(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪本開示の一態様に到った経緯≫
有機EL表示パネルの光取り出し効率を向上させる手法として、例えば、特許文献2に開示されているように、リフレクタ(反射構造)を有する構造をとる手法がある。特許文献2では、各画素を構成するサブ画素のそれぞれにリフレクタを備える構造であるが、よりリフレクタの効果を向上させるため、サブ画素内に複数のリフレクタを備える構造が検討されている。この場合、画素電極と機能層との間に画素内絶縁層を設け、サブ画素内にリフレクタを備えるマイクロ画素を複数形成する方法で、リフレクタ構造が形成できる。
【0011】
一方、例えば、特許文献1に開示されているように、特に大型パネルに対し、発光層やキャリア注入層、キャリア輸送層などの機能層を湿式プロセスで形成することが試みられている。しかしながら、湿式プロセスで機能層を形成する場合、サブ画素全体にわたってインクが均一に濡れ拡がる必要がある。しかしながら、画素内絶縁層の上面のように複数の窪みが存在する面の上方に湿式プロセスにより機能層を設ける場合、画素内絶縁層の上面が機能層材料であるインクの濡れ拡がりを抑止し、特に、画素内絶縁層の窪みが小さいほどインクが濡れ拡がらない。したがって、リフレクタの光取り出し効率が高くするには、マイクロ画素となる窪みが小さく、数が多く、平面に平行な方向に対して等方的な構成が好ましい。具体的には、画素内絶縁層を平面視したときに、
図23(a)に示すように、画素内絶縁層722に複数の円錐台形の窪み722zが行列方向に配された構成が好ましい。しかしながら、
図23(a)に示すような構成では、インクが十分に濡れ拡がらないことがあり、機能層の膜厚にむらが生じることがあり、また、機能層の全部または一部に欠けが生じて滅点となるマイクロ画素が生じることがある。したがって、リフレクタの光取り出し効率の低下を低減しながらインクの濡れ拡がりを改善する構成として、長尺状の窪みを複数並列する構成が検討されている。具体的には、画素内絶縁層を平面視したときに、
図23(b)に示すように、画素内絶縁層822に、列方向に延伸する窪み822z1〜822z4が行方向に配された構成である。このような構成により、列方向にインクが流動するため、インクの濡れ拡がりを高くすることができる。特に、サブ画素を区画する撥液性を有する隔壁が列方向に延伸する、いわゆるラインバンク方式では、列方向に間隔を開けて滴下されたインクが列方向に流動することを前提としているため、隔壁の延伸方向と開口の延伸方向とを一致させることで、濡れ拡がりの程度をより向上させることができる。また、
図23(b)に示す構成では、列方向において両端となる窪み822z1と822z4は、画素内絶縁層822の上面において、隔壁に接する構成である。このような構成にすることで、サブ画素内におけるマイクロ画素の底面積を拡大し開口率を向上させることができる。
【0012】
しかしながら、発明者らは、さらなる有機EL素子の効率向上を図る上で、以下の課題を発見した。画素内絶縁層に長尺状の窪みを3以上設ける場合、以下のような課題が発生する。
図23(c)は、
図23(b)のC−C断面における一つの形態であり、画素電極を基準とした画素内絶縁層822に設けられた桟822w1〜w3の上面の高さが、隔壁におけるピンニング位置(絶縁層822Yと列バンク922Yの境界)の高さより低い場合を示している。このとき、窪み822z2、822z3に塗布されたインクは、乾燥の際、桟の上面822w2と、桟の上面822w1またはw3とにピンニングされる。一方で、窪み822z1、822z4に塗布されたインクは、乾燥の際、サブ画素の中心側は桟822w1、822w3の上面にピンニングされるが、隔壁側は絶縁層822Yと列バンク922Yの境界にピンニングされる。したがって、各窪みの行方向の幅が均一である場合、画素内絶縁層の上面822w1〜w3までの窪みの体積は均一であるにもかかわらず、隔壁に隣接する窪み822z1、822z4に留まるインクの量D
11、D
14は、他の窪み822z2、822z3に留まるインクの量D
12、D
13より多くなる。これにより、隔壁に最近接する窪み822z1、822z4における機能層の膜厚が、それ以外の窪み822z2、822z3における機能層の膜厚よりも大きくなる。その結果、隔壁に隣接するマイクロ画素では電気抵抗値の上昇により電流量が低下し輝度が低下する一方で、それ以外のマイクロ画素に電流が集中し有機EL素子が短寿命化することとなる。一方、
図23(d)は、
図23(b)のC−C断面における他の一つの形態であり、画素電極を基準とした画素内絶縁層822に設けられた桟822w1〜w3の上面の高さと、絶縁層822Yと列バンク922Yの境界の高さとが同じ場合を示している。このとき、桟822w1〜822w3の上面の高さと、絶縁層822Yと列バンク922Yの境界の高さとが同一となるため、隔壁に隣接する窪み822z1、822z4に留まるインクの量D
21、D
24と他の窪み822z2、822z3に留まるインクの量D
22、D
23とのバラつきが生じず、マイクロ画素ごとの機能層の膜厚のバラつきを抑止することができる。しかしながら、開口の側面の傾斜角は有機EL素子の構成材料の物性値によって最適範囲が定まり、傾斜角が適正範囲から外れるほど光取り出し効率が低下する。したがって、光取り出し効率を最大化しようとすると、桟822w1〜w3の上面の高さが高くなるほど、桟822w1〜w3の底面積が増加するため、画素電極919のうち画素内絶縁層822に被覆されない部分の面積が小さくなり開口率が低下する。したがって、
図23(d)に示す構成では、
図23(c)に示す構成と比べて開口率が低下するため、機能層の膜厚のバラつきを抑止できる一方で、発光面積の矮小化によりサブ画素の輝度が低下する課題がある。
【0013】
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、上記課題に鑑み、開口率の向上と、マイクロ画素間の機能層の膜厚のバラつきの抑制との両立を図った構成である。
≪本開示の態様≫
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、複数の画素が行列状に配された有機EL表示パネルであって、基板と、前記基板上方に前記画素ごとに設けられた複数の画素電極と、前記複数の画素電極のそれぞれの上方を被覆するように配され、列方向に延伸するスリット状の開口が列方向に3以上開設された絶縁層と、列方向に延伸し、前記画素電極を行方向に区画する複数の隔壁と、前記複数の画素電極の上方に配され、前記開口のそれぞれの内部において電界発光を生ずる有機発光層を含む有機機能層と、前記複数の有機機能層の上方に配された透光性の対向電極とを備え、前記画素電極を基準とした前記隔壁の上面の高さは、前記画素電極を基準とした前記絶縁層の上面の高さよりも高く、前記絶縁層の底面において、前記隔壁に行方向に隣接する開口の行方向の幅は、前記隔壁に行方向に隣接しない開口の行方向の幅より大きいことを特徴とする。
【0014】
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルによれば、リフレクタの底面であるスリット状の開口において、底面積あたりの機能層材料となるインクの量が均一化される。したがって、1つの画素電極上に存在する複数の開口の間で、機能層の膜厚を均一化することができ、発光効率やパネル寿命を向上させることができる。また、絶縁層の上面の高さが隔壁の上面の高さより低いため、絶縁層の膜厚に起因して開口率が低下することを抑止することができる。
【0015】
また、本実施の他の一態様に係る有機EL表示パネルは、複数の画素が行列状に配された有機EL表示パネルであって、基板と、前記基板上方に前記画素ごとに設けられた複数の画素電極と、前記複数の画素電極のそれぞれの上方を被覆するように配され、列方向に延伸するスリット状の開口が列方向に複数開設された絶縁層と、列方向に延伸し、前記画素電極を行方向に区画する複数の隔壁と、前記複数の画素電極の上方に配され、前記開口のそれぞれの内部において電界発光を生ずる有機発光層を含む有機機能層と、前記複数の有機機能層の上方に配された透光性の対向電極とを備え、前記開口の数は4以上の偶数であり、前記絶縁層の底面における前記開口それぞれの行方向の幅は略同一であり、前記絶縁層において隣接する前記開口を区画する部分である区画領域を前記隔壁の1つを基準として行方向に数えたとき、奇数番目の区画領域の前記画素電極を基準とした前記絶縁層の高さは、前記隔壁の前記画素電極を基準とした高さより低く、かつ、偶数番目の区画領域の前記画素電極を基準とした前記絶縁層の高さよりも低いことを特徴とする。
【0016】
本開示の他の一態様に係る有機EL表示パネルにおいても、リフレクタの底面であるスリット状の開口において、底面積あたりの機能層材料となるインクの量が均一化される。したがって、1つの画素電極上に存在する複数の開口の間で、機能層の膜厚を均一化することができ、発光効率やパネル寿命を向上させることができる。また、絶縁層の一部の上面の高さが隔壁の上面の高さより低いため、絶縁層の膜厚に起因して開口率が低下することを抑止することができる。
【0017】
また、別の態様では、前記偶数番目の区画領域の前記画素電極を基準とした高さは、前記隔壁の前記画素電極を基準とした高さと略同一である、とすることができる。
この別の態様により、リフレクタの底面であるスリット状の開口において、開口あたりの機能層材料となるインクの量が均一化される。したがって、機能層の膜厚のバラつきをさらに小さく抑制することができる。
【0018】
本開示の他の一態様に係る有機EL表示パネルは、複数の画素が行列状に配された有機EL表示パネルであって、基板と、前記基板上方に前記画素ごとに設けられた複数の画素電極と、前記複数の画素電極のそれぞれの上方を被覆するように配され、列方向に延伸するスリット状の開口が列方向に複数開設された絶縁層と、列方向に延伸し、前記画素電極を行方向に区画する複数の隔壁と、前記複数の画素電極の上方に配され、前記開口のそれぞれの内部において電界発光を生ずる有機発光層を含む有機機能層と、前記複数の有機機能層の上方に配された透光性の対向電極とを備え、前記開口の数は、2つの数p、qの積(pは3以上の整数、qは2以上の整数)と一致し、前記絶縁層において隣接する前記開口を区画する部分である区画領域を前記隔壁の1つを基準として行方向に数えたとき、(m×p)番目(mは1以上q未満の整数)でない区画領域の前記画素電極を基準とした高さは、前記隔壁の前記画素電極を基準とした高さより低く、かつ、(m×p)番目の区画領域の前記画素電極を基準とした高さより低く、前記絶縁層の底面において、前記隔壁と(m×p)番目の区画領域とのいずれか一方に行方向に隣接する開口の行方向の幅は、前記隔壁と(m×p)番目の区画領域とのいずれにも行方向に隣接しない開口の行方向の幅より大きいことを特徴とする。
【0019】
本開示の他の一態様に係る有機EL表示パネルにおいても、リフレクタの底面であるスリット状の開口において、底面積あたりの機能層材料となるインクの量が均一化される。したがって、1つの画素電極上に存在する複数の開口の間で、機能層の膜厚を均一化することができ、発光効率やパネル寿命を向上させることができる。また、絶縁層の一部の上面の高さが隔壁の上面の高さより低いため、絶縁層の膜厚に起因して開口率が低下することを抑止することができる。
【0020】
また、別の態様では、前記(m×p)番目の区画領域は、前記隔壁と略同一の構成を有する、とすることができる。
この別の態様により、隔壁に隣接する開口と、(m×p)番目の区画領域に隣接する開口との間で、開口あたりの機能層材料となるインクの量が均一化することができる。したがって、機能層の膜厚のバラつきをさらに小さく抑制することができる。
【0021】
また、別の態様では、前記複数の開口のそれぞれについて、前記絶縁層を行方向に切断した断面における開口の断面の面積をD、前記絶縁層底面における開口の行方向の幅をW、としたとき、P=D/Wで定義されるPの値が、いずれの開口においても所定の範囲内にある、とすることができる。
この別の態様により、機能層の膜厚のバラつきをさらに小さく抑制することができる。
【0022】
また、別の態様では、前記有機発光層は、第1の発光色で発光する第1の有機発光層と、第2の発光色で発光する第2の有機発光層とを含み、前記第1の有機発光層が上方に配された画素電極と、前記第2の有機発光層が上方に配された画素電極とは、前記隔壁で区画されている、とすることができる。
この別の態様により、隔壁により第1の有機発光層と第2の有機発光層との混色を抑止することができるとともに、有機発光層の形成時において、開口の延伸する向きと同じ有機発光層に係るインクの液滴が並ぶ向きが同じとなるため、インクの未濡れによる有機機能層の形成不良を抑止することができる。
【0023】
また、別の態様では、1つの画素内における複数の開口の数と、前記1つの画素に列方向に隣接する画素内における複数の開口の数は同一であり、前記1つの画素内における開口のうち少なくとも1つは、前記1つの画素に列方向に隣接する画素内における開口のいずれか1つと互いに挿通している、とすることができる。
この別の態様により、画素間で有機機能層の材料となるインクが流動することができるため、有機機能層の膜厚が列方向にばらつくことを抑止することができる。
【0024】
また、別の態様では、1つの画素内に存在する複数の開口は、前記1つの画素と、前記1つの画素に列方向に隣接する画素との間において、互いに挿通している、とすることができる。
この別の態様により、同一の画素における複数の開口間で、有機機能層の材料となるインクが流動することができるため、有機機能層の膜厚が行方向にばらつくことをさらに抑止することができる。
【0025】
本開示の他の一態様に係る有機EL表示パネルは、複数の画素が行列状に配された有機EL表示パネルであって、基板と、前記基板上に前記画素ごとに設けられた複数の画素電極と、前記複数の画素電極のそれぞれの上方を被覆するように配され、円錐台状または角錐台状の開口が行列状に複数開設された絶縁層と、前記複数の画素電極の上方に配され、前記開口のそれぞれの内部において電界発光を生ずる有機発光層を含む有機機能層と、前記複数の有機機能層の上方に配された透光性の対向電極とを備え、前記絶縁層は、前記開口の周囲において、前記対向電極方向に延びるとともに画素周縁方向に広がる傾斜面を有し、前記絶縁層を平面視したとき、画素の最外周に配された開口の断面積は、その他の開口の断面積より大きいことを特徴とする。
【0026】
本開示の他の一態様に係る有機EL表示パネルにおいても、リフレクタの底面である複数の開口において、底面積あたりの機能層材料となるインクの量が均一化される。したがって、1つの画素電極上に存在する複数の開口の間で、機能層の膜厚を均一化することができ、発光効率やパネル寿命を向上させることができる。
本開示の一態様に係る有機EL表示装置は、本開示の一態様、または、別の態様の有機EL表示パネルを備えた有機EL表示装置である。
【0027】
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法は、複数の画素が行列状に配された有機EL表示パネルの製造方法であって、基板を準備する工程と、前記基板の上方に、複数の画素電極を行列状に形成する工程と、列方向に沿って行方向に並んだスリット状の開口が3以上開設された絶縁層を、前記画素電極のそれぞれの上方を被覆するように形成する工程と、列方向に延伸し、前記画素電極を行方向に区画する複数の隔壁を形成する工程と、前記基板と塗布装置の少なくとも一方を行方向に走査しながら材料を含むインクを塗布して前記複数の開口内に有機発光層を含む有機機能層を形成する工程と、前記複数の有機機能層の上方に透光性の対向電極を形成する工程とを含み、前記画素電極を基準とした前記隔壁の上面の高さを、前記画素電極を基準とした前記絶縁層の上面の高さよりも高く形成し、前記絶縁層を形成する工程において、前記絶縁層の底面において、前記隔壁に行方向に隣接する開口の行方向の幅を、前記隔壁に行方向に隣接しない開口の行方向の幅より大きくすることを特徴とする。
【0028】
本開示の他の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法は、複複数の画素が行列状に配された有機EL表示パネルの製造方法であって、基板を準備する工程と、前記基板の上方に、複数の画素電極を行列状に形成する工程と、列方向に沿って行方向に並んだスリット状の開口が複数開設された絶縁層を、前記画素電極のそれぞれの上方を被覆するように形成する工程と、列方向に延伸し、前記画素電極を行方向に区画する複数の隔壁を形成する工程とを含み、前記絶縁層を形成する工程において、前記絶縁層の底面における前記開口それぞれの行方向の幅が略同一となるように、4以上の偶数個の開口を設け、かつ、前記絶縁層において隣接する2つの開口を区画する部分の高さを、隔壁から数えて奇数番目では低く、偶数番目では高くすることを特徴とする。
【0029】
係る構成により、本開示の一態様、または、他の一態様に係る有機EL表示パネルを製造できる。
≪実施の形態≫
1 回路構成
1.1 表示装置1の回路構成
以下では、実施の形態に係る有機EL表示装置1(以後、「表示装置1」とする)の回路構成について、
図1を用い説明する。
【0030】
図1に示すように、表示装置1は、有機EL表示パネル10(以後、「表示パネル10」とする)と、これに接続された駆動制御回路部20とを有する構成である。
表示パネル10は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)パネルであって、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御回路部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とにより構成されている。
【0031】
なお、表示装置1において、表示パネル10に対する駆動制御回路部20の各回路の配置形態については、
図1に示した形態に限定されない。
1.2 表示パネル10の回路構成
表示パネル10における、複数の有機EL素子は、R(赤)、G(緑)、B(青)に発光する3色のサブ画素(不図示)から構成される。各サブ画素100seの回路構成について、
図2を用い説明する。
【0032】
図2は、表示装置1に用いる表示パネル10の各サブ画素100seに対応する有機EL素子100における回路構成を示す模式回路図である。表示パネル10においては、画素100eを構成する有機EL素子100がマトリクス上に配されて表示領域を構成している。
図2に示すように、本実施の形態に係る表示パネル10では、各サブ画素100seが2つのトランジスタTr
1、Tr
2と一つの容量C、および発光部としての有機EL素子部ELとを有し構成されている。トランジスタTr
1は、駆動トランジスタであり、トランジスタTr
2は、スイッチングトランジスタである。
【0033】
スイッチングトランジスタTr
2のゲートG
2は、走査ラインVscnに接続され、ソースS
2は、データラインVdatに接続されている。スイッチングトランジスタTr
2のドレインD
2は、駆動トランジスタTr
1のゲートG
1に接続されている。
駆動トランジスタTr
1のドレインD
1は、電源ラインVaに接続されており、ソースS
1は、EL素子部ELの画素電極層(アノード)に接続されている。EL素子部ELにおける対向電極層(カソード)は、接地ラインVcatに接続されている。
【0034】
なお、容量Cは、スイッチングトランジスタTr
2のドレインD
2および駆動トランジスタTr
1のゲートG
1と、電源ラインVaとを結ぶように設けられている。
表示パネル10においては、隣接する複数のサブ画素100se(例えば、赤色(R)と緑色(G)と青色(B)の発光色の3つのサブ画素100se)を組合せて1の単位画素100eを構成し、各サブ画素100seが分布するように配されて画素領域を構成している。そして、各サブ画素100seのゲートG
2からゲートラインGLが各々引き出され、表示パネル10の外部から接続される走査ラインVscnに接続されている。同様に、各サブ画素100seのソースS
2からソースラインSLが各々引き出され表示パネル10の外部から接続されるデータラインVdatに接続されている。
【0035】
また、各サブ画素saの電源ラインVa及び各サブ画素100seの接地ラインVcatは集約され電源ラインVa及び接地ラインVcatに接続されている。
3.有機EL表示パネル10の全体構成
本実施の形態に係る表示パネル10について、図面を用いて説明する。なお、図面は模式図であって、その縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0036】
図3は、実施の形態に係る表示パネルの一部を示す模式平面図である。
図4(a)は、表示パネル10の1画素100を示す、
図3におけるX部の拡大平面図である。また、
図4(b)は、画素100の各サブ画素100aを示す拡大平面図である。
表示パネル10は、有機化合物の電界発光現象を利用した有機EL表示パネルであり、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が形成された基板100x(TFT基板)に、各々が画素を構成する複数の有機EL素子100が行列状に配され、上面より光を発するトップエミッション型の構成を有する。
図3に示すように、表示パネル10は、各画素を構成する有機EL素子100が行列状に配されている。ここで、本明細書では、
図3におけるX方向、Y方向、Z方向を、それぞれ表示パネル10における、行方向、列方向、厚み方向とする。
【0037】
図3に示すように、表示パネル10には、複数の画素電極層119が基板100x上に行列上に配され、それらを覆うように絶縁層122が積層されている。
絶縁層122の上限膜厚は、10μm以下の場合は、膜厚ばらつき、ボトム線幅の制御の観点から製造上形状コントロールが可能となり、7μm以下の場合には、量産工程での露光量時間増大によるタクト増加を抑え、量産工程での生産性低下を抑制することができる。また、下限膜厚は、膜厚が薄くなるとともにボトム線幅を膜厚とほぼ同程度に細くする必要があり、露光機及び材料の解像限界により決定される。絶縁層122の下限膜厚は、1μm以上の場合には半導体用のステッパーにより製造可能であり、2μm以上の場合にはフラットパネル用ステッパー及びスキャナーにより製造可能である。したがって、絶縁層122の厚みは、例えば、1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上7μm以下であることが好ましい。本実施の形態では、後述する桟122w1、w2、w3において約4.0μm、それ以外の領域で約5.0μmとした。画素電極層119は、平面視において矩形形状であり、光反射材料からなる。行列状に配された画素電極層119は、行方向に順に並んだ3つのサブ画素100aR、G、B(R、G、Bを区別しないときは「100a」とする)に対応する。
【0038】
行列状に配されている画素電極層119の上方には、それぞれの画素電極層119の上方に4本のスリット状の開口122z1〜122z4が開設された絶縁層122が積層されている。各開口を短軸方向に切断した断面は、
図7に示すように、絶縁層122の上面側に拡幅した台形形状である。開口それぞれの断面における深さD、上辺の長さWh、下辺の長さWlは、以下の関係を満たすことが好ましい。
【0039】
0.5≦Wl/Wh≦0.8
0.5≦D/Wl≦2.0
また、壁面の傾斜角Rは、(Wh−Wl)/2Dにより定義される。
開口122z1〜122z4の行列方向の外縁間の矩形領域が有機化合物により光を発する領域である発光領域100aとなる。ここで、絶縁層122における発光領域100aの間隙のうち、列方向に並設した発光領域100a間の行方向間隙を絶縁層122Y、行方向に並設した発光領域100a間の行方向間隙を絶縁層122Xとする。そうすると、発光領域100aの列方向における外縁は絶縁層122Xの列方向外縁により規定され、発光領域100aの行方向における外縁は絶縁層122Yの行方向外縁により規定される。
【0040】
列方向に隣接する2つの画素電極層119の列方向外縁および外縁に隣接する領域の上方には、各条が行方向(
図3のX方向)に延伸する絶縁層122Xが複数列方向に並設されている。絶縁層122Xが形成される領域が非発光領域100bとなる。
図3に示すように、表示パネル10では、複数の発光領域100aと非発光領域100bとが、列方向に交互に並んで配されている。そして、非発光領域100bには、接続電極層117を介して画素電極層119に対して電気接続するための画素電極層119上のコンタクト領域119b(コンタクトウインドウ)が設けられている。
【0041】
表示パネル10では、ライン状のバンクを採用しており、絶縁層122Y上であって、行方向に隣接する2つの画素電極層119の行方向外縁及び外縁に隣接する領域の上方には、各条が列方向(
図3のY方向)に延伸する絶縁層522Yが複数行方向に並設されている。
隣り合う列バンク522Y間を間隙522zと定義したとき、表示パネル10は、列バンク522Yと間隙522zとが交互に多数並んだ構成を採る。
【0042】
表示パネル10は、赤色に発光する100aR、緑色に発光する100aG、青色に発光する100aB(以後、100aR、100aG、100aBを区別しない場合は、「100a」と略称する)の3種類の発光領域100aを有する。これに対応して、間隙522zには、発光領域100aRに対応する赤色間隙522zR、発光領域100aGに対応する緑色間隙522zG、発光領域100aBに対応する青色間隙522zB(以後、間隙522zR、間隙522zG、間隙522zBを区別しない場合は、「間隙522z」とする)が存在する。そして、行方向に並んだ3つのサブ画素100seのそれぞれに対応する発光領域100aR、100aG、100aBが1組となりカラー表示における1単位画素100eを構成している。
【0043】
画素電極層119上方には、画素電極層119の列方向外縁部と重なる複数の列遮光層129Yと、画素電極層119の列方向外縁部と重なりコンタクト領域119b内の一部領域とは重ならない行遮光層129Xが配されている。
4.表示パネル10の各部構成
表示パネル10における有機EL素子100の構成を
図5〜7の模式断面図を用いて説明する。
図5は
図4(b)におけるA1−A1で、
図6はA2−A2で、
図7はB−Bにおいてそれぞれ切断した模式断面図である。
【0044】
本実施の形態に係る表示パネル10は、トップエミッション型の有機EL表示パネルであって、Z軸方向下方に薄膜トランジスタが形成された基板100x(TFT基板)が構成され、その上に有機EL素子部が構成されている。
4.1 基板100x(TFT基板)
図5に示すように、下部基板100p上には、ゲート電極101、102が互いに間隔をあけて形成され、ゲート電極101、102および基板100xの表面を被覆するように、ゲート絶縁層103が形成されている。ゲート絶縁層103上には、ゲート電極101、102のそれぞれに対応してチャネル層104、105が形成されている。そして、チャネル層104、105およびゲート絶縁層103の表面を被覆するように、チャネル保護層106が形成されている。
【0045】
チャネル保護層106上には、ゲート電極101およびチャネル層104に対応して、ソース電極107およびドレイン電極108が互いに間隔をあけて形成され、同様に、ゲート電極102およびチャネル層105に対応して、ソース電極110およびドレイン電極109が互いに間隔をあけて形成されている。
各ソース電極107、110および各ドレイン電極108、109の下部には、チャネル保護層106を挿通してソース下部電極111、115およびドレイン下部電極112、114が設けられている。ソース下部電極111およびドレイン下部電極112は、Z軸方向下部において、チャネル層104に接触し、ドレイン下部電極114およびソース下部電極115は、Z軸方向下部において、チャネル層105に接触している。
【0046】
また、ドレイン電極108とゲート電極102とは、ゲート電極層103およびチャネル保護層106を挿通して設けられたコンタクトプラグ113により接続されている。
なお、ゲート電極101が
図2のゲートG
2に対応し、ソース電極107が
図2のソースS
2に対応し、ドレイン電極108が
図2のドレインD
2に対応している。同様に、ゲート電極102が
図2のゲートG
1に対応し、ソース電極110が
図2のソースS
1に対応し、ドレイン電極109が
図2のドレインD
1に対応している。よって、
図5におけるY軸方向左側にスイッチングトランジスタTr
2が形成され、それよりもY軸方向右側に駆動トランジスタTr
1が形成されている。
【0047】
ただし、上記した構成は一例であり、各トランジスタTr
1、Tr
2の配置形態については、トップゲート式、ボトムゲート式、チャネルエッチ式、エッチストップ式などいずれの構成を用いてもよく、
図5に示す構成に限定されるものではない。
ソース電極107、110およびドレイン電極108、109およびチャネル保護層106の上を被覆するように、パッシベーション層116が形成されている。パッシベーション層116には、ソース電極110の上方の一部にコンタクト孔116aが開設され、コンタクト孔116aの側壁に沿うように接続電極層117がこの順に積層されて設けられている。
【0048】
接続電極層117は、Z軸方向下部において、ソース電極110に接続され、上部の一部がパッシベーション層116の上に乗り上げた状態となっている。接続電極層117およびパッシベーション層116の上を被覆するように、層間絶縁層118が堆積されている。
4.2 有機EL素子部
(1)画素電極層119
層間絶縁層118上には、サブ画素単位で画素電極層119が設けられている。画素電極層119は、発光層123へキャリアを供給するためのものであり、例えば、陽極として機能した場合には、発光層123へホールを供給する。また、パネル10はトップエミッション型であるため、画素電極層119は、光反射性を有する。画素電極層119の形状は、矩形形状をした平板上であり、行方向に間隔δXをあけて、間隙522zのそれぞれにおいて列方向にδYをあけて基板100x上に配されている。また、層間絶縁層118における接続電極層117の上方に開設されたコンタクトホール118aを通して、画素電極層119の接続凹部119cと接続電極層117とが接続されている。これにより、接続電極層117を介して画素電極層119とTFTのソースS
1とが接続される。接続凹部119cは、画素電極層119の一部を基板100x方向に凹入された構造である。
【0049】
画素電極層119の列方向外縁部119a1、a2のうち、接続凹部119cが存在する側の外縁部199a2を起点とし接続凹部119cを含む領域までの範囲をコンタクト領域119bとする。
(2)絶縁層122
行列上に配されている画素電極層119の少なくとも端縁を被覆するように絶縁物からなる絶縁層122が形成されている。
【0050】
絶縁層122には、それぞれの画素電極層119について、コンタクト領域119bを除いた画素電極層119の上方にスリット状の開口122zが開設されている。
図7に示すように、開口122z1〜122z4内では画素電極層119の上面に絶縁層122が存在せず、これらの開口からは画素電極層119が露出し後述するホール注入層120に接触している。そのため、これらの開口内において画素電極層119からホール注入層120への電荷の供給が可能となる。そのため、開口122z1〜122z4を含む最小の矩形領域が各色の有機化合物により光を発する領域である発光領域100a、列方向に並んだ発光領域100a間の間隙部分が非発光領域100bとなる。絶縁層122における、開口122z1、122z2間の部分を桟122w1とし、開口122z2、122z3間の部分を桟122w2、開口122z3、122z4間の部分を桟122w3とする。
図7に示すように、開口122z1、122z4の行方向の幅は、開口122z2、122z3の行方向の幅より広い。これにより、後述するように、開口122z1〜122z4に形成される発光層等の膜厚の不均一性を解消することができる。
【0051】
また、列方向に延伸して行方向に並設される発光領域100a間の間隙部分を絶縁層122Yとする。そのため、絶縁層122Yは行方向における各サブ画素100seの発光領域100aの外縁を規定している。絶縁層122Y、桟122w1、122w2、122w3を行方向に平行に切った断面は上方に縮幅する台形形状である。これにより、発光層123からの光を効率よく上方に出射することができる。また、桟122z1、z2、z3の画素電極層119からの高さは、絶縁層122Yの画素電極層119からの高さより低い。これにより、桟122w1、122w2、122w3の底面で被覆される画素電極層119の面積を低減させて開口122z1〜122z4の面積を拡大し、開口率を向上させることができる。
【0052】
また、絶縁層122における、行方向に延伸して列方向に並設される発光領域100a間の間隙部分を絶縁層122X(非発光領域100bに相当)とする。
図4(a)に示すように、絶縁層122Xは、画素電極層119におけるコンタクト領域119bと、画素電極層119の列方向外縁部119a1及び列方向に隣接する画素電極層119の列方向外縁部a2の上方に配されている。絶縁層122Xは、画素電極層119の外縁部119a1、a2を被覆することにより対向電極層125との間の電気的リークを防止するとともに、列方向における各サブ画素100seの発光領域100aの外縁を規定する。
【0053】
また、絶縁層122Xには、
図3に示すように、列方向に隣接する2つのサブ画素の開口122z1〜122z4を連通する溝を有しており、インク塗布量の不均一性を軽減する。
(3)列バンク522Y
列バンク522Yは、絶縁層122Y上方に列方向に延伸して行方向に複数並設されている。列バンク522Yは、発光層123の材料となる有機化合物を含んだインクの行方向への流動を堰き止めて形成される発光層123の行方向外縁を規定するものである。列バンク522Yは、画素電極層119の行方向における外縁部119a3、a4上方に存在し、画素電極層119の一部と重なった状態で形成されている。列バンク522Yの形状は、行方向に延伸する線状であり、列方向に平行に切った断面は上方を先細りとする順テーパー台形状である。列バンク522Yは絶縁層122Xと直交する行方向に沿った状態で設けられており、列バンク522Yは絶縁層122Xの上面よりも高い位置に上面を有する。
【0054】
(4)ホール注入層120、ホール輸送層121
絶縁層122、列バンク522Y、及び開口122z内における画素電極層119上には、ホール注入層120、ホール輸送層121が順に積層され、ホール輸送層121はホール注入層120に接触している。ホール注入層120、ホール輸送層121は、画素電極層119から注入されたホールを発光層123へ輸送する機能を有する。
【0055】
(5)発光層123
表示パネル10は、列バンク122Yとその間隙522zとが交互に多数並んだ構成を有する。列バンク122Yにより規定された間隙522zには、ホール輸送層121の上面に発光層123が列方向に延伸して形成されている。発光領域100aRに対応する赤色間隙522zR、発光領域100aGに対応する緑色間隙522zG、発光領域100aBに対応する青色間隙522zBには、それぞれ各色に発光する発光層123が形成されている。
【0056】
発光層123は、有機化合物からなる層であり、内部でホールと電子が再結合することで光を発する機能を有する。間隙522z内では、発光層123は列方向に延伸するように線状に設けられている。
発光層123は、画素電極層119からキャリアが供給される部分のみが発光するので、絶縁物である絶縁層122が層間に存在する範囲では、有機化合物の電界発光現象が生じない。そのため、発光層123は、絶縁層122が介在しない開口122z内に位置する部分のみが発光して、開口122z1、122z2、122z3、122z4を含む最小の矩形領域が発光領域100aとなる。
【0057】
発光層123のうち絶縁層122X上にある部分は発光せず、この部分は非発光領域100bとなる。すなわち、非発光領域100bとは、行バンク122Xを平面視方向に投影した領域となる。
(6)電子輸送層124
列バンク522Y上および列バンク522Yにより規定された間隙522z内には、発光層123の上に電子輸送層124が形成されている。また、本例では、発光層123から露出する各列バンク522Y上にも配されている。電子輸送層124は、対向電極層125から注入された電子を発光層123へ輸送する機能を有する。
【0058】
(7)対向電極層125
電子輸送層124を被覆するように対向電極層125が積層形成されている。対向電極層125については、表示パネル10全体に連続した状態で形成され、ピクセル単位あるいは数ピクセル単位でバスバー配線に接続されていてもよい(図示を省略)。対向電極層125は、画素電極層119と対になって発光層123を挟むことで通電経路を作り、発光層123へキャリアを供給するものであり、例えば、陰極として機能した場合は、発光層123へ電子を供給する。対向電極層125は、電子輸送層124の表面に沿って形成され、各発光層123に共通の電極となっている。
【0059】
対向電極層125は、表示パネル10がトップエミッション型であるため、光透過性を有する導電材料が用いられる。例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。また、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)などを薄膜化した電極を用いてもよい。
(8)封止層126
対向電極層125を被覆するように、封止層126が積層生成されている。封止層126は、発光層123が水分や空気などに触れて劣化することを抑制するためのものである。封止層126は、対向電極層125の上面を覆うように、表示パネル10全面にわたって設けられている。封止層126の材料としては、表示パネル10がトップエミッション型であるため、例えば、窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの光透過性材料が用いられる。
【0060】
(9)接合層127
封止層126のZ軸方向上方には、上部基板130のZ軸方向下側の主面にカラーフィルタ層128および遮光層129が形成されたCF基板131が配されており、接合層127により接合されている。接合層127は、基板100xから封止層126までの各層からなる背面パネルとCF基板131とを貼り合わせるとともに、各層が水分や空気に晒されることを防止する機能を有する。
【0061】
また、表示パネル10において、接合層127の屈折率をn
1、絶縁層122の屈折率をn
2としたとき、1.1≦n
1≦1.8、および、|n
1−n
2|≧0.20を満たしており、かつ、リフレクタ傾斜面の傾きをθとしたとき、n
2<n
1、および、75.2−54(n
1−n
2)≦θ≦81.0−20(n
1−n
2)であることが好ましい。
(10)上部基板130
接合層127の上に、上部基板130にカラーフィルタ層128、遮光層129が形成されたCF基板131が設置・接合されている。上部基板130には、表示パネル10がトップエミッション型であるため、例えば、カバーガラス、透明樹脂フィルムなどの光透過性材料が用いられる。また、上部基板130により、表示パネル10の剛性向上、水分や空気などの侵入防止などを図ることができる。
【0062】
(11)カラーフィルタ層128
上部基板130には画素の各色発光領域100aに対応する位置にカラーフィルタ層128が形成されている。カラーフィルタ層128は、R、G、Bに対応する波長の可視光を透過させるために設けられる透明層であり、各色画素から出射された光を透過させて、その色度を矯正する機能を有する。例えば、本例では、赤色間隙522zR内の発光領域100aR、緑色間隙522zG内の発光領域100aG、青色間隙522zB内の発光領域100aBの上方に、赤色、緑色、青色のフィルタ層128R、128G、128Bが各々形成されている。カラーフィルタ層128は、具体的には、例えば、複数の開口部を画素単位で行列上に形成したカラーフィルタ形成用のカバーガラスからなる上部基板130に対し、カラーフィルタ材料および溶媒を含有したインクを塗布する工程により形成される。
【0063】
(12)遮光層129
上部基板130には、各画素の発光領域100a間の境界に対応する位置に遮光層129が形成されている。
遮光層129は、R、G、Bに対応する波長の可視光を透過させないために設けられる黒色樹脂層であって、例えば、光吸収性および遮光性に優れる黒色顔料を含む樹脂材料からなる。遮光層129は、表示パネル10内部への外光の入射を防止する、上部基板130越しに内部部品が透けて見えることを防止する、外光の照り返しを抑えて表示パネル10のコントラストを向上させる、などの目的で形成される。外光の照り返しとは、上部基板130の上方から表示パネル10に進入した外光が画素電極層119で反射することで上部基板130から再び出射される現象である。
【0064】
また、遮光層129は、各色画素から出射される光のうち隣接画素に漏れ出る光を遮断し、画素境界が不明瞭になることを防止し、また、画素から出射される光の色純度を高める機能を有する。
遮光層129には、列方向に延伸して行方向に複数並設されている列遮光層129Yと、行方向に延伸して列方向に複数並設されている行遮光層129Xとがあり、列遮光層129Yと行遮光層129Xとは格子状をなしている。有機EL素子100では、列遮光層129Yは、
図7に示すように、絶縁層122Yと重なる位置に配され、行遮光層129Xは、
図5、6に示すように、絶縁層122Xと重なる位置に配されている。
【0065】
4.3 各部の構成材料
図5、6、7に示す各部の構成材料について、一例を示す。
(1)基板100x(TFT基板)
基板100x0は、公知のTFT基板の材料を用いることができる
下部基板100pとしては、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素基などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。
【0066】
プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0067】
ゲート電極101、102としては、例えば、銅(Cu)とモリブデン(Mo)との積層体を採用している。ただし、他の金属材料を採用することも可能である。
ゲート絶縁層103としては、例えば、酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(SiNx)など、電気絶縁性を有する材料であれば、公知の有機材料や無機材料のいずれも用いることができる。
【0068】
チャネル層104、105としては、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種を含む酸化物半導体を採用することができる。
チャネル保護層106としては、例えば、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、あるいは酸化アルミニウム(AlOx)を用いることができる。
ソース電極107、110、ドレイン電極108、109としては、例えば、銅マンガン(CuMn)と銅(Cu)とモリブデン(Mo)の積層体を採用することができる。
【0069】
また、ソース下部電極111、115およびドレイン下部電極112、114についても、同様の材料を用い構成することができる。
パッシベーション層116は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)、またはこれらの積層体等を用いることもできる。
接続電極層117としては、例えば、モリブデン(Mo)と銅(Cu)と銅マンガン(CuMn)との積層体を採用することができる。ただし、導電性を有する材料から適宜選択することが可能である。
【0070】
層間絶縁層118は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル系樹脂材料などの有機化合物を用い形成されており、層厚は、例えば、2000[nm]〜8000[nm]の範囲とすることができる。
(2)画素電極層119
画素電極層119は、金属材料から構成されている。トップエミッション型の本実施の形態に係る表示パネル10の場合には、その表面部が高い反射性を有することが好ましい。本実施の形態に係る表示パネル10では、画素電極層119は、金属層、合金層、透明導電膜の中から選択される複数の膜を積層させた構造であってもよい。金属層としては、例えば、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料から構成することができる。合金層としては、例えば、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等を用いることができる。透明導電層の構成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
【0071】
(3)絶縁層122
絶縁層122は、絶縁性材料から構成された層であり、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの無機材料を用い形成される。
(4)列バンク522Y
列バンク522Yは、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。列バンク522Yの形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。列バンク522Yは、有機溶剤耐性を有することが好ましい。さらに、列バンク522Yは、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、表面に撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理してもよい。また、列バンク522Yの形成にフッ素を含有した材料を用いてもよい。
【0072】
(5)ホール注入層120
ホール注入層120は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。
【0073】
ホール注入層120を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。
(6)ホール輸送層121
ホール輸送層121は、例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物などを用いることができる。
【0074】
(7)発光層123
発光層123は、上述のように、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。発光層123の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
具体的には、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0075】
(8)電子輸送層124
電子輸送層124は、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。また、電子注入性を向上させるため、これらの有機材料にアルカリ金属、または、アルカリ土類金属を共蒸着することで金属材料をドープしてもよい。また、フッ化ナトリウム(NaF)などのアルカリ金属のフッ化物を用いてもよいし、アルカリ金属のフッ化物と有機層との積層構造であってもよい。
【0076】
(9)対向電極層125
対向電極層125は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)若しくは酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用い形成される。また、銀(Ag)又はアルミニウム(Al)などを薄膜化した電極を用いてもよい。
(10)封止層126
封止層126は、発光層123などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0077】
封止層126は、トップエミッション型である本実施の形態に係る表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。
(11)接合層127
接合層127の材料は、例えば、樹脂接着剤等からなる。接合層127は、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの透光性材料樹脂材料を採用することができる。
【0078】
(12)上部基板130
上部基板130としては、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等の透光性材料を採用することができる。
(13)カラーフィルタ層128
カラーフィルタ層128としては、公知の樹脂材料(例えば市販製品として、JSR株式会社製カラーレジスト)等を採用することができる。
【0079】
(14)遮光層129
遮光層129としては、紫外線硬化樹脂(例えば紫外線硬化アクリル樹脂)材料を主成分とし、これに黒色顔料を添加してなる樹脂材料からなる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック顔料、チタンブラック顔料、金属酸化顔料、有機顔料などの遮光性材料を採用することができる。
【0080】
4.4 リフレクタ構造による光取り出し効率を向上
表示パネル10では、開口122zが開設された絶縁層122と絶縁層122の開口122zに裏面を凸入された接合層127からなるリフレクタ(反射構造)と両部材間に存在する発光層123とを備え、行方向に切断した開口122zの断面のプロファイルは、上方に拡幅した台形形状であり、接合層127の屈折率をn
1、絶縁層122の屈折率をn
2としたとき、
1.1≦n
1≦1.8 (式1)
|n
1−n
2|≧0.20 (式2)
を満たすことを特徴とする。n
2は、1.4以上1.6以下であることが好ましい。
【0081】
また、さらに、開口122zの断面における深さD、絶縁層122の上面側の開口幅W
h、絶縁層122の上面側の開口幅W
lは、
0.5≦W
l/W
h≦0.8 (式3)
0.5≦D/W
l≦2.0 (式4)
関係を満たすことが好ましい。
【0082】
係る形状、屈折率条件とすることにより、絶縁層122の開口122zによるリフレクタ構造により発光層123からの光取り出し効率を向上することができる。その結果、発明者らの検討によると、リフレクタ構造が無い場合に対しサブ画素当りの輝度を1.2〜1.5倍に増加することができる。
図8(a)は、リフレクタ構造を用いた有機EL素子100において、全反射を得るための開口122z壁面の傾斜角をαの算出方法を示した模式図、(b)は、発光した光が開口122z壁面で反射して有効な視野角γ’に届く有効発光範囲Lの算出方法を示した模式図である。
【0083】
図8(a)において、開口122z壁面への入射角をφとすると、
φ=2(90−α)=180−2α (式5)
α=90−φ/2 (式6)
全反射を得るための傾斜角α
zは、
α
z=sin
-1(n
2/n
1) (式7)
より算出される。
【0084】
図8(b)において、発光した光が開口122z壁面で反射して有効な視野角γ’に届く有効発光範囲Lは、
γ=sin
-1(sinγ`/n
1)) (式8)
β=90−φ−γ (式9)
L=h(1/tanβ−1/tanα) (式10)
より算出される。
【0085】
例えば、n
1=1.8、α=70°、γ`=20°、h=5μmの場合、φ=40°、γ=11°、β=39°、L=4.4μmとなる。
5.表示パネル10の製造方法
表示パネル10の製造方法について、図面を用い説明する。
図9(a)〜(e)、
図10(a)〜(c)、
図11(a)〜(c)は、有機EL表示パネル10の製造における各工程での状態を示す
図4(b)におけるA1−A1と同じ位置で切断した模式断面図であり、
図13(a)〜(d)、
図14(a)〜(d)は、有機EL表示パネル10の製造における各工程での状態を示す
図4(b)におけるB−Bと同じ位置で切断した模式断面図である。
【0086】
(1)基板100x(TFT基板)の形成
先ず、ソース電極107、110およびドレイン電極108、109までが形成された基板100x0を準備する(
図9(a))。基板100x0は、公知のTFTの製造方法により製造することができる。
次に、ソース電極107、108およびドレイン電極108、109およびチャネル保護層106を被覆するように、例えば、プラズマCVD法あるいはスパッタリング法を用いて、パッシベーション層116を積層形成する(
図9(b))。
【0087】
次に、パッシベーション層116におけるソース電極110上の箇所に、ドライエッチング法を用い、コンタクト孔116aを開設する(
図9(c))。コンタクト孔116aは、その底部にソース電極110の表面110aが露出するように形成される。
次に、パッシベーション層116に開設されたコンタクトコンタクト孔116aの内壁に沿って接続電極層117を形成する。接続電極層117の上部は、その一部がパッシベーション層116上に配される。接続電極層117の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。さらに、接続電極層117およびパッシベーション層116を被覆するように、上記有機材料を塗布し、表面を平坦化することにより層間絶縁層118を積層形成する(
図9(d))。
【0088】
(2)画素電極層119の形成
層間絶縁層118における接続電極層117上にコンタクト孔を開設し、画素電極層119を形成する(
図9(e))。画素電極層119の形成は、スパッタリング法あるいは真空蒸着法などを用い金属膜を形成した後、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いパターニングすることでなされる。なお、画素電極層119は、接続電極層117と電気的に接続された状態となる。
【0089】
(3)絶縁層122の形成
CVD法を用いて酸化金属、窒化金属(例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON))からなるフォトレジスト膜122Rを形成した後(
図10(a)、
図13(a))、乾燥し、溶媒をある程度揮発させてから、所定の開口部が施されたフォトマスクPMを重ね、その上から紫外線照射を行い感光性樹脂等からなるフォトレジストにフォトマスクPMが有するパターンを転写する(
図10(b)、
図13(b))。
【0090】
本実施の形態では、フォトマスクPMは、例えば、開口122z1〜122z4(図中の縦縞部分)に対応する光を透過させる透過部を備えたポジ型のフォトマスクを使用する。これにより、開口122zに対応する透過部の形状に対応した開口のパターンがフォトレジストに作成される。
次に、フォトレジストを現像した後、反応性イオンエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)法によって絶縁層122X、122Y、開口122zをパターニングした絶縁層122を形成する(
図10(c)、
図13(c))。これにより、透過部に対応する開口122zはエッチングによって絶縁層122が除去される。このとき、開口部122zを長尺方向に垂直に切断した断面は、上述のとおり絶縁層122の上面122Xb側に拡幅した台形形状となる。他方、露光されない部分は絶縁層122が残存する。その結果、絶縁層122は、絶縁層122X、122Yにより各画素を規定する領域を囲繞し、開口122zの底部に画素電極層119の表面が露出するようにパターニングされる。また、開口122z1と開口122z2との間の距離、開口122z2と開口122z3との間の距離、開口122z3と開口122z4との間の距離はそれぞれ、開口122z4とX方向に隣接するサブ画素の開口122z1との間の距離よりも小さい。したがって、桟122w1、122w2、122w3の上面は絶縁層122Yの上面よりも低くなる。具体的には、Y方向と直交する面で切断した断面形状は、サブ画素を区画する絶縁層122Yは台形形状となる一方、桟122w1、122w2、122w3は、絶縁層122YよりZ方向の厚みが小さい三角形状となる。
【0091】
(4)列バンク522Yの形成
列バンク522Yの形成は、先ず、絶縁層122上に、スピンコート法などを用い、列バンク522Yの構成材料(例えば、感光性樹脂材料)からなる膜522YRを積層形成する(
図10(c)、
図13(c))。そして、樹脂膜をパターニングして間隙522zを開設して列バンク522Yを形成する(
図13(d))。間隙522zの形成は、樹脂膜の上方にマスクを配して露光し、その後で現像することによりなされる。列バンク522Yは、絶縁層122Yの上面に沿って列方向に延設され、行方向に間隙522zを介して並設される。
【0092】
(5)ホール注入層120およびバンク122の形成
画素電極層119、絶縁層122、列バンク522Y上に対して、ホール注入層120、ホール輸送層121を形成する(
図11(a)、
図14(a))。ホール注入層120、ホール輸送層121は、スパッタリング法を用い酸化金属(例えば、酸化タングステン)からなる膜を形成した後、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い各画素単位にパターニングしてもよい。
【0093】
(6)発光層123、および電子輸送層124の形成
列バンク522Yで規定された各間隙522z内に、ホール輸送層121側から順に、発光層123、および電子輸送層124を積層形成する。
発光層123の形成は、インクジェット法を用い、構成材料を含むインクを列バンク522Yにより規定される間隙522z内に塗布した後、焼成することによりなされる。
【0094】
発光層123の形成では、先ず、液滴吐出装置を用いて発光層123の形成するための溶液の塗布を行う。すなわち、基板100x上には、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層が、
図14(b)の紙面横方向に繰り返し並んで形成される。この工程では、サブ画素形成領域となる間隙522zに、インクジェット法によりR、G、Bいずれかの有機発光層の材料を含むインク123RI、123GI、123BIをそれぞれ充填し(
図14(b))、充填したインクを減圧下で乾燥させ、ベーク処理することによって、発光層123R、123G、123Bを形成する((
図11(b)、
図14(c))。
【0095】
(発光層形成用の溶液塗布方法)
インクジェット法を用いて、発光層6を形成する工程を量産的に行う方法について説明する。
図16(a)、(b)は、基板に対して発光層形成用のインクを塗布する工程を示す図であり、(a)は列バンク522Y間の間隙522zに一様に塗布する場合、(b)は絶縁層122Xと122Yとで規定される格子状の領域に塗布する場合である。
【0096】
発光層123の形成時には、発光層123を形成するための溶液である3色のインク(赤色インク123RI、緑色インク123GI、青色インク123BI)を用いて、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層を、複数のラインバンク間の各領域に形成する。
説明を簡略にするため、ここでは、複数の基板に対してまず一色のインクを塗布し、次に、その複数の基板に別の色のインクを塗布し、次にその複数の基板に3色目のインクを塗布する方法で、3色のインクを順次塗布することとする。
【0097】
そして、以下の説明では、複数の基板に対して、3色の中の一色のインク(赤色インク)を塗布する工程について代表的に説明する。
[絶縁層122Xと122Yとで規定される格子状の領域に塗布する場合]
絶縁層122Xと122Yとで規定される格子状の領域に塗布する。
本塗布方法では、
図16(a)に示すように、各サブ画素100seの長手方向がY方向、各サブ画素100seの幅方向がX方向となるように基板100xを載置して、インクジェットヘッド622をX方向に走査しながら、絶縁層122Xと122Yとで規定される格子状の領域内に設定された着弾目標に向けて各吐出口からインクを吐出する。
図16(a)では、赤色のサブ画素100se領域に赤色のインクを塗布する目標位置が示されている。
【0098】
ただし、インクジェットヘッド622が備える複数の吐出口624d1の中で、絶縁層122Xと絶縁層122Xとの間の領域上を通過する吐出口だけを使用し、絶縁層122Xの領域上を通る吐出口(
図16(a)中に×をつけた吐出口)は常に使用しない。
図16(a)に示す例では、1つのサブ画素の領域に対して7個の着弾目標が設定され、7個の吐出口624d1からインク滴が吐出される。
【0099】
基板100xに対してインクの塗布が終わると、次に、その基板に別の色のインクを塗布し、次にその基板に3色目のインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色のインクを順次塗布する。
上記において、複数の基板100xに対してインクの塗布が終わると、次に、その複数の基板に別の色のインクを塗布し、次にその複数の基板に3色目のインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色のインクを順次塗布してもよい。
【0100】
[列バンク522Y間の間隙522zに一様に塗布する場合]
発光層123は、発光領域100aだけでなく、隣接する非発光領域100bまで連続して延伸されてもよい。このようにすると、発光層123の形成時に、発光領域100aに塗布されたインクが、非発光領域100bに塗布されたインクを通じて列方向に流動でき、列方向の画素間でその膜厚を平準化することができる。但し、非発光領域100bでは、絶縁層122Xによって、インクの流動が程良く抑制される。よって、列方向に大きな膜厚むらが発生しにくく画素毎の輝度むらが改善される。
【0101】
本塗布方法では、
図16(b)に示すように、基板100xは、列バンク522YがY方向に沿った状態で液滴吐出装置の作業テーブル上に載置され、Y方向に沿って複数の吐出口624d1がライン状に配置されたインクジェットヘッド622をX方向に走査しながら、各吐出口624d1から列バンク522Y同士の間隙522z内に設定された着弾目標を狙ってインクを着弾させることによって行う。
【0102】
本塗布方法では、インクジェットヘッド622が備える全ての吐出口624d1を使用する点が異なる。
なお、赤色インクを塗布する領域は、x方向に隣接して並ぶ3つの領域の中の1つである。
基板100xに対してインクの塗布が終わると、次に、その基板に別の色のインクを塗布し、さらに、その基板に3色目のインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色のインクを順次塗布する。
【0103】
(7)電子輸送層124、対向電極層125および封止層126の形成
スパッタリング法などを用い電子輸送層124を形成する。その後、電子輸送層124を被覆するように、対向電極層125および封止層126を順に積層形成する(
図11(c)、
図14(d))。対向電極層125および封止層126は、CVD法、スパッタリング法などを用い形成できる。
【0104】
(8)CF基板131の形成
次に、図面を用いてCF基板131の製造工程を例示する。
図17(a)〜(f)は、有機EL表示パネル10の製造におけるCF基板131製造の各工程での状態を示す模式断面図である。
紫外線硬化樹脂(例えば紫外線硬化アクリル樹脂)材料を主成分とし、これに黒色顔料を添加してなる遮光層129の材料を溶媒に分散させ、遮光層ペースト129Rを調整し、透明な上部基板130の一方の面に塗布する(
図17(a))。
【0105】
塗布した遮光層ペースト129Rを乾燥し、溶媒をある程度揮発させてから、所定の開口部が施されたパターンマスクPM1を重ね、その上から紫外線照射を行う(
図17(b))。
その後、塗布・溶媒除去した遮光層ペースト129Rを焼成し、パターンマスクPM1及び未硬化の遮光層ペースト129Rを除去して現像し、キュアすると、矩形状の断面形状の遮光層129が完成する(
図17(c))。
【0106】
次に、遮光層129を形成した上部基板130表面に、紫外線硬化樹脂成分を主成分とするカラーフィルタ層128(例えば、G)の材料を溶媒に分散させ、ペースト128Rを塗布し、溶媒を一定除去した後、所定のパターンマスクPM2を載置し、紫外線照射を行う(
図17(d))。
その後はキュアを行い、パターンマスクPM2及び未硬化のペースト128Rを除去して現像すると、カラーフィルタ層128(G)が形成される(
図17(e))。
【0107】
この
図17(d)、(e)の工程を各色のカラーフィルタ材料について同様に繰り返すことで、カラーフィルタ層128(R)、128(B)を形成する。なお、ペースト128Rを用いる代わりに市販されているカラーフィルタ製品を利用してもよい。
以上でCF基板131が形成される。
(9)CF基板131と背面パネルとの貼り合わせ
次に、有機EL表示パネルの製造におけるCF基板131と背面パネルとの貼り合わせ工程について説明する。
図12(a)〜(b)は、
図4(b)におけるA1−A1と同じ位置で切断した模式断面図、
図15(a)〜(b)は、
図4(b)におけるB−Bと同じ位置で切断した模式断面図である。
【0108】
まず、基板100xから封止層126までの各層からなる背面パネルに、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの透光性紫外線硬化型樹脂を主成分とする接合層127の材料を塗布する(
図12(a)、
図15(a))。
続いて、塗布した材料に紫外線照射を行い、背面パネルとCF基板131との相対的位置関係を合せた状態で両基板を貼り合わせる。このとき、両者の間にガスが入らないように注意する。その後、両基板を焼成して封止工程を完了すると、有機EL表示パネル10が完成する(
図12(b)、
図15(b))。
【0109】
6.表示パネル10のリフレクタ形状について
(1)開口の位置と機能層の膜厚との関係
図18を用いて、実施の形態に係るリフレクタ構造と、従来のリフレクタ構造とにおける、機能層の膜厚のバラつき度合いを比較して説明する。
図18(a)は、サブ画素100seをY軸と垂直な面で切断した断層面と、塗布されたインクのピンニング位置との関係を示す模式図である。1つのサブ画素に塗布されたインクは、乾燥が進むにつれてその体積が小さくなり、桟122w1、w2、w3に区画された各開口内で乾燥が終了して機能層となる。したがって、各開口に形成される機能層の膜厚は、およそ、開口の体積を開口底面積で除した値とほぼ比例する。
【0110】
ここで、開口の形状はY方向に対して略対称であるので、開口の体積は、Y軸と垂直な面で開口を切断したときの開口の断面積(以下、単に「Y方向断面積」と表記する)に比例し、開口底面積は、Y軸と垂直な面で開口を切断したときの開口底面のX方向の長さ(以下、単に「底面幅」と表記する)に比例する。したがって、Y方向断面積をD、底面長をLとしたとき、機能層の膜厚は、以下の式で定義される指標値Pに略比例する。
P=D/L
ここで、各開口122w1〜w4それぞれのY方向断面積D
1〜D
4は、各開口の底面幅L
1b〜L
4b、Y軸と垂直な面で開口を切断したときの開口上面のX方向の長さ(以下、単に「上面幅」と表記する)L
1t〜L
4t、桟122w1上面と、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面との高さの差h
1t、桟122w3上面と、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面との高さの差h
4t、を用いて、下記のように近似することができる。
【0111】
開口122w2および122w3では、桟122w1〜w3の側壁において、桟122w1〜w3の上面でインクがピンニングされる。従って、開口122w2、w3のY方向断面積D
2、D
3は、高さが開口の高さh
2、h
3、上底が上面幅L
2t、L
3t、下底が底面幅L
2b、L
3bの台形として近似できる。すなわち、以下のように近似できる。
D
2=1/2・h
2・(L
2b+L
2t)
D
3=1/2・h
2・(L
3b+L
3t)
一方、開口122w1および122w4では、絶縁層122Yの側壁においては、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面でインクがピンニングされる。開口122w1の上方において絶縁層122Y壁面に付着したインクは乾燥によって開口122w1に留まると考えられ、同様に、開口122w4の上方において絶縁層122Y壁面に付着したインクは乾燥によって開口122w4に留まると考えられる。従って、開口122w1、w4では、桟122w1、122w3より低い開口の内側だけでなく、桟122w1、122w3より高く絶縁層122Yに沿った部分も、断面積に含めて考える必要がある。つまり、開口122w1、w4のY方向断面積D
1、D
4は、開口122w2、w3のY方向断面積D
2、D
3と同様の台形と、絶縁層122Yの側面に沿って盛り上がった部分との合計として近似できる。絶縁層122Yの側面に沿って盛り上がった部分の断面積は0より大きく、底面が上面幅L
1t、L
4t、高さが絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面と、桟122w1、w3上面との高さの差h
1t、h
4tの三角形の面積より小さいと考えられるため、以下のように近似できる。
1/2・h
1・(L
1b+L
1t)<D
1<1/2・{h
1・(L
1b+L
1t)+h
1t・L
1t}
1/2・h
4・(L
4b+L
4t)<D
4<1/2・{h
4・(L
4b+L
4t)+h
4t・L
4t}
ここで、桟122w1〜w3の高さが同一であるとすると、開口122z1〜z4のそれぞれにおける、桟122w1〜w3までの高さh
1〜h
4は等しくなる。また、各開口の側面の傾きが同一であれば、開口の上面幅と底面幅との差は等しくなる。したがって、開口の底面幅が同一である、すなわち
L
1b=L
2b=L
3b=L
4b
であるとき、上面幅も同一となり、
L
1t=L
2t=L
3t=L
4t
となる。このとき、4つの台形の面積が等しくなるため、
D
1=D
4>D
2=D
3
となる。したがって、各開口の指標値P
1、P
2、P
3、P
4は以下の関係となる。
P
1=P
4>P
2=P
3
すなわち、桟122w1〜w3の上面の高さと、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面との差が大きいほど、列バンク522Yに隣接する開口122w1、w4の機能層材料インクの量と、それ以外の開口122w2、w3の機能層材料インクの量との差が大きくなる。したがって、
図18(b)に模式図を示すように、開口122w1、w4の機能層の厚さT
1、T
4が、開口122w2、w3の機能層の厚さT
2、T
3より大きくなる。
【0112】
(2)第1の設定方針
上記課題を解決する第1の手段は、
図19の模式図に示すように、列バンク522Yに隣接する開口の底面幅を、それ以外の開口の底面幅より大きくすることである。桟122w1、122w2、…の上面の高さが同一であれば桟122w1、122w2、…底面積も同一であるから、全ての開口において、高さと、上面長と下面長との差ΔLとは、それぞれ一定となる。したがって、列バンク522Yに隣接しない開口については、以下の式が成り立つ。
P=D/L
t
=1/2・h・(L
b+L
t)・1/L
b
=h(1+ΔL/2L
b)
すなわち、列バンク522Yに隣接しない開口では、高さhをそのままに底面長L
bを大きくすると、指標値Pが小さくなる。つまり、絶縁層122Y壁面に付着したインクを無視すれば、開口幅が大きいほど形成される機能層の膜厚が小さくなる。したがって、列バンク522Yに隣接する開口の底面長をそれ以外の開口の底面長より大きくすれば、絶縁層122Y壁面に付着したインクによる機能層の膜厚上昇の影響を、開口幅が大きいことによる機能層の膜厚低下により相殺して小さくすることができる。
図19(a)は、サブ画素100seあたりの開口数が3である場合を示した模式図であり、
L
1b=L
3b>L
2b
であることが好ましい。また、
図19(b)は、サブ画素100seあたりの開口数が5である場合を示した模式図であり、
L
1b=L
5b>L
2b=L
3b=L
4b
であることが好ましい。
【0113】
なお、サブ画素100seあたりの開口数は上述の場合に限られず、4または6以上の値など、3以上の任意の値であってよい。
(3)第2の設定方針
上述した第1の手段とは異なる、上記課題を解決する第2の手段は、
図20の模式図に示すように、サブ画素100seあたりの開口数を偶数とし、絶縁層122Yおよび列バンク522Yに近い位置から見て、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面より低い桟を奇数番目に、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面と同じ高さの桟を偶数番目に、交互に配置することである。
図20(a)は、サブ画素100seあたりの開口数が4である場合を示した模式図である。ここで、第1の手段とは異なり、各開口122z1〜122z4それぞれの底面長L
1b、L
2b、L
3b、L
4bのそれぞれは等しい。一方で、桟122w2の上面の高さは、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面と等しく、桟122w1と122w3の上面の高さは同一で桟122w2の上面の高さより低い。このような形状とすることで、開口122z2、開口122z3においても、桟122w2の側壁においては桟122w2の上面の高さでピンニングされるため、開口122z1のY方向断面積D
1、開口122z2のY方向断面積D
2、開口122z3のY方向断面積D
3、開口122z4のY方向断面積D
4が一致する。上述したように底面長L
1b、L
2b、L
3b、L
4bは互いに等しいから、開口122z1〜122z4それぞれの指標値P
1、P
2、P
3、P
4が等しくなる。
【0114】
なお、このような絶縁層122は、開口122z2と開口122z3との間隔を広げることで桟122w2の高さを絶縁層122Yと等しくし、開口122z1と開口122z2との間隔、開口122z3と開口122z4との間隔を等しく、かつ、開口122z2と開口122z3との間隔より狭くすることで、桟122w1、122w3の高さを桟122w2の高さより低くする、との方法で実現することができる。
【0115】
また、
図20(b)は、サブ画素100seあたりの開口数が6である場合を示した模式図である。この場合においても、各開口122z1〜122z6それぞれの底面長L
1b、L
2b、L
3b、L
4b、L
5b、L
6bのそれぞれは等しい。また、桟122w2、桟122w4の上面の高さは、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面と等しく、桟122w1と122w3、桟122w5の上面の高さは同一で桟122w2、122w4の上面の高さより低い。
【0116】
なお、サブ画素100seあたりの開口数は上述の場合に限られず、8以上の偶数値など、4以上の任意の偶数値であってよい。
(3)第3の設定方針
上述した第1、第2の手段とは異なる、上記課題を解決する第3の手段は、
図21の模式図に示すように、サブ画素100seあたりの開口数を偶数とし、サブ画素中央の桟を絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面と同じ高さとして、当該桟と絶縁層122Yとで区画される2つの領域のそれぞれに、第1の手段と同じ構造を設けることである。
図21(a)は、サブ画素100seあたりの開口数が6である場合を示した模式図である。ここで、サブ画素100seの中央に位置する桟122w3は、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面と同じ高さを有する。そして、絶縁層122Yと桟122w3とで区画された第1の領域内に位置する開口122z1、122z2、122z3については、第1の手段と同様、桟122w1、122w2は桟122w3より低く、開口122z1、122z3それぞれの底面長L
1b、L
3bは等しく、かつ、開口122z2の底面長L
2bより小さい。同様に、絶縁層122Yと桟122w3とで区画された第2の領域内に位置する開口122z4、122z5、122z6については、第1の手段と同様、桟122w4、122w5は桟122w3より低く、開口122z4、122z6それぞれの底面長L
4b、L
6bは等しく、かつ、開口122z2の底面長L
4bより小さい。底面長について、好ましくは、
L
1b=L
3b=L
4b=L
6b>L
2b=L
4b
である。
【0117】
なお、塗布されたインクがサブ画素中央の桟を乗り越える必要はないので、例えば、
図21(b)に示すように、サブ画素中央の桟122w3を絶縁層122Yと同じ高さとして、サブ画素中央の桟122w3の直上にも列バンク522Yを設けることで、サブ画素中央の桟122w3とラインバンクとの構造を同一としてもよい。なお、サブ画素中央の桟122w3と絶縁層122Yは同じ高さであればよく、X方向の幅は同一でもよいし異なっていてもよい。
【0118】
なお、サブ画素100seあたりの開口数は上述の場合に限られず、8以上の偶数値など、6以上の任意の偶数値であってよい。また、図示しないが、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面と同じ高さの桟を3以上用いてサブ画素100seをX方向に等分し、それぞれの領域を第1の手段と同じ構造としてもよい。すなわち、開口の数が2つの数p、qの積(pは3以上の整数、qは2以上の整数)と一致し、絶縁層122Yと列バンク522Yとから数えてpの整数倍の順序の桟の高さを、絶縁層122Yと列バンク522Yとの界面と同じ高さとしてそれ以外の桟の高さを低くし、かつ、高い桟、すなわちpの整数倍の順序の桟に隣接する開口の幅を、それ以外の開口の幅よりも広くする。
【0119】
(4)まとめ
以上説明したように、実施の形態に係るリフレクタ形状では、1つの画素内に存在する複数の開口において、機能層の膜厚のバラつきを抑止することができる。したがって、並列に接続され1つのサブ画素として制御される複数のマイクロ画素において、マイクロ画素間で電気的特性が異なることを抑止することができる。すなわち、マイクロ画素間の輝度や寿命のバラつきを避けることができ、リフレクタによる光取り出し効率の向上と、有機EL素子の高効率化、長寿命化を図ることができる。また、実施の形態に係るリフレクタ形状では、1以上の桟の高さが列バンクの高さより低い。したがって、全ての桟の高さを列バンクの高さに合わせる場合と比較して、開口率を向上させることができ、これにより有機EL素子の面積当たりの発光強度を高くすることができる。
【0120】
7.その他の開口の形状
実施の形態に係るリフレクタ形状では、開口は列バンクの延伸方向と同じ方向に延伸したスリット状の形状であるとしたが、他の開口形状についても同様の設計を行ってよい。
例えば、
図22(b)に示すような平面視したときに円錐台上の開口722zAが列方向および行方向に配されるリフレクタでは、列バンクに近接して配される開口の直径を、それ以外の開口の直径よりも大きくし、開口それぞれの指標値Pを等しくする、としてもよい。また、サブ画素を行方向と列方向とで同様に区画する、いわゆるピクセルバンク方式においては、バンクに近接して配される開口の直径を大きくし、開口それぞれの指標値Pを等しくする、としてもよい。具体的には、
図22(a)に示すように、絶縁層の外周に配置される開口122zAの直径を、それ以外の内周側に配置される開口122zBの直径よりも小さくする。これにより、開口内に形成される機能層の膜厚を均一化することができる。
【0121】
≪その他の変形例≫
実施の形態では、本実施の形態に係る表示パネル10を説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、パネル10の変形例を説明する。
【0122】
(1)実施の形態に係る表示パネル10では、基板100xから封止層126までの各層からなる背面パネルの上に、遮光層129X及び129Yが配されたCF基板131が設置・接合される構成としている。しかしながら、例示した表示パネル10において、遮光層129X及び129Yを背面パネルに直接設ける構成としてもよい。
(2)表示パネル10では、発光層123は、行バンク上を列方向に連続して延伸している構成としている。しかしながら、上記構成において、発光層123は、行バンク上において画素ごとに断続している構成としてもよい。
【0123】
(3)表示パネル10では、行方向に隣接する列バンク522Y間の間隙522zに配されたサブ画素100seの発光層123が発する光の色は互いに異なる構成とし、列方向に隣接する行バンク122X間の間隙522zに配されたサブ画素100seの発光層123が発する光の色は同じである。しかしながら、上記構成において、行方向に隣接するサブ画素100seの発光層123が発する光の色は同じであり、列方向に隣接するサブ画素100seの発光層123が発する光の色が互いに異なる構成としてもよい。また、行列方向の両方において隣接するサブ画素100seの発光層123が発する光の色が互いに異なる構成としてもよい。
【0124】
(4)表示パネル10では、基板100xから封止層126までの各層からなる背面パネルの上に、接合層127を介してCF基板131を設置・接合される構成としている。さらに、背面パネルの上とCF基板131との間に、フォトスペーサを介在させる構成としてもよい。
(5)実施の形態および変形例に係る各有機EL表示パネルでは、接合層127の屈折率をn
1、絶縁層122の屈折率をn
2としたとき、1.1≦n
1≦1.8、および、|n
1−n
2|≧0.20を満たしており、かつ、リフレクタ傾斜面の傾きをθとしたとき、n
2<n
1、および、75.2−54(n
1−n
2)≦θ≦81.0−20(n
1−n
2)であるものとした。しかしながら、絶縁層122から接合層127までの複数の層のうち、2つの層において、カラーフィルタ層128側の層の屈折率をn
3、画素電極層119側の層の屈折率をn
4としたとき、1.1≦n
3≦1.8、および、|n
3−n
4|≧0.20を満たしており、かつ、リフレクタ傾斜面の傾きをθとしたとき、n
4<n
3、および、75.2−54(n
3−n
4)≦θ≦81.0−20(n
3−n
4)であってもよい。
【0125】
(6)その他の変形例
実施の形態に係る表示パネル10では、サブ画素100seには、赤色画素、緑色画素、青色画素の3種類があったが、本発明はこれに限られない。例えば、発光層が1種類でありサブ画素が1種類のみであってもよいし、発光層が赤、緑、青、黄色に発光する4種類であり、サブ画素が4種類であってもよい。また、1種類のサブ画素が2以上の発光層を有していてもよく、例えば、黄色に発光するサブ画素が赤色発光層と緑色発光層とを備えていてもよい。また、カラーフィルタとの組み合わせにより、発光層の種類数より多い種類のサブ画素を実現してもよく、例えば、白色の発光層と、赤色透過フィルタ、緑色透過フィルタ、青色透過フィルタのそれぞれとを組み合わせて、赤色画素、緑色画素、青色画素のそれぞれを実現してもよい。また、単位画素100eは必ずしも複数のサブ画素100seからなる必要はない。例えば、単位画素100eは1のサブ画素100seからなり、単位画素100eが実施の形態に係るサブ画素100seと同一の構造を有していてもよい。
【0126】
また、上記実施の形態では、単位画素100eおよび単位画素100eを構成するサブ画素100seが、マトリクス状に並んだ構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、画素領域の間隔を1ピッチとするとき、隣り合う間隙同士で画素領域が列方向に半ピッチずれている構成であってもよい。
また、表示パネル10では、すべての間隙522zに画素電極層119が配されていたが、本発明はこの構成に限られない。例えば、バスバーなどを形成するために、画素電極層119が形成されない間隙522zが存在してもよい。
【0127】
また、表示パネル10では、各色サブ画素100seである間隙522zの上方に、カラーフィルタ層128が形成されている構成とした。しかしながら、例示した表示パネル10において、間隙522zの上方にはカラーフィルタ層128を設けない構成としてもよい。
また、上記実施の形態では、画素電極層119と対向電極層125の間に、ホール注入層120、ホール輸送層121、発光層123及び電子輸送層124が存在する構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、ホール注入層120、ホール輸送層121及び電子輸送層124を用いずに、画素電極層119と対向電極層125との間に発光層123のみが存在する構成としてもよい。また、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層などを備える構成や、これらの複数又は全部を同時に備える構成であってもよい。また、これらの層はすべて有機化合物からなる必要はなく、無機物などで構成されていてもよい。また、ホール注入層120、ホール輸送層121、電子輸送層124の形成方法は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスであってもよい。さらに、ホール注入層120、ホール輸送層121が乾式成膜プロセスで形成される場合、画素電極層119、ホール注入層120、ホール輸送層121、絶縁層122、発光層123の順に積層されてもよい。
【0128】
上記の形態では、EL素子部の下部にアノードである画素電極層119が配され、TFTのソース電極110に画素電極層119を接続する構成を採用したが、EL素子部の下部に対向電極層、上部にアノードが配された構成を採用することもできる。この場合には、TFTにおけるドレインに対して、下部に配されたカソードを接続することになる。
また、上記実施の形態では、一つのサブ画素100seに対して2つのトランジスタTr1、Tr2が設けられてなる構成を採用したが、本発明はこれに限定を受けるものではない。例えば、一つのサブピクセルに対して一つのトランジスタを備える構成でもよいし、三つ以上のトランジスタを備える構成でもよい。
【0129】
さらに、上記実施の形態では、トップエミッション型のEL表示パネルを一例としたが、本発明はこれに限定を受けるものではない。例えば、ボトムエミッション型の表示パネルなどに適用することもできる。その場合には、各構成について、適宜の変更が可能である。
また、上記実施の形態では、表示パネル10がアクティブマトリクス型の構成であったが、本発明はこれに限られず、例えば、パッシブマトリクス型の構成であってもよい。具体的には、列方向と平行な線状の電極と、行方向と平行な線状の電極とを発光層123を挟むようにそれぞれ複数並設すればよい。その場合には、各構成について、適宜の変更が可能である。なお、上記実施の形態では、基板100xがTFT層を有する構成であったが、上記パッシブマトリクス型の例などから分かるように、基板100xはTFT層を有する構成に限られない。
【0130】
≪補足≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない工程については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0131】
また、上記の工程が実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記工程の一部が、他の工程と同時(並列)に実行されてもよい。
また、発明の理解の容易のため、上記各実施の形態で挙げた各図の構成要素の縮尺は実際のものと異なる場合がある。また本発明は上記各実施の形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0132】
また、各実施の形態及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
さらに、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。