特許第6811955号(P6811955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811955
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】バッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/36 20130101AFI20201228BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20201228BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20201228BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20201228BHJP
   H01M 10/36 20100101ALI20201228BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20201228BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20201228BHJP
   H01M 4/583 20100101ALI20201228BHJP
【FI】
   H01G11/36
   H01G11/80
   H01G11/68
   H01G11/42
   H01M10/36 Z
   H01M10/04 Z
   H01M4/36 C
   H01M4/583
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-147109(P2016-147109)
(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-18921(P2018-18921A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】519271377
【氏名又は名称】株式会社カペラ
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 毅
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−515094(JP,A)
【文献】 特開2006−196235(JP,A)
【文献】 特表2014−510003(JP,A)
【文献】 特開平10−284138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00−11/86
H01M 10/00−10/39
4/36
4/583
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体に各々接続された正極板と負極板を交互に並べた状態で電解液に浸漬してなるバッテリにおいて、前記正極板はアルミニウム又はアルミニウム合金からなるとともにその表裏両面に酸化ナノカーボンによる活性炭素層が形成され、前記負極板は銅又は銅合金からなるとともにその表裏両面にはナノカーボンによる活性炭素層が形成されており、隣り合う前記正極板と前記負極板が対をなしてその間に誘電体を挟装してなるユニットでキャパシタセルを構成するとともに、複数の前記キャパシタセルが前記正極板と前記負極板が向かい合って並ぶ配置とされて、前記向かい合う正極板と負極板が中間の前記電解液とともに各々電池セルを構成しており、前記キャパシタセルは、前記正極板と負極板の間に挟装された内側部分が所定のシール材で前記電解液に対し密封されている、ことを特徴とするバッテリ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極板の表面に活性炭素層を設けて高性能化したバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に自動車のCO排出規制・燃費規制が強化される傾向にあり、日本の自動車産業界でも燃費改善・CO排出量抑制に対応可能な環境対策車の開発が急務となっている。このような環境対策車として、HV(ハイブリッド車)・EV(電気自動車)が周知であるが、その蓄電デバイスとしては、鉛蓄電池よりもエネルギー密度・出力密度の高いニッケル水素電池やリチウムイオン二次電池が採用されている。
【0003】
しかし、ニッケル水素電池はリチウムイオン二次電池と比べて電池容量が劣り、リチウムイオン二次電池はニッケル水素電池と比べて安全性の面で劣るとされ、また両者とも充電に長時間を要するなど、現状においては一長一短がある。さらに、斯かる蓄電デバイスは材料原価が高いことに加え、安全性対策を講じる必要があるため鉛蓄電池と比べて高コストであり、車両価格の低廉化を困難にしている。
【0004】
一方、鉛蓄電池は、開発されてから100年以上が経過した古い技術ではあるが、安価で信頼性が高いことから現在でも車両用として主流の地位にある。しかし、鉛蓄電池の理論エネルギー密度はリチウムイオン二次電池よりも大きいにもかかわらず、車両の動力用としては主流になり得なかった。また、鉛蓄電池は太陽光発電や風力発電の分野でもその蓄電デバイスとして汎用されているが、この自然エネルギーを利用した発電においても、時々刻々変動する日照量や風量の状態によりその出力レベルが安定しにくいという問題もある。
【0005】
したがって、安全性・信頼性に優れて比較的低廉な周知の蓄電池において、急速充放電性能と耐久性を大きく向上させることができれば、車両に使用するニッケル水素電池やリチウムイオン二次電池の少なくとも一部を代用可能となって、コスト面で極めて有利なものとなり、また、アイドリングストップ技術や自然エネルギー発電における要請にも充分に応えられるようになる。
【0006】
そこで、特表2007−506230号公報には、鉛ベース負極と二酸化鉛ベース正極に加えてコンデンサ負極を設けて鉛蓄電池部分と非対称コンデンサ部分を構成するものとして、高電流の充電・放電が行われる間は非対称コンデンサ部分で電荷の受け入れ・放出が優先的に行われる方式とした鉛蓄電池が提案されている。このように、キャパシタと同様に電荷を蓄える部分を蓄電池内に設けたことにより、この部分が電池電極部分と比べて内部抵抗が小さいことで高電流の充電・放電を優先的に行うことになり、充放電性能が向上することに加え電池部分の負担を軽減して、バッテリとしての耐久性も3〜4倍程度向上することになる。
【0007】
しかしながら、斯かるハイブリッド式の蓄電池では、キャパシタによる電荷を蓄える部分の面積が正・負の電極面積と比較して小さいことから、全体容量に対するキャパシタ機能の貢献割合は実に小さく、さらに、単にキャパシタと電池を融合したのみではエネルギー密度の大幅な改善は期待することができない。そのため、バッテリとしての総合性能の改善は全体的にはさほど大きくはなく、上述した要請への対応は充分に達成されていないのが現状である。
【0008】
これに対し、本願発明者らは、先に特開2013−247101号公報において、図5に示すようなハイブリッドバッテリを提案している。即ち、二酸化鉛からなる正極板8と鉛からなる負極板9を交互に並べた状態で電解液100に浸漬して鉛バッテリを構成したものであるが、隣り合う正極板8と負極板8が対をなすとともに各内側面に表面積を拡大する活性炭層80,90を有しながら、その間に電解質200を挟装したユニットでキャパシタセルを構成してなる電極体20とし、この複数の電極体20が正極板8と負極板9が向かい合って並ぶ配置として、その向かい合う正極板8を負極板9が中間の電解質100とともに各々電池セル50を構成するものとした。これにより、キャパシタで電荷を貯める部分の割合を拡大しながら優れた充放電性能を実現可能としている。
【0009】
ところが、このように薄板状の二酸化鉛板8と鉛板9を電極板としてキャパシタとバッテリを実現させた構成にあっては、その電極板の腐食が比較的短期間で進んでしまい、充分なる耐久性を確保することが困難であった。また、電極板のキャパシタを構成する部分に活性炭素層を設けたことで、蓄電量の拡大が期待されたが、活性炭素層に通常のナノカーボンを使用しても、その蓄電量の拡大は充分とは言い難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2007−506230号公報
【特許文献2】特開2013−247101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、総合性能に優れたバッテリを低コストで提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、導電体に各々接続された正極板と負極板を交互に並べた状態で電解液に浸漬してなるバッテリにおいて、前記正極板はアルミニウム又はアルミニウム合金からなるとともにその表裏両面に酸化ナノカーボンによる活性炭素層が形成され、前記負極板は銅又は銅合金からなるとともにその表裏両面にはナノカーボンによる活性炭素層が形成されている、ことを特徴とするバッテリとした。
【0013】
このように、バッテリを構成する対の電極板にアルミと銅の組み合わせを用いたことで、鉛と二酸化鉛の組み合わせを用いる場合と比べて、電極板の耐食性が高まって優れた耐久性を発揮するものとなるが、その対の電極の表面に活性炭素層を設ける際に、正極には酸化ナノカーボンを用い、負極にはナノカーボンを用いたことにより、コストの高騰を招くことなく活性炭素層に通常のナノカーボンを用いる場合と比べて高容量化が実現されるとともに、充放電性能にも一層優れたものとなる。
【0014】
また、このバッテリにおいて、その隣り合う正極板と負極板が対をなしてその間に誘電体を挟装してなるユニットでキャパシタセルを構成し、複数の前記キャパシタセルが正極板と負極板が向かい合って並ぶ配置とされて、この向かい合う正極板と負極板が中間の電解液とともに各々電池セルを構成している、ことを特徴とするバッテリとすれば、交互に並ぶ正極板と負極板を対にしてキャパシタセルを構成するとともに、複数並んだキャパシタセルの対向面となる正極板と負極板とで電池セルを構成したことにより、正極板と負極板において電池を構成する部分に対しキャパシタで電荷を溜める部分の割合を大きく確保することができ、且つ、対の正極板と負極板で完全なるキャパシタセルになるとともに、対向する正極板と負極板と間の電解液とで完全なる電池セルになるため、バッテリとキャパシタの両機能を充分に発揮しながら、優れた急速充放電性能と耐久性を実現可能なハイブリッドバッテリとなる。
【0015】
さらに、このハイブリッド化したバッテリにおいて、そのキャパシタセルを、正極板と負極板の間に挟装された内側部分が、所定のシール材で電解液に対し密封されていることを特徴としたものとすれば、キャパシタセルの内部が電解液側に開放されることによるキャパシタ機能の低下・劣化を回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
アルミ又はアルミ合金製の正極板の表裏両面に酸化ナノカーボンによる活性炭素層を設け、銅又は銅合金製の負極板の表裏両面にナノカーボンによる活性炭素層を設けた本発明によると、低コストでも総合性能に優れたバッテリとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明における第1の実施の形態のバッテリの構成を示す縦断面図である。
図2図1のバッテリの斜視図である。
図3】本発明における第2の実施の形態のバッテリの構成を示す縦断面図である。
図4図1のバッテリの斜視図である。
図5】従来例のバッテリの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明において、ナノカーボンにはカーボンナノチューブも含まれるものとし、キャパシタとは電気二重層キャパシタに限定されずに電荷を蓄えることのできる電子部品としてのコンデンサと同義のものとする。
【0019】
図1は、本発明における第1の実施の形態である単素子タイプのバッテリ1Aを縦断面図で示している。このバッテリ1Aは、導電体に接続される正極板11Aと負極板12Aを対向させてその間と各外側面側に電解液浸漬材15を密着配置したことにより電解液に浸漬した状態にしたものであり、破線はバッテリ素子を収納するケースを示している。
【0020】
そして、このバッテリ1Aは、正極板11Aを構成する金属薄板がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるとともにその表裏両面を総て覆うように酸化ナノカーボンによる活性炭素層110が形成されており、且つ、負極板12Aを構成する金属薄板が銅又は銅合金からなるとともに、その表裏両面の総てを覆うようにナノカーボンによる活性炭素層120が形成されている点が、本発明の最大の特徴部分となっている。
【0021】
図2は、図1のバッテリ1Aの応用例であって、前述した単素子のバッテリ1Aの複数個を、正極板11Aと負極板12Aが対向するように交互に複数配置してなるバッテリ1Bを斜視図で示している。図示したように、正極板11Aと負極板12Aは同一形状・同一サイズのものが対向配置され、その表裏と同一形状・同一サイズの表裏を有する電解液浸漬材15が、その間と両端側に密着配置されており、正極板11Aからは導電体に接続される端子111が、負極板12Aからは端子121が各々露出している。
【0022】
このようにバッテリの電極板として、その正極板11Aがアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、その負極板12Aが銅又は銅合金からなるものとしたことで、鉛蓄電池と比べて格段に耐久性に優れたものとなるが、正極板11Aの表裏両面に酸化ナノカーボンによる活性炭素層110を形成し、負極板12Aの表裏両面にナノカーボンによる活性炭素層120が形成する改良を加えたことだけで、その他の構成は同様で両電極板の活性炭素層をナノカーボンで形成したものと比べて、二次電池としての充放電性能に優れながらその蓄電容量が一層大きくなることが本願発明者らの実験により明らかとなっている。
【0023】
図3は、本発明における第2の実施の形態である単素子タイプのバッテリ2Aを縦断面図で示している。このバッテリ2Aは、前述した第1の実施の形態と同様に、正極板11Aを構成する金属薄板がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるとともにその表裏両面に酸化ナノカーボンによる活性炭素層110が形成されており、負極板12Aを構成する金属薄板が銅又は銅合金からなるとともに、その表裏両面の総てを覆うようにナノカーボンによる活性炭素層120が形成されている点で、前述した実施の形態と共通している。
【0024】
即ち、本実施の形態においても、正極板11Aの表裏両面を覆う活性炭素層110が酸化ナノカーボンで構成されているが、本実施の形態では、隣り合う正極板11Aと負極板12Aが対をなしてその間に誘電体14を挟装してなるユニットでキャパシタセル3Aを構成し、2つのキャパシタセル3Aが、正極板11Aと負極板12Aを向かい合うように配置されており、この向かい合う正極板11Aと負極板12Aが中間の電解液浸漬材15とともに、電池セルを構成している点を特徴としている。
【0025】
このような構成としたことで、過剰なコストアップを招くことなく、正極板11Aと負極板12Aにおいて電池を構成する部分に対しキャパシタで電荷を溜める部分の割合を大きく確保することができ、且つ、対の正極板11Aと負極板11Bで完全なるキャパシタセル3Aになるとともに、対向する正極板と負極板と間の電解液とで完全なる電池セルになって、キャパシタとバッテリを複合した単素子のハイブリッドバッテリとなっている。
【0026】
そして、その正極板11Aのキャパシタを構成する活性炭素層110の内側面が、酸化ナノナノカーボンで構成されたことにより、これを通常のナノカーボンで構成したものと比べて、低コストで蓄電容量が格段に大きくなるとともに電池性能に一層優れたものとなることが、本願発明者らの実験により判明している。
【0027】
また、本実施の形態では、そのキャパシタセル3Aにおいて、正極板11Aと負極板12Aの間に挟装された部分、即ち正極板11Aと負極板12Aの内側面である活性炭素層110,120及び誘電体14で構成される内部側が、シール材20により電解液浸漬材15由来の電解液に対して密封されている点も特徴としており、キャパシタセル3A内部が電解液側に開放されることによるキャパシタ機能の低下・劣化を回避可能としている。
【0028】
図4は、前述したバッテリ2Aの応用例を斜視図で示したものであり、正極板11Aと負極板12Aを間に誘電体14を挟んで内側部分をシールしてなるキャパシタセル3Aの複数個を、隣り合うキャパシタセル3Aの正極板11Aと負極板11Bが対向するように配置しながら、その間と両端側に電解液浸漬材15挟装して各々電池セルを構成したものとなっており、このような構成を採用することで、キャパシタ性能の向上に加え、バッテリ性能が相乗的に向上したものとなっている。
【0029】
以上、述べたように、本発明により、総合性能に優れたバッテリを低コストで提供できるようになった。
【符号の説明】
【0030】
1A,2B,2A,2B バッテリ、3A キャパシタセル、11A 正極板、12A 負極板、14 誘電体、15 電解液浸漬材、20 シール材、110,120 活性炭素層、111,121 端子
図1
図2
図3
図4
図5