(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記すすぎ工程において、前記最終のすすぎ手順を、所定温度範囲の温水を用いて行うと共に、前記回転ドラムが回転および非回転の動作を周期的に行うように制御し、
前記最終のすすぎ手順において、前記第2のモータ制御における前記回転および前記非回転の動作時間の比率が、前記第1のモータ制御における前記回転および前記非回転の動作時間比率よりも大きく設定されている
請求項1又は2に記載の洗濯機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
実施形態の一態様に係る洗濯機は、洗濯槽と、前記洗濯槽の内部に取り付けられ、洗濯物を収容する回転ドラムと、前記洗濯物の洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を制御する制御部と、前記洗濯槽に給水された水を加熱して水温を上昇させる昇温手段とを備え、前記すすぎ工程は、少なくとも給水手順、すすぎ手順および排水手順を複数回繰り返し行い、前記制御部は、前記すすぎ工程において、第1のモータ制御と、該第1のモータ制御より前記回転ドラムの回転の時間が長い第2のモータ制御とを含むモータ制御により最終の前記すすぎ手順を行い、前記制御部は、前記最終のすすぎ手順において、前記第2のモータ制御を少なくとも1回行う。
実施形態の一態様に係る洗濯機は、洗濯槽と、前記洗濯槽の内部に取り付けられ、洗濯物を収容する回転ドラムと、前記洗濯物の洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記脱水工程の後、前記回転ドラムが、正回転および逆回転を低周期で交互に行い、且つ、前記正回転および前記逆回転をそれぞれ低速で行うように制御する。
実施形態の一態様に係る洗濯機において、前記制御部は、前記すすぎ工程において、前記最終のすすぎ手順を、所定温度範囲の温水を用いて行うと共に、前記回転ドラムが回転および非回転の動作を周期的に行うように制御し、前記最終のすすぎ手順において、前記第2のモータ制御における前記回転および前記非回転の動作時間の比率が、前記第1のモータ制御における前記回転及び前記非回転の動作時間比率よりも大きく設定されている。
実施形態の一態様に係る洗濯機において、前記洗濯槽に給水された水を加熱して水温を上昇させる昇温手段を備え、前記制御部は、前記すすぎ工程において、最終のすすぎ手順を、所定温度範囲の温水を用いて行うと共に、前記回転ドラムが回転および非回転の動作を周期的に行うように制御し、前記制御部は、前記回転および前記非回転の動作時間が一定の比率に設定された第1のモータ制御と、前記回転および前記非回転の動作時間の比率が前記第1のモータ制御における前記動作時間の比率よりも大きい第2のモータ制御とを含むモータ制御により前記最終のすすぎ手順を行う。
実施形態の一態様に係る洗濯機において、前記制御部は、前記すすぎ工程の前記最終のすすぎ手順において給水された水の温度Tに基づいて、前記モータ制御により前記最終のすすぎ手順を行う。
実施形態の一態様に係る洗濯機において、前記制御部は、前記昇温手段のオンからオフまでにおける前記第2のモータ制御の回数を、前記温度Tが閾値より大きい場合に比べて、前記温度Tが閾値以下の場合に多く行う。
明細書に記載の洗濯機は、洗濯物の洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を制御する制御部を備える洗濯機であって、前記すすぎ工程は、少なくとも給水手順、すすぎ手順および排水手順を複数回繰り返し行い、前記制御部は、前記すすぎ工程において、最終のすすぎ手順を、所定温度範囲の温水を用いて行うと共に、すすぎ時間を最終のすすぎ手順以前の他のすすぎ手順のすすぎ時間より長い時間をかけて行うように制御する。
【0010】
明細書に記載の洗濯機において、前記制御部は、前記すすぎ工程において、最終のすすぎ手順を、所定温度範囲の温水を用いて行うと共に、すすぎ時間を最終のすすぎ手順以前の他のすすぎ手順のすすぎ時間と比較して2倍以上時間をかけて行うように制御する。このように、最終のすすぎ手順に温水を用い、更に通常よりも長い時間を掛けてすすぎを行うことにより、部屋干しによる乾燥時間を短縮させることができる。これにより、洗濯用洗剤等の種類に依らず、生乾き臭の発生を抑制することが可能となる。
明細書に記載の洗濯機において、前記最終のすすぎ手順で用いる温水の温度範囲は、30℃から60℃である。これにより、生地の特性等、洗濯物(衣類)の種類に応じて適切な温度の温水を選択することが可能となる。
【0011】
明細書に記載の洗濯機において、前記すすぎ工程において、前記最終のすすぎ手順の前に、給水手順、すすぎ手順、排水手順、脱水手順を少なくとも1回以上行い、前記制御部は、前記最終のすすぎ手順の後に行う前記脱水工程の脱水時間を、その他のすすぎ手順の後に行う脱水手順の脱水時間より長い時間をかけて行うように制御する。このように、長い時間をかけて脱水工程を行うことにより、部屋干しによる乾燥時間を短縮させることができる。
明細書に記載の洗濯機において、前記制御部は、前記最終のすすぎ手順の後に、前記脱水工程を10分〜25分行うように制御する。このように、一般的な洗濯機で行う脱水工程よりも長い10分〜25分の脱水工程を行うことにより、部屋干しによる乾燥時間を短縮させることができる。
【0012】
明細書に記載の洗濯機は、洗濯槽と、前記洗濯槽の内部に取り付けられ、洗濯物を収容する回転ドラムと、前記洗濯槽に給水された水を、前記最終のすすぎ手順で用いる前記温度範囲まで上昇させる昇温手段とを備え、前記制御部は、前記昇温手段が前記洗濯槽に給水された水を前記温度範囲まで上昇させた後、前記洗濯物の撹拌を10分以上行うように制御する。この場合、洗濯機を設置した場所に温水を供給可能な給湯器等が無い場合でも、最終のすすぎ手順に温水を使用することができる。また、給水されたすすぎ水を昇温した後に時間を掛けて洗濯物を撹拌することにより、撹拌及び温水浸潤をムラなく行うことができる。
【0013】
明細書に記載の洗濯機において、前記制御部は、前記最終のすすぎ手順において、前記回転ドラムが、回転および非回転の動作を周期的に行うように制御し、前記昇温手段が前記洗濯槽に給水された水を前記温度範囲に含まれる温度T1まで上昇させる間は、前記回転ドラムの回転の時間と非回転の時間とは略同一であり、前記昇温手段が前記洗濯槽に給水された水を温度T1まで上昇させた後、温度T1の温水が前記温度範囲に含まれる温度T2(<T1)になるまでの間は、前記回転ドラムの回転の時間は非回転の時間よりも長い。これにより、衣類間の温度ムラを抑制しながら、すすぎ水の温度を上げることができる。
【0014】
明細書に記載の洗濯機において、前記最終のすすぎ手順において、前記制御部は、前記回転ドラムが、回転および非回転の動作を周期的に行うように制御し、前記昇温手段が前記洗濯槽に給水された水を前記温度範囲に含まれる温度T4まで上昇させる間は、前記回転ドラムの回転の時間と非回転の時間とは略同一であり、前記昇温手段が前記洗濯槽に給水された水を温度T4まで上昇させた後、前記昇温手段が温度T4の温水をさらに前記温度範囲に含まれる温度T3(>T4)まで上昇させる間、および、温度T3の温水が温度T4になるまでの間は、前記回転ドラムの回転の時間は非回転の時間よりも長い。これにより、衣類間の温度ムラを抑制しながら、洗濯槽内の水の温度を上げることができる。例えば、冬場など水道水の水温が低い場合には、このように回転ドラムの回転および非回転を制御することで、より効果的に衣類間の温度ムラを抑制することができる。
【0015】
明細書に記載の洗濯機において、前記制御部は、前記脱水工程の後、前記回転ドラムが、正回転および逆回転を低周期で交互に行い、且つ、前記正回転および前記逆回転をそれぞれ低速で行うように制御する。これにより、長時間の脱水工程による衣類のしわを低減することができる。
【0016】
明細書に記載の洗濯機において、複数種類の洗濯コースの中から1の洗濯コースの選択をユーザから受け付ける操作入力部を備え、前記複数種類の洗濯コースは、最終のすすぎ手順を常温の水を用いて行う標準コースと、最終のすすぎ手順を温水を用いて行い、且つ、すすぎ時間を前記標準コースで行われる最終のすすぎ手順のすすぎ時間と比較して長い時間をかけて行い、最終のすすぎ手順の後に行われる脱水工程の時間を前記標準コースで行われる最終のすすぎ手順の後に行われる脱水工程の時間と比較して長い時間をかけて行う部屋干しコースとを備える。この場合は、操作入力部で部屋干しコースが選択された場合には、標準コースと異なる制御を行うことで、部屋干しによる乾燥時間を短縮させることができる。これにより、洗濯用洗剤等の種類に依らず、生乾き臭の発生を抑制することが可能となる。
【0017】
<実施形態>
1.ドラム式洗濯機の構成
図1および
図2を用いて、ドラム式洗濯機(以下、洗濯機という。)の構成について説明する。
洗濯機1は、横型ドラム洗濯機と言われるものである。洗濯機1は、筐体2と、洗濯槽3と、洗濯槽3に収納され且つ衣類等の洗濯物が投入される回転ドラム4と、洗濯槽3の開口を開閉するドア6とを備えている。
【0018】
図1に示すように、筐体2は箱状をし、前面パネル2aの略中央部には洗濯物を回転ドラム4内へと投入するための開口が形成されている。また、前面パネル2aは、操作パネル7及び洗剤投入ケース8を備えている。操作パネル7の詳細については後述する。
洗濯槽3は、筐体2内で弾力的に防振支持されており、前面に開口3cを有する。
図2に示すように、開口3cを形成している部分は、外側へ円形状に折り返された折り返し部を備える。洗濯槽3は、前部3aと後部3bとに分けられており、これらを連結し、全体として有底円筒状となる。
図2に記載の洗濯槽3は中心軸が水平に配置されているが、前方から後方へ向けてやや下降して傾斜するように配置してもよい。なお、洗濯槽3の説明において、水平状態の洗濯槽3の後側を底側としている。
【0019】
洗濯槽3の底面中央部には、回転ドラム4を回転軸10a回りに回転させるモータ10を備える。また、洗濯槽3の底面にはヒータ挿入口を備えており、ヒータ挿入口には、洗濯槽3に給水された水を加熱するためのヒータ11が挿入されている。ここでは、ヒータ11として、熱伝導に優れ且つ防水加工が施されたシーズヒータを用いる。一例として、ヒータ11の消費電力は800Wであり、洗濯槽3に給水された水の水温を1℃上昇させるのに2.6分を要する。また、ヒータ11に連結して又はヒータ11の近傍には、洗濯槽3内部の水の温度を測定するための水温センサ12を備えている。
【0020】
回転ドラム4は、有底筒状で、洗濯槽3の底部に設けられたモータ10に連結され、洗濯槽3内に回転可能に支持されている。回転ドラム4の回転中心軸は、洗濯槽3の中心軸と一致している。
回転ドラムの円筒部4bには洗濯物が収容される。また、回転ドラム4の開口4aは、円筒部4bの内径よりも小さい。円筒部4bの周壁には通水のための複数の貫通孔4cが形成されている。その貫通孔4cを通して洗濯水やすすぎ水が洗濯槽3内と回転ドラム4内を自由に往来できる。
【0021】
ドア6は、筐体2に開閉可能に設けられている。ドア6は筐体2の前面パネル2aに設けられた上下方向に延伸するヒンジに開閉自在に支持されている。
ドア6は透光性ガラスあるいは透過性樹脂で形成された外側の透過性窓6aと、内側の光透過性凸部6bとからなる二重構造である。光透過性凸部6bの底辺部にはガスケット5が密着する当接部を備える。ドア6は、その透光性の窓から回転ドラム4内の洗濯物の様子を見ることができる。
【0022】
洗濯槽3の開口部とドア6との間にはガスケット5が設けられている。ガスケット5は、弾性を有した材料、例えばゴム材料からなる。
図2に示すように、ガスケット5は円筒状であり、円筒状の一端側が洗濯槽3の開口3c側の前端部に固定されている。また、円筒状の他端側がドア6に当接(密着)している。ガスケット5は、洗濯時及び脱水時の振動を吸収し、筐体2に対する防水機能及び防振機能を果たす。ここで、ガスケット5は、円筒の長さ方向の伸縮を容易にし、振動を吸収し易くするために径方向外側に突出する凹部5aを備える。
【0023】
操作パネル7は、
図3に示すように、電源ボタン7aと、スタートボタン7bと、コース選択ダイヤル7cと、設定表示部7dとを備える。
電源ボタン7aは、洗濯機1の電源の投入及び遮断をするためのボタンである。スタートボタン7bは、洗濯機1の運転をスタート及び一時停止するためのボタンである。コース選択ダイヤル7cは、複数の洗濯コースからユーザが所望する洗濯コースを設定するためのダイヤルである。ここで、コース選択ダイヤル7cは、各コースに対応付けられたコースランプを備えている。設定表示部7dは、洗濯条件、洗濯時間等を設定したり、設定条件及び洗濯過程の状況を表示したりする。
洗濯機1においてユーザが設定可能なコースは、例えば、標準コース、手洗いコース、念入りコース、お急ぎコース等があるが、これらに加えて、本実施形態の特徴である部屋干しコースが設定可能となっている。
【0024】
部屋干しコースは、例えば、最終のすすぎに約40℃の温水を用いる「部屋干し40℃コース」と、最終のすすぎに約50℃の温水を用いる「部屋干し50℃コース」との2コースから選択が可能である。部屋干しコースは、最終のすすぎに40℃又は50℃の温水を使用することにより、洗濯後の乾燥時間を短縮することが可能となる。
例えば、部屋干し50℃コースを設定する場合、ユーザは、先ず電源ボタン7aを押下し、その後コース選択ダイヤル7cを回して部屋干し約50℃すすぎを選択する。このとき「約50℃すすぎ」に対応する位置にあるコースランプが点灯する。その後スタートボタン7bを押下すれば、部屋干し50℃コースの洗濯が開始する。
【0025】
2.洗濯機1の機能構成
筐体2の内部であって操作パネル7の背面側には、図示していない防水ケースに収容された制御部14が備えてられている。
図4は、制御部14を含む洗濯機1の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
洗濯機1は、操作パネル7、ヒータ11、水温センサ12、記憶部13、制御部14、モータ駆動部15、水位センサ16、タイマ17、音声出力部18、給水制御部19、排水制御部20及びドアロック装置21から構成される。
記憶部13は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部13は、各種洗濯コースに含まれる工程を行うためのコンピュータプログラムを記憶している。また、記憶部13は、コンピュータプログラムの実行に用いられる各種パラメータや各種制御フラグを記憶する。
【0026】
制御部14は、マイクロコンピュータで構成され、記憶部13に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、洗濯機1の全体を制御する。
モータ駆動部15は、制御部14からの制御信号に従って、モータ10を駆動する。モータ駆動部15は、モータ10の回転数を検出する回転センサ、インバータ回路等を含み、制御部14により設定された目標回転数でモータ10が回転するよう、駆動電力を調整する。また、部屋干しコースが選択された場合に、モータ駆動部15は、制御部14からの制御信号に従って、後述する第1モータ制御及び第2モータ制御を行う。また、モータ駆動部15は、モータ10の負荷を検出することにより、洗濯槽3の内部に収容された洗濯物の重量を算出する。
水位センサ16は、洗濯槽3内部の洗濯水やすすぎ水の水位を検出し、検出した水位に応じた水位検出信号を制御部14に出力する。
【0027】
操作パネル7は、ユーザにより、各種ボタン、コース選択ダイヤル7c、設定表示部7dが操作された場合に、操作されたボタン又はダイヤルに応じた入力信号を制御部14に出力する。 音声出力部18は、制御部14からの制御信号に従い、洗濯の終了時やエラー発生時にユーザにその旨を報知するためのブザー音等の音声を出力する。
給水制御部19は、制御部14からの制御信号に従って、図示していない給水弁の開閉を制御する。排水制御部20は、制御部14からの制御信号に従って、図示していない排水弁の開閉を制御する。ドアロック装置21は、制御部14からの制御信号に従って、ドア6のロック及びロック解除を行う。
【0028】
3.部屋干しコースの詳細説明
ここでは、
図5から
図11を用いて、部屋干しコースの詳細について説明する。
(1)部屋干しコースの全体動作
図5は、部屋干しコースの動作を示すフローチャートである。この動作は、ユーザが操作パネル7を用いて、部屋干し40℃コース又は部屋干し50℃コースを設定し、スタートボタン7bを押下すると実行される。
同図に示すように、部屋干しコースでは、洗濯機1は、洗濯槽3に洗濯水を給水する給水手順を行い(ステップS1)、次に、洗い手順(ステップS2)、排水手順(ステップS3)及び脱水手順(ステップS4)の順に行う。ステップS1〜ステップS4を「洗い工程」とする。続いて、洗濯機1は、給水手順(ステップS5)、すすぎ手順1(ステップS6)、排水手順(ステップS7)及び脱水手順(ステップS8)の順に行う。ステップS5〜ステップS8を「1回目のすすぎ工程」とする。
【0029】
続いて、洗濯機1は、給水手順(ステップS9)、すすぎ手順2(ステップS10)、排水手順(ステップS11)及び脱水手順(ステップS12)の順に行う。ステップS9〜ステップS12を「2回目のすすぎ工程」とする。
続いて、洗濯機1は、給水手順(ステップS13)、最終のすすぎ手順(ステップS14)及び排水手順(ステップS15)の順に行う。最終のすすぎ手順では、給水手順により洗濯槽3に給水されたすすぎ水を約40℃又は約50℃まで昇温させた温水を用いて撹拌を行う。ステップS13〜ステップS15を「最終のすすぎ工程」とする。
次に、洗濯機1は、脱水工程(ステップS16)を行い、最後に、しわ取り工程(ステップS17)を行う。しわ取り工程では、脱水工程による衣類のしわを低減するために、3分間46rpm程度の低周期でモータ10の正回転と逆回転とを繰り返し行う。これにより衣類がほぐれ易くなり、しわの原因である布の張り付きが低減する。
このように、部屋干しコースは、複数回のすすぎ工程を含み、最終のすすぎ手順では温水を用いてすすぎ(撹拌)を行う。
【0030】
(2)タイムテーブル
図6は、
図5で説明した各工程及び各手順の処理時間を示すタイムテーブル100である。ここでは、部屋干し40℃コース及び部屋干し50℃コースに加え、比較のために標準コースの処理時間も記載している。
タイムテーブル100に示すように、部屋干し40℃コースは、最終のすすぎ工程に含まれるすすぎ手順を73分間行い、部屋干し50℃コースは、最終のすすぎ工程に含まれるすすぎ手順を93分間行う。これは、1回目及び2回目のすすぎ工程に含まれるすすぎ手順1及びすすぎ手順2の3分間と比較すると、20倍以上の長い時間である。また、標準コースのすすぎ手順と比較しても、20倍以上の長い時間である。
また、部屋干しコースと標準コースとで異なるのは、すすぎ工程以外に、標準コースでは脱水工程を10分間行うのに対して、部屋干しコースでは脱水工程を20分間行う点である。
【0031】
脱水工程を長く行えば洗濯物の脱水率が上がるので、脱水後の乾燥時間が短くなると考えられる。しかし実際には、脱水率が上がると、衣類の温度が低下する傾向にあり、その結果、乾燥時間が長くなる傾向にある。そのため、本実施形態の部屋干しコースでは、温水を使って衣類の温度を上げて、脱水率を上げながらも衣類の温度の低下を抑制可能な好適な時間として脱水工程を20分間行う。これにより、脱水後の乾燥時間を短縮させることができる。
一般的に、洗濯槽3の内部では洗濯物が偏り易く、すすぎや脱水にムラが生じやすい。しかし、本実施形態の部屋干しコースでは、最終のすすぎ手順で長時間にわたり温水を用いた撹拌を行うこと、及び、長時間の脱水工程を行うことにより、洗濯物に偏りが生じたとしても、すすぎ率及び脱水率にムラが生じ難くなる。また、温水を用いること及び脱水率の向上により、衣類同士の貼りつきが少なくなり、しわを抑制することができる。
【0032】
(3)最終のすすぎ手順の動作
続いて、最終のすすぎ手順の詳細について説明する。
図7は、
図5のステップS14の詳細を示すフローチャートである。同図に示すように、水温センサ12は、洗濯槽3に給水されたすすぎ水の水温Tを測定する(ステップS21)。
水温Tが15℃より高い場合(ステップS22でY)、洗濯機1は、第1のすすぎ処理を行う(ステップS23)。水温Tが15℃以下の場合(ステップSS22でN)、洗濯機1は、第2のすすぎ処理を行う(ステップS24)。
【0033】
(4)第1のすすぎ処理の詳細動作
次に、第1のすすぎ処理の詳細を説明する。
図8は、
図7のステップS23の詳細を示すフローチャートである。
図10のテーブル200は、第1のすすぎ処理及び第2のすすぎ処理で用いる各値を記載している。
制御部14は、ヒータ11をONし(ステップS31)、洗濯槽3に給水されたすすぎ水の加熱を開始する。次に、水温センサ12は、給水されたすすぎ水の水温Tを測定し(ステップS32)、測定した水温Tを制御部14に出力する。
制御部14は、水温Tと予め設定されている温度T1とを比較する。ここで、
図10に示すように、40℃コースの場合は、T1=43℃であり、50℃コースの場合は、T1=53℃である。T<T1の場合(ステップS33でN)、制御部14は、モータ駆動部15に第1のモータ制御を指示し、モータ10の回転及び非回転を制御する(ステップS34)。ここで、
図10に示すように、第1のモータ制御では、モータ10は回転7秒/非回転(停止)7秒の動作を繰り返し行う。
【0034】
その後、ステップS32に戻り、定期的に、一例としては10秒毎に、ステップS32からステップS34までの処理を繰り返し行う。
給水されたすすぎ水の水温が上昇し、T≧T1となった場合(ステップS33でY)、ステップS35へ進み、制御部14は、ヒータ11をOFFにする(ステップS35)。その後、制御部14は、モータ駆動部15に第2のモータ制御を指示し、モータ10の回転及び非回転の時間を変更する(ステップS36)。ここで、
図10に示すように、第2のモータ制御では、モータ10は回転20秒/非回転4秒の動作を繰り返し行う。
【0035】
次に、水温センサ12は、給水されたすすぎ水の水温Tを測定し(ステップS37)、測定した水温Tを制御部14に出力する。
制御部14は、水温Tと予め設定されている温度T2とを比較する。ここで、
図10に示すように、40℃コースの場合は、T2=40℃であり、50℃コースの場合は、T2=50℃である。T>T2の場合(ステップS38でN)、ステップS36に戻り、定期的に、一例としては10秒毎に、ステップS36からステップS38までの処理を繰り返し行う。その後、T≦T2となった場合(ステップS38でY)、処理を終了する。
【0036】
(5)第2のすすぎ処理の詳細動作
次に、
図9を用いて第2のすすぎ処理の詳細を説明する。
図9は、
図7のステップS24の詳細を示すフローチャートである。
制御部14は、ヒータ11をONし(ステップS41)、洗濯槽3に給水されたすすぎ水の加熱を開始する。次に、水温センサ12は、給水されたすすぎ水の水温Tを測定し(ステップS42)、測定した水温Tを制御部14に出力する。
【0037】
制御部14は、水温Tと予め設定されている温度T4とを比較する。ここで、
図10に示すように、40℃コースの場合は、T4=35℃であり、50℃コースの場合は、T4=45℃である。T<T4の場合(ステップS43でN)、制御部14は、モータ駆動部15に第1モータ制御を指示し、モータ10の回転及び非回転を制御する(ステップS44)。
図10に示すように、第1のモータ制御では、モータ10は、第1のすすぎ処理と同様に、回転7秒/非回転7秒の動作を繰り返し行う。
その後、ステップS42に戻り、定期的に、一例としては10秒毎に、ステップS42からステップS44までの処理を繰り返し行う。
給水されたすすぎ水の水温が上昇し、T≧T4となった場合(ステップS43でY)、制御部14は、モータ駆動部15に第2のモータ制御を指示し、モータ10の回転及び非回転の時間を変更する(ステップS45)。
図10に示すように、第2のモータ制御のとき、モータ10は、第1のすすぎ処理と同様に、回転20秒/非回転4秒の動作を繰り返し行う。
【0038】
次に、水温センサ12は、給水されたすすぎ水の水温Tを測定し(ステップS46)、測定した水温Tを制御部14に出力する。
制御部14は、水温Tと予め設定されている温度T3とを比較する。ここで、
図10に示すように、40℃コースの場合は、T3=38℃であり、50℃コースの場合は、T3=48℃である。T<T3の場合(ステップS47でN)、ステップS45に戻り、定期的に、一例としては10秒毎に、ステップS45からステップS47までの処理を繰り返し行う。すすぎ水の水温が更に上昇し、T≧T3となった場合(ステップS47でY)、制御部14は、ヒータ11をOFFにする(ステップS48)。その後、制御部14は、モータ駆動部15に引き続き第2のモータ制御を指示し、モータ10の回転及び非回転を制御する(ステップS49)。
【0039】
次に、水温センサ12は、給水されたすすぎ水の水温Tを測定し(ステップS50)、測定した水温Tを制御部14に出力する。
制御部14は、水温Tと温度T4とを比較する。T>T4の場合(ステップS51でN)、ステップS49に戻り、定期的に、一例としては10秒毎に、ステップS49からステップS51までの処理を繰り返し行う。その後、T≦T4となった場合(ステップS51でY)、処理を終了する。
図11(a)は、第1のすすぎ処理におけるすすぎ水の温度変化とすすぎ時間の時間経過並びにモータ制御の切り替えタイミングを示した図である。
図11(b)は、第2のすすぎ処理におけるすすぎ水の温度変化とすすぎ時間の時間経過並びにモータ制御の切り替えタイミングを示した図である。
【0040】
部屋干しコースでは、洗濯槽3に給水されたすすぎ水をヒータ11で加熱していくが、約40℃又は約50℃まで上昇させるには時間を要する。その間、洗濯機1は第1のモータ制御を行い、洗濯物を撹拌しながらすすぎ処理を行う。そして、水温がある程度まで上昇した後は、モータ回転の時間が長くなるように第2のモータ制御に変更することにより、衣類間の温度ムラを抑制している。
第2のモータ制御は、温度ムラの低い状態で洗濯物の温度を上げるという重要なステップである。第2のモータ制御の時間は10分以上、好適には20分以上であることが好ましい。また、第1のモータ制御の時間は、洗濯槽3に給水されたすすぎ水を加熱して約40℃又は約50℃まで上昇させるのに要する時間であるが、この時間は使用するヒータ11の特性に依っても異なる。ヒータ11をより大電力用のヒータに替えるなどすることにより、第1のモータ制御の時間は短縮可能である。
4.部屋干しコースの効果
図12に記載のテーブル300は、部屋干し50℃コースを実行した後に洗濯物を部屋干しした場合の時間経過と洗濯物の乾燥率とを表している。テーブル400は、標準コースを実行した後に洗濯物を部屋干しした場合の時間経過と洗濯物の乾燥率とを表している。
【0041】
何れも2回実行したときのそれぞれの乾燥率とその平均値とを記載している。ここでの乾燥率(%)は、洗濯物全体(衣類と水分との合計)の重量を100とした場合の衣類のみの重量で示している。乾燥率92%以上が、洗濯物が乾いていると判断できる状態である。そこで、乾燥率が92%以上になるまでの時間が短いほど生乾き臭の発生を抑制することができる。
テーブル300が示すように、部屋干し50℃コースでは、部屋干し開始から5時間後には乾燥率が92.8%になり、6時間後には乾燥率が94.8%になる。一方、テーブル400に示すように、標準コースの場合、乾燥率が92.4%になるのに8時間掛かり、乾燥率が94.4%になるのに9時間掛かる。
このように、本実施形態の部屋干しコースは、温水を使用した最終のすすぎ手順を長時間行い、更に、脱水工程も長時間行うことにより、洗濯終了時の洗濯物の脱水率を向上させることができる。洗濯物を干し始める時点で洗濯物は温かく、脱水率も高いので、従来の標準コースと比較すると、洗濯物が2時間〜3時間も早く乾く。そのため、雑菌の繁殖が抑えられ、生乾き臭の発生を抑制することができる。
【0042】
また、
図6に示したように、部屋干しコースは、最終のすすぎ手順と脱水工程とにおいて標準コースよりもコース運転の所要時間が長い。しかしながら、乾燥時間が大幅に短縮することで洗濯開始から乾燥までに要するトータル時間は部屋干しコースの方が短い。
具体的に、部屋干し40℃コースは、標準コースと比較するとコース運転が約1時間20分長いが、乾燥時間が約2時間短い。その結果トータルで40分短縮される。部屋干し50℃コースは、標準コースと比較するとコース運転が約1時間40分長いが、乾燥時間が約3時間短い。その結果トータルで1時間20分短縮される。
【0043】
4.変形例
ここでは、実施形態の変形例について説明する。本発明は上記の実施形態に限定されず、以下のような場合も本発明に含まれる。
(1)上記の実施形態において、洗濯機1はヒータ11を備え、最終のすすぎ手順で用いるすすぎ水をヒータ11により加熱する構成であったが、ヒータ11に替えて、洗濯機1とは別体の温水生成装置を用いる構成であってもよい。
また、最終のすすぎ手順に用いる温水を外部の給水機(給湯器等)から供給するようにしてもよい。この場合、予め温水の生成を開始しておき、洗濯機1が最終のすすぎ手順に入る前までに温水を用意しておけば、上記実施形態で説明した洗濯時間を短縮することが可能となる。
また、温水生成装置や外部の給湯器等を用いる場合には、洗濯機1は、すすぎ水を一時的に貯めておく温水貯水部を備えることが望ましい。これにより、最終のすすぎ手順で用いる温水の温度や水量の調整が容易となる。
【0044】
(2)最終のすすぎ手順において、他のすすぎ手順よりも使用する水の量を多量にしてもよい。これにより、洗濯物の塊化を抑制することができ、温水浸潤効果を高めることができる。
(3)上記の実施形態の洗濯機1は、最終のすすぎ手順において、水温Tが15℃以下であるか、15℃より高いかに依って、第1のすすぎ処理又は第2のすすぎ処理を選択して実行する構成であった。しかしこの構成は一例である。洗濯機1が行う最終のすすぎ手順では、モータ10の回転/非回転(停止)の周期的動作は水温Tに依らず一定であってもよい。
(4)また、第1のすすぎ処理又は第2のすすぎ処理を選択する際の給水後の水温の境界値は、15℃に限定されるものではない。また、2つ以上の境界値を用いて、実行するすすぎ処理を決定してもよい。一例として、境界値として10℃及び20℃を用い、第1〜第3までの3つのすすぎ処理を選択的に実行するようにしてもよい。
【0045】
(5)最終のすすぎ手順の条件を、給水後の水温によって変えてもよい。例えば水温が高い場合には、すすぎ時間を短縮してもよい。
(6)最終のすすぎ手順の所要時間は、40℃コースの場合73分、50℃コースの場合93分であったが、これは一例であり、この所要時間に限定されるものではない。本発明における最終のすすぎ手順は、通常のすすぎ手順の所要時間と比較して数倍の時間を掛けて行うようにすればよい。数倍の例としては、すすぎ率の向上及び乾燥時間の短縮の観点から、2倍〜35倍範囲内が好ましい。
また、部屋干しコースは、40℃コースと50℃コースの2コースを用意しているが、これは一例であり、この2コースに限定されるものはなく、1つのコースであってもよいし、3コース以上あってもよい。
さらに、温度の設定も、40℃、50℃に限定されるものではなく、30℃や60℃であってもよいし、さらに細かく設定されてもよい。但し、洗濯機から取り出した時の洗濯物の温度や、洗濯中の洗濯物の損傷を考慮すると、30〜60℃の範囲内の温度にあることが好ましい。
すすぎ水の温度が40℃や50℃の設定値に達すると、ヒータ11をオフしているが、ヒータ11を弱く(加熱量を小さく)して継続して加熱するようにしてもよい。
【0046】
(7)部屋干しコースの脱水工程は、通常の2倍の時間である20分間行っていたが、これは一例である。洗濯機1は、脱水工程を通常コースと同じ時間行う構成でもよい。但し、部屋干しのときの乾燥時間の短縮と洗濯物のダメージを考慮すると、15分〜25分の範囲内が好ましい。
また、上記の実施形態で行っていた脱水後のしわ取り工程はオプションであり必須の工程ではない。更に、上記の実施形態で説明したしわ取り加工は、3分間46rpm程度の低周期でモータ10の正回転と逆回転とを繰り返し行う工程であったが、モータ10の回転数や回転時間もこれに限定されるものではない。
【0047】
(8)
図10及び
図11を用いて説明した第1のモータ制御及び第2のモータ制御は一例である。第1のモータ制御及び第2のモータ制御共に、モータ10のON(回転)/OFF(非回転)の時間周期はこの値に限定されない。
(9)
図11を用いて説明したように、実施形態の最終のすすぎ手順の第1モータモータ制御及び第2モータ制御は、第一温水期(常温→最低設定値)と、第二温水期(最低設定値→最高設定値)と、第三温水期(最高設定値→最低設定値)とを含む。第一温水期は、すすぎ水の撹拌が主な目的であり、第二温水期と第三温水期とは、洗濯物への温水浸潤が主な目的である。
ここで、上記の実施形態では、第一温水期、第二温水期及び第三温水期をそれぞれ1回ずつ行う構成であったが、第一温水期の後、第二温水期と第三温水期とを複数回繰り返してもよい。
(10)本発明は、ドラム式洗濯乾燥機や、ドラム式以外の縦型洗濯機にも適用できる。
(11)上記の実施形態及び変形例をそれぞれ組み合わせてもよい。