが含まれており、かつ前記バッテリ劣化情報生成部は、前記温度履歴データと前記SOC履歴データと前記電圧履歴データと前記充放電回数データとのうちの少なくとも1つのデータに基づいてバッテリ酷使度を前記バッテリ劣化情報として算出する。ここで、温度履歴データは、バッテリを劣化させる温度の頻度を示すことができるデータである。SOC履歴データとは、低残容量の繰り返しの頻度を示すことができるデータであり、電圧履歴データは、バッテリを劣化させる電圧変動の頻度を示すことができるデータであり、バッテリ劣化の激しい電圧になっている期間の把握が可能である。充放電回数データは、単位日時における充放電回数を示すデータである。バッテリ、特にリチウム系バッテリは、このようなバッテリ温度の挙動、バッテリ消耗の繰り返し、バッテリ電圧の劣化挙動、充放電回数に依存して、バッテリ劣化が進行する。この構成では、温度履歴、前記SOC履歴、電圧履歴、充放電回数のうちの少なくとも1つに基づいて、バッテリ酷使度が算出されるので、このバッテリ酷使度が報知されることで、作業車の管理者は、作業車に搭載されているバッテリの正確な劣化状況を把握することができる。特に簡単な具体例として、上述した、温度履歴、SOC履歴、電圧履歴、充放電回数を点数化して、その合計値から、優・良・可・不可といったレベルを決定することが提案される。この点数化の際には、1つ以上のしきい値を設定して、各データをクラス分けして、点数を割り当てると好都合である。このようなバッテリ劣化情報であれば、簡単なLED表示器を通じて報知することも可能である。
【0010】
【0011】
本発明は、バッテリを駆動源として作業走行する作業車にも適用される。つまり、本発明が適用される作業車は、作業走行における、前記バッテリの使用状況を示すバッテリ作業情報を生成するバッテリ作業情報生成部と、前記バッテリ作業情報を経時的に診断して、前記作業車に固有の前記バッテリの劣化傾向を示すバッテリ劣化情報を生成するバッテリ劣化情報生成部と、前記バッテリ劣化情報を報知する報知部とを備え
、前記作業走行において作業負荷別に分けられた作業モードが選択可能に設けられ、前記バッテリ作業情報には、前記作業走行を実施した作業地の場所、作業日時、及び前記作業走行の作業負荷レベルが含まれ、かつ前記バッテリ劣化情報の属性情報として、前記作業地の場所及び前記作業日時に基づく前記作業地の環境状況と、前記作業走行において選択された前記作業モードに基づく前記作業負荷レベルとが加えられる。最近の作業車には、無線データ通信可能な高性能タブレットコンピュータが付属している。このタブレットコンピュータにバッテリ劣化情報生成部をアプリケーションプログラムとして備えることで、上述した好適な実施形態を含む本発明の作業車管理システムを作業車内部に構築することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を用いて、本発明の作業車管理システムによって管理される作業車の具体的な実施形態の1つを説明する。この実施形態では、作業車は電動草刈機である。なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」は車体前後方向(走行方向)に関して前方を意味し、「後」は車体前後方向(走行方向)に関して後方を意味する。また、左右方向または横方向は、車体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味する。「上」または「下」は、車体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示す。
【0014】
図1は電動草刈機(以下単に草刈機と略称する)の側面図である。この草刈機は、遊転自在なキャスタ型の左前車輪1aと右前車輪1bとからなる前車輪ユニット1、左後車輪2aと右後車輪2bとからなる駆動輪ユニット2、前車輪ユニット1と駆動輪ユニット2とによって支持される車体フレーム10、車体フレーム10の後部に配置されたバッテリ7、バッテリ7の前方に配置された運転座席11、運転座席11の後方から立設された転倒保護フレーム12、前車輪ユニット1と駆動輪ユニット2との間で車体フレーム10の下方空間に昇降リンク機構13を介して昇降可能に車体フレーム10から吊り下げられたモーアユニット3を備えている。転倒保護フレーム12の頂部には、衛星電波を受信するアンテナを含む衛星測位モジュール8が取り付けられている。
【0015】
運転座席11の前方には運転者の足載せ場であるフロアプレート14が設けられており、そこからブレーキペダル16が突き出している。運転座席11の両側には、車体横断方向の水平揺動軸回りに揺動する左操縦レバー15aと右操縦レバー15bとからなる操縦ユニット15が配置されている。左後車輪2aの回転速度は左操縦レバー15aによって変更可能であり、右前車輪1bの回転速度は右操縦レバー15bによって変更可能である。左後車輪2aと右後車輪2bとがそれぞれ独立して変更可能であり、それぞれの回転方向を逆にすることで急旋回が可能である。
【0016】
モーアユニット3は、モーアデッキ30と、2枚の回転式の刈刃20が備えられている。左側の刈刃20と右側の刈刃20とが車体横断方向に横並びしている。モーアデッキ30は、天壁31とこの天壁31の外周縁から下方に延びた側壁32とを備えている。各刈刃20は、天壁31と側壁32とによって作り出されるモーアデッキ30の内部空間に配置される。
【0017】
図2には、草刈機の動力系統及び制御系統が示されている。刈刃20を取り付けている回転軸21に動力を供給するモーアモータ4は、モーアデッキ30に装着されている。モーアモータ4から回転軸21への動力伝達のために、ベルト伝動機構22が採用されている。左後車輪2aを回転させるために、左モータ41が設けられ、右後車輪2bを回転させるために、右モータ42が設けられている。この実施形態では、互いに得率して駆動される左モータ41と右モータ42とが走行モータである。
【0018】
左モータ41と右モータ42とモーアモータ4とには、インバータ70から電力が供給される。インバータ70は、左モータ41と右モータ42とに電力を供給する走行モータ用インバータ71と、モーアモータ4に電力を供給するモーアモータ用インバータ72とを含む。インバータ70は、制御ユニット5からの制御信号に基づいて駆動する。インバータ70は、電力源としてのバッテリ7と接続されている。バッテリ7には、バッテリ7の充放電の管理、SOCの算出、バッテリ電圧の算出、充放電回数の算出などを行うバッテリ管理部7Aが備えられている。
【0019】
この実施形態では、バッテリ7の負担が異なる3つの作業モードが制御ユニット5に設定されており、運転者は、作業モード選択具81を用いて所望のモードを選択して、草刈作業を行うことができる。3つの作業モードは、エコモード、標準モード、フルパワーモードである。エコモードは、消費電力を抑え、長時間作業と低騒音とを意図とする省エネモードである。標準モードは、刈草能力と消費電力の良好なバランスを意図とするモードである。フルパワーモードは、出力をほとんど制限しないで最大限の刈草能力の発揮を意図とするモードである。もちろん、フルパワーモードがバッテリ7への負担が最も大きく、次いで、標準モードで、最も負担が少ないのがエコモードである。
【0020】
図3には、上述した草刈機に構築されている制御系と、管理コンピュータ100における作業車管理システムを構成する機能部とが示されている。この管理コンピュータ100は、作業地から離れた管理センタKSに設置され、クラウドサービスを行う。なお、小規模なシステムの場合、管理コンピュータ100に構築されている機能部は、データ通信可能なユーザ端末200に構築される。ここでは、管理コンピュータ100が草刈機の制御系とデータ通信可能なデータ処理装置として機能する。
【0021】
草刈機の制御系の中核要素である制御ユニット5には、入出力インタフェースとして機能する入出力処理部58と通信部59とが備えられている。入出力処理部58には、インバータ70、バッテリ管理部7A、作業モード選択具81、衛星測位モジュール8、報知デバイス82、走行状態検出センサ群83、作業状態検出センサ群84などが接続している。インバータ70は、走行モータ用インバータ71とモーアモータ用インバータ72とからなる。走行状態検出センサ群83には、
図2に示されている、左操縦角検出センサ91a、右操縦角検出センサ91b、左モータ回転検出センサ92a、さらには、
図3で示されている、右モータ回転検出センサ92b、第1インバータ電流検出器94aが含まれている。作業状態検出センサ群84には、モーアモータ回転検出センサ93、第2インバータ電流検出器94bなどが含まれている。第1インバータ電流検出器94aは、走行モータ用インバータ71の電流を検出し、第2インバータ電流検出器94bは、モーアモータ用インバータ72の電流を検出する。
【0022】
バッテリ管理部7Aは、バッテリ情報として、バッテリ温度、バッテリ電圧、充放電回数、SOCの時系列データ、満充電時のSOC、バッテリ電圧の算出、充放電回数の算出などを制御ユニット5に送る。
【0023】
報知デバイス82には、後で詳しく説明するバッテリ劣化情報を含む種々の情報を運転者に報知する機器が含まれている。そのような機器として、ブザー、スピーカ、LED、フラットパネルディスプレイが挙げられる。通信部59は、制御ユニット5で処理されたデータを、遠隔地の管理センタKSに構築された管理コンピュータ100またはユーザ端末200あるいはその両方に送信するとともに、管理コンピュータ100からの種々のデータを受信する機能を有する。
【0024】
制御ユニット5は、自車位置算出部51、走行モータ制御部52、モーアモータ制御部53、バッテリ作業情報生成部54、バッテリ情報取得部55、報知部56などを備えている。
【0025】
自車位置算出部51は、GPS等を採用した衛星測位モジュール8からの位置情報に基づいて、自車位置算出する。この実施形態では、自車位置算出部51に地図データが含まれているので、自車位置として経緯度データのみならず、作業地の住所なども出力される。また、位置情報には、日時データも含まれているので、作業地の住所と日時データとから、ウエブサービスなどを用いることで、作業時の天候等を導出することも可能である。
【0026】
走行モータ制御部52は、左輪速度演算と右輪速度演算と制御信号生成機能を有する。
左輪速度演算機能は、運転者による左操縦レバー15aの操作量を検出する左操縦角検出センサ91aからの検出信号に基づいて左後車輪2aの回転速度(回転数)、つまり左モータ41の回転速度(回転数)を算出する。右輪速度演算機能は、運転者による右操縦レバー15bの操作量を検出する右操縦角検出センサ91bからの検出信号に基づいて右後車輪2bの回転速度(回転数)、つまり右モータ42の回転速度(回転数)を算出する。
制御信号生成機能は、算出された左モータ41の回転速度と右モータ42の回転速度を実現するために必要な電力を左モータ41及び右モータ42送るための制御信号を生成して、走行モータ用インバータ71に与える。走行モータ用インバータ71は、左モータ41と右モータ42とに対してそれぞれ独立的して給電する。これにより、左後車輪2aと右後車輪2bの回転速度を相違させることができ、この左右後車輪速度差によって草刈機の方向転換が行われる。
【0027】
モーアモータ制御部53は、モーアモータ用インバータ72を制御して、モーアモータ4を駆動する。なお、この実施形態では、走行モータ制御部52及びモーアモータ制御部53は、作業モード選択具81によって選択された作業モードに応じて、インバータ70に与える制御信号を補正する。
【0028】
バッテリ作業情報生成部54は、草刈機の作業走行における、バッテリ7の使用状況を示すバッテリ作業情報を生成する。このバッテリ作業情報には、作業走行を実施した作業地の場所、作業日時、及び作業走行の作業負荷レベルが含まれる。作業地の場所及び作業日時は、自車位置算出部51から得られる。作業負荷レベルは、簡単には選択された作業モードと作業時間から決定される。詳細な作業負荷レベルを表すため、バッテリ作業情報には、インバータ70で生成されたインバータ電力、バッテリ管理部7Aから得られるバッテリ情報(バッテリ温度、バッテリ電圧、充放電回数など)が含まれている。なお、バッテリ作業情報には、バッテリのID、作業車のID、運転者のIDなどが付加される。
【0029】
バッテリ情報取得部55は、この実施形態では、管理コンピュータ100で生成されたバッテリ劣化情報をダウンロードして報知部56に与える。バッテリ情報取得部55によるバッテリ劣化情報の取得は、例えば、草刈機の起動時に自動的に行ってもよいし、運転者による操作指令を通じて任意のタイミングにおいて手動で行ってもよい。報知部56は、バッテリ劣化情報から報知データを作成し、報知デバイス82を通じて、バッテリ劣化情報を報知する。なお、バッテリ情報取得部55は、バッテリ管理部7Aから取得したバッテリ情報を報知部56に与えて、その内容を報知させることもできる。
【0030】
この実施形態では、データ通信回線と通信部104とを用いて、草刈機の制御ユニット5とデータ交換できる管理コンピュータ100には、草刈機の作業走行状況、特にバッテリ7の使用状況を管理する機能部が備えられている。つまり、管理コンピュータ100には、バッテリ作業情報格納部101、バッテリ劣化情報生成部102、作業車管理部103が構築されている。
【0031】
バッテリ作業情報格納部101は、草刈機のバッテリ作業情報生成部54によって生成され、アップロードされたバッテリ作業情報を、バッテリ7のID、草刈機(作業車)のID、運転者のIDなどによって区分け可能に、かつ経時的に区分け可能に、蓄積する。
作業車管理部103は、管理対象となっている草刈機を含む種々の作業車に関する情報、例えば作業車ID、管理者データ、作業地データを含む作業車の作業内容履歴データなどを、格納管理する。
【0032】
バッテリ劣化情報生成部102は、処理対象となる草刈機の管理者データや緒元データを抽出するとともに、バッテリ作業情報格納部101から診断対象となる草刈機のバッテリ作業情報を抽出し、このバッテリ作業情報を経時的に診断して、当該草刈機に固有のバッテリ7の劣化傾向を示すバッテリ劣化情報を生成する。バッテリ作業情報からバッテリ劣化情報を生成する方法として、バッテリ作業情報に含まれている各種データを入力として、バッテリ劣化度を出力する機械学習アルゴリズムが適している。
【0033】
バッテリ作業情報から簡単にバッテリ劣化情報を生成するためには、バッテリ作業情報から取り出された、温度履歴データと電圧履歴データと充放電回数データとに基づいてバッテリ酷使度を導出するとよい。このバッテリ酷使度の導出アルゴリズムとしては、各データをバッテリ7にかける負担度から等級分類し、温度履歴データの等級値と電圧履歴データの等級値と充放電回数データの等級値の統計演算、例えば等級値の合計値や、等級値の重み平均値などで、バッテリ酷使度を決定する。例えば、このバッテリ酷使度を、優・良・可・不可とすれば、この草刈機の運転者に、バッテリの考慮した草刈機ができているかどうかを、簡単な形態(LED表示やディスプレイでのメッセ―ジ表示)で知らせることができる。
【0034】
バッテリ7の劣化は、天候などの作業地の状態、実施した作業走行の作業負荷レベルなどによって、左右される。したがって、バッテリ作業情報からバッテリ酷使度が導出された場合、その作業走行の環境情報を把握することが重要である。作業車の作業走行時の自車位置及びその作業日時から、ウエブサービスなどを通じて、当日の作業地の地面状態や天候などの環境状況が、導出可能となる。また、作業走行の作業負荷レベルは、作業時に選択された作業モードから簡単に推定することができる。そのような作業環境を示すデータをバッテリ劣化情報の属性情報として付け加える機能を、バッテリ劣化情報生成部102は有する。
【0035】
バッテリ劣化情報生成部102は、バッテリ劣化情報に含まれる種々のデータを生成するための処理機能を有する。それらの例を以下に列挙する。
(1)作業日時と作業モードとの経時的評価から作業傾向の推定及びバッテリ劣化傾向の推定を行い、推定結果をバッテリ劣化情報とする機能。
(2)バッテリ劣化情報に含まれるバッテリ劣化に関する元データを作業走行場所に応じて補正する補機能。
(3)運転者毎または草刈機毎のモータ消費エネルギを算出する機能。
(4)運転者毎または草刈機毎の作業時間及び作業量を統計的に解析する機能。
(5)複数のバッテリパックでバッテリ7が構成されている場合、バッテリパックIDを用いて、バッテリパック毎の酷使度を算出する機能。
(6)満充電時のSOCからバッテリ寿命を算出する機能。
(7)車両停止時のSOCからバッテリ保存時の劣化補正値を算出する機能。
(8)バッテリ温度異常などのバッテリ異常を統計的に解析する機能。
(9)バッテリ7の適正な利用のために推薦される作業走行する際の適正な作業負荷レベルを、上記各種機能によって得られるデータから導出する機能。
【0036】
上述した、バッテリ作業情報格納部101、バッテリ劣化情報生成部102、作業車管理部103は、ユーザが所有するタブレットコンピュータなどのユーザ端末200に構築することができる。つまり、ユーザ端末200が草刈機の制御系とデータ通信可能なデータ処理装置として機能する。その場合、ユーザ端末200は、草刈機の車載LANに無線または有線で接続され、上述した管理コンピュータ100に相応する機能を果たす。また、そのようなユーザ端末200に、バッテリ作業情報生成部54、バッテリ情報取得部55、報知部56の少なくとも一部を構築してもよい。これにより、従来の草刈機に、実質的に手を加えずに、本発明による作業車管理システムの構築が可能となる。
【0037】
なお、この実施形態では、バッテリ作業情報には、温度履歴データと、SOC履歴データと、電圧履歴データと、充放電回数データとが含まれている。バッテリ劣化情報生成部102は、温度履歴データとSOC履歴データと電圧履歴データと充放電回数データとに基づいてバッテリ酷使度をバッテリ劣化情報として算出する。さらには、温度履歴、前記SOC履歴、電圧履歴、充放電回数に基づいて、バッテリ酷使度が算出され、このバッテリ酷使度が報知される。バッテリ酷使度の簡単な例は、温度履歴、SOC履歴、電圧履歴、充放電回数を、それぞれしきい値を用いて点数化された値の合計値である。さらに、その合計値に基づいて、優・良・可・不可といったレベルが決定され、最終的に、LED表示器等を通じて報知される。もちろん、バッテリ劣化を示すデータとして用いられるデータは、温度履歴データと、SOC履歴データと、電圧履歴データと、充放電回数データのうちの少なくとも1つでもよいし、これ以外のデータを採用してもよい。
【0038】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0039】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、作業車として草刈機が取り上げられたが、本発明は、コンバイン、トラクタ、田植機、耕耘機などの農作業機、その他の分野での作業機にも適用可能である。