特許第6811701号(P6811701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811701
(24)【登録日】2020年12月17日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】食用油脂及びそれを含有する食品
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20201228BHJP
   A23D 9/007 20060101ALI20201228BHJP
   A23G 9/00 20060101ALN20201228BHJP
   A23L 5/10 20160101ALN20201228BHJP
   A23L 23/10 20160101ALN20201228BHJP
【FI】
   A23D9/00 506
   A23D9/00 512
   A23D9/00 518
   A23D9/007
   !A23G9/00
   !A23L5/10 D
   !A23L23/10
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-240197(P2017-240197)
(22)【出願日】2017年12月15日
(62)【分割の表示】特願2012-75318(P2012-75318)の分割
【原出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-38433(P2018-38433A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年12月19日
【審判番号】不服2019-5554(P2019-5554/J1)
【審判請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】今村 陽子
【合議体】
【審判長】 村上 騎見高
【審判官】 佐々木 秀次
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 J.Agric.Food Chem.,2005,Vol.53,pp.2333−2340
【文献】 Journal of Food Science,2011,Vol.76,No.9,pp.C1349−C1354
【文献】 Journal of Food Science,2011,Vol.76,No.6,pp.C853−C860
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A23D9/00−9/06
A23L5/00−5/49,23/00−23/10
DB名 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
REGISTRY/CAPlus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまわり油、こめ油、ベニバナ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等の精製植物油脂、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した精製加工油脂から選択される1種または2種以上である食用精製油にマロニルイソフラボン配糖体を15〜50ppm含有するコク味を付与した食用油脂。
【請求項2】
食用精製油が精製パームオレイン、または精製パーム油である、請求項1記載の食用油脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂難溶性のマロニルイソフラボン配糖体を、油脂中に効率よく含有させることにより調製される、コク味の優れた油脂及びそれを含有してなる食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に流通している主な食用油脂は、食品の調理用や加工用に汎用性高く使用できるように殆ど無味、無臭の精製油である。かかる精製油を利用した調理加工食品は、食品素材の風味を引き立てる利点はあるものの、一方で油脂の旨味、コク味に乏しいという短所がある。なかでも、調理加工用に利用範囲が広くなっているパーム油やその分別油、硬化油、エステル交換油などの精製油は、比較的安価で酸化安定性にも優れる長所を有するものであるが、大豆油や菜種油、動物油脂などとの対比で比較的淡白な風味を有することより用途によっては油脂のコク味不足が指摘されることが多い。
【0003】
上記のような油脂のコク味不足を解消し、油脂由来の旨さの根源であるコク味を呈した汎用性の高い油脂を提供するべく、各種の風味油が開示されている。
【0004】
例えば、引用文献1には、油脂中に米糠及び糖類を浸漬し、減圧下で140〜180℃に加熱処理した後、固形分を除去することにより得られる、米糠及び糖類の風味成分等を含有する風味油が開示されている。該方法で処理することにより、油っぽい液体油や淡白な風味のパーム油等の油脂に極めて良好なコク味を付与することができるが、減圧加熱処理や固形分除去のような製造工程が複雑という問題がある。
【0005】
また、引用文献2には、乳製品粉末100重量部に対し、還元糖1〜20重量部の割合で添加混合した混合物を水分1〜15重量%の存在下に70〜120℃の温度で加熱処理して得られる、糖―加熱処理乳製品粉末由来の油溶成分を含有して成る風味油が提案されている。該風味油もコク味が付与され、硬化油の硬化臭マスキング効果も示すものであるが、やはり上記同様の製造工程が複雑という問題がある。
【0006】
上記のような、油っぽい油脂や淡白な風味の油脂にコク味を付与する方法は煩雑な工程が必要であることより、より簡便な方法で油脂にコク味を付与する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−146252号公報
【特許文献2】特開平7−46961号公報
【特許文献3】特開2001−103930号公報
【特許文献4】特表2004/057983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、油っぽい油脂や淡白な風味の油脂に対し、簡便な方法でコク味を付与した汎用性の高い油脂及びその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題解決に向けて本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、意外にも油脂難溶性のマロニルイソフラボン配糖体を油脂中に特定量含有させることにより、簡便に油っぽい油脂や淡白な風味の油脂にコク味を付与することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) マロニルイソフラボン配糖体を5〜50ppm含有する食用精製油。(但し、大豆のオイルボディーを除く。)
(2) 食用精製油が、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまわり油、こめ油、ベニバナ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等の精製植物油脂並びに牛脂、豚脂等の精製動物脂、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した精製加工油脂の単品又は、これらの組み合わせ油脂の精製油から選択される1種または2種以上である、(1)記載の食用精製油。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、簡便に油っぽい油脂や淡白な風味の油脂にコク味を付与することができるようになり、食品の調理加工に汎用性の高いコク味に優れた油脂及びその製造方法の提供が可能となった。また、本発明の油脂を含有するコク味に優れた食品の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明でコク味を付与する対象油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまわり油、こめ油、ベニバナ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等の植物油脂並びに牛脂、豚脂等の動物脂、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂の単品又は、これらの組み合わせ油脂の精製油を挙げることができるが、特に精製油の風味が淡白なパーム系油脂が好適である。
【0014】
本発明で使用するマロニルイソフラボン配糖体とは、大豆中のイソフラボン化合物の主成分として存在が確認されているマロニルダイジン、マロニルゲニスチン等である。大豆中にはこれらの他にダイジン、ゲニスチン等のイソフラボン配糖体とアグリコンであるダイゼイン、ゲニステイン等が含まれている。そして、これらのアグリコンには骨粗しょう症や更年期障害の緩和作用、抗酸化作用、制ガン作用などの多くの薬理効果が報告されている。上記の中で、マロニルイソフラボン配糖体は水に溶け易く、またそれ自身も抗酸化作用があると言われている。特許文献3は、大豆由来のマロニルイソフラボン配糖体及び/またはイソフラボン配糖体を添加したイソフラボン化合物強化食品を開示しているが、上記配糖体の濃縮液や乾燥粉末は水に可溶であるところから簡単に食品に添加することができ、該食品からイソフラボンの生理活性効果の期待できる量のイソフラボン化合物を容易に摂取可能というものである。本発明は、かかる水に可溶で油脂難溶性のマロニルイソフラボン配糖体を油脂中に含有させるものである。
【0015】
本発明に用いるマロニルイソフラボン配糖体は、例えば、特許文献3記載のオカラや脱脂大豆から製造されるイソフラボン化合物粉末や特許文献4記載の大豆杯軸から抽出、濃縮されたイソフラボン含有組成物中に含有されるものを利用することができる。上記のようなイソフラボン含有組成物中のマロニルイソフラボン配糖体の含有量は、油脂難溶性であるため、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上、最も好ましくは30重量%以上である。含有量が10重量%以下であると、マロニルイソフラボン配糖体を含有させた油脂に濁りが生じ易くなるため、好ましくない。
【0016】
また、マロニルイソフラボン配糖体を含有するイソフラボン含有組成物中には、イソフラボン配糖体やアグリコンなどが含まれるが、マロニルイソフラボン配糖体を上記含有量で含有するものであれば問題なく本発明に使用することができる。
【0017】
本発明は、マロニルイソフラボン配糖体を含有する食用油脂であり、該配糖体を含有した油脂は油脂の旨味に直結する優れたコク味を呈する。マロニルイソフラボン配糖体の含有量は、5〜50ppmが好ましく、さらに好ましくは10〜50ppm、最も好ましくは20〜50ppmである。マロニルイソフラボン配糖体の含有量が下限未満であると、油脂のコク味が不十分となるため好ましくない。また、上限を超えても油脂のコク味は上限以上には増強されないため、上限を超えて含有させる必然性はない。
【0018】
本発明のマロニルイソフラボン配糖体を含有する食用油脂は、油脂に対しマロニルイソフラボン配糖体を含有するイソフラボン含有組成物を添加、混合して、得ることができる。イソフラボン含有組成物の添加、混合方法は特に限定されないが、例えば、70℃に加熱した油脂中に1%イソフラボン含有組成物水溶液を規定量加え、50〜180℃、0.5〜100Torrの減圧条件下で攪拌しながら15〜1時間処理して十分に脱水を行うことにより、マロニルイソフラボン配糖体を含有する食用油脂を得ることができる。イソフラボン含有組成物水溶液の濃度は0.1〜22重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜10重量%である。下限未満では、油脂に対する水の量が多くなり脱水に長時間を要するため好ましくない。また、上限を超えるとマロニルイソフラボン配糖体などの結晶が析出して油脂への含有量が低下するため好ましくない。温度は50〜180℃が好ましく、下限未満では脱水に長時間を要するため好ましくない。また、上限を超えるとマロニルイソフラボン配糖体が分解してその効果が低下するため好ましくない。減圧条件は、0.5〜100Torrが好ましく、可及的に低い方がより優れた風味を得ることができる。
また、別法として、油脂の精製工程において、脱水工程の終了後に、イソフラボン含有組成物を粉末の状態で添加し、その後、100〜190℃、0.5〜100Torrの減圧条件下で15分間〜1時間攪拌後、ろ過することにより、マロニルイソフラボン配糖体を含有する清澄な油脂を得ることができる。この場合、攪拌処理中の温度は、100〜190℃で行うのが好ましく、100℃未満では、マロニルイソフラボン配糖体は油脂中に含有されず、190℃を超えるとマロニルイソフラボン配糖体が酸化、分解されてしまうおそれがあり、攪拌処理中の温度として、より好ましい温度は130〜150℃である。攪拌処理の時間は、30〜120分であることが好ましく、より好ましくは90分以上攪拌処理を行うのがよいが、120分を大幅に越えて攪拌処理を続けると、マロニルイソフラボン配糖体の酸化、分解が起こりやすくなるおそれがある。
また、攪拌後のろ過はろ布やメンブランフィルターなどの適当なろ材を用いてろ過し、外観上清澄な油脂とするのが望ましい。ろ過時の油脂温度は、油脂の酸化防止のため40〜100℃、好ましくは50〜80℃であるのが好ましい。なお、マロニルイソフラボン配糖体を油脂中に含有させる工程において、必要に応じてポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチンなどの乳化剤を添加することができる。かかる乳化剤の添加量は、風味的に3重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1重量%以下が好ましい。
【0019】
本発明の食用油脂には、酸化安定性の向上や加熱安定性の向上のために、トコフェロール類、有機酸、アスコルビン酸パルミテート、カテキン等の酸化防止剤を添加することができる。これらの酸化防止剤は、マロニルイソフラボン配糖体含有油脂に対し、単純に添加するだけで容易に含有させることができ、少なくとも1種以上の酸化防止剤を10〜2000ppm含有させるのが好ましい。
【0020】
本発明の食用油脂は、フライ油、炒め油、練り込み油、カレールー用油脂などの調理加工全般、クリーム用油脂、マーガリン/ショートニング用油脂、植物性チーズ用油脂、チョコレート用油脂などの製菓・製パン用素材全般に使用することができる。本発明の食用油脂を用いて調理加工することにより、油脂由来のコク味が付与された各種フライ食品、炒め食品、餃子、焼売、肉まん等を得ることができる。また、風味が淡白な植物性カレールー用油脂や製菓製パン用素材に用いられる植物性油脂代えて、本発明の食用油脂を用いることにより、コク味の改善されたカレールー、製菓製パン用素材、菓子類及びパン類を得ることができる。また。本発明の食用油脂はコク味の特徴が残る範囲で、本発明のコク味付けを実施していない他の植物性油脂や動物性油脂と併用することもできる。
【0021】
なお、本発明においてイソフラボンの測定は(財)日本健康・栄養食品協会の大豆イソフラボン食品規格基準分析法に従い、またサポニンは薄層クロマトグラフィー法により以下のように定量し、蛋白質はケルダール法により定量した。
【0022】
(イソフラボンの定量法)
イソフラボンとして1〜10mgに対応する試料を正確に秤量し、これに70%(v/v)エタノールを25mL加えた。30分間室温で撹拌抽出した後、遠心分離して抽出液を得た。残渣は同様の抽出操作を更に2回行った。計3回分の抽出液を70%(v/v)エタノールで100mLに定容し、0.45μmPVDFフィルターにて濾過したものを試験溶液とした。
イソフラボンの確認試験は標準品12種類、すなわちダイジン、ゲニスチン、グリシチン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン(和光純薬工業株式会社)を用い、ほぼ同じリテンションタイムのピークを確認した。定量試験はダイジン標準品を用いて12種類のイソフラボン濃度(ダイジン換算値)を定量し、下記の定量係数を乗じることにより真のイソフラボン濃度を算出した。
イソフラボンの定量係数:ダイジン(1.000)、ゲニスチン(0.814)、グリシチン(1.090)、マロニルダイジン(1.444)、マロニルゲニスチン(1.095)、マロニルグリシチン(1.351)、アセチルダイジン(1.094)、アセチルゲニスチン(1.064)、アセチルグリシチン(1.197)、ダイゼイン(0.583)、ゲニステイン(0.528)、グリシテイン(0.740) そして各種イソフラボン濃度の総和からイソフラボン量を求めた。なお、試験溶液及び標準溶液のHPLC条件は下記ように行った。マロニルイソフラボン配糖体含有量は、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチンの合計量で算出した。
【0023】
(HPLC条件)
カラム:YMC−Pack ODS−AM−303(4.6×250mm)
移動相:A液 アセトニトリル:水:酢酸=15:85:0.1(v/v/v)
B液 アセトニトリル:水:酢酸=35:65:0.1(v/v/v)
A液 → B液 直線濃度グラジエント(50分間)
流速:1.0ml/分
温度:25℃
検出:UV254nm
注入量:10μl
【実施例】
【0024】
以下、本発明について実施例を示し、より詳細に説明する。なお、例中の%及び部はいずれも重量基準を意味する。
【0025】
実施例1
70℃に加温した精製パームオレイン(ヨウ素価67.5)3,000gに対し、イソフラボン含有組成物(商品名:ソヤフラボンHG、不二製油株式会社製、マロニルイソフラボン配糖体含有量41.3%)の1.5%水溶液を7.2g添加し、120℃、2Torrの減圧条件下で攪拌しながら30分間処理して十分に脱水を行い、マロニルイソフラボン配糖体15ppmを含有する食用油脂Aを得た。得られた食用油脂Aを用いて、下記条件にて冷凍コロッケをフライし、調製したコロッケの風味を官能評価した。
(フライ条件)フライ鍋に、フライ用油脂を2Kg計量。油温を180±5℃に保つ。市販の冷凍コロッケを20分に1回1個4分揚げる。12時間連続してこの操作を繰り返し、1時間後、6時間後及び12時間後のコロッケ風味を評価した。
【0026】
比較例1、比較例2
実施例1の食用油脂Aに代えて、実施例1で用いた精製パームオレイン(比較例1)及び市販の精製菜種油(比較例2)を用いて、実施例1と同条件で冷凍コロッケのフライを行い、1時間後、6時間後及び12時間後のコロッケ風味を評価した。
【0027】
コロッケの官能評価結果を表1に示す。
表1
【0028】
表1の風味評価結果から明らかなように、精製パームオレインにマロニルイソフラボン配糖体を15ppm含有させた食用油脂Aの実施例1では、比較例1及び比較例2と対比して、優れたコク味が付与されていた。
【0029】
実施例2
70℃に加温した精製パームオレイン(ヨウ素価56)3,000gに対し、イソフラボン含有組成物(商品名:ソヤフラボンHG、不二製油株式会社製、マロニルイソフラボン配糖体含有量41.3%)粉末を0.108g添加し、180℃まで昇温し、10Torrの減圧条件下で40分間攪拌処理を行った。その後、油温80℃まで冷却してから、TOYO No.5ろ紙(1μm相当)でろ過し、マロニルイソフラボン配糖体15ppmを含有する食用油脂Bを得た。得られた食用油脂Bを用いて、下記条件にて冷凍フライドポテトをフライし、調製したフライドポテトの風味を官能評価した。
(フライ条件)フライ鍋に、フライ用油脂を2Kg計量。油温を180±5℃に保つ。市販の冷凍フライドポテトを20分に1回約18gを4分揚げる。6時間連続してこの操作を繰り返し、6時間後のフライドポテト風味を評価した。
【0030】
実施例3
実施例2のイソフラボン含有組成物粉末0.108gに加えて、コハク酸0.045gを添加し、実施例2同様の攪拌処理とろ過を行い、マロニルイソフラボン配糖体15ppm及びコハク酸15ppmを含有する食用油脂Cを得た。得られた食用油脂Cを用いて、実施例2同様に冷凍フライドポテトをフライし、調製したフライドポテトの風味を官能評価した。
【0031】
比較例3
実施例2の食用油脂Bに代えて、実施例2で用いた精製パームオレインを用いて、実施例2と同条件で冷凍フライドポテトをフライし、調製したフライドポテトの風味を官能評価した。
【0032】
フライドポテトの官能評価結果を表2に示す。
表2
【0033】
表2の風味評価結果から明らかなように、精製パームオレインにマロニルイソフラボン配糖体を15ppm含有させた食用油脂Bの実施例2では、比較例3と対比して、優れたコク味が付与され、風味に奥行きのある好ましいものであった。また、マロニルイソフラボン配糖体とコハク酸を併用した実施例3では、コク味、旨味があり風味が豊かなものであった。
【0034】
実施例4
70℃に加温した精製パーム油(ヨウ素価52)2,100gと精製ヤシ油(ヨウ素価9)900gの混合油に対し、イソフラボン含有組成物(商品名:ソヤフラボンHG、不二製油株式会社製、マロニルイソフラボン配糖体含有量41.3%)粉末を0.108g添加し、180℃まで昇温し、10Torrの減圧条件下で40分間攪拌処理を行った。その後、油温80℃まで冷却してから、TOYO No.5ろ紙(1μm相当)でろ過し、マロニルイソフラボン配糖体15ppmを含有する食用油脂Dを得た。得られた食用油脂D13部と脱脂粉乳8 部、粉末粉飴5 部、グラニュー糖1 0 部、殺菌卵黄2 部、水62 部とを6 5 〜 7 0℃ で3 0 分間ホモミキサーを用いて攪拌し予備乳化した後、超高温滅菌装置( 岩井機械工業製) により、1 4 5 ℃ において4 秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行なった。これを1 0 0 K g / c m 2 の均質化圧力で均質化し、直ちに5 ℃ まで冷却した。冷却後2 4 時間エージングを行い、水中油型乳化物を得た。この乳化物をカタブリカ( アイスクリーム製造機の商品名) にてフリージングを行い、ラクトアイスを得た。得られたラクトアイスを容器に充填し− 2 0 〜 − 3 0 ℃ で硬化させた後、ラクトアイス風味の官能評価を行なったところ、口溶け、キレが良好であるとともに、コク味、濃厚感に優れた風味であった。
【0035】
比較例4
実施例4で用いた食用油脂Dに代えて、実施例4で用いた精製パーム油70部と精製ヤシ油30部の混合油を用いて実施例4同様にラクトアイスを調製し、ラクトアイス風味の官能評価を行なったところ、口溶け、キレは良好であったが、コク味に乏しいアッサリした風味であった。
【0036】
実施例5
パームステアリン(沃素価33)43部、パーム油(沃素価52)52部、ハイエルシン菜種油極度硬化油5部の割合で混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換を行った後、水洗、脱水、精製して融点45℃のエステル交換油を得た。70℃に加温したこのエステル交換油3,000gに対し、イソフラボン含有組成物(商品名:ソヤフラボンHG、不二製油株式会社製、マロニルイソフラボン配糖体含有量41.3%)粉末を0.324g添加し、180℃まで昇温し、10Torrの減圧条件下で40分間攪拌処理を行った。その後、油温80℃まで冷却してから、TOYO No.5ろ紙(1μm相当)でろ過し、マロニルイソフラボン配糖体45ppmを含有する食用油脂Eを得た。得られた食用油脂Eを用いて以下の配合によりカレールーを作成した。
(カレールー配合)
油脂36部、カレー粉29部、粉糖13部、小麦粉11部、食塩9部、グルタミン酸ソーダ2部、レシチン0.4部
作成したカレールーの風味を60℃品温で官能評価したところ、コク味、濃厚感のある優れた風味であった。
【0037】
比較例5
実施例5の食用油脂Eに代えて、実施例5で調製した融点45℃のエステル交換油を用いて実施例5同様にカレールーを作成し、カレールーの風味を60℃品温で官能評価したところ、アッサリした風味でコク味、濃厚感とも乏しい風味であった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、食品の調理加工に汎用性の高いコク味に優れた油脂及びその製造方法に関するものである。また、本発明の油脂を含有するコク味に優れた食品に関するものである。