特許第6812232号(P6812232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社熊谷組の特許一覧

<>
  • 特許6812232-杭孔の孔壁検査方法 図000002
  • 特許6812232-杭孔の孔壁検査方法 図000003
  • 特許6812232-杭孔の孔壁検査方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812232
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】杭孔の孔壁検査方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20201228BHJP
   E02D 33/00 20060101ALI20201228BHJP
   E02D 13/06 20060101ALI20201228BHJP
   E02D 5/34 20060101ALI20201228BHJP
   E21B 11/00 20060101ALI20201228BHJP
   G01N 3/40 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   E02D1/00
   E02D33/00
   E02D13/06
   E02D5/34 Z
   E21B11/00 A
   E21B11/00 B
   G01N3/40 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-248020(P2016-248020)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-100559(P2018-100559A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
(72)【発明者】
【氏名】石橋 久義
(72)【発明者】
【氏名】濱田 真
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英彦
(72)【発明者】
【氏名】森 利弘
(72)【発明者】
【氏名】竹田 将夫
(72)【発明者】
【氏名】梅津 朋岳
(72)【発明者】
【氏名】時岡 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】小川 敦
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0233230(US,A1)
【文献】 特許第5932178(JP,B1)
【文献】 特開平03−066824(JP,A)
【文献】 特開昭51−038720(JP,A)
【文献】 特開2015−007321(JP,A)
【文献】 米国特許第04491022(US,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1336787(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D1/00−3/115
5/22−15/10
29/00、29/045−37/00
E21B1/00−49/10
G01N3/00−3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された杭孔の孔壁が支持層に達しているか否かを検査するための杭孔の孔壁検査方法であって、
杭孔を形成するための掘削用のバケットに測定手段を取付けて当該測定手段を孔壁に押し付けて当該孔壁の地盤状態を検査するに際して、
掘削用のバケットとして、杭孔の杭孔底側に拡幅部を形成するための拡幅翼を有した拡底バケットを用いるとともに、
測定手段を、拡幅翼の開翼時の最外部に設け、
拡幅翼の開翼時に測定手段を孔壁に押し付けて当該孔壁の地盤状態を検査することを特徴とする杭孔の孔壁検査方法。
【請求項2】
地盤に形成された杭孔の孔壁が支持層に達しているか否かを検査するための杭孔の孔壁検査方法であって、
杭孔を形成するための掘削用のバケットに測定手段を取付けて当該測定手段を孔壁に押し付けて当該孔壁の地盤状態を検査するに際して、
掘削用のバケットとして、杭孔を形成するためのドリリングバケットを用いるとともに、
測定手段として、ドリリングバケットの外周面より外側に突出した状態、又は、ドリリングバケットの外周面より外側に突出しない状態に設定可能な測定手段を用い、
掘削時においては、測定手段をドリリングバケットの外周面より外側に突出しない状態に設定し、
ドリリングバケットを用いて地盤を掘削して杭孔を形成した後においては、測定手段をドリリングバケットの外周面より外側に突出させて孔壁に押し付けることにより当該孔壁の地盤状態を検査することを特徴とする杭孔の孔壁検査方法。
【請求項3】
孔壁の周方向に沿った複数の部分の地盤状態を検査することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の杭孔の孔壁検査方法。
【請求項4】
測定手段を杭孔の孔壁の周方向に沿って移動させることにより、孔壁の周方向に沿った複数の部分の地盤状態を検査することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の杭孔の孔壁検査方法
【請求項5】
掘削用のバケットを杭孔の上下方向に移動させることにより、測定手段で杭孔の孔壁全体を検査することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の杭孔の孔壁検査方法
【請求項6】
測定手段が孔壁に押し付けられた際に当該測定手段が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の杭孔の孔壁検査方法
【請求項7】
複数の測定手段を設け、各測定手段がそれぞれ孔壁に押し付けられた際に他の測定手段が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の杭孔の孔壁検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭孔の孔壁が杭の支持力を確保できる支持層に達した否かを検査するための杭孔の孔壁検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に穿設した杭孔内に場所打ち杭や既製杭を建て込む場合においては、杭孔底が杭の支持力を確保できる支持層に達したか否かを確認するようにしている(特許文献1参照)。
また、弾性波速度を利用して杭孔の孔壁の固さを判定するためのPS検層プローブ(PS検層用装置)を用いて、杭孔の孔底側の孔壁が支持層に達しているか否かを検査することも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5619263号公報
【特許文献2】特開2015−7321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に開示されたようなPS検層プローブを用いて杭孔の孔底側の孔壁が支持層に達しているか否かを検査する方法では、PS検層プローブと孔壁との間の離間距離の違いや、PS検層プローブの向き等によって、得られる検査結果(せん断波波形)の精度が異なってしまうため、信頼性の高い検査結果が得られないという課題があった。
本発明は、杭孔の孔壁が杭の支持力を確保できる支持層に達したか否かを示す信頼性の高い検査結果を得ることが可能な杭孔の孔壁検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る杭孔の孔壁検査方法は、地盤に形成された杭孔の孔壁が支持層に達しているか否かを検査するための杭孔の孔壁検査方法であって、杭孔を形成するための掘削用のバケットに測定手段を取付けて当該測定手段を孔壁に押し付けて当該孔壁の地盤状態を検査するに際して、掘削用のバケットとして、杭孔の杭孔底側に拡幅部を形成するための拡幅翼を有した拡底バケットを用いるとともに、測定手段を、拡幅翼の開翼時の最外部に設け、拡幅翼の開翼時に測定手段を孔壁に押し付けて当該孔壁の地盤状態を検査することを特徴とする
また、地盤に形成された杭孔の孔壁が支持層に達しているか否かを検査するための杭孔の孔壁検査方法であって、杭孔を形成するための掘削用のバケットに測定手段を取付けて当該測定手段を孔壁に押し付けて当該孔壁の地盤状態を検査するに際して、掘削用のバケットとして、杭孔を形成するためのドリリングバケットを用いるとともに、測定手段として、ドリリングバケットの外周面より外側に突出した状態、又は、ドリリングバケットの外周面より外側に突出しない状態に設定可能な測定手段を用い、掘削時においては、測定手段をドリリングバケットの外周面より外側に突出しない状態に設定し、ドリリングバケットを用いて地盤を掘削して杭孔を形成した後においては、測定手段をドリリングバケットの外周面より外側に突出させて孔壁に押し付けることにより当該孔壁の地盤状態を検査することを特徴とする。
本発明に係る杭孔の孔壁検査方法によれば、測定手段を杭孔の孔壁に押し付けて当該孔壁の地盤状態を検査することにより、孔壁の地盤状態を示す信頼性の高い検査結果を得ることが可能となる。また、測定手段を杭孔の孔壁に押し付けて孔壁が支持層に達したか否かを判定するため、杭孔の孔底側の孔壁の地盤状態を検査する場合でもスライム等の沈殿物が障害とならず、信頼性の高い検査を行うことができる。また、杭孔の孔壁全体を検査することが可能となるため、支持層に到達した孔壁の深さ位置がわかるようになって、当該深さ位置から杭孔の根入り深さを求めることができるようになり、杭底の位置を適切に決めることができるようになる。また、拡底バケット、又は、ドリリングバケットを使用して検査を行うことが可能となる。
また、孔壁の周方向に沿った複数の部分の地盤状態を検査するので、杭孔の孔壁の周囲全体が支持層に達しているか否かを判定できるようになり、杭孔の孔壁の周囲全体が支持層に支持された信頼性の高い杭を施工できるようになる。
また、測定手段を杭孔の孔壁の周方向に沿って移動させることにより、孔壁の周方向に沿った複数の部分の地盤状態を検査することを特徴とする。
また、掘削用のバケットを杭孔の上下方向に移動させることにより、測定手段で杭孔の孔壁全体を検査することを特徴とする。
また、測定手段が孔壁に押し付けられた際に当該測定手段が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達するようにしたことを特徴とする。
また、複数の測定手段を設け、各測定手段がそれぞれ孔壁に押し付けられた際に他の測定手段が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達するようにしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】杭孔底側孔壁検査装置を示す概略図。
図2】測定手段を備えた拡底バケットを示し、(a)は通常時(非拡幅時)の状態を示す斜視図、(b)は拡幅状態を示す斜視図。
図3】測定手段を備えたドリリングバケットを示し、(a)は側面図(一部断面)、(b)は底面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る杭孔の孔壁検査方法(以下「検査方法」と略す)は、杭孔の杭孔底側に拡幅部を形成するための拡底バケットを用いて地盤に形成された杭孔の杭孔底側の孔壁が支持層に達しているか否かを検査するために当該孔壁の地盤状態を検査する方法であり、以下、当該検査方法を実現するための実施形態1に係る杭孔の孔壁検査装置(以下「検査装置」と略す)について説明する。
【0008】
図1に示すように、検査装置1は、アースドリル機等の掘削機2と、掘削機2に昇降可能及び回転可能に取付けられる拡底バケット3と、杭孔底側の孔壁に圧接することが可能なように拡底バケット3の拡幅翼40に設けられて当該孔壁の地盤状態を測定する測定手段4と、測定手段4を孔壁に押し付ける押圧手段とを備える。
【0009】
図1に示すように、掘削機2は、本体21から繰り出し又は巻き上げられるワイヤー22の先端に吊り下げられた掘削回転軸となるケリーバー23の先端部(下端部)に、掘削用のバケットである、図外のドリリングバケット(図3参照)又は上述した拡底バケット3が着脱自在に取付けられる。
そして、本体21に設けられた図外のウインチでワイヤー22を繰り出したり巻き上げることで、ドリリングバケット又は拡底バケット3が昇降可能に構成され、かつ、本体21に支持されたアーム24の先端に配置された回転駆動装置25によりケリーバー23を下方に押し込みながら回転させることで、ドリリングバケット又は拡底バケット3がケリーバー23の中心軸を回転中心として回転可能に構成される。
【0010】
図2に示すように、拡底バケット3は、ケリーバー23の先端部に連結されて拡底バケット3の回転中心軸となる支柱30と、連結板31により支柱30に連結された基部32と、拡幅翼40と、拡幅翼40を拡幅させる拡幅手段とを備える。
【0011】
基部32は、例えば、支柱30を中心とする仮想円筒の一部を形成するように支柱30を介して互いに対向する一対の円弧壁により形成される。
【0012】
拡幅翼40は、支柱30の周囲において周方向に等間隔を隔てて複数個、例えば、2つ設けられる。例えば図2に示すように、支柱30の周囲において周方向に180°隔てた位置にそれぞれ拡幅翼40,40が設けられる。
各拡幅翼40,40は、それぞれ上部拡幅翼41と下部拡幅翼42とを備える。
各下部拡幅翼42,42が、基部32を形成する円弧壁の周方向端部にヒンジ45を介して回転可能に連結されている。
【0013】
通常時(非拡幅時)においては、各拡幅翼40,40の各下部拡幅翼42,42が、支柱30を中心とした仮想円筒の一部を形成するように支柱30を介して互いに対向する一対の円弧壁により形成され、かつ、各拡幅翼40,40のの上部拡幅翼41,41が、支柱30を中心とした仮想の円錐中空体の一部を形成するように支柱30を介して互いに対向する一対の湾曲壁により形成される。当該湾曲壁は、例えば、支柱30を中心とした仮想の円錐中空体の周方向に180°隔てた位置において支柱30に沿って延長する細長の湾曲壁により形成される。
また、拡幅時においては、各拡幅翼40,40の上部拡幅翼41,41及び下部拡幅翼42,42が、支柱30から離れる方向に移動するように構成される。
【0014】
各拡幅翼40,40を拡幅させた状態において支柱30の延長方向に沿って延長する各拡幅翼40,40の最外縁47には、支柱30の延長方向に沿って所定間隔を隔てて配置された複数の掘削爪48,48…が設けられている。
従って、拡底バケット3は、各拡幅翼40,40の上部拡幅翼41,41及び下部拡幅翼42,42を杭孔底で拡幅させながら支柱30を回転させることにより、杭孔底側に、支柱30の中心から拡幅翼40の上部拡幅翼41及び下部拡幅翼42の最外周位置までの距離を半径とした下部円柱状上部円錐状の拡底孔を掘削できる構成となっている。
【0015】
拡幅手段は、例えば、一端がヒンジ52を介して支柱30に連結されて他端がヒンジ54を介して下部拡幅翼42の内面に連結された油圧シリンダー55により構成され、当該油圧シリンダー55に油圧を供給することにより、油圧シリンダー55のピストンロッド56を伸長させて拡幅翼40の上部拡幅翼41及び下部拡幅翼42を支柱30から離れる方向に移動させる構成である。
ヒンジ52,54は、水平方向に回動自在なヒンジにより構成される。
【0016】
測定手段4は、杭孔底側孔壁面に接触して杭孔底側孔壁の地盤状態を検出する圧力センサ、例えば、各拡幅翼40,40の各下部拡幅翼42,42の開翼時の最外部49,49に取付部材4Aを介して取付けられた土圧計により形成される。
【0017】
実施形態1の測定装置を用いた測定方法を説明する。
掘削機2のケリーバー23の先端部に図外のドリリングバケットを取付け、当該ドリリングバケットを用いて地盤を掘削して杭孔を形成した後、ドリリングバケットを拡底バケット3に交換して、この拡底バケット3を杭孔の孔底側に設置する。その後、拡幅手段として油圧シリンダー55を作動させて各拡幅翼40,40を拡幅することにより、各拡幅翼40,40の各下部拡幅翼42,42の開翼時の最外部49,49に取付けられた測定手段4としての土圧計が孔底側の孔壁に押し付けられて当該孔壁の圧力を測定する。
即ち、油圧シリンダー55に油圧を供給することにより測定手段4が孔壁に押し付けられるので、当該油圧シリンダー55が測定手段4を孔壁に押し付ける押圧手段として機能する。
また、実施形態1の測定装置は、測定手段4を複数備え、各測定手段4はそれぞれ孔壁に押し付けられた際に他の測定手段4が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達する反力伝達手段として機能することになる。
【0018】
実施形態1では、例えば、圧力を検出してから所定の圧力値が測定されるまでの下部拡幅翼42の変位量を測定することにより、当該圧力を検出してから所定の圧力値が測定されるまでの下部拡幅翼42の変位量を地盤の剛性を評価するための評価値として評価する。この場合、予め支持層に必要な基準評価値を実験で求めておき、測定した評価値が基準評価値に達していれば(即ち、測定した評価値(変位量)が基準評価値(変位量)以下の場合には)、当該孔底側の孔壁の地盤が支持層に達しているものと判断し、測定した評価値が基準評価値に達していなければ(即ち、測定した評価値(変位量)が基準評価値(変位量)よりも大きい場合には)、当該杭孔の底をさらに掘削して杭孔の深度を深くした後に再度測定を行い、測定した評価値が基準評価値に達するまで、杭孔の深度を深くする。
そして、杭孔底側孔壁の評価値が基準評価値に達した後、当該杭孔内に鉄筋籠を挿入し、杭孔内の泥水をコンクリートに置換して場所打ちコンクリート杭を施工することにより、杭底側の周面が支持層に確実に支持された信頼性の高い場所打ちコンクリート杭を施工できるようになる。
尚、下部拡幅翼42の変位量は、油圧シリンダー55のピストンロッド56の伸長量に対応するので、油圧シリンダー55のピストンロッド56の伸長量を図外の変位センサ(ストロークセンサ)や測距センサ等で測定することで求めるようにすればよい。
【0019】
また、例えば、圧力を検出してから所定の圧力値が測定されるまでの地盤の凹み量を測距センサ等で測定し、この凹み量を地盤の剛性を評価するための評価値として評価してもよい。
また、油圧シリンダー55に一定の油圧を供給してピストンロッド56を伸長させることで土圧計を地盤に押し付けた場合の圧力値を評価値として用いてもよい。
また、ピストンロッド56の先端に測定手段4としての硬度計を設けて当該硬度計を地盤に押し付けることによって、当該硬度計で測定された硬度値を評価値として用いてもよい。
【0020】
実施形態1の検査装置によれば、測定手段4を杭孔底側の孔壁に押し付けることによって、当該孔壁の地盤状態を検査するので、当該孔壁の地盤状態を示す信頼性の高い検査結果を得ることが可能となり、当該孔壁の地盤が支持層に達しているか否かの判定を正確に行えるようになるので、底側の周面が支持層に支持された信頼性の高い杭を施工できるようになる。
また、測定手段4を杭孔底側の孔壁に押し付けて杭孔底側の孔壁が支持層に達したか否かを判定するため、スライム等の沈殿物が障害とならず、信頼性の高い検査を行うことができる。即ち、測定手段4を、スライム等の沈殿物が溜まっている孔底に押し付けるのではなく、孔壁に押し付けて検査を行うため、スライム等の沈殿物が障害とならず、信頼性の高い検査を行うことができる。
また、測定手段4を複数備え、各測定手段4,4は油圧シリンダー55,55でそれぞれ孔壁に押し付けられた際に他の測定手段4が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達する反力伝達手段として機能するので、孔壁の周方向に沿った複数の部分の地盤状態を検査することが可能となり、杭孔の孔壁の周囲全体が支持層に達しているか否かを判定できるようになるので、杭孔の孔壁の周囲全体が支持層に支持された信頼性の高い杭を施工できるようになる。即ち、図2(b)に示すように、2つの測定手段4,4がそれぞれ油圧シリンダー55,55によって杭孔の径方向に沿った反対方向に押圧されて孔壁に突っ張るような状態となって、孔壁の互いに向かい合う2つの部分の地盤状態を一度に検査することが可能となる。従って、支柱30を少しずつ回転させて複数回検査を行うことによって、杭孔の孔壁の周囲全体が支持層に達しているか否かを判定できるようになる。
また、支柱30を少しずつ回転させて検査を行うことにより、孔壁の周方向に沿った各位置での地盤の状態が詳細にわかる。従って、孔壁の周囲の地盤全体が支持層に達していることや、孔壁の周囲の地盤の一定の部分が支持層に達しているが孔壁の周囲の地盤のある部分が支持層に達していないことがわかるようになり、例えば、支持層の境界が杭孔の周囲で斜めになっていることがわかるようになる。孔壁の周囲の地盤全体が支持層に達していない場合、孔壁の周囲の地盤全体が支持層に達するまで杭孔の底をさらに掘削し、孔壁の周囲の地盤全体が支持層に達した後、所望の根入り深さになるまで杭孔の底をさらに掘削することにより、杭を支持層に確実に支持させることができる杭孔を形成することが可能となる。
また、拡底バケット3を使用して検査を行うことが可能となり、経済的かつ効率的に検査を行える。
【0021】
実施形態2
実施形態2に係る検査装置は、アースドリル機等の掘削機2と、掘削機2に昇降可能及び回転可能に取付けられるドリリングバケット6と、杭孔底側の孔壁に圧接することが可能なようにドリリングバケット6の外周面66よりも突出するように設けられて当該孔壁の地盤状態を測定する測定手段4と、測定手段4を孔壁に押し付ける押圧手段とを備える。
【0022】
上述した掘削機2のケリーバー23の先端部に取付けられるドリリングバケット6は、図3に示すように、円筒状のバケット本体61と、バケット本体61の底に開閉可能に取付けられた底蓋62と、底蓋62の外表面に設けられたカッタビット63と、バケット本体61の底側の周面に設けられたサイドカッタ64と、カッタビット63及びサイドカッタ64により切削された土砂をバケット本体61内に取り込むために底蓋62に形成された土砂取込孔65とを備える。
【0023】
例えば、図3(a)に示すように、バケット本体61の外周面66において周方向に互いに180°隔てた位置を中心とする2つの貫通孔67,67をバケット本体61の周壁68に形成し、測定手段4を孔壁に押し付ける押圧手段としての油圧シリンダー70のピストンロッド71が、当該貫通孔67を介してバケット本体61の外周面66より外側に突出したり、バケット本体61の外周面66より外側に突出しない状態となるように、当該油圧シリンダー70がバケット本体61の周壁68に取付部材69を介して取付けられる。
バケット本体61の中心軸と直交する直交軸(直径軸)と各油圧シリンダー70,70の中心軸とが一致するように、各油圧シリンダー70,70がバケット本体61に取付けられることが好ましいが、バケット本体61の中心軸と直交する直交軸(直径軸)と各油圧シリンダー70,70の中心軸とが一致しないように各油圧シリンダー70,70がバケット本体61に取付けられた構成であっても構わない。
尚、図3(a)に示すように、各油圧シリンダー70,70のシリンダー72,72同士を連結部材73で連結した構成とすることで、各測定手段4,4が油圧シリンダー70,70でそれぞれ孔壁に押し付けられた際に他の測定手段4が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達する反力伝達手段として機能するように構成されている。例えば、バケット本体61の中心軸と直交する直交軸(直径軸)と各油圧シリンダー70,70の中心軸とが一致するように配置されて、各油圧シリンダー70,70のピストンロッド71,71がそれぞれ孔壁の周方向に沿った互いに180°離れた位置に突っ張るように各測定手段4,4を押し付けた際に、各測定手段4,4が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達する反力伝達手段として機能するように構成されている。
即ち、測定手段4を複数備え、各測定手段4,4は油圧シリンダー70,70でそれぞれ孔壁に押し付けられた際に他の測定手段4が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達する反力伝達手段として機能するように構成されている。
【0024】
測定手段4は、杭孔底側孔壁面に接触して杭孔底側孔壁の地盤状態を検出する圧力センサ、例えば、各油圧シリンダー70,70の各ピストンロッド71,71の先端に取付けられた土圧計により形成される。
【0025】
実施形態2の測定装置を用いた測定方法を説明する。
ドリリングバケット6を用いて地盤を掘削して杭孔を形成した後、各油圧シリンダー70,70を動作させて各ピストンロッド71,71の先端に設けられた土圧計を孔底側の孔壁に押し付けて当該孔壁の圧力を測定する。
実施形態2の場合、ドリリングバケット6を用いて地盤を掘削して杭孔を形成した後、そのまま連続して、杭孔底側孔壁の地盤状態の検査を行うことが可能となる。即ち、杭孔施工と杭孔底側孔壁の地盤状態の検査とを連続して行うことが可能となる。
【0026】
実施形態2では、例えば、圧力を検出してから所定の圧力値が測定されるまでの各油圧シリンダー70,70の各ピストンロッド71,71の変位量を図外の変位センサ(ストロークセンサ)や測距センサ等で測定することにより、当該圧力を検出してから所定の圧力値が測定されるまでの各油圧シリンダー70,70の各ピストンロッド71,71の変位量を地盤の剛性を評価するための評価値として評価する。この場合も、実施形態1と同様に、予め支持層に必要な基準評価値を実験で求めておき、測定した評価値が基準評価値に達していれば(即ち、測定した評価値(変位量)が基準評価値(変位量)以下の場合には)、当該孔底側の孔壁の地盤が支持層に達しているものと判断し、測定した評価値が基準評価値に達していなければ(即ち、測定した評価値(変位量)が基準評価値(変位量)よりも大きい場合には)、当該杭孔の底をさらに掘削して杭孔の深度を深くした後に再度測定を行い、測定した評価値が基準評価値に達するまで、杭孔の深度を深くする。
尚、例えば、圧力を検出してから所定の圧力値が測定されるまでの地盤の凹み量を測距センサ等で測定し、この凹み量を地盤の剛性を評価するための評価値として評価してもよい。
また、油圧シリンダー70に一定の油圧を供給してピストンロッド71を伸長させることで土圧計を地盤に押し付けた場合の圧力値を評価値として用いてもよい。
また、ピストンロッド71の先端に測定手段4としての硬度計を設けて当該硬度計を地盤に押し付けることによって、当該硬度計で測定された硬度値を評価値として用いてもよい。
【0027】
実施形態2の検査装置によれば、実施形態1と同様に、測定手段4を杭孔底側の孔壁に押し付けることによって、当該孔壁の地盤状態を検査するので、当該孔壁の地盤状態を示す信頼性の高い検査結果を得ることが可能となり、当該孔壁の地盤が支持層に達しているか否かの判定を正確に行えるようになるので、底側の周面が支持層に支持された信頼性の高い杭を施工できるようになる。
また、測定手段4を杭孔底側の孔壁に押し付けて杭孔底側の孔壁が支持層に達したか否かを判定するため、スライム等の沈殿物が障害とならず、信頼性の高い検査を行うことができる。
また、測定手段4を複数備え、各測定手段4,4は油圧シリンダー70,70でそれぞれ孔壁に押し付けられた際に他の測定手段4が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達する反力伝達手段として機能するように構成されているので、孔壁の周方向に沿った複数の部分の地盤状態を検査することが可能となり、杭孔の孔壁の周囲全体が支持層に達しているか否かを判定できるようになるので、杭孔の孔壁の周囲全体が支持層に支持された信頼性の高い杭を施工できるようになる。
また、ドリリングバケット6を少しずつ回転させて検査を行うことにより、孔壁の周方向に沿った各位置での地盤の状態が詳細にわかる。従って、孔壁の周囲の地盤全体が支持層に達していることや、孔壁の周囲の地盤の一定の部分が支持層に達しているが孔壁の周囲の地盤のある部分が支持層に達していないことがわかるようになり、例えば、支持層の境界が杭孔の周囲で斜めになっていることがわかるようになる。孔壁の周囲の地盤全体が支持層に達していない場合、孔壁の周囲の地盤全体が支持層に達するまで杭孔の底をさらに掘削し、孔壁の周囲の地盤全体が支持層に達した後、所望の根入り深さになるまで杭孔の底をさらに掘削することにより、杭を支持層に確実に支持させることができる杭孔を形成することが可能となる。
また、ドリリングバケット6を使用して検査を行うことが可能となり、経済的かつ効率的に検査を行える。
【0028】
実施形態3
回転駆動装置25を備えた掘削機2により、実施形態1又は実施形態2の測定手段4を杭孔底側の孔壁の周方向に沿って移動させて、当該孔壁の周方向に沿った複数の部分の地盤状態を検査する。即ち、測定手段4を杭孔底側の孔壁の周方向に沿って移動させる移動手段としての回転駆動装置25を備えたので、杭孔底側の孔壁の周囲全体が支持層に達しているか否かを判定できるようになり、底側の周囲全体が支持層に支持された信頼性の高い杭を施工できるようになる。また、孔壁の周囲の地盤全体が支持層に達していることや、孔壁の周囲の地盤の一定の部分が支持層に達しているが孔壁の周囲の地盤のある部分が支持層に達していないことがわかるようになり、杭を支持層に確実に支持させることができる杭孔を形成することが可能となる。
【0029】
尚、拡底バケットは、拡幅翼を拡幅できるように構成されていれば、上述した構成以外の拡底バケットを用いてもかまわない。例えば、特開2008−14007号公報に開示されたような拡底バケット、即ち、拡幅手段が、上部開口の筒状に形成されて筒の周面における互いに180度隔てた位置に筒の延長方向に長い一対のガイド溝を備えた支柱と、支柱の上部開口を介して支柱内に挿入されたケリーバの先端に連結されて両端が一対のガイド溝を介して支柱の外側に突出するように設けられた伝達軸部と、一端が伝達軸部の一端に自在継手を介して連結されて他端が一方の拡幅翼の下部内面に自在継手を介して連結された一方の拡幅動作軸部(リンク)と、一端が伝達軸部の他端に自在継手を介して連結されて他端が他方の拡幅翼の下部内面に自在継手を介して連結された他方の拡幅動作軸部(リンク)と、を備えた構成の拡底バケットを用いるようにしてもよい。
【0030】
また、上記では、測定手段を拡底バケットやドリリングバケットに取付けた検査装置を例示したが、杭孔を形成した後に、例えば、上述したバケット本体61と同じような円筒体に油圧シリンダーを取付けて当該油圧シリンダーのピストンロッドの先端に測定手段を備えた構成の検査装置を用いてもよい。つまり、検査装置には掘削機能は必要ないので、掘削機能を備えない基体に油圧シリンダー等の押圧手段及び土圧計等の測定手段を設けた専用の検査装置を用いてもよい。
【0031】
また、上記では、測定手段4として土圧計を用いた例を示したが、測定手段は、単に孔壁に押し当てられる手段、あるいは、単に孔壁に貫入する手段であってもよい。
単に孔壁に押し当てられる手段、例えば、孔壁を押圧する押圧板等の押圧部により測定手段を構成した場合、油圧シリンダー等の押圧手段により押圧部を介して孔壁に所定の荷重を加えた場合の孔壁の変位量(油圧シリンダーのピストンロッドの伸長量)を評価値として用いればよい。即ち、支持層として必要な孔壁の条件として、予め、孔壁に加える所定の荷重と当該所定の荷重を加えた場合の孔壁の所定の変位量との関係を求めておいて、孔壁に所定の荷重を加えた場合に孔壁の変位量が所定の変位量よりも小さければ当該孔壁が支持層に達していると判定する。
尚、当該押圧部は、例えば、先端部を湾曲面状あるいは先端部を球面状等に形成して孔壁面に接触する面積を大きくすることで孔壁に貫入しにくいように構成されたものを用いることが好ましい。
また、単に孔壁に貫入する手段、例えば、孔壁を貫入する貫入棒等の貫入部により測定手段を構成した場合、油圧シリンダー等の押圧手段により貫入部を介して孔壁に所定の荷重を加えた場合の孔壁に対する貫入部の貫入量(油圧シリンダーのピストンロッドの伸長量)を評価値として用いればよい。即ち、支持層として必要な孔壁の条件として、予め、孔壁に加える所定の荷重と当該所定の荷重を加えた場合の貫入部の所定の貫入量との関係を求めておいて、孔壁に所定の荷重を加えた場合に貫入部の貫入量が所定の貫入量よりも小さければ当該孔壁が支持層に達していると判定する。
尚、当該貫入部は、例えば、先端部を円錐状、角錐状、先鋭状、柱状等に形成して孔壁面に接触する面積を小さくすることで孔壁に貫入しやすいように構成されたものを用いることが好ましい。
また、油圧シリンダー等の押圧手段を操作して上述した測定手段としての押圧部や貫入部を杭孔の孔壁の地盤に押し付けて当該地盤に所定の荷重を加えた場合の押圧抵抗や貫入抵抗を評価値として用いてもよい。この場合、支持層として必要な地盤の条件として、予め、地盤に加える所定の荷重と当該所定の荷重を加えた場合の押圧抵抗や貫入抵抗との関係を求めておいて、孔壁の地盤に所定の荷重を加えた場合に押圧抵抗や貫入抵抗が所定値よりも大きければ当該孔壁が支持層に達していると判定する。
上述した評価値としての孔壁の変位量(地盤の沈み込み量)、貫入部の貫入量は、測定器としての図外の変位センサ(ストロークセンサ)や測距センサ等で測定すればよい。また、上述した評価値としての押圧抵抗、貫入抵抗は、測定器としての油圧シリンダーへの油圧供給量、あるいは、上述した押圧部や貫入部の先端に設けた図外の測定器としてのロードセル等で計測される荷重値等で測定すればよい。
【0032】
また、各実施形態で説明した検査装置では、測定手段4を複数備え、各測定手段4はそれぞれ孔壁に押し付けられた際に他の測定手段4が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達する反力伝達手段として機能する構成のものを例示したが、測定手段4は少なくとも1つ備えていればよい。この場合、当該測定手段4を孔壁に押し付ける押圧手段と、当該測定手段4が孔壁に押し付けられた際に当該測定手段4が孔壁から受ける反力を孔壁に伝達する反力伝達手段とを備えた構成とすればよい。
【0033】
また、測定手段4を3個以上設けても良い。この場合、孔壁の周方向に沿って一定の間隔を隔てて設けることが好ましい。例えば、孔壁の周方向に沿って120°の間隔を隔てて3つ設けたり、孔壁の周方向に沿って90°の間隔を隔てて4つ設ける。
【0034】
また、上記では、杭孔底側の孔壁を検査する例を示したが、本発明の検査装置1及び検査方法によれば、杭孔の孔壁全体を検査することも可能となる。
例えば、バケット本体61の外周面66に測定手段4を備えたドリリングバケット6を回転させて地盤を少しづつ掘削し、掘削後の孔の孔壁の状態を、測定手段4を作動させて検査することにより、杭孔の孔壁の状態を地上側から順番に検査していくことが可能となり、杭孔の孔壁全体を検査することが可能となる。この場合、支持層に到達した孔壁の深さ位置がわかるようになるので、当該深さ位置から杭孔の根入り深さを求めることができるようになり、杭底の位置を適切に決めることができるようになる。
【0035】
また、例えば、ドリリングバケット6により杭孔又は杭孔の一部を形成した後、ドリリングバケット6を地上側である杭孔開口側に移動させ、測定手段4を作動させて孔壁の状態を検査する作業を杭孔開口側から杭孔の底側に向けて実施していくことにより、孔壁全体を連続的に検査することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 杭孔の孔壁検査装置、3 拡底バケット、4 測定手段、
6 ドリリングバケット、25 回転駆動装置(移動手段)、40 拡幅翼、
49 拡幅翼の開翼時の最外部、55,70 油圧シリンダー(押圧手段)、
66 ドリリングバケットの外周面。
図1
図2
図3