(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
面状のシートカバーを、乗員を弾性的に支持するシートパッドの着座面から前記着座面に開口する前記シートパッドの貫通孔の内面にかけて接着する接着工程と、前記貫通孔を覆う面状のカーペット部材を、前記シートパッドの着座面とは反対の裏面に取付ける被覆工程とを備え、
前記接着工程にて、接着装置を、前記シートパッド上の前記シートカバーに押し付けてこれらを接着するに際して、前記接着装置の突部が、前記シートカバーの一部を前記内面に押し付けながら着座面側から前記貫通孔に挿通されている乗物用シートの製造方法において、
前記カーペット部材を、前記貫通孔を通じて前記シートパッドの裏面側に配置されるシートカバー部分に取付けておくとともに、
前記接着工程では、前記接着装置の突部が、前記カーペット部材を前記突部の先端に保持した状態で前記貫通孔に挿通され、前記被覆工程では、前記突部の先端から取外した前記カーペット部材を、前記貫通孔を覆うように面方向に展開した状態として前記シートパッドの裏面に取付ける乗物用シートの製造方法。
前記カーペット部材を、面方向の寸法が小さくなるように撓み変形させた状態として、前記突部の先端に設けられている凹み状の収容部内に押し込んで保持させておく請求項1に記載の乗物用シートの製造方法。
前記カーペット部材が、前記貫通孔を覆う本体部と、前記本体部の周縁を囲うように固定されている枠状の取付け部とを有し、前記被覆工程において、前記取付け部を、前記シートパッドの裏面に取付ける構成であり、
前記本体部と前記取付け部には、互いの相対位置関係を規定する切れ込み部がそれぞれ設けられているとともに、前記切れ込み部が前記助長部として機能する請求項3に記載の乗物用シートの製造方法。
前記カーペット部材が、前記貫通孔を覆う本体部と、前記本体部の周縁を囲うように固定されている枠状の取付け部とを有し、前記被覆工程において、前記取付け部を、前記シートパッドの裏面に取付ける構成であり、
前記取付け部に、前記カーペット部材の面方向外方に向けて突出する突出部と、前記突出部を厚み方向に貫通する取付け孔が設けられており、前記被覆工程において、前記取付け部を、前記取付け孔に挿入された留具を介して前記シートパッドの裏面に取付ける請求項1〜4のいずれか一項に記載の乗物用シートの製造方法。
乗員を弾性的に支持可能なシートパッドと、前記シートパッドを厚み方向に貫通する貫通孔と、前記シートパッドの着座面から前記貫通孔の内面にかけての部分に接着されているシートカバーと、前記着座面とは反対の前記シートパッドの裏面側で前記貫通孔を被覆している面状のカーペット部材とを備えた乗物用シートにおいて、
前記カーペット部材が、前記貫通孔を覆う本体部と、前記本体部の周縁に沿って固定されている枠状の取付け部とを有し、前記取付け部が、前記貫通孔を通じて前記シートパッドの裏面側に配置されるシートカバー部分に取付けられており、
前記取付け部が、前記シートパッドの裏面側に配置されるシートカバー部分を前記シートパッドに押し付けた状態で前記シートパッドの裏面側に取付けられており、
前記カーペット部材として、第一カーペット部材と、前記第一カーペット部材とは異なる箇所に配置されている第二カーペット部材が用いられているとともに、
前記第一カーペット部材が、前記第二カーペット部材と外見の異なる誤組付け防止部を有している乗物用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述の構成においては、製造工程の簡略化などの観点から、接着工程に先立って、シートカバーに遮蔽材を取付けておくことが望ましい。しかし公知技術の構成では、遮蔽材がシートカバーの接着作業の邪魔とならないように、シートカバーの接着後に遮蔽材を後付けする必要がある。すなわちシートカバーに遮蔽材を予め取付けておくと、この遮蔽材が突部に干渉して、シートカバーに皺ができた状態(仕上がり性が悪化した状態)で孔部の内面に接着されてしまうことがある。このため公知技術の構成は、シートカバーとシートパッドを接着する場合、シートカバーの仕上がり性向上と作業工程の簡略化の両立には不向きの構成であった。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シートパッドの適所に、より簡便な構成によって、シートカバーとカーペット部材を性能よく取付けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の乗物用シートの製造方法は、面状のシートカバーを、乗員を弾性的に支持するシートパッドの着座面から着座面に開口するシートパッドの貫通孔の内面にかけて接着する接着工程と、貫通孔を覆う面状のカーペット部材を、シートパッドの着座面とは反対の裏面に取付ける被覆工程とを備えている。そして接着工程にて、接着装置を、シートパッド上のシートカバーに押し付けてこれらを接着する。このとき接着装置の突部が、シートカバーの一部を内面に押し付けながら着座面側から貫通孔に挿通されている。この種の製造方法においては、シートパッドの適所に、より簡便な構成によって、シートカバーとカーペット部材を性能よく(例えば仕上がり性良く)取付けられることが望まれる。
【0008】
そこで本発明では、カーペット部材を、貫通孔を通じてシートパッドの裏面側に配置されるシートカバー部分に取付けておく。そして接着工程では、接着装置の突部が、カーペット部材を突部の先端に保持した状態で貫通孔に挿通され、被覆工程では、突部の先端から取外したカーペット部材を、貫通孔を覆うように面方向に展開した状態としてシートパッドの裏面に取付ける。本発明では、接着工程において、カーペット部材を突部の先端に保持しておく。このため製造工程の簡略化の観点から、シートカバーにカーペット部材を予め取付けておいたとしても、このシートカバーの一部が、カーペット部材に極力邪魔されることなく突部によって貫通孔の内面に接着される。このためカーペット部材と突部の干渉が原因となるシートカバーの仕上がり性の悪化を極力阻止することができる。さらにカーペット部材を、突部の挿通作業によってシートパッドの裏面側に配置させておくことにより、被覆作業時においてシートパッドの裏面にスムーズに取付けることができる。
【0009】
第2発明の乗物用シートの製造方法は、第1発明の乗物用シートの製造方法において、カーペット部材を、面方向の寸法が小さくなるように撓み変形させた状態として、突部の先端に設けられている凹み状の収容部内に押し込んで保持させておく。本発明では、カーペット部材を収容部内に押し込んで安定的に保持させておくことで、カーペット部材が原因となるシートカバーの仕上がり性の悪化をより確実に阻止することができる。
【0010】
第3発明の乗物用シートの製造方法は、第2発明の乗物用シートの製造方法において、カーペット部材に、撓み変形を助長する助長部が設けられている。本発明では、助長部によって、カーペット部材を適切に撓ませながら収容部内に押し込んでおくことができる。
【0011】
第4発明の乗物用シートの製造方法は、第3発明の乗物用シートの製造方法において、カーペット部材が、貫通孔を覆う本体部と、本体部の周縁を囲うように固定されている枠状の取付け部とを有し、被覆工程において、取付け部を、シートパッドの裏面に取付ける構成である。そして本体部と取付け部には、互いの相対位置関係を規定する切れ込み部がそれぞれ設けられているとともに、切れ込み部が助長部として機能する。本発明では、切れ込み部が助長部として機能する簡便な構成によって、カーペット部材を適切に撓ませながら収容部内に押し込んでおくことができる。
【0012】
第5発明の乗物用シートの製造方法は、第1発明〜第4発明のいずれかの乗物用シートの製造方法において、カーペット部材が、貫通孔を覆う本体部と、本体部の周縁を囲うように固定されている枠状の取付け部とを有し、被覆工程において、取付け部を、シートパッドの裏面に取付ける構成である。そして取付け部に、カーペット部材の面方向外方に向けて突出する突出部と、突出部を厚み方向に貫通する取付け孔が設けられており、被覆工程において、取付け部を、取付け孔に挿入された留具を介してシートパッドの裏面に取付ける。本発明では、被覆工程において、カーペット部材の取付け部を、留具を介してシートパッドの裏面により安定的に取付けておくことができる。
【0013】
第6発明の乗物用シートの製造方法は、第1発明〜第5発明のいずれかの乗物用シートの製造方法において、乗物用シートが、貫通孔に挿通された状態で配設される付属部材を有するとともに、
貫通孔を覆うカーペット部材の本体部に、付属部材の貫通孔への挿通を許容する切目状のスリット部が設けられている。そしてスリット部が、付属部材の通過により拡開する第一スリット部位と、第一スリット部位につながっている第二スリット部位を有し、第二スリット部位が、第一スリット部位の端部側で第一スリット部位の延長方向に対して交差する方向に延長している。本発明では、スリット部を通じて付属部材を貫通孔に挿通するに際して、第一スリット部位の拡開を、これに交差している第二スリット部位にて助長することができる。
【0014】
第7発明の乗物用シートは、乗員を弾性的に支持可能なシートパッドと、シートパッドを厚み方向に貫通する貫通孔と、シートパッドの着座面から貫通孔の内面にかけての部分に接着されているシートカバーと、着座面とは反対のシートパッドの裏面側で貫通孔を被覆している面状のカーペット部材とを備えている。そしてカーペット部材が、貫通孔を覆う本体部と、本体部の周縁に沿って固定されている枠状の取付け部とを有し、取付け部が、貫通孔を通じてシートパッドの裏面側に配置されるシートカバー部分に取付けられている。そこで本発明では、取付け部が、シートパッドの裏面側に配置されるシートカバー部分をシートパッドに押し付けた状態でシートパッドの裏面側に取付けられている。本発明では、取付け部を利用して、シートパッドの裏面側に配置されるシートカバー部分をシートパッドに押し付けてこれらの間に隙が生じることを極力阻止する。こうすることでシートパッドの裏面とシートカバーの間を通って貫通孔に空気が流入することを極力阻止することができる。
【0015】
また第
7発明の乗物用シートは
、カーペット部材として、第一カーペット部材と、第一カーペット部材とは異なる箇所に配置されている第二カーペット部材が用いられているとともに、第一カーペット部材が、第二カーペット部材と外見の異なる誤組付け防止部を有している。本発明では、誤組付け防止部によって、第一カーペット部材と第二カーペット部材の違いを目視で確認することができる。このため本発明では、第一カーペット部材と第二カーペット部材を極力取り違えることなく、これらを適切な位置に取付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る第1発明によれば、シートパッドの適所に、より簡便な構成によって、シートカバーとカーペット部材を性能よく取付けることができる。また第2発明によれば、シートパッドの適所に、シートカバーをより確実に仕上がり性よく取付けることができる。また第3発明によれば、シートパッドの適所に、シートカバーを更に確実に仕上がり性よく取付けることができる。また第4発明によれば、シートパッドの適所に、更に簡便な構成によって、シートカバーを、更に確実に仕上がり性よく取付けることができる。また第5発明によれば、シートパッドの適所に、カーペット部材を安定的に取付けることができる。また第6発明によれば、シートパッドの適所に、カーペット部材を利便性よく取付けることができる。また第7発明によれば、シートパッドの適所に、より簡便な構成によって、シートカバーとカーペット部材を性能よく取付けることができる。そして第
7発明によれば、シートパッドの適所に、複数のカーペット部材をより確実に取付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図11を参照して説明する。各図には、便宜上、乗物用シートの前後方向と上下方向と左右方向を示す矢線を適宜図示することがある。また
図2では、便宜上、シートカバーを部分的に破断してシートパッドの一部を露出させている。そして
図4及び
図8〜
図10では、乗物用シートに配設された状態を基準として各部材の上下方向を定めているため、他の図面と上下方向が逆となっている。
【0019】
図1の乗物用シート2は、複数人の乗員が着座可能な横長のシートであり、シートクッション4と、シートバック6を備えている。そして座面となるシートクッション4の後部には、背凭れとなる起立状態のシートバック6の下部が起倒可能に連結されている。この乗物用シート2は、左右方向の中央で区分け可能であり、左側の第一シートクッション部位4a及び第一シートバック部位6aと、右側の第二シートクッション部位4b及び第二シートバック部位6bにそれぞれ乗員が着座することができる。また各シートクッション部位4a,4bの少なくとも一方の裏側(下方)には図示しない電装部品が配置されており、この電装部品は、乗物用シート2又は車室床面などの乗物室内の適所に取付けられている。この種の電装部品として、電気的に作動して放熱する各種の部品を想定でき、HV用バッテリなどの各種のバッテリ、モータ、センサ類及びこれらの付属品を例示できる。
【0020】
[シートクッション・バックル部材(付属部材)]
シートクッション4は、
図1及び
図2を参照して、シートパッド4Pと、シートカバー4Sと、左右一対の貫通孔11,12と、一対のカーペット部材31,32を有している(各部材の詳細は適宜後述)。そして左右一対の貫通孔11,12(詳細後述)には、各々、本発明の付属部材に相当するバックル部材BM1,BM2が配置されている。各バックル部材BM1,BM2は、同形同寸の立方体状の部材であり、乗物用シート2の左右にそれぞれ配置されるシートベルト(図示省略)のタング部材を係止可能である。そして一方のバックル部材BM1は、第一シートクッション部位4aの右側後部に設けられている第一貫通孔11内に配設されている。また他方のバックル部材BM2は、第二シートクッション部位4bの左側後部に設けられている第二貫通孔12内に配設されている。
【0021】
そして本実施例では、シートカバー4Sが、シートパッド4Pの着座面SSとなる上面から各貫通孔11,12の内面にかけての部分に接着固定されている。さらに一対のカーペット部材31,32が、
図11に示すシートパッド4Pの裏面RSとなる下面に取付けられて対応する貫通孔11,12を被覆している。この種のシート構成では、シートの製造工程簡略化の観点などから、後述するシートパッド4Pとシートカバー4Sの接着に先立って、シートカバー4Sに各カーペット部材31,32を取付けておくことが望ましい。しかしそうするとシートパッド4Pとシートカバー4Sの接着の際に、各カーペット部材31,32が原因となって、シートカバー4Sがきれいに接着できず仕上がり性が悪化することが懸念される。そこで本実施例では、後述する接着工程と被覆工程にて、シートパッド4Pの適所に、より簡便な構成によって、シートカバー4Sと各カーペット部材31,32を性能よく取付けることとした。以下、各構成について詳述する。
【0022】
[シートパッド・貫通孔]
シートパッド4Pは、
図1及び
図2を参照して、シート外形をなす上面視で略矩形状の部材であり、第一貫通孔11と、第二貫通孔12を有している。この種のシートパッド4Pの素材は特に限定しないが、例えばポリウレタンフォーム(密度:10kg/m
3〜60kg/m
3)などの発泡樹脂を例示できる。また第一貫通孔11は、
図3及び
図10を参照して、シートパッド4Pを厚み方向に貫通する略矩形状の孔部であり、シートパッド4Pの着座面SSと、裏面RSにそれぞれ開口している。第一貫通孔11の着座側の開口は、第一シートクッション部位4aの着座面SSから一段低くされている凹み部4Pa内に配置されており、この凹み部4Paは、上方視で略L字状をなしている。そして第一貫通孔11は、前後左右に配置されている四つの内面(前内面11a,後内面11b,左内面11c,右内面11d)を有しており、左内面11cと右内面11dが、前内面11aと後内面11bに比して長尺とされている。この第一貫通孔11の開口寸法は、一方のバックル部材BM1の外形寸法よりもやや大寸となるように設定されている。このため一方のバックル部材BM1を第一貫通孔11に挿通した場合、これらの間には、上下方向に空気の通過可能な隙が生じることとなる。
【0023】
また第二貫通孔12は、
図3を参照して、シートパッド4Pを厚み方向に貫通する略矩形状の孔部であり、四つの内面(前内面12a,後内面12b,左内面12c,右内面12d)を有している。この第二貫通孔12は、第一貫通孔11に比して前後方向にやや短寸である以外は第一貫通孔11と略同一の基本構成を有している。なお第二貫通孔12の着座側の開口は、第二シートクッション部位4bの着座面SSから一段低くされている他の凹み部4Pb内に配置されており、この他の凹み部4Pbは、上方視で略三角形状をなしている。
【0024】
[シートカバー]
シートカバー4Sは、
図2に示すようにシートの意匠面を構成する面材であり、例えば布帛(織物,編物,不織布)又は皮革(天然皮革,合成皮革)で形成できる。このシートカバー4Sは、
図4を参照して、シートパッド4Pの着座面SSを被覆する第一カバー部位21と、対応する貫通孔11,12の内面を覆う第二カバー部位22a〜22d等を有している(
図4では、便宜上、第一貫通孔の内面を覆う第二カバー部位のみ図示している)。第一カバー部位21は、シートパッド4Pの着座面形状に倣った面状のシートカバー部分であり、例えば複数の表皮ピースを縫合することで形成できる。
【0025】
ここで第一貫通孔11の内面を覆う第二カバー部位22a〜22dと、
図3に示す第二貫通孔12の内面を覆う第二カバー部位(図示省略)は略同一の基本構成を有している。そこで専ら第一貫通孔11の内面を覆う第二カバー部位22a〜22dを一例にその詳細を説明する。この第二カバー部位22a〜22dは、
図4を参照して、それぞれ第一貫通孔11の対応する内面11a〜11dを覆うシートカバー部分であり、第一カバー部位21に一つながりとなるように連結されている。各第二カバー部位22a〜22dは、第一貫通孔11の上下方向(奥行き方向)の寸法よりもやや長尺とされている。このため各第二カバー部位22a〜22dを、第一貫通孔11の各内面11a〜11dに沿って角筒状に配置することで対応する内面11a〜11dを被覆できる。さらにこの被覆状態では、各第二カバー部位22a〜22dの端部E1〜E4が、第一貫通孔11を通じてシートパッド4Pの裏側に配置される。すなわち本実施例では、第二カバー部位22a〜22dが、本発明のシートカバーの一部に相当し、各端部E1〜E4が、本発明のシートパッドの裏面側に配置されるシートカバー部分に相当する。
【0026】
そして各第二カバー部位22a〜22dの端部E1〜E4は、シートパッド4Pの裏面RSに対面状に配置されるように、それぞれ第一貫通孔11を中心として十字状に分かれて配置される。すなわち第一貫通孔11の前内面11aを覆う第二カバー部位22aの端部E1が、前内面11aの下縁から前方に屈曲し、後内面11bを覆う第二カバー部位22bの端部E2が、後内面11bの下縁から後方に屈曲して配置される。また左内面11cを覆う第二カバー部位22cの端部E3が、左内面11cの下縁から左方に屈曲し、右内面11dを覆う第二カバー部位22dの端部E4が、右内面11dの下縁から右方に屈曲して配置される。
【0027】
[第一カーペット部材(本体部)]
ここで
図2に示す第一カーペット部材31と第二カーペット部材32は略同一の基本構成を有している。そこで以下に、専ら第一カーペット部材31を一例に各構成の詳細を説明する。この第一カーペット部材31は、
図4及び
図5を参照して、シートパッド4Pの裏面側から第一貫通孔11を被覆可能な面材であり、本体部40と、取付け部50を有している。本体部40は、第一貫通孔11を被覆する展開状態において略矩形の面材であり、第一貫通孔11の裏側の開口よりも大寸とされている。この本体部40は、非通気性又は低通気性の面材(例えば通気度が0cc/cm
2・sec〜10cc/cm
2・secの面材)で構成されているとともに、適度な可撓性を備えて面方向の寸法が小さくなるように撓み変形可能である。この種の本体部40の素材として、不織布、皮革、フェルトなどの繊維積層体、樹脂製のフィルム材、スラブウレタン製のマット材を例示できる。
【0028】
[切れ込み部(助長部)]
この本体部40には、
図4及び
図5を参照して、複数の第一切れ込み部46と、第一張出凸部47と、後述するスリット部42が設けられている。複数の第一切れ込み部46は、後述する取付け部50との位置決めの際の目印となる部位であり、本体部40の外周縁に沿って適宜の間隔で設けられている。また後述する第一カーペット部材31の撓み変形の際には、本体部40が、各第一切れ込み部46を基点としてスムーズに撓み変形する。すなわち各切れ込み部46が、本体部40の面方向の撓み変形を助長する助長部PMとして機能する(
図4及び
図5では、便宜上、一部の切れ込み部にのみ助長部を示す符号PMを付す)。そして本実施例においては、本体部40の前辺と後辺と左辺に三つの第一切れ込み部46が設けられ、本体部40の右辺(中央を除く部分)に二つの第一切れ込み部46が設けられている。各第一切れ込み部46は、本体部40の外周縁を適宜の位置で略三角形状に切り欠くことで形成できる。そして複数の第一切れ込み部46の大部分は、後述する取付け部50の対応する第二切れ込み部56と同位置に配置され、一部の第一切れ込み部46は、後述する取付け部50の対応する位置決め孔部57と同位置に配置される。また第一張出凸部47は、本体部40の外周縁を三角状に突出させている部位であり、本体部40の右辺中央に設けられている。そして第一カーペット部材31の取付け作業に際して、この第一張出凸部47の先端を右方に向けておくことで、第一カーペット部材31を適切な向きでシートパッド側に取付けることができる。
【0029】
[スリット部]
またスリット部42は、
図4及び
図5を参照して、本体部40に形成されている略H字状の切目であり、第一スリット部位44と、一対の第二スリット部位45a,45bで構成されている。第一スリット部位44は、シート前後方向に延長している相対的に長尺な部分であり、
図11に示すように一方のバックル部材BM1の長尺方向に沿って延長している。また一対の第二スリット部位45a,45bは、それぞれシート左右方向に延長している相対的に短尺な部分であり、第一スリット部位44を挟んでそれぞれ前後対称となるように配置されている。前側の第二スリット部位45aは、第一スリット部位44の前端に連結されて左右対称となるように延長しており、後側の第二スリット部位45bは、第一スリット部位44の後端に連結されて左右対称となるように延長している。
【0030】
[取付け部]
また取付け部50は、
図4及び
図5を参照して、展開状態において略矩形の枠体であり、窓部52と、複数の突出部54と、複数の第二切れ込み部56と、位置決め孔部57と、第二張出凸部58を有している。この取付け部50は、非通気性又は低通気性の面材で構成されており、適度な可撓性を備えて面方向の寸法が小さくなるように撓み変形可能である。この種の取付け部50の素材として、本体部40で例示の素材を例示でき、本体部40に比して剛性に優れる樹脂製の面材を用いることが好ましい。この取付け部50の突出部54を除く外形形状は、本体部40の外形形状と略同一とされており、取付け部50の外周縁を本体部40の外周縁に合わせた状態でこれらを重ねて配置することができる。そして窓部52は、取付け部50を厚み方向に貫通する貫通孔であり、取付け部50の略中央に設けられているとともに、第一貫通孔11の開口に倣った形状及び寸法を有している。
【0031】
[突出部]
また複数の突出部54は、取付け部50の外周縁から面方向外方に突出している半円状の部分である。これら各突出部54の略中央には、突出部54を厚み方向に貫通する略円形の取付け孔54Hが設けられており、各取付け孔54Hには、後述する
図11の留具HGを挿通することができる。そして本実施例においては、取付け部50の前辺左端と、右辺後部と、左辺中央と、左前の角部にそれぞれ突出部54が設けられている。
【0032】
また複数の第二切れ込み部56は、突出部54とは異なる位置で取付け部50の外周縁に設けられている略三角形状の切欠きである。各第二切れ込み部56は、概ね対応する第一切り込み部46の配置位置に倣って取付け部50の外周縁に適宜の間隔で設けられている。そして後述する第一カーペット部材31の撓み変形の際には、取付け部50が、各第二切れ込み部56を基点としてスムーズに撓み変形する。すなわち各第二切れ込み部56が、本体部40の面方向の撓み変形を助長する助長部PMとして機能する(
図4及び
図5では、便宜上、一部の切れ込み部にのみ助長部を示す符号PMを付す)。また位置決め孔部57は、対応する突出部54に重なるように取付け部50の左辺中央に設けられている略円形の孔部であり、本体部40の左辺中央の第一切り込み部46に重なる位置に配置されている。そして第二張出凸部58は、取付け部50の外周縁を三角状に突出させている部位であり、本体部40の第一張出凸部47と対応する位置に配置されている。そして第一カーペット部材31の取付け作業に際して、第一張出凸部47と第二張出凸部58を位置合わせすることで、本体部40と取付け部50を適切な向きで重ねておくことができる。
【0033】
[シートカバーと第一カーペット部材の取付け作業]
本実施例では、後述するシートカバー4Sの接着工程に先立って、シートカバー4Sの適所に第一カーペット部材31を取付けておく。このとき
図4及び
図11を参照して、四つの第二カバー部位22a〜22dを、第一貫通孔11内に配置した状態を再現するように角筒状に配置する。なお角筒状の第二カバー部位22a〜22dは、これらの縁部同士であらかじめ縫合しておくことができる。そして各第二カバー部位22a〜22dの端部E1〜E4と、取付け部50と、面状に展開した本体部40をこの順で重ね合わせる。このとき本体部40の各第一切れ込み部46を、取付け部50の対応する第二切れ込み部56及び位置決め孔部57に位置合わせながら、本体部40と取付け部50を重ねておくことで、これら両部40,50を適切に重ねて配置できる。そして各第二カバー部位22a〜22dの端部E1〜E4と取付け部50と本体部40を、
図11を参照して、それぞれ前後左右に設けられた4つの縫合線SEWで一体化する。この状態では本体部40と取付け部50と端部E1〜E4の各外周縁がほぼ一致した位置に配置されるとともに、取付け部50の各突出部54が面方向外方に突出して配置される。そして本体部40が、取付け部50の窓部52から露出して、第一貫通孔11に対面可能な位置に配置されることとなる。
【0034】
[第二カーペット部材]
図2に示す第二カーペット部材32は、シートパッド4Pの裏面側から第二貫通孔12を被覆する面材であり、第一カーペット部材31で例示した手法でシートカバー4Sに取付けられている。この第二カーペット部材32は、
図6を参照して、本体部40aと取付け部50aを有しており、これら各部40a,50aは、
図5に示す第一カーペット部材31の対応する部と略同一の基本構成を備えている。そこで以下に、第二カーペット部材32に特有の構成について詳述し、第一カーペット部材31と略同一の構成については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0035】
第二カーペット部材32の本体部40aは、
図3に示す第二貫通孔12の裏側の開口よりも大寸とされた略正方形の面材であり、
図6を参照して、スリット部42aと、複数の第一切れ込み部46aと、第一張出凸部47aを有している。この本体部40aでは、第一切れ込み部46aと第一張出凸部47aが特有の構成(形成位置及び形成数)を有している。すなわち第一切れ込み部46aは、本体部40aの前辺中央に一つ設けられ、本体部40aの後辺と左辺と右辺に三つ設けられている。また第一張出凸部47aは、本体部40aの左辺後部に設けられている。
【0036】
また第二カーペット部材32の取付け部50aは、
図6を参照して、窓部52aと、複数の突出部54aと、複数の第二切れ込み部56aと、複数の位置決め孔部57aと、第二張出凸部58aを有している。この取付け部50aでは、複数の突出部54aと複数の第二切れ込み部56aと複数の位置決め孔部57aと第二張出凸部58aが特有の構成を有している。すなわち突出部54aは、取付け部50aの前辺右部と、前辺左部と、左辺中央と、左辺後部と、右辺中央にそれぞれ設けられている。また複数の第二切れ込み部56aは、取付け部50aの外周縁において、突出部54aとは異なる位置で且つ対応する第一切れ込み部46aと同位置に設けられている。また位置決め孔部57aは、対応する突出部54aに重なるように取付け部50aの右辺及び左辺に設けられている。そして第二張出凸部58aが、第一張出凸部47aに対応して取付け部50aの左辺(突出部の間)に設けられている。
【0037】
[第一カーペット部材と第二カーペット部材の相違(誤組付け防止部)]
ここで
図2を参照して、第一カーペット部材31と第二カーペット部材32は、シートパッド4Pの異なる位置に取付けられるため、これらを取り違えて組み付ける(誤組付けする)ことは極力回避すべきである。そこで本実施例では、
図5に示す第一カーペット部材31の外形形状が、
図6に示す第二カーペット部材32の外形形状と外見において異なっている。このため第一カーペット部材31の外形形状そのものが誤組付け防止部WAMとして機能し、第二カーペット部材32との取り違えによる誤組付けを極力回避することができる。特に本実施例では、第一カーペット部材31から突出している各突出部54によって、第二カーペット部材32との外見上の相違が一目瞭然である。このため第一カーペット部材31の外形形状(誤組付け防止部WAM)によって、第一カーペット部材31と第二カーペット部材32を明確に区別することが可能となりこれらを適切に取付けることができる。
【0038】
[シートカバーとカーペット部材の取付け作業(接着装置)]
図8及び
図9を参照して、後述する接着工程と被覆工程にて、シートパッド4Pの適所に、シートカバー4Sと各カーペット部材31,32を取付ける。ここで本実施例では、第一カーペット部材31と第二カーペット部材32は略同一の工程で取付けられるため、以下に、専ら第一カーペット部材31を一例に各工程の詳細を説明する。そして接着工程では、
図7に示す接着装置XMを用いて、シートカバー4Sをシートパッド4Pの適所に接着固定できる。この接着装置XMは、
図8のシートパッド4Pの着座面SSにあてがわれる第一カバー部位21に押し当て可能な加熱本体部2xと、第一貫通孔11内に挿通可能な突部4xを有している。突部4xは、加熱本体部2xから突出している柱状の部位であり、この突部4xの先端面には、凹み状の収容部6xが設けられている。
【0039】
[接着工程]
接着工程では、
図4に示すシートカバー4Sの各部位21,22a〜22dを、
図3に示すシートパッド4Pの着座面SSから第一貫通孔11の各内面11a〜11dに接着する。なおシートカバー4Sの裏面RSには面状の接着材(図示省略)が予め取付けられており、この接着材が熱で溶融したのち硬化することで、シートカバー4Sがシートパッド4Pに接着固定される。この接着工程では、
図8を参照して、シートカバー4Sの各部位21,22c,22d等をシートパッド4Pの適所にあてがったのち、接着装置XMの加熱本体部2xが第一カバー部位21に押し付けられる(
図8では、便宜上、一部の左右の第二カバー部位と左右の内面のみ図示する)。また接着装置XMの突部4xが、各第二カバー部位22c,22d等を第一貫通孔11の対応する内面11c,11d等に押し付けながら着座面側から第一貫通孔11に挿通される。そして接着工程では、シートカバー4Sの仕上がり性を考慮して、各第二カバー部位22c,22d等に予め取付けられている第一カーペット部材31が突部4xに干渉することを極力回避すべきである。
【0040】
そこで本実施例では、
図8を参照して、突部4xが、第一カーペット部材31を突部4xの先端に保持した状態で第一貫通孔11に挿通されているため、第一カーペット部材31と突部4xの干渉が好適に回避されている。すなわち突部4xの挿通に際して、第一カーペット部材31を、面方向の寸法が小さくなるように撓み変形させた状態として、突部4x先端の収容部6x内に押し込んで保持させておく。このとき第一カーペット部材31を、
図5に示す助長部PMとしての各切れ込み部46,56を基点として、スムーズに面方向に小さくなるように撓み変形させることができる。そして突部4xを、各第二カバー部位22c,22d等を対応する内面11c,11d等に押し付けながら第一貫通孔11に挿通する。この突部4xの挿通によって、第一カーペット部材31は、収容部6x内に押し込まれた状態のまま、第二カバー部位の端部E3,E4等とともにシートパッド4Pの裏面側に配置される。この状態で接着装置XMにてシートカバー4Sを加熱することにより、シートカバー4Sの各部位21,22c,22d等をシートパッド4Pの適所に接着して固定する。こうして各第二カバー部位22c,22d等を、第一カーペット部材31に極力邪魔されることなく対応する内面11c,11d等にきれいに接着することができる。
【0041】
[被覆工程]
被覆工程では、
図9及び
図11を参照して、第一カーペット部材31を、シートパッド4Pの裏面RSに取付ける。この被覆工程では、
図9を参照して、
図8の突部4xの先端から取外した第一カーペット部材31を、第一貫通孔11を覆うように面方向に展開した状態としてシートパッド4Pの裏面RSに取付ける。例えば第一貫通孔11から突部4xを抜き外すことで、第一カーペット部材31が、突部4xの先端から取外されて、第二カバー部位の端部E3,E4等とともにシートパッド4Pの裏側に配置される。そこで取付け部50を、本体部40とともに面方向外方に引っ張りながら、各突出部54の取付け孔54Hから留具HGを挿入する。そして留具HGを輪状としながらシートパッド4Pの裏面RSに固定することにより、第一カーペット部材31の取付け部50を、留具HGを介してシートパッド4Pの裏面RSに安定的に取付けることができる。こうして第一カーペット部材31が取付けられた状態においては、
図11を参照して、第一貫通孔11の裏面側の開口が本体部40によって塞がれた状態となっている。さらに
図9を参照して、各第二カバー部位の端部E3,E4が、取付け部50からの押圧によってシートパッド4Pの裏面RSに押し付けられた状態となっている。このように各第二カバー部位の端部E3,E4等をシートパッド4Pの裏面RSに押し付けて密着させておくことにより、これらの間に隙が生じることを極力阻止することができる。
【0042】
[バックル部材の配設作業]
そして
図2及び
図3を参照して、各シートクッション部位4a,4bにそれぞれ対応するバックル部材BM1,BM2を取付ける。例えば一方のバックル部材BM1を、第一カーペット部材31のスリット部42を通じて第一貫通孔11に挿通しておく。このとき
図10及び
図11を参照して、例えば一方のバックル部材BM1を、第一カーペット部材31の第一スリット部位44から挿入していく。この一方のバックル部材BM1からの押圧によって、第一スリット部位44を次第に左右に拡開させながら、同部位44で分割されているカーペット部材部分を左右に押し退けていく。そして本実施例では、第一スリット部位44の前後の端部に、左右に延長する各第二スリット部位45a,45bがそれぞれ設けられている。このため各第二スリット部位45a,45bによって、第一スリット部位44で分割されているカーペット部材部分をスムーズに押し退けることができる。そして上述の作業と同様の手順で、第二貫通孔12にも他方のバックル部材BM2を挿通しておく。
【0043】
そして
図10及び
図11を参照して、一方のバックル部材BM1を第一貫通孔11に挿通した状態では、これらの間の隙が第一カーペット部材31の本体部40で塞がれた状態とされている。また同様に
図2に示す他方のバックル部材BM2を第二貫通孔12に挿通した状態では、これらの間の隙が第二カーペット部材32の本体部40aで塞がれた状態とされている。このためシートパッド4P裏側の電装部品を作動させた場合においても、各カーペット部材31,32にて、第一貫通孔11と第二貫通孔12から着座側に空気が漏れ出ることを好適に阻止することができる。特に本実施例においては、取付け部50,50aによって、シートパッド4Pの裏面側に配置されるシートカバー部分(
図11に示すE1〜E4等)をシートパッド4Pに押し付けておく。こうすることでシートパッド4Pの裏面RSとシートカバー4Sの間を通って各貫通孔11,12に空気が流入することを極力阻止することができる。
【0044】
以上説明したとおり本実施例では、接着工程において、各カーペット部材31,32を突部4xの先端に保持しておく。このため製造工程の簡略化の観点から、シートカバー4Sに各カーペット部材31,32を予め取付けておいたとしても、このシートカバー4Sが、各カーペット部材31,32に極力邪魔されることなく突部4xによって各貫通孔11,12の内面に接着される。このため各カーペット部材31,32と突部4xの干渉が原因となるシートカバー4Sの仕上がり性の悪化を極力阻止することができる。特に各カーペット部材31,32を収容部6x内に押し込んで安定的に保持させておくことで、各カーペット部材31,32が原因となるシートカバー4Sの仕上がり性の悪化をより確実に阻止することができる。このとき助長部PMによって、各カーペット部材31,32を適切に撓ませながら収容部6x内に押し込んでおくことができる。さらに切れ込み部46,56等が助長部PMとして機能する簡便な構成によって、各カーペット部材31,32を適切に撓ませながら収容部6x内に押し込んでおくことができる。
【0045】
さらに本実施例では、各カーペット部材31,32を、突部4xの挿通作業によってシートパッド4Pの裏側に配置させておくことにより、被覆作業時においてシートパッド4Pの裏面RSにスムーズに取付けることができる。この被覆工程において、各カーペット部材31,32の各取付け部50,50aを、留具HGを介してシートパッド4Pの裏面RSにより安定的に取付けておくことができる。また本実施例では、スリット部42,42aを通じて各バックル部材BM1,BM2を各貫通孔11,12に挿通する。このとき第一スリット部位44の拡開を、これに交差している第二スリット部位45a,45bにて助長することができる。
【0046】
また本実施例では、各取付け部50,50aを利用して、シートパッド4Pの裏面側に配置されるシートカバー部分(E1〜E4等)をシートパッド4Pに押し付けてこれらの間に隙が生じることを極力阻止する。こうすることでシートパッド4Pの裏面RSとシートカバー4Sの間を通って各貫通孔11,12に空気が流入することを極力阻止することができる。また本実施例では、誤組付け防止部WAMによって、第一カーペット部材31と第二カーペット部材32の違いを目視で確認することができる。このため本実施例では、第一カーペット部材31と第二カーペット部材32を極力取り違えることなく、これらを適切な位置に取付けることができる。このため本実施例によれば、シートパッド4Pの適所に、より簡便な構成によって、シートカバー4Sと各カーペット部材31,32を性能よく取付けることができる。
【0047】
本実施形態の乗物用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、接着工程と被覆工程の手順を例示したが、各工程の手順を限定する趣旨ではない。例えば接着装置は、シートパッドとシートカバーの間に付与した接着剤が硬化するまでシートカバーを単に押圧する構成(加熱しない構成)とされていてもよい。またカーペット部材を突部の先端に保持させる手法は、収容部に押し込む例のほか、各種の態様を取り得る。またシートカバーの端部と本体部と取付け部の取付け手法も、縫合のほか、ボルト材やクリップやステープルなどの各種部材を用いることができ、接着や貼着や融着などの手法を取ることもできる。なお第二カバー部位の端部と本体部と取付け部をこの順で重ね合わせて取付け部を最も裏側に配置させてもよい。
【0048】
また本実施形態では、各カーペット部材31,32の構成(形状,寸法,取付け位置,構成部位など)を例示したが、カーペット部材の構成を限定する趣旨ではない。例えばカーペット部材は、本体部と取付け部を一体化した構成とすることができ、必要に応じて取付け部を省略することもできる。また助長部として、切れ込み部を兼用する構成を例示したが、助長部として、カーペット部材の適宜の位置に設けた孔部や切れ込みやスリットを例示でき、助長部と切れ込み部を別に設けることもできる。なお切れ込み部の形状も適宜変更可能であり、三角状等の多角形状や、半円形状や半楕円形状などの各種形状を取り得る。また誤組付け部として、第一カーペット部材の一部の形状や同部材に付された着色部を用いることができ、必要に応じて誤組付け部を省略することができる。またスリット部の形状も適宜変更可能であり、例えば上面視でH字状のほか、L字状やT字状や十字状などの各種の形状を取り得るとともに、各スリット部位も直線状のほか、適宜の向きに湾曲又は傾斜していてもよい。例えば第一スリット部位に対して第二スリット部位は交差状に配置されていればよく、例えば矢印状をなすように各スリット部位を交差させることができる。
【0049】
またシートパッドに対する取付け部の取付け手法は、留具を用いる場合のほか、接着や貼着や融着などの手法を例示できる。また留具として、輪状のワイヤ材のほか、ボルト材やクリップやステープルなどの各種部材を用いることができる。そして突出部の構成も、適宜変更可能であり、例えば取付け部の外周縁全て(又は大部分)に突出部を設けることもでき、この場合には、シートパッドに取付けるべき突出部を必要に応じて選択することができる。
【0050】
また本実施形態では、各貫通孔11,12の構成(形状,寸法,形成位置,形成数など)を例示したが、各貫通孔の構成を限定する趣旨ではない。貫通孔は、シートの適宜の位置に設けることができる。また付属部材として、貫通孔に挿通可能な各種の部材を想定することができる。
【0051】
また乗物用シート2の構成(形状,寸法,構成部材など)を例示したが、乗物用シートの構成を限定する趣旨ではない。例えば本実施例では、シートパッド裏側に電装部品を配置したが、本発明の構成は、シートパッド裏側に、電装部品とは無関係に空気の流れが生じる場合にも好適に適用可能である。また本実施例では、シートクッションを一例に説明したが、本発明の構成は、シートバックやヘッドレストなどの各種シート構成部材に適用できる。そして本実施形態の構成は、車両や航空機や電車などの乗物用シート全般に適用できる。