【実施例】
【0241】
下記は、本発明の実施を目的とする特定の実施形態の例である。実施例は、例示のみを目的として提供され、いかなる様式においても本発明の範囲を限定する意図はない。使用する数(例えば、量、温度等)に関する正確性確保のための努力はなされているが、当然のことながら、幾許かの実験的な誤差及び逸脱は許容されるべきである。
【0242】
本発明の実施の際は、別段の記載がない限り、当該技術分野の技術に属するタンパク質化学、生化学、組換えDNA手法、及び薬理学の従来方法を用いることになる。そのような手法は、文献において完全に説明されている。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993)、A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.)、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990)、Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3
rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照のこと。
【0243】
実施例1:実施例1〜9の材料及び方法
マウスの腫瘍
【0244】
PyMT−ChOVA遺伝子導入C57BL/6ファウンダーマウスについては、説明した通りであり(Engelhardt et al.,2012)、子孫を、PyMT−ChOVA導入遺伝子を対象としてPCRによって選別してから癌を監視し、20〜30週齢の時点で使用した。B78ChOVAは、B78の変異体であり(Graf et al.,1984)、これを発生させて、補足の方法に記載のように使用した。追加の系統に関する情報はすべて、補足の方法において見つけることができる。マウスはすべて、SPF条件下で維持し、NIH及びAmerican Association of Laboratory Animal Careの基準に準拠して処理し、UCSFの管理規制に従った。
【0245】
フローサイトメトリー
【0246】
抗体はすべて、BD Pharmingen、eBioscience、Invitrogen、Biolegend、UCSF hybridoma coreから購入するか、またはKrummel Labにおいて産生させた。表面染色については、細胞を抗Fc受容体抗体(クローン2.4G2)と共にインキュベートし、2%のFCSを添加したPBS中で、抗体を使用して氷上で細胞を30分間染色した。生存率は、固定化可能なLive/Dead Zombie(Biolegend)またはDAPIで染色することによって評価した。細胞内染色については、マウスに対して10ug/体重gとなるようにBrefeldinA(Cayman)を注射してから6時間後に細胞を収集し、表面マーカーに対する抗体で染色してから、25℃で10分間、2%のPFAで固定化し、0.2%のサポニンで透過処理を実施した後、標的抗体で染色した。フローサイトメトリーはすべて、BD Fortessaフローサイトメーターで実施した。フローサイトメトリーのデータ解析は、Flowjo(Treestar)を使用して実施した。細胞選別は、BD FACS Aria IIを使用して実施した。
【0247】
TCGAバイオインフォマティクス解析
【0248】
臨床的な発現解析は、12の癌型に相当する3602人の患者の腫瘍試料(乳癌が845個、卵巣癌が265個、頭頸部扁平上皮癌が303個、膀胱癌が122個、神経膠芽腫が168個、結腸癌が190個、AMLが173個、直腸癌が72、肺腺癌が355個、肺扁平上皮が259個、腎癌が480個、及び子宮癌が370個)に由来する全ゲノムにわたるmRNAレベル(Illumina mRNA配列解析)を使用するものであり、当該mRNAレベルは、TCGA PanCancerの作業部会によって単一のデータセットへと正規化及び統合されたものであり、公開されている通りである(Cancer Genome Atlas Research et al.,2013、Hoadley et al.,2014)(データは、TCGA Data Portalのhttps://tcga-data.nci.nih.gov/tcga/に存在し、syn1715755として、https://www.synapse.org/で利用可能である)。CD103
+/CD103
−の特性比は、CD103
+DC遺伝子の平均発現量を、CD103
−DC遺伝子の平均発現量で割ったものの対数として計算し、その後、標準化(平均値=0、標準偏差=1、
図8Cの遺伝子一覧)してzスコアとする。出願人は、CD8/CD68の発現比(DeNardo et al.,2011)と併せて、T細胞(Palmer et al.,2006)、増殖(Wolf et al.,2014)、CSR/損傷(Chang et al.,2005)、及びガンマインターフェロン(Viigimaa et al.,2010)の公開されている特性についても、公開されているように評価した。全生存率のデータは、TCGAのポータルから取得し(2013年6月にダウンロード)(Cancer Genome Atlas Research et al.,2013)、生存率解析は、Cox比例ハザードモデリングを使用し、癌型を適合させて多変量モデルで実施した。Benjamini−Hochberg法(Bejamini and Hochberg,1995)を使用して多重比較を適合した後、対数順位のp値を使用して有意性を評価した。Rの生存率パッケージ(Survival package)を使用して、Kaplan−Meier生存率プロットを作成した。KMプロットの全データにおいて(
図8E)、出願人は、その腫瘍型が有するCD103
+/CD103
−の特性比の中央値を使用して、それぞれの試料を「高」または「低」として分類することによって、癌型を「適合」させた。
【0249】
マウスの系統情報
【0250】
OT−Iマウスは、H−2Kbと関連する卵白アルブミンペプチドであるSIINFEKL(SL8)に対して特異的であり(Hoquist et al.,1994)、当該マウスをCD45.1,Nur77−eGFPマウス(Moran et al.,2011)、及びCd2−RFPマウス(Veiga−Fernandes et al.,2007)、またはアクチン−CFPマウス(Hadjantonakis et al.,2002)と交配させることで、養子移入、イメージング、及び活性化の実験を目的として、ゲノム的にコードされており、蛍光的または類遺伝子的に標識されたT細胞を産生させた。
【0251】
腫瘍における骨髄系細胞集団の調節については、下記のマウス系統を使用した。C57BL/6は、Simonsenから購入した。Irf4
f/fxCD11c−Cre(Klein et al.,2006),(Williams et al.,2013)は、University of ChicagoのAnne Sperlingの好意により出願人に供与された。Irf8
−/−FVBN(Ouyang et al.,2011)は、UCSFのScott Koganの好意により出願人に供与された。Zbtb46−DTR(Meredith et al.,2012)、Csf2rb
−/−(Robb et al.,1995)、及びCsf3r
−/−(Liu et al.,1996)。
【0252】
腫瘍内のAPCの可視化については、PyMT−ChOVA遺伝子導入マウスをCx
3cr1−eGFP(Jung et al.,2000)、及びCd11c−mCherryマウス(Khanna et al.,2010)と交配させることで得られた、両導入遺伝子を有するF1子孫をイメージング実験に使用した。
【0253】
細胞株、細胞培養、プラスミド、遺伝子導入
【0254】
下記の腫瘍細胞株を標準的な条件下で培養してからマウスへと注射した。B16−F10(Fidler,1975)、B16−GMCSF(Dranoff et al.,1993)、B16−FLT3L(Curran and Allison,2009)は、Larry Fongの好意により供与された。B78−親(Graf et al.,1984)。B78chOVAは、親であるB78に対して、標準的な方法を使用して、PyMTChOVA(Engelhardt et al)において使用したものと同一のCh−OVA融合構築物を遺伝子導入した。EL4(Hyman et al.,1972)、EG7(Moore et al.,1988)、EG7−chOVA、Vo−PyMT−ルシフェラーゼ−FVBは、UCSFのZena Werbの好意により出願人に供与され(Halpern et al.,2006)、LLCは、UCSFのLewis Lanierの好意により出願人に供与された(Bertram and Janik,1980)。B78p−mCherry−pHlourinは、製造者の説明書に従い、Lipofectamineを使用して、B78−親の細胞に対してN1−mCherry−pHlourin構築物を遺伝子導入することによって生成させた(Koivusalo et al.,2010、Webb et al.,2011、Choi et al.,2013)。
【0255】
簡潔に記載すると、接着細胞は、ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン含み、10%のFCSを添加したDMEM中で、37℃/5%CO2の条件を使用して組織培養処理済プラスチックプレートで培養し、2日に1回分割継代した。浮遊細胞は、10%のFCS及びペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを添加したRPMI−1640中で、フラスコで培養し、2日に1回分割継代した。
【0256】
異所性腫瘍の注射
【0257】
腫瘍細胞株を収集し、PBSで3回洗浄した後、成長因子が低減されたMatrigel Matrix(BD Biosciences)と1:1の比で混合し、最終注射体積を50ulとした。100,000個の腫瘍細胞(別段の記載がない限り)を剪毛したマウス右側腹部に皮下注射し、そのまま14〜21日増殖させてから使用した。
【0258】
腫瘍の消化
【0259】
PyMT−chOVA腫瘍及び異所性B78chOVA腫瘍をマウスから切除し、取り出した腫瘍組織の総重量を決定した。その後、メスを使用して腫瘍を細断してから、撹拌棒を入れた25mlの三角フラスコに入れ、腫瘍重量0.3グラム当たり500U/mlのコラゲナーゼIV(Sigma)、100U/mlのコラゲナーゼI(Worthington)、及び200mg/mlのDNAseI(Roche)を使用し、5%のCO2雰囲気下にある37℃のインキュベーター内の撹拌プレート上に当該三角フラスコを置いて間隔を30分として3回消化した。各30分の間隔の後、腫瘍を70umの細胞ストレーナーに通して未消化の腫瘍の大きな断片を除去してから、残っている塊を再度消化に供し、その間、単離した単一細胞は氷上で保持した。その後、CD45−ビオチン磁気陽性選択(StemSep)を4℃で実施することで全腫瘍免疫浸潤物を濃縮した。
【0260】
ヒト試料
【0261】
組織を外科用のハサミでしっかりと細断してから、磁気撹拌棒を入れた25mLの三角フラスコへと移し、0.3gの組織当たり3mg/mlのコラゲナーゼA(Roche)、及び50U/mlのDNaseI(Roche)を使用し、37℃/5%CO2の条件で、一定に撹拌しながら1時間処理した。その後、試料を70umのフィルターに通して濾過してから遠心沈降し、染色に向けて再懸濁した(Ruffell et al.,2012)。ヒト試料のすべてについて、対象のすべてからインフォームドコンセントを得ており、IRBの認可(IRB番号13−12246、12/06/2013〜12/05/2014)に従って研究を実施した。
【0262】
細胞の単離
【0263】
OT−IナイーブCD8
+T細胞を6〜12週齢のマウスのリンパ節及び脾臓から単離した。製造者の説明書に従って、陰性CD8単離キット(Stemcell Technologies)を使用して選択を実施した。BMDCは、骨髄細胞を1〜2x10^6個細胞/mlとしてプレートに播種し、10%のFCSを含むIMDM中でGM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)と共に8〜11日間培養することによって生成させた。培養の最後の2日間はIL−4を添加し、使用の12時間前にLPSを添加することで、BMDCを完全に成熟させた。
【0264】
eFlour670によるT細胞の標識化
【0265】
OT−I CD8
+T細胞をFCS非含有RPMI中で2uMのefluor670(eBioscience)と共に37℃で15分間インキュベートした。その後、2mlのFCSを使用してeFluor670による標識処理を停止し、10%のFCSを含むRPMIで、使用前に3回洗浄した。
【0266】
T細胞のバルク活性化(CTLの生成)
【0267】
100ng/mlのSL8ペプチドでパルス処理したB6脾細胞で、OT−I TCR遺伝子導入リンパ節細胞を30分間刺激した後、3回洗浄した。刺激後の2日間、及び刺激の4日後に再び、細胞を2U/mlの組換えヒトIL−2の存在下で増殖させ、2〜3日後に実験に使用した。
【0268】
T細胞増殖アッセイ
【0269】
OT−I TCR遺伝子導入マウスからリンパ節細胞を単離し、StemSep CD8濃縮(Stemcell technologies)によって、ナイーブCD8
+T細胞を濃縮し、または及び/またはCTLのバルク活性化培養物を使用した。OT−II TCR遺伝子導入マウスからリンパ節細胞を単離し、StemSep CD4濃色(Stemcell technologies)によって、ナイーブCD4
+T細胞を濃縮した。2uMのeFluor670で標識済である濃縮した20,000個のナイーブCD8細胞または5日前に予め活性化したOT−I T細胞またはナイーブCD4細胞と、25ng/mlのSL8ペプチド(OT−I)もしくは1ug/mlのpOVA323〜339ペプチド(OT−II)の存在下もしくは非存在下でパルス処理した4,000個のBMDC、またはパルス処理なしの4,000個の腫瘍APC(別段の記載がないかぎり)のいずれかと、を96ウェルのV底プレートにおいて混合し、12時間、48時間、または72時間のいずれかの時間、37℃/5%CO2の条件でインキュベートし、それらの時点での活性化を、フローサイトメトリーを介して、CD69/Nur77の増加及びefluor670の希釈によって測定した。
【0270】
対形成アッセイ
【0271】
対形成アッセイは、説明の通り実施した(Friedman et al.,2006)。簡潔に記載すると、標識したT細胞と、30分〜1時間消化した腫瘍消化物に由来する染色した単一細胞浮遊液と、を混合した後、フローサイトメトリーに向けて2%のPFAで固定化した。対形成の割合は、T細胞の総数に対するT細胞との対の数として計算した。
【0272】
インビボでの多光子顕微鏡イメージング及び手術
【0273】
動物は、イソフルオラン(isofluorane)を使用して、温めた顕微鏡ステージ上で麻酔下に保ち、施設のガイドラインに従って、定期間隔で麻酔の深度を監視した。手術前に、100ugのEvans Blueを含むPBSを動物に静脈内注射すると共に、1mlの乳酸リンゲル液を腹腔内注射した。乳腺を外科的に露出させ、出願人が以前に説明した吸引窓(suction window)(Thornton et al.)の改変型を介しての腫瘍を撮像した。生体内イメージングは、2つの赤外レーザーを備えた特注の2光子装置(MaiTai:Spectra Physics,Chameleon:Coherent)を使用して実施した。MaiTaiレーザーは、CFP及びGFPの同時励起、またはGFPの単独励起を目的として、それぞれ870nmまたは910nmに調整した。Chameleonレーザーは、mCherryの励起を目的として、1030nmに調整した。発光は、6色検出器アレイ(Hamamatsu H9433MOD検出器を利用した特注)に連結された25x1.2NAの水レンズ(Zeiss)を使用して検出し、交互レーザー励起を使用することで、12の検出チャネルを得た。励起フィルターは、青紫色417/50、青色475/23、緑色510/42、黄色542/27、赤色607/70、遠赤色675/67を使用した。顕微鏡は、MicroManagerソフトウェアスイートによって制御し、z−スタック(z−stack)画像は、4倍平均化及び3uMのz−深度(z−depth)で取得した。データ解析は、Imarisソフトウェアスイート(Bitplane)を使用して実施した。
【0274】
エクスビボでの腫瘍切片の染色及び多光子イメージング
【0275】
動物を安楽死させ、腫瘍を収集した。妨げとなる脂肪を除去し、腫瘍を2%の低融点アガロースを含むPBSに包埋した(SeaPlaque,Lonza)。Compresstome VF−200,Precisionary Instruments Inc.の組織スライサーを使用して、厚さ300μMの切片を調製した。Vetbond(3M)を使用して、切片をプラスチックのカバーガラスに付着させ、37℃/5%CO2の条件で、5%のラット血清を添加したRPMIにおいて、Alexa647で標識されたラット抗CD11b抗体で2時間染色した。切片は、RPMI中で洗浄し、Nikon A1R共焦点顕微鏡を使用して撮像した。
【0276】
RNA抽出、Fluidigm、及びRNA配列解析
【0277】
4,000〜20,000個の細胞を選別し、300ulのTrizol LSへと直接添加して急速冷凍し、迅速に−80℃として抽出まで保管した。RNAは、フェノール−クロロホルム法によって抽出し、エタノール沈殿を実施した。その後、試料をDNaseIで処理し、SuperscriptIII(Invitrogen)を使用してcDNAを合成した。ナノリットルのqPCR Fluidigm解析については、2倍濃度のTaqman PreAmp Master Mix(Applied Biosystems)を使用した標的特異的な増幅を介して、cDNAを予め増幅(12サイクル)した後、エキソヌクレアーゼIで処理することで、組み込まれていないプライマーを除去した。その後、試料及びプライマー(標的プライマーは、Harvardプライマーバンク:http://pga.mgh.harvard.edu/primerbank/を使用して設計した)を、2倍濃度のSsoFast EvaGreen Super Mix(Bio−Rad)と共に48.48 Dynamic Arrayへと負荷し、BioMark HDにかけた。RNA配列解析については、Arcturus Picopure RNA単離キット(Life Technologies)を使用して試料を抽出し、生物学的に分析し、UCSF Genomics Coreに提出した。ライブラリーは、Nugen Ovationキットを使用して調製し、その後にIllumina HiSeq 2500機器で配列決定した。シングルエンドである、50塩基対のリードを生成させることで、約4億500万のリードを得、平均深度(depth)は、3370万リード/試料であった。リードをマウスゲノム(USCS mm10)に対してアライメントし、既知のmRNAに特異的に位置づけされたものを発現差異の評価に使用した。発現差異の解析及び評価については、Tophat(Trapnell et al.,2009)を使用してアライメントを実施すると共に、DESeq(Anders and Huber,2010)を使用して発現差異の解析を行った。
【0278】
腫瘍の増殖
【0279】
腫瘍の増殖曲線については、記載の期間にわたって、腫瘍の幅(width)x腫瘍の高さ(height)としてノギスで腫瘍面積(mm
2)を測定した。
【0280】
ジフテリア毒素、FTY−720、及び抗CSF−1での処理
【0281】
ジフテリア毒素(D.T.)は、Sigma−Aldrichから購入した。一過性のD.T.による除去(ablation)については、体重グラム当たり20ngのD.T.をDTRマウスの腹腔内に注射し、D.T.注射の24時間後に、分析に向けてマウスを安楽死させた。長期間の除去については、マウスに対して最初に20ng/グラムのDTを腹腔内注射した後、その後は4ng/グラムで実施する3日に1回の投与を維持した。
【0282】
FTY720は、Caymanから購入し、生理食塩水において再構成して1mg/mlの一定分量として−20Cで保管した。生理食塩水中の最終濃度が100ug/mlである200ulのFTYを、記載の期間にわたって2日に1回腹腔内注射した。
【0283】
中和抗CSF−1抗体、クローン5A1、及びアイソタイプラットIgG2aは、UCSF Antibody Coreから購入し、精製した。動物は、腹腔内注射によって1mgの抗体で最初に処理し、3日後に解析した。期間にわたって枯渇を維持するため、その後は5日に1回、0.5mg用量をマウスに続けて腹腔内注射した。
【0284】
GMP前駆細胞の調製及び養子移入
【0285】
すべての骨(大腿骨、脛骨、上腕骨、尺骨、橈骨、及び骨盤を含む)を収集し、選別緩衝液(2%のFCSを添加したPBS)に移し、乳鉢及び乳房で粉砕し、HBSSで繰り返し洗浄した後、70umのフィルターに通した。その後、175mMの塩化アンモニウムを使用して37℃で5分間、RBCの溶解処理を実施した細胞を洗浄し、3mlのHistopaque−1110(Sigma)の分離層(underlay)を使用して、密度勾配遠心分離を実施することで、生存細胞を選択すると共に、残存する骨の残骸を除去した。骨髄細胞は、CD117 Microbeads(Miltenyi Biotec)を使用して、CD117陽性細胞を濃縮し、AutoMACSで陽性のものを選択した。その後、非コンジュゲートラット抗体の系譜混合物(CD4、CD8、Mac1、Gr−1、CD5、Ter119、及びCD3)を使用して、細胞を氷上で30分間染色した後に洗浄し、蛍光的にコンジュゲートした抗ラット二次抗体を使用して、氷上で30分間染色した。その後、細胞を洗浄し、前駆細胞の主要混合物(master mix)(Ckit−APC−cy7、Sca1−PB、CD34−FITC、及びFCgR−PerCPCy5.5)を使用して氷上で30分間染色した後、洗浄してから、GMPを対象として、BD FACs AriaIIを使用し、生存細胞、cKit+Sca1−、CD34+FcgR+であるものを選別した。
【0286】
デキストラン取り込みアッセイ
【0287】
上記のように腫瘍を消化し、CD45陽性で選択した後、細胞を、ウェル当たり1x10
6個で96ウェル丸底プレートに播種し、1mg/mlのDextran−Pacific Blue(10,000MW)の存在下または非存在下、4℃または37℃のいずれかで30分間、3連でインキュベートした。プレートを5分に1回軽くたたいた。その後、プレートを3回洗浄した後、表面抗体で染色してすぐにフローサイトメトリーによって分析した。37℃でのデキストランの取り込みの幾何平均蛍光強度から、4℃でのデキストランの結合の幾何平均蛍光強度を差し引いたものをデキストランの取り込みとして測定した。
【0288】
細胞の追跡及びイメージング解析
【0289】
データは、Imaris Software(Bitplane)を使用して可視化及び解析した。個々のT細胞は、Imarisによって同定及び追跡した。CD11c mcherry DCは、MATLABでセグメント化したものからマスク化DCのイソサーフェス(iso−surface)を使用して計算した。接触持続時間は、Imarisを使用して追跡したマスク化T細胞−DC対の計算追跡持続時間によって決定した。
【0290】
抗体クローン
【0291】
マウスAbクローン:CD45クローン30−F11、CD45.1クローンA20、CD45.2クローン104、CD11bクローンM1/70、CD11cクローンN418、CD103クローン2E7、CD24クローンM1/69、CD90.2クローン30−H12、Ly6CクローンHK1.4、MHCIIクローンN22、F4/80クローンBM8、CD69クローンH1.2F3、CD135クローンA2F10、CD117クローン2B8、CD26クローンH194−112、CD206クローンC068C2、CD64クローンX54−5/7.1、MerTKクローンY323、CD301bクローン11A10−B7−2は、Akiko Iwasakiの好意によるYale Universityからの出願人への供与物、PDL2クローンTY25、IRF4クローンM17及びIRF8クローンT14は、Roger Sciammasの好意によるUniversity of Chicagoからの出願人への供与物、IL12クローンC17.8、CD80クローン16−10A1、CD86クローンGL1、2B4クローンm2B4、ならびにPDL1クローン10F.9G2。
【0292】
ヒトAbクローン:CD45クローンHl30、CD3eクローンOKT3、HLADRクローンL243、CD56クローンCMSSB、CD19クローンH1B19、CD14クローン61D3、CD16クローンCB16、CD11cクローン3.9、BDCA1クローンL161、及びBDCA3クローンAD5−14H12。
【0293】
統計解析
【0294】
統計解析は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。別段の特定記載がない限り、データはすべて、4回以上の別々の実験の代表である。誤差バーは、Prismを使用して計算したSEMを示し、3連の実験条件に由来するものである。特定の統計検定では、対応T検定及び独立T検定を使用し、0.05未満であるp値はすべて、統計学的に有意であると見なした。
【0295】
実施例2:表面マーカーは、大量に存在するマクロファージから、希少な腫瘍性DCサブセットを描出する。
腫瘍浸潤性骨髄系集団を精査するために、11色のフローサイトメトリーパネルを考案し、蛍光mCherryタンパク質及び卵白アルブミンを独立して共発現する癌遺伝子が開始するように操作された自発生乳腺腫瘍モデルであるPyMTChOVA(Engelhardt et al.,2012)使用して、段階的なゲート方針を用いた。出願人は、腫瘍性CD45
+コンパートメントの特性を明らかにし、その多くが、貪食された腫瘍抗原を有しており、したがって、mCherryの蛍光を示している(
図1A)。骨髄系特異的マーカーであるCD11b及び単球マーカーであるLy6Cによってすべての造血細胞を部分ゲートすることで、好中球及び単球を排除することが可能であった(データ未掲載)。MHCII
+細胞内で、DCは、CD24
高及びF4/80
低である発現に基づいてマクロファージと区別され、そのいずれもあてはまらないか、単独であてはまれば、典型的には、この区別をする上で十分である。その後、健康な末梢組織で観測されたように、DCは、CD11b及びCD103の発現差異に基づいて2つの集団へと解析分類されることが明らかとなった(Hashimoto et al.,2011)。出願人は、2つのメラノーママウスモデル(B78ChOVA(mCherry及びOVAを発現するB16の変異体)、
図1B及びBRAF V600E、データ未掲載)においてこうした集団を発見し、これは、マウス種(例えば、FVB PyMT、データ未掲載)、及び異所性腫瘍(ルイス肺癌、データ未掲載)にまたがるものであった。出願人は、識別及び議論を容易なものとするために、これ以後は、こうしたDC集団を「CD11b
+DC1」及び「CD103
+DC2」と称する。
【0296】
F4/80
高CD24
低コンパートメントを解析することで、2つの型のマクロファージが存在することも明らかとなり、これらは、CD11c及びCD11bの発現差異によって同定した。CD11c
低CD11b
高細胞(ここまでは「TAM1」)及びCD11c
高CD11b
低細胞(「TAM2」)は、同様に描出されたMHCII
高集団及びMHCII
低集団(Movahedi et al.,2010)に広くは一致するように思われる(
図5cも参照のこと)。CD11c、さもなければ「非常に典型的な(protoypical)」DCマーカーは、DCに最も多く存在する一方で、TAM2では高度に発現しており、TAM1ではそれほどでないにせよ発現していた(データ未掲載)。こうした集団は、それぞれの有病率、及びそれらが有している能力は、区別が曖昧であり、異なる程度は僅かであったものの、調べたすべてのモデルにわたって存在していた(
図1A〜
図1B、及びデータ未掲載)。それ故に、出願人は、出願人の系譜及び機能の試験を、1つの例である自発生腫瘍モデル(PyMTChOVA)及び異所性腫瘍モデル(B78ChOVA)に適用した。これらの具体的なモデルは、別段の記載がある箇所にはあてはまらない。
【0297】
腫瘍に由来するmCherryの負荷量及び保持を、こうした集団のそれぞれを対象として評価した。これによって、取り込み
高細胞の存在が明らかとなり、当該細胞は、腫瘍周縁部に局在化することを出願人が以前に報告しており、その後、CD11cのみによって同定したものであり(Engelhardt et al.,2012)、TAM1及びTAM2のゲートにおいて最も多く補足された(
図1c及びデータ未掲載)。比較してみると、CD11b
+DC1及びCD103
+DC2は、mCherryの取り込みまたは保持が少ない一方で、単球のいくつかでは、中程度の抗原負荷量を有しているという証拠が明らかとなったが、好中球ではこのことはほとんど見られなかった。
【0298】
CD11b
+及びCD103
+のDCサブセットは、末梢性のマウス組織の多くにおいて見出されていると共に、それらの対応物は、末梢性のヒト組織において同定されており、それぞれBDCA1及びBDCA3を発現することによって定義された(Dzionek et al.,2000、Haniffa et al.,2012)。出願人は、こうしたマーカーを使用して、ヒト転移性メラノーマ試料において、TAM/DCを同等に区別することも可能であることを発見した(
図1D)。すべてのTAMに相当するCD16
−HLADR
+CD11c
+CD14
+細胞は、CD16
−HLADR
+CD11c
+CD14
−DC集団とは異なっており、次いで、当該DC集団をBDCA1(「DC1」)及びBDCA3(「DC2」)の発現差異によって解析分類した。マウスモデル(
図1E)及びヒトメラノーマ生検(
図1F)全般にわたって共通していることは、CD11b
+/BDCA1 DC1集団、及びCD103
+/BDCA3 DC2集団が存在していると共に、それらが希薄であり、DC2に関しては特に希薄であるということである。
【0299】
実施例3:腫瘍のDC及びマクロファージのタンパク質及び転写の描出。
出願人のゲーティング方針を検証するために、出願人は、ImmGenコンソーシアム(Gautier et al.,2012、Miller et al.,2012)によって定義される抗体パネルを適用した。出願人の「DC」の割り当てと一致して、B78chOVAモデル及びPyMTchOVAモデルにおいて、CD103
+DC2は、CD135(Flt3)、CD117(cKit)、及びCD26を発現していた一方で、TAMの両集団はそれらを発現していなかった(
図2A及びデータ未掲載)。驚くべきことに、CD11b
+DC1は、検出可能なレベルのDCマーカーを発現しておらず、実際は、CD206、CD64、及びMerTKを含む「マクロファージ」マーカーのいくつかを発現しているという理由によって、TAM1及びTAM2とはさらに分離されるものであった(
図2B及びデータ未掲載)。しかしながら、CD11b
+DC1は、CD301b及びPDL2を僅かに発現しており、それらは両方共、皮膚において見出されるIRF4依存性の「DC
Th2」集団を定義するために使用されてきたものである(
図2C及びデータ未掲載)(Gao et al.,2013、Kumamoto et al.,2013)。
【0300】
こうしたAPCをさらに描出するために、出願人は、B78chOVA腫瘍から選別した細胞の遺伝子発現特性を、RNA配列解析を使用して解析した。
図2Dに示すように、遺伝子ブロックは、4つの異なる集団を明瞭に分離しており、PCA解析(
図2E)では、TAM1、TAM2、及びCD11b
+DC1が最も類似しており、CD103
+DC2が、最も異なっていた。最も発現が異なっていた遺伝子の中で、DC系譜を定義する転写因子であるIrf8(Tamura et al.,2005)及びZbtb46(zDC)(Meredith et al.,2012)は、それぞれCD103
+DC2のみに特異的であるか、または両方のDCに特異的であった一方で、Irf4は、CD11b
+DC1において中程度に濃縮されており、これらはすべて、RT−qPCRによって検証したものである(
図2F)。このことは、IRF4/8を対象とする細胞内フローサイトメトリーによってタンパク質レベルでも確認した(
図2G及びデータ未掲載)。すべての集団がMybを発現しており、このことは、卵黄嚢から発生した組織前駆細胞に由来するものとは対照的に、造血幹細胞を起源とすることを示している(Schulz et al.,2012)。表面表現型及び重要転写因子の発現が特有なものであることは、PyMTchOVAモデルにおいて再確認した(データ未掲載)。
【0301】
こうした腫瘍内集団は、異なる腫瘍特異的な機構を介するものであって、当該集団が通常組織のいくつかにおいて依存するような転写因子には依存しない可能性があるため、出願人は、ノックアウトマウス、または転写因子が推進するジフテリア毒素受容体(DTR)マウスを使用して、Irf8、Irf4、Batf3、及びzDCに対する依存性を調べた。出願人は、さまざまな異所性腫瘍を利用した。この理由は、こうした対立遺伝子を組み込み、繁殖させて自発性モデルをつくる際に予測不能な変動が生じると共に、期間を要するためである。出願人は異所性PyMT乳腺腫瘍モデルを使用して、Irf8が欠失するとCD103
+DC2が特異的に除去されるが、TAM1またはTAM2には影響を与えず、CD11b
+DC1の割合は少し濃縮されることを発見し、CD11b
+DC1の濃縮は、おそらく補償が生じた結果であると考えられる(
図3A)。対照的に、B78chOVAモデルにおいて、CD11c−Creによって推進することでIrf4を条件的に欠失させると(Williams et al.,2013)、CD11b
+DC1が特異的に減少し、その他は、ほとんど変化しなかった(
図3B)。RNA配列解析のデータと一致して、Batf3欠損動物でもまた、B78chOVAモデルにおいて、腫瘍性CD103
+DC2集団が欠乏しており、CD11b
+DC1集団、TAM1集団、またはTAM2集団に対する影響はなかった(
図3C)。最終的に、zDC推進型DTR対立遺伝子を使用したとき、B78chOVA腫瘍において、CD103
+DC2が特異的かつ有意に減少し、CD11b
+DC1集団またはTAM1/TAM2集団はほとんど変化しないか、または全く変化しないことを出願人は発見し(
図3D)、このことは幾分か予想外であった。このことは、DTR対立遺伝子の予測不能な変動を示し得るか、またはzDC発現の僅かではあるが有意な変動を示し得るものである。まとめると、CD11b
+DC1及び腫瘍において非常に多く存在するTAM1/TAM2と比較して、CD103
+DC2は、異なる系譜のAPCに相当するものであると出願人は結論づける。
【0302】
実施例4:CD103
+DC2は、異なるサイトカインによってプログラムされる。
APCは、骨髄(BM)前駆細胞に由来すると共に、それがDC/マクロファージのサブセットへと分化することは、特定のサイトカインに依存している。こうした集団への分化を推進するサイトカインを決定するために、出願人は、qPCRによって、コロニー刺激因子(CSF)受容体の発現を、モデルを横断して調べた。TAM1、TAM2、及びCD11b
+DC1においては、Csf1r(M−CSFR)が排他的に見出された一方で、DC1サブセット及びDC2サブセットにおいては、Csf2rb(GM−CSFR)が特異的に発現しており、Csf3r(G−CSF)は、すべてにおいて存在しなかった(
図4A)。中和抗体での処理または異所性腫瘍を有するサイトカイン受容体欠損マウスのいずれかを使用して、出願人は、腫瘍におけるAPCのCSFサイトカインに対する依存性を機能的に試験した。
【0303】
TAM1細胞及びTAM2細胞は、以前に示されたように(Wyckoff et al.,2004)、それらを維持するためにCSF−1に決定的に依存している一方で、CD11b
+DC1集団及びCD103
+DC2集団は、CSF1には依存しておらず、これは特有なことであった(
図4B)。サイトカイン受容体欠損マウスを使用するために、出願人は、顆粒球マクロファージ前駆細胞(GMP)を、異所性腫瘍を有する宿主へと移入する類遺伝子性養子移入モデルを開発し、BM、脾臓、及び腫瘍における再増殖を追跡した(
図4C)。腫瘍において、GMPに由来する細胞がすべての骨髄系コンパートメントに集合しており、このことは、CD11b
+DC1、CD103
+DC2、TAM1、及びTAM2がGMP起源であることを確認するものであった(
図4D)。GMP養子系を競合移入と共に使用することによって、出願人は、腫瘍においてCsf2rb
−/−細胞が、DCを再構成する能力を選択的に有していないことを発見し、ここで、当該DCは、CD24
+CD11c
+のゲーティングを使用してDC1/DC2の合計として定義されるものである。出願人は、TAM1及びTAM2の再増殖に対する影響はないことを発見し、このことは、CSF2(GM−CSF)が腫瘍性DCの発生に特有の要件であることを示唆している(
図4E)一方で、4つのAPCのいずれも、CSF−3を必要としないことが明らかとなった(データ未掲載)。
【0304】
DCは、GM−CSFまたはFLT3−リガンド(FLT3L)によって原型的に推進されるため、出願人は、GMCSFまたはFLT3Lを発現するように操作されたB16メラノーマ腫瘍モデルを使用して、サイトカインが腫瘍においてDC集団を十分に推進するかを評価した。腫瘍がGMCSFを発現することで、CD11b
+DC1の割合は大幅に歪んだ一方で、FLT3Lを発現する腫瘍は、腫瘍において希少なCD103
+DC2の増殖を特異的に推進した(
図4F)。
【0305】
実施例5:CD103
+DC2に特有の抗原処理能力及び抗原提示能力。
異なるAPCの系譜要件が確立されたため、次に出願人は、それらがT細胞応答を開始、関与、及び維持する能力について評価した。抗原の処理、提示、及び同時刺激に関して細胞を解析するために、出願人は、
図2のRNA配列解析データを使用して、こうした経路に関与する遺伝子の転写物レベル及びタンパク質レベルを解析した。差異は、かなりのものであり、潜在的なAPC機能の広範囲にまたがるものであった(
図5A)。注目すべきことに、CD80、CD86、及び2B4を含む、T細胞応答の制御に関与する分子の表面レベルは、集団間で同等であった一方で、CD103
+DC2は、異なる転写特性を示し、当該特性は、T細胞相互作用を増進するであろうと予測される交差提示の増大、同時刺激の増進、及びケモカイン発現の増加と一致するものであった(
図5A、
図5B、及びデータ未掲載)。APC間においてMHCI及びMHCIIの発現に大きな違いはなく、例外として、CD103
+DC2でMHCIが僅かに減少していた(
図5C)。しかしながら、異所性腫瘍に由来し、エクスビボでのデキストランの取り込みによって外因的に測定された貪食能力では、TAM1/TAM2と比較して、CD103
+DC2において有意な差が観測された(
図5D)。
【0306】
DCの成熟及び貪食能力は、逆相関の関係にあることが多いため、出願人は、CD103
+DC2の貪食能力の減少が、抗原の交差提示が増加し、DCがより成熟する(Guermonprez et al.,2002)ことと対応するのではないかという仮説を立てた。DCにおける抗原の効率的な交差提示は、食胞のpHを制御するNox2に依存しており、それによって、T細胞ペプチドの破壊を防いでいる。本研究の前に、このことは、比率計測アッセイを使用し、pH感受性及びpH非感受性のフルオロフォアの細胞内蛍光強度を貪食後に比較することで以前に決定された(Savina et al.,2006)。それ故に、出願人は、pH感受性GFP(pHluorin、pH6.5未満で消光)と、pH非感受性フルオロフォア(mCherry)と、の融合体を発現するB78(メラノーマ)腫瘍株を生成させた。それぞれの集団のmCherry
+コンパートメント内のpHluorinの強度を単独で解析することによって、出願人は、「DC」集団のみが、アルカリ性(蛍光)環境にpHluorinを維持していることを発見し、pHluorin及びmCherryのシグナル比を比較することで、CD103
+DC2が細胞内コンパートメントを最も塩基性に維持している一方で、TAM1集団及びTAM2集団では、高度に酸性を示し、それ故に、分解性の貪食経路であることが示された(
図5E)。CD103
+DC2の食胞内腔のアルカリ性が増加していたことに加えて、この細胞では、炎症性誘発性サイトカインであるIL−12の発現が異なっており、抗炎症性であるIL−10は存在しないことが示された(
図5F、
図5G,及びデータ未掲載)。まとめると、こうした特徴はすべて、CD8
+T細胞への効率的な抗原交差提示に向けて、CD103
+DC2が高度に準備されていることを示唆している。
【0307】
実施例6:CD103
+DC2は、ナイーブCD8
+T細胞及び活性化CD8
+T細胞の優れた刺激因子である。
以前に出願人は、腫瘍から直接的に取得したとき、抗原を取り込んでいる骨髄系コンパートメントの総体がナイーブCD8
+T細胞を刺激することは可能であるが、予め活性化されたCD8
+T細胞を刺激することは不可能であることを発見した(Engelhardt et al.,2012)。しかしながら、CD103
+DC2に特有の交差提示表現型に基づき、出願人は、腫瘍から新たに単離したそれぞれの集団のT細胞刺激能力を試験することを試みた。卵白アルブミンに特異的なOT−I CD8
+T細胞と12時間共培養した後に、TCRシグナル伝達を強固に誘導する能力を有していたのはCD103
+DC2集団のみであり、このことは、ナイーブOT−I CD8
+T細胞及び予め活性化されたOT−I CD8
+T細胞の両方において、早期T細胞活性化マーカーであるNur77及びCD69が増加したことによって証明された。重要なことに、このことは、異所性マウスモデル及び自発性マウスモデルの両方において一貫性を有していた(
図6A及びデータ未掲載)。色素標識したOT−I CD8
+T細胞との共培養を延長することで、CD11b
+DC1集団及びCD103
+DC2集団が、ナイーブCD8
+T細胞を増殖させる最も強固な刺激因子であることが明らかとなり、貪食性腫瘍骨髄系細胞において以前に同定された刺激能力のほとんど全体が、こうしたDC内に特異的に存在することが示された(
図6B〜6C、及びデータ未掲載)。興味深いことに、CD103
+DC2は、確立されたCTLの強力な増殖を特異的に誘導する能力を有しており、当該CTLは、他の集団によって刺激されなかったことから、CD103
+DC2は、腫瘍におけるCTLの優れた交差提示刺激因子であることが示唆された(それぞれ
図6D〜6E、及びデータ未掲載)。
【0308】
最終的に、CD103
+DC2は、通常、全腫瘍単離物において低頻度で存在しており、この頻度では、CD103
+DC2がCTLの増殖を推進することは依然として不可能である(データ未掲載(Engelhardt et al.,2012))。さらに、APCサブセットのいずれも、腫瘍から直接的に得たCD4
+T細胞の増殖を誘導しなかった(
図6F〜6G、データ未掲載)。しかしながら、外来性のペプチドが、事実としてDC1及びDC2の増殖刺激能力を回復させており、このことは、こうしたDCがCD4 T細胞を刺激することが本質的に不可能ではあり得ないことを示唆している(データ未掲載)。決定的に、このことは、腫瘍内のCD103
+DC2が、CTLを強固に刺激するための、腫瘍抗原の取り込み能力、処理能力、及び抗原提示能力を特異的に有していることを明らかにするものである。これは、腫瘍が含むものは、弱い骨髄系集団、または抑制性である骨髄系集団のみであるという単純な概念に対する挑戦である。
【0309】
実施例7:生体内イメージングによるCD103
+DC2の局在化及びT細胞相互作用の解明。
希少CD103
+DC2のT細胞刺激能力が特有であることを考慮し、出願人は、こうした細胞の腫瘍内での空間的な組織化、及びそのT細胞との相互作用動力学に対する理解をインビボ及びインビトロの両方で試みた。生存している自発性腫瘍において、インビボでこうした集団を区別するために、PyMTchOVA対立遺伝子をCx
3cr1−eGFP対立遺伝子及びCd11c−mCherry対立遺伝子へと交差させ、骨髄系コンパートメントにおいて3つの特異的な蛍光集団を生成させた(データ未掲載)。両DCサブセット(DC1/DC2)は、赤色で特異的に標識された(CD11c−mCherryのみ)一方で、TAM1集団及びTAM2集団は、それぞれ緑色(Cx
3cr1−eGFP)ならびに黄色(CD11c−mCherry及びCx
3cr1−eGFP)に標識された。この蛍光手法を、2光子生体内イメージングと共に使用して、出願人は、TAM1集団及びTAM2集団が腫瘍性病巣に密接して優先的に縁へと移動していることを観測した。この帯域は、出願人が以前に、T細胞が優先的に補足されることを発見した帯域である(Engelhardt et al.,2012)。対照的に、赤色のDCサブセットは、典型的には、腫瘍病巣から遠位にあるコラーゲンに富む別の帯域において見出され、遠位に局在化しているすべてのAPCの70%近くを構成するものであった(
図7A及びデータ未掲載)。
【0310】
この手法では、腫瘍病床の周縁部に存在するものの中で、CD11b
+DC1細胞とCD103
+DC2細胞とが完全に区別されなかったため、出願人は、ほとんど存在しない赤色のDCが、排他的に一方またはもう一方のサブセットに優先的に相当し得るかどうかの決定を試みた。インサイチュでサブセットを描出するために、出願人は、抗CD11b抗体による染色を使用した生存腫瘍切片のイメージングを利用した。これを使用することで、出願人は、赤色/緑色蛍光レポーターの存在下で、CD11b
+DC1サブセットとCD103
+DC2サブセットとをインサイチュで区別することが可能であったと共に、CD11b
+DC及びCD11b
−DCの両方が、こうした位置に存在していることを発見した(データ未掲載)。出願人は、TAMが、一般に、腫瘍周縁部において優勢な細胞型となる一方で、それでもなお、数は非常に少ないものの、CTL刺激促進性APCをそこに見出すことができると結論づける。
【0311】
出願人の以前のデータは、流入するCTLが腫瘍周縁部において捕捉される挙動をとることを示しており、出願人は、こうしたことがDCもしくはTAMまたはそれらの両方で生じ得るかどうかの決定を試みた。生体内イメージングまたは生存切片イメージングのいずれかを目的として、アクチン−CFP標識したOT−I CD8
+T細胞を、自発性乳腺腫瘍を有するマウスへと養子移入することによって、赤色/緑色レポーター系において、インビボでT細胞動力学を解析した。出願人は、以前に説明したように(Boissonnas et al.,2013、Engelhardt et al.,2012)、安定的なT細胞相互作用は、大部分が腫瘍周縁部に限局していることを観測した(
図7B及びデータ未掲載)。スコア化した相互作用のすべてでTAM1相互作用が優勢であったものの、DC及びTAM2もまた、はっきりとT細胞の捕捉に関与していた。このことは、腫瘍近位領域において、DC1/2が不能でもなければ、腫瘍内で活動するT細胞から物理的に排除されている訳でもないことを示しているが、どれがT細胞を関与させる本質的な能力が高いのかという基本的な疑問を生じさせるものである。
【0312】
これに答えるために、出願人は、APCの選択を組織の物理的制約から切り離し、腫瘍を消化することで、単一細胞浮遊液を調製し、インビトロで活性化したOT−I CTLに導入し、そのままOT−I CTLと抗原特異的な対を形成させた。その後、出願人は、T細胞と対を形成したそれぞれのAPC集団の割合をフローサイトメトリーによって定量した。これによって、OT−I T細胞は、CD103
+DC2サブセット及びTAM1/2サブセットと優先的に対を形成することが明らかとなった(
図7Cの左パネル)。しかしながら、TAM1/2が高頻度で存在するため、ほとんどのT細胞−APC対は、TAM1/2細胞と形成されたものである(
図7Cの右パネル)。出願人は、腫瘍において、DC2が周縁部付近に存在するとき、T細胞相互作用に寄与しており、T細胞を占有するために競合する能力を有していると結論づける。
【0313】
実施例8:希少な腫瘍CD103
+DC2は、効率的な養子T細胞療法を可能にする。
出願人は、完全に侵襲性かつ増殖性の株であるEG7.1と比較して、自発的に退縮するEG7腫瘍細胞株では、CD11b
+DC1とCD103
+DC2との割合がほとんど反転していることを発見し、このことは驚きであった。自発的に退縮するEG7腫瘍細胞株は、これ以後はEG7.2と称す。この侵襲性の増殖株は、出願人が他のすべての侵襲性の腫瘍において観測したDCの相対的な割合を維持していた(データ未掲載)一方で、この自発的に退縮するモデルは、異常に多い数のCD103
+DC2を含んでいた(データ未掲載)。出願人は、CD103
+DC2を欠いているIrf8KO腫瘍モデルにおいては、腫瘍増殖が増加するが、Irf4条件的KOモデルでは増加しないことも観測した(データ未掲載)。まとめると、DC2の腫瘍性の存在量は、腫瘍制御において重要な役割を担い得ることが示唆されるが、増殖の差異は、その骨髄系細胞集団及びそのCTL刺激能力を超えて、こうした株における変動の大きさに相当し得るものである。それ故に、CD103
+DC2が、効率的なCTL媒介性の腫瘍退縮に必要であるかどうかを正式に試験するために、出願人は、増殖性EG7.1腫瘍モデルを対象とし、活性化した腫瘍特異的T細胞による養子T細胞療法を実施して退縮を解析した(Helmich and Dutton,2001)。出願人は、こうした実験をzDC−DTRマウスにおいて実施した。当該マウスでは、腫瘍においてCD103
+DC2を特異的に除去することが可能である(
図3D)。腫瘍部位に対するCD103
+DC2の影響を分離すると共に、LNでのプライミングのどのような影響も排除するために、(1)LNでのプライミングを必要とせず、典型的には、LNを通過しない活性化したOT−I CD8
+CTL芽細胞の使用と、(2)LNへと流入する移入した希少CTL T細胞がLNから流出することを防ぐSIP
1RアンタゴニストであるFTY−720での動物の処理と、である2つの方針を含めた実験を出願人は特別に設計した。FTY−720単独の影響が、移入したCTLが腫瘍の退縮を媒介することに対して与えた影響は最小限であった(データ未掲載)。しかしながら、出願人は、FTY−720と関連させてCD103
+DC2を除去すると、CTLが効率的に腫瘍退縮を媒介する能力に対して重大な影響を与え、これによって、T細胞が媒介する腫瘍退縮が大幅に遅延することを発見した(
図8A)。
【0314】
実施例9:腫瘍内CD103
+DC2の存在量の特性は、ヒトの癌全般わたって予後を予測する。
ヒト腫瘍に対して、CD103
+DC2の存在量が重要な役割を果たすかどうかを決定するために、出願人は、適合した予後データと共に、多数のヒト癌型に由来する相対的な遺伝子発現量を定量するTCGAアレイデータ(Cancer Genome Atlas Research et al.,2013、Hoadley et al.,2014)を利用した。出願人は、CD103
+DC2を特徴付ける高レベル転写物を選択するために、出願人のRNA配列解析データを使用すると共に、TAM1/TAM2/CD11b
+DC1細胞を特徴付けるが、CD103
+DC2では低下している遺伝子のサブセットも選択した(それぞれ
図8Bの上部及び下部の遺伝子)。出願人は、こうしたマウス遺伝子のヒトホモログを同定し、すべての癌型に由来する患者のTCGAデータにおけるこうした「特性」の発現をアッセイし、予後との関連性を評価した。比例ハザード生存率解析において、共変数として癌型をモデルに適合させることで、出願人は、こうした集団に由来する個々の遺伝子が予後に対してもたらす恩恵(ハザード比(HR)として示される)は僅かなものにすぎないことを観測した。しかしながら、出願人がCD103
+とCD103
−との遺伝子発現データの比を定義し、これをCox解析内の連続変数として使用すると、生存率の増加との高度に有意な関連性(BH p=0.00019)が存在することが観測された(
図8B)。
【0315】
この解析は、出願人が同定した細胞型と、その機能的に正反対なものとの比をとると、ヒトの癌全般にわたる予後を対象とする、非常に強力な予後値が生成することを示すものである。この「特性」と、他の以前に説明された「免疫スコア」と、の比較することで、全T細胞存在量に基づくもの(Palmer et al.,2006)、及びマクロファージに対するCD8T細胞のバルク比によって実施されるもの(CD8/CD68 DeNardo et al.,2011)を含む、他の現在のTCGAデータ解析と比較して、CD103
+/CD103
−遺伝子の比が最も強力な免疫促進性の生存シグナルを提供することが示された(
図8C)。正反対の予後ではあるものの、出願人のスコアは、予後不良と関連する免疫スコアも有利に比較するものである。こうした患者の腫瘍におけるCSF−1の発現もまた、CD103/BDCA3遺伝子比の尺度と反相関するが、同様に、全腫瘍Flt3Lレベルと反相関することにも注目するべきである(データ未掲載)。
【0316】
最後に、出願人は、個々の癌型内でTCGAデータの解析を試みた。癌型を適合させて、このデータセットにおける12のすべての癌を対象としたKaplan−Meier(K−M)は、高CD103
+/CD103
−遺伝子発現特性を有する腫瘍における全体的な恩恵を示すものである(
図8D及びデータ未掲載)。この関連性の程度は、乳癌、頭頸部扁平上皮癌、及び肺腺癌において特に顕著である(
図8E〜8G)。全体として、これによって示される強力な免疫特性は予想外のものであり、それがマウスの腫瘍モデルでの実験による免疫プロファイリングに完全に由来するものであったため、なおさら予想外であった。
【0317】
実施例10:実施例11の材料及び方法
メラノーマバイオインフォマティクス解析
【0318】
メラノーマのデータセットであるGSE19234(n=44)は、特性の評価、及び生存率(Cox比例ハザード)との関連性評価の前に、Rの環境において分位数正規化よる処理を予め実施した。Bogunovic,D.,et al.Immune profile and mitotic index of metastatic melanoma lesions enhance clinical staging in predicting patient survival.Proc Natl Acad Sci U S A 106,20429−20434(2009)。SDC/NSM特性比は、SDC遺伝子の平均発現量を、NSM遺伝子の平均発現量で割ったものの対数として計算し、その後、標準化(平均値=0、標準偏差=1、
図1Aの遺伝子一覧)してzスコアとする。生存率解析は、Cox比例ハザードモデリングを使用して実施した。Benjamini−Hochberg法を使用して多重比較を適合した後、対数順位のp値を使用して有意性を評価した。Rの生存率パッケージを使用して、
20Kaplan−Meier生存率プロットを作成し、出願人は、SDCまたはSDC/NSMの特性比の33%値、50%値(中央値)、または66%値を使用して、それぞれの試料を「高」または「低」として分類した。
【0319】
患者及び試料
【0320】
組織学的にステージIVまたはステージIIIの切除不能な転移性メラノーマを有していると確認された患者である場合、この試験に登録した。患者は、UCSF IRBが承認したプロトコール(UCSF CHR番号13−12246)の下、組織収集に同意した。試験の登録期間は、2012年12月から始まり、2015年2月までとした。患者は、下記のPD−1/PDL−1系(axis)をブロックするモノクローナル抗体で治療した:ペンブロリズマブ(キーノート(Keynote)001、キーノート002、キーノート006もしくは拡大アクセスプログラムもしくは商用供給)またはニボルマブ(商用供給)。皮膚/皮下腫瘍は、パンチ(4mmまたは6mm)、外科的切除(試料K10)のいずれかで生検し、他の腫瘍生検はすべて、コア生検(16gまたは18g)によって排他的に実施した。追加試料は、病理評価にまわした。生検(n=21)は、抗PD1の注入前に収集した。新鮮な生検試料は、生理食塩水に浸したガーゼ上の無菌容器に迅速に入れると共に、湿った氷の入った容器に入れ、評価に向けて実験室に運んだ。すべての効果判定は、固形癌の治療効果判定のためのガイドラインバージョン1.1(RECIST)を使用して、放射線学的イメージングで実施した。完全奏功は、すべての標的病巣及び非標的病巣の完全な退縮として定義し、部分奏功は、新しい病巣の出現を伴わない、30%を超える標的病巣の退縮として定義した。安定疾患は、標的病巣のサイズの30%以下の減少、または20%以下の増加として定義した。進行疾患は、標的病巣の20%以上の増加、または1cmのサイズを超える新たな病巣の出現として定義した。完全奏功または部分奏功である患者は、「レスポンダー」として分類し、安定疾患または進行疾患である患者は、「非レスポンダー」として分類した。フォローアップ検査が恩恵を与えることなく、進行が臨床的に定義される場合(例えば、新たな病巣)、患者はレスポンダーとして分類し、RECISTは「x」として示した。
【0321】
ヒト組織の消化
【0322】
組織を外科用のハサミでしっかりと細断してから、磁気撹拌棒を入れた25mLの三角フラスコへと移し、0.3gの組織当たり3mg/mlのコラゲナーゼA(Roche)、及び50U/mlのDNaseI(Roche)を使用し、5%のCO
2雰囲気下、37℃で、一定に撹拌しながら1時間処理した。その後、試料を70umのフィルターに通して濾過してから遠心沈降し、染色に向けて再懸濁した。Ruffell,B.,et al.Leukocyte composition of human breast canser.Proc Natl Acad Sci U S A 109,2796−2801(2012)。
【0323】
フローサイトメトリー及びAbクローン
【0324】
抗体はすべて、BD Pharmingen、eBioscience、Invitrogen、BioLegend、UCSF hybridoma coreから購入するか、またはKrummel Labにおいて産生させた。表面染色については、細胞をヒト抗Fc受容体抗体の混合物(クローン3G8、クローンFUN−2、及びクローン10.1、BioLegend)と共にインキュベートし、2%のFCS及び2mMのEDTAを添加したPBS中で抗体を使用して氷上で30分間染色した。生存率は、固定化可能なLive/Dead Zombie NIRまたはAqua(BioLegend)で染色することによって評価した。フローサイトメトリーはすべて、BD Fortessaフローサイトメーターで実施した。フローサイトメトリーのデータ解析は、FlowJo(Treestar)ソフトウェアを使用して実施した。細胞選別は、BD FACS Aria IIを使用して実施した。
【0325】
ヒト抗原に対するマウス抗体:CD45クローンHl30、CD3eクローンOKT3、HLA−DRクローンL243、CD56クローンCMSSB、CD19クローンH1B19、CD14クローン61D3、CD16クローンCB16、CD11cクローン3.9、BDCA1クローンL161、及びBDCA3クローンAD5−14H12。
【0326】
細胞株及び細胞培養
【0327】
B78ChOVAは、B78の変異株であり、PyMTchOVA細胞株の生成に使用したものと同一のCh−OVA融合構築物を使用して標準的な遺伝子導入手順によって生成させた。Graf,L.H.,Jr.,Kaplan,P.& Silagi,S.Efficient DNA−mediated transfer of selectable genes and unselected sequences into differentiated and undifferentiated mouse melanoma clones.Somatic cell and molecular genetics 10,139−151(1984)、及びEngelhardt,J.J.,et al.Marginating dendritic cells of the tumor microenvironment cross−present tumor antigens and stably engage tumor−specific T cells.Cancer Cell 21,402−417(2012)。簡潔に記載すると、接着細胞は、ペニシリン、ストレプトマイシン、及びグルタミンを含み、10%のFCSを添加したDMEM中、5%のCO
2雰囲気下、37℃で組織培養処理済プラスチックプレートにおいて培養し、2日に1回分割した。浮遊細胞は、組織培養用のT25フラスコ及びT75フラスコにおいて、10%のFCS及びペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを添加したRPMI−1640中で培養し、2日に1回分割した。
【0328】
マウス腫瘍
【0329】
マウスはすべて、SPF条件下で維持し、NIH及びAmerican Association of Laboratory Animal Careの基準に準拠し、IACUC UCSFのプロコールに従って処理した。
【0330】
腫瘍細胞株を収集し、PBSで3回洗浄した後、成長因子が低減されたMatrigel Matrix(BD Biosciences)と1:1の比で混合し、最終注射体積を50ulとした。150,000個の腫瘍細胞を、剪毛した右側腹部の皮下に注射し、そのまま14〜21日増殖させた。
【0331】
マウス種
【0332】
腫瘍における骨髄系細胞集団の調節については、野生型C57BL/6をSimonsenから購入し、Zbtb46−DTR C57BL/6マウスをSImonsenから入手した。Meredith,M.M.,et al.Expression of the zinc finger transcription factor zDC(Zbtb46,Btbd4)defines the classical dendritic cell lineage.J Exp Med 209,1153−1165(2012)。Zbtb46−DTR BMキメラは、致死線量照射(5.5Gy用量を2回)を実施した8週齢のC57BL/6雄性レシピエント、及び2〜5X10
6個のZbtb46−DTR BM細胞を使用し、標準的な手順に従って生成させた。マウスを抗菌水で4週間保持し、再構成の8週間後に実験に使用した。
【0333】
腫瘍増殖
【0334】
腫瘍の増殖曲線については、記載の期間にわたって、電子ノギスで腫瘍の幅x腫瘍の高さとして腫瘍面積(mm
2)を測定した。
【0335】
ジフテリア毒素、抗PD−1、及び抗CTLA−4での処理
【0336】
DTは、Sigma−Aldrichから購入した。DTRマウスにおける、DTによる一過性の除去については、DTRマウスに対して体重グラム当たり20ngのDTを腹腔内注射し、DT注射の24時間後に、分析に向けてマウスを安楽死させた。長期の除去については、マウスに対して最初に20ng/グラムのDTを腹腔内注射した後、その後は4ng/グラムで実施する3日に1回の投与を最大15日間維持した。
【0337】
精製された抗PD−1(クローンRMPI−14)及び抗CTLA−4(クローン9H10)は、BioXcellから購入し、3つ処理と組み合わせた治療として、腫瘍増殖の5日目、8日目、及び11日目に、各抗体100ugを腹腔内注射した。
【0338】
統計解析
【0339】
統計解析は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。別段の特定記載がない限り、データはすべて、4回以上の独立した実験の代表である。誤差バーは、Prismを使用して計算したS.E.M.を示し、3連の実験条件に由来するものである。特定の統計検定では、対応T検定及び独立T検定を使用し、0.05未満であるp値はすべて、統計学的に有意であると見なした。
【0340】
実施例11:腫瘍内BDCA3+DCは、ヒトメラノーマにおける、抗PD1チェックポイント療法に対する予後を予測する。
腫瘍内APCの表現型は極めて多様であり、骨髄系は、マクロファージ及び樹状細胞の両方に類似した集団を複数形成することに寄与している。しかしながら、「マクロファージ」は、腫瘍の進行に対して抑制性である(DeNardo et al.,及びHanada et al.)一方で、おそらく、腫瘍内樹状細胞は刺激性である(Sandel et al.)のではないかと、長期にわたって考えられてきた。このことを明確かつ詳細に理解するための努力がなされてきたが、こうした細胞型同士を明瞭に区別するすべが存在しないことで大いに阻まれてきた。最近、出願人は、腫瘍内骨髄系細胞を区別するために、RNA配列解析と共に高次元のフローサイトメトリーを試みた。出願人は、実際に、交差提示を行う樹状細胞の小集団は、CTLに対して高度に刺激性であるが、他の真の「樹状細胞」サブセット、ならびに非常に多く存在するマクロファージ集団は、腫瘍抗原反応性のCD8T細胞の刺激に失敗することを発見した。希少な刺激性樹状細胞(SDC)は、マウスでは、インテグリンCD103の発現によって定義され、ヒトでは、CD141/BDCA3の発現によって定義される(Broz et al.)。
【0341】
ヒトメラノーマにおける、こうした希少な免疫刺激性DC集団の役割を具体的に突き止めるために、出願人は、残るすべての非刺激性骨髄系(NSMであり、マクロファージ及び非刺激性DCを含む)抗原提示細胞サブセットと比較して、それらのRNAがマウスSDCにおいて非常に濃縮されている2つの「特性」遺伝子セット、または逆に、NSMにおいて優先的に発現する1つの遺伝子セットのいずれかを最初に利用した(
図9A)。そこで出願人は、44人の転移性メラノーマ患者に由来する、両方のRNA発現解析、腫瘍の分裂指数、疾患の臨床的なステージ分類、及び転移性メラノーマ患者の生存率を包含する、よく注解されたデータセットを検索した(Bogunovic et al)。出願人は、個々のSDC遺伝子、SDC遺伝子すべての平均、またはSDC/NSM遺伝子の比のいずれかを解析することで、RNA存在量の解析を試みた。これら後者の2つは、それぞれ全体的なSDC存在量、及び相対的なSDC/NSM細胞存在量の尺度であると考えることが可能である(Broz et al.)。
【0342】
9つのSDC特性遺伝子のうちの7つは、有意に予後の恩恵をもたらすものであり、ハザード比(HR)(以下の表1)として表現され、SDC特性及びSDC/NSM特性比の両方が、高度に有意な予測値を有する。
【0343】
こうした予後関連性をよりよく可視化するために、SDC遺伝子またはSDC/NSM比のいずれかを対象として、Kaplan−Meier(K−M)プロットを作成し、プロットでは、患者を「高」特性発現または「低」特性発現へとビン分割し、その際、発現のビン分割の閾値を33%、50%、または66%のいずれかとして厳密性カットポイントを増加させた(
図9B、
図9C)。こうした解析によって、最高レベルの発現量を選択すると、生存見込みが上昇し、SDCまたはSDC/NSMが上位33%である腫瘍では、転移時点からの生存率が統計学的に最も有意に増加することが示された。このことは、腫瘍において刺激性BDCA3
+DCの存在量が増加することでよりよく生存が支援されるという仮説を裏付けるものであり、これは、治療を実施しないときでさえあてはまる。
【0344】
この関連性とT細胞免疫との関連性を考慮し、出願人は、特性が明らかにされた腫瘍におけるTILの存在量に関する精選情報をさらに利用することで、SDC特性及びSDC/NSM特性と、TILの浸潤に関する解析分類データと、を関連付けた。この解析によって、TILカテゴリーの、クラスに基づく尺度、及び腫瘍周囲のCD3+T細胞数の尺度が共に、SDC遺伝子特性と高度に関連しており、程度は低いものの、依然として非常に有意な程度で、SDC/NSM比と関連することが明らかになった(
図9D〜9G)。
【0345】
こうした関連性は、SDCの存在量、T細胞機能、及び全生存率の間の相互関連性を示唆するものであった。我々は、この関連性を、それがチェックポイント封鎖に関連する可能性があるものとして検索を試みた。しかしながら、SDC特性及びSDC/NSM特性は、集団自体に代わるものにすぎないため、出願人は、チェックポイント療法の臨床試験と関連させて、メラノーマ生検に由来するこうした集団の直接的な測定を試みることで、それらがどのように関連するのかを調べた。
【0346】
この目標を試験するために、出願人は、転移性メラノーマを有する患者から得た21個の生検試料に由来する腫瘍生検を、フローサイトメトリーを使用して解析し、抗PD−1治療に応じたそれらの進行度を追跡した。21人の患者の内、5人は女性、16人は男性、平均年齢は61.6歳であり、生検は、さまざまな位置及び組織から採取されたものである(
図10A)。こうした患者のそれぞれについて、生検を酵素的に消化し、フローサイトメトリーで分析することで、腫瘍における免疫細胞浸潤割合を定量した。出願人は、包括的フローパネルを設計し、マーカーであるCD45、HLA−DR、CD3、CD19、CD56、CD11c、CD11b、CD85g、CD14、BDCA1、及びBDCA3を使用してヒト骨髄系浸潤物を精査した。こうしたマーカーを使用することで、出願人は、こうした腫瘍の免疫コンパートメントを連続的にゲートして、BDCA3
+DCサブセット、BDCA1
+DCサブセット、CD14
+TAMサブセット、及びCD14
−TAMサブセットを同定することが可能であった(
図10B、
図10C)。そして、出願人は、BDCA3+SDC集団を顕著に有している患者(
図10B)と、それが顕著に少ない患者(
図10C)と、が存在することを発見した。CD45
+細胞の全体的な浸潤量、及びHLA−DRを発現する細胞の割合は、腫瘍によっても顕著に異なっていた(
図10D)。ほとんどのメラノーマで、リンパ球(「系譜」)の全体的な存在量は高度に濃縮されていた(
図10E)。そして、HLA−DR+細胞を、
図10C/Dに示すように、骨髄系部分集団へと分類すると、患者の生検全般にわたって、非常に顕著な不均一性も示した(
図10E)。
【0347】
こうした免疫骨髄系浸潤物と、患者の応答と、の関連性を調べるために、出願人は、患者を、抗PD−1治療に対して、安定疾患もしくは進行疾患のいずれかとして定義される「非レスポンダー」、または部分奏功もしくは完全奏功として定義される「レスポンダー」のいずれかの群へと解析分類した(
図10A及び方法を参照のこと)。この手法によって、レスポンダーである患者と、非レスポンダーである患者と、の間で、全CD45+免疫細胞浸潤物の割合には有意な差は存在せず、実際は、両群共に、CD45+細胞の平均割合は類似しており、平均値まわりのばらつきは類似していた(
図11A、
図11B、及びデータ未掲載)。同様に、リンパ球細胞の全体的な頻度と、予後との間に明らかな関連性は存在しなかった(データ未掲載)。対照的に、全腫瘍細胞に占める割合(CD45
+細胞でゲーティング、
図11C〜11D)、または全APCに占め得る割合(HLA−DR
+細胞でゲーティング、データ未掲載)のいずれかとしてBDCA3
+DCを、奏功群を横断して定量すると、抗PD−1に対してレスポンダーである患者は、その腫瘍におけるBDCA3
+DCの頻度が統計学的に有意に高かった。まとめると、こうした発見は、腫瘍の全免疫細胞浸潤物は免疫療法に対する応答性を予測するものではなく、これはおそらく、全CD45
+集団がTMEにおいて、腫瘍促進を担うのものと、抗腫瘍を担うものとの両方を相反して含んでいるためであり、その一方で、刺激性BDCA3
+DCの割合は、実際に、抗PD−1の免疫療法効力を予測できるものであることを示唆している。レスポンダーが相対的に低い数のBDCA3を有するという明瞭な例は存在したが、この試料サイズを使用して、HLA−DR+の上位2%を絶対的に除外することで、レスポンダー状態の95%信頼区間が得られた。
【0348】
出願人は、残る骨髄系集団の正確な同定、具体的には、CD14+TAM、またはBDCA1もしくはCD14−TAMによって特徴づけられる代替DC集団のいずれかの存在量、を考慮することによって、この肯定的な関係性をさらに改善することが可能かどうかを確認するために、このデータのさらなる調査を試みた。出願人は、患者が有する、BDCA3+細胞の割合と、そうしたもののそれぞれの割合と、を対比させることによって個々の患者をプロットする共に、それぞれをレスポンダー状態に応じてコード化した。レスポンダーは、依然としてこのプロットでBDCA3+が高い領域へと解析分類された一方で、出願人は、他の集団には明らかな傾向は存在しないことを発見した(
図11E〜11G)。この場合も同様に、こうした発見は、BDCA3が存在するということは、強固な抗腫瘍性応答の誘起が可能であることの強力な指標であるが、少数の患者では、低めのレベルを有しているにも関わらず、他の因子が応答を可能にする役割を担い得ることを示している。未来の研究では、可能な説明として、BDCA3+細胞の腫瘍内局在化に焦点を当てるべきである。現在のところ、出願人が有している、こうしたものに対する抗体の能力は不十分であり、したがって、未来の試験に向けた開発が必要となるであろう。
【0349】
BDCA3
+DCの存在量と、免疫療法に対する応答性との間に強力な関連性が確立されたため、出願人は、この関連性が、チェックポイント封鎖療法に対する、この刺激性DC集団の機能的要件に相当するのかどうか、または単に、応答性の「特性」に相当するのかどうかを調べた。これを試験するために、出願人は、扱いが容易なマウスメラノーマモデルであるB78chOVA細胞株
7を対象とした。B78chOVA細胞株は、mCherry蛍光タンパク質及び卵白アルブミンを発現するB16メラノーマの改変変異体である。この腫瘍モデルと併せて、出願人は、Zbtb46−DTR BMキメラマウスを使用した。当該キメラマウスでは、(CD103
+)SDCが優先的に除去されることを出願人は以前に示した(Broz et al.)。出願人が有するマウスモデルでは、抗PD1のみで実施する単独治療は、メラノーマに対する効果を有さなかった。したがって、出願人は、CD103+SDCを欠失させると、抗PD−1と抗CTLA−4とを組み合わせた免疫療法レジメンの効力が妨害されるかどうかを、除去モデルを使用して調べた(
図12A)。5日目、8日目、及び11日目に3回の投与を実施する処理レジメンと、日目に開始するDTまたはPBSのいずれかの注射と、を使用して、抗PD−1及び抗CLTA−4、またはアイソタイプ適合対照抗体のいずれかでZbtb46−DTR BMキメラマウスを処理し、出願人は、DT処理単独ではこのモデルにおける腫瘍の増殖に対して影響を与えないことを確認した(データ未掲載)。出願人は、未処理のメラノーマ腫瘍が進行性に増殖する一方で、組み合わせ免疫療法で処理したメラノーマ腫瘍は、7〜8日後に急速に退縮し、15日目までにはほとんど完全に根絶されることを発見した(
図12B、12C)。対照的に、この強力な免疫療法と関連して、マウスのCD103
+DCを枯渇させると、急速な腫瘍退縮は失われ、二重治療の効力に抑止がかかった。このことは、CD103
+DCが、免疫療法の効果に対する機能的要件であることを示唆している(
図12D)。
【0350】
したがって、出願人は、マウス腫瘍組織及びヒト腫瘍組織の両方において、特異的SDC(CD103
+またはBDCA3
+)集団が有する強力な予測的及び予後的な恩恵を確立した。一般に、こうした発見は、以前の研究(DeNardo et al、及びFridman et al)において明らかにされているように、腫瘍組織の免疫概観を完全に理解することの重要性をさらに強調するものである。「免疫スコアリング(Immuno−scoring)」(Ascierto et al)は、いくつかの癌の新たな診断マーカーとして受け入れられつつあるが、この範囲を超えて、出願人の研究は、微小環境においてT細胞を調節し得る免疫細胞の希少集団を同定するために、ヒト腫瘍の詳細な免疫プロファイリングを実施する必要性が増していることを示すものである。層別化には、初期研究で明らかにされる特性を継続的に洗練した後、生検に適した試験の開発が必要となるであろうし、出願人の研究は、例えば、質量イオンビーム技術による高次元イメージングが、未来においてそのような方法の1つになり得ることを強調するものである(Angelo et al)。
【0351】
実施例12:後述の実施例の材料及び方法
腫瘍の消化
【0352】
腫瘍は、マウスから切除し、取り出した腫瘍組織の総重量を決定した。その後、メスを使用して腫瘍を細断し、腫瘍重量0.3グラム当たり、5mg/mlの原液に由来する20ul/mlのLiberase TL(Roche)、及び200mg/mlのDNAseI(Roche)を使用し、37℃の振とう機において、50mlのコニカルビーカー中、5%のCO
2雰囲気下で30分消化した。30分後、腫瘍を70umの細胞ストレーナーに通し、生存細胞をFicoll Paque Plus(GE)の密度勾配によって濃縮した。生存細胞を界面から回収し、洗浄して染色緩衝液に入れた(2%のFCS及び2mMのEDTAを添加したPBS)。
【0353】
マウスの骨髄及び脾臓の単離
【0354】
大腿骨及び脛骨を取り出し、PBS/2%FCS/2mMEDTA、及び25G針/シリンジを使用して、骨髄を押し出した。脾臓は、マウスから切除し、メスを使用して細断した。組織断片は、37℃の振とう機において、500U/mlのコラゲナーゼIV(Worthington)、100U/mlのコラゲナーゼI(Worthington)、及び200mg/mlのDNAseI(Roche)を使用し、50mlのコニカルビーカー中で消化した。その後、消化した組織を70umの細胞ストレーナーに通して濾過した。骨髄及び脾臓の両方において、0.8%のNHCl
4を使用して赤血球を5分間溶解した後、洗浄して染色緩衝液に入れた(2%のFCS及び2mMのEDTAを添加したPBS)。
【0355】
ヒト腫瘍試料
【0356】
組織を外科用のハサミでしっかりと細断してから、50mlのコニカルビーカーに移し、腫瘍重量0.3グラム当たり、5mg/mlの原液に由来する20ul/mlのLiberase TL(Roche)、及び200mg/mlのDNAseI(Roche)を使用し、37℃/5%CO
2の条件で、一定に撹拌しながら30分間処理した。その後、試料を70umのフィルターに通して濾過してから遠心沈降し、染色に向けて再懸濁した(Ruffell et al.,2012)。すべてのヒト試料について、すべての対象からインフォームドコンセントを得ており、研究は、IRBの認可(IRB番号13−12246、12/06/2013−12/05/2014)に従って実施した。
【0357】
フローサイトメトリー及びAbクローン
【0358】
抗体はすべて、BD Pharmingen、eBioscience、Invitrogen、BioLegend、Human Protein Atlasから購入するか、またはKrummel LabもしくはPrecision Immune Incにおいて産生させた。表面染色については、抗Fc受容体抗体(クローン2.4G2)ならびに500nmのヒトIgG1Fcと共に細胞をインキュベートし、2%のFCS及び2nMのEDTAを添加したPBSにおいて一次抗体を使用して氷上で30分間染色した。その後、2%のFCS及び2mMのEDTAを添加したPBSで2回洗浄し、適した二次抗体を使用して氷上で30分間染色した。生存率は、固定化可能なLive/Dead Zombie Aqua(BioLegend)またはZombie NIRまたはDAPIで染色することによって評価した。フローサイトメトリーはすべて、BD Fortessaフローサイトメーターで実施した。フローサイトメトリーのデータ解析は、FlowJo(Treestar)ソフトウェアを使用して実施した。
【0359】
抗マウスAbクローン:CD45クローン30−F11、CD11bクローンM1/70、CD11cクローンN418、CD103クローン2E7、CD24クローンM1/69、CD90.2クローン30−H12、Ly6CクローンHK1.4、MHCIIクローンM5/114.15.2、F4/80クローンBM8、CD64クローンX54−5/7.1。
【0360】
NSMマーカー:MS4A7(ポリクローナル、Human Protein Atlasより入手、製品番号:HPA017418)、MS4A6A(ポリクローナル、Human Protein Atlasより入手、製品番号HPA011391)。ラット抗マウスCD88(C5aR)クローン20/70、抗LILRB4クローン(Pi1.5クローン1)、抗Trem2(Pi1.2クローン2、クローン5、またはクローン7)、CD206クローンC068C2、MerTKクローンY323。
【0361】
SDC:抗CCR7クローン4B12(マウス)、抗CCR7クローン3D12(ヒト)、抗XCR1クローンZET(マウス)、CD135クローンA2F10(マウス)、CD117クローン2B8(マウス)。
【0362】
抗ヒトAbクローン:CD45クローンHl30、CD3eクローンOKT3、HLADRクローンL243、CD56クローンCMSSB、CD19クローンH1B19、CD14クローン61D3、CD16クローンCB16、CD11cクローン3.9、BDCA1クローンL161、及びBDCA3クローンAD5−14H12。TREM2(クローン237920)。
【0363】
二次抗体:抗ヒトFab−A488、抗ラット−A488、及び抗ヤギ−A488を使用し、これらはすべて、Jackson Immunoresearchから購入した。
【0364】
抗TREM2抗体を産生させるために、ヒト及びマウスのTREM2の細胞外ドメインに対応する精製タンパク質抗原をFc融合体として産生させると共に、R&D Systems(Minneapolis,MN)から購入した。こうした抗原は、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈し、吸着によって96ウェルイムノプレートに4Cで一晩固定化した。その後、イムノプレートをウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングし、ナイーブ合成Fabファージミドライブラリーと共に少なくとも2時間室温でインキュベートした。0.05%のTween−20を添加したPBSを大量に使用して洗浄することによって、未結合のファージを除去した。結合したファージは、0.1NのHClで溶出した。溶出したファージをpH8.0の1MのTris−Clで中和し、ヘルパーファージM13KO7による一過性の補完を実施して細菌宿主を介した継代によって増幅した。1/5体積のPEG−8000、2.5MのNaClを添加し、氷上で20分インキュベートした後、17,600xg超で20分間遠心して沈降させることによって、増幅したファージを細菌の上清と分離して濃縮した。沈降したファージを0.5%のBSA及び0.05%のTween−20を含むPBSに再懸濁し、マウス、ヒト、またはそれら両方の抗原への吸着によって実施する、その後の一連の選択に使用した。一連の選択を3〜5回実施した後、96ウェル形式で増殖した個々のクローンからファージを産生させ、培養上清をファージELISAに使用することで、特異的に結合するクローンを検出した。抗原には結合するが、ウシ血清アルブミンまたはヒトFc対照には結合しないクローンをDNA配列解析に供した。Pi1.2クローン2、クローン5、及びクローン7を選択し、試験した。こうしたクローンは、マウス及びヒトの細胞外TREM2には結合するが、マウス及びヒトの細胞外TREM1には結合しないことが明らかとなった(データ未掲載)。TREM1(骨髄系細胞に発現する誘発性受容体1(triggering receptor expressed on myeloid cells 1))の受入番号は、NM_018643.3であり、2015年9月25日時点でNCBIのウェブサイトを通して利用可能である。
【0365】
抗体ライブラリーは、University of Torontoから入手した。Persson et al.CDR−H3 Diversity is Not Required for Antigen Recognition by Synthetic Antibodies.J Mol Biol.2013 February 22;425(4):803−811を参照こと。当該文献は、参照によって、この発現目的及びすべての目的を対象として本明細書に組み込まれる。さまざまな合成抗体ライブラリーが、USPN7985840B2においても説明されており、参照によって本明細書に組み込まれる。さまざまな合成抗体ライブラリーは、さまざまな本の章(Fellouse and Sidhu,“Making antibodies in bacteria,”in:Making and Using Antibodies,Howard and Kaser,eds.Taylor and Francis,2007においても説明されており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0366】
LILRB4抗体は、上記のものまたはWO2013080055において説明されているものに類似した方法を使用して産生させた。当該文献は参照によって本明細書に組み込まれる。クローン1の配列は、表BBに示される。
【0367】
細胞株及び細胞培養
【0368】
MC38細胞は、標準的な細胞培養を実施することによって培養した。簡潔に記載すると、接着細胞は、ペニシリン、ストレプトマイシン、及びグルタミンを含み、10%のFCSを添加したDMEM中、5%のCO
2雰囲気下、37℃で、組織培養処理済プラスチックプレートにおいて培養し、2日に1回分割した。EL4浮遊細胞は、ペニシリン、ストレプトマイシン、及びグルタミンを含み、10%のFCSを添加したRPMI−1640中、5%のCO
2雰囲気下、37℃で、組織培養フラスコにおいて培養し、2日に1回分割した。
【0369】
マウス腫瘍
【0370】
マウスはすべて、SPF条件下で維持し、NIH及びAmerican Association of Laboratory Animal Careの基準に準拠し、IACUC UCSFのプロコールに従って処理した。
【0371】
腫瘍細胞株を収集し、PBSで3回洗浄した後、最終注射体積を50ulとして注射した。150,000個の腫瘍細胞を剪毛した右側腹部の皮下に注射し、そのまま6〜8週齢のC57BL/6雄性マウスにおいて14〜21日増殖させた。
【0372】
腫瘍の増殖
【0373】
腫瘍の増殖曲線については、記載の期間にわたって、電子ノギスで腫瘍の幅(width)x腫瘍の高さ(height)として腫瘍を測定し、腫瘍体積(mm
3)をV=(LxWxW)/2として計算した。
【0374】
抗体処理
【0375】
BioXcellから購入した精製抗PD−1(クローンRMPI−14)、ヒトIgG1Fc(BioXcellから購入)、または社内で産生させた抗体クローンを、腫瘍増殖から5日目、8日目、及び11日目、ならびに14日目に、4回にわたって200ugを腹腔内注射して処理した。例外として、抗TREM2(Pi1.2)(クローン2)は、それぞれの日に、40ug、20ug、20ug、及び40ugを注射した。
【0376】
形質導入体の生成
【0377】
細胞株は、GeneCopoeiaレンチウイルスベクター及びLentiPack HIV Packaging Systemを使用して、レンチウイルスの形質導入によって生成させた。製造者の説明書に従って、感染細胞株を選択可能な抗生物質(ピューロマイシン)中で培養すると共に、FACSによって標的タンパク質の発現を対象とした選別を実施した。
【0378】
細胞の色素標識化
【0379】
0.5uMのeFluor670(eBioscience)、または0.5uMのCMTMR(Thermo)を含むFCS非含有RPMI中、37℃で15分間細胞をインキュベートした。その後、その後、2mlのFCSを使用して色素標識処理を停止し、10%のFCSを含むRPMIで、使用前に3回洗浄した。
【0380】
腹腔内枯渇アッセイ
【0381】
親細胞株、及び標的を発現する形質導入細胞株のそれぞれを色素標識した2x10^6個の細胞を野生型(WT)B6雄性マウスへと腹腔内注射した。4時間後、動物に500ugの枯渇用抗体または対照抗体を注射した。24〜36時間後に、腹膜洗浄によって移行した細胞を回収し、フローサイトメトリーによって数えた。
【0382】
統計解析
【0383】
統計解析は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。別段の特定記載がない限り、データはすべて、4回以上の独立した実験の代表である。誤差バーは、Prismを使用して計算したS.E.M.を示し、3連の実験条件に由来するものである。特定の統計検定では、対応T検定及び独立T検定を使用し、0.05未満であるp値はすべて、統計学的に有意であると見なした。
【0384】
実施例13:複数のヒト腫瘍におけるNSM及びSDCの存在。
次に、NSM及びSDCが、複数の異なるヒト腫瘍型にわたって存在するかどうかを決定した。転移性メラノーマ、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、及び結腸癌に由来するヒト腫瘍組織の生検を、SDC集団及びNSM集団の存在を対象として、フローサイトメトリーによって分析した。代表的なフローサイトメトリーは、段階的なゲーティングによって、記載のヒト腫瘍型(転移性メラノーマ、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、及び結腸癌)のすべてにおいてNSM集団及びSDC集団の両方が同定されたことを示している。
図13を参照のこと。
【0385】
実施例14:マウス腫瘍におけるNSMタンパク質の発現及び結合。
次に、ある特定のNSMタンパク質が、NSMの細胞表面に発現しているかどうか、及びそうしたNSMタンパク質に抗NSM抗体が結合し得るかどうかを決定した。ある特定のNSMタンパク質が、SDCに発現しているかどうかも決定した。
【0386】
マウス腫瘍をNSMマーカーで染色することで、こうしたマーカーがNSMに特異的なものであり、SDCまたは他の細胞型もしくはサブセットではそうでないことが示された。
図14は、さまざまなNSMマーカーで、記載の細胞サブセットの標識化し、記載の細胞サブセット内で実施したゲーティングを示す。記載のマーカーの染色は、黒のヒストグラムで示され、染色対照のアイソタイプは、灰色網掛けのヒストグラムによって示される。上の列:抗TREM2(Pi1.2クローン2)で染色したB16メラノーマ、第2列:抗TREM2(Pi1.2クローン2)で染色したMC38、第3列:抗MS4A7(Human Protein Atlasから購入した市販のポリクローナル抗体、製品コード:HPA017418)で染色したMC38、第4列:抗LILRB4(Pi1.5クローン1)で染色したB16、第5列:抗C5AR1で染色したMC38。データは、炎症性DC、Ly6c+単球、及びTAMに対する強力な結合、及びCD11b+DCに対する顕著な結合を示す。CD103+DC、T細胞、B細胞、及び腫瘍細胞では、染色はほとんど観測されないか、または全く観測されなかった。
【0387】
所与のNSMタンパク質を標的とする抗NSM抗体が、所与のNSMタンパク質に結合するということは、例えば、ADCCを可能にする適切なFcドメインを選択することによって、抗体に基づく既知の枯渇メカニズムを介してNSMが枯渇または死滅するであろうことを示している。
【0388】
実施例15:ヒトのSDC及びNSM細胞におけるCCR7の発現。
消化した腫瘍組織におけるSDC集団及びNSM集団それぞれでのCCR7の特異的な発現をフローサイトメトリーによって分析した。データはすべてヒトの転移性メラノーマ細胞に由来する。
図15は、NSM及び他の免疫細胞と比較して、CCR7がヒトSDCに特異的に発現していることを示す。
【0389】
実施例16:腫瘍におけるSDCタンパク質の発現及び結合。
次に、ある特定のSDCタンパク質が、SDCの細胞表面に発現しているかどうか、及びそうしたSDCタンパク質に抗SDC抗体が結合し得るかどうかを決定した。ある特定のSDCタンパク質が、NSMに発現しているかどうかも決定した。
【0390】
消化した腫瘍組織におけるSDC集団及びNSM集団のそれぞれでのSDC遺伝子産物及びNSM遺伝子産物の特異的な発現をフローサイトメトリーによって分析した。データはすべて、異所性B78chOVA腫瘍モデルに由来する。腫瘍における細胞集団にわたって、SDCマーカー(CCR7及びXCR1、黒線)の発現を、それぞれのアイソタイプ(灰色網掛け)と比較した。
図16は、SDC遺伝産物がSDCに特異的に発現しており、NSMにはSDCタンパク質は発現していないことを示す。
【0391】
実施例17:腫瘍以外には、NSMに対する結合は生じない。
TREM2(クローン237920、RnD)、及びMS4A7(市販ポリクローナル、Human Protein Atlas)の発現を対象として、健康な野生型B6マウスの骨髄(BM)及び脾臓をフローサイトメトリーによって分析した。
【0392】
代表的なヒストグラムは、いくつかの健康な組織集団にわたる、TREM2及びMS4A7の染色レベルを示す。それぞれの集団の二次対照(それぞれ抗ラット−A488及び抗ウサギ−A488であり、Jackson Immunoresearchから入手した)は灰色網掛けにされており、それぞれの集団の標的タンパク質の染色は黒実線のヒストグラムとして重ねられている
【0393】
一連の範囲の染色濃度(2、20、200nM)にわたる抗体染色によるTREM2(Pi1.2クローン2、クローン5、及びクローン7)の発現を対象として、健康な野生型B6マウスの骨髄(BM)及び脾臓をフローサイトメトリーによって分析し、免疫集団にわたって対照(ヒトIgG1Fc、0nMとしての標識)と比較した。
【0394】
図17は、健康なBM及び脾臓の組織では、複数のNSMマーカーが実質的に染色されないことを示す。このことは、例えば、腫瘍治療の間に抗NSM抗体を使用しても、顕著な非特異的作用は起こりそうもないことを示す。
【0395】
実施例18:抗TREM2抗体または抗LILRB4抗体を使用した腫瘍におけるNSMの枯渇。
次に、抗NSM抗体が、NSMを有する細胞をインビボで特異的に枯渇させることができるかどうかを決定した。
【0396】
TREM2:対照及びTREM2(TREM2はPi1.2とも称され得る)を発現するEL4形質移入細胞を、それぞれCMTMR及びElfour670で色素標識し、1:1の比で混合した。4x10^6個の全細胞混合物を野生型(WT)B6雄性マウスの腹腔内へ注射した。4時間後に動物に対して、500ugの抗Pi1.2(抗TREM2)抗体または対照ヒトIgG1を注射した。36時間後にマウスを屠殺し、腹膜洗浄によって収集し、腹膜から回収した細胞をフローサイトメトリーによって数えた。
図18は、抗TREM2抗体が、TREM2を有する細胞をインビボで特異的に枯渇させる一方で、対照抗体は枯渇を生じさせないことを示す。
【0397】
LILRB4(ILT3):それぞれTdTomato及びGFPを発現する対照、及びLILRB4を発現するEL4形質移入細胞を、それぞれの細胞型を5x10^5個として1:1の比で混合し、野生型(WT)B6雄性マウスの腹腔へと注射した。2時間後、動物に対して100ugの抗LILRB4クローン1またはPBS対照を注射した。24時間後にマウスを屠殺し、腹膜洗浄によって収集し、腹膜から回収した細胞をフローサイトメトリーによって数えた。
図18は、抗LILRB4抗体が、LILRB4を有する細胞をインビボで特異的に枯渇させることを示す。
【0398】
所与のNSMタンパク質を標的とする抗NSM抗体が、NSMを枯渇させるということは、抗NSM抗体が、腫瘍を有する対象に投与された際に、腫瘍の増殖を減少させるであろうことを示す。
【0399】
実施例19:抗TREM2抗体投与後の腫瘍増殖の減少。
次に、抗NSM抗体がインビボで腫瘍の増殖を減少させることができるかどうかを決定した。
【0400】
6週齢の雄性B6マウスに対してMC38結腸癌をT0で注射した。処理群へと無作為化したマウスに対して、腫瘍移植後の5日目、7日目、11日目、15日目に、記載の抗体を腹腔内注射して処理した。投薬:抗PD−1及びFc対照は、200ug/日で実施し、抗TREM2(Pi1.2クローン2)抗体は、5日目、7日目、11日目、及び15日目に、40ug、20ug、20ug、及び40ugの注射を実施。ノギスで腫瘍を測定し、腫瘍体積を示す。TREM2群及びPD−1群ではそれぞれ、最大異常値は除外してデータ解析を実施した。
図19は、抗NSM抗体が対照と比較して、抗PD−1治療と同程度に、腫瘍の増殖を減少させることを示す。
【0401】
実施例20:抗NSM抗体を使用した腫瘍におけるNSMの枯渇。
それぞれTdTomato及びGFPを発現する対照、及びNSMタンパク質を発現するEL4形質移入細胞を、例えば、それぞれの細胞型を5x10^5個として、1:1の比で混合し、野生型(WT)B6雄性マウスの腹腔へと注射する。2時間後、動物に対して、抗NSM抗体(例えば、100ug)、Fc対照、またはPBS対照を注射する。24時間後にマウスを屠殺し、腹膜洗浄によって収集し、腹膜から回収した細胞をフローサイトメトリーによって数える。抗NSM抗体は、NSMタンパク質を有する細胞をインビボで特異的に枯渇させる。抗NSM抗体は、TREM2、MS4A7、C5AR1、LYVE1、ABCC3、LILRB4、MRC1/CD206、SIGLEC1、STAB1、TMEM37、MERTK、及び/またはTMEM119に結合する。NSMタンパク質は、TREM2、MS4A7、C5AR1、LYVE1、ABCC3、LILRB4、MRC1/CD206、SIGLEC1、STAB1、TMEM37、MERTK、及びTMEM119から選択される。
【0402】
実施例21:抗NSM抗体投与後の腫瘍増殖の減少。
6週齢の雄性B6マウスに対して癌細胞(例えば、MC38結腸癌)をT0で注射する。処理群へと無作為化したマウスに対して、腫瘍移植後の複数日(例えば、5日目、7日目、11日目、15日目)に、Fc対照または抗NSM抗体を腹腔内注射して処理する。投薬を決定する。例えば、Fc対照は、200ug/日で投与し、抗NSM抗体は、それぞれの日(例えば、5日目、7日目、11日目、及び15日目)に、40ug、20ug、20ug、及び40ug投与する。ノギスで腫瘍を測定し、腫瘍体積を決定する。抗NSM抗体は、対照と比較して、腫瘍増殖を減少させる。抗NSM抗体は、対照と比較して、実験マウスにおいて腫瘍に対する免疫応答を増進する。抗NSM抗体は、TREM2、MS4A7、C5AR1、LYVE1、ABCC3、LILRB4、MRC1/CD206、SIGLEC1、STAB1、TMEM37、MERTK、及び/またはTMEM119に結合する。
【0403】
実施例22:抗NSM抗体の同時投与を介した免疫療法の増進。
6週齢の雄性B6マウスに対して癌細胞(例えば、MC38結腸癌)をT0で注射する。処理群へと無作為化したマウスに対して、腫瘍移植後の複数日(例えば、5日目、7日目、11日目、15日目)に、Fc対照または抗NSM抗体を腹腔内注射して処理する。マウスは、免疫療法を以前に受けたことがあるか、現在受けているか、またはこれから受けることになる。免疫療法には、チェックポイント阻害物質を抑制する免疫療法、T細胞のチェックポイント阻害物質を抑制する免疫療法、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、養子T細胞療法、CAR−T細胞療法、樹状細胞ワクチン、単球ワクチン、T細胞及び抗原提示細胞の両方に結合する抗原結合タンパク質、BiTE抗原結合タンパク質、トール様受容体リガンド、ならびに/またはサイトカインが含まれ得る。当該技術分野において利用可能な情報及び通常技術を使用して投薬を決定し、例えば、Fc対照は、200ug/日で投与し、抗NSM抗体は、それぞれの日(例えば、5日目、7日目、11日目、及び15日目)に、40ug、20ug、20ug、及び40ug投与する。ノギスで腫瘍を測定し、腫瘍体積を決定する。免疫療法と併せて抗NSM抗体を同時投与することで、非同時投与対照(例えば、単独療法)と比較して、腫瘍増殖の減少が増進する。免疫療法と併せて抗NSM抗体を同時投与することで、非同時投与対照(例えば、単独療法)と比較して、腫瘍に対する免疫応答が増進する。抗NSM抗体は、TREM2、MS4A7、C5AR1、LYVE1、ABCC3、LILRB4、MRC1/CD206、SIGLEC1、STAB1、TMEM37、MERTK、及び/またはTMEM119に結合する。
【0404】
実施例23:免疫療法のレスポンダーと非レスポンダーとを対比させたSDCの閾値解析。
次に、どのようなSDC割合の閾値が、癌を有する対象における、免疫療法開始前のレスポンダーの状態と、非レスポンダーの状態とを統計学的に対比させて示すのかということを、ROC曲線によって決定した。
【0405】
ROC曲線では、CD45+の関数として%BDCA3のデータを使用するか、またはHLA−DR+の関数として%BDCA3+のデータを使用した。当該データは、抗PD−1による治療前にヒトメラノーマを有する患者から取得したものである。%BDCA3値を変化させて、レスポンダー/非レスポンダーの二元系を用いてプロットした。曲線は、最適な閾値設定で、偽の陽性率(FPR)に対して真の陽性率(TPR)をプロットすることによって作成される。真の陽性率は、シグナル検出の感度としても知られる。偽の陽性率は、脱落(fall−out)としても知られ、(1−特異度)として計算することができる。曲線下の面積が広いことは、閾値が、特異度に対して高感度を有しており、したがって、予測性の高い値であることを示す。
【0406】
予測変数としてのBDCA3のさらなる確証は、RのpROCソフトウェアパッケージによって実行されるDeLong法を使用して得た。DC/HLA+の割合については、曲線下面積(AUC)の95%信頼区間(CI)は、[0.76−1](AUC=0.905[0.76−1])と推定された。ブートストラップ法を使用して、層別化したブートストラップを2000回繰り返し、CI=[0.73−1](AUC=0.905[0.73−1])であった。pct/CD45+については、DeLongによる推定は、95%CI:[0.59−0.98](AUC=0.786[0.59−0.98])であり、ブートストラップでは、[0.57−0.95](AUC=0.786[0.57−0.95])であった。
図20Aは、CD45
+に対するBDCA3
+の割合と、予後とを対比させたROC解析を示し、
図20Bは、HLA−DR
+に対するBDCA3
+の割合と、予後とを対比させたROC解析を示す。
【0407】
これは、BDCA3+/HLADR+の閾値割合として1.347%を使用するということは、下記の内容であることを示している。すなわち、患者がレスポンダーであるとすれば、結果としてBDCA3+が高い確率は、89%であり(いわゆる感度)、患者が非レスポンダーであるとすれば、結果としてBDCA3+が低い確率は、86%である(いわゆる特異度)ということである。このことは、腫瘍におけるSDCの割合が、腫瘍におけるHLA−DR+細胞の中で約1.347%以上に増加することは、癌免疫療法が以前に実施されたか、進行中であるか、またはこれから実施するかを問わず、癌免疫療法に対する応答が増加する可能性を有しているということを示す。そのような増加は、例えば、SDC数の増加(例えば、FLT3Lの使用による)、及び/またはNSM数の減少(例えば、抗NSM抗体の使用による)によって達成することができる。
【0408】
実施例24:FLT3−Lによる治療での腫瘍におけるSDC集団の増進。
6週齢の雄性B6マウスに対して癌細胞(例えば、MC38結腸癌)をT0で注射する。処理群へと無作為化したマウスに対して、腫瘍移植後の複数日(例えば、5日目、7日目、11日目、15日目)に、FLT3−LまたはPBS対照を腹腔内、静脈内、及び/または皮下に注射して注射処理する。当該技術分野において利用可能な情報及び通常技術を使用して投薬を決定する(例えば、100ulのPBSに10ug)。腫瘍増殖を通して複数時点で、動物を屠殺し、SDC及びNSMの存在量をフローサイトメトリーによって分析する。FLT3−Lによる治療は、腫瘍発生を通して、腫瘍におけるSDC存在量を増進する。
【0409】
実施例25:SDC集団の増加に起因する、FLT3−Lによる治療後の腫瘍増殖の減少。
6週齢の雄性B6マウスに対して癌細胞(例えば、MC38結腸癌)をT0で注射する。処理群へと無作為化したマウスに対して、腫瘍移植後の複数日(例えば、5日目、7日目、11日目、15日目)に、FLT3−LまたはPBS対照を腹腔内、静脈内、及び/または皮下に注射して注射処理する。当該技術分野において利用可能な情報及び通常技術を使用して投薬を決定する(例えば、100ulのPBSに10ug)。ノギスで腫瘍を測定し、腫瘍体積を決定する。FLT3−Lによる治療は、対照と比較して腫瘍増殖を減少させる。FLT3−Lによる治療は、腫瘍におけるSDC存在量、ならびにdLN、脾臓、及び骨髄(BM)におけるSDC集団を増進する。FLT3−Lは、対照と比較して、実験マウスにおいて腫瘍に対する免疫応答を増進する。
【0410】
実施例26:FLT3−Lの同時投与を介した免疫療法の増進。
6週齢の雄性B6マウスに対して癌細胞(例えば、MC38結腸癌)をT0で注射する。処理群へと無作為化したマウスに対して、腫瘍移植後の複数日(例えば、5日目、7日目、11日目、15日目)に、FLT3−LまたはPBS対照を腹腔内、静脈内、及びまたは皮下に注射して注射処理する。マウスは、免疫療法を以前に受けたことがあるか、現在受けているか、またはこれから受けることになる。免疫療法には、チェックポイント阻害物質を抑制する免疫療法、T細胞のチェックポイント阻害物質を抑制する免疫療法、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、養子T細胞療法、CAR−T細胞療法、樹状細胞ワクチン、単球ワクチン、T細胞及び抗原提示細胞の両方に結合する抗原結合タンパク質、BiTE抗原結合タンパク質、トール様受容体リガンド、ならびに/またはサイトカインが含まれ得る。当該技術分野において利用可能な情報及び通常技術を使用して投薬を決定する(例えば、100ulのPBSに10ug)。ノギスで腫瘍を測定し、腫瘍体積を決定する。免疫療法と併せてFLT3−Lを同時投与することで、非同時投与対照(例えば、単独療法)と比較して、腫瘍増殖の減少が増進する。免疫療法と併せてFLT3−Lを同時投与することで、非同時投与対照(例えば、単独療法)と比較して、腫瘍に対する免疫応答が増進する。Curran et al.、Lynch et al.、Chen et al.、Peron et al.、及びShurin et al.も併せて参照のこと。
【0411】
実施例27:アゴニストである抗FLT3抗体を介したSDCを標的とした刺激。
6週齢の雄性B6マウスに対して癌細胞(例えば、MC38結腸癌)をT0で注射する。処理群へと無作為化したマウスに対して、腫瘍移植後の複数日(例えば、5日目、7日目、11日目、15日目)に、抗FLT3抗体またはFc対照抗体を腹腔内注射して注射処理する。当該技術分野において利用可能な情報及び通常技術を使用して投薬を決定する(例えば、Fc対照では200ug/日、抗FLT3抗体では40ug、20ug、20ug、及び40ug)。腫瘍増殖を通して複数時点で、動物を屠殺し、SDC及びNSMの存在量をフローサイトメトリーによって分析する。腫瘍発生を通した、抗FLT3アゴニスト抗体による治療は、腫瘍におけるSDC存在量、ならびにdLN、脾臓、及びBMにおけるSDC集団を増進する。
【0412】
実施例28:SDC集団の増加に起因する、アゴニストである抗FLT3抗体による治療後の腫瘍増殖の減少。
6週齢の雄性B6マウスに対して癌細胞(例えば、MC38結腸癌)をT0で注射する。処理群へと無作為化したマウスに対して、腫瘍移植後の複数日(例えば、5日目、7日目、11日目、15日目)に、アゴニストである抗FLT3抗体またはFc対照を腹腔内注射して注射処理する。当該技術分野において利用可能な情報及び通常技術を使用して投薬を決定する(例えば、Fc対照では200ug/日、抗FLT3抗体では40ug、20ug、20ug、及び40ug)。ノギスで腫瘍を測定し、腫瘍体積を決定する。抗FLT3抗体による治療は、対照と比較して、腫瘍増殖を減少させる。抗FLT3抗体による治療は、腫瘍におけるSDC存在量、ならびにdLN、脾臓、及びBMにおけるSDC集団を増進する。抗FLT3Lアゴニスト抗体は、対照と比較して、実験マウスにおいて腫瘍に対する免疫応答を増進する。
【0413】
実施例29:アゴニストである抗FLT3抗体の同時投与を介した免疫療法の増進。
6週齢の雄性B6マウスに対して癌細胞(例えば、MC38結腸癌)をT0で注射する。処理群へと無作為化したマウスに対して、腫瘍移植後の複数日(例えば、5日目、7日目、11日目、15日目)に、抗FLT3抗体またはPBS対照を腹腔内、静脈内、及びまたは皮下に注射して注射処理する。マウスは、免疫療法を以前に受けたことがあるか、現在受けているか、またはこれから受けることになる。免疫療法には、チェックポイント阻害物質を抑制する免疫療法、T細胞のチェックポイント阻害物質を抑制する免疫療法、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、養子T細胞療法、CAR−T細胞療法、樹状細胞ワクチン、単球ワクチン、T細胞及び抗原提示細胞の両方に結合する抗原結合タンパク質、BiTE抗原結合タンパク質、トール様受容体リガンド、ならびに/またはサイトカインが含まれ得る。当該技術分野において利用可能な情報及び通常技術を使用して投薬を決定する(例えば、100ulのPBSに10ug)。ノギスで腫瘍を測定し、腫瘍体積を決定する。免疫療法と併せて抗FLT3抗体を同時投与することで、非同時投与対照(例えば、単独療法)と比較して、腫瘍増殖の減少が増進する。免疫療法と併せて抗FLT3抗体を同時投与することで、非同時投与対照(例えば、単独療法)と比較して、腫瘍に対する免疫応答が増進する。
【0414】
実施例30:ヒト細胞でのNSMタンパク質の発現。
図21は、原発性ヒトHNSC腫瘍組織において、TREM2タンパク質の発現がNSM集団(CD14+TAM)に限定されており、SDC(BDCA3+DC)を含むCD14陰性CD11c陽性細胞ではほとんど発現していないか、または全く発現していないことを示す。TREM2に特異的な市販抗体(RnD、クローン237920)による染色を、消化したヒトHNSC腫瘍組織に対して実施し、二次対照染色(抗ラットIgG、Jackson Immunoresearch)と比較して、フローサイトメトリーによって分析した。この図は、ヒト腫瘍組織において、NSM細胞でNSM遺伝子産物が特異的に発現しており、SDC細胞では発現していないことを示す。集団は、生存、CD45+、系譜陰性、HLA−DR+、CD11c+でゲートし、CD14の発現によって分割した。
【0415】
本発明について、具体的に示すと共に、好ましい実施形態及びさまざまな代替の実施形態を参照しながら記載したが、関連技術分野の当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細におけるさまざまな変更が、それらの中で実施可能であることを理解するであろう。
【0416】
本明細書の本文内で引用した参考文献、公開特許、及び特許出願はすべて、それらの全体が、参照によって、すべての目的を対象として本明細書に組み込まれる。
配列
(表AA)
・本明細書に開示のNCBI受入番号及び関連配列はすべて、2015年9月25日時点で公的に利用可能なNCBIのウェブサイトを通して利用可能である。
(表BB)それぞれの抗LILRB4クローン1のCDR、可変、及び全長の配列
【0417】
参考文献