特許第6812092号(P6812092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6812092プロテアーゼを含有する菓子及び菓子用生地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812092
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】プロテアーゼを含有する菓子及び菓子用生地
(51)【国際特許分類】
   A21D 8/04 20060101AFI20201228BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20201228BHJP
【FI】
   A21D8/04
   A21D13/00
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-103141(P2015-103141)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-214158(P2016-214158A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月23日
【審判番号】不服2020-990(P2020-990/J1)
【審判請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森住 実
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 齊藤 真由美
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/072758(WO,A1)
【文献】 特開平3−143355(JP,A)
【文献】 特開平5−68466(JP,A)
【文献】 Cereal Foods World,vol.47,(2002),p.382−389
【文献】 日本食品工業学会誌,Vol.36,(1989),p.964−967
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D2/00-17/00, A23L7/00-7/104, A23G1/00-9/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地中の、小麦、大麦、及びライ麦から選択される穀粉100重量部に対して穀物由来の蛋白質を6〜11重量部、油脂を6〜25重量部含有し、Aspergillus oryzaeであるカビ由来のプロテアーゼを穀粉100gあたり1800〜26000U、及び、パパイン及び/又はサーモリシンを穀粉100gあたり合計で1750〜16500U含み、生地全体中の水分含量が18〜32重量%である、クラッカー又はハードビスケット用生地。
【請求項2】
前記油脂の構成脂肪酸全体中、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の合計含有量が25〜95重量%である請求項1に記載のクラッカー又はハードビスケット用生地。
【請求項3】
60℃に融解後、30℃で24時間保存後のSFCが3〜40%の油脂を前記油脂全体中10〜90重量%含有する請求項1又は2に記載のクラッカー又はハードビスケット用生地。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のクラッカー又はハードビスケット用生地を加熱調理してなるクラッカー又はハードビスケット
【請求項5】
小麦、大麦、及びライ麦から選択される穀粉100重量部に対して穀物由来の蛋白質含有量を6〜11重量部とし、油脂を6〜25重量部添加し、Aspergillus oryzaeであるカビ由来のプロテアーゼを穀粉100gあたり1800〜26000U、及び、パパイン及び/又はサーモリシンを穀粉100gあたり合計で1750〜16500U添加し、生地全体中の水分含量が18〜32重量%となるように添加して混合し、得られる混合物を20〜40℃で0.5〜5.0時間静置した後、加熱調理することを特徴とするクラッカー又はハードビスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアーゼを含有する菓子及び菓子用生地に関する。
【背景技術】
【0002】
パン・菓子等の穀粉を主原料とする加熱調理食品では、混練により生地中にグルテンのネットワークが形成される。このグルテンのネットワークは生地の構造を保つのに重要である一方で、硬い食感をもたらしたり、口ごなれを損なう場合がある。近年の消費者の志向から、元々さっくりした食感が特徴であるクラッカーやビスケットのような菓子においても、更なるさっくりした歯切れと口ごなれの改善が求められている。
【0003】
これら食感改善の方法としては、例えばリポキシゲナーゼをアミラーゼまたはプロテアーゼの内の1種類以上と併用して焼成前の生地に酵素処理することにより、口どけが良く、サクサクした食感を有するビスケット類を製造する方法(特許文献1)が開示される。しかし特許文献1では、プロテアーゼの単独添加では組織改良の効果に限界があるとされ、その添加量は小麦粉100gあたり10U以下と少なく制限されており、100U以上のように多く添加すると作用時間を極端に短くしたり、作用温度を極端に低くする必要があり生産工程のコントロールが難しくなる旨が記載され、しかも使用するプロテアーゼについては由来を考慮しておらず、実施例では植物由来の物しか使用されていない。またさらに、細菌由来の中間熱安定性または熱安定性セリンまたは金属プロテアーゼの内少なくとも1つをパン・菓子製品に添加することにより、パン・菓子製品のショートバイト及びテクスチャーパラメーターの改善のための方法(特許文献2)が開示されているが、ケーキのようなソフトな菓子製品の例示や実施例はあるものの、油脂の配合量が少ないクラッカーやビスケット類の実施例はなく、故にプロテアーゼの添加量が多くても小麦粉100gあたり7.5Uと少ないため、クラッカーやビスケット類のさっくりとした歯切れ、口ごなれの良い食感を大幅に改善することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−322456号公報
【特許文献2】特表2011−520437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、さっくりした歯切れと口ごなれを従来にない程格段に向上させた菓子及び該菓子用生地を提供することである。またその製造方法において、使用する酵素の作用時間を極端に短くしたり、作用温度を極端に低くする必要が無い方法を提供し、さらに生産工程を煩雑化することなく製造時間短くすることも目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カビ由来のプロテアーゼと植物及び/又は細菌由来のプロテアーゼとを併用し、さらに穀粉を主原料とする生地中に含まれる穀物由来の蛋白質含量を特定の範囲とし、該生地中に含まれる油脂と水分との含有量を特定量とすることで、焼成後の菓子のさっくりとした歯切れと口ごなれが従来にない程格段に向上し、またさらに配合する油の脂肪酸組成が特定であると、更にさっくりとした歯切れと口ごなれが向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、生地中の穀粉100重量部に対して穀物由来の蛋白質を6〜11重量部、油脂を6〜25重量部含有し、カビ由来のプロテアーゼを穀粉100gあたり1800〜26000U及び植物由来及び/又は細菌由来のプロテアーゼを穀粉100gあたり合計で1750〜16500U含み、生地全体中の水分含量が18〜32重量%である菓子用生地に関する。好ましい実施態様は、前記油脂の構成脂肪酸全体中、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の合計含有量が25〜95重量%である前記記載の菓子用生地に関する。より好ましくは、60℃に融解後、30℃で24時間保存後のSFCが3〜40%の油脂を前記油脂全体中10〜90重量%含有する上記記載の菓子用生地に関する。本発明の第二は、上記記載の菓子用生地を加熱調理してなる菓子に関する。本発明の第三は、穀粉100重量部に対して穀物由来の蛋白質含有量を6〜11重量部とし、油脂を6〜25重量部添加し、カビ由来のプロテアーゼを穀粉100gあたり2000〜26000U及び細菌由来のプロテアーゼ及び/又は植物由来のプロテアーゼを穀粉100gあたり合計で1750〜16500U添加し、生地全体中の水分含量が18〜32重量%となるように添加して混合し、得られる混合物を20〜40℃で0.5〜5.0時間静置した後、加熱調理することを特徴とする菓子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、さっくりした歯切れと口ごなれを従来にない程格段に向上させた菓子及び該菓子用生地を提供することである。またその製造方法において、使用する酵素の作用時間を極端に短くしたり、作用温度を極端に低くする必要が無い方法を提供し、さらに生産工程を煩雑化することなく製造時間を短くすることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の菓子用生地は、穀粉類を始めとする原材料を加熱調理前に混合した生地混合物に適宜水分を加えて捏ね上げたもので、穀粉を含有する生地に対し、原材料として穀物由来の蛋白質、カビ由来のプロテアーゼ、植物及び/又は細菌由来のプロテアーゼ、油脂及び水分を特定量含有することを特徴とする。そして、前記菓子用生地を加熱調理して本発明の菓子を得ることができる。
【0010】
本発明の菓子とは、クラッカー、ハードビスケット、プレッツェル及び乾パンからなる群より選ばれる1種であり、これら菓子類にチョコレートやクリーム、ジャム、あんこ等のフィリングをコーティングしたりサンドした加工品等でもよい。なお、クラッカーとハードビスケットの違いは主には糖類の量で、クラッカーにおける糖類の含有量はクラッカー全体中0.5〜8重量%、ハードビスケットにおける糖類の含有量はハードビスケット全体中10〜18重量%であり、伸展性の観点からクラッカーにおける油脂の含有量はクラッカー全体中6〜10重量%、ハードビスケットにおける油脂の含有量はハードビスケット全体中3〜20重量%が好ましい。
【0011】
本発明の穀物由来の蛋白質とは、小麦、大麦、ライ麦等の穀物由来であって、菓子生地中においてグルテンのネットワークを形成するものであればよく、具体的にはグルテニン、グリアジン、グルテンを例示することができる。該蛋白質は、穀粉に含有された形態で配合される場合、予め精製された形態で別途配合される場合、そして両方の形態で配合される場合がある。前記蛋白質含有量は生地中において、穀粉100重量部に対して6〜11重量部が好ましく、7〜10重量部がより好ましい。蛋白質含量が6重量部未満であると、グルテンのネットワークが十分に形成されず、本発明の効果が享受できない場合がある。また蛋白質含量が11重量部を超えると、生地中で一旦形成されたグルテンの強固なネットワークが加熱調理後も菓子の中にも多く存在し、その影響で、焼き上がり後の菓子の食感が硬くねちゃつき、口の中に残留感のある口溶け口ごなれが悪いものとなってしまう場合がある。
【0012】
本発明の菓子の主原料は穀粉であるが、該穀粉は通常菓子に使用されるものであれば由来や精製度合いに特に制限はなく、由来としては小麦、大麦、ライ麦、ソバ、コメ等が例示でき、グルテンの前駆物質であるグルテニン・グリアジンを含む観点からは小麦、大麦、ライ麦が好ましく、ペントザンなどの吸水性の高い繊維質等のグルテン形成を阻害する物質を含まず、混練の際に一定量のグルテンを形成する観点からは小麦がより好ましい。精製度合いに関しては、精製度合いの高い通常の小麦粉を用いても良いし、グラハム粉や全粒粉等の精製度合いの低いものを用いても良い。
【0013】
なお、本発明において、小麦粉などの穀粉類は、あらかじめ水や他の原材料とある程度捏ねあげていても良いし、α化などを先に施していても良い。
【0014】
本発明のプロテアーゼは、カビ由来のものと植物由来及び/又は細菌由来のものとの併用が好ましく、カビ由来の具体例としては、Aspergillus oryzae由来、Aspergillus Melleus由来、Aspergillus Niger由来のものなどが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。植物由来及び/又は細菌由来の具体例としては、植物由来としてパパイン、ブロメラインなど、細菌由来としてサーモリシン、サーミターゼなどが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0015】
前記細菌由来のプロテアーゼにはセリンプロテアーゼと金属プロテアーゼがあり、触媒残基にセリン残基を持つものはセリンプロテアーゼに分類され、スブチリシン、トリプシン、キモトリプシンがセリンプロテアーゼに該当する。触媒機構に金属が関与するという性質をもつものは金属プロテアーゼに分類され、サーモリシン、サーミターゼが金属プロテアーゼに該当する。
【0016】
本発明のプロテアーゼの至適pHとしては、pH3〜10が好ましく、pH7〜9がより好ましい。至適pHが3未満であったり10より大きいと、生地中でプロテアーゼが働きにくく、さっくりとした歯切れと口ごなれが得られない場合がある。また、前記プロテアーゼの至適温度に特に制限はない。
【0017】
前記カビ由来のプロテアーゼの相対活性および前記植物由来及び/又は細菌由来のプロテアーゼのうち、金属プロテアーゼ以外の相対活性は、次に述べる方法にて測定する。0.05mol/Lリン酸二ナトリウム溶液を溶媒とする0.6%カゼイン溶液5ml(pH6.0)に対し、L-システイン塩酸塩5.27g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム及び塩化ナトリウムで作製したシステイン緩衝液(pH4.5)で適当に希釈した酵素溶液1mlを加えて38℃で60分間反応させた後、7.2%トリクロロ酢酸5mlを添加し反応を止め、30分間静置する。静置後、得られた上清の吸光度(275nm)を測定することにより、生成するL−チロシン相当量を定量する。該測定方法は、プロテアーゼがカゼインをどの程度消化できるか吸光度(275nm)により定量するというものであり、1分間にL-チロシン1μgに相当するアミノ酸を生成する酵素量が1Uであり、各酵素の活性は比活性(U/g)で表す。
【0018】
金属プロテアーゼの相対活性は、下記方法にて測定する。0.05mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液を溶媒とする0.5%カゼイン溶液5ml(pH8.0)に対し、0.02mol/Lのリン酸塩緩衝液(pH8.0)で適当に希釈した酵素溶液1mlを加えて、37℃で30分間反応させた後、0.44mol/Lトリクロロ酢酸溶液5mlを加え、37℃で30分間放置後、ろ過する。ろ液2mlに0.55mol/L炭酸ナトリウム溶液5ml、フェノール試薬1mlを加え、37℃で30分間放置後、660nmでの吸光度を測定する。本条件下、1分間にチロシン1μgに相当するフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量を1Uとし、各酵素の活性は比活性(U/g)で表す。
【0019】
本発明のカビ由来のプロテアーゼの菓子用生地中の含有量は、穀粉100gあたり1800〜26000Uであることが好ましく、2000〜26000Uがより好ましく、2200〜22000Uがさらに好ましい。カビ由来のプロテアーゼの含有量が1800Uよりも少ないと、プロテアーゼの蛋白質分解作用が不足する場合があり、26000Uよりも多いと、プロテアーゼによる食感改善効果が頭打ちになる場合がある。
【0020】
本発明の細菌由来のプロテアーゼ及び/又は植物由来のプロテアーゼの菓子用生地中の合計含有量は、穀粉100gあたり1750〜16500Uであることが好ましく、2000〜15000Uがより好ましく、2500〜15000Uがさらに好ましく、2500〜10000Uが更に好ましい。細菌由来のプロテアーゼ及び/又は植物由来のプロテアーゼの合計含有量が1750Uよりも少ないと、プロテアーゼの蛋白質分解作用が不足する場合があり、16500Uよりも多いと、生地中でグルテンの分解が進みすぎ、生地がべたついたりして作業性が悪化したり、保形性や安定性が低下したり、加熱調理時の菓子の浮きが悪くなり、加熱調理後の菓子の食感が硬くなる場合がある。
【0021】
なお、上記した穀粉に対する各プロテアーゼの添加量(U)は、各プロテアーゼ(酵素)の比活性(U/g)と添加量(g)の積である。
【0022】
本発明の油脂は食用であれば特に制限は無いが、次の物が例示できる。植物油の例として、サフラワー油、大豆油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、綿実油、ヤシ油、米油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油、オリーブ油、桐油、椿油、落花生油、カポック油、カカオ油、木蝋、ヒマワリ油、コーン油などを例示することができ、動物油としては、魚油、鯨油、牛脂、豚脂、羊脂、牛脚脂などを例示でき、更にそれらの水素添加油やエステル交換油、分別油、さらにはそれらの混合油などを用いても良い。
【0023】
ただし、本発明の菓子のさっくりした歯切れと口ごなれをより改善するためには、前記油脂の構成脂肪酸にオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸を含有することが好ましい。該オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸は、トリグリセリドの構成脂肪酸として含まれていれば、結合位置や数に特に制限はなく、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸を多く含有する油脂としては、例えばナタネ油、コーン油、オリーブ油、米油、大豆油などが挙げられる。なお、前記油脂中の構成脂肪酸としてのオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の合計含有量は、構成脂肪酸全体中25〜95重量%が好ましく、46〜95重量%がより好ましく、46〜81重量%が更に好ましい。前記合計含有量が25重量%よりも少ないとオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸による効果が得られない場合があり、95重量%を超える油脂は実質的に存在しない。
【0024】
本発明の菓子用生地中の油脂の含有量は、穀粉100重量部に対して6〜25重量部であることが好ましく、7〜23重量部がより好ましく、7〜20重量部が更に好ましい。油脂の含有量が6重量部よりも少ないと、油脂由来のさっくりとした食感が失われる場合があり、25重量部よりも多いと、油脂がグルテン間に入り込みグルテンのネットワークが形成されにくいため本発明の効果を十分に発揮しにくくなる場合がある。
【0025】
本発明において、さっくりとした歯切れをさらに良くするためには、前記油脂中に、60℃に融解後、30℃で24時間保存した後のSFCが3〜40%の油脂を含有することが好ましい。該SFCを有する油脂としては、例えばパーム油やパーム油とヤシ油とのエステル交換油などが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。該SFCは3〜30%がより好ましく、3〜25%が更に好ましい。該油脂の含有量が3%よりも少ないとさっくりとした歯切れが得られない場合があり、40%を超えると食感が硬くなりすぎる場合がある。
【0026】
前記SFCを有する油脂の含有量は、油脂全体中10〜90重量%が好ましく、10〜65重量%がより好ましく、10〜52重量%が更に好ましい。該油脂の含有量が10重量%より少ないと、さっくりした歯切れが十分に得られない場合があり、90重量%を超えると食感が硬くなりすぎる場合がある。
【0027】
なお、前記SFCは、対象となる油脂組成物をその融点以上に加温して完全に溶融させた後に、60℃に1時間保持し、その後、所定温度である30℃で24時間保持した後に、公知の方法で測定することにより求められる。油脂のSFCは、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9‐2003 固体脂含量(NMR法)」の測定方法に従って測定することができる。
【0028】
本発明の菓子用生地中の水分含量は、生地全体中18〜32重量%であることが好ましく、18〜27重量%がより好ましい。生地中の水分含量が18重量%よりも少ないと、伸展時に生地が伸びにくくなる場合があり、32重量%よりも多いと、伸展時に生地がダレ、作業性が悪くなる場合がある。
【0029】
なお、前記菓子用生地中の水分含量は、科学技術庁資源調査会編、「五訂 日本食品成分表」の11項記載「加熱乾燥法」の測定方法に従って測定することができる。
【0030】
本発明において、各プロテアーゼの酵素活性やグルテンの形成状態に悪影響を与えない範囲であれば、pH調整剤を使用しても良い。pH調整剤としては、クエン酸、コハク酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0031】
本発明の菓子に使用できる前記以外の原材料としては、通常菓子に使用されるいかなる原材料を使用してもよく、必要に応じて、前記以外の油脂製品、糖類、卵、乳製品、ココア、でん粉、穀物由来の物、食塩、フルーツ、ナッツ、香辛料、酵母、酒、果汁、豆乳及びそれらの加工品、乳化剤、前記プロテアーゼを除く酵素、香料、着色料、膨張剤、酸化剤、酸化防止剤、増粘剤、酸味料、甘味料、保存料、イーストフード、その他の生地改良剤等の食品添加物を添加してもよい。
【0032】
本発明の菓子用生地の製造方法は、以下に例示する。全ての原材料を、常法に従って捏ね上げればよい。また、何れの材料をどのタイミングで混ぜても良いが、本発明の効果を十分に発揮するためには、生地にプロテアーゼを添加した後は、一定温度で一定時間静置することが好ましい。従って、作業時間を考えると、全ての材料を一度に混合して捏ね上げ、その後一定温度で一定時間静置する方がより好ましい。
【0033】
前記静置する際の温度は20〜40℃が好ましく、25〜40℃がより好ましく、30〜40℃が更に好ましい。該温度が20℃より低いと生地が硬く伸展しにくくなったり、酵素の効果が十分に得られない場合があり、40℃より高いと生地がダレて伸展しにくい場合がある。前記静置する時間は0.5〜5時間が好ましく、1〜4時間がより好ましく、2.5〜3.5時間が更に好ましい。該静置時間が0.5時間より短いと酵素の効果が十分に得られず、さっくりとした歯切れや口ごなれが損なわれる場合があり、5時間より長いと酵素が効きすぎて生地がダレてしまい作業性が悪くなる場合がある。
【0034】
なお、穀粉、水分、各プロテアーゼやその他の酵素以外の原材料は、全量を一括で添加してもよいし、複数回に分割して添加してもよく、更に添加する形態はそのまま生地混合物に添加してもよいし、水中油型乳化油脂組成物や油中水型乳化油脂組成物などの乳化物やショートニングなどの油脂中に含有させて添加してもよい。また、本発明の油脂を添加する際は、可塑性油脂組成物の形態でも溶解させた形態でも良いし、数種類の油脂を生地中に別々に添加しても良い。
【0035】
前記で得られる生地は、必要に応じて折り込んで使用することができる。ここで折り込みとは、シーター等を用い伸展した生地を折りたたんで再び伸ばすことを指し、例えば、2.5mmに伸展した生地を3つ折りした後に再び伸展する工程を2回繰り返す等の方法がある。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0037】
<生地の作業性評価>
実施例及び比較例でクラッカー生地又はハードビスケット生地を作製した際、一定温度で一定時間静置した直後の生地を用いて評価した。その際の評価基準は以下の通りである。
5点:生地の硬さが最適で伸びが非常に良く、且つべとつきがないため生地の状態が非常に良く、生地の作業性が非常に良好である。
4点:生地の硬さが好適で伸びが良く、且つべとつきがほとんどないため生地の状態が良く、生地の作業性が良好である。
3点:生地の硬さが硬すぎず柔らかすぎないで、無理なく伸び、あまりべとつきがないため生地の状態に問題はなく、生地の作業性に問題はない。
2点:生地の硬さがやや硬すぎる又は柔らかすぎる、伸びがやや悪い、或いはややべとつきがあるために生地の状態がやや悪く、生地の作業性がやや悪い。
1点:生地の硬さが硬すぎる又は柔らかすぎる、伸びが悪い、或いはべとつきがあるために生地の状態が悪く、生地の作業性が悪い。
【0038】
<さっくりとした歯切れ評価>
実施例及び比較例で得られたクラッカー又はハードビスケットを熟練したパネラー10名に食べてもらって官能評価を行い、それを平均して評価結果とした。その際の評価基準は以下の通りである。
5点:従来品と比して非常にさっくりとして歯切れが良く、非常に好ましい。
4点:従来品と比してよりさっくりとして歯切れが良く、更に好ましい。
3点:従来品と比してさっくりとして歯切れが良く、好ましい。
2点:従来品と比してややさっくりとして歯切れが良いが、満足のいくレベルではない。
1点:歯切れは従来品と同程度であり、さっくりとしておらず、悪い。
【0039】
<口ごなれ評価>
実施例及び比較例で得られたクラッカー又はハードビスケットを熟練したパネラー10名に食べてもらって官能評価を行い、それを平均して評価結果とした。その際の評価基準は以下の通りである。
5点:従来品と比して非常に口ごなれが良く、非常に好ましい。
4点:従来品と比してより口ごなれが良く、更に好ましい。
3点:従来品と比して口ごなれが良く、好ましい。
2点:従来品と比してやや口ごなれが良いが、満足のいくレベルではない。
1点:口ごなれは従来品と同程度あり、悪い。
【0040】
<総合評価>
実施例及び比較例における生地の作業性、得られたクラッカー又はハードビスケットのさっくりとした歯切れ及び口ごなれを総合的に判断して、以下の基準に従い総合評価を行った。
5点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち何れも4.0点以上であり、とても好ましい。
4点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち何れも3.0点以上であり、最も点数の低い項目が3.0点以上4.0点未満であり、好ましい。
3点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち何れも2.5点以上であり、最も点数の低い項目が2.5点以上3.0点未満であり、問題はない。
2点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち少なくとも何れかが1.5点以上2.5点未満であり、あまり好ましくない。
1点:生地の作業性、さっくりとした歯切れ及び口ごなれのうち少なくとも何れかが1.0点以上1.5点未満であり、好ましくない。
【0041】
<実施例・比較例で使用した原料>
1)日本製粉(株)製「ハート」(蛋白質含量:8.2重量%,水分含有量:14.2重量%)
2)(株)カネカ製「エバーライトG(M型)」(水分含有量:0重量%)
3)パーム分別油エステル交換油:ナタネ油(3:7で配合)のショートニング(水分含有量:0重量%)
4)新日本化学(株)製「スミチームLP50D」(比活性:130,000U/g)
5)新日本化学(株)製「スミチームMP」(比活性:150,000U/g)
6)天野エンザイム(株)製「パパインW-40」(比活性:200,000U/g)
7)新日本化学(株)製「スミチームTP」(比活性:10,000U/g)
8)東洋精糖(株)製「グラニュー糖」(水分含有量:0重量%)
9)昭和産業(株)「ニューフラクトR−30」(水分含有量:24.5重量%)
10)日本食塩製造(株)製「精製塩」(水分含有量:2重量%)
11)ディアマルテリア・イタリアーナ社製「euromalt」(水分含有量:19.1重量%)
12)純正化学(株)製「食品添加物グレード炭酸水素ナトリウム」(水分含有量:0重量%)
13)関東化学製「リン酸二水素カルシウム(鹿1級)」(水分含有量:0重量%)
14)国産化学(株)製「食品添加物グレード炭酸アンモニウム」(水分含有量:0重量%)
15)(株)カネカ製「コンソールショートG(M型)」(水分含有量:0重量%)
16)(株)カネカ製「エバーライトG(W型)」(水分含有量:0重量%)
17)(株)カネカ製「コンソールショートG(W型)」(水分含有量:0重量%)
18)パーム油・ヤシ油のエステル交換油(融点:41℃):ナタネ油(等量ずつ配合)のショートニング(水分含有量:0重量%)
19)パーム核硬化油(融点:36℃):パーム油・ヤシ油のエステル交換油(融点:41℃):ナタネ油(40:13:47で配合)のショートニング(水分含有量:0重量%)
20)(株)カネカ製「マリーパート」(水分含有量:0重量%)
21)(株)カネカ製「コンソールショートG(H型)」(水分含有量:0重量%)
22)(株)カネカ製「CNショート−1(H型)」(水分含有量:0重量%)
【0042】
(実施例1)クラッカーの作製
表1に示すクラッカーの配合に従い、薄力粉(蛋白質含量:8.2重量%、水分含量:14.2重量%):100重量部、ショートニング(水分含有量:0重量%):12.5重量部、グラニュー糖(水分含有量:0重量%):6重量部、ブドウ糖果糖液糖(水分含有量:24.5重量%):3重量部、食塩(水分含有量:2重量%):1.2重量部、モルトエキス(水分含有量:19.1重量%):2重量部、炭酸水素ナトリウム(水分含有量:0重量%):1.1重量部、リン酸二水素カルシウム(水分含有量:0重量%):1.2重量部、炭酸アンモニウム(水分含有量:0重量%):0.8重量部、水:27重量部、及びカビ由来プロテアーゼを薄力粉100gあたり11200U、植物由来プロテアーゼを薄力粉100gあたり2500Uになるように10Qミキサーボール(関東混合機工業(株)製「HP1i−20M」)に投入し、低速で3分間、中速で3分30秒間混合し生地を得た(生地中の穀粉100重量部に対する穀物由来の蛋白質含量:8.2重量部、生地全体中の水分含量:27.2重量%)。該生地を35℃で3時間寝かせた後、リバースシーターを用い厚さ約2.5mmに伸ばし、3重に折った。生地を90℃度回転させて伸展方向を変えた後、厚さ約2.5mmに伸ばし、更に3重に折った。再び90℃度回転させて伸展方向を変えた後、更に厚さ約2.5mmに伸ばしクラッカー用生地を得た。該クラッカー用生地を直径5cmの円形の型で抜き、上火240℃、下火260℃に設定したガスオーブンで7分間焼成し、クラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
(実施例2、3、5、6、及び参考例)クラッカーの作製
表1の配合に従い、プロテアーゼの種類や添加量を変更した以外は、実施例1と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果は表1に示した。
【0045】
(比較例1,2)クラッカーの作製
各プロテアーゼの添加量を変えた以外は、実施例1と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果を表1に示した。
【0046】
(比較例3)クラッカーの作製
カビ由来プロテアーゼの種類と添加量を変え、植物由来プロテアーゼを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーは従来の標準品であり、その評価結果は表1に示した。
【0047】
実施例1〜3、5、6および比較例1〜3の評価結果より、次のことがわかった。カビ由来のプロテアーゼの添加量が2000〜24000Uであり、且つ植物由来及び細菌由来のプロテアーゼの合計添加量が2500〜15000Uである実施例1〜3、5、6では、作業性は問題のないレベル又はそれ以上であり、食感は従来のクラッカー(比較例3)と比して良好〜非常に好ましいレベルであった。なお、カビ由来のプロテアーゼを2000U、植物由来のプロテアーゼを15000U添加し、細菌由来のプロテアーゼを添加していない実施例5では、問題のないレベルではあるものの、生地のべとつきがみられた。また、カビ由来プロテアーゼおよび植物由来プロテアーゼの添加量をそれぞれ24000U、2500Uとした実施例6では、実施例1と比して生地がややべとつくが作業性は良好なレベルであり、歯切れ、口ごなれは非常に好ましく、総合的に好ましいものであった。植物由来のプロテアーゼの添加量を17500Uとし、カビ由来プロテアーゼの添加量を2500Uとした比較例1では、クラッカーの食感は非常に好ましいレベルであったが、生地がべとついてちぎれやすく、作業性が悪かった。
【0048】
(実施例7〜15)クラッカーの作製
表2の配合に従い、ショートニングの種類を変更した以外は、実施例1と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果は表2に示した。
【0049】
実施例7〜15の評価結果より、次のことがわかった。全構成脂肪酸中のオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の合計含有量が47.7〜90.9重量%である実施例7〜14では、作業性は実施例1と同様に非常に良好又は良好なレベルであり、クラッカーの食感は実施例1と比して更に好ましいものであった。また、歯切れおよび口ごなれの改善効果は、前記含有量が47.7〜73.5重量%の範囲でより顕著であった。一方、前記含有量が31.3重量%である実施例15では、実施例1と比べ顕著な作業性・食感改善効果は見られなかった。また、油脂の油脂全体中における60℃に融解後30℃で24時間保存後のSFCが3〜40の割合が20〜55重量%である実施例7,8,10,11,12,14では、該割合が20〜55重量%から外れる実施例1,9,13,15と比して食感が更に改善されており、前記割合が20〜47重量%(実施例7,8,10,11,14)では、特に食感が良く、非常に好ましいレベルであった。前記割合が80重量%(実施例9、15)では、好ましいレベルではあるものの、食感がやや硬かった。また、前記割合が0重量%(実施例13)では、好ましいレベルであるものの、さっくりとした歯切れがやや不足していた。
【0050】
【表2】
【0051】
(実施例16)ハードビスケットの作製
表3に示すハードビスケットの配合に従い、薄力粉(蛋白質含量:8.2重量%、水分含量:14.2重量%):100重量部、ショートニング(水分含有量:0重量%):20重量部、上白糖(水分含有量:0.8重量%):23重量部、ブドウ糖(水分含有量:0重量%):6重量部、食塩(水分含有量:2重量%):0.5重量部、全粉乳(水分含有量:3重量%):3重量部、炭酸水素ナトリウム(水分含有量:0重量%):0.2重量部、リン酸二水素カルシウム(水分含有量:0重量%):1.2重量部、炭酸アンモニウム(水分含有量:0重量%):0.7重量部、水:25重量部及びカビ由来のプロテアーゼを小麦粉100gあたり11200U、植物由来のプロテアーゼを2500Uになるようにそれぞれ10Qミキサーボール(関東混合機工業(株)製「HPi−20M」)に投入し、低速で3分、中速で13分混合し生地を得た。20℃で1時間寝かせた後、リバースシーターを用い厚さ約2.5mmに伸ばし、4重に折った。生地を90度回転させて伸展方向を変えた後、厚さ約2.5mmに伸ばしハードビスケット用生地を得た(生地中の穀粉100重量部に対する穀物由来の蛋白質:8.2重量部、生地全体中の水分含量:22.0重量%)。該ハードビスケット用生地を直径5cmの円形の型で抜き、ガスオーブン(上火230℃、下火230℃)で6分間焼成し、ハードビスケットを得た。得られたハードビスケット用生地およびハードビスケットの評価結果は表3に示した。
【0052】
(実施例17〜23)ハードビスケットの作製
表3の配合に従い、ショートニングの添加量や種類及び/又は各プロテアーゼの添加量を変更し、更に実施例18および19では水の添加量を34重量部に変更した以外は、実施例16と同様にしてハードビスケット用生地及びハードビスケットを得た。得られたビスケット用生地およびハードビスケットの評価結果は表3に示した。
【0053】
(比較例4,5)ハードビスケットの作製
表3の配合に従い、ショートニングの添加量や種類を変え、プロテアーゼを添加せず、比較例5では水の添加量を34重量部に変更した以外は、実施例16と同様にしてハードビスケット用生地及びハードビスケットを得た。得られたハードビスケット用生地およびハードビスケットは従来の標準品であり、その評価結果は表3に示した。なお、油脂配合量が多いほど食感がさっくりとするため、油脂配合量が少ない比較例5のハードビスケットを食感の評価実施時における基準「従来品」とした。
【0054】
実施例16〜23、比較例4,5の評価結果より、次のことがわかった。
【0055】
実施例16〜23は、それぞれ作業性が良好又は非常に良好なレベルであり、食感も従来品(比較例4,5)と比べて非常に好ましいレベルであった。
【0056】
【表3】
【0057】
(実施例24〜26、比較例6〜9)クラッカーの作製
表4の配合、製造条件に従い、生地静置温度や生地静置時間を変更した以外は実施例8と同様にしてクラッカー用生地及びクラッカーを得た。得られたクラッカー用生地およびクラッカーの評価結果は表4に示した。
【0058】
表4の評価結果より、次のことがわかった。生地を静置する際の温度が20℃、35℃、静置する時間が0.5〜5時間の製造条件(実施例24〜46)では作業性は良好又は非常に良好であり、食感は非常に良好なレベルであったが、該温度が10℃の場合(比較例6、7)は、静置する時間を延長した場合でも生地が硬すぎて伸展しにくかったために作業性が悪く、また、食感改善効果も実施例8に劣っていた。生地を静置する際の温度が45℃である比較例8では、食感改善効果が非常に良好なレベルであった一方で生地がべとつき作業性がやや悪かった。生地を静置せずに伸展、形成、焼成した比較例9では、作業性は問題なかったが、食感改善効果は満足のいくレベルではなかった。
【0059】
【表4】
【0060】
(実施例27、比較例10)ハードビスケットの作製
表5の配合、製造条件に従い、生地静置温度や生地静置時間を変更した以外は、実施例16と同様にしてハードビスケット用生地及びハードビスケットを得た。得られたハードビスケット用生地およびハードビスケットの評価結果は表5に示した。
【0061】
表5の評価結果より、次のことがわかった。生地を静置する際の温度が20℃、35℃、静置する時間が1時間の製造条件(実施例16、27)では作業性、食感共に非常に良好であったが、生地を静置せずに伸展、形成、焼成した比較例10では、作業性は問題のないレベルであったが、食感改善効果は満足のいくレベルではなかった。
【0062】
【表5】