【実施例】
【0036】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0037】
<生地の作業性評価>
実施例及び比較例でクラッカー生地又はハードビスケット生地を作製した際、一定温度で一定時間静置した直後の生地を用いて評価した。その際の評価基準は以下の通りである。
5点:生地の硬さが最適で伸びが非常に良く、且つべとつきがないため生地の状態が非常に良く、生地の作業性が非常に良好である。
4点:生地の硬さが好適で伸びが良く、且つべとつきがほとんどないため生地の状態が良く、生地の作業性が良好である。
3点:生地の硬さが硬すぎず柔らかすぎないで、無理なく伸び、あまりべとつきがないため生地の状態に問題はなく、生地の作業性に問題はない。
2点:生地の硬さがやや硬すぎる又は柔らかすぎる、伸びがやや悪い、或いはややべとつきがあるために生地の状態がやや悪く、生地の作業性がやや悪い。
1点:生地の硬さが硬すぎる又は柔らかすぎる、伸びが悪い、或いはべとつきがあるために生地の状態が悪く、生地の作業性が悪い。
【0038】
<さっくりとした歯切れ評価>
実施例及び比較例で得られたクラッカー又はハードビスケットを熟練したパネラー10名に食べてもらって官能評価を行い、それを平均して評価結果とした。その際の評価基準は以下の通りである。
5点:従来品と比して非常にさっくりとして歯切れが良く、非常に好ましい。
4点:従来品と比してよりさっくりとして歯切れが良く、更に好ましい。
3点:従来品と比してさっくりとして歯切れが良く、好ましい。
2点:従来品と比してややさっくりとして歯切れが良いが、満足のいくレベルではない。
1点:歯切れは従来品と同程度であり、さっくりとしておらず、悪い。
【0039】
<口ごなれ評価>
実施例及び比較例で得られたクラッカー又はハードビスケットを熟練したパネラー10名に食べてもらって官能評価を行い、それを平均して評価結果とした。その際の評価基準は以下の通りである。
5点:従来品と比して非常に口ごなれが良く、非常に好ましい。
4点:従来品と比してより口ごなれが良く、更に好ましい。
3点:従来品と比して口ごなれが良く、好ましい。
2点:従来品と比してやや口ごなれが良いが、満足のいくレベルではない。
1点:口ごなれは従来品と同程度あり、悪い。
【0040】
<総合評価>
実施例及び比較例における生地の作業性、得られたクラッカー又はハードビスケットのさっくりとした歯切れ及び口ごなれを総合的に判断して、以下の基準に従い総合評価を行った。
5点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち何れも4.0点以上であり、とても好ましい。
4点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち何れも3.0点以上であり、最も点数の低い項目が3.0点以上4.0点未満であり、好ましい。
3点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち何れも2.5点以上であり、最も点数の低い項目が2.5点以上3.0点未満であり、問題はない。
2点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち少なくとも何れかが1.5点以上2.5点未満であり、あまり好ましくない。
1点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち少なくとも何れかが1.0点以上1.5点未満であり、好ましくない。
【0041】
<実施例・比較例で使用した原料>
1)日本製粉(株)製「ハート」(蛋白質含量:8.2重量%,水分含有量:14.2重量%)
2)(株)カネカ製「エバーライトG(M型)」(水分含有量:0重量%)
3)パーム分別油エステル交換油:ナタネ油(3:7で配合)のショートニング(水分含有量:0重量%)
4)新日本化学(株)製「スミチームLP50D」(比活性:130,000U/g)
5)新日本化学(株)製「スミチームMP」(比活性:150,000U/g)
6)天野エンザイム(株)製「パパインW-40」(比活性:200,000U/g)
7)新日本化学(株)製「スミチームTP」(比活性:10,000U/g)
8)東洋精糖(株)製「グラニュー糖」(水分含有量:0重量%)
9)昭和産業(株)「ニューフラクトR−30」(水分含有量:24.5重量%)
10)日本食塩製造(株)製「精製塩」(水分含有量:2重量%)
11)ディアマルテリア・イタリアーナ社製「euromalt」(水分含有量:19.1重量%)
12)純正化学(株)製「食品添加物グレード炭酸水素ナトリウム」(水分含有量:0重量%)
13)関東化学製「リン酸二水素カルシウム(鹿1級)」(水分含有量:0重量%)
14)国産化学(株)製「食品添加物グレード炭酸アンモニウム」(水分含有量:0重量%)
15)(株)カネカ製「コンソールショートG(M型)」(水分含有量:0重量%)
16)(株)カネカ製「エバーライトG(W型)」(水分含有量:0重量%)
17)(株)カネカ製「コンソールショートG(W型)」(水分含有量:0重量%)
18)パーム油・ヤシ油のエステル交換油(融点:41℃):ナタネ油(等量ずつ配合)のショートニング(水分含有量:0重量%)
19)パーム核硬化油(融点:36℃):パーム油・ヤシ油のエステル交換油(融点:41℃):ナタネ油(40:13:47で配合)のショートニング(水分含有量:0重量%)
20)(株)カネカ製「マリーパート」(水分含有量:0重量%)
21)(株)カネカ製「コンソールショートG(H型)」(水分含有量:0重量%)
22)(株)カネカ製「CNショート−1(H型)」(水分含有量:0重量%)
【0042】
(実施例1)クラッカーの作製
表1に示すクラッカーの配合に従い、薄力粉(蛋白質含量:8.2重量%、水分含量:14.2重量%):100重量部、ショートニング(水分含有量:0重量%):12.5重量部、グラニュー糖(水分含有量:0重量%):6重量部、ブドウ糖果糖液糖(水分含有量:24.5重量%):3重量部、食塩(水分含有量:2重量%):1.2重量部、モルトエキス(水分含有量:19.1重量%):2重量部、炭酸水素ナトリウム(水分含有量:0重量%):1.1重量部、リン酸二水素カルシウム(水分含有量:0重量%):1.2重量部、炭酸アンモニウム(水分含有量:0重量%):0.8重量部、水:27重量部、及びカビ由来プロテアーゼを薄力粉100gあたり11200U、植物由来プロテアーゼを薄力粉100gあたり2500Uになるように10Qミキサーボール(関東混合機工業(株)製「HP1i−20M」)に投入し、低速で3分間、中速で3分30秒間混合し生地を得た(生地中の穀粉100重量部に対する穀物由来の蛋白質含量:8.2重量部、生地全体中の水分含量:27.2重量%)。該生地を35℃で3時間寝かせた後、リバースシーターを用い厚さ約2.5mmに伸ばし、3重に折った。生地を90℃度回転させて伸展方向を変えた後、厚さ約2.5mmに伸ばし、更に3重に折った。再び90℃度回転させて伸展方向を変えた後、更に厚さ約2.5mmに伸ばしクラッカー用生地を得た。該クラッカー用生地を直径5cmの円形の型で抜き、上火240℃、下火260℃に設定したガスオーブンで7分間焼成し、クラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
(実施例
2、3、5、6、及び参考例)クラッカーの作製
表1の配合に従い、プロテアーゼの種類や添加量を変更した以外は、実施例1と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果は表1に示した。
【0045】
(比較例1,2)クラッカーの作製
各プロテアーゼの添加量を変えた以外は、実施例1と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果を表1に示した。
【0046】
(比較例3)クラッカーの作製
カビ由来プロテアーゼの種類と添加量を変え、植物由来プロテアーゼを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーは従来の標準品であり、その評価結果は表1に示した。
【0047】
実施例
1〜3、5、6および比較例1〜3の評価結果より、次のことがわかった。カビ由来のプロテアーゼの添加量が2000〜24000Uであり、且つ植物由来及び細菌由来のプロテアーゼの合計添加量が2500〜15000Uである実施例
1〜3、5、6では、作業性は問題のないレベル又はそれ以上であり、食感は従来のクラッカー(比較例3)と比して良好〜非常に好ましいレベルであった。なお、カビ由来のプロテアーゼを2000U、植物由来のプロテアーゼを15000U添加し、細菌由来のプロテアーゼを添加していない実施例5では、問題のないレベルではあるものの、生地のべとつきがみられた。また、カビ由来プロテアーゼおよび植物由来プロテアーゼの添加量をそれぞれ24000U、2500Uとした実施例6では、実施例1と比して生地がややべとつくが作業性は良好なレベルであり、歯切れ、口ごなれは非常に好ましく、総合的に好ましいものであった。植物由来のプロテアーゼの添加量を17500Uとし、カビ由来プロテアーゼの添加量を2500Uとした比較例1では、クラッカーの食感は非常に好ましいレベルであったが、生地がべとついてちぎれやすく、作業性が悪かった。
【0048】
(実施例7〜15)クラッカーの作製
表2の配合に従い、ショートニングの種類を変更した以外は、実施例1と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果は表2に示した。
【0049】
実施例7〜15の評価結果より、次のことがわかった。全構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の合計含有量が47.7〜90.9重量%である実施例7〜14では、作業性は実施例1と同様に非常に良好又は良好なレベルであり、クラッカーの食感は実施例1と比して更に好ましいものであった。また、歯切れおよび口ごなれの改善効果は、前記含有量が47.7〜73.5重量%の範囲でより顕著であった。一方、前記含有量が31.3重量%である実施例15では、実施例1と比べ顕著な作業性・食感改善効果は見られなかった。また、油脂の油脂全体中における60℃に融解後30℃で24時間保存後のSFCが3〜40の割合が20〜55重量%である実施例7,8,10,11,12,14では、該割合が20〜55重量%から外れる実施例1,9,13,15と比して食感が更に改善されており、前記割合が20〜47重量%(実施例7,8,10,11,14)では、特に食感が良く、非常に好ましいレベルであった。前記割合が80重量%(実施例9、15)では、好ましいレベルではあるものの、食感がやや硬かった。また、前記割合が0重量%(実施例13)では、好ましいレベルであるものの、さっくりとした歯切れがやや不足していた。
【0050】
【表2】
【0051】
(実施例16)ハードビスケットの作製
表3に示すハードビスケットの配合に従い、薄力粉(蛋白質含量:8.2重量%、水分含量:14.2重量%):100重量部、ショートニング(水分含有量:0重量%):20重量部、上白糖(水分含有量:0.8重量%):23重量部、ブドウ糖(水分含有量:0重量%):6重量部、食塩(水分含有量:2重量%):0.5重量部、全粉乳(水分含有量:3重量%):3重量部、炭酸水素ナトリウム(水分含有量:0重量%):0.2重量部、リン酸二水素カルシウム(水分含有量:0重量%):1.2重量部、炭酸アンモニウム(水分含有量:0重量%):0.7重量部、水:25重量部及びカビ由来のプロテアーゼを小麦粉100gあたり11200U、植物由来のプロテアーゼを2500Uになるようにそれぞれ10Qミキサーボール(関東混合機工業(株)製「HPi−20M」)に投入し、低速で3分、中速で13分混合し生地を得た。20℃で1時間寝かせた後、リバースシーターを用い厚さ約2.5mmに伸ばし、4重に折った。生地を90度回転させて伸展方向を変えた後、厚さ約2.5mmに伸ばしハードビスケット用生地を得た(生地中の穀粉100重量部に対する穀物由来の蛋白質:8.2重量部、生地全体中の水分含量:22.0重量%)。該ハードビスケット用生地を直径5cmの円形の型で抜き、ガスオーブン(上火230℃、下火230℃)で6分間焼成し、ハードビスケットを得た。得られたハードビスケット用生地およびハードビスケットの評価結果は表3に示した。
【0052】
(実施例17〜23)ハードビスケットの作製
表3の配合に従い、ショートニングの添加量や種類及び/又は各プロテアーゼの添加量を変更し、更に実施例18および19では水の添加量を34重量部に変更した以外は、実施例16と同様にしてハードビスケット用生地及びハードビスケットを得た。得られたビスケット用生地およびハードビスケットの評価結果は表3に示した。
【0053】
(比較例4,5)ハードビスケットの作製
表3の配合に従い、ショートニングの添加量や種類を変え、プロテアーゼを添加せず、比較例5では水の添加量を34重量部に変更した以外は、実施例16と同様にしてハードビスケット用生地及びハードビスケットを得た。得られたハードビスケット用生地およびハードビスケットは従来の標準品であり、その評価結果は表3に示した。なお、油脂配合量が多いほど食感がさっくりとするため、油脂配合量が少ない比較例5のハードビスケットを食感の評価実施時における基準「従来品」とした。
【0054】
実施例16〜23、比較例4,5の評価結果より、次のことがわかった。
【0055】
実施例16〜23は、それぞれ作業性が良好又は非常に良好なレベルであり、食感も従来品(比較例4,5)と比べて非常に好ましいレベルであった。
【0056】
【表3】
【0057】
(実施例24〜26、比較例6〜9)クラッカーの作製
表4の配合、製造条件に従い、生地静置温度や生地静置時間を変更した以外は実施例8と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果は表4に示した。
【0058】
表4の評価結果より、次のことがわかった。生地を静置する際の温度が20℃、35℃、静置する時間が0.5〜5時間の製造条件(実施例24〜46)では作業性は良好又は非常に良好であり、食感は非常に良好なレベルであったが、該温度が10℃の場合(比較例6、7)は、静置する時間を延長した場合でも生地が硬すぎて伸展しにくかったために作業性が悪く、また、食感改善効果も実施例8に劣っていた。生地を静置する際の温度が45℃である比較例8では、食感改善効果が非常に良好なレベルであった一方で生地がべとつき作業性がやや悪かった。生地を静置せずに伸展、形成、焼成した比較例9では、作業性は問題なかったが、食感改善効果は満足のいくレベルではなかった。
【0059】
【表4】
【0060】
(実施例27、比較例10)ハードビスケットの作製
表5の配合、製造条件に従い、生地静置温度や生地静置時間を変更した以外は、実施例16と同様にしてハードビスケット用生地及びハードビスケットを得た。得られたハードビスケット用生地およびハードビスケットの評価結果は表5に示した。
【0061】
表5の評価結果より、次のことがわかった。生地を静置する際の温度が20℃、35℃、静置する時間が1時間の製造条件(実施例16、27)では作業性、食感共に非常に良好であったが、生地を静置せずに伸展、形成、焼成した比較例10では、作業性は問題のないレベルであったが、食感改善効果は満足のいくレベルではなかった。
【0062】
【表5】