特許第6811805号(P6811805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6811805アルコール含有量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811805
(24)【登録日】2020年12月17日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】アルコール含有量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20201228BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20201228BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L2/38 C
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-98805(P2019-98805)
(22)【出願日】2019年5月27日
(65)【公開番号】特開2020-191805(P2020-191805A)
(43)【公開日】2020年12月3日
【審査請求日】2020年4月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519147706
【氏名又は名称】北條 智之
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北 條 智 之
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−007641(JP,A)
【文献】 特開2016−026476(JP,A)
【文献】 特開2015−097475(JP,A)
【文献】 日本初のノンアルコールジン「NEMA 0.00%」登場!,DRINK PLANET,2018年12月25日,検索日:2020年6月15日,URL,https://www.drinkplanet.jp/news/view/363
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水、ラベンダーの芳香蒸留水、コリアンダーシードの芳香蒸留水、及びカルダモンの芳香蒸留水からなり、
前記バラの芳香蒸留水と前記ラベンダーの芳香蒸留水の混合比率が、前記ラベンダーの芳香蒸留水の量に対し前記バラの芳香蒸留水の量が、1.5〜3倍量であり、
前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水の量と、前記バラの芳香蒸留水及び前記ラベンダーの芳香蒸留水の合計量と、の混合比率が、前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水の量に対して前記バラの芳香蒸留水及び前記ラベンダーの芳香蒸留水の合計量が、1.5〜4倍量であり、
前記コリアンダーシードの芳香蒸留水と前記カルダモンの芳香蒸留水との混合比率が、1:2〜2:1の比率であり、
前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水、前記バラの芳香蒸留水及び前記ラベンダーの芳香蒸留水の合計量と、前記コリアンダーシードの芳香蒸留水及び前記カルダモンの芳香蒸留水の合計量と、の混合比率が、前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水、前記バラの芳香蒸留水及び前記ラベンダーの芳香蒸留水の合計量に対して、前記コリアンダーシードの芳香蒸留水及び前記カルダモンの芳香蒸留水の合計量が、0.5〜1.5倍量であることを特徴とするアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料。
【請求項2】
前記バラの芳香蒸留水は、ダマスクローズの芳香蒸留水とモダンローズの芳香蒸留水が、1:2〜2:1の比率のものであることを特徴とする請求項1に記載のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料を製造する製造方法であって、
ジュニパーベリーの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
バラの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
ラベンダーの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
コリアンダーシードの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
カルダモンの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水の量と、前記バラの芳香蒸留水及び前記ラベンダーの芳香蒸留水の合計量と、の混合比率が、前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水の量に対して前記バラの芳香蒸留水及び前記ラベンダーの芳香蒸留水の合計量が、1.5〜4倍量であり、前記バラの芳香蒸留水と前記ラベンダーの芳香蒸留水の混合比率が、前記ラベンダーの芳香蒸留水の量に対し前記バラの芳香蒸留水の量が1.5〜3倍量であるように前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水、前記バラの芳香蒸留水、及び前記ラベンダーの芳香蒸留水を合する段階と、
前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水、前記バラの芳香蒸留水、及び前記ラベンダーの芳香蒸留水の合計量と、前記コリアンダーシードの芳香蒸留水及び前記カルダモンの芳香蒸留水の合計量と、の混合比率が、前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水、前記バラの芳香蒸留水、及び前記ラベンダーの芳香蒸留水の合計量に対して、前記コリアンダーシードの芳香蒸留水及び前記カルダモンの芳香蒸留水の合計量が、0.5〜1.5倍量であり、前記コリアンダーシードの芳香蒸留水と前記カルダモンの芳香蒸留水の混合比率が、1:2〜2:1の比率となるように前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水、前記バラの芳香蒸留水、前記ラベンダーの芳香蒸留水、前記コリアンダーシードの芳香蒸留水、及び前記カルダモンの芳香蒸留水を混合する段階と、
を有することを特徴とするアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造方法。
【請求項4】
前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水を調製する段階は、粉砕したジュニパーベリーを銅製の蒸留器を用いてスチーム蒸留する段階を有することを特徴とする請求項に記載のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
前記バラの芳香蒸留水を調製する段階は、ダマスクローズの芳香蒸留水を調製する段階とモダンローズの芳香蒸留水を調製する段階とを有し、
前記ダマスクローズの芳香蒸留水を調製する段階は、ダマスクローズの花弁を銅製の蒸留器を用いてハイドロ蒸留する段階を有し、
前記モダンローズの芳香蒸留水を調製する段階は、モダンローズの花弁を銅製の蒸留器を用いてハイドロ蒸留する段階を有することを特徴とする請求項に記載のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
前記ラベンダーの芳香蒸留水を調製する段階は、ラベンダーの花穂を陶磁器製の蒸留器を用いてスチーム蒸留する段階を有することを特徴とする請求項に記載のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
前記コリアンダーシードの芳香蒸留水を調製する段階は、乾燥したコリアンダーシードを銅製の蒸留器を用いてハイドロ蒸留する段階を有することを特徴とする請求項に記載のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造方法。
【請求項8】
前記カルダモンの芳香蒸留水を調製する段階は、乾燥したカルダモンの種子を銅製の蒸留器を用いてハイドロ蒸留する段階を有することを特徴とする請求項に記載のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール含有量が0.00%でありながら、芳醇なジンの香りとアルコール感を有するジンテイストノンアルコール飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジンは、ベースのスピリッツにジュニパーベリーを含むボタニカルを数種加えて作られた酒で、ボタニカルな香りとすっきりとした味わいから、女性、男性、年代を問わず飲みやすい酒として親しまれている。
またジンは、熱病対策のための利尿作用のある薬用酒としてその役目をスタートさせており、香りやアルコールによりリラックスさせる効果に加え、利尿作用、健胃剤、解熱作用があることでも知られている。
【0003】
一方、近年の健康志向の高まりや飲酒運転に対する罰則の強化などから、ノンアルコールのアルコールテイスト飲料に対する需要が高まっているが、芳醇なジンの香りとアルコール感を有し、ジンの独特の切れ味や口に広がる香りを有するジンテイストノンアルコール飲料については未だ実現されていない。
【0004】
ノンアルコール飲料にアルコール感を持たせる方法としては、アルコール飲料を蒸留してアルコール飲料の脱アルコールエキスを使用して当該アルコール飲料特有の風味を持たせようとする方法(例えば特許文献1参照)、2−メチル−1−プロパノールや3−メチル−1−ブタノールといった脂肪族アルコールとクワシン、ナリンジン、イソα酸、カフェインといった苦味付与物質を使用する方法(例えば特許文献2参照)などが開示されている。
【0005】
しかしながら、上記の方法をジンテイストノンアルコール飲料に適用しても、ジンの深みのある香り、ジン独特の切れ味あるアルコール感や口に広がる複雑で奥深い植物の香りが再現できず、ジンテイストのノンアルコール飲料としては物足りないものとなってしまい、満足のいくノンアルコールジンテイスト飲料とはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−042751号公報
【特許文献2】特開2012−060975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、ジンの深みのある香り、ジン独特の切れ味あるアルコール感と口に広がる複雑で奥深い植物の香りを再現したアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術では、アルコールテイストのノンアルコール飲料のアルコール感を出すために、微量のアルコール成分を含ませるものが多かったが、本発明者は、ボタニカルの芳香蒸留水のみでアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料ができないものかと鋭意検討の結果、ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水、ラベンダーの芳香蒸留水、コリアンダーシードの芳香蒸留水、及びカルダモンの芳香蒸留水からなり、バラの芳香蒸留水とラベンダーの芳香蒸留水の混合比率が、ラベンダーの芳香蒸留水の量に対しバラの芳香蒸留水の量が、1.5〜3倍量であり、ジュニパーベリーの芳香蒸留水の量と、バラの芳香蒸留水及びラベンダーの芳香蒸留水の合計量と、の混合比率が、ジュニパーベリーの芳香蒸留水の量に対してバラの芳香蒸留水及びラベンダーの芳香蒸留水の合計量が、1.5〜4倍量の芳香蒸留水によりジンの深みのある香りと味を再現し、
これに、コリアンダーシードの芳香蒸留水とカルダモンの芳香蒸留水との混合比率が、1:2〜2:1の比率であり、ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水及びラベンダーの芳香蒸留水の合計量と、コリアンダーシードの芳香蒸留水及びカルダモンの芳香蒸留水の合計量と、の混合比率が、ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水及びラベンダーの芳香蒸留水の合計量に対して、コリアンダーシードの芳香蒸留水及びカルダモンの芳香蒸留水の合計量が、0.5〜1.5倍量であるカルダモンとコリアンダーシードの芳香蒸留水を加えることにより、ジュニパーベリーとバラとラベンダーの芳香蒸留水の微妙な苦みに刺激感が加わりジン独特の切れ味あるアルコール感を醸し出すことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料は、バラの芳香蒸留水とラベンダーの芳香蒸留水の混合比率は、ラベンダーの芳香蒸留水の量に対しバラの芳香蒸留水の量が1.5〜3倍量であることが好ましい。
【0010】
前記コリアンダーシードの芳香蒸留水とカルダモンの芳香蒸留水の混合比率は、1:2〜2:1の比率であることを特徴とする。
【0011】
前記バラの芳香蒸留水は、ダマスクローズの芳香蒸留水とモダンローズの芳香蒸留水が1:2〜2:1の比率のものであることが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造方法は、ジュニパーベリーの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
バラの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
ラベンダーの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
コリアンダーシードの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
カルダモンの芳香蒸留水を調製し熟成する段階と、
ジュニパーベリーの芳香蒸留水の量と、バラの芳香蒸留水及びラベンダーの芳香蒸留水の合計量と、の混合比率が、ジュニパーベリーの芳香蒸留水の量に対してバラの芳香蒸留水及びラベンダーの芳香蒸留水の合計量が、1.5〜4倍量であり、バラの芳香蒸留水とラベンダーの芳香蒸留水の混合比率が、ラベンダーの芳香蒸留水の量に対しバラの芳香蒸留水の量が1.5〜3倍量であるようにジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水、及びラベンダーの芳香蒸留水を合する段階と、
ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水、及びラベンダーの芳香蒸留水の合計量と、コリアンダーシードの芳香蒸留水及びカルダモンの芳香蒸留水の合計量と、の混合比率が、ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水、及びラベンダーの芳香蒸留水の合計量に対して、コリアンダーシードの芳香蒸留水及びカルダモンの芳香蒸留水の合計量が、0.5〜1.5倍量であり、コリアンダーシードの芳香蒸留水とカルダモンの芳香蒸留水の混合比率が、1:2〜2:1の比率となるようにジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水、ラベンダーの芳香蒸留水、コリアンダーシードの芳香蒸留水、及びカルダモンの芳香蒸留水を混合する段階と、
を有することを特徴とする。
【0013】
前記ジュニパーベリーの芳香蒸留水を調製する段階は、粉砕したジュニパーベリーを銅製の蒸留器を用いてスチーム蒸留する段階を有することが好ましい。
【0014】
前記バラの芳香蒸留水を調製する段階は、ダマスクローズの芳香蒸留水を調製する段階とモダンローズの芳香蒸留水を調製する段階とを有し、前記ダマスクローズの芳香蒸留水を調製する段階は、ダマスクローズの花弁を銅製の蒸留器を用いてハイドロ蒸留する段階を有し、前記モダンローズの芳香蒸留水を調製する段階は、モダンローズの花弁を銅製の蒸留器を用いてハイドロ蒸留する段階を有することが好ましい。
【0015】
前記ラベンダーの芳香蒸留水を調製する段階は、ラベンダーの花穂を陶磁器製の蒸留器を用いてスチーム蒸留する段階を有することが好ましく、前記コリアンダーシードの芳香蒸留水を調製する段階は、乾燥したコリアンダーシードを銅製の蒸留器を用いてハイドロ蒸留する段階を有することが好ましく、前記カルダモンの芳香蒸留水を調製する段階は、乾燥したカルダモンの種子を銅製の蒸留器を用いてハイドロ蒸留する段階を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料によれば、ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水、ラベンダーの芳香蒸留水、カルダモンの芳香蒸留水、コリアンダーシードの芳香蒸留水の5種のボタニカルの蒸留水を組み合わせることで、未だ実現されていなかった、芳醇なジンの香り、ジンの独特の切れ味のあるアルコール感、口に広がる複雑で奥深い植物の香りのジンテイストのアルコール含量0.00%のノンアルコール飲料を味わうことができる。
また、ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水、ラベンダーの芳香蒸留水、カルダモンの芳香蒸留水、コリアンダーシードの芳香蒸留水の5種のボタニカルの蒸留水は、いずれも抗酸化作用を有するため変質速度が遅く、賞味期限の長いジンテイストノンアルコール飲料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造方法を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料を実施するための形態の具体例を詳細に説明する。
本発明は、ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水、ラベンダーの芳香蒸留水、カルダモンの芳香蒸留水、コリアンダーシードの芳香蒸留水の5種のボタニカルの蒸留水を組み合わせることで、芳醇なジンの香り、ジンの独特の切れ味のあるアルコール感、口に広がる複雑で奥深い植物の香りを有するジンテイストのアルコール含量0.00%のノンアルコール飲料としたものである。
【0019】
ジンテイスト飲料の香と味のベースとなる芳香蒸留水は、ジュニパーベリーの芳香蒸留水である。
ジュニパーベリーは、ジュニパーという樹木の果実である。ジュニパーは北半球の各地に広く分布するヒノキ科の常緑樹で、小さな黄色の花を咲かせた後には、最初青色で熟すと黒っぽく変化する果実を実らせる。ジュニパーベリーの芳香蒸留水(フローラルウォーター)は、この果実を粉砕し、乾燥させてから蒸留することで得られる。
ジュニパーベリーの芳香蒸留水の香りは、深く静かな森の木々を思わせるウッディーで爽やかな香りが特徴である。また、その味は、ベリー系特有の甘酸っぱさはなくさわやかなパイナップルに近いフルーティさを有し、加えてハーバルな強い香りと程よい苦味と若干のスパイシーさがあり、ジン独特の味わいを醸し出す味である。
本実施形態のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料において、ジュニパーベリーの芳香蒸留水の製造に用いるジュニパーベリーは、マケドニア産又はイタリア産のジュニパーベリーであることが、飲料のフルーティさがより際立つので好ましい。
【0020】
ジュニパーベリーの芳香蒸留水はジン独特の香りと風味を有するが、これのみでは、香りにも味わいにも重厚感や奥行きがなく、ジンテイスト飲料としてはボディ感が不足している。香りや味わいに重厚感や奥行きを加えるには、香りや味に単純でない複雑さを持たせることが必要である。
発明者は、ジュニパーベリーの香りや味にバラとラベンダーの香りや味を適当な比率で組み合わせることにより、ジュニパーベリーの香りや味に重厚感や奥行きが加えられることを見出した。
【0021】
バラの芳香蒸留水は、ローズウォーターと呼ばれ、バラの香りづけや美肌効果からせっけんや化粧水等の化粧品に多用されるが、他のボタニカルの芳香蒸留水と組み合わせると、組み合わせたボタニカルの香りや味を引き立たせ、ボディ感を与える効果を有する。
一方、ラベンダーは、その香りが精神を安定させリラックスさせる効果からハーブとして多用されるボタニカルであり、ラベンダーの芳香蒸留水もバラの芳香蒸留水と同様に、他のボタニカルの芳香蒸留水と組み合わせると、組み合わせたボタニカルの香りや味を引き立たせ、ボディ感を与える効果を有する。特にラベンダーの香りは、ジュニパーベリーの香りを引き立たせ、複雑で奥深い植物の香りとすることに役立つ。
【0022】
ジュニパーベリーの芳香蒸留水に対するバラの芳香蒸留水及びラベンダーの芳香蒸留水の混合比率は、ジュニパーベリーの芳香蒸留水の量に対しバラの芳香蒸留水とラベンダーの芳香蒸留水の合計量が1.5〜4倍量であることが好ましい。
バラの芳香蒸留水とラベンダーの芳香蒸留水の合計量がジュニパーベリーの芳香蒸留水の量に対し1.5倍量より少ないと、ジュニパーベリーの香りと味に十分なボディ感を付与することができず、4倍量より多いとジュニパーベリーの香りと味を弱めてしまいジン風味を弱めてしまうことになる。
【0023】
バラの芳香蒸留水とラベンダーの芳香蒸留水の混合比率は、ラベンダーの芳香蒸留水の量に対しバラの芳香蒸留水の量が1.5〜3倍量であることが好ましい。
バラの芳香蒸留水の香りや味のインパクトは、ラベンダーの芳香蒸留水のそれと比べてやや弱く、ラベンダーの芳香蒸留水の量に対してバラの芳香蒸留水の量が1.5倍量より少ないとジュニパーベリーの香りと味に十分なボディ感を付与することができず、3倍量より多いとラベンダーの香りが弱まり、ジュニパーベリーの香りが引き立たなくなりジン風味を弱めてしまう。
【0024】
バラの芳香蒸留水は、バラの品種によって香りや味が若干異なり、他のボタニカルの芳香蒸留水と組み合わせた時の効果も異なってくる。本実施形態のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料に用いるバラの芳香蒸留水は、ダマスクローズの芳香蒸留水とモダンローズの芳香蒸留水とを組み合わせて用いることが好ましい。
ダマスクローズは、バラの中でも特に香り高いといわれている品種であり、バラ特有の濃厚な甘い香りが特徴的であり、モダンローズは、西洋バラと東洋バラが交配されることによってダマスクローズの芳香に紅茶のようなティー系の香りが加わったものである。この2種の芳香蒸留水を組み合わせることにより、ジンテイストノンアルコール飲料の香りと味の両方にバランスよくボディ感を付与することができる。
ダマスクローズの芳香蒸留水とモダンローズの芳香蒸留水の混合比率は、1:2〜2:1の比率であることが好ましく、どちらかが過度に多すぎるとジュニパーベリーの香りと味の両方にバランスよくボディ感を付与することが難しくなる。
また、更に好ましくはダマスクローズの中でもゴルムハマディを用いた芳香蒸留水は、特に強いバラの香りを有し、ジュニパーベリーの芳香蒸留水と組み合わせることでジュニパーベリーのハーバルな香りにより重厚感と奥行きを与える。
一方、モダンローズの中では、オーバーナイトセンセーションの芳香蒸留水が、それ自体はさわやかなバラの味であるが、ジュニパーベリーの芳香蒸留水と組み合わせることで熟成したバナナの味に近いものとなり、ジンテイストノンアルコール飲料の味に深みを与えるので好ましい。
【0025】
本発明において、アルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料にアルコールの刺激感を付与する役目を果たすのは、コリアンダーシードの芳香蒸留水とカルダモンの芳香蒸留水である。
コリアンダーシードは、コリアンダー(コエンドロ)の果実で、この果実が種子のように見えることからコリアンダーシードと呼ばれている。コリアンダーはセリ科の一年草で、中国や東南アジア、中南米で食用として使用され、タイではパクチー、中国では香菜と言われる。
コリアンダーシードの芳香蒸留水は、柑橘系のような印象の香りで、仄かにウッディーさやスパイシーさを含んだ温かい香りである。その味は、日本ではカレー粉に欠かせないスパイスとして知られ、香り味ともにスパイシーさが強いが、ほのかに柑橘系の香りがして甘みもあり、ややフルーティーさもあり爽やかである。
【0026】
カルダモンは、インド、スリランカ、マレー半島を原産とするショウガ科の多年草で、根茎から数本茎を出して高さ3mほどの灌木となり、花をつけた後には緑色の実をつけ、実の中には香りのいい黒っぽい種子が多数含まれている。カルダモンの芳香蒸留水に用いるのは、このカルダモンの乾燥した種子である。
カルダモンの芳香蒸留水は、レモンやユーカリ、樟脳の香りが入り混じったような樹脂系の爽やかで上品な香りがあり、その味は、辛みは感じるが舌にぴりっとくる感じではなく、さわやかでスパイシーな味わいである。
【0027】
ジュニパーベリーの芳香蒸留水、バラの芳香蒸留水及びラベンダーの芳香蒸留水の合計量と、コリアンダーシードの芳香蒸留水とカルダモンの芳香蒸留水の合計量の混合比率は、ジュニパーベリー、バラ、ラベンダーの芳香蒸留水の合計量に対し0.5〜1.5倍量であることが好ましい。
ジュニパーベリー、バラ、ラベンダーの芳香蒸留水の合計量に対して、コリアンダーシードとカルダモンの芳香蒸留水の合計量が0.5倍量より少ないと、香りや味に刺激感が乏しくなりアルコール感が不足し、1.5倍量よりも多くなると刺激感が強くなりすぎて味の重厚感や奥行きが乏しくなり、トータルとしてアルコール感が不足してくる。
コリアンダーシードの芳香蒸留水とカルダモンの芳香蒸留水の混合比率は、1:2〜2:1の比率であることが好ましく、どちらかが過度に多すぎるとジュニパーベリーの香りと味の両方にバランスよくアルコール感を付与することが難しくなる。
【0028】
本発明のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造には、ジュニパーベリー、バラ、ラベンダー、コリアンダーシード及びカルダモンの芳香蒸留水をそれぞれ個別に調製し、それを混ぜ合わせることで製造する。
ボタニカルの芳香蒸留水を作るための蒸留法には、ボタニカルの下から水蒸気を当てて蒸留するスチーム蒸留法と、加熱水中にボタニカルを浸漬させて蒸留するハイドロ蒸留法があり、蒸留に用いる蒸留器は、銅製や陶磁器製の蒸留器が用いられる。
ボタニカルの芳香蒸留水の製造においては、蒸留の方法や蒸留器の材質により香りや味が異なるため、用途及びボタニカルの種類に応じて蒸留の方法や蒸留器の材質を選定する必要がある。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係るアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料の製造方法を説明するためのフロー図である。図1を参照して、本発明のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料を構成する各ボタニカルの芳香蒸留水の製造方法について説明する。
【0030】
ボタニカルの芳香蒸留水の製造は、ボタニカルの蒸留により行われ、その蒸留方法には、容器中にボタニカルと水を投入し蒸留するハイドロ蒸留法と、ボタニカルが直接水の中に入らないようにしてスチームを吹きかけて蒸留するスチーム蒸留の2種類に分けられる。
2種類の蒸留法は、ボタニカルの種類、芳香蒸留水の用途等に応じて使い分けられます。
ハイドロ蒸留法における加熱温度は、通常80〜99℃であるが、ボタニカルの種類によっては、この温度ではボタニカルの芳香成分を芳香蒸留水中に効果的に取り込めない場合がある。
【0031】
芳香蒸留水の製造に用いる蒸留器の材質は、芳香蒸留水の味や香りに影響を与える。銅製の蒸留器を用いて蒸留したボタニカルの芳香蒸留水は、容器から湧出する銅イオンの働きにより、ステンレス製やガラス製の蒸留器を用いたものに比べ、青臭い植物臭が抑えられ、ボタニカル固有の香りを強くする。
陶磁器製の蒸留器は、銅製の蒸留器とは逆に引き立ちすぎるボタニカル固有の香りをマイルドにする効果がある。蒸留器の材質は、ボタニカルの種類、芳香蒸留水の用途に応じて選定される。
【0032】
ジュニパーベリーの芳香蒸留水は、銅製の蒸留器を用い、乾燥して粉砕した果実をスチーム蒸留法で蒸留することが好ましい。ジュニパーベリーの乾燥果実をそのままスチーム蒸留してもジュニパーベリーの芳香成分を蒸留水中に効果的に捕捉できないため、粉砕してスチーム蒸留にかけることが好ましい。また、ジュニパーベリーを銅製の蒸留器を用いてスチーム蒸留することにより、力強くすっきりとした香りと味のジュニパーベリーの芳香蒸留水が得られるので好ましい。
スチーム蒸留により、レシーバー上部に精油(エッセンシャルオイル)が浮き、下部に芳香蒸留水が溜まり、浮いた精油分をデカンテーションにより除去してジュニパーベリーの芳香蒸留水が得られる。
【0033】
バラの芳香蒸留水は、銅製の蒸留器を用い、バラの花弁を通常よりやや低温の60〜85℃のハイドロ蒸留法で蒸留することが好ましい。バラの芳香蒸留水の製造においては、スチーム蒸留法や通常のハイドロ蒸留の加熱温度では、バラの芳香成分を蒸留水中に効果的に捕捉できないため、スチーム蒸留法や通常の加熱温度のハイドロ蒸留法で製造した芳香蒸留水では、ジンテイストノンアルコール飲料にボディ感を付与する効果が低下し好ましくない。
ハイドロ蒸留により、レシーバー上部に精油分が浮き、下部に芳香蒸留水が溜まるが、浮いた精油分はデカンテーションにより除去してバラの芳香蒸留水を得る。
バラの芳香蒸留水の製造方法において、 ダマスクローズの芳香蒸留水とモダンローズの芳香蒸留水の製造方法に格別の差異はない。
【0034】
ラベンダーの芳香蒸留水は、陶磁器製の蒸留器を用いて花穂をスチーム蒸留することで製造するのが好ましい。ラベンダーの花穂をハイドロ蒸留法で調製すると、苦みの強い味となるので好ましくない。また、銅製の蒸留器を用いると香りが立ちすぎる芳香蒸留水となり、本実施形態のジンテイストノンアルコール飲料には好ましくない。
スチーム蒸留により、レシーバー上部に精油分が浮き、下部に芳香蒸留水が溜まるが、浮いた精油分はデカンテーションにより除去してラベンダーの芳香蒸留水を得る。
【0035】
コリアンダーシードとカルダモンの芳香蒸留水は、いずれも銅製の蒸留器を用い、乾燥した果実や種子を通常温度のハイドロ蒸留法で蒸留することが好ましい。銅製の蒸留器を用いることにより香りや味に力強さが加わり刺激性を高めることができる。
ハイドロ蒸留により、レシーバー上部に精油分が浮き、下部に芳香蒸留水が溜まるが、浮いた精油分はデカンテーションにより除去してコリアンダーシード及びカルダモンの芳香蒸留水を得る。
【0036】
各ボタニカルの芳香蒸留水は、適当な期間常温で熟成させることが好ましい。熟成させることにより、味がマイルドで深みのあるものとなり、本発明のジンテイストノンアルコール飲料に好ましいものとなる。
各ボタニカルの芳香蒸留水の混合方法に特に制限はないが、ジュニパーベリーの芳香蒸留水にバラの芳香蒸留水を混合する段階、この混合物にラベンダーの芳香蒸留水を混合する段階、更に、コリアンダーシード及びカルダモンの芳香蒸留水を混合する段階の3段階に分けて混合するのが好ましい。
各ボタニカルの芳香蒸留水は、製造ロットにより味や香りに微妙な差異を生じるため、混合を3段階に分け各段階ごとに味と香りを確認し最適な味と香りとなるように各ボタニカルの芳香蒸留水の混合量を調整しながら製造することが好ましい。
特に3段階目のコリアンダーシード及びカルダモンの芳香蒸留水を混合する段階は、更にコリアンダーシード及びカルダモンの芳香蒸留水の量を分割して混合して、最適なアルコール感となるように混合することが好ましい。
【0037】
また、本発明のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料を構成するボタニカルの芳香蒸留水は、抗酸化作用や抗菌作用を有する成分、ジュニパーベリーにはα−ピネン、バラにはシトロネロール、ラベンダー、コリアンダーシード、カルダモンにはリナロールを含んでいるので、本発明のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料は、酸化防止剤等の保存料の添加を要せず、保存料なしの冷蔵で1年の長期の賞味期限とすることが可能である。
【0038】
以上説明したように、本発明のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料は、アルコール含有量が0.00%でありながら、芳醇なジンの香りとアルコール感を有するので、アルコールで酔うことなく香りと味を楽しみながらリラックスすることができる。
また、本発明のアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料は、無色透明でドライな味わいであり、炭酸水や果汁等のエキスと組み合わせて多様な飲み方で楽しむことができる。
図1