特許第6812187号(P6812187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6812187-測距装置 図000002
  • 特許6812187-測距装置 図000003
  • 特許6812187-測距装置 図000004
  • 特許6812187-測距装置 図000005
  • 特許6812187-測距装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812187
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20201228BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20201228BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20201228BHJP
【FI】
   G01S7/481 A
   G02B26/10 104Z
   G01S17/10
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-192930(P2016-192930)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-54536(P2018-54536A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】岩科 進也
【審査官】 田中 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−190736(JP,A)
【文献】 特開2014−228492(JP,A)
【文献】 特開2014−059301(JP,A)
【文献】 特開昭60−025471(JP,A)
【文献】 特許第5251445(JP,B2)
【文献】 特開2016−020834(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0011311(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0188043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 − G01S 7/51
G01S 17/00 − G01S 17/95
G01B 11/00 − G01B 11/30
G01C 3/00 − G01C 3/32
G02B 26/10 − G02B 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体までの距離を計測する測距装置であって、
前記物体への投光ビームを出射する光源と、
前記投光ビームを透過させる筒状の導光部材を有する反射ミラーと、
前記導光部材を通った前記投光ビームを前記物体に向けて反射させると共に、前記物体からの戻り光を前記反射ミラーに向けて反射させる走査ミラーと、
前記反射ミラーで反射した前記戻り光を検出する受光素子と、を備え、
前記導光部材は、前記反射ミラーの中心に対し、前記受光素子から遠ざかる方向に偏心している測距装置。
【請求項2】
前記受光素子は、ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイであり、
前記反射ミラーと前記受光素子との間には、前記反射ミラーで反射した前記戻り光を集光する集光レンズが配置され、
前記集光レンズによる前記戻り光のフォーカス位置には、アパーチャが配置され、
前記受光素子は、前記アパーチャの後段側において前記戻り光のデフォーカス位置に配置されている請求項1記載の測距装置。
【請求項3】
前記導光部材の先端部は、前記投光ビームの進行方向に対し、前記反射ミラーのエッジよりも突出している請求項1又は2記載の測距装置。
【請求項4】
前記走査ミラーは、MEMSミラーによって構成されている請求項1〜3のいずれか一項記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、レーザ光などの光を物体に向けて投光した後、物体からの戻り光を検出し、物体への投光から戻り光の検出までの時間に基づいて物体までの距離を計測するTOF(Time of Flight)方式の測距装置の開発が進められている。かかる測距装置は、例えば自動車などの車両に自動運転支援システムとして搭載されることが想定されている。自動運転支援システムでは、走行中の車両と物体(人体なども含む)との距離を測距装置で計測し、計測結果に基づいて車両速度などを制御することで、車両と物体との衝突回避が期待されている。
【0003】
従来の測距装置としては、例えば特許文献1に記載のレーザレーダ装置がある。この従来の測距装置は、物体への投光ビームと物体からの戻り光とが同軸となる光学系を有している。この光学系においては、投光ビームを通過させると共に、物体からの戻り光を受光素子に向けて反射するミラーが配置されている。ミラーの中央部には、筒状の導光部材が設けられている。この導光部材により、投光ビームがミラーで散乱することが抑制され、散乱光が受光素子で検出されることによる測距精度の低下を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5251445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の測距装置の構成では、筒状の導光部材がミラーの中央部に設けられている。このため、戻り光がミラーで反射して受光素子に向かう際、導光部材によって戻り光が遮られてしまうおそれがある。導光部材によって遮られた戻り光は受光素子での検出に寄与せず、検出信号のS/N比が低下してしまうため、結果として測距可能距離及び測距精度が十分に確保できなくなることが考えられる。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、測距可能距離及び測距精度を向上できる測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る測距装置は、物体までの距離を計測する測距装置であって、物体への投光ビームを出射する光源と、投光ビームを透過させる筒状の導光部材を有する反射ミラーと、導光部材を通った投光ビームを物体に向けて反射させると共に、物体からの戻り光を反射ミラーに向けて反射させる走査ミラーと、反射ミラーで反射した戻り光を検出する受光素子と、を備え、導光部材は、反射ミラーの中心に対し、受光素子から遠ざかる方向に偏心している。
【0008】
この測距装置では、反射ミラーに筒状の導光部材が設けられてることにより、光源からの投光ビームが反射ミラーで散乱することを抑制できる。これにより、散乱光が受光素子で検出されることによる測距精度の低下を防止できる。また、この測距装置では、反射ミラーの中心に対し、受光素子から遠ざかる方向に偏心して導光部材が設けられている。これにより、導光部材によって戻り光が遮られてしまうことを防止でき、検出信号のS/N比を十分に高めることが可能となる。したがって、測距可能距離及び測距精度が十分に確保できる。
【0009】
また、受光素子は、ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイであり、反射ミラーと受光素子との間には、反射ミラーで反射した戻り光を集光する集光レンズが配置され、集光レンズによる戻り光のフォーカス位置には、アパーチャが配置され、受光素子は、アパーチャの後段側において戻り光のデフォーカス位置に配置されていてもよい。
【0010】
ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイを受光素子として用いることにより、物体からの戻り光の光量が微弱な場合でも、戻り光を高感度で検出できる。したがって、検出信号のS/N比を高いレベルで確保でき、測距可能距離及び測距精度を十分に向上させることができる。一方、ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイでは、ダイナミックレンジがアレイ数に依存するが、測距装置において受光素子のダイナミックレンジが不足すると、外乱光の影響で検出信号が容易に飽和してしまうことが考えられる。戻り光のフォーカス位置に受光素子を配置すると、限られたアレイのみに戻り光が入射するため、ダイナミックレンジを確保できなくなるおそれがある。また、戻り光のデフォーカス位置に単純に受光素子を配置してしまうと、広い領域から受光素子に戻り光が入射し、上述した外乱光の問題が解消されないおそれがある。したがって、戻り光のフォーカス位置には、アパーチャを配置することにより、ダイナミックレンジの確保と外乱光の影響の排除とを両立できる。
【0011】
また、導光部材の先端部は、投光ビームの進行方向に対し、反射ミラーのエッジよりも突出していてもよい。導光部材を通った投光ビームは、導光部材の先端部から前方に向かって一定の広がりをもって進行する。したがって、導光部材の先端部を反射ミラーのエッジよりも突出させておくことで、投光ビームの一部が反射ミラーで散乱することを抑制できる。
【0012】
また、走査ミラーは、MEMSミラーによって構成されていてもよい。これにより、投光ビームの走査を精度良く実施できる。また、ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイを受光素子として用いる場合、物体からの戻り光の光量は微弱でよい。したがって、MEMSミラーの面積は、投光ビーム及び戻り光の径に基づいて設定すればよく、走査ミラーの大型化を回避できる。
【発明の効果】
【0013】
この測距装置によれば、測距可能距離及び測距精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】測距装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図2】反射ミラーの構成を示す要部拡大図である。
図3】受光素子の配置構成を示す要部拡大図である。
図4】反射ミラーの比較例を示す図である。
図5】導光部材を通る投光ビームの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係る測距装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、測距装置の一実施形態を示す概略構成図である。この測距装置1は、例えば自動車などの車両に自動運転支援システムとして搭載される装置である。自動運転支援システムでは、走行中の車両と物体Kとの距離を測距装置1でリアルタイム計測し、計測結果に基づいて車両速度などを制御することで、車両と物体Kとの衝突を回避する制御が実行される。物体Kは、例えば他車両、壁などの障害物、歩行者などである。本実施形態では、例えば0.1m〜100m程度離れた位置にある物体Kとの間の距離を計測することが想定されている。
【0017】
図1に示すように、測距装置1は、光源2と、コリメータ3と、反射ミラー4と、走査ミラー5と、受光素子6とを含んで構成されている。これらの構成要素は、いずれもステージ(不図示)上に組み立てられ、互いに光学的に結合されている。測距装置1の光学系は、装置構成の小型化及び簡単化の観点から、物体Kへの投光ビームL1と物体Kからの戻り光L2とが略同軸となるように設計されている。
【0018】
光源2は、物体Kへの投光ビームL1を出射する部分である。光源2としては、例えば赤外又は紫外のパルスレーザを出射するレーザダイオードが用いられる。赤外光である場合の波長は例えば800nm〜1000nm程度であり、紫外光である場合の波長は例えば350nm〜400nm程度である。光源2から出射した投光ビームL1は、コリメータ3によって平行光化され、例えばφ1.6mm〜φ2.0mm程度のビーム径で反射ミラー4側に入射する。
【0019】
反射ミラー4は、ピンホール7が設けられたピンホール付きミラーである。反射ミラー4は、光源2からの投光ビームL1及び物体Kからの戻り光L2の光軸に対して45°傾いた状態で配置され、ピンホール7によって投光ビームL1を透過させつつ、戻り光L2を直角に反射させて受光素子6に導光する。この反射ミラー4は、図2に示すように、反射ミラー4の中心Cに対し、受光素子6から遠ざかる方向に偏心した位置にピンホール7を有している。ピンホール7は、投光ビームL1の光軸に一致するように、反射ミラー4の主面に対して45°傾けて形成されている。なお、反射ミラー4は、物体Kからの戻り光L2を受光素子6に導光するように配置されていればよく、光源2からの投光ビームL1の光軸及び物体Kからの戻り光L2の光軸に対する反射ミラーの角度は、45°に限られるものではない。
【0020】
また、ピンホール7に対しては、円筒状の導光部材8が更に配置されている。導光部材8は、例えばステンレス鋼或いはアルミなどによって形成された中空部材によって構成されている。導光部材8の内径は、例えば投光ビームL1のビーム径以下となっている。例えば投光ビームL1のビーム径がφ2.0mmである場合、導光部材8の内径はφ1.6mm程度に設計される。
【0021】
導光部材8は、反射ミラー4の中心Cから偏心したピンホール7を貫通するように配置され、接着等によってピンホール7の内壁部分に固定されている。これにより、導光部材8も、反射ミラー4の中心Cに対し、受光素子6から遠ざかる方向に偏心した状態となっている。ピンホール7及び導光部材8の偏心量に特に制限はないが、例えば導光部材8の外周面が反射ミラー4の縁に接する程度に偏心していてもよく、導光部材8の外周面が反射ミラー4の縁からはみ出す程度に偏心していてもよい。
【0022】
また、導光部材8の基端部8aは、反射ミラー4における光源2側の面から突出し、導光部材8の先端部8bは、反射ミラー4における走査ミラー5側の面から突出している。特に、導光部材8の先端部8bは、投光ビームL1の進行方向に対し、反射ミラー4の光源2側の面のエッジ4aよりも突出した状態となっている。
【0023】
導光部材8の長手方向は、投光ビームL1の光軸と一致し、基端部8a側から入射した投光ビームL1は、導光部材8の中空部分Sを通過するようになっている。導光部材8の中空部分Sを通過した投光ビームL1は、先端部8b側から出射し、走査ミラー5に向かって進行する。また、走査ミラー5と反射ミラー4との間では、投光ビームL1と戻り光L2とが重なっているが、戻り光L2の光軸中心は、投光ビームL1の光軸中心に対して受光素子6側に位置している。戻り光L2の一部は、導光部材8の中空部分Sに再び入射するが、残余の部分は、反射ミラー4によって受光素子6側に反射する。
【0024】
走査ミラー5は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーによって構成されている。走査ミラー5は、不図示の制御部による制御に基づいて揺動し、物体Kに向かう投光ビームL1の向きを走査する。走査ミラー5の揺動角度は、例えば±30°程度である。走査ミラー5の走査速度は、例えば1kHz〜10kHz程度である。この走査ミラー5は、導光部材8を通った投光ビームL1を物体Kに向けて反射させる。
【0025】
また、走査ミラー5は、投光ビームL1の照射に応じて物体Kから反射した戻り光L2を反射ミラー4に向けて反射させる。走査ミラー5におけるミラー部分の径は、投光ビームL1及び戻り光L2の径を考慮して設定され、本実施形態では、物体Kからの戻り光L2のビーム径と同程度になっている。戻り光L2のビーム径が例えばφ2.6mmである場合、走査ミラー5におけるミラー部分の径は、φ2.6mm程度に設計される。戻り光L2のビーム径は、測距装置1に要求される測距可能距離と距離精度に基づいて設定される。
【0026】
受光素子6は、ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイである。本実施形態では、受光素子6は、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードアレイである。このような受光素子6としては、例えばSPAD(Single-Photon Avalanche Diode)、MPPC(Multi-Pixel Photon Counter/Silicon Photomultiplier)などが挙げられる。例えばMPPCにおいては、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードの各画素が2次元に並列接続されている。各画素にはクエンチング抵抗が接続され、各クエンチング抵抗は、1つの読み出しチャンネルに接続されている。したがって、各画素からの信号が重ねられたパルスの高さ(イベント数)若しくはパルスの電荷量を測定することで、MPPCが検出した光子の数を検出できる。
【0027】
受光素子6からの出力信号は、不図示の演算部に出力される。演算部では、TOF(Time of Flight)法に基づいて、物体Kまでの距離が演算される。すなわち、演算部では、光源2から投光ビームL1のパルスが出射した時刻と、受光素子6で戻り光L2を検出した時刻との差分に基づいて物体Kまでの距離が演算される。
【0028】
反射ミラー4と受光素子6との間の光路には、図3に示すように、集光レンズ11と、アパーチャ12とが配置されている。集光レンズ11は、反射ミラー4で反射した戻り光L2を集光する部分である。アパーチャ12は、集光レンズ11による戻り光L2のフォーカス位置F1に対応して配置されている。受光素子6は、アパーチャ12の後段側において戻り光L2のデフォーカス位置F2に配置されている。すなわち、受光素子6は、フォーカス位置F1でアパーチャ12を通過し僅かに拡散した戻り光L2を受光する。
【0029】
以上のような構成を有する測距装置1では、反射ミラー4に筒状の導光部材8が設けられていることにより、光源2からの投光ビームL1が反射ミラー4に入射する際にピンホール7の内壁等で投光ビームL1が散乱することを抑制できる。これにより、散乱光が受光素子6で検出されることによる測距精度の低下を防止できる。
【0030】
また、筒状の導光部材の配置に関し、図4に示す比較例では、反射ミラー104の中心Cに対応してピンホール107が設けられ、当該ピンホール107に筒状の導光部材108が設けられている。このような構成では、戻り光L2が反射ミラー104で反射して受光素子に向かう際、導光部材108によって戻り光L102の一部(反射ミラー104と導光部材108との間の位置に入射する部分)L102aが遮られてしまう。導光部材108によって遮られた戻り光L102は、受光素子での検出に寄与しないため、検出信号のS/N比が低下してしまうおそれがある。
【0031】
これに対し、本実施形態の測距装置1では、反射ミラー4の中心Cに対し、受光素子6から遠ざかる方向に偏心して導光部材8が設けられている。これにより、導光部材8によって戻り光L2の一部が遮られてしまうことを防止でき、検出信号のS/N比を十分に高めることが可能となる。したがって、測距可能距離及び測距精度が十分に確保できる。
【0032】
また、測距装置1では、ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイが受光素子6として用いられている。反射ミラー4と受光素子6との間には、反射ミラー4で反射した戻り光L2を集光する集光レンズ11が配置され、集光レンズ11による戻り光L2のフォーカス位置F1には、アパーチャ12が配置され、受光素子6は、アパーチャ12の後段側において戻り光L2のデフォーカス位置F2に配置されている。
【0033】
このように、ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイを受光素子6として用いることにより、物体Kからの戻り光L2の光量が微弱な場合でも、戻り光L2を高感度で検出できる。したがって、検出信号のS/N比を高いレベルで確保でき、測距可能距離及び測距精度を十分に向上させることができる。
【0034】
一方、ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイでは、ダイナミックレンジがアレイ数に依存するが、測距装置1において受光素子6のダイナミックレンジが不足すると、外乱光の影響で検出信号が容易に飽和してしまうことが考えられる。戻り光L2のフォーカス位置F1に受光素子6を配置すると、限られたアレイのみに戻り光L2が入射するため、ダイナミックレンジを確保できなくなるおそれがある。また、戻り光L2のデフォーカス位置F2に単純に受光素子6を配置してしまうと、広い領域から受光素子6に戻り光L2が入射し、上述した外乱光の問題が解消されないおそれがある。したがって、受光素子6を戻り光L2のデフォーカス位置F2に配置し、戻り光L2のフォーカス位置F1にアパーチャ12を配置することにより、ダイナミックレンジの確保と外乱光の影響の排除とを両立できる。
【0035】
また、測距装置1では、導光部材8の先端部8bが投光ビームL1の進行方向に対して反射ミラー4のエッジ4aよりも突出している。図5に示すように、導光部材8を通る投光ビームL1は、導光部材8の内周面で乱反射を繰り返しながら進行する。そして、導光部材8を通った投光ビームL1は、先端部8bから放射状の広がりをもって進行する。このため、導光部材8の先端部8bが投光ビームL1の進行方向に対して反射ミラー4のエッジ4aよりも突出していない場合、導光部材8の先端部8bから前方に出射した投光ビームL1の一部が反射ミラー4で散乱することが考えられる。したがって、導光部材8の先端部8bを反射ミラー4のエッジ4aよりも突出させておくことで、先端部8bから出射した投光ビームL1の一部が反射ミラー4で散乱することを抑制でき、散乱光が受光素子6で検出されることによる測距精度の低下を一層確実に防止できる。
【0036】
また、測距装置1では、走査ミラー5がMEMSミラーによって構成されている。これにより、投光ビームL1の走査を精度良く実施できる。また、ガイガーモードで動作するフォトダイオードアレイを受光素子6として用いる場合、物体Kからの戻り光L2の光量は微弱でよい。したがって、MEMSミラーの面積は、投光ビームL1及び戻り光L2の径に基づいて設定すればよく、走査ミラー5の大型化を回避できる。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、導光部材8の基端部8aが反射ミラー4における光源2側の面から突出しているが、基端部8aは、当該面から必ずしも突出していなくてもよい。すなわち、導光部材8の基端部8aは、反射ミラー4における光源2側の面と面一となっていてもよい。
【0038】
また、上述した実施形態では、筒状の中空部材によって導光部材8を構成しているが、導光部材8は、筒状のガラス体にアルミなどの金属膜による遮光コーティングを施したものであってもよい。この場合でも、光源2からの投光ビームL1が反射ミラー4に入射する際にピンホール7の内壁等で投光ビームL1が散乱することを抑制できる。これにより、散乱光が受光素子6で検出されることによる測距精度の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0039】
1…測距装置、2…光源、4…反射ミラー、4a…エッジ、5…走査ミラー、6…受光素子、8…導光部材、8b…先端部、11…集光レンズ、12…アパーチャ、C…中心、F1…フォーカス位置、F2…デフォーカス位置、K…物体、L1…投光ビーム、L2…戻り光。
図1
図2
図3
図4
図5