(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機体と、前記機体に搭載されていて複数のプロペラを個別に回転駆動する複数のプロペラ駆動モーターと、を有し、前記機体は、前記複数のプロペラ駆動モーターを支持するフレームを有する飛行体であって、
前記機体に取り付けられ、前記フレームを含む前記機体の構造部品の緩み又はがたつきを検出した場合に異常信号を出力する弛緩センサーを備え、
飛行中に前記弛緩センサーが前記異常信号を出力した場合にホバリングを行わせ、当該ホバリング中に前記弛緩センサーが前記異常信号を出力しない場合に、稼働状態に復帰させ、
前記ホバリング中に前記弛緩センサーが前記異常信号を出力する場合に、離陸地点へ戻って着陸する帰還動作、その場で着陸する着陸動作、前記複数のプロペラ駆動モーターを停止する緊急停止動作のいずれかの動作を実施し、
前記弛緩センサーとして角速度センサーを有し、前記ホバリング中に前記角速度センサーにより所定周波数帯域の振動を検出した場合に、前記異常信号を出力する、飛行体。
機体と、前記機体に搭載されていて複数のプロペラを個別に回転駆動する複数のプロペラ駆動モーターと、を有し、前記機体は、前記複数のプロペラ駆動モーターを支持するフレームを有する飛行体であって、
前記フレームを含む前記機体の構造部品の緩みやがたつきを検出する弛緩センサーが前記機体に取り付けられ、
前記弛緩センサーが異常信号を出力する場合に、退避行動を行い、
前記フレームは、一つの第1支持アームと、前記第1支持アームの長さ方向の途中から斜めに対称形に伸びる二つの第2支持アームとを有してなり、前記第1支持アームの両端部および前記第2支持アームの先端部でそれぞれ前記プロペラ駆動モーターを支持している飛行体。
前記第1支持アームと前記第2支持アームと前記補強梁を有してなる前記フレームが上下に配置され、上下の前記フレームが柱によって結合され、前記第1支持アーム、前記第2支持アーム、前記補強梁によって台形状の立体空間を構成し、前記立体空間内に前記弛緩センサーが配置されている請求項6記載の飛行体。
前記プロペラは、平面視において前後左右の計4か所に配置され、前後のプロペラ間隔よりも左右のプロペラ間隔が広く、前記左右のプロペラの間に振動抑制部品を含む部品を搭載する部品搭載部が配置されている請求項1乃至8のいずれかに記載の飛行体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る飛行体(以下「ドローン」という)の実施形態について説明する。図はすべて例示であって、本発明に係る飛行体の構成が実施例の構成に限定されるものではない。本明細書において、ドローンとは、動力方式や操縦方式を問わず、複数の回転翼または飛行手段を有する飛行体全般を指すこととする。動力方式としては、電力によるもの、内燃機関などの原動機によるものなどがある。操縦方式としては、無線または有線によるもの、および、自律飛行型あるいは手動操縦型などがある。
【0016】
[ドローン全体の構成]
図1乃至
図5において、ドローンは、4か所の上下にローターとも呼ばれるプロペラ101−1a、101−1b、101−2a、101−2b、101−3a、101−3b、101−4a、101−4bを有する。これらのプロペラは、ドローンを飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、バッテリー消費量のバランスを考慮し、2段構成のプロペラが4組、合計8機備えられている。4組のプロペラの回転中心は平面視において長方形の角に位置している。プロペラ101−2a、101−4a側がドローンの進行方向前側になっている。
【0017】
上記各プロペラは、プロペラ駆動モーター(以下単に「モーター」という場合もある)102−1a、102−1b、102−2a、102−2b、102−3a、102−3b、102−4a、102−4bによって個別に回転駆動される。1組の上下のプロペラ、例えば101−1aと101−1bは、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、モーター102−1aと102−1bにより、互いに反対方向に回転駆動される。各組の上下のプロペラは互いに反対方向に回転駆動されることによりともに下降流を発生させ、ドローンを上昇させる向きの推力を発生させる。他の組の上下のプロペラも同様に構成され、同様に推力を発生させる。
【0018】
図示の実施形態は農業用のドローンであり、薬剤を下方に向けて散布するための4つの薬剤ノズル103−1、103−2、103−3、103−4が備えられている。本明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種および水など、圃場に散布される液体または粉体を一般的に指す。
【0019】
ドローンは、散布する薬剤を収容するための薬剤タンク104を有している。薬剤タンク104は、重量バランスの観点からドローンの重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤タンク104の下側にはポンプ106が取り付けられ、ポンプ106は薬剤ホース105につながっている。薬剤ホース105は、ドローンの進行方向前側下部に、ドローンのほぼ幅方向全体にまたがって直線状に伸びている。薬剤ホース105にはその長さ方向に一定間隔で4個の薬剤ノズル103−1、103−2、103−3、103−4が配置されている。ポンプ106が作動することにより、薬剤タンク104内の薬剤が各薬剤ノズルから吐出され、圃場に散布される。
【0020】
[フレームの構成]
次に、
図6乃至
図9も併せて参照しながら、実施形態に係るドローンのフレーム構成および胴体50の構成を詳細に説明する。本明細書において、「胴体」とは、ドローンの動作を制御する制御部品や駆動電源となるバッテリーやセンサー類などを搭載する部分で、ヘリコプターや飛行機の胴体に相当する。胴体やフレーム、プロペラ、プロペラ駆動モーターを含むドローン全体を「機体」という。ドローンのフレームは、互いに一体に結合され、かつ、前記複数のプロペラ駆動モーターを支持する複数の支持アームで構成されている。複数の支持アームで構成されるフレームは、上下に所定の間隔をおいて一体に結合された一対のフレームからなる。
【0021】
上側のフレームを構成する前記複数の支持アームは、両端部においてそれぞれプロペラ駆動モーターを支持する一つの第1支持アーム10と、第1支持アーム10から延びた二つの第2支持アーム11,12とを有してなる。第2支持アーム11,12は、第1支持アーム10の長さ方向の途中から斜めに対称形に、かつ、先端部が互いに広がる方向に伸びている。
【0022】
第2支持アーム11,12は、長さ方向の途中において補強梁13によって結合されている。補強梁13は第1支持アーム10と平行になっていて、第1支持アーム10と第2支持アーム11,12と補強梁13とで、平面視で台形状に形成され、いわゆるトラス構造に近い構造になっている。フレームは、トラス構造に近い構造になっていることにより、比較的簡単な構成でありながら、機械的強度を高めることができる。第1支持アーム10、第2支持アーム11,12および補強梁13は、同一平面内に位置するように、適宜の結合部材を介して結合されている。
【0023】
第1支持アーム10の両端部においてそれぞれモーター102−2a、102−4aが支持されている。モーター102−2a、102−4aの回転出力軸にはそれぞれプロペラ101−2a、101−4aが取り付けられていて、各プロペラが上記各モーターによって個別に回転駆動される。第2支持アーム11,12の各先端部で上記モーターとは別のモーター102−1a、102−3aが支持されている。モーター102−1a、103−3aの回転出力軸にはそれぞれプロペラ101−1a、101−3aが取り付けられていて、各プロペラが上記各モーターによって個別に回転駆動される。
【0024】
下側のフレームも上側のフレームとほぼ同様の構造になっている。下側のフレームは、両端部においてそれぞれプロペラ駆動モーターを支持する一つの第1支持アーム20と、第1支持アーム20から延びた二つの第2支持アーム21,22とを有してなる。第2支持アーム21,22は、第1支持アーム20の長さ方向の途中から斜めに対称形に、かつ、先端部が互いに広がる方向に伸びている。第1支持アーム20および第2支持アーム21,22は同一平面内に位置するように、適宜の結合部材を介して結合されている。
【0025】
上下のフレームは、互いに平行をなすように適宜数の柱の介在の下に結合されている。上下に対をなす第2支持アーム11,21および別の対をなす第2支持アーム12,22は、長さ方向の中間部でそれぞれ柱30,30によって結合されている。また、上下一対の第1支持アーム10,20は、上側の第2支持アーム11,21との結合部付近と、下側の第2支持アーム12,22との結合部付近において、それぞれ柱31,31によって結合されている。上記各支持アームと各柱は、適宜の結合部材を介在させることによって結合されている。
【0026】
一対の柱30,30は、上下方向下寄りの位置において補強梁23によって結合されている。補強梁23は、第1支持アーム20と第2支持アーム21,22からなる下側のフレームの補強梁でもあり、上下のフレーム全体の補強梁としても機能する。補強梁13は第1支持アーム10と平行になっていて、第1支持アーム10と第2支持アーム11,12と補強梁13とで、平面視で台形状に形成され、いわゆるトラス構造に近い構造になっている。
【0027】
上下のフレームを構成する前記第1支持アーム10,20、第2支持アーム11,12,21,22、補強梁13,23、上下のフレームを結合する柱30,31は、パイプ状の部材である。また、フレームを構成する上記の部材、少なくとも第1支持アーム、第2支持アームおよび補強梁の素材は、熱伝導素材、例えばアルミニウム合金または炭素繊維複合材からなる。炭素繊維複合材としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、炭素繊維強化炭素複合材料などがある。フレームを構成する部材の素材がアルミニウム合金または炭素繊維複合材などからなり、かつ、パイプ状の部材であることによって、フレームに必要な強度を持たせながらフレームの軽量化を図ることができる。また、後で詳細に説明するように、放熱効果を高めることができる。
【0028】
[プロペラガード]
上下一対の第2支持アーム11,21の先端部で支持されているプロペラ101−1a、101−1bは、プロペラガード41によって囲まれ、プロペラガード41内で回転する。プロペラガード41は、上下一対の円環状の枠と、これらの枠を一定の間隔をおいて平行に結合する柱状の介在部材と、上下の枠の中心位置にあるハブと、上下それぞれの枠とハブとを結合する複数のスポークと、を有してなる。上下のハブは、その中心をプロペラ101−1a、101−1bの回転中心に一致させて第2支持アーム11,21の先端部に結合されている。
【0029】
上下一対の第1支持アーム10,20の正面から見て右側の端部で支持されているプロペラ101−2a、101−2bは、プロペラガード42によって囲まれ、プロペラガード42内で回転する。
【0030】
上下一対の第2支持アーム12,22の先端部で支持されているプロペラ101−3a、101−3bは、プロペラガード43によって囲まれ、プロペラガード43内で回転する。
【0031】
上下一対の第1支持アーム10,20の正面から見て左側の端部で支持されているプロペラ101−4a、101−4bは、プロペラガード44によって囲まれ、プロペラガード44内で回転する。
【0032】
各プロペラガード42,43,44は、プロペラガード41と同様に構成されている。すなわち、各プロペラガード42,43,44は、上下一対の円環状の枠と、これらの枠を平行に結合する複数の柱状の介在部材と、上下の枠の中心位置にあるハブと、上下それぞれの枠とハブとを結合する複数のスポークと、を有してなる。プロペラガード42は、その上下のハブが第1支持アーム10,20の正面から見て右側の端部に結合されている。プロペラガード43は、その上下のハブが第2支持アーム12,22の先端部に結合されている。プロペラガード44は、その上下のハブが第1支持アーム10,20の正面から見て左側の端部に結合されている。
【0033】
ドローンの右後ろに位置するプロペラ101−1a、101−1bと、右前に位置するプロペラ101−2a、101−2bとの間隔は狭く、これらのプロペラガード41,42を構成する円環状の枠が接触している。ドローンの左後ろに位置するプロペラ101−3a、101−3bと、左前に位置するプロペラ101−4a、101−4bとの間隔も狭く、これらのプロペラガード43,44を構成する円環状の枠が接触している。
【0034】
各プロペラガード41,42,43,44を構成する前記枠、ハブおよびスポークの素材は熱伝導素材であることが望ましい。少なくともプロペラガード41,42,43,44の上下の面に格子状に配置されているスポークは熱伝導素材からなっていることが望ましい。
【0035】
ドローンの前後に位置するプロペラ相互の間隔に対して左右に位置するプロペラ相互の間隔は広くなっている。すなわち、ドローンの左右に位置するプロペラ101−4a、101−4bとプロペラ101−2a、101−2bとの間隔およびプロペラ101−3a、101−3bとプロペラ101−1a、101−1bとの間隔は広くなっている。これらのプロペラガード44と42および43,41は互いに離間している。
【0036】
[胴体]
平面視において、4組の各プロペラ101−1a、101−1bと、101−2a、101−2bと、101−3a、101−3bおよび101−4a、101−4bの回転中心を結ぶ線は横長の長方形になっている。前後に並ぶ左側のプロペラガード43,44と、前後に並ぶ右側のプロペラガード41,42との間には空間があり、この空間に、電源バッテリー、制御回路、モーター駆動回路などの内蔵部品を支持する胴体50が配置されている。
【0037】
胴体50は、扁平な皿状の底板51と、底板51の上に被せられたカバー52を有してなる。底板51およびカバー52は、アルミニウム合金または炭素繊維複合材などの熱伝導体からなる。底板51とカバー52で囲まれた内部空間が、電源バッテリー、モーター駆動回路、制御回路などの内蔵部品を組み込む部品搭載部になっている。胴体50は、前後方向に長く、進行方向前端の平面形状は半円形である。
【0038】
胴体50は、左右の前記プロペラおよび左右のプロペラガード41,42と43,44との間に生じている空間に、かつ、上下の補強梁13,23の間に配置されている。胴体50を構成する底板51は、その底面が、下側の補強梁23に結合部材を介して結合されている。上記結合部材は熱伝導性の良好な素材からなる板状の部材で、補強梁23をほぼ半周にわたって抱え込むとともに、両側縁部が底板51の底面に面接触した状態で締結されている。
【0039】
胴体50を構成するカバー52は上側の補強梁13に結合部材59を介して結合されている。結合部材59も熱伝導性の良好な素材からなる板状の部材で、補強梁13をほぼ半周にわたって巻き込むとともに、両側縁部がカバー52の上面に面接触した状態で締結されている。
【0040】
図9は、胴体50内の部品搭載部における部品配置の概要を示す。胴体50内の後ろ側(
図9において斜め右下側)の約半分の空間56は、上下の補強梁13,23に近く、冷却効果の高い空間になっている。この空間56は上下に層状に区分されていて、上層部分にはバッテリー装着空間153が設けられている。バッテリー装着空間153には、二次バッテリーすなわち充電可能なバッテリー55を2個平行に並べて配置できるように、バッテリー受け部材152と、2個のバッテリー締め具154を備えている。
【0041】
飛行体の運用時は、バッテリー装着空間153に2個のバッテリー55が装填される。一方のバッテリーがメインのバッテリーであって通常の稼働時に使用され、他方のバッテリーは予備のバッテリーである。メインのバッテリーの使用中に、メインのバッテリーの蓄電容量が少なくなった場合、あるいはメインのバッテリーに不具合が生じた場合は、予備のバッテリーに切り替える飛行を継続させるとともに、後で説明する退避行動をとらせる。このように、2個のバッテリー55を装着することにより、電源系統にいわゆる冗長性を持たせ、電源のトラブルが発生した場合に適切な処理を行って、致命的なトラブルに発展することを回避することができる。
【0042】
図9は1個のバッテリー55のみが装填されている状態を示す。バッテリー55も発熱部品の一つであり、冷却効果の高い上記空間56にバッテリー55を装填して、バッテリー55の温度上昇を抑制するように工夫されている。バッテリー55自体が機械的強度および剛性の高い部品であり、バッテリー55をバッテリー締め具154によって強固に締め付けて装填することにより、胴体50の強度および剛性を高めることができる。バッテリー55、バッテリー装着空間153、バッテリー受け部材152およびバッテリー締め具154は、それぞれフレームの強度を確保する部材としても貢献している。
【0043】
前記カバー52の後ろ側の約半分は、バッテリー装着空間153にバッテリー55を着脱することができるように、開閉可能な蓋になっている。上側のフレームの補強梁13は、上記蓋の開閉を可能にするために、下側のフレームの補強梁23よりも前側に位置をずらして設けられている。
【0044】
前記空間56には、バッテリー装着空間153の下側の層に、発熱部品の実装基板が前記底板51に面接触させて配置されている。前記実装基板には、前記モーターの回転速度制御部品(ESC:Electronic Speed Control)や、降圧分電機が実装される。降圧分電機は、バッテリー55から供給される直流電源を、前記モーターの駆動電圧や制御回路の駆動電圧に適した電圧に降圧して分配する。上記ESCや降圧分電機は高熱を発する。
【0045】
胴体50の底板51には、前記空間56よりも前側において適宜数の回路基板58が配置されている。これらの回路基板58には、フライトコントローラーなどの制御回路、各種センサー類からの信号の処理回路、通信回路などが実装されている。
【0046】
バッテリー装着空間153を構成する前記バッテリー受け部材152の裏面すなわち下面側には、ドローンの加速度を測定し、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である6軸ジャイロセンサーが配置されている。6軸ジャイロセンサーは、互いに直交する3つの軸方向における加速度をそれぞれ検出する加速度センサーと、上記3つの軸を中心とする回転、例えばピッチング、ローリングおよびヨーイングの角速度をそれぞれ検出する角速度センサーを有している。
【0047】
バッテリー装着空間153に2個のバッテリー55を装填した状態でのドローンの重心位置は、平面方向すなわちドローンを上方から見て2個のバッテリー55の間にあり、かつ、重量の重いバッテリー55を装填することによって上下方向においては比較的下の位置にある。一方、4組のモーターの回転制御によるドローンの姿勢制御の回転中心Pは、平面方向から見て、
図2に示すように対角位置にあるモーターの中心を結ぶ線の交差位置、上下方向では、
図3に示すように上下のモーターの離間距離の中央位置にある。
【0048】
4組のモーターの回転により生じる揚力の水平線すなわち姿勢制御の回転中心Pを含む水平線は、ドローンの重心位置よりも上側にある。換言すれば、固定重量物であるバッテリー55を配置することによって、ドローンの重心が上記回転中心Pよりも下に位置する構成になっている。
【0049】
ドローンの重心位置と揚力発生の水平線の位置関係を上記のように設定することにより、ドローンの姿勢の安定性と、姿勢制御に必要なエネルギーの省力化を図ることができる。
【0050】
胴体50の下方には、胴体50の下面との間に空間70をおいて薬剤タンク104が配置されている。薬剤タンク104は散布する薬剤を収容するものであり、薬剤は圃場の上を飛行しながら散布されるものであるから、薬剤タンク104は変動重量物である。変動重量物である薬剤タンク104は、ドローンの重心位置よりもさらに下方に配置されていて、重量の変動がドローンの姿勢制御に与える影響が少なくなるように考慮されている。
【0051】
[GPSセンサー]
前記上側のフレームを構成する二つの第2支持アーム11,12には、GPSセンサー60,60が上向きに取り付けられている。GPSセンサー60,60は、例えばRTKアンテナおよびRTK−GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)モジュールにより構成されている。GPSセンサー60,60は、ドローンの絶対位置を計測し、計測した位置が例えばプログラム通りの位置であるかどうかを判定し、位置がずれていれば正しい位置になるように前記各駆動モーターの回転を制御する。
【0052】
GPSセンサー60,60が振動すると、ドローンの絶対位置計測精度が低下し、位置制御の制度も低下する。そこで図示の実施例では、GPSセンサー60,60が、振動源である前記各駆動モーターの振動の影響を受けないように、前記各駆動モーターから最大限離れた位置である前記第2支持アーム11,12の長さ方向のほぼ中央部に設置されている。
【0053】
上記GPSセンサー60,60の設置位置は、平面方向から見てそれぞれ前後のプロペラガード41,42の間と、プロペラガード43,44の間にある。また、GPSセンサー60,60上下のフレームを結合する柱30,30の近傍にあって、第2支持アーム11,12が振動しにくい位置にある。よって、GPSセンサー60,60は前記各駆動モーターの振動の影響を受けにくく、ドローンの位置を高い精度で計測することができる。
【0054】
[フレームの冷却効果]
以上説明した飛行体およびそのフレームの構成によれば、以下のような冷却効果を得ることができる。
【0055】
胴体50には、モーターの回転制御部品や分電機といった発熱部品を含む内蔵部品が実装されている。胴体50を構成する底板51、カバー52は熱伝導素材からなり、前記発熱部品から発せられる熱は胴体50に伝達されて放散される。したがって、胴体50は、発熱部品で生じた熱を放散する主要な部分になっている。
【0056】
さらに、胴体50の底板51は熱伝導素材からなる下側のフレームの補強梁23に結合され、補強梁23はさらに第2支持アーム21,22に結合されている。胴体50のカバー52も、熱伝導素材からなる上側のフレームの補強梁13に結合され、補強梁13は第2支持アーム11,12に結合されている。このように、内蔵部品で生じる熱が、胴体50からフレームに伝達されやすい構造になっていて、胴体50による熱放散が不足しているとしても、フレームが熱放散を補う構造になっている。
【0057】
胴体50は、その左右に位置している前後一対のプロペラによって囲まれている。各プロペラが回転駆動されると、胴体50の左右両側面に沿って空気の下降流が生じる。空気の下降流は、胴体50の左右両側面と前後のプロペラガードで画される平面方向から見たほぼ三角形状の空間を比較的高速で流れる。本実施例は、4か所のプロペラがそれぞれ上下2段構成になっており、一段構成のプロペラよりも、下降流が集中的にかつ強い下降流が生じることがわかっている。
【0058】
以上説明したように、本実施例において二段構成のプロペラによって集中的に、かつ、高速度で生じる下降流の流路に、胴体50の両側面およびフレームの一部が位置している。より具体的には、胴体50の両側面に沿って下降流が流れ、第1支持アーム10,20の両端部、第2支持アーム11,12,21,22のほぼ全体、補強梁13,23の両端部が下降流の流路を横切っている。そのため、胴体50自体および胴体50からフレームに伝達される熱が効果的に放散され、内蔵部品の温度上昇が抑制される。
【0059】
[ドローンの使用例]
図10に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を模式的に示す。操縦器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報、例えば、位置、薬剤量、バッテリー残量、カメラ映像等の情報を表示することができる。操縦器401は、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。
【0060】
本実施例に係るドローン100は、自律飛行を行なうように制御されるものであるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていることが望ましい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作機を使用してもよい。非常用操作機は緊急時に迅速に対応が取れるように、大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であることが望ましい。操縦器401とドローン100はWi−Fi等による無線通信を行なうことが望ましい。
【0061】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の障害物が存在する場合もある。
【0062】
基地局404は、Wi−Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK−GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようにすることが望ましい。Wi−Fi通信の親機機能とRTK−GPS基地局が独立した装置であってもよい。営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピューター群と関連ソフトウェアであり、操縦器401と携帯電話回線等で無線接続されていることが望ましい。
【0063】
営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行なってよい。営農クラウド405は、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供することができ、加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行なってもよい。
【0064】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路ともいえる)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。
【0065】
[ドローンの制御系統]
図11は、本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図である。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピューターであってよい。フライトコントローラー501は、操縦器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102−1a、102−1b、102−2a、102−2b、102−3a、102−3b、102−4a、102―4bの回転数を制御して、ドローン100の飛行を制御する。
【0066】
上記各モーターの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。プロペラに光学センサー等を設けてプロペラの回転数がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0067】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi−Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっていることが望ましい。不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護を行なうことが望ましい。
【0068】
また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操縦器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピューターによって実行されてもよい。フライトコントローラー501はドローンの中核をなす重要度の高い部分であり、その構成要素の一部または全部が二重化されていることが望ましい。
【0069】
バッテリー55は、フライトコントローラー501およびドローンのその他の構成要素に電力を供給する手段であり、充電式であることが望ましい。バッテリー55はヒューズ、または、サーキットブレーカー等を含む電源ユニットを介してフライトコントローラー501に接続されている。バッテリー55は電力供給機能に加えて、その内部状態すなわち蓄電量、積算使用時間等をフライトコントローラー501に伝達する機能を有するスマートバッテリーであることが望ましい。
【0070】
フライトコントローラー501は、Wi−Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操縦器401とやり取りを行ない、必要な指令を操縦器401から受信し、必要な情報を操縦器401に送信することができる。通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておくとよい。
【0071】
基地局404は、Wi−Fiによる通信機能に加えて、RTK−GPS基地局の機能も備えていることが望ましい。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、GPSモジュール504により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。GPSモジュール504は重要性が高いため、二重化・多重化しておくことが望ましい。また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのGPSモジュール504は別の衛星を使用するよう制御することが望ましい。
【0072】
6軸ジャイロセンサー505は、ドローン機体の互いに直交する3軸方向における加速度を測定する手段、加速度の積分により速度を計算する手段、さらに、上記3軸を中心として回転の角速度を検出する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、赤外線(IR)レーザーを使用することが望ましい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。
【0073】
これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていることが望ましい。同一目的の複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0074】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられていることが望ましい。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。障害物検知カメラ513はドローン障害物を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別に装着されている。
【0075】
スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または他のドローン等の障害物に接触したことを検知するためのセンサーである。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。
【0076】
これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、外部の基地局404、操縦器401、またはその他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。例えば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi−Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0077】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況、例えば、回転数等は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっていることが望ましい。
【0078】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態、特にエラー状態を知らせるための出力手段である。Wi−Fi子機機能519は操縦器401とは別に、例えば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。
【0079】
Wi−Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態、特にエラー状態を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態、特にエラー状態を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0080】
[弛緩センサー]
次に、本発明の特徴的な構成部分について説明する。
図11に示すように、前述の各種センサーに加えて、弛緩センサー530が設けられていて、弛緩センサー530の検出信号がフライトコントローラー501に入力されるように構成されている。弛緩センサー530は、前記第1支持アーム10,20、第2支持アーム11,12,21,22を有してなるフレームを主体とする機体の構造部品の緩みやがたつきを検出するセンサーである。また、後述する通り、弛緩センサー530は、ドローン機体の基板の収容空間内部に配置されていてもよい。
【0081】
弛緩センサー530として、例えば、マイクロホンを利用することができる。機体の構造部品に緩みやがたつきなどがない正常な状態と、緩みやがたつきなどが生じている場合とでは、プロペラが回転駆動されているときに発せられる音乃至は騒音に違いが生じる。正常時と異常時の音乃至は騒音の違いは、主として周波数の違いであったり、異常時のみに生じる異音であったりする。そこで、ドローンの騒音を検出するマイクロホンをドローンに装着しておき、マイクロホンで電気音響変換された検出信号を処理して異常を検出する。
【0082】
マイクロホンの出力信号を周波数帯域ごとにフィルタ処理し、特定の周波数帯域に異常がみられる場合は、機体に緩みやがたつきが生じているものと判断することができる。あるいは正常時の検出信号と対比し、正常時には表れない異常な信号が検出された場合も、機体に緩みやがたつきが生じているものと判断することができる。マイクロホンの出力信号による機体の緩みやがたつきの判断手法は、これらの手法に限らず、他の手法を用いてもよい。
【0083】
特に、マイクロホンを利用した弛緩センサー530は、後述する加速度センサー、6軸ジャイロセンサー505、角速度センサー等のドローンの飛行制御に用いられるセンサー(以下、便宜的に「既存センサー」ともいう。)を兼用して弛緩センサーを構成する場合と比較して、高いサンプリング周波数を有する。
【0084】
既存センサーのサンプリング周波数は、ドローン機体の制御周期に依存しており、例えば100Hz程度である。これに対し、ドローンの経年劣化により増加する振動が有する周波数の帯域は1kHzから2kHzの高周波数帯域である。この周波数帯域の振動は、例えばシリコンワッシャ等のゲルワッシャ、もしくはフレーム間又は基板を固定するブッシュが緩んでくることにより生じる。また、この周波数帯域の振動は、基板上の素子に影響を及ぼす振動であり、不良なはんだ付けを破断する等、故障につながるおそれの大きい振動である。
【0085】
センサーは、ナイキスト周波数より十分低い、サンプリング周波数の3分の1程度の周波数までを検出可能範囲として使用することが一般的である。したがって、上述の周波数帯域の振動を既存センサーによって検出することは困難である。また、既存センサーのサンプリング周波数を高いものとすると、ドローン機体の制御周期を変更することになり、他の構成への影響が大きい。したがって、既存センサーよりも高いサンプリング周波数で駆動するマイクロホンを別途備えることにより、ドローン機体の制御周期とは独立して高周波数帯域の振動を計測することができる。
【0086】
マイクロホンのサンプリング周波数は、少なくとも1kHzから2kHzの周波数を十分計測できる周波数、例えば6kHz以上であればよく、可聴領域を収音可能なマイクロホンであってよい。
【0087】
なお、弛緩センサー530は、互いに異なる周波数帯域の振動を検知する複数のセンサーが組み合わされて構成されていてもよい。
【0088】
マイクロホンは、ドローン機体内部、特に基板の収容空間の内部に配置されている。また、マイクロホンは、既存センサーのデータが記録される記録領域とは別の記録媒体に接続され、マイクロホンによる収音データは当該記録媒体に記憶される。マイクロホンが基板の収容空間の内部に配置されている構成によれば、マイクロホンが機体外部に露出されている構成に比べて、マイクロホンが埃や水により汚れるのを防ぐことができる。また、機体外部からの音からマイクロホンを隔離し、ドローン機体外部で生じるノイズの収音を防ぐことができる。
【0089】
ドローンの機体に弛緩がみられる場合、ドローンに装着されている加速度センサーの出力信号に異常が生じる。そこで、弛緩センサー530として、加速度センサーを用いてもよい。加速度センサーは、機体の弛緩検出専用のものとして装着してもよいし、前記6軸ジャイロセンサー505を弛緩センサー530として兼用させてもよい。6軸ジャイロセンサー505を弛緩センサー530として兼用させる場合、6軸ジャイロセンサー505の加速度センサーはもちろん、角速度センサーも弛緩センサー530として兼用させることができる。
【0090】
弛緩センサー530の装着位置は任意であるが、機体の緩みやがたつきなどを効果的に検出することができる位置であることが望ましい。既に説明した実施例に係るドローンの機体は、第1、第2の支持アームを有するフレームが上下に対をなし、上下のフレームが柱によって結合されている。上下に対をなすフレームはそれぞれ補強梁を有することにより台形状の立体空間を構成している。この台形状の立体空間の内側に弛緩センサー530が配置されている。より具体的には、上記台形状の立体空間には胴体50が配置されており、この胴体50内に弛緩センサー530が配置されている。
【0091】
6軸ジャイロセンサー505が弛緩センサー530を兼用する場合、既に説明したように、胴体50内に6軸ジャイロセンサー505が配置される。胴体50内には、前記バッテリー55、バッテリー受け部材152、バッテリー締め具154などの振動抑制部品を含む部品を搭載する部品搭載部が配置されている。部品搭載部は上下方向に層をなしており、前記振動抑制部品が装着されている層の下の層に前記6軸センサーが配置されている。したがって、6軸ジャイロセンサー505が前記弛緩センサーを兼ねている場合、この弛緩センサーは、胴体50内に、かつ、振動抑制部品の装着部の下側に配置されている。
【0092】
[退避行動]
前記フレームを有してなるドローンの機体の構造部品に緩みやがたつきが生じると、機体が異音を発生する。異音は、正常な状態とは異なる周波数帯の音であったり、突発的に、あるいは不規則的に発生する音であったりする。この異音を、前記マイクロホンや加速度センサーなどからなる弛緩センサー530(
図11参照)が検出し、異常信号を出力する。フライトコントローラー501は、弛緩センサー530から異常検出信号が入力されると、前記ESCを介して前記各プロペラ駆動モーター102−1a〜102−4bの回転を制御してドローンに退避行動を行わせる。
【0093】
退避行動は緊急帰還、緊急着陸または緊急停止のいずれかであり、フライトコントローラー501は異音の程度すなわち弛緩センサー530の異常検出信号強度に応じて上記いずれかの退避行動を行わせる。異音が比較的軽微であれば緊急帰還、異音が中程度であれば緊急着陸、異音の強度が高い場合は緊急停止させる。緊急帰還とは、例えば離陸した元の位置に戻って着陸することである。緊急着陸とはその場で着陸させることである。緊急停止とは、すべてのプロペラ駆動モーターを停止させ、その場で墜落させることである。ドローンが制御不能になるよりも、墜落させる方が安全であるからである。
【0094】
退避行動の一つとして、一旦ホバリングを行わせ、ホバリング中に弛緩センサー530による異常検出信号が消滅した場合は通常の稼働状態に復帰させるようにしてもよい。ホバリング中も弛緩センサー530から異常検出信号が出力される場合は、異常検出信号強度に応じて、緊急帰還、緊急着陸または緊急停止のいずれかを行わせる。
【0095】
退避行動をとらせる場合、フライトコントローラー501は、ポンプ106を停止させて薬剤の散布を停止させる。また、フライトコントローラー501は、LED107や警告灯521を作動させて、緊急事態を視覚的に表示し、ブザー518やスピーカー520を作動させて、緊急事態を音響的に表示してもよい。
【0096】
以上説明したように、本発明に係る飛行体の実施例によれば、機体構造部品の緩みやがたつきが生じると、これを弛緩センサーが検出して異常信号を出力する。異常信号の出力によりドローンは退避行動をとるため、機体構造部品の緩みやがたつきを原因とする各種制御精度の低下により生ずる不具合を事前に回避することができる。前記不具合とは、予定されている飛行経路からの離脱、飛行高度のばらつき、姿勢制御や速度制御のばらつきなどがあり、場合によっては障害物への衝突などもあるが、本実施例によれば、かかる不具合を回避することができる。
【0097】
以上、本説明の実施例として、農業用薬剤散布ドローンを例に挙げて説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、ドローン全般に適用可能である。