(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6811973
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】浮遊構造物及び基礎構造物
(51)【国際特許分類】
A63G 3/00 20060101AFI20201228BHJP
A63G 31/12 20060101ALI20201228BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
A63G3/00
A63G31/12
B63B35/44 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-231715(P2019-231715)
(22)【出願日】2019年12月23日
【審査請求日】2019年12月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519457812
【氏名又は名称】株式会社トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 幸孝
【審査官】
田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−546934(JP,A)
【文献】
特開2001−161881(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3030271(JP,U)
【文献】
実開平01−082068(JP,U)
【文献】
実開平01−069095(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0101488(US,A1)
【文献】
実開昭50−048398(JP,U)
【文献】
米国特許第05570480(US,A)
【文献】
特開平07−223584(JP,A)
【文献】
特開2003−158968(JP,A)
【文献】
特開2004−081112(JP,A)
【文献】
としまえんプール事故「水上遊具」に潜む危険 安全性、監視体制の見直し急務,産経ニュース[online],2019年 8月22日,特に本文、図を参照。,URL,https://www.sankei.com/affairs/news/190822/afr1908220006-n1.html
【文献】
水上アスレチックのプールで女児が死亡したのはライフジャケットの浮力が原因[online],2019年 8月17日,特に「コメント」の欄を参照。,URL,https://togetter.com/li/1390755
【文献】
狙うは船舶の排水処理、始まった特需争奪戦,東洋経済オンライン[online],2014年 9月 7日,特に図を参照。,URL,https://toyokeizai.net/articles/-/47262
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A63B 1/00−71/16
A63G 1/00−33/00
B63B22/00−22/28
B63B35/00−35/70
B63C 1/00−15/00
E04H 3/00− 4/16
A01K83/00−85/18
A01K91/00−91/16
A01K91/20−95/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に充填された気体の浮力により液面に浮遊する本体部と、
前記本体部の下方側に連結手段を介して取り外し可能に連結され、内部に液体が充填されることで所定の形状を形成する基礎部と、
を備え、
前記連結手段は、前記本体部と別体であり、
前記基礎部の内部には、前記基礎部の内側の所定位置を位置決めする規制部材が設けられており、
前記基礎部の上面は、前記本体部の下面側の全体を覆い、前記基礎部の下面は、外側に向かって上方に傾斜していることを特徴とする、
浮遊構造物。
【請求項2】
前記基礎部は、上面に内部に充填される液体を注水する注水口を有することを特徴とする、
請求項1に記載の浮遊構造物。
【請求項3】
内部に液体が充填され、内部に充填された気体の浮力により液面に浮遊する本体部の下方に前記本体部と別体の連結手段を介して連結して使用される基礎構造物であって、
内部に液体が充填されることで所定の形状を形成し、内部には内側の所定位置を位置決めする規制部材が設けられており、上面側は前記本体部の下面側の全体を覆い、下面側は、外側に向かって上方に傾斜していることを特徴とする、
基礎構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊構造物及び基礎構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水上に浮遊して使用される水上遊戯施設が知られている。例えば、特許文献1では、内部に気体が充填されて浮くように形成された浮き遊具と、浮き遊具を係止するために岸から所定距離を離した水面近くに配置されるベース枠体と、ベース枠体を係留する係留手段とを備え、ベース枠体に着脱自在に係止し得るようになった水上遊戯施設が記載されている。この水上遊戯施設では、浮き遊具を水上に安定的に設置させておくことができると共に、気象条件が悪化した時には、事前に浮き遊具を回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−195502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水上遊戯施設は水上に浮かべて使用されるため、水中に人が潜り込むことで、容易に水上遊戯施設の下に入り込み、水上に上がれなくなり窒息事故に繋がる危険があった。これに対して、水上遊戯施設の外辺より、メッシュ等を底面まで吊り下げ侵入を防止する手法が採用されているが、潮位や潮流、人が押すことによりメッシュに緩みが生じることにより、水上遊戯施設の下に入り込んでしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、人が下に入り込んでしまった場合であっても、水面に容易に浮上可能な浮遊構造物及び基礎構造物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の浮遊構造物は、
内部に充填された気体の浮力により液面に浮遊する本体部と、
前記本体部の下方側に連結され、内部に液体が充填される基礎部と、
を備え、
前記基礎部の上面は、前記本体部の下面側の全体を覆い、前記基礎部の下面は、外側に向かって上方に傾斜していることを特徴とする、
ものである。
【0008】
この浮遊構造物は、本体部の内部に充填された気体の浮力によって本体部が浮遊し、この本体部の下方側に内部に液体が充填された基礎部が連結されることで、基礎部により本体部の安定性を向上させることができる。このとき、基礎部の上面が本体部の下面側の全体を覆い、基礎部の下面が外側に向かって上方に傾斜しているため、本体部の下部に人が入り込んだ場合には、液体の浮力によって基礎部の下面に沿って本体部の外側に導かれることになるため、本体部の下部に入り込む可能性を未然に低減することができる。また、基礎部の内部は液体が充填されているため、外側から人等が当接した場合には、水圧により人が基礎部の壁面に埋没する可能性を未然に低減しているため、人が本体部の下部に入り込む可能性を未然に低減することができる。
【0009】
本発明の浮遊構造物において、前記基礎部は、下面側に水平面を有しないことを特徴としてもよい。こうすることにより、人が本体部の下部に入り込んだ場合に、浮力により基礎部の下方向から当接すると、水平面を有しないため、基礎部に沿って浮上することで本体部の外側に導かれることになるため、本体部の下部に人が入り込む可能性を未然に低減することができる。
【0010】
本発明の浮遊構造物において、前記基礎部は、略四角錐形状であることを特徴としてもよい。こうすることにより、人が本体部の下部に入り込んだ場合に、浮力により基礎部の下方向から当接すると、四角錐のそれぞれの稜に沿って浮上することで本体部の外側に導かれることになるため、本体部の下部に人が入り込む可能性を未然に低減することができる。
【0011】
本発明の浮遊構造物において、前記基礎部は、前記基礎部の最も低い場所である底点と、前記基礎部の上面の外側端と前記底点とを結ぶ直線と前記上面との角度が45°以下であることを特徴としてもよい。こうすることにより、人が本体部の下部に入り込んだ場合に、浮力により基礎部の下方向から当接すると、基礎部に沿って浮上することで本体部の外側に導かれることになるため、本体部の下部に人が入り込む可能性を未然に低減することができる。
【0012】
本発明の基礎構造物は、
内部に液体が充填され、内部に充填された気体の浮力により液面に浮遊する本体部の下方に連結して使用される基礎構造物であって、
上面側は前記本体部の下面側の全体を覆い、下面側は、外側に向かって上方に傾斜していることを特徴とする、
ものである。
【0013】
この基礎構造物は、本体部の内部に充填された気体の浮力によって浮遊する本体部の下方側に内部に液体が充填された状態で連結されることで、本体部の安定性を向上させることができる。このとき、基礎構築物の上面が本体部の下面側の全体を覆い、基礎構築物の下面が外側に向かって上方に傾斜しているため、本体部の下部に人が入り込んだ場合には、液体の浮力によって基礎構築物の下面に沿って本体部の外側に導かれることになるため、本体部の下部に入り込む可能性を未然に低減することができる。また、基礎部の内部は液体が充填されているため、外側から人等が当接した場合には、水圧により人が基礎構築物の壁面に埋没する可能性を未然に低減しているため、人が本体部の下部に入り込む可能性を未然に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、浮遊構造物20の構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、他の実施の形態の浮遊構造物20の構成の概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態の一例として、浮遊構造物20について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。また、以下の説明においては、浮遊構造物の一例として浮遊構造物20について説明するが、浮遊構造物20から本体部30を除外した構造が本発明の基礎構造物に相当するため、浮遊構造物20の説明を行うことで、本発明の基礎構造物についても合わせて説明する。
【0016】
本発明の実施の形態の一例である浮遊構造物20は、
図1に示すように、空気等の気体が充填された本体部30と、水等の液体が充填された基礎部40とが、ロープ50によって連結された状態で、水面等の液体に浮遊した状態で使用される。この浮遊構造物20は、本体部30に空気が充填されることにより、本体部30の浮力により水面に浮遊する。このとき、本体部30にはロープ50によって水が充填された基礎部40が連結されるが、基礎部40に水を充填することにより、基礎部40には、ほとんど浮力が発生しないことになる。このため、基礎部40の自重により、本体部30の動きを規制する重りの役割を基礎部40が果たすと共に、基礎部40の外側から押圧した場合には、基礎部40の内部に充填された水の水圧により、外側方向に押圧されることになる。
【0017】
本体部30は、内部に設けられた空間に空気が充填されることにより、所定の形状を形成する樹脂製の袋状部材である。この本体部30には、内部に設けられた空間と連通する通風口32が設けられており、この通風口32から空気を充填することにより、特定の形状を形成する。具体的には、本体部30の外形が特定の形状で形成されており、内部には、本体部30の内側の所定の位置を位置決めする図示しないロープ等の規制部材が設けられている。こうすることにより、通風口32から空気を充填することにより、空気の圧力により本体部30が内側から押圧され、規制部材及び本体部30の形状に沿って所定の形状を形成する。
【0018】
基礎部40は、内部に設けられた空間に水が充填されることにより、所定の形状を形成する樹脂製の袋状部材である。この基礎部40には、内部に設けられた空間と連通する注水口42が上面44側に設けられており、この注水口か42から水を充填することにより、特定の形状を形成する。具体的には、基礎部40の外径が略四角錐形状に形成されており、内部には、基礎部40の内側の所定位置を位置決めする図示しないロープ等の規制部材が設けられている。こうすることにより、注水口42から水を充填することにより、水圧により基礎部40が内側から押圧され、規制部材及び基礎部40の形状に沿って略四角錐形状を形成する。このように、本体部30が水上に浮遊する際、基礎部40に水を充填することにより、基礎部40の浮力の影響を小さくすることができるため、基礎部40の自重により、本体部30の重りとしての役割を果たすことができる。
【0019】
また、基礎部40は、上面44の中心点(上面44の各頂点から同一の距離にある点)の下方に位置する底点46を頂点の一つとする略四角錐形状を形成している。言い換えると、基礎部40の下方側は、底点46を頂点とし、上面44の各辺に向かって傾斜する傾斜面によって形成されていると言える。このため、基礎部40の下方側に人間等が位置する場合には、人間等が浮力によって浮上する際、基礎部40の下方側の各辺に沿って浮上することになる。このとき、基礎部40には水が充填されているため、人間等が基礎部40を外側から押圧したとしても、水圧によって押し返されることになり、基礎部40の外面に埋没する可能性が未然に低減され、基礎部40の外面に沿って浮上することになる。加えて、基礎部40の下面は、底点46を頂点とする略四角錐形状であり、水平面を有しないため、基礎部40の下方のいずれの位置に人間が位置した場合であっても、浮力によって基礎部40の外面に沿って浮上することになり、基礎部40によって浮上が妨げられることがない。
【0020】
加えて、基礎部40は、上面44が本体部30の下面の全体を覆う大きさで形成されており、本体部30の下面とロープ50によって連結されているため、基礎部40の外面に沿って浮上した際には、必ず基礎部40の下面よりも外側に浮上することになる。このため、人が基礎部40の下側に入り込む可能性を未然に低減することができる。また、本体部30と基礎部40とがロープ50によって取り外し可能に連結されているため、例えば、本体部30に空気を充填する作業と基礎部40に水を充填する作業とを別々の場所で行い、基礎部40又は本体部30を移動させて連結することができる。こうすることにより、基礎部40の上面側に注水口42を設けることができるため、注水口42が基礎部40の側面や下面に備えられている場合と比較して、注水作業がしやすい。
【0021】
このように、水中に袋状の密閉機構である基礎部40を設けて中に水を充填し、底面を四角錐形状にすることで、例え浮遊構造物20の下に人が潜った場合であっても、水面に出やすい形状とすることで、事故の防止につなげることができる。また、基礎部40の内部に水が充填することで、浮力に大きな影響を与えることなく、緩みが生じず、安定した機能を発揮することができる。
【0022】
以上詳述した本実施の形態の浮遊構造物20は、内部に充填された空気の浮力によって浮遊する本体部30の下方側に、内部に水が充填された基礎部40がロープ50で連結される。このとき、基礎部40の上面側は本体部30の下面側の全体を覆い、基礎部40の下面は四角錐形状であるため、本体部30の下面側に転落した人が入り込んだ場合には、人の浮力により基礎部40の側面に沿って本体部30よりも外側に浮上することになる。こうすることにより、人が本体部30の下部に入り込む可能性を未然に低減することができる。
【0023】
加えて、基礎部40の内部には水が充填されているため、転落した人が浮力で浮かび上がる際、基礎部40の側面を押圧した場合であっても、基礎部40の内部の水の水圧により押圧され、基礎部40の側面に埋め込まれる可能性を未然に低減し、人が本体部30の外側へ浮上することを導くことができる。
【0024】
また、基礎部40の下面側には水平面を有しないため、転落した人が浮力で浮かび上がる際、基礎部40の下面側のいずれの場所に当接したとしても、外側方向に傾斜する傾斜面に沿って基礎部40の外側方向に導かれることになるため、本体部30の下側に入り込む可能性を未然に低減することができる。
【0025】
更にまた、基礎部40が略四角形状であるため、転落した人が浮力で浮かび上がる際、基礎部40の下面側のいずれの場所に当接したとしても、外側方向に傾斜する傾斜面に沿って基礎部40の外側方向に導かれることになるため、本体部30の下側に入り込む可能性を未然に低減することができる。
【0026】
そして、基礎部40の底点46と上面44の外側端とを結ぶ直線と上面44の角度は、45°以下であることから、転落した人が浮力で浮かび上がる際、基礎部40の下面側のいずれの場所に当接したとしても、外側方向に傾斜する傾斜面に沿って基礎部40の外側方向に導かれることになるため、本体部30の下側に入り込む可能性を未然に低減することができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
例えば、上述した実施の形態では、基礎部40は略四角錐形状であるものとしたが、底面が水平面でない形状であればこの形状に限定されるものではなく、例えば、
図2に示すように、略半球形状であってもよいし、三角錐形状等の多角錐形状であってもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0029】
上述した実施の形態では、本体部30と基礎部40はロープ50で連結するものとしたが、連結する手段はロープ50に限定されるものではなく、公知の種々の連結手段、例えば、公知の種々のクランプ、棒状や紐状の連結具等で連結してもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上述した実施の形態で示すように、浮遊構造物、例えば、水上に浮遊させて用いる遊具として利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
20…浮遊構造物、30…本体部、32…通風口、40…基礎部、42…注水口、44…上面、46…底点、50…ロープ。
【要約】
【課題】誤って人が下側に入り込んでしまった場合であっても、水面に容易に浮上可能な浮遊構造物を提供すること。
【解決手段】内部に充填された空気の浮力によって浮遊する本体部30の下方側に、内部に水が充填された基礎部40がロープ50で連結される。このとき、基礎部40の上面側は本体部30の下面側の全体を覆い、基礎部40の下面は四角錐形状であるため、本体部30の下面側に転落した人が入り込んだ場合には、人の浮力により基礎部40の側面に沿って本体部30よりも外側に浮上することになる。こうすることにより、人が本体部30の下部に入り込む可能性を未然に低減することができる。
【選択図】
図1