特許第6812042号(P6812042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6812042ヒートシンク及び該ヒートシンクの製造方法並びに該ヒートシンクを用いた電子部品パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6812042
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】ヒートシンク及び該ヒートシンクの製造方法並びに該ヒートシンクを用いた電子部品パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20201228BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   H01L23/36 Z
   H05K7/20 F
   H05K7/20 D
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-87998(P2020-87998)
(22)【出願日】2020年5月20日
【審査請求日】2020年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000123608
【氏名又は名称】かがつう株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 優治
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宗佑
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋輔
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−029395(JP,A)
【文献】 特開2011−091115(JP,A)
【文献】 特開2019−192780(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/199456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方側に電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する板状のベース部材と、前記ベース部材の他方側に並設された板状の放熱部材とを備え、前記ベース部材及び前記放熱部材が、これらに圧入された内側部材により接続されているヒートシンクであって、
前記ベース部材と前記放熱部材には、それぞれ、貫通状の被挿入孔が設けられ、
前記内側部材は、その外周面を、前記ベース部材の前記被挿入孔の内周面と、前記放熱部材の前記被挿入孔の内周面との双方に圧接しており、
前記ベース部材と前記放熱部材のうち、少なくともその一方の部材には、他方の部材側へ突出するとともに内側に前記被挿入孔を形成した筒状突部が設けられ、
前記筒状突部は、その突端部を前記他方の部材に当接することで、前記一方の部材と前記他方の部材の間に、放熱空間を確保していることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記放熱部材には、前記放熱空間へ突出する放熱突起が設けられていることを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項3】
厚さ方向の一方側に電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する板状のベース部材と、前記ベース部材の他方側に並設された板状の放熱部材とを備え、前記ベース部材及び前記放熱部材が、これらに圧入された内側部材により接続されているヒートシンクであって、
前記ベース部材と前記放熱部材のうち、その一方の部材には、他方の部材側へ突出するとともに内側を貫通状の被挿入孔にした筒状突部が設けられ、前記他方の部材には、前記筒状突部を挿入した被挿入孔が設けられ、前記内側部材の外周面は、前記筒状突部の前記被挿入孔の内周面に圧接され、前記筒状突部の外周面は、前記他方の部材の前記被挿入孔の内周面に圧接されていることを特報とするヒートシンク。
【請求項4】
前記内側部材は、前記ベース部材を貫通するとともに、その貫通方向の一端部を、前記ベース部材の前記電子部品接触面と面一にしていることを特徴とする請求項1〜3何れか1項記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記ベース部材は、前記電子部品接触面をその周囲部分よりも前記一方側へ突出させていることを特徴とする請求項1〜4何れか1項記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記ベース部材と前記放熱部材に跨るように前記内側部材を挿入する工程と、この工程の後に、前記内側部材を押圧して、この内側部材を前記ベース部材と前記放熱部材の両部材内で拡径するように塑性変形させる工程とを含むことを特徴とする請求項1〜5何れか1項記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項7】
前記電子部品接触面に接触するように、電子部品を具備したことを特徴とする請求項1〜何れか1項記載のヒートシンクを用いた電子部品パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の熱を放熱するようにしたヒートシンク及び該ヒートシンクの製造方法並びに該ヒートシンクを用いた電子部品パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に示すように、基板部に放熱部として機能する多数の凸部を設けたヒートシンクがある。
このようなヒートシンクでは、前記凸部を大きくしたり、前記凸部の形状を複雑にしたりして、その表面積を拡大することにより、放熱性能を向上することが求められる。
そこで、前記放熱部を前記基板部とは独立した別体の部品として、比較的大きな形状や複雑な形状等に加工した後、この放熱部を前記基板部に接続することが提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6109274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したように別体の放熱部を基板部に接続するようにした場合、その接続箇所の強度や、生産性等が問題になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するために、以下の構成を具備するものである。
厚さ方向の一方側に電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する板状のベース部材と、前記ベース部材の他方側に並設された板状の放熱部材とを備え、前記ベース部材及び前記放熱部材が、これらに圧入された内側部材により接続されているヒートシンクであって、前記ベース部材と前記放熱部材には、それぞれ、貫通状の被挿入孔が設けられ、前記内側部材は、その外周面を、前記ベース部材の前記被挿入孔の内周面と、前記放熱部材の前記被挿入孔の内周面との双方に圧接しており、前記ベース部材と前記放熱部材のうち、少なくともその一方の部材には、他方の部材側へ突出するとともに内側に前記被挿入孔を形成した筒状突部が設けられ、前記筒状突部は、その突端部を前記他方の部材に当接することで、前記一方の部材と前記他方の部材の間に、放熱空間を確保していることを特徴とするヒートシンク。
また、他の発明としては、以下の構成を具備する。
厚さ方向の一方側に電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する板状のベース部材と、前記ベース部材の他方側に並設された板状の放熱部材とを備え、前記ベース部材及び前記放熱部材が、これらに圧入された内側部材により接続されているヒートシンクであって、前記ベース部材と前記放熱部材のうち、その一方の部材には、他方の部材側へ突出するとともに内側を貫通状の被挿入孔にした筒状突部が設けられ、前記他方の部材には、前記筒状突部を挿入した被挿入孔が設けられ、前記内側部材の外周面は、前記筒状突部の前記被挿入孔の内周面に圧接され、前記筒状突部の外周面は、前記他方の部材の前記被挿入孔の内周面に圧接されていることを特報とするヒートシンク。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、複数の部材を強固に接続してなるヒートシンクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るヒートシンクの一例を示す斜視図である。
図2】同ヒートシンクの全断面図である。
図3】同ヒートシンクの分解斜視図である。
図4】本発明に係るヒートシンクの他例を示す斜視図である。
図5図4の(V)−(V)に沿う断面図である。
図6】本発明に係るヒートシンクの他例を示す斜視図である。
図7図6に示すヒートシンクの全断面図である。
図8図6に示すヒートシンクの分解斜視図である。
図9】本発明に係るヒートシンクの他例を示す斜視図である。
図10】(a)は図9の(a)−(a)に沿う全断面図であり、(b)は図9の(b)−(b)線に沿う全断面図である。
図11】本発明に係るヒートシンクの他例を示す斜視図である。
図12】(a)は図11に示すヒートシンクの全断面図であり、(b)は同ヒートシンクを上下逆さにした態様を示す全断面図である。
図13】本発明に係るヒートシンクの他例を示す斜視図である。
図14】(a)は図13に示すヒートシンクの全断面図であり、(b)は同ヒートシンクを上下逆さにした態様を示す全断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、厚さ方向の一方側に電子部品に接触させるための電子部品接触面を有する板状のベース部材と、前記ベース部材の他方側に並設された板状の放熱部材とを備え、前記ベース部材及び前記放熱部材が、これらに圧入された内側部材により接続されている。(図1図14参照)
【0009】
第2の特徴として、前記ベース部材と前記放熱部材には、それぞれ、貫通状の被挿入孔が設けられ、前記内側部材は、その外周面を、前記ベース部材の前記被挿入孔の内周面と、前記放熱部材の前記被挿入孔の内周面との双方に圧接している(図2図5図7図10図12参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記ベース部材と前記放熱部材のうち、少なくともその一方の部材には、他方の部材側へ突出するとともに内側に前記被挿入孔を形成した筒状突部が設けられ、前記筒状突部は、その突端部を前記他方の部材に当接することで、前記一方の部材と前記他方の部材の間に、放熱空間を確保している(図2図5図7図10図12参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記放熱部材には、前記放熱空間へ突出する放熱突起が設けられている(図4図5図9図10参照)。
より好ましい態様としては、前記放熱突起には、前記放熱空間を外部空間に連通する通気部が設けられる(図4図10参照)。
【0012】
第5の特徴として、前記ベース部材と前記放熱部材のうち、その一方の部材には、他方の部材側へ突出するとともに内側を貫通状の被挿入孔にした筒状突部が設けられ、前記他方の部材には、前記筒状突部を挿入した被挿入孔が設けられ、
前記内側部材の外周面は、前記筒状突部の前記被挿入孔の内周面に圧接され、前記筒状突部の外周面は、前記他方の部材の前記被挿入孔の内周面に圧接されている(図14参照)。
【0013】
第6の特徴として、前記内側部材は、前記ベース部材を貫通するとともに、その貫通方向の一端部を、前記ベース部材の前記電子部品接触面と面一にしている(図2図5図7図10図12図14参照)。
【0014】
第7の特徴として、前記ベース部材は、前記電子部品接触面をその周囲部分よりも前記一方側へ突出させている(図7参照)。
【0015】
第8の特徴は、前記ヒートシンクの製造方法であって、前記ベース部材と前記放熱部材に跨るように前記内側部材を挿入する工程と、この工程の後に、前記内側部材を押圧して、この内側部材を前記ベース部材と前記放熱部材の両部材内で拡径するように塑性変形させる工程とを含む。
【0016】
第9の特徴は、前記ヒートシンクを用いた電子部品パッケージであって、前記電子部品接触面に接触するように、電子部品を具備した(図2図5図7図10図12図14参照)。
【0017】
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
<ヒートシンクA>
図1〜3に示すヒートシンクAは、厚さ方向の一方側に電子部品X(図2参照)に接触させるための電子部品接触面11aを有する板状のベース部材10と、ベース部材10の他方側に並設された板状の放熱部材20とを備え、ベース部材10及び放熱部材20が、これらに圧入された内側部材30によって接続されている。
【0019】
ベース部材10は、熱伝導性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から形成され、矩形平板状の基板部11と、この基板部11の中心部から放熱部材20側へ突出する筒状突部12とから一体に構成される。
【0020】
基板部11は、厚み方向の一方側(図示の下側)の面を、平坦状に形成して電子部品Xに接触させるための電子部品接触面11aとしている。
【0021】
筒状突部12は、基板部11の中心部から上方へ円筒状に突出している。基板部11及び筒状突部12の中心部には、内側部材30を挿通するための被挿入孔10aが貫通状に設けられる。
【0022】
放熱部材20は、ベース部材10と略同様に、熱伝導性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から形成され、矩形平板状の基板部21と、この基板部21の中心部からベース部材10側へ突出する筒状突部22とから一体に構成される。
なお、この放熱部材20は、図示例によれば、ベース部材10と同材質かつ同形状の部材を上下逆さまに用いているが、ベース部材10とは異なる材質や形状にしてもよい。
【0023】
基板部21は、厚み方向の一方側(図示の上側)の面を、平坦状に形成している。
また、筒状突部22は、基板部21における厚み方向の他方側(図示の下側)の面の中心部から下方へ円筒状に突出している。
基板部21及び筒状突部22の中心部には、内側部材30を挿通するための被挿入孔20aが貫通状に設けられる。この被挿入孔20aは、ベース部材10の被挿入孔10aに連続するように、被挿入孔10aと略同じ内径に形成される。
【0024】
ベース部材10の筒状突部12と放熱部材20の筒状突部22とは、その突端部同士を当接するようにして接続されることで、基板部11と基板部21の間に、外部空間に連通する放熱空間Sを確保している(図2参照)。
【0025】
内側部材30は、熱伝導性及び塑性変形性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から、円柱状に形成される。
この内側部材30は、その外周面を、軸方向の片半部側でベース部材10の被挿入孔10aの内周面に圧接し、軸方向の他半部側では放熱部材20の被挿入孔20aの内周面に圧接している。すなわち、この内側部材30は、二つの被挿入孔10a,20aに跨るようにして連続的に圧接している。
この内側部材30は、ベース部材10に対し上方から下方へ貫通するようにして挿通されるとともに、その挿通方向(貫通方向)の一端部を、ベース部材10の電子部品接触面11aと略面一にしている。また、内側部材30の他端部は、放熱部材20の上面に対し、略面一又は若干凹んでいる。
また、内側部材30の外周面の下端側には、被挿入孔20a,10aへの挿入を容易にする面取り部31が設けられる。この面取り部31は省くことも可能である。
【0026】
なお、ベース部材10、放熱部材20、内側部材30は、好ましくは三部材とも同材質とするが、何れか一つ、あるいはそれぞれを、異なる材質にすることも可能である。
【0027】
次に、上記ヒートシンクAの製造方法について詳細に説明する。
この製造方法は、筒状突部12,22同士を突き当てるようにしてベース部材10に放熱部材20を重ね合わせる工程と、この工程の後に、ベース部材10と放熱部材20に跨るように内側部材30を挿入する工程と、この工程の後に、内側部材30を軸方向に押圧して、この内側部材30をベース部材10と放熱部材20の両部材内で拡径するように塑性変形させる工程とを含む。
【0028】
詳細に説明すれば、上記最初の工程では、図示しない受治具(図示せず)の平坦状の上面に、筒状突部12を上方へ向けるようにしてベース部材10が載置され、筒状突部12,22同士を突き当てるようにして、ベース部材10の上側に放熱部材20が載置される。
【0029】
次の工程では、ベース部材10及び放熱部材20の被挿入孔10a,20aに対し、その上側から内側部材30を挿入し、この内側部材30下端部を、前記受治具に当接させる。
【0030】
次の工程では、内側部材30の上端部を円筒状の押圧治具(図示せず)等によって押圧する。すると、内側部材30は、前記押圧治具と前記受治具に挟まれて軸方向に圧縮変形するとともに、径方向外側へ拡大するようにして塑性変形する。
【0031】
なお、被挿入孔10a,20aに挿入される前の初期状態において、内側部材30は、被挿入孔10a,20aと略同等の外径、あるいは被挿入孔10a,20aよりも若干小さい外径を有する。この内側部材30は、被挿入孔10a,20a内で軸方向へ押圧され塑性変形することで、外径を拡大する。
【0032】
そして、上記構成のヒートシンクAは、図2に示すように、電子部品接触面11aを電子部品Xに接触させて、電子部品パッケージを構成する。
この構成によれば、電子部品Xから発した熱は、電子部品接触面11aを介してベース部材10に熱伝達し、筒状突部12及び筒状突部22等を介してベース部材10から放熱部材20へ熱伝達し、さらに、放熱空間Sを流動する空気や、放熱部材20の上方の外気等に熱伝達して放熱される。
【0033】
本願発明者等は、ベース部材10、放熱部材20及び内側部材30の三部材を純アルミ系材料であるA1070により制作し、これら同材質の三部材によりヒートシンクAを構成し、このヒートシンクAについて以下の二種類の試験を行った。
第一の試験では、放熱部材20のみを固定治具等に固定し、内側部材30を200Nの力で下方へ押圧した。
第二の試験では、ベース部材10のみを固定治具等に固定し、内側部材30を200Nの力で下方へ押圧した。
そして、本願発明者等は、これら二種類の試験の結果、前記何れの試験においても、ベース部材10及び放熱部材20から内側部材30が外れる等の問題を生じないことを確認した。
【0034】
さらに、本願発明者等は、ヒートシンクAを中心軸に沿って切断し、その切断面を拡大して視覚的に観察し、内側部材30の外周面がベース部材10及び放熱部材20の内周面に密接していることを確認した。
【0035】
このように、ヒートシンクAによれば、ベース部材10に対し別体の放熱部材20を強固に接続することができ、生産性も良好であり、ひいては、放熱部材20を、比較的大きな形状や複雑な形状等に加工することも可能になる。
【0036】
<ヒートシンクB>
次に、本発明に係る他のヒートシンクについて説明する。以下に示すヒートシンクは、上記ヒートシンクAについて、その一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、ヒートシンクAと同一の部分については同一の符号を付けて重複説明を省略する。
【0037】
図4図5に示すヒートシンクBは、上記ヒートシンクAにおいて、放熱部材20を放熱部材40に置換したものである。
【0038】
放熱部材40は、熱伝導性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から形成され、矩形平板状の基板部41と、この基板部41の中心部からベース部材10側へ突出する筒状突部42(図5参照)と、基板部41における筒状突部42の周囲部分から放熱空間Sへ突出する複数の放熱突起43とから一体に構成される。
【0039】
基板部41及び筒状突部42は、それぞれ、上述した基板部21及び筒状突部22と略同一の構成である。図中、符号40aは、内側部材30を挿入するための被挿入孔である。
【0040】
放熱突起43は、基板部41の面方向へ所定間隔を置いて平行に複数配設される。
各放熱突起43は、基板部41から放熱空間S側へ断面凸状に突出する突起であり、基板部41の面方向へわたる長尺状に形成される。
この放熱突起43は、上方を開口した断面略凹状の中空部43aと、この中空部43aを放熱空間Sに連通する通気部43bとを有する。
【0041】
中空部43aは、図示例によれば平面視長方向の空間であり、基板部41よりも上側の空間に連通している。
【0042】
通気部43bは、長尺状の放熱突起43の一端側と他端側にそれぞれ設けられる。各通気部43bは、中空部43aと放熱空間Sとを連通する孔状に形成される。すなわち、放熱突起43の上側の空間は、中空部43a及び通気部43bを介して放熱空間Sに連通している。
【0043】
よって、図4に示すヒートシンクBによれば、ヒートシンクAと同様に、ベース部材10と放熱部材40を内側部材30によって強固に接続できるのに加え、当該ヒートシンクBの周囲で自然対流又は強制対流する空気を、ベース部材10と放熱部材40間の放熱空間Sや、放熱突起43内の空間に通過させて、放熱効率を向上させることができる。
【0044】
<ヒートシンクC>
図6図8に示すヒートシンクCは、上記ヒートシンクAにおいて、放熱部材20を放熱部材20’に置換し、ベース部材10をベース部材50に置換したものである。
【0045】
また、放熱部材20’は、上記放熱部材20の筒状突部22を長くして、筒状突部22’としたものであり、他の構成は上記放熱部材20のものと同じである。
【0046】
ベース部材50は、熱伝導性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から形成され、矩形板状の基板部51と、この基板部51の中心部から放熱部材20’側へ突出する筒状突部52とを有する一体状に構成される。
【0047】
基板部51は、その厚さ方向の一方側の面における中心部寄りに、その周囲よりも突出するように電子部品接触面51aを有する。
また、基板部51は、その厚さ方向の他方側の面における筒状突部52の周囲に、環状の凹部51bを有する。この凹部51bは、電子部品接触面51aを突出させるためのプレス加工等により形成されるものであり、電子部品接触面51aを有する範囲の裏面側に位置する。
【0048】
上記構成の放熱部材20’とベース部材50は、上記ヒートシンクAと略同様にして内側部材30が圧入されることで、一体化される。
なお、図中、符号20a’及び50aは、内側部材30を圧入するための被挿入孔である。
【0049】
よって、図6図8に示すヒートシンクCによれば、ヒートシンクAと略同様の作用効果を奏するのに加えて、電子部品接触面51aを電子部品Xに接触させた状態で、電子部品接触面51aの周囲に環状の空間pを確保することができ、ひいては、この空間pを放熱のための空間にしたり、他の部材への干渉防止のための空間にしたりすることができる。
【0050】
<ヒートシンクD>
図9図10に示すヒートシンクDは、上記ヒートシンクAにおいて、放熱部材20を放熱部材60に置換したものである。
【0051】
放熱部材60は、熱伝導性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から形成され、矩形平板状の基板部61と、この基板部61の中心部からベース部材10側へ突出する筒状突部62と、基板部61における筒状突部62の周囲部分から放熱空間Sへ突出する複数の放熱突起63とから一体に構成される。
【0052】
基板部61及び筒状突部62は、それぞれ、上述した基板部21及び筒状突部22と略同一の構成である。
なお、図中、符号60aは、内側部材30を圧入するための被挿入孔である。
【0053】
放熱突起63は、基板部61の面方向へ所定間隔を置いて複数配設される。
各放熱突起63は、放熱空間Sへ突出する六角形筒状の突起であり、その内部に、貫通孔状の通気部63aを有する。
【0054】
通気部63aは、放熱突起63及び基板部61を、板厚方向へ貫通して、放熱部材60とベース部材10の間の放熱空間Sを、放熱部材60よりも上側の外部空間に連通している。
【0055】
上記構成のヒートシンクDは、図10(a)に示すように、電子部品Xに装着されて電子部品パッケージを構成する。この電子部品パッケージの上方側には、図9に示すように、必要に応じて、送風機Mが設けられる。この送風機Mは、放熱部材60の周囲の空気を、放熱部材60に対しその上方側から吹き付け、複数の通気部63aに流通させる。
【0056】
よって、上記構成のヒートシンクDによれば、上記ヒートシンクAと略同様の作用効果が得られるのに加え、複数の放熱突起63を放熱空間Sに晒すとともに、複数の通気部63aに空気を流通させて、放熱性能をいっそう向上することができる。
しかも、六角形状の放熱突起63により、放熱部材60の強度アップ、及び意匠性の向上をはかることができる。
【0057】
なお、図示例によれば、各放熱突起63は、隣接する放熱突起63に対し間隔を置いて配設したが、他例としては、隣接する放熱突起63同士を、周壁を共有するようにして接続し一体化するようにしてもよい。この構成によれば、放熱部材60をいっそう強度アップすることができる。
【0058】
<ヒートシンクE>
図11図12に示すヒートシンクEは、上記ヒートシンクAにおいて、放熱部材20を放熱部材70に置換したものである。
【0059】
放熱部材70は、熱伝導性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から形成され、平板状の基板部71の中心部に、内側部材30を圧入するための被挿入孔70aを有する。言い換えれば、この放熱部材70は、上記構成の放熱部材20から筒状突部22を省いた形状である。
【0060】
放熱部材70は、被挿入孔70aをベース部材10の被挿入孔10aに対し同芯状に配置して、筒状突部12の突端に接触している。
【0061】
そして、放熱部材70の被挿入孔70aと、ベース部材10の被挿入孔10aには、上方側から内側部材30が圧入される。
内側部材30は、上記ヒートシンクAと略同様にして、被挿入孔70a及び被挿入孔10a内で軸方向の圧縮力を受けることで、拡径するように塑性変形し、その外周面を被挿入孔70a,10aの内周面に圧接する。
【0062】
よって、図11図12に示すヒートシンクEによれば、上記ヒートシンクAと略同様の作用効果が得られるのに加え、当該ヒートシンクE全体の厚み寸法を比較的小さくすることができ、高さの小さいコンパクトなヒートシンク及び電子部品パッケージを提供することができる。
【0063】
なお、このヒートシンクEは、図12(b)に示すように、ベース部材80と放熱部材70の配置を上下逆さまにし、下方を向く放熱部材70の外面を電子部品Xに接触させる構成とすることも可能である。
【0064】
<ヒートシンクF>
図13図14に示すヒートシンクFは、厚さ方向の一方側に電子部品Xに接触させるための電子部品接触面81aを有する板状のベース部材80と、ベース部材80の他方側に並設された板状の放熱部材90とを備え、ベース部材80及び放熱部材90を、これらに圧入された内側部材30’により接続している。
【0065】
ベース部材80は、熱伝導性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から形成され、上記基板部11と同形状の基板部81と、この基板部81の中心部から放熱部材90側へ突出する筒状突部82とを一体に有する。
【0066】
筒状突部82は、基板部81の中心部から上方へ円筒状に突出している。この突出量は、図示例によれば、放熱部材90の厚み寸法と略同等である。
基板部81及び筒状突部82の中心部には、内側部材30’を圧入するための被挿入孔80aが貫通状に設けられる。
【0067】
放熱部材90は、熱伝導性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から形成され、平板状の基板部91の中心部に、ベース部材80の筒状突部82を圧入するための被挿入孔90aを有する。この放熱部材90は、外観形状としては、上記放熱部材70と略同様の形状を呈する。
この放熱部材90は、筒状突部82に対し環状に嵌め合わせられる。そして、この放熱部材90の下面は、基板部81の上面に接する。
【0068】
また、内側部材30’は、熱伝導性及び塑性変形性の良好な金属材料(例えば、銅やアルミニウム等)から、円柱状に形成され、その外径を、ベース部材80の内周面と略同等、又は同等以下に形成している。
【0069】
上記構成のヒートシンクFの製造方法について説明すれば、
先ず、図示しない受治具(図示せず)の平坦状の上面に、筒状突部82を上方へ向けるようにしてベース部材80が載置され、放熱部材90の被挿入孔90aに、ベース部材80の筒状突部82を挿入するようにして、ベース部材80の上側に放熱部材90が重ね合わせられる。
【0070】
次に、ベース部材80の被挿入孔80aに、内側部材30’を挿入し、この内側部材30’下端部を、図示しない受治具に当接させる。そして、内側部材30’の上端部を図示しない押圧治具等によって押圧することで、内側部材30’を拡径するように塑性変形させる。
【0071】
したがって、拡径した内側部材30’の外周面が、ベース部材80の被挿入孔80aの内周面に圧接され、さらに、この圧接により、筒状突部82も拡径してその外周面を放熱部材90の被挿入孔90a内周面に圧接する。
【0072】
よって、図13図14に示すヒートシンクFによれば、ベース部材80に対し別体の放熱部材90を強固に接続することができる上、放熱部材90の上面側を放熱面として機能させるこができ、薄肉でコンパクトなヒートシンクを提供することができる。
【0073】
なお、このヒートシンクFは、図14(b)に示すように、ベース部材80と放熱部材90を上下逆さまにし、下方を向く放熱部材90の外面を電子部品Xに接触させた構成とすることも可能である。
さらに、ヒートシンクFの変形例としては、ベース部材80と放熱部材90の間に隙間を確保し、この隙間を放熱空間として機能させることも可能である。
【0074】
<その他の変形例>
上記実施態様によれば、上記内側部材を円柱状に構成したが、この内側部材の他例としては、角柱状や、横断面長方形の柱状、横断面楕円の柱状等、円柱以外の柱状とすることが可能である。
【0075】
また、図示例によれば、上記内側部材の上端面を上記放熱部材の上端面に対し略面一、又は若干凹むように形成したが、他例としては、上記内側部材の上端部を上記放熱部材の上端面よりも突出させた態様とすることも可能である。この他例によれば、内側部材の前記突出した部分を、比較的面積の広い放熱部として機能させることができる。
【0076】
また、図示例では、上記内側部材は軸方向に圧縮されて塑性変形するため、この内側部材の上端面を上記放熱部材の上端面に対し若干凹ませているが、上記内側部材の他例としては、予め若干長めに形成しておき、軸方向に圧縮されて塑性変形することで、上記放熱部材の上端面と面一になるようにすることも可能である。
【0077】
また、上記実施態様では、上記ベース部材及び上記放熱部材に対し、その上方側から上記内側部材を挿入するようにしたが、他例としては、上記ベース部材及び上記放熱部材に対し、その下方側から上記内側部材を挿入することも可能である。
【0078】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0079】
10,80:ベース部材
10a,20a,20a’,40a,50a,60a,70a,80a,90a:被挿入孔
11a,51a:電子部品接触面
12,22,22’,42,52,62,82:筒状突部
20,40,60,70,90:放熱部材
30,30’:内側部材
43,63:放熱突起
43b,63a:通気部
A〜F:ヒートシンク
S:放熱空間
X:電子部品
p:空間
【要約】
【課題】 複数の部材を強固に接続してなるヒートシンクを得る。
【解決手段】 厚さ方向の一方側に電子部品Xに接触させるための電子部品接触面11aを有する板状のベース部材10と、ベース部材10の他方側に並設された板状の放熱部材20とを備え、ベース部材10及び放熱部材20が、これらに圧入された内側部材30により接続されている。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14