特許第6812114号(P6812114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6812114測量位置表示装置及び測量位置表示プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812114
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】測量位置表示装置及び測量位置表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   G01C15/00 103Z
   G01C15/00 103E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-37674(P2016-37674)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-156139(P2017-156139A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】595160927
【氏名又は名称】計測技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中山 猛
(72)【発明者】
【氏名】井手 琢太
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−174518(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3169715(JP,U)
【文献】 特開平07−260485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00− 1/14
G01C 5/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量機械により観測される地物の図面を表示する図面表示手段と、
測量機械と通信可能とされ、当該測量機械に測量点の座標値を取得するための観測実行指令を出力する観測実行指令出力手段と、
前記観測実行指令に基づいて前記測量機械から測量点の座標値が入力される毎に、前記表示された図面上に座標値に応じた測量点を重ねて表示する測量点表示手段と、
前記測量機械から入力され、前記観測実行指令の出力時における前記測量機械の位置を、該観測実行指令の出力前に、前記表示された図面上に重ねて表示する機械点表示手段と、を備えた測量位置表示装置。
【請求項2】
前記表示された図面上の2つの測量点間の距離を算出し、当該算出した距離を表示する観測情報演算表示手段を備えた請求項1記載の測量位置表示装置。
【請求項3】
コンピューターを、
測量機械により観測される地物の図面を表示する図面表示手段と、
測量機械と通信可能とされ、当該測量機械に測量点の座標値を取得するための観測実行指令を出力する観測実行指令出力手段と、
前記観測実行指令に基づいて前記測量機械から測量点の座標値が入力される毎に、前記表示された図面上に前記座標値に応じた測量点を重ねて表示する測量点表示手段と、
前記測量機械から入力され、前記観測実行指令の出力時における前記測量機械の位置を、該観測実行指令の出力前に、前記表示された図面上に重ねて表示する機械点表示手段として機能させる測量位置表示プログラム。
【請求項4】
コンピューターを、
前記表示された図面上の2つの測量点間の距離を算出し、当該算出した距離を表示する観測情報演算表示手段として機能させる請求項3に記載の測量位置表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量の作業効率を向上可能な測量位置表示装置及び測量位置表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築の現場では、施工の基準となる杭を設けるための測量や、施工された構造物が設計図面どおりに施工されているか確認するための測量等が行われている。例えば、特許文献1には、鉄骨に設けたターゲットを所定の範囲内から自動的に探し出す自動視準機能を有する計測装置と携帯端末とを組み合わせ、計測装置により計測したターゲットまでの距離、鉛直角、水平角の3つの要素を同時に測定し、測定された3つの要素に基づいて携帯端末により演算及び記録までの処理を行うことで、現場において鉄骨部材の建ち精度を確認する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−194434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係るものにあっては、測量位置の確認のために、携帯端末に記録されたデータを事務所等の施設に持ち帰り、当該施設に設けられたコンピュータにより実行されるCADソフトウェアを用いて設計時の鉄骨図面に重ねる必要がある。このため、施設に戻った後に測量ミスが発見された場合には、再び現場に戻って測量をやり直す必要がある等、測量作業を円滑に行うことができないという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みて、測量の作業効率を向上可能な測量位置表示装置及び測量位置表示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための測量位置表示装置の構成として、測量機械により観測される地物の図面を表示する図面表示手段と、測量機械と通信可能とされ、当該測量機械に測量点の座標値を取得するための観測実行指令を出力する観測実行指令出力手段と、前記観測実行指令に基づいて前記測量機械から測量点の座標値が入力される毎に、前記表示された図面上に前記座標値に応じた測量点を重ねて表示する測量点表示手段と、前記測量機械から入力され、観測実行指令の出力時における前記測量機械の位置を、該観測実行指令の出力前に、前記表示された図面上に重ねて表示する機械点表示手段とを備えた構成とした。
本構成によれば、測量の作業効率を向上させることができる。即ち、測量と測量により得られた測量点の図面への作図作業を同時に行うことができるので、即座に測量点の位置を視覚的に確認できる。したがって、従来のような施設に戻ってからの作図や図面データへの落とし込みといった作業を簡略化できる。
また、測量位置表示装置の他の構成として、表示された図面上の2つの測量点間の距離を算出し、当該算出した距離を表示する観測情報演算表示手段を備えるので、図面による測量点の位置の確認に加え、測量点間の距離を図面上で確認できる。
また、コンピュータを上述の各手段として機能させるプログラムとして構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】測量における測量位置表示装置の適用例を示す概略構成図である。
図2】測量点表示装置のハードウェア構成図である。
図3】測量点表示装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図4】測量位置表示プログラムにより実行される概略工程図である。
図5】図面データ取得工程の詳細フロー図である。
図6】図面表示工程の詳細フロー図である。
図7】機械点表示工程の詳細フロー図である。
図8】観測工程の詳細フロー図である。
図9】測量点表示工程の詳細フロー図である。
図10】図面データ出力工程の詳細フロー図である。
図11】操作パネルに表示される表示例を示す図である。
【0007】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、測量作業における測量位置表示装置の適用例を示す概略構成図である。同図に示すように、測量位置表示装置4は、測量機械5と、測量現場の事務所などの施設内に設置される施設内コンピュータ(以下、単にコンピュータという)2、及びネットワーク6(インターネット)を利用したオンラインストレージサービスとして提供されるサーバーコンピュータ(以下、単にサーバーという)3と無線通信可能に構成される。測量位置表示装置4と測量機械5とは、例えば測量現場に携行可能なポータブルの無線LANルーター7を介して接続される。これにより、トンネル内、地下、高所等のように公衆のインターネット回線と接続できない場合であっても測量位置表示装置4及び測量機械5の通信が確保できる。また、測量位置表示装置4は、コンピュータ2及びサーバー3と無線LANルーター7からネットワーク6を介して接続される。コンピュータ2及びサーバー3は、それぞれハードウェア資源として設けられた演算手段としてのCPU、ROM,RAM,HDD等の記憶手段、キーボードやマウス等の入力手段、モニター等の表示手段、ネットワーク回線との通信を可能にする通信手段を備える。
【0009】
図2は、測量位置表示装置4のハードウェア構成図である。測量位置表示装置4は、携帯型のコンピュータであって、測量機械5とともに測量現場に携行される。測量位置表示装置4は、ハードウェア資源として設けられた演算手段としてのCPU10、ROM,RAM,HDD等の記憶手段12、入出力手段として設けられた操作パネル14、ネットワーク回線との通信を可能にする通信手段16等を接続する内部バス18を備える。
【0010】
測量位置表示装置4は、例えば板状の筐体に上記ハードウェア資源が1つ収容されたタブレット型コンピュータにより構成される。記憶手段12には、タブレット型コンピュータ(CPU10)を測量位置表示装置4として機能させる測量位置表示プログラムが格納される。そして、CPU10が、RAMを作業領域として利用し、記憶手段12に格納された測量位置表示プログラムを実行することにより、後述の各手段として機能する。
【0011】
操作パネル14は、測量作業者に対して情報を表示する液晶モニター等の表示手段と、測量作業者の操作による指令を入力する入力手段とが一体となったタッチパネルからなる表示入力手段である。
【0012】
図3は、測量位置表示装置の一実施形態を示すブロック図である。同図に示すように、測量位置表示装置4は、入力操作受付手段20と、観測実行指令出力手段22と、図面取得手段24と、図面表示手段26と、機械点表示手段28と、測量点表示手段30と、観測情報演算表示手段32と、観測図面出力手段34とを備える。
【0013】
入力操作受付手段20は、測量作業者による操作パネル14への操作を入力操作として受け付ける。例えば、操作パネル14に表示された文字やボタンを測量作業者がタップすることにより、当該文字やボタンが選択されたものと認識する。
【0014】
観測実行指令出力手段22は、例えば、放射測量や杭打ち測量等の測量方法の選択を測量作業者に促し、選択された放射測量や杭打ち測量指令を測量機械5に出力する。具体的には、観測実行指令出力手段22は、操作パネル14に「座標測量」、「杭打ち測量」等のボタンを表示し、測量作業者にいずれかの測量方法の選択を促す。
【0015】
図面取得手段24は、例えば、ネットワーク6,無線LANルーター7を介してサーバー3にアクセスし、サーバー3に格納された図面データをダウンロードすることで、サーバー3から測量位置表示装置4内に図面データを取得する。詳細には、図面取得手段24は、サーバー3にアクセスし、サーバー3の図面データが格納されたフォルダーを操作パネル14に表示し、表示したフォルダーの中から測量作業に必要な図面データの選択を測量作業者に促し、選択された図面データをサーバー3から測量位置表示装置4にダウンロードする。ダウンロードされた図面データは、記憶手段12に格納される。
【0016】
図面データは、例えば、コンピュータ2により建築物等の地物の設計当初にCADソフトウェアにより作図された3次元の設計図面に基づいて作成される。例えば、図面データは、3次元の設計図面から、例えば、水平面や鉛直面等の2次元の平面図を作成し、さらに、平面図から測量に必要な内容のみを残し、不要と思われる内容を除外するように加工を施すことで測量用図面として作成される。測量用図面は、図面座標系により作成される。図面座標系とは、CADソフトウェアによりモニターに表示した際に、画面の左右方向をX軸、上下方向をY軸として設定される座標系である。なお、測量用図面には、例えば、X軸が真北に対して時計回りに何度ずれているかの情報が紐付けされている。コンピュータ2により作成された図面データは、上述のサーバー3にアップロードされる。なお、図面データは、上記以外にも完成平面図や部分平面図等いずれであっても良い。
【0017】
上述したように基本図面としての設計図面に基づいて測量用図面を作成することにより、図面データのデータ容量が小さくなるため、測量位置表示装置4をタブレット型コンピュータにより構成した場合の処理速度を向上することができる。また、操作パネル14上に表示される情報量も少なくなるため、操作パネル14に表示された内容(図面)の視認性が向上される。つまり、図面に記載される内容を限定することにより、測量機械5により測量された測量点を表示する際に、測量された位置の正誤を容易に確認できる。
【0018】
図面表示手段26は、図面単位設定部26Aと、表示範囲設定部26Bと、表示回転角設定部26Cとを備え、これらの各設定部に設定された条件に基づいて、読み込んだ図面を操作パネル14に表示する。
図面単位設定部26Aは、測量作業者に、読み込んだ図面データ作成時のmm、m等の距離単位の入力を促し、入力された距離単位を図面データの距離単位として設定する。具体的には、図面データの距離単位を入力する入力欄を操作パネル14に表示し、測量作業者に距離単位の入力を促す。これにより、操作パネル14に表示された図面を構成する線素の距離単位が、線素を表わす画素数に紐付けされる。
【0019】
表示範囲設定部26Bは、測量作業者に、読み込んだ図面データの操作パネル14に表示する範囲の入力を促し、入力された範囲の図面データを操作パネル14に表示する。具体的には、入力された図面を操作パネル14に表示し、表示された図面から測量範囲を囲む仮想の矩形領域を想定した対角2点を連続してタップするように促す。これにより、例えば、読み込んだ図面データが現場全体を示す図面である場合には、測量対象となる範囲が操作パネル14に大きく表示されるように、選択された範囲が拡大表示される。なお、読み込んだ図面が、部分図面である場合には、当該処理を省略してもよい。
【0020】
表示回転角設定部26Cは、測量作業者に、図面データを操作パネル14に表示する際の操作パネル14に対する図面の向き(回転角度)の入力を促し、入力された回転角度で図面を回転させて操作パネル14に表示する。例えば、操作パネル14に表示された図面の長手方向が操作パネル14の長辺方向に沿って表示されるように、回転角度が設定される。これにより、図面における測量対象の範囲を操作パネル14に大きく表示できる。
【0021】
機械点表示手段28は、機械単位設定部28Aと、機械点登録部28Bとを備え、測量機械5側から入力される機械点の座標値(以下、機械点座標値という)に基づいて、操作パネル14に表示された図面上に機械点を表示する。機械点とは、測量機械5が設置された位置をいい、例えば、△等の所定のアイコンにより操作パネル14に表示される。
【0022】
機械単位設定部28Aは、測量作業者に、測量機械5から入力される機械点座標値や測量点座標値のmm、m等の距離単位の入力を促し、入力された距離単位を機械点座標値や測量点座標値の距離単位として設定する。これにより、図面の距離単位に測量機械5から入力される距離単位が統一される。機械点登録部28Bは、測量機械5から入力された機械点座標値を読み込み、機械点として登録する。
【0023】
測量点表示手段30は、測量点登録部30Aと、座標変換部30Bとを備え、測量機械5側から入力された測量点座標値に基づいて、操作パネル14に表示された図面上に実測された測量点を表示する。測量点は、例えば、○等の所定のアイコンにより操作パネル14に表示される。
測量点登録部30Aは、測量作業者に、測量機械5側から入力された測量点座標値と対応する名称の入力を促し、入力された名称を測量点座標値に設定し、測量点として登録する。具体的には、名称を入力する入力欄を操作パネル14に表示し、測量作業者に名称の入力を促す。そして、測量作業者が入力欄に任意の名称を入力することで、入力された測量点座標値が測量点として登録される。登録された測量点は、図面に紐付けされ、観測情報として登録される。
【0024】
座標変換部30Bは、測量機械5から入力された測量点座標値を図面座標値に変換する。座標変換部30Bにより座標値が変換された測量点は、操作パネル14に表示された図面上に表示される。図面取得手段24により取得された図面は、CADソフトウェアを用いて図面座標系に基づいて作成されている。一方、測量機械5から入力される測量点座標値は、測量座標系であるため、図面の座標系と異なる。このため、座標変換部30Bでは、測量機械5から入力された測量点座標値(測量座標系)を図面座標系の座標値に変換する。これにより、測量機械5から入力された測量点は、自動的に図面座標に変換され、測量と同時に操作パネル14に表示された図面上にその位置が表示可能となる。したがって、測量作業者は、表示された図面に重複して表示される測量点の位置を視認することで、測量の正誤や施工自体の適否を直ちに確認できる。
【0025】
観測情報演算表示手段32は、測量後の操作パネル14に表示された図面及び測量点に基づいて、測量作業者に観測情報を提供するための処理を実行する。観測情報演算表示手段32は、測量作業者が操作パネル14に表示された図面の線分、測量点、機械点等を指先でタップしたことに応じて、観測情報を操作パネル14に表示する。例えば、図面の線分を指定することで、当該線分の寸法が図面に重畳して表示される。また、操作パネル14に表示された測量点を指先でタップすることにより、当該測量点の座標値が測量点の脇に表示される。また、操作パネル14に表示された2つの測量点を指定することにより、選択された2点間の距離を算出し、当該2つの測量点を結ぶ線分を描画するとともに、算出された距離を表示する。
【0026】
測量機械5は、光波による測量をコンピュータにより制御する3次元観測機である。測量機械5は、図示しない光波距離計と、角度計と、視準制御手段と、測量制御手段と、演算手段及び通信手段とを備える。光波距離計は、測距光(レーザー)の照射方向を上下,左右に変化可能に設けられ、測定対象物に設けられたターゲットにレーザーを照射し、受光した反射光に基づいてターゲットまでの距離を計測する。角度計は、ターゲットに向けて照射されたレーザーの光軸の水平角及び鉛直角を計測する。
【0027】
演算手段は、測量機械5の設置後に、例えば、後方交会法により測量現場における複数の既知の既知点を用いて、光波距離計及び角度計により計測された距離、水平角、鉛直角に基づいて、機械点座標値を算出する。また、演算手段は、光波距離計及び角度計により計測されたターゲット(測量点)までの距離、水平角、鉛直角に基づいて、測量点の測量点座標値を算出する。算出された測量点座標値は、測量座標系(直交座標系)により得られる。本例における測量座標系は、測量機械5の機械点の位置を基点とし、南北をX軸、東西をY軸とし、真北をX軸の正値、真東をY軸の正値方向として設定される。また、上下(高さ)をZ軸として設定される。算出された機械点座標値及び測量点座標値は、通信手段に出力される。
なお、測量機械5がGPS受信機を備えている場合には、当該GPS受信機により測位された位置に基づいて得られた座標値が機械点座標値として通信手段に出力される。
【0028】
視準制御手段は、測量位置表示装置4から入力される測量指令に基づいて、建築現場の測量対象に設置されるターゲットの位置を自動的に視準するように光波距離計の向きを制御する。例えば、視準制御手段は、放射測量を行う場合には、入力された測量指令に含まれる相対角度に基づいて、測量機械5の初期位置(水平角、鉛直角ともにゼロ度)から測量機械5自身が自動的に向きを変え、柱又は梁等の建築部材の外表面の所定の位置に設置されたターゲットを自動視準する。また、視準制御手段は、杭打ち測量を行う場合には、測量位置表示装置4から入力された座標値に向けてレーザーを照射し、ターゲットにレーザーが照射された状態を維持したまま測量作業者がターゲットを移動させることで、現場において求めたい座標値が得られるように制御する。
【0029】
通信手段は、測量位置表示装置4との通信を可能とし、測量位置表示装置4からの測量指令の入力や、機械点座標値や測量点座標値等の観測結果を測量位置表示装置4に出力する。
【0030】
以下、測量位置表示装置4を用いた測量作業の流れを説明する。なお、以下の説明では、サーバー3には、予め加工済みの図面データが格納されているものとし、測量作業は、放射測量(座標測量)を行うものとして説明する。
まず、測量作業者は、測量位置表示装置4、測量機械5及び無線LANルーター7を携行して測量現場に赴く。
次に、測量現場に測量機械5を配置するとともに、観測対象となる建造物の所定の位置に、測量点にターゲットを設置する。ターゲットには、プリズムやターゲットシールが好適あり、障害物などの測量精度を精密に求めない場合にはノンプリズムのものが適用可能である。
【0031】
測量機械5の配置後、例えば、予め測量現場に設置された基準点、或は、既知点を用いて後方交会法により測量機械5を設置した機械点座標値を取得する。機械点座標値は、無線LANルーター7を介して測量位置表示装置4に送信される。
【0032】
図4は、測量位置表示装置4により実行される処理の概略工程図である。同図に示すように、測量位置表示装置4は、図面データ取得工程100と、図面表示工程200と、機械点表示工程300と、観測工程400と、測量点表示工程500と、図面データ出力工程600等の処理を含んで実行される。測量作業者が、測量位置表示装置4にインストールされた測量位置表示プログラムを起動することで上記各処理が開始される。
【0033】
[図面データ取得工程]
図5は、図面データ取得工程の詳細フロー図である。
ステップ102:図面取得手段24により、図面データの取得を促す画面が操作パネル14に表示される。操作パネル14には、例えば、「図面データの取得」を実行させるボタンが表示される。
【0034】
ステップ104:操作パネル14に表示された「図面データの取得」に係るボタンが測量作業者によりタップされると、図面取得手段24は、通信手段16を介してサーバー3に接続する。
ステップ106:測量位置表示装置4がサーバー3に接続されると、図面取得手段24は、サーバー3の図面データが格納されたフォルダを操作パネル14に表示する。
【0035】
ステップ108:そして、測量作業者が操作パネル14に表示された格納フォルダから必要な図面データ名をタップし、操作パネル14に表示された「確認」ボタンをタップすることで、選択した図面データがサーバー3から測量位置表示装置4側にダウンロードされる。
ステップ110:ダウンロードが完了すると、サーバー3との接続が解除される。
ステップ112:図面取得手段24は、ダウンロードした図面データが格納されたフォルダを表示する。そして、測量作業者が、フォルダ内の図面データのファイル名をタップすると、図面表示手段26により、図面データを操作パネル14に表示するための設定画面が表示される。
【0036】
[図面表示工程]
図6は、図面表示工程の詳細フロー図である。
ステップ202:図面単位設定部26Aにより、ダウンロードした図面データの作成時の距離単位を入力する入力欄が操作パネル14に表示される。
ステップ204:測量作業者による入力欄への距離単位の入力が完了すると、操作パネル14に表示する図面の距離単位が設定される。
ステップ206:ステップ204における距離単位の設定により、図面表示手段26は、ダウンロードした図面データに基づいて操作パネル14に図面を表示する。
【0037】
ステップ208:表示範囲設定部26Bにより、操作パネル14に表示された図面から測量範囲を含む図面の表示範囲の設定を促すウインドウが操作パネルに表示される。ウインドウには、例えば「測量範囲を含むような仮想の矩形領域の対角2点を連続してタップして下さい」等と表示される。
ステップ210:測量作業者が、操作パネル14に表示された図面上の測量範囲を含む仮想の矩形領域の対角2点を連続してタップすることにより図面の表示範囲が設定される。
ステップ212:ステップ210で設定された範囲の図面が操作パネル14に表示される。なお、ダウンロードした図面データが部分図面等のように、表示範囲を特に設定しない場合には、操作パネル14に表示された「次へ」のボタンをタップすることで、当該処理がスキップされる。
【0038】
ステップ214:表示回転角設定部26Cにより、表示された図面の向きを設定するための入力欄が画面に表示される。
ステップ216:測量作業者が所望の回転角度を入力欄に入力後、操作パネル14に表示された「適用」,「戻る」,「確定」等のボタンを選択することで、回転角度の設定がやり直し可能となっている。測量作業者が、入力欄に回転角度を入力し「確定」ボタンをタップすると、図面の回転角度が設定される。
ステップ218:ステップ216での回転角度の設定により、図11(a)に例示するような図面が操作パネル14に表示される。
【0039】
[機械点表示工程]
図7は、機械点表示工程の詳細フロー図である。
ステップ302:図面の表示設定が終了すると、機械点表示手段28の機械単位設定部28Aにより、測量機械5から出力される座標値の距離単位を設定するための入力欄が表示される。
ステップ304:測量作業者による距離単位の入力が完了すると、測量機械5から出力される座標値の距離単位が設定される。
ステップ306:測量機械5の距離単位が設定されると、操作パネル14に機械点座標値を設定するための「機械点座標値の設定」ボタンが表示される。
ステップ308:測量作業者が「機械点座標値の設定」ボタンをタップすることにより、測量機械5から入力された機械点座標値が機械点の位置として登録される。
ステップ310:ステップ308での機械点の登録により、操作パネル14には、図11(b)に示すように、機械点のアイコンが図面上に表示される。
【0040】
[観測工程]
図8は、観測工程の詳細フロー図である。
ステップ402:機械点の設定が完了すると、観測実行指令出力手段22により、測量方法を設定するための設定画面が表示される。例えば、操作パネル14に「座標測量」、「杭打ち測量」を選択するボタンが表示される。
ステップ404:例えば、測量作業者が「座標測量」ボタンをタップすることにより、測量方法が「座標測量」に設定される。
ステップ406:測量方法の設定により、操作パネル14には、図面とともに「観測実行」ボタンが表示される。
ステップ408:測量作業者が、測量機械5を操作し、構造物の所定の位置に配置されたターゲットの視準が完了した後、「観測実行」ボタンをタップすると、測量位置表示装置4から測量機械5に観測実行信号が送信される。
【0041】
観測実行信号を受信した測量機械5は、視準したターゲットまでの距離及び方向角に基づいて、機械点を基点とする測量点座標値を算出し、測量位置表示装置4に送信する。
【0042】
[測量点表示工程]
図9は、測量点表示工程の詳細フロー図である。
ステップ502:測量点座標値を受信した測量位置表示装置4では、測量点登録部30Aにより、受信した測量点座標値を測量点として登録する登録作業を促す入力欄が操作パネル14に表示される。
ステップ504:測量作業者が、入力欄に測量点名を入力し、「確定」ボタンをタップすると、測量点名とともに座標値が観測情報として登録される。
ステップ506:測量点の登録が完了すると、座標変換部30Bにより、当該測量点の測量点座標値が測量座標系から図面座標系に変換され、図11(c)に示すように、測量点が操作パネル14に表示された図面上に表示される(ステップ508)。
そして、他の測量点を計測する場合には、測量機械5を操作してターゲットを視準し、ステップ400に戻り、以後ステップ400〜ステップ500を繰り返すことにより、図11(d)に示すように、操作パネル14に表示された図面上に複数の測量点が追加表示される。
【0043】
上記観測の途中において、操作パネル14に表示された測量点のアイコンをタップすると、観測情報演算表示手段32により、当該測量点の座標値及び測量点名が、測量点の脇に表示される。また、操作パネル14に表示された「距離計測」ボタンをタップし、操作パネル14に表示された測量点を示す2つのアイコンを連続してタップすると、観測情報演算表示手段32の動作により、選択された2点間の距離を算出するとともに、選択された2点間を結ぶ直線を画面上に描画し、その直線の脇に算出した距離を表示する。
【0044】
[図面データ出力工程]
図10は、図面データ出力工程の詳細フロー図である。
ステップ602:目的とする測量が終了すると、操作パネル14に表示された「保存」ボタンを選択することにより、機械点や測量点の位置等の観測情報が図面に紐付けされた観測済みの図面データとして保存される。なお、観測済みの図面データには、サーバー3からダウンロードした図面上に測量に用いた機械点及び測量点が描画された状態で保存される。
【0045】
ステップ604:観測済みの図面データが保存されると、観測図面出力手段34により、操作パネル14に「図面データの出力」ボタンが表示される。
ステップ606:測量作業者が「図面データの出力」ボタンを選択すると、観測図面出力手段34により、測量位置表示装置4がサーバー3に接続される。
ステップ608:サーバー3に接続されると、観測図面出力手段34は、観測済みの図面データが格納された測量位置表示装置4のフォルダを表示する。
ステップ610:測量作業者が左側の表示欄から観測済みの図面データのファイル名をタップことで、選択した図面データが測量位置表示装置4からサーバー3にアップロードされる。
ステップ612:アップロードが完了すると、サーバー3の観測済みの図面データが格納されたフォルダが操作パネル14に表示される。
ステップ614:操作パネル14に表示された「確認」ボタンを指でタップすることで、サーバー3との接続が解除される。
ステップ616:操作パネル14に表示された「終了」ボタンを指でタップすることでプログラムが終了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、測量と測量により得られた測量点の図面への作図作業を同時かつリアルタイムに行うことができると共に、測量点の位置を即座に視覚的に認識,確認できる。また、従来必要であった施設に戻ってからの作図や図面データへの落としこみといった作業を簡略化できるため、測量の作業効率を大幅に向上させることができる。
【0047】
また、測量位置表示装置4に表示する図面データをサーバー3からダウンロードしたり、測量後の機械点及び測量点の位置等の観測情報を含む図面データをサーバー3にアップロードすることにより、最新の情報を測量現場と施設との間で共有することができ、現場と施設が遠隔地であっても測量結果を直ちに確認することができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、測量位置表示装置4に表示する図面データを3次元の設計図面から2次元の平面図に作成するものとして説明したが、これに限定されず、3次元の設計図面データの立体図を表示するようにしても良い。この場合も同様に、立体図から測量に必要な内容のみを残し、不要と思われる内容を除外するように加工を施して測量用図面として作成すると良い。このように、立体図に測量点を表示させることにより、測量位置の確認が直ちになされるとともに、測量対象となる施工途中の地物の全体的、或は部分的な形状が把握できるため、現状における施工形状の確認をし易くすることができる。
【0049】
また、上述のように測量位置表示装置4に立体図を表示する場合には、例えば、図面表示手段26による立体図の表示処理において、立体図とともに立体図に設定された3次元の方向を示す座標軸を表示するように処理させ、測量作業者が座標軸を触れることにより、観測情報演算表示手段32が立体図とともに立体図に重ねて表示された測量点を平面表示するように構成すると良い。
【符号の説明】
【0050】
2 事務所コンピュータ、3 サーバー、4 測量位置表示装置、
5 測量機械、6 ネットワーク(WAN)、7 ネットワーク(LAN)、
26 図面表示手段、22 観測指令出力手段、30 測量点表示手段、
32 観測情報演算表示手段。
図1
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図11