特許第6811929号(P6811929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6811929セルロース系粘性組成物及びその製造方法、並びにその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811929
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】セルロース系粘性組成物及びその製造方法、並びにその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/26 20060101AFI20201228BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20201228BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20201228BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20201228BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20201228BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20201228BHJP
   D06M 15/09 20060101ALI20201228BHJP
   D06M 11/76 20060101ALI20201228BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20201228BHJP
   C09D 101/08 20060101ALI20201228BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20201228BHJP
   C09D 11/08 20060101ALI20201228BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20201228BHJP
【FI】
   C08L1/26
   C08K3/26
   C08K5/053
   C08K7/18
   H01M12/06 F
   H01M12/06 G
   H01B1/06 A
   D06M15/09
   D06M11/76
   D06M23/08
   C09D101/08
   C09D7/61
   C09D11/08
   D06M101:40
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-526393(P2018-526393)
(86)(22)【出願日】2017年7月4日
(86)【国際出願番号】JP2017024494
(87)【国際公開番号】WO2018008634
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2020年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-133999(P2016-133999)
(32)【優先日】2016年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-187443(P2016-187443)
(32)【優先日】2016年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-32963(P2017-32963)
(32)【優先日】2017年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-91884(P2017-91884)
(32)【優先日】2017年5月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518228909
【氏名又は名称】古野 伸夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】古野 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】磯邉 清
(72)【発明者】
【氏名】若山 晴香
【審査官】 三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−285611(JP,A)
【文献】 特開平04−266945(JP,A)
【文献】 特開昭54−117558(JP,A)
【文献】 特開2011−006609(JP,A)
【文献】 特開2010−159390(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/152803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸型カルボキシメチルセルロースを炭酸水で洗浄することにより得られる、水分率が40〜80質量%であり、かつ、その含有水のpHが4以下であり二酸化炭素濃度が0.01g/kg以上である酸型カルボキシメチルセルロースの湿潤顆粒と、
(B)炭酸水素アルカリ金属塩および炭酸水素アンモニウム塩よりなる炭酸水素塩群から選ばれる少なくとも1種の炭酸水素塩の粉末を含み、
前者(A):100質量部に対して後者(B):2〜100質量部の比率で混合されたものであり、微細な湿潤綿状外観を呈する湿潤綿状顆粒体であることを特徴とする、貯蔵安定性に優れたセルロース系粘性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のセルロース系粘性組成物を製造する方法であって、前記(A)の酸型カルボキシメチルセルロースとして、アルカリ中和塩型カルボキシメチルセルロースを含む透明な粘稠水溶液を、1〜10質量%の硫酸酸性水に滴下して得られる析出物を水洗および脱水して水分率を40〜80質量%に調整することにより、セルロース分子を構成するグルコース分子同士の絡み合い空間が分散的に内包された湿潤顆粒とし、これを前記(B)の炭酸水素塩の粉末と混合することを特徴とするセルロース系粘性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記(B)の炭酸水素塩として炭酸水素アンモニウム塩を用いたものである請求項1に記載のセルロース系粘性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物から湿潤綿状体の一片を取り出して走査型電子顕微鏡の観察基盤上でほぐし、更に純水を加えてときほぐした後、50〜150℃で加熱乾燥したものを顕微鏡観察すると、10〜1000nmサイズの径を持つ棒状体として、あるいはこの棒状体の内部空間が破裂した跡とみられる溝壁が観察されるものである請求項3に記載のセルロース系粘性組成物。
【請求項5】
前記(A)酸型カルボキシメチルセルロースの湿潤顆粒として、分子内カルボキシ基および/または分子内水酸基に対して脱水縮合可能な(C)多価アルコールおよび/またはエステル交換可能な油脂に含浸された湿潤顆粒を用いる請求項1または3のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物。
【請求項6】
請求項1,3,4,5のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物に、更に顔料などの機能性粒子、炭素粒子、およびカーボンナノチューブ粒子よりなる群から選択される粒子を混合したものであるセルロース系粘性組成物。
【請求項7】
請求項3,4,5のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物の粘稠水溶液を炭素繊維布に塗布・乾燥・架橋硬化させたものを正極とし、金属板を負極とし、媒体、活物質および空気の通過路となるセパレーターを介して、前記正極と前記負極を対向させ、これらが前記セルロース系粘性材料で被覆されていることで電圧及び電流を発生させるものであるセルロース系粘性組成物。
【請求項8】
請求項7に記載した正極、負極、およびセパレーターを構成単位とすることを特徴とする金属空気電池。
【請求項9】
請求項8に記載の構成単位をユニットとし、当該ユニットの複数個を、酸素透過性の通気路を内在する多孔質絶縁体を介して対面的に連結すると共に、隣り合った前記電池ユニット間を前記正極と前記負極の直列配線によって電気的に連結してなることを特徴とする金属空気電池。
【請求項10】
10−3モル/リットル以上のプロトン活量を有する電解質水溶液による湿潤状態としたものである請求項8または9に記載の金属空気電池。
【請求項11】
請求項3,4,5のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物を含浸または塗布したものであることを特徴とする電池用または電子デバイス用のセパレーター。
【請求項12】
請求項1,3,4,5のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物を含浸または塗布したものであることを特徴とする炭素繊維または炭素繊維布。
【請求項13】
請求項1,3,4,5のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物を、ミリサイズ厚みの塗布用に調製したものであることを特徴とする塗料。
【請求項14】
請求項1,3,4,5のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物を、ミクロンサイズ厚みまたはナノサイズ厚みの印刷用に調製したものであることを特徴とするインキ。
【請求項15】
請求項1,3,4,5のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物を、ミクロンサイズ厚みまたはナノサイズ厚みの親水性被膜形成用に調製したものであることを特徴とする表面処理剤。
【請求項16】
請求項3,4,5のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物を架橋硬化させたものであることを特徴とする固体電解質。
【請求項17】
請求項3,4,5のいずれかに記載のセルロース系粘性組成物を卑金属の板もしくは箔に塗布したものであることを特徴とする金属空気電池用素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボキシ基を導入したセルロース〔以下カルボキシセルロース(CaCe)という〕に由来する粘性材料であって、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた透明性に優れたセルロースナノファイバー(CNF)に属するものであり、直径が数10〜数100nmサイズの棒状体〔以下セルロースナノロッド(CeNR)という〕もしくは中空管状体〔以下セルロースナノチューブ(CeNT)という〕が束を成して安定な湿潤綿となり、多くの水分を含有することで成型加工性に優れたものである。また乾燥粉末状でなく湿潤顆粒状であるにも拘わらず、長期保管に際してカビの発生が無いなど、貯蔵安定性に優れた素材として提供することができる。一般的な塗装用塗料や印刷用インクとしての活用が容易になり、更に空気電池の炭素正極用として提供可能な半透膜形成性に優れたセルロース系粘性組成物に関し、更にこれを用いた金属空気電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低炭素社会の構築には無尽蔵のセルロース資源の活用が必要であり、そのためにはセルロースを如何に使い易い汎用性の高い素材形態として提供できるかということが、そもそもの出発点としての重要課題となる。セルロースのような超巨大高分子では、化学反応を円滑に進めるために物理的解砕が必要で、様々な紙パルプを始め、例えばセリッシュ〔(株)ダイセル製:登録商標〕と呼ばれるミクロサイズに解きほぐしたものがあり、近年では、ナノメートルの分子レベルに解砕した透明なCNFが注目されて、セルロースの化学的特性が逐次明らかにされている。
【0003】
高度の物理的解砕には多大なエネルギー消費が必要となるため、膨大にして多様なセルロース資源のすべてに活用することは不可能であり、それ故に化学的処理による解砕も進められている。その一つとしてセルロース構造中にカルボキシ基を導入したCaCeが検討され、そのための具体的手段として、セルロースのCHOH基を酸化してカルボキシ基にする新たな化学的処理方法が示され、本発明者らはこれに啓発されてまずは古典的なCMCの利用を取り上げた。
【0004】
一般にCMCは、水酸化ナトリウムの存在下にセルロース(C6105nとモノクロロ酢酸(ClCH2COOH)を反応させてセルロースの水酸基をエーテル化することで製造される。こうして得られるCMCは通常ナトリウム塩(以下CMC−Naと略記する)であり、濁った分散液ないしは透明な水溶液(以下単に水溶液という)になって独特の粘性を示すことで、塗料、インキ、食品分野、捺染糊や土木分野を含めての界面活性剤、分散剤、増粘剤、粘結剤や接着剤のマトリックス成分として広く大量に利用されている。
モノクロロ酢酸との反応によってセルロースに導入されるCOOH基の数としては、セルロースの基本構成単位であるグルコース分子中の3つのOH基に対し、0.5〜1個(置換度と呼ばれる)のものが多く市販されている。本発明で述べるCMCも、この様なものとして理解して良いが、本発明の目的はCOOH基の数を解明する点にあるのではなく、COOH基の数によって本発明の技術的範囲が論じられるべきものではない。したがって本発明における置換度はこれらの既製品における置換度を含め、これより広い範囲の置換度の化合物に適用することにより、これまでにない高機能素材の開発を目指した。
【0005】
非特許文献1には、食糧難の1940年代、工業用糊に使用されていた食用澱粉を節約する主旨で、消化吸収されない故に食糧価値のないセルロース資源から糊や接着剤を製造する技術が開発された経緯が記されている。ここではセルロース構成の3つの水酸基をモノクロロ酢酸でエーテル化してCMCが合成される。当初は反応溶媒として水のみを用いる水媒法が優勢であったが、メタノール等の親水溶媒を用いた閉鎖系の溶媒法が優勢になり、巨大親水高分子に由来する粘性挙動、画期的レオロジー化学の端緒が拓かれたことが伺える。溶媒法ではCMC−Naが安定して大量生産され、これが一般に「CMC」と定着して流通している。水媒法では「CMC」名称の本来の化学的形態(酸型製品:CMC−H)を経て各種の中和塩型が作られ、水処理工程の多難さと複雑さの欠点はあるが、多様性の利点は持ち合わせている。
【0006】
非特許文献2には、セルロースの基本的構造、挙動が体系的に示され、グルコース分子構造において、骨格構造の親油性と3つのOH基に由来する親水性を併有することによる両親媒性、つまり界面活性剤や分散剤などとしての利用可能性が明快に示されたことで、雑巾が油でも水でも拭える事実に深く首肯することができる。
【0007】
特許文献1では、CMC製造事業者にとって扱い易く、有機溶媒の少ないCMCの研究が現在の課題であることは示されているが、ここでは乾燥粉の製造を対象としており、湿潤顆粒には言及されていない。
特許文献2では、製紙事業者におけるCMC合成がメタノール有機溶媒系によるものであることを示すに止まり、煩わしい水処理技術を伴う硫酸水処理は示唆されていない。
特許文献3では、高純度のCMC粉末を求めて、アセトン洗浄するこをが示すものであって、湿潤顆粒については言及されない。
特許文献4では、CMCを医薬・食品に利用するに当たっては、残留メタノールの除去が重要課題となっていることが示され、水酸基の多いCMCから水に近い分子構造のメタノールを排除することの困難が伺える。
特許文献5では、セルロースを水に分散溶解する手段として、1級水酸基を選択的に酸化してカルボキシ基に変える画期的方法が示されているが、硫酸水処理には言及がなく、希薄液からの回収は記載されていない。
特許文献6では、1級水酸基の酸化処理が示されている。ナノサイズの顔料粒子の分散性に優れるが、これは希薄水溶液での議論であり、汎用インキや塗料分野はもとより、ナノレベルの薄膜が求められる空気電池の電極への応用の見通しはない。
特許文献7では、リチウムイオン電池の電極創製にCMCの使用が記載されているが、アンモニウム塩とナトリウム塩との差異についての言及はなく、空気電池を想定するには至っていない。
特許文献8では、自動車向けに求められる金属空気電池において、被覆層の材料としてセルロースが記載されているが、CMCを利用するものでない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「セロゲン物語」 第一工業製薬株式会社発行 1968年
【非特許文献2】「セルロースの材料科学」 磯貝 明著 東京大学出版会 2001年2月5日
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−133825号公報
【特許文献2】特開2014−028888号公報
【特許文献3】特開2013−159620号公報
【特許文献4】特開2001−122902号公報
【特許文献5】国際公開第2009/107637号
【特許文献6】国際公開第2011/074301号
【特許文献7】特開2016−040775号公報
【特許文献8】特開2013−168360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
CMC−Hは広義のCaCeの一つとして、塗料やインクの製造工程で用いる石油化学製品、例えばアクリル酸樹脂をはじめ、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン化油樹脂等における有機高分子酸に相当する。換言すれば、いわば石油化学産業のナフサに相当するバイオマス化学の基礎化学素材として期待される。
しかし、CMC−H湿潤顆粒製品は保存環境の温度や湿度による影響を多く受けるという不具合があり、簡単な包装では含有水分が減少して角質化する。一旦角質化すると、水への再分散性や溶解性が著しく低くなり、高分子酸としての化学反応性が低下し遂には消失するという問題があった。上記分離されたCMC−Hは種々の塩、例えばアンモニア水で中和したアンモニウム塩、炭酸カルシウムで中和したカルシウム塩、重金属水酸化物で中和した重金属塩などとすることにより、多くの用途に向けた化学反応に活性な基礎素材資源として利用されている。ただ現状では乾燥粉末として市販されるのみで、湿潤顆粒状態の製品は見当たらない。
また、CMC−Hの湿潤顆粒製品は、数日の保存下でもカビ発生を見ることで分かるように、それ自体腐敗し易く、逆に乾燥するとゲル化、角質化するという大きな欠点があるので、本発明者らは反応性を損なわない湿潤顆粒状態で安定に貯蔵できる形態の開発を目指した。
【0011】
本発明の目的はCaCe、就中CMC−Hの活用に関し、貯蔵安定性に欠ける不具合を解消し、水に溶けやすくて、保存性と取扱い性の良い状態にする技術を提供すること、そのことによって、数ミリ単位の厚みの一般塗装分野をはじめ、数ミクロン〜ナノ単位の薄膜を用いる各種表面処理に至る広い範囲で、垂れず、また気化ガスによる膜面ふくれ等(一般にワキと称される)のない均一で欠損のない美麗な塗装面を実現できるような性能を備えること、更には空気電池の電気化学反応においてイオンと気体が透過する多孔質構造の半導体且つ半透膜被膜となるようなセルロース系粘性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた。その結果、
(A)水分率を40〜80質量%に調整することにより、セルロースを構成するグルコース分子同士の絡み合い空間が分散的に内包されてなる酸型カルボキシメチルセルロース(前記CMC−H)の湿潤顆粒と、
(B)炭酸水素アルカリ金属塩および炭酸水素アンモニウム塩よりなる炭酸水素塩群から選ばれる少なくとも1種(以下炭酸水素塩と略記することもある)の粉末を含むものであり、前者を100質量部としたとき後者の割合が2〜100質量部となるように混合したものである。
このように構成することにより、微細な湿潤綿状外観を呈すると共に適切な湿潤状態を示す顆粒として安定に存在し、化学反応性とチキソ性が損なわれず、長期にわたってカビが発生しないことを見出した。なお(A)成分と(B)成分を混合することによって、両者を合わせた後の水分率は、算術的には前記「40〜80質量%」を下回ることになるが、順次後述していく本発明の作用は、本質的に(A)成分の水分率(上記したように「40〜80質量%」であることによって発揮されるので、混合後の水分率は本発明において全く影響するものではない。
【0013】
また本発明者らは当業者ならば誰でも確実に製造可能で、且つ取り扱いのできるセルロース系粘性材料を提供すべく技術確立を目指した。詳細には、CMC−Hを含有水分が安定して40〜80質量%を示すことで良好な湿潤顆粒状態に調製する方法については、CMC−Hの製造工程におけるいわゆる硫酸酸性水処理について鋭意研究した結果、アルカリ中和塩型のカルボキシメチルセルロース(CMC−Na)を含む粘稠水溶液を1〜10質量%の硫酸酸性水に滴下し、ここに得られる析出物を、水洗および脱水することで、上記した好適な水分率:40〜80質量%に調整すれば良いことを発見した。この様に、本発明の対象とする酸型カルボキシメチルセルロース「CMC−H」自体は、上記の方法で合成されたCMC−Naを含む透明で粘稠な水溶液を硫酸水に注ぐことにより析出物となった部分を採取して得られる。析出しないものは流失するので本発明製品の対象外であり、CaCeの一般論として、過度にカルボキシ基を導入したものは析出せずに流失すると考えられている。
本発明では、前記(B)の炭酸水素塩として炭酸水素アンモニウム塩を用いたものであることが特に好ましい。
本発明の組成物は、その湿潤綿状体の一片を取り出して走査型電子顕微鏡の観察基盤上でほぐし、更に純水を加えてときほぐした後、50〜150℃で加熱乾燥したものを顕微鏡観察すると、10〜1000nmサイズの径を持つ棒状体として、あるいはこの棒状体の内部空間が破裂した跡とみられる溝壁を観察できることで、その形態を説明することができる。
本発明の組成物は、前記(A)酸型カルボキシメチルセルロースの湿潤顆粒として、分子内カルボキシ基および/または分子内水酸基に対して脱水縮合可能な(C)多価アルコールおよび/またはエステル交換可能な油脂に含浸されたものを用いることも有利である。
更に、顔料などの機能性粒子、炭素粒子、およびカーボンナノチューブ粒子よりなる群から選択される粒子を混合した湿潤顆粒を用いることも有利である。
本発明組成物は、その粘稠水溶液を炭素繊維布に塗布・乾燥・架橋硬化させたものを正極とし、金属板を負極とし、媒体、活物質および空気の通過路となるセパレーターを介して、前記正極と前記負極を対向させ、これらが前記セルロース系粘性材料で被覆されていることで電圧及び電流を発生させるものであり、この事実によって本発明組成物であることを確認することができる。
この事実に基づき、上記正極、負極、およびセパレーターを構成単位とすることで、金属空気電池を構成することが可能となる。
上記構成単位をユニットとし、当該ユニットの複数個を、酸素透過性の通気路を内在する多孔質絶縁体を介して対面的に連結すると共に、隣り合った前記電池ユニット間を前記正極と前記負極の直列配線によって電気的に連結してなることで金属空気電池が構成される。
その際、10−3モル/リットル以上のプロトン活量を有する電解質水溶液による湿潤状態としたものであることが好適である。
本発明組成物を含浸または塗布すれば電池用または電子デバイス用のセパレーターとして構成することができる。
本発明組成物の他の用途としては、当該粘性組成物を含浸または塗布した炭素繊維または炭素繊維布が提供される。
そして本件発明粘性組成物を、ミリサイズ厚みの塗布用に調製した塗料、或いはミクロンサイズ厚みまたはナノサイズ厚みの印刷用に調製したインキを提供することができる。
或いは本発明の粘性組成物を用いて、ミクロンサイズ厚み〜ナノサイズ厚みの親水性被膜形成用に調製した表面処理剤を提供することができる。
或いは本発明の粘性組成物を架橋硬化させた固体電解質として提供することができ、更には本発明組成物を卑金属の板もしくは箔に塗布したものを金属空気電池用素材として提供できる。
【0014】
以下では炭酸水素アンモニウム塩を選んで生成させた前記CMC−Hとの混合物(本明細書ではCMCAと表記する)を代表例に取上げて説明するが、炭酸水素塩として炭酸水素アルカリ金属塩を選んで生成させたCMC−アルカリ金属においても貯蔵安定性に優れた湿潤顆粒製品を得ることができる。
湿潤綿状を示すCMCAから、当該湿潤綿の一片を取り出して走査型電子顕微鏡の観察基盤上でほぐし、更に純水を加えてときほぐした後、50〜150℃で加熱乾燥したものを顕微鏡観察すると、10〜1000nmサイズの径を持つ棒状体として、あるいはこの棒状体の内部空間が破裂した跡とみられる溝壁が観察されることが確認された(図4図5を参照)。
CMCAを水に添加して得られる粘稠水溶液を炭素繊維または炭素繊維布に塗布・乾燥・架橋硬化させたものは、これを正極とし、金属板を負極とし、媒体、活物質および空気の通過路となるセパレーターを介して、これら正極と負極を対向させてプロトン酸(例えば塩酸)を滴下したところ、電圧及び電流を発生させることを発見した。これは本発明組成物がプロトンと気体酸素が透過する半導体、半透膜、多孔質膜構造となることの発見に相当し、金蔵空気電池性能としての活用を示唆するものである。この現象は本発明に係るセルロース系粘性組成物の評価方法として位置づけられるとともに、電池用または電子デバイス用のセパレーターとしての有用性を示し、或いは新型の電池、発電装置の開発の端緒を開くものといえる。
実用的電池の構成としては、例えば上記で述べたような正極と負極からなるユニットの複数個を、酸素透過性のある通気路を内在する多孔質絶縁体を介して対面的に連結すると共に、隣り合った前記電池ユニット間を前記正極と前記負極の直列配線によって電気的に連結した構成からなるものを提案することができる。なおこの電池における活物質としては、具体的には、10−3モル/リットル以上のプロトン活量を有する電解質水溶液が好ましく、最も望ましくは塩酸が用いられる。
ここで説明した湿潤顆粒は、走査型電子顕微鏡の観察基盤上で解きほぐすことができ、その解きほぐし後に抜き出した数本の繊維を走査型電子顕微鏡で観察すると、ナノサイズの径の棒状体(前記CeNR)ないしは中空管状体(前記CeNT)であることを発見した。多量の水を安定して保持しているのはCMC−Hについても同じであるが、CMC−H単独では上記操作を行っても解きほぐせないのでCeNRないしCeNTを観察できない。つまりCeNR構造ないしはCeNT構造であることを観察できるのが本発明組成物の特長である。
CMCAとの混合物から炭酸及びアンモニアが気散されることで遊離するCMC−HのCOOH基及び/又はOH基と脱水縮合可能な多価アルコールおよび/またはエステル交換可能な油脂を第3成分として、及び必要に応じて顔料等の機能粒子を第4成分として加えられた組成物は、塗料やインキとして優れた取扱い性を発揮することを発見した。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセルロース系粘性材料の外観は湿潤状態の顆粒であり、それ自身としてべたつきが無いことによって取扱い性が良好であり、CMC−H部分の水分率が40〜80質量%であるにも拘わらず、長期間の保存中にもカビを発生することがなく、保存安定性が優れていることを、実験では3年以上の長期間に亘って確認した。従って瓶、缶でない簡単な袋包装でも安定に貯蔵、および輸送することができるようになった。
40〜80質量%もの含水率にもかかわらず、べたつきのない理由については、湿潤顆粒がナノサイズの棒状であるCeNRないしは中空管状であるCeNTが緩やかに束ねられたような構造を呈することに依るものであることが、走査型電子顕微鏡で解明し得た。この緩やかな束ね構造であることによって、水、有機溶媒、油脂類などとの混和性が向上し種々の食品や化学品をはじめ諸産業用途への展開可能性も高められることになった。
セルロースがこのような棒状体(CeNR)ないしは中空管状体(CeNT)が緩やかに束ねられたような構造を示したのは、CMC−Hに混合させた炭酸水素アンモニウムに由来する炭酸ガスとアンモニアガスの気相成分の相互作用によって、セルロース分子の集合体の凝集力を緩ませるので、これに僅かな外力を加えるだけで、セルロース分子がほぐれて棒状体、或いはさらにセルロース分子集合体の外壁を通してこれらの気相成分が内部に透過・侵入して中空状態を形成したためではないかとの仮説を立てている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】草木バイオマス資源や粗製セルロース原料から本発明のセルロース系粘性組成物を製造する工程、及びその各種用途への展開を示すフロー図。
図2】本発明のセルロース系粘性組成物を使用した金属空気電池の概念及び試験回路図。
図3】本発明の金属空気電池を用いた安定調整電力システムを示す説明図。
図4】本発明のCMCA粒を解きほぐしその一片を撮影基盤上で水を加えて解きほぐした後80℃で加熱乾燥後SEM観察した写真。棒状を呈するCeNRの外観を見ることができた。
図5図4でSEM観察をしたサンプルを大気中に取り出して水に浸した後、再び140℃で加熱乾燥し、これをSEM観察した写真。中空管状体の管壁が軸方向に破裂した跡のような外観を呈していた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明については、適宜、図1,2を参照されたい。
CMC−Hと炭酸水素アルカリ金属塩との混合物は、加熱・乾燥した最終製品でも水に容易に溶け、接着と剥離を可逆的に行わせることができるから、可逆的粘着性の高い接着剤、或いは粘結剤やバインダーとして好適である。不純物の一切は硫酸によって洗い流され、精製された析出物として利用することができる。このため多種多様なパルプ資源、なかんずく古紙パルプも利用できることになった。ただし洗浄廃水の処理処分に経費を要することは言うまでもない。
なかでも、炭酸水素アンモニウム塩との混合物CMCAの場合は、100℃以上、好ましくは140℃以上、例えば200℃以下に加熱、乾燥した最終製品はゲル化、角質化して水に溶けないので、非可逆的に粘性の高い接着剤、耐水性製品としての際立った効果を発揮させることができ、この点は本発明の重要な主題の一つとなる。この耐水化はカルボキシ基と水酸基が脱水縮合による架橋硬化反応を生じることに基づくものであり、上記の加熱が行われない常温下でも徐々にアンモニアが揮散してCMC−Hが遊離し、そして架橋硬化する。
【0018】
CMC−Hに炭酸水素塩を加えることによって、取扱い性の良い湿潤顆粒状を呈し、水に溶けやすくて化学反応活性と貯蔵安定性に優れたセルロース系粘性材料が得られることになったという事実は、本発明者らによって初めて確認されたことである。このような成果が得られた根拠については未解明の部分を残すが、後述の図4,5を用いて示す事実とも整合するところがあって、CMC本体のカルボキシ基と炭酸水素塩が、互いに二酸化炭素由来として好適な馴染み状態を呈し、炭酸水素塩の形態のままでセルロース本体に安定に抱え込まれることによると推察している。
CMCA湿潤顆粒の一片を手術用のメスで切断して断面を上に向けてSEM観察すると、その断面が数10〜数100nmサイズの大小さまざまな細孔跡による多孔質であることが分かった。この一片はSEM撮影試料基盤上で水中に溶きほぐすことができて、これを80℃で加熱乾燥すると図4に示す如く、径が数100nmサイズの棒状体CeNRがSEMで観察できた。140℃で加熱乾燥すると図5に示す如く棒状体が破裂した跡が中空管状に観察されることから、CeNRは中空管CeNTであると想定した。これら棒状体もしくは中空管構造の束が緩やかに集合することによって可視的湿潤綿を構成することになったと考察している。
径が大小さまざまに異なる理由は、CaCeの一例として選んだCMC−Hにおけるグルコースの3個の水酸基がカルボキシメチル化される程度と位置の影響によるものではないかと想定すると、総じてCaCeのカルボキシ基の多いもの、酸当量、酸価の高いものほど管径は小さくなり、数10nm以下になった場合では、硫酸水処理水洗工程で流出してしまい、湿潤顆粒製品CMCAとしては形成されなかったと考える。
CeNRはSEM観察に先立つ加熱乾燥を比較的低温で行うと、棒状体がねじれてリボン状になることから、CeNRないしCeNTの管壁が微細な繊維からなる織物構造が想定される。この微細な繊維とはいわゆるCNFが関与したものと推察できるが、これらの詳細な究明詳細は今後の課題である。
どのような形態であれCMC−Hは、炭酸水素アンモニウムや炭酸水素アルカリ金属塩と混和することによって所定量の水分を安定に保持することができて長期間に亘って乾燥を防止し、保存中または使用条件下でゲル化して固まる不都合もなく、成型加工性を損なわない。
【0019】
セルロースを含む野菜の塩漬けや酢漬けが長期間に亘って安定に貯蔵・保管できる事象と同じような状況を示すと理解することが可能であり、炭酸水素塩の少量添加でありながら、共存することによって腐敗防止効果(カビ発生の防止)がはかられたものと考えている。その際炭酸水素塩の若干の分解で生じる二酸化炭素ガスの気泡が湿潤顆粒状態での保存を実現させたものと推測している。なお炭酸水素アンモニウム塩の場合は配合が多くても過剰分はアンモニアガスや炭酸ガスとして揮散するので、配合量比の制御は広範囲で良いという点で好都合である。
【0020】
含有水分40〜80質量%の湿潤顆粒状態に調整する手段としては、CMC−Hの製造工程におけるいわゆる硫酸酸性水処理の手順について鋭意研究した結果、アルカリ金属中和塩型のCMC−Naを含む透明で粘稠な水溶液を1〜20質量%(好ましくは1〜10質量%)の硫酸酸性水に滴下し、此処に得られる析出物を、水洗および脱水し、水分率を調整した湿潤顆粒状とすれば良いことを見出した。実験室での最も好ましい条件は、105℃?3時間であった。上記の添加手順を逆にして、即ちCMC−Naの粘稠な水溶液に硫酸水を添加する場合は、ゾル状のものが得られてしまい、このゾルの中から湿潤顆粒を分離するという極めて厄介な操作が必要となる。
【0021】
硫酸酸性水1〜20質量%(好ましくは1〜10質量%)というのは、分子量98のH2SO4のモル濃度0.1〜2M(好ましくは0.1〜1M)、規定濃度0.2〜4N(好ましくは1〜2N)に相当し、標準アルカリ液の滴定によって規定濃度を管理すれば良い。硫酸水をこれ以上の濃度にするのは取扱いの危険性が高まる為に避けることが推奨されるが、高濃度の硫酸によってセルロースが若干変質することを承知で行うことを妨げるものではない。
例えば10質量%(1Mモル濃度)の硫酸酸性水を緩やかに撹拌しつつ、CMC−Naの粘稠水溶液を静かに滴下していくと、液中での静かな流下流れに沿って明瞭なゲル状外観からなるCMC−Hが析出してくる。こうして液全体に白濁状が拡散していった状態を見定めた上で固液分離を行う。このような現象が生じたのは、グルコース骨格の遊離水酸基が硫酸とエステル結合を形成して不溶化しつつ水を取り込んだためと推定され、この不溶化による皮張り状態が、後述する図4からも支持される。
【0022】
一般に硫酸酸性水処理と称される卓上実験では安全性を重視し、粘稠水溶液に硫酸酸性水を添加するという手法が採用される。本発明者らが一般常識に従ってこの手順で添加したところ、混合液はゾル状を呈し易くなり、沈降分離できるほどの析出物は得られない。ところが添加手順を逆にしてみたところ、意外に温和な状態での添加を行うことができ、沈降分離が可能な析出物が得られることが分かった。沈降物の上澄水を排除し、厨房用の野菜の水切り用手回しの遠心分離器で脱水すると、含有水分が安定した湿潤顆粒製品を得ることができ、大型機器での大量処理も可能な方式であるとの確信を得た。
【0023】
上記した硫酸酸性水処理をpH<1で実施する区間での析出物はメリハリがしっかりしているが、水洗が進むにつれてpH値が強酸性域から外れて行くと、析出物が膨潤状態となって濾過、水切りが困難になる。後記の実施例では、硫酸を補充することによってpH値の維持に努めたが、工業的に好ましいものとしては、本発明者らが先に提案した発明(特許第5405786号)によって提供される手法、即ちpH値が4に収斂する炭酸水を洗浄に利用することが推奨される。
【0024】
前記アルカリ中和塩型カルボキシメチルセルロースを含む透明な粘稠水溶液中の、アルカリ中和塩型カルボキシメチルセルロースの濃度は、0.5〜20質量%の範囲とすることができる。上記濃度は好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下とすることができる。
【0025】
CMC−Hと炭酸水素塩との混合物は主剤のセルロースが親油基と親水基を持つ優れた界面活性剤であり、炭酸水素アルカリ塩や炭酸水素アンモニウム塩も塩基性界面活性剤として作用するから、これらの混合物は優れた界面活性剤になる。
炭酸水素塩の配合量がCMC−H(100質量部)に対して2質量部未満ではCMC−H中への炭酸水素塩の取込みが不充分であり、水分率を適切に管理しても、べたつきのない良好な取扱い性を示すには至らず、保存安定性の向上も大きくは期待できない。
上限は特に規定しないが、100質量部を超えると、CMC−Hの持つカルボキシ基の中和当量に対して過剰配合に伴う発泡による不具合が生じる場合が多くなり、特に炭酸水素塩として炭酸水素アンモニウム塩を用いる場合は、アンモニア臭気の問題を伴うので、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下とする。中和当量に基づいて規定することが可能であることは言うまでもない。
【0026】
本発明の(A)成分であるCMC−Hとしては、アルカリ中和塩型カルボキシメチルセルロースを含む粘稠水溶液を1〜10質量%の硫酸酸性水に滴下することで得られる析出物を用いるが、滴下後の析出物は、これを水洗および脱水して水分率を40〜80質量%に調整することが望ましい。水分率が40質量%を下回ると、十分な湿潤状態が得られず、やや乾燥粉末に近い状態となり、例えば水と混合したときにダマを生じやすくなって、製品としての取扱い性が低下する。他方80質量%を超えると、顆粒製品がべたつきを見せるので好ましくない。なお水分率が更に多く、約90質量%を超えると餅状となり、やはり取扱い性がいっそう低下する。
水分率が多いのに顆粒状態での袋詰めが可能であることは、本発明の特異的な効果と言える。例えば75質量%前後ともなれば、液状の瓶詰製品としてしか提供されないが、本発明の混合物は湿潤顆粒状態での袋詰めが可能であり、貯蔵および輸送に便利である。
【0027】
炭酸水素塩として、特に炭酸水素アンモニウム塩を用いる場合について言えば、これらの混合物であるCMCAを加熱すると、アンモニアと二酸化炭素が揮散し、遊離状態となったCMC−Hの分子内OH基および/または第3成分(図1参照)として加えられた油脂あるいは多価アルコール(例えばグリセリン)のOH基がCOOH基と脱水縮合反応してポリエステル状態となり、更にこれを架橋硬化したものは、CMC−H単独の硬化物に比べて柔軟性の高い状態になり、被塗装物の可撓性に対応できるという利点もある。
湿潤顆粒状態であると、乾燥粉体であるものに比べて、第4成分(図1参照)として配合した多様な顔料機能粒子の分散にとって有利であり、均一な組成物を形成し、大きなせん断力を用いずとも十分な分散が達成できる。ひいては添加粒子の特性、例えば雲母状であることに伴う特性、針状であることに伴う特性、管状であることに伴う特性、例えばカーボンナノチューブと呼ばれる炭素粒子の電気特性などを損ねないで分散できる。
【0028】
アンモニアの揮散手段は、急がなければ単純な自然乾燥で十分であり、加熱するほどに促進される。もしくは電気透析や電着塗装手段で陰極に濃縮して汲み出すようにして排除することもできる。この場合は電気化学当量として電流の積算値から定量的に掌握できる利点があって、均一塗装手段として優れる。
【0029】
固形分濃度が1%になるように調整した水溶液の粘度をB型粘度計で測定して、回転数60rpmの測定値を、回転数6rpmの測定値で除した値(PVI:Printing Viscosity Index)が小さくなること、具体的には0.6以下になることをもって、チキソ性に優れていると評価することは周知である。本発明のセルロース系粘性組成物はこの評価法によってチキソ性に優れることが証明されている。そのことによって厚く塗布、印刷しても垂れ下がることがなく、固形分濃度を数%以下に薄めると数ミクロン単位の薄膜に、更に薄めるとナノ単位の超薄膜にすることも可能であり、表面処理への応用可能範囲が広まり、このことは電池構成を形成することによって持続的に発電する事実で証明されたと考える。
【0030】
粘稠な水溶液の粘度の測定数値が水溶液の調整次第でばらつくことに注目して、これは介在する気泡の影響が大きいと判断し、これの解消策として試料を水に投入する順序にこだわり、添加順序として水に投入すること、好ましくは沸騰水に投入することを繰り返し検討して内在気泡の除去に努めた。その結果セルロースに内在する通気性により、突沸することなく気体が抜けて、見た目に泡がなく充分な脱気を心掛けることが肝要である。
【0031】
一般にある物体をいちど水に浸漬して引き揚げたときには当該物体に水が付着して残るが、これは水の粘性によるものである。ところで粘度は温度上昇と共に低下し、沸騰水では室温(20℃)の約30%に低下してサラサラになり、反対に氷温0℃では180%台まで増粘する。したがってCMCAを複雑な被塗物に被覆するには、いったん浸漬した状態で沸騰させ、これを冷却後引き揚げることが望ましく、CMCAの粘度特性を計測する場合の試料もこれに準ずるべきである。
【0032】
またPVI値が小さいほど付着量が少なくなって薄膜状を形成し易くなる。巨大高分子のセルロースが架橋硬化して耐水性を発揮するに至った状態では、グルコース由来の水酸基に基づく親水性の発揮が有意に作用する。アンモニウム塩型では水に溶解することができ、0.01%希薄液でも純水の数100倍の粘性を示す結果、このチキソ性を利用して静かに引き上げれば付着量が確保できる。噴霧した場合も垂れずに付着しやすくなる。このことが均一な薄膜被覆を可能にするメカニズムと考える。また浸漬液の温度を高くすることに加えて引き上げた雰囲気の温度を低くするほどに付着量が増えるので、希薄液でもCMCAの付着を確保でき、きわめて薄い被覆の実現が可能となった。
付着物が単純に乾燥しただけの場合では、付着・乾燥した固体が水に溶けだして流出する。しかし本発明のアンモニウム塩型で架橋硬化させると耐水性の固体になり、耐久性と優れた電気特性が発揮されるという大きな特徴になる。
【0033】
セルロース自体は優れた絶縁体であるが、カルボキシ基を導入したCaCeは巨大な高分子電解質としてイオン電導性を示す。特に陽子、プロトンに対して特異的に大きな電導性を示して、この被覆が完成すると、この被覆界面には電位差が生じ、電極電位として検出されると想定される。この被覆に欠損があれば電気的短絡が起こり、電位差が検出されにくくなる。ここで電位差が発生し、それが持続するというのは、上記被覆によって欠損のない均一な被膜が形成されたことによる効果であると考える。異種類の電極間、例えば炭素電極と金属板電極には電流が流れて電池を形成するはずであり、こうして電池性能が発現したならば、上記の薄膜塗装が成立したこと、つまりは半導体の特性が証明されたことにもなる。
【0034】
CMCAは高分子電解質として振舞うので、水溶液に直流電源により電圧を印加するとCMC−Hが正極に析出する。従って電子電導性の金属製品の防錆塗装に使われる電着塗装にも好適である。つまり電子電導性を有するカーボン繊維からなる織布製品の微細な隙間につきまわり十分な塗布量を確保する故に電子機器部品への塗装にも特に好適である。所謂表面薄膜塗装に際しても、厚めの塗装でも垂れない特性を発揮することができるので、既存塗料製品への展開にも好適である。
完全な絶縁体であれば起電力を生じないし電流も流れないが、被覆膜が荷電粒子やイオンを透過させる半導体であれば起電力を生じる。しかし被覆膜に欠損があると短絡して電流は減少するが、本発明では電流が持続する。このことは欠損のない半導体であることを示すと考えて良い。
【0035】
電解質(殊にプロトン活量の高い、例えば塩酸水溶液)を含むセパレーターを介して卑金属の板と炭素極を対向させたとき(図2参照)、その間に発生する起電力は、卑金属のイオン化で発生した電子が帯電して負極となり、炭素極が正極となることを意味し、此処に電池を形成するので、炭素極に酸素〜空気を供給し続けると、金属空気電池を形成する。なお以下の説明では、プロトン活量の高い電解質を用いていることに関連して、金属空気プロトン電池は、以下MAPと略記する。
炭素極が湿潤によってイオンを透過し得る半導体として作用し、酸素が継続して供給されるときには、半透膜の作用効果として電流が持続する。換言すると電流が持続するならば半導体・半透膜であることを示す。
本発明では、このような電流が発生することによってセルロース系粘性組成物としての評価ができることを見出しただけでなく、上記したような構成を具体化すれば実用性の高いMAPとして使用できることを見出した。
正極と負極の間に介装されることで各電池ユニットを直列に接続するためのセパレーターには、通気孔に相当する通気性を保持することができるような工夫と最適の素材を選ぶことは言うまでもない。
【0036】
上記で説明したMAPについては、図2を用いて詳細を述べたが、更にこのMAPを用いた安定調整電力システム(図3参照)を以下の如く提案したい。本発明のMAPでは電解質水溶液を添加する以前では一切の化学反応が惹起されず、従って発電が起こらないことで長期間の安定保管が可能であり、かかる意味において非常用電源としても好適であり、他方、電解質水溶液を添加または補充・補給することによって発電が始まるという点では、燃料電池として位置づけ・評価することも可能である。なお従来の燃料電池では、無機の固体電解質を用いていたが、本発明のMAPではCMCAの架橋硬化体を用いてこれを有機の固体電解質として機能させるので、言わば金属空気電池との混成(ハイブリッド)発電という新システムが提供されることになる。
【0037】
図3に戻ってシステム全体を説明すると、MAPにおける負極(卑金属)は発電によって金属塩化物に変化するので、これを新しい金属に交換して継続使用するが、此処で回収された金属塩化物から金属を回収・再生する(合せて食塩が副生する)ときには、苛性ソーダが必要とされるが、この苛性ソーダは外部電力を用いて行う食塩水電気分解によって製造されるところ、前記で回収された食塩が加水分解のための食塩水の原料となる。そして食塩水の電気分解で生成した塩酸を貯留しておき、適宜プロトン酸としてMAPに補給すれば、安定した調整電力として取り出すことができ、他方前記した外部電力として、ソーラー発電、風力発電、或いは余剰電力などを使用するようなシステムを組むならば、随時・随意に、昼夜・夏冬などの環境に合わせた電力需給の調整に対応することが可能となる。
【0038】
こうした特性はセルロース骨格と、此処に導入したカルボキシ基に基づくものであり、此処に得られた半導体・半透膜特性の素材は、金属表面に数ミクロン規模の被覆を施すことによって、優れた防錆、更には結露防止効果を発揮することができる。
半導体・半透膜特性は電池の薄膜化に寄与するほか、数ミリ規模の厚い塗膜のワキ、垂れ、といった欠損を防止し、一般塗料の分野でも優れた性能が期待される。
塗装工程における排水処理においても、本発明の組成物では凝集沈澱がしっかり起きて、凝集泥と上澄水の分離が容易になって塗装工程の簡素化に寄与する。これらはセルロース固有の特性をうまく制御した成果と言える。
【0039】
本願は、2016年7月6日に出願された日本国特許出願第2016−133999号、2016年9月26日に出願された日本国特許出願第2016−187443号、2017年2月24日に出願された日本国特許出願第2017−32963号、及び2017年5月2日に出願された日本国特許出願第2017−91884号に基づく優先権の利益を主張するものである。2016年7月6日に出願された日本国特許出願第2016−133999号の明細書の全内容、2016年9月26日に出願された日本国特許出願第2016−187443号の明細書の全内容、2017年2月24日に出願された日本国特許出願第2017−32963号の明細書の全内容、及び2017年5月2日に出願された日本国特許出願第2017−91884号の明細書の全内容が、本願の参考のため援用される。
【実施例】
【0040】
実施例1.CMC−Hと炭酸水素塩から湿潤顆粒の製造
ニチリン化学工業株式会社製のCMC−Hを炭酸水で洗浄した。これを厨房機器の遠心分離機で水切りして湿潤顆粒を調製して用いた。標準的配合として湿潤顆粒200gに、表1に示すアルカリ成分20gを、膜厚20μmのプラスチック袋内で混合して、空気を抜いて室温で保管し、適宜実験試料に供した。厨房機器の120Wミキサーを用い、標準条件として1分間撹拌した後プラスチック袋に密封保管した。約5gを精秤してオーブンで110℃、30分乾燥して、このときの減量分を含有水分とした。
本実施例におけるCMC−Hの含有水分は、製造した当日の天候、特に湿度の影響もあって、72〜75質量%の範囲で変動した場合は水を添加して75質量%になるように水分調整した。実験室の湿度を一定に管理して75%に調整できた。
次いで混和性と混和後の性状を調べた。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
アルカリ金属としてナトリウムの場合を記載したが、同族のリチウム、カリウム、セシウム等についてもその炭酸水素塩を用いて安定な湿潤顆粒が得られる。なお表1では、1か月後の性状を示したが、その時点で「カビ発生なし」と評価したサンプル(炭酸水素塩の粉末を配合した2例)については、その後更に3年以上保存した後も、「カビ発生なし」の評価が得られたことを併記しておく。炭酸水素塩に由来する二酸化炭素の共存が、このような効果をもたらせたものと考えている。
炭酸水素塩を室温で混和した直後では若干の発泡を生じたが、この発砲は継続せず、膜厚20μmのプラスチック袋に密封しても袋が膨らまず、顕著な圧力増大は起こらなかった。二酸化炭素がCMCAに含有された湿潤顆粒状態を維持した。上記の混和作業を、閉鎖された反応釜内で行うことも、もちろん可能である。
【0043】
実施例2−1.CMC−Na等からCMC−Hの製造
ここでは市販のCMC粉(化学的にはCMC−Naである)からCMC−Hを製造する例について説明する。このCMC粉を水に溶かして十分な時間熟成してCMC−Naの濃度が1〜10質量%の透明な粘稠水溶液を得た。この水溶液を1〜10質量%の硫酸酸性水(モル濃度:0.1〜1M、規定濃度:0.2〜2N)に注いだ。硫酸酸性水をこれ以上の濃度にするのは取扱いの危険性が高まる為に避けられるが、高濃度の硫酸にセルロースが変質すること、危険を伴うことを承知で行う場合はこれを妨げない。
【0044】
硫酸酸性水に粘稠液を滴下していくと当初は外観的にも取扱い性が良いであろうことを感じ取ることのできる(本書ではメリハリという)CMC−Hゲルが析出し、沈降分離するので濾別採取し易いが、硫酸酸性水が順次薄まるにつれて水分の多い状態になるので、水洗脱水が困難になる。滴下、添加条件も影響するので、硫酸酸性水の酸濃度の合理的かつ具体的な管理手段を鋭意工夫した。
【0045】
pHメーターを導入し、常時点検した。pH=1を超えそうになったときには濃い硫酸水を補給することでpH=1以下に維持した。かくして同じくメリハリのある外観を呈する析出物を確実に採取できるようになった。
【0046】
実施例2−2.紙パルプからCMC−Naの製造
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩型の一般的製造方法として、紙パルプのスラリーにモノクロロ酢酸ナトリウム塩を混合、更に解砕した後、冷暗所に1昼夜〜数か月保存貯蔵する。ここから必要量を取り出し、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=9〜10、常温(15〜25℃)〜加温(100℃以下)状態で1〜数時間もしくは0.5〜5日間反応(エーテル化反応)を進行させると、粘稠液が得られた。
上記反応はセルロースの純度を選ばず、針葉樹パルプ、コットンパルプ、古紙パルプ、機械的に高度に解砕されたセルロース、例えば(株)ダイセルのセリッシュ(登録商標)や、ナノレベルに解砕したCNFなどを用いた場合も、上記プロセスは同様に進行した。
【0047】
不純物の混在した紙パルプを用いるときは、上記プロセスで固形分が共存してくるので、これは沈降分離など適宜の手段で除去すればよい。
なお上記プロセスにおいて、モノクロロ酢酸ナトリウム塩の添加と水酸化ナトリウム水溶液の添加順序を逆に行うと、エーテル化反応に伴う急激な温度上昇を招き、作業性が著しく低下する。
作業手順としてセルロースとモノクロロ酢酸ナトリウム塩を混合してから水酸化ナトリウムを加えることにより、エーテル化反応の進行が緩やかとなり、温度の急上昇が避けられ、このことにより両者の混合状態が、例えば野菜の塩漬けのような状態で、長期に及ぶ貯蔵が可能となった。
【0048】
実施例3.CMCAとグリセリン混合物の製造と性能
CMCA単独を加熱して得られた架橋硬化物は角質のごとく強靭で、ガラスのようにもろかったので塗装に適さなかったが、CMCAにグリセリンを等量混合した液状組成物は、柔軟で可撓性を有する被塗装物上に数ミリ単位の柔軟な塗装膜を形成することができた。
塗装技術は如何にして均一な薄膜にするかが問われるが、従来は薄くできないため、止むなく所定の膜厚が最適とされていた。つまり塗り重ねることによって不均一を補っていた。これに対し本発明では重ね塗りしなくても均一な薄膜を形成することができた。
薄膜が均一であるか否かを的確確実に判断する手法が必要である。本発明では下記の方法を採択した。すなわち、μm〜nmオーダーの薄膜塗装を形成する分野、いわゆる表面処理技術分野では、均一かつ半透膜の性質の成否の証明手段として、界面電気化学的手法があり、金属の電極電位が測定評価される。
【0049】
炭素繊維布に塗布したものは電池用の正極になるので、空気電池として使うにあたり表面積を大きくするため炭素繊維の織布を通信販売で購入した。炭素繊維織布をCMCAの0.1%水溶液に浸漬し90℃で3分間処理し、引き揚げて風乾し、厨房用オーブンで140℃30分乾燥した。オーブンに入らない場合は民生用のアイロン掛けで加熱するだけで良好な結果が得られ、いずれも工業的に大量大規模加工が可能である。念のためこの操作を繰り返して被覆層を2層にして欠損短絡を防止した。被覆層はnmオーダーと考えられた。
【0050】
実施例4.金属空気電池としての適用
実施例3で得たCMCA塗布焼付け炭素繊維布を図2に示す回路の正極とし、トタン板を負極として、この間にテイシュペーパーを介して発生する電位と電流を市販のテスターで計測した。乾燥状態では電位、電流はゼロであるが、水道水を注ぐと様々な値の電位が検出されたものの、直ぐに消滅し、モーターを駆動する程の電流は検知されなかった。そこで医薬用として市販されている希塩酸を注ぐと、注入量に比例してモーターが持続的に駆動した。金属の腐食物が蓄積すると回転が鈍くなるが、電極を洗浄すると3回までは繰り返し使えた。
【0051】
次に第3成分としてグリセリンをCMCAと等量配合した実験では、10回以上の洗浄に耐えて発電を継続することができた。
グリセリンなしの場合は、架橋硬化物が剛直で割れやすく炭素繊維布にひび割れが生じやすく、短絡して電池機能が損なわれたが、グリセリン配合で柔軟になり耐久性が出たと考える。
【0052】
なお希塩酸の注入による発電のメカニズムの詳細は不明であるが、トタン板をマグネシウム板、亜鉛板、アルミニウム板、鉄板に代えても発電した。塩酸のほか、食酢、酢酸、硫酸でも同様に発電した。このことから酸の成分、要はプロトン(水素イオン)が必須成分とされることが確認された。本実験の結果として、高温を必要とする水素燃料電池とは異なるメカニズムによって大容量の安全な金属空気プロトン電池の提供が可能になるとの確信を得た。
【0053】
セルロース本体のグルコース基の親油性により、親油性の炭素製品、ここでは炭素繊維布、カーボンナノチューブといった特殊な炭素粒子の界面活性剤として機能し、金属空気プロトン電池の正極として用いることにより、電流発生の持続性が増したことで証明された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
酸型カルボキシメチルセルロース(CMC−H)と炭酸水素塩からなる綿状の湿潤顆粒を安定して確実に得ることが可能となり、この湿潤顆粒は簡単な包装でもカビの発生がない状態で長い期間に亘って安定に保存することができる。この綿状の湿潤顆粒は水への再分散性と溶解性が極めて良好であるから、塗料、インキ等の分野での塗装が可能となり、その他、食品分野、捺染糊や土木分野を含めて界面活性剤、分散剤、増粘剤、粘結剤や接着剤のマトリックス成分として広く利用できる。炭酸水素アンモニウム塩を用いて得た綿状の湿潤顆粒は、耐水性が優れている。それ故、これを用いて製造した接着剤も耐水性の高いものとなり、例えば耐水性ベニヤ板への用途展開が可能である。この綿状の湿潤顆粒はプロトン透過性を有するので、例えば炭素繊維布に含浸・乾燥させる等して、空気電池用素材としての活用も視野に入れることができる。
図1
図2
図3
図4
図5