特許第6811861号(P6811861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6811861液化ガス燃料供給システム及び液化ガスを動力源とする内燃機関のパワープラントを作動させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811861
(24)【登録日】2020年12月17日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】液化ガス燃料供給システム及び液化ガスを動力源とする内燃機関のパワープラントを作動させる方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20201228BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20201228BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20201228BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20201228BHJP
   F17C 13/04 20060101ALI20201228BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   F02M21/02 301A
   F02B43/00 A
   F02M21/02 M
   B63B25/16 D
   B63B25/16 Z
   F17C13/00 302D
   F17C13/04
   F02D19/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-525793(P2019-525793)
(86)(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公表番号】特表2020-513493(P2020-513493A)
(43)【公表日】2020年5月14日
(86)【国際出願番号】FI2016050804
(87)【国際公開番号】WO2018091764
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】503129903
【氏名又は名称】ワルトシラ フィンランド オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ヘグナバ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ゾリャ,ピエロ
(72)【発明者】
【氏名】ラウノネン,フランス
(72)【発明者】
【氏名】ボアロ,ルカ
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−145243(JP,A)
【文献】 特開平07−119855(JP,A)
【文献】 特表2015−532237(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0041127(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0052886(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0276627(US,A1)
【文献】 特開2015−127510(JP,A)
【文献】 特開2013−193503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02 − 21/06
F02D 19/02
F17C 13/00
B63H 21/00 − 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス燃料供給システムであって、
液化ガスと気体ガスとを低温環境で貯蔵するように構成された液化ガス容器と、
前記液化ガス容器のアレージ空間に開口した第1の燃料通路と、
前記液化ガス容器の底部に開口し、制御可能なポンプを備えた第2の燃料通路と、
各々が少なくとも2つのガスコンシューマのうち1つのガスコンシューマにガスを輸送するように構成された少なくとも2つの燃料送出通路とを有し、
前記液化ガス燃料供給システムは、
前記第1の燃料通路又は前記第2の燃料通路を、前記少なくとも2つの燃料送出通路の各々に接続するように構成されたバルブアセンブリを有し、
前記ガスコンシューマはパワープラントの内燃ピストンエンジンであり、前記液化ガス燃料供給システムは制御ユニットを有し、該制御ユニットは、前記液化ガス容器内の圧力を検出し、前記パワープラントの作動中のエンジンの燃料圧力要求を検出し、前記液化ガス容器内の圧力が前記エンジンの燃料圧力要求より高いとき、前記液化ガス容器から前記エンジンに気体ガスを供給し、前記液化ガス容器内の圧力が前記エンジンの燃料圧力要求より低いとき、液化ガスの流れ速度をポンプに供給し、前記液化ガスの圧力を前記ポンプにおける燃料圧力要求に昇圧し、液化ガスを気化し、気化したガスを前記エンジンに供給する命令を含み、前記命令を反復して、前記パワープラントで作動しているエンジンの各々に適用することを特徴とする、
液化ガス燃料供給システム。
【請求項2】
前記バルブアセンブリは、複数の第1の分岐通路を備えた第1の分岐マニホルドを備えた第1の燃料通路を有し、前記第1の分岐通路は互いに平行に構成され、前記第2の燃料通路は、複数の第2の分岐通路を備える第2の分岐マニホルドを備え、前記第2の分岐通路は互いに平行に構成され、各第1の分岐通路と各第2の分岐通路とは互いに接続され、さらに各燃料送出通路に接続され、前記燃料送出通路は前記第1の分岐通路又は前記第2の分岐通路のいずれかに3ウェイバルブにより選択的に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の液化ガス燃料供給システム。
【請求項3】
前記バルブアセンブリは、複数の第1の分岐通路を備えた第1の分岐マニホルドを備えた第1の燃料通路を有し、前記第1の分岐通路は互いに平行に構成され、前記第1の分岐通路の各々はバルブを備え、前記第2の燃料通路は、複数の第2の分岐通路を備える第2の分岐マニホルドを備え、前記第2の分岐通路は互いに平行に構成され、前記第2の分岐通路の各々はバルブを備え、各第1の分岐通路と、各第2の分岐通路とは互いに接続され、更に各燃料送出通路に接続される、請求項1に記載の液化ガス燃料供給システム。
【請求項4】
前記液化ガス燃料供給システムは、前記少なくとも2つのガスコンシューマの各々の圧力要求情報を受け取る実行可能命令を含む制御ユニットを備え、前記制御ユニットは、前記圧力要求情報に基づいて、前記少なくとも2つの燃料送出通路の各々に、前記第1の燃料通路又は前記第2の燃料通路を接続する命令を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の液化ガス燃料供給システム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記第2の燃料通路内のガス圧力を、バルブアセンブリに接続されたガスコンシューマの所用燃料圧力値の最大値に維持するように、前記ポンプを制御する実行可能命令を有する、請求項4に記載の液化ガス燃料供給システム。
【請求項6】
液化ガスを動力源とする内燃機関エンジンのパワープラントを作動させる方法であって、
a)液化ガス及び気体ガスとしてガス容器に燃料を貯蔵することと、
b)前記ガス容器内の圧力を検出することと、
c)前記パワープラントの作動中のエンジンの燃料圧力要求を検出することと、
d)前記ガス容器内の圧力がエンジンの燃料圧力要求よりも高い場合、前記ガス容器から前記ガス容器のアレージ空間に開口した第1の燃料通路を介して前記エンジンに、気体ガスを供給することと、
e)前記ガス容器内の圧力が前記エンジンの燃料圧力要求よりも低い場合、前記ガス容器の底部に開口する第2の燃料通路を介してある流量の液化ガスをポンプに供給し、液化ガスの圧力を少なくとも前記ポンプにおける燃料圧力要求に等しい圧力まで上昇させ、液化ガスを気化し、気化したガスをエンジンに供給することと、
f)前記パワープラントで稼動するエンジンの各々に対して、少なくともステップc)、d)およびe)を繰り返すこととを含み、
前記少なくとも2つのエンジンの各々の圧力要求情報を取得し、前記第1の燃料通路または前記第2の燃料通路を、それぞれの圧力要求情報に基づいて、前記少なくとも2つの燃料供給通路の各々に接続する、
方法。
【請求項7】
前記第2の燃料通路内のガス圧力を、エンジンの所要燃料圧力値の最大値に維持するように前記ポンプを制御することを特徴とする、
請求項に記載の内燃機関エンジンのパワープラントを作動させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に係る1液化ガス燃料供給システムに関する。発明は独立方法クレームに記載された方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
船舶その他の移動式パワープラントにおける原動機燃料としての液化ガスには、益々関心が高まっているが、一方、環境問題特に排出ガスの重要性が増している。
【0003】
特許文献1は、船舶におけるガス駆動ピストンエンジン用の燃料システムの例を開示している。ガスは液化ガスとして船舶内の少なくとも1つの燃料貯蔵タンクに貯蔵される。燃料供給システムは、ガスが液相で高圧になっている別個の燃料供給タンクを備える。このガスは燃料貯蔵タンクにおいて液相でもあるが、液化ガスによって生じる静水圧のみが優勢である(prevail)。
【0004】
上記文献から分かるように、液化ガスは、一般的には極低温で貯蔵され、例えば周囲からの熱伝導により、ガスの一部がいわゆるボイルオフガス(boil off gas)として気化する。
【0005】
ガス燃料を燃焼するように構成されたガス駆動ガスコンシューマは、ガスコンシューマに導入されるガスの圧力に関して、実質的に常に幾つかの要求を有している。したがって、圧力を制御する必要がある。
【0006】
例えば、特許文献2には、圧力上昇システムの熱交換器内の液化ガスの気化を制御することによって、タンク内の圧力を制御する圧力上昇システムが示されている。燃料は、タンクの底部から液体燃料として取り出され、燃料は気化させてガスにしてからエンジンに供給される。
【0007】
特許文献3は、燃料ガス供給システムを開示している。燃料ガス供給システムは、液化ガス及び液化ガスのボイルオフガスを貯蔵する貯蔵タンクと、貯蔵タンクから供給されるボイルオフガスを圧縮する圧縮ユニットと、貯蔵タンクから供給される液化ガスを加圧する第1のポンプと、加圧された液化ガスを気化させる気化器と、貯蔵タンクに貯蔵されたボイルオフガスを、圧縮ユニットを介してエンジンに供給する第1の供給ラインと、第1の供給ラインの圧縮ユニットの後端にある貯蔵タンクに貯蔵されるボイルオフガスを第1のポンプ及び気化器を介して接続する第2の供給ラインと、エンジンに供給されるボイルオフガスの圧力又は量を測定する測定ユニットと、測定値に基づいて第1のポンプ及び気化器を制御し、第2の供給ラインを介して液化ガスを供給する制御ユニットとを備える。
【0008】
本発明の目的は、新しい液化ガス燃料供給システムと、液化ガスを動力源とする内燃機関のパワープラントを作動させる方法を提供することであり、これは従来技術の解決法と比較して大幅に改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第2032428B1号
【特許文献2】欧州特許第2032428B1号
【特許文献3】国際出願公開第WO2016163666A1号
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、独立請求項及び本発明の様々な実施形態より詳細に記述するその他の請求項に開示されるように、実質的に満たすことができる。
【0011】
本発明の一実施形態では、液化ガス燃料供給システムであって、液化ガスと気体ガスとを低温環境で貯蔵するように構成された液化ガス容器と、前記ガス容器のアレージ空間に開口した第1の燃料通路と、前記ガス容器の底部に開口し、制御可能なポンプを備えた第2の燃料通路と、各々が少なくとも2つのガスコンシューマの1つのガスコンシューマにガスを輸送するように構成された少なくとも2つの燃料送出通路と、前記第1の燃料通路又は前記第2の燃料通路を、前記少なくとも2つの燃料送出通路の各々に接続するように構成されたバルブアセンブリとを有する。
【0012】
これにより、ガス容器における自然ボイルオフガスの発生を有効に利用し、燃料供給システムを効率的に作動させることができる。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記バルブアセンブリは、複数の第1の分岐通路を備えた第1の分岐マニホルドを備えた第1の燃料通路を有し、前記第1の分岐通路は互いに平行に構成され、第2の燃料通路は、複数の第2の分岐通路を備える第2の分岐マニホルドを備え、第2の分岐通路は互いに平行に構成され、各第1の分岐通路と各第2の分岐通路とは互いに接続され、各燃料送出通路に接続され、前記燃料送出通路は、バルブペアにより、第1の分岐通路または第2の分岐通路のいずれかに選択的に接続される。
【0014】
本発明の一実施形態では、バルブアセンブリは、複数の第1の分岐通路を備える第1の分岐マニホルドを備える第1の燃料通路を有し、第1の分岐通路は互いに平行に構成され、第1の分岐通路の各々はバルブを備え、第2の燃料通路は、複数の第2の分岐通路を備える第2の分岐マニホルドを備え、第2の分岐通路は互いに平行に構成され、第2の分岐通路の各々はバルブを備え、各第1の分岐通路と各第2の分岐通路とは互いに接続され、各燃料送出通路に接続される。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記燃料供給システムは、前記少なくとも2つのガスコンシューマの各々の圧力要求情報を受け取る実行可能命令を含む制御ユニットを備え、前記制御ユニットは、前記圧力要求情報に基づいて、前記少なくとも2つの燃料送出通路の各々に、前記第1の燃料通路又は前記第2の燃料通路を接続する命令を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態では、制御ユニットは、第2の燃料通路内のガス圧力を、バルブアセンブリに接続されたガスコンシューマの所要燃料圧力値の最大値に維持するように、ポンプを制御する実行可能命令を有する。
【0017】
本発明の一実施形態では、ガスコンシューマは、様々な負荷で作動可能な内燃エンジンである。前記燃料供給システムは制御ユニットを有し、該制御ユニットは、前記容器内の圧力を検出し、前記パワープラントの作動中のエンジンの燃料圧力要求を検出し、前記容器内の圧力が前記エンジンの燃料圧力要求より高いとき、前記ガス容器から前記エンジンに気体ガスを供給し、前記容器内の圧力が前記エンジンの燃料圧力要求より低いとき、液化ガスの流れ速度をポンプに供給し、前記液化ガスの圧力を前記ポンプにおける燃料圧力要求に昇圧し、液化ガスを気化し、気化したガスを前記エンジンに供給し、前記命令を反復して、前記パワープラントで作動しているエンジンの各々に適用する実行可能命令を有する。
【0018】
液化ガスを動力源とする内燃機関のパワープラントを作動させる方法であって、
a)液化ガス及び気体ガスとしてガス容器に燃料を貯蔵することと、
b)前記容器内の圧力を検出することと、
c)前記パワープラントの作動中のエンジンの燃料圧力要求を検出することと、
d)前記容器内の圧力が前記エンジンの燃料圧力要求より高いとき、前記ガス容器から前記エンジンに気体ガスを供給することと、
e)前記容器内の圧力が前記エンジンの燃料圧力要求より低いとき、液化ガスの流れ速度をポンプに供給し、前記液化ガスの圧力を前記ポンプにおける燃料圧力要求に昇圧し、液化ガスを気化し、気化したガスを前記エンジンに供給することと、
f)前記パワープラントで稼動するエンジンの各々に対して、少なくともステップc)、d)およびe)を繰り返すこととを含む。
【0019】
本発明の一実施形態では、前記少なくとも2つのエンジンの各々の圧力要求情報を取得し、前記第1の燃料通路または前記第2の燃料通路を、それぞれの圧力要求情報に基づいて、前記少なくとも2つの燃料供給通路の各々に接続する。
【0020】
本発明の一実施形態では、第2の燃料通路内のガス圧力を、バルブアセンブリに接続されたエンジンの所要燃料圧力値の最大値に維持するように、ポンプを制御する。
【0021】
以下の有利な効果および利点が、本発明により得られる。まず、本システムでは自然ボイルオフガスを効率的に利用した。低負荷で作動するエンジンは自然ボイルオフガスを利用するので、強制ボイルオフガスをポンプで送り出すのに必要なエネルギーが減少し、および/または実際の需要に基づいて制御することができる。
【0022】
本特許出願において提示される本発明の例示的な実施形態は、添付した特許請求の範囲の適用可能性を制限するものと解釈されるべきではない。動詞「comprise」は、引用されない特徴の存在を排除しないオープンな限定として本特許出願において使用される。従属請求項に記載の特徴は、特に明示的に断らない限り、相互に自由に組み合わせることができる。本発明の特徴と考えられる新規な特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下では、添付した例示的な概略図を参照しつつ本発明を説明する。
図1】本発明の一実施形態による液化ガス燃料供給システムを示す図である。
図2】本発明の一実施形態による、液化ガス燃料供給システム用のバルブアセンブリの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、液化ガス燃料供給システム10の一実施形態を示しており、以下これを燃料供給システムと呼ぶ。燃料供給システム10は、船舶内に組み立てることができるが、陸上パワープラントにも適用可能である。燃料供給システム10は、液化ガス及びガスを、両方とも極低温の状態で、気相で貯蔵するように構成された容器12を備える。特に、使用される燃料は、液化天然ガスであってもよく、一般的には、極低温条件と考えられる約−162℃の温度で容器12に貯蔵される。容器12は、実際のタンク容器12を囲む断熱材13を含む。断熱材は、例えば、容器への過剰な熱伝導と、タンク容器内のLNGの加熱とを防止する二重壁真空断熱であってもよい。一般的には、ガスはタンク容器の中で、一部が、液化ガスとして、タンク12.1の底部に、いわゆる液化ガス空間にあり、一部が、気体ガスとして、上部12.2に、すなわち液化ガス空間の上方の容器のいわゆるアレージ空間(ullage space)にある。
【0025】
容器に断熱材13が設けられていても、一定の速度で熱伝導が起こり、液化ガスが気化する。本明細書では、このようなガスを自然ボイルオフガスNBOGと呼ぶ。気化により、容器内の圧力は増加し、従って、ボイルオフガス(boil of gas)は、容器12内の圧力を利用することによってガスコンシューマ18に運ばれる。この目的のために、燃料供給システム10は、容器12に接続された第1の燃料通路14及び第2の燃料通路16も含む。第1の燃料通路14は、気体ガスが第1の燃料通路14に流れるように、容器12のアレージ空間(ullage space)12.2において開くように構成される。第2の燃料通路16は、液化ガスが第2の燃料通路16内に流れるように、容器の底部12.1において開くように構成される。燃料供給システムは、複数のガスコンシューマ18.1、18.2、...18.Nに燃料を供給するように構成され、そのうちの3つを内燃ピストンエンジンとして示した。このように、ガスコンシューマ(gas consumers)は有利にも内燃ピストンエンジンである。
【0026】
第1の燃料通路14は、エンジン18.1、18.2、...18.Nに供給するのに適した温度まで、極低温ガスを加熱するように構成された第1の熱交換器20を備える。第2の燃料通路16は、容器12から第2の燃料通路16に引き込まれる液化ガスの圧力を増加させるポンプ22を備えている。このようにして、容器12内の圧力は、エンジンの最高圧力需要を満たすレベルに維持される必要はない。
【0027】
また、第2の燃料通路16には、液化ガスを気体状に気化させ、ガスを適当な温度に加熱してエンジン18.1、18.2、...18.Nに供給するように構成された第2の熱交換器24が設けられている。第2の熱交換器は、主気化器と呼ぶことができる。エンジンの作動中に、第2の燃料通路16を介して取得されたガスが連続的に蒸発され、容器12内の液化ガスがエンジン18.1、18.2、...18.Nに供給されるからである。本明細書では、主気化器に供給される気体ガスを、強制ボイルオフガスFBOGと呼ぶ。
【0028】
燃料供給システム10は、バルブアセンブリ26が設けられており、バルブアセンブリ26には、第1の燃料通路14と第2の燃料通路16とがガス燃料源として接続されている。燃料供給システム10は、バルブアセンブリがエンジン18.1、18.2、...18.Nに接続される少なくとも2つの燃料送出通路28.1、28.2、...28.Nを備える。燃料供給システム10では、1つの燃料送出通路28.1のみが1つのエンジン18.1、すなわちガスコンシューマに接続される。従って、燃料送出通路は、エンジン固有ガスライン(engine specific gas line)と呼ぶことができる。バルブアセンブリ26は、代替的に、第1の燃料通路14または第2の燃料通路16を、燃料送出通路28.1、28.2、...28.Nのそれぞれに接続するように構成されている。換言すれば、1つのエンジン固有ガスラインは、一度に、第1の燃料通路14および第2の燃料通路16のうちの1つのみに接続されるが、依然として、一方への接続を、所定の規則に従って選択可能である。
【0029】
図1に示された実施形態によるバルブアセンブリは、以下の方法で実現される。第1の燃料通路14は第1の分岐マニホルド30を備え、これは複数の第1の分岐通路、すなわち、第1の分岐通路の第1の通路31.1、第1の分岐通路の第2の通路31.2などを備える。第1の分岐通路は、自然ボイルオフガス(natural boil off gas)が通路の各々に入るように、互いに平行に構成される。第1の分岐通路の各々は、バルブ34.1、34.2、...34.Nを備えている。第2の燃料通路16には第2の分岐マニホルド36が設けられ、この分岐マニホルドには、複数の第2の分岐通路、すなわち第2の分岐通路の第1の通路32.1、第2の分岐通路の第2の通路32.2など32.Nが設けられている。第2の分岐通路は、強制ボイルオフガス(forced boil off gas)が通路の各々に入るように、互いに平行に構成される。第2の分岐通路の各々は、バルブ38.1、38.2、...38.Nを備えている。バルブアセンブリ26では、各第1の分岐通路31.1、31.2、...31.Nと、各第2の分岐通路32.1、32.2、...32.Nとが互いに接続され、更に各燃料送出通路28.1、28.2、...28.Nに接続される。
【0030】
バルブアセンブリは、自然ボイルオフガス及び強制ボイルオフガスを以下のような一定の方法でエンジンに分配するために使用される。第1の分岐通路と第2の分岐通路との接続は、各ガスコンシューマ18.1...18.Nに対して、(自然ボイルオフガスまたは強制ボイルオフガスである)燃料源を選択することを可能にするバルブの下流にある。第1の分岐通路の第1の通路31.1のバルブ34.1と、第2の分岐通路の第1の通路32.1のバルブ38.1とは、バルブペア34.1−38.1を構成し、その状態は、エンジン18.1が第1の燃料通路14に接続されているか第2の燃料通路16に接続されているか、すなわちエンジン18.1が自然ボイルオフガスを供給されるか又は強制ボイルオフガスを供給されるかを決める。また、バルブペアは、図2に示すように、3ウェイバルブを使用することによって実現することも可能である。
【0031】
図1では、開放バルブは網掛け無し(without fill)で、境界線のみで示した。閉鎖バルブは網掛けしたバルブ記号(solid filled valve symbol)で示した。したがって、図1では、第1のエンジン18.1は、自然ボイルオフガスが流れる第1の燃料通路14に接続され、他のエンジンは、強制ボイルオフガスが流れる第2の燃料通路16に接続される。
【0032】
また、液化ガス燃料供給システムは、制御ユニット40を備えている。制御ユニットは、燃料供給システムのための専用制御ユニットであってもよく、またはガスコンシューマ18の一つまたは全てに共通であってもよい。最初に、制御ユニットは、各ガスコンシューマ、すなわちエンジン18.1、18.2、...18.Nに必要な燃料圧力を指示される。そのために、少なくとも2つのガスコンシューマまたはエンジンのそれぞれの圧力要求情報を受信するように構成される。必要な燃料圧力は、エンジン18.1、18.2、...18.Nの現在の負荷に基づいて選択してもよい。制御ユニット40には、エンジン負荷の関数として必要な燃料圧力を与えるモデルが設けられてもよい。このモデルは、ルックアップテーブルの形式であってもよい。制御ユニット40には、第1の圧力プローブ42によって測定された容器内の現在圧力の指示が与えられる。制御ユニット40は、第2の圧力プローブ44によって測定され伝達されるポンプ22の下流の第2の燃料通路16内の強制ボイルオフガスの現在圧力の指示が与えられる。
【0033】
制御ユニット40には、エンジン18.1、18.2、18.Nの各々の所要燃料圧力に基づいて、バルブペア38.1−34.1、38.2−34.2、38.N−34.Nの各々の状態を決定する実行可能命令を備えている。バルブペアの状態とは、第1の燃料通路14内のバルブ34.1が開いていて、かつ第2の燃料通路16内のバルブ38.1が閉じているか、または第2の燃料通路16内のバルブ38.1が開いていて、かつ第1の燃料通路14内のバルブ34.1が閉じているかのいずれかであることを意味する。エンジンメンバーのいずれかによって要求される最大必要燃料圧力が、容器内で得られない場合には、ポンプ22によって生成される。バルブペア38.1−34.1、38.2−34.2、38.N−34.Nの各々の状態を規定する実行可能命令は、エンジンの所要燃料圧力が容器内の支配的圧力(prevailing pressure)未満であるか否かを判定する命令と、判定の結果が真である場合、第1の燃料通路14内のバルブ34.1が開かれ、第2の燃料通路16内のバルブ38.1が閉じられるようにバルブペアの状態を設定する命令とを含む。そして、命令は、それぞれの判定結果が偽である場合、第1の燃料通路14内のバルブ34.1が閉じられ、第2の燃料通路16内のバルブ38.1が開かれるように、バルブペアの状態を設定するコマンドを含む。したがって、制御ユニットには、それぞれの圧力要求情報に基づいて、第1の燃料通路または第2の燃料通路を少なくとも2つの燃料送出通路の各々に接続する命令が提供される。また制御ユニットは、第2の燃料通路内のガス圧力を、バルブアセンブリ26に接続されたガスコンシューマ18.1、18.2、18.Nの所要燃料圧力値の最大値に維持するように、ポンプ22を制御する実行可能命令を有する。
【0034】
図2には、第1の燃料通路14又は第2の燃料通路16を燃料送出通路28.1、28.2、...28.Nの各々に接続するように構成されたバルブアセンブリ26の一実施形態が示されている。換言すれば、1つのエンジン固有ガスライン28.Nは、一度に、第1の燃料通路14および第2の燃料通路16のうちの1つのみに接続されるが、依然として、一方への接続を、所定の規則に従って選択可能である。
【0035】
バルブアセンブリにおいて、第1の燃料通路14は第1の分岐マニホルド30を備え、第1の分岐マニホルド30は複数の第1の分岐通路、すなわち、第1の分岐通路のうちの第1の通路31.1、第1の分岐通路のうちの第2の通路31.2などを備える。第1の分岐通路は、自然ボイルオフガス(natural boil off gas)が通路の各々に入るように、互いに平行に構成される。第2の燃料通路16には第2の分岐マニホルド36が設けられ、この分岐マニホルドには、複数の第2の分岐通路、すなわち第2の分岐通路のうちの第1の通路32.1、第2の分岐通路のうちの第2の通路32.2など32.Nまでが設けられている。第2の分岐通路は、強制ボイルオフガス(forced boil off gas)が通路の各々に入るように、互いに平行に構成される。
【0036】
第1の分岐通路31.1...31.Nの各々及び第2の分岐通路32.1....32.Nの各々は、3ウェイバルブ35.1、35.2、...35.Nに接続され、この3ウェイバルブは更に、それぞれの燃料送出通路28.1、28.2、...28.Nに接続される。図2では、開放バルブセクション、すなわち開放流方向は、網掛け無しで、境界線のみの記号で示され、閉鎖バルブセクションは、網掛けした記号で示されている。したがって、図1では、第1のエンジン18.1は、自然ボイルオフガスが流れる第1の燃料通路14に接続され、他のエンジンは、強制ボイルオフガスが流れる第2の燃料通路16に接続される。またアクティブ流路も図中の矢印Aで示されている。バルブアセンブリは、図1に関連して説明したように、制御ユニット40の制御下で作動される。
【0037】
本発明を、現時点で最も好ましい実施形態であると考えられるものに関連して例として本明細書中に説明したが、言うまでもなく本発明は開示された実施形態に限定されず、添付した特許請求の範囲に規定したように、本発明の範囲内に含まれるその特徴の組合せまたは修正、および他のいくつかの応用をカバーするものである。そのような組み合わせが技術的に実現可能である場合、上記の任意の実施形態に関連して述べられた詳細は、他の実施形態に関連して使用されてもよい。
図1
図2