特許第6812278号(P6812278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6812278-油脂含有排水処理装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812278
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】油脂含有排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/28 20060101AFI20201228BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   C02F3/28 B
   C02F1/24 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-48706(P2017-48706)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-149513(P2018-149513A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 庸平
(72)【発明者】
【氏名】長田 啓司
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−210585(JP,A)
【文献】 特開平08−182998(JP,A)
【文献】 特開2006−255490(JP,A)
【文献】 特開2006−205087(JP,A)
【文献】 特開平08−182996(JP,A)
【文献】 特開平07−251187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28− 3/34
C02F 3/02− 3/10
C02F 11/00− 11/20
B09B 1/00− 5/00
C02F 1/20− 1/26
C02F 1/30− 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂含有排水を油脂含有物と分離水とに分離する油脂分離部と、
油脂分解菌が固定された担体が導入され、前記油脂分離部で分離した前記油脂含有物を嫌気性処理する嫌気性処理部と、
を有し、
嫌気性処理前又は嫌気性処理中の前記油脂含有物に対して、前記油脂含有排水を混合するか、または、乳化剤を添加することによって、前記油脂含有物の粘性を低下させる、油脂含有排水処理装置。
【請求項2】
前記担体は、油脂成分が付着可能である、請求項1記載の油脂含有排水処理装置。
【請求項3】
前記油脂分解菌は、前記嫌気性処理部に対して前記担体を導入する前に、前記担体に対して固定される、請求項1又は2に記載の油脂含有排水処理装置。
【請求項4】
前記嫌気性処理部からの処理水に含まれる前記担体を前記処理水から分離して回収し、前記担体を前記嫌気性処理部に返送する担体回収部を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の油脂含有排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂含有排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水処理において油脂は生分解が困難であることが知られている。このため、排水中の油脂成分を分離回収して除去した後に、排水とは個別に処理を行う方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−31206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排水から分離された油脂成分は、油脂分解菌により分解される。しかしながら、油脂分解菌は増殖速度が遅く、油脂分解菌による処理の効率が低下することが考えられる。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、油脂含有排水中の油脂成分の処理を好適に行うことが可能な油脂含有排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る油脂含有排水処理装置は、油脂含有排水を油脂含有物と分離水とに分離する油脂分離部と、油脂分解菌が固定された担体が導入され、前記油脂分離部で分離した前記油脂含有物を嫌気性処理する嫌気性処理部と、を有する。
【0007】
上記の油脂含有排水処理装置によれば、油脂分解菌が固定された担体が導入された嫌気性処理部において油脂含有物の嫌気性処理が行われるため、油脂分解菌を系内に好適に維持することができ、油脂成分の処理を好適に行うことができる。
【0008】
ここで、前記油脂含有排水を嫌気性処理前又は嫌気性処理中の前記油脂含有物と混合させる態様とすることができる。
【0009】
上記のように、油脂含有排水を油脂含有物とが混合することで、油脂含有物の粘性を低くすることができ、嫌気性処理部における油脂分解菌による油脂成分の処理をさらに好適に行うことができる。
【0010】
また、嫌気性処理前又は嫌気性処理中の前記油脂含有物に対して乳化剤を添加する乳化剤添加部を有する態様とすることができる。
【0011】
上記のように、乳化剤を嫌気性処理前又は嫌気性処理中の油脂含有物に対して添加することで、油脂含有物を分散することができ、嫌気性処理部における油脂分解菌による油脂成分の処理をさらに好適に行うことができる。
【0012】
また、前記嫌気性処理部からの処理水に含まれる前記担体を前記処理水から分離して回収し、前記担体を前記嫌気性処理部に返送する担体回収部を有する態様とすることができる。
【0013】
上記のように、担体回収部おいて、処理水から担体を分離して回収し、嫌気性処理部に返送することで、処理水と担体とが混在した状態で処理水が外部に排出することによって、嫌気性処理部内の油脂分解菌が固定された担体の数量が減少することを防ぐことができる。したがって、嫌気性処理部での油脂処理効率の低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油脂含有排水中の油脂成分の処理を好適に行うことが可能な油脂含有排水処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る油脂含有排水処理装置を説明する図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る油脂含有排水処理装置を説明する図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る油脂含有排水処理装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る油脂含有排水処理装置の構成を示す概略図である。油脂含有排水処理装置100は、外部から導入される油脂含有排水である被処理水を導入し、被処理水から油脂成分を多く含む油脂含有物を分離する油脂分離部1と、油脂分離部1において分離された油脂含有物を導入し、嫌気性処理を行う嫌気性処理部2と、を有する。また、油脂含有排水処理装置100は、油脂分離部1に対して被処理水を導入するための配管であるラインL1と、油脂分離部1において油脂含有物が分離された分離水を系外に排出するための配管であるラインL2と、油脂分離部1からの油脂含有物を嫌気性処理部2に導入するラインL3と、嫌気性処理部2からの処理水を系外に排出するラインL4と、嫌気性処理部2からの処理水を分離水のラインL2に導入するラインL5と、を有している。なお、ラインL4及びラインL5は、いずれか一方が設けられていればよい。
【0018】
油脂分離部1は、ラインL1を介して導入される被処理水を、油脂含有物と分離水とに分離する機能を有する。なお、本実施形態において、油脂含有物とは、油脂成分が多く含まれる物質である。また、分離水とは、上記の油脂含有物を被処理水から分離した後の水であり、被処理水と比較して油脂成分の含有量が低減されている。
【0019】
油脂分離部1として、例えば加圧浮上装置を用いることができる。加圧浮上装置を使用すると、被処理水に含まれる油脂成分はスカムとして浮上する。そこでスカムを含む物質を油脂含有物として被処理水から分離除去することで、被処理水を油脂含有物と分離水とに分離することができる。なお、被処理水を油脂含有物と分離水とに分離する方法は加圧浮上方法に限定されない。したがって、油脂分離部1として、加圧浮上装置に代えて、常圧浮上装置、膜式又は遠心分離式の油水分離装置等を用いてもよい。
【0020】
油脂分離部1により分離された油脂含有物はラインL3を介して嫌気性処理部2に導入される。また、油脂分離部1により分離された分離水はラインL2を介して系外に排出される。ラインL2の後段には、例えば、分離水中の有機物を分解処理するための嫌気性処理又は好気性処理を行う処理槽等が設けられていてもよい。
【0021】
嫌気性処理部2は、油脂分離部1により分離された油脂含有物の嫌気性処理を行う機能を有する。嫌気性処理部2は嫌気性処理槽であり、槽内に油脂含有物を導入して、嫌気性処理を行う。嫌気性処理部2では、油脂分解性を有する嫌気性の油脂分解菌により油脂含有物に含まれる油脂成分の分解が行われる。
【0022】
嫌気性処理部2には、油脂分解菌が固定された担体が導入されている。担体としては、例えば、活性炭又は樹脂性の担体を用いることができる。樹脂製の担体としては、例えば、ポリマー材料等が挙げられる。担体の形状は、油脂分解菌を固定可能であれば、特に限定されず、例えば、立方体、直方体、円柱状、円筒状、ひも状、平面状などいずれでもよい。なお、担体として活性炭を用いる場合には、粒径が1mm以上であり、細孔はマクロ孔が多いものを用いることが好ましい。担体は槽内での移動が可能な状態(移動床)であってもよいし、槽内に固定された状態(固定床)であってもよい。移動床であるか固定床であるかに応じて担体の形状が適宜選択される。
【0023】
担体に付着される油脂分解菌は、油脂分解性を有する菌から選択することができる。このような油脂分解菌として、Acinetobacter,Aeromonas,Anaerolinacea,Anaerosinus,Aspergillus,Bacillus,Burkholderia,Candida,Desulfovibrio,Geotrichum,Propionispora,Pseudoaltermonas,Pseudomonas,Psychrobacter,Pyrococcus,Rhodococcus,Syntrophomonas,Syntrophothermus,Thermodesulfovibrio,Thermotoga,Thermomycesが挙げられる。上記の油脂分解菌のうち1以上の菌が選択されて担体に付着される。油脂分解菌は、嫌気性処理部2に対して担体を導入する前に、担体に対して固定してもよいし、導入後に馴養することで固定してもよい。
【0024】
嫌気性処理部2に対して油脂含有物が導入されると、担体に固定された油脂分解菌により、嫌気性環境下において油脂成分の分解が行われる。なお、嫌気性処理部2には、油脂含有物と油脂分解菌との混合を促進するための攪拌機等が設けられていてもよい。嫌気性処理部2に対して導入される油脂含有物は、油脂成分の含有量が大きいため、油脂成分の分解は時間をかけて(数十時間〜数十日間)行われる。この結果、嫌気性処理部2において、油脂含有物に含まれるスカム等が消化され、油脂成分の加水分解及びβ酸化が進んだ油脂分解物が得られる。油脂分解物は、嫌気性処理部2からラインL4を介して系外に排出されてもよい。また、油脂分解物は、油脂成分の分解が進んだ状態となるので、嫌気性処理部2からラインL5を介して、分離水と混合した状態で後段の処理槽等に導入する構成としてもよい。
【0025】
このように、本実施形態に係る油脂含有排水処理装置100では、油脂含有排水である被処理水を油脂分離部1において油脂含有物と分離水とに分離した後、油脂含有物について嫌気性処理部2において嫌気性処理を行う。嫌気性処理部2には、油脂分解菌が固定された担体が導入されているため、油脂成分の分解を好適に行うことができる。
【0026】
従来から、油脂含有排水から油脂を分離除去する方法が種々検討されていた。しかしながら、油脂含有排水から分離除去された油脂成分をどのように処理するかについては、これまで十分な検討がなされていなかった。具体的には、油脂含有排水から分離除去された油脂成分について、分離水とは別に処理を行うこと自体は検討されていたが、他の有機物の分解速度よりも分解速度が遅い油脂成分を処理する際の処理効率等を考慮した検討は十分になされていなかった。
【0027】
これに対して、本実施形態に係る油脂含有排水処理装置100では、油脂分解菌が固定された担体が導入された嫌気性処理部2において油脂含有物の嫌気性処理を行う構成とすることで、油脂成分の分解が好適に行われる。油脂分解菌は他の有機物を分解する菌類と比較して増殖速度が遅いため、槽内での菌数が油脂成分の分解について不十分となることが考えられる。この点について、本実施形態に係る油脂含有排水処理装置100では、油脂分解菌が固定された担体を導入して嫌気性処理を行うことで、油脂分解菌の菌数をある程度確保した状態から嫌気性処理を行うことができるため、油脂分解菌を系内に好適に維持することができ、油脂成分の処理効率(分解効率)を高めることができる。
【0028】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る油脂含有排水処理装置の構成を示す概略図である。第2実施形態に係る油脂含有排水処理装置200は、第1実施形態に係る油脂含有排水処理装置100と比較して、嫌気性処理部2に対して乳化剤を添加する乳化剤添加部3と、被処理水の一部を嫌気性処理部2に対して導入するラインL6と、を有する点が相違する。
【0029】
乳化剤添加部3は、嫌気性処理部2に対して乳化剤を添加する。乳化剤は、嫌気性処理部2内の油脂含有物を槽内に分散させることを目的として添加される。嫌気性処理部2には、前段の油脂分離部1を経て、油脂成分の含有量が増し水分の含有量が低減された油脂含有物が導入される。そのため、油脂含有物は粘性が高くなり、担体に固定された油脂分離菌との接触が不十分になる可能性がある。そこで、油脂含有排水処理装置200においては、乳化剤添加部3により乳化剤を添加する構成とすることで、油脂含有物の粘性を低下させて、油脂含有物中の油脂成分を分散させることで、油脂成分の処理効率を高めることができる。
【0030】
添加される乳化剤の種類は特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ドデシル硫酸ナトリウム、ツイーン80(ポリソルベート80)等を用いることができる。なお、本実施形態に係る乳化剤とは、食品用の乳化剤に限定するものではない。したがって、界面活性剤全般のことが本実施形態に係る乳化剤に含まれる。また、乳化剤の添加量についても、特に限定されないが、例えば、添加量を1%〜20%とすることができる。乳化剤の添加量は、油脂含有物の粘性に応じて設定されてもよい。
【0031】
被処理水を嫌気性処理部2に導入するラインL6は、乳化剤添加部3による乳化剤の添加と同様に、油脂含有物における油脂成分の分散を促進するために設けられる。被処理水は、油脂成分を含有する有機性排水であるが、被処理水には乳化剤が添加されている場合も多い。したがって、乳化剤を含む被処理水を、ラインL6を介して嫌気性処理部2に導入する構成とすることで、乳化剤を添加する場合と同様に、油脂含有物の粘性を低下させて、油脂含有物中の油脂成分を分散させることで、油脂成分の処理効率を高めることができる。嫌気性処理部2に導入する被処理水の量については、油脂含有物の粘性に応じて設定することができる。
【0032】
なお、乳化剤が添加されていない被処理水を用いる場合にも、被処理水の一部を嫌気性処理部2に対して導入してもよい。この場合でも油脂含有物の分散による粘性低下という効果が得られる。
【0033】
なお、油脂含有排水処理装置200の装置構成に代えて、乳化剤添加部3と、被処理水の一部を導入するラインL6と、のいずれか一方のみを有していてもよい。また、嫌気性処理部2に対して被処理水を導入することに代えて、分離水を導入する構成としてもよい。また、乳化剤添加部3は、嫌気性処理部2において、油脂含有物に対して乳化剤を添加するのではなく、嫌気性処理部2よりも前段で油脂分離部1において分離された油脂含有物に対して添加する構成としてもよい。また、被処理水と油脂含有物とを混合するためのラインL6も嫌気性処理部2よりも前段で油脂分離部1において分離された油脂含有物と混合される構成であってもよい。このように、乳化剤添加部3及び被処理水の一部を導入するラインL6は、嫌気性処理部2よりも前段に設けられていてもよい。
【0034】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係る油脂含有排水処理装置の構成を示す概略図である。第3実施形態に係る油脂含有排水処理装置300は、第1実施形態に係る油脂含有排水処理装置100と比較して、嫌気性処理部2からの処理水のうち、担体が混在している処理水から担体を回収する担体回収部4と、嫌気性処理部2から処理水を担体回収部4へ導入するラインL7と、担体回収部4からの処理水を分離水が流れるラインL2に対して導入するラインL8と、を有する点が相違する。
【0035】
本実施形態に係る油脂含有排水処理装置300は、嫌気性処理部2に対して導入される担体が槽内を移動可能な状態(移動床)である場合に有効な装置である。上述したように、嫌気性処理部2では、油脂含有物の油脂成分を分解するが、油脂含有物の粘性が高い場合には、処理水を外部に排出する際又は分離水のラインL2に導入する際に、未分解の油脂成分が付着した担体が、処理水中に混ざった状態で処理水と共に嫌気性処理部2の外部へ移動する可能性がある。担体が嫌気性処理部2の外部へ移動すると、油脂分解菌が嫌気性処理部2外へ排出されることになるため、嫌気性処理部2での油脂処理効率が低下する可能性がある。そこで、油脂含有排水処理装置300では、ラインL7を介して嫌気性処理部2からの処理水を導入して、処理水中の担体を回収する担体回収部4を有する。なお、処理水に担体が混合していないことが明らかな場合には、担体回収部4を介さずラインL5等によって処理水を嫌気性処理部2から排出する構成としてもよい。
【0036】
担体回収部4において処理水中の担体を回収する方法として、本実施形態では、担体に付着している未分解の油脂成分を分離除去して、担体を沈殿させることで、担体を処理水から分離する方法を用いている。担体に付着している未分解の油脂成分を分離除去するために、担体回収部4に対して乳化剤を添加する乳化剤添加部5が設けられている。このように、処理水に対して乳化剤添加部5から乳化剤を添加して、攪拌機等により攪拌すると、担体と油脂成分とを離間させることができる。油脂成分が分離された担体は、処理水中に沈殿する。担体回収部4では、沈殿することで処理水から分離された担体を回収して嫌気性処理部2に対して返送する。
【0037】
乳化剤添加部5による乳化剤の添加量は特に限定されないが、例えば、添加量を1%〜20%とすることができる。乳化剤の添加量は、処理水の粘性に応じて設定されてもよい。なお、担体回収部4において処理水中の担体を回収する方法は、上記の乳化剤を用いた方法に限定されない。例えば、スクリーンを利用したろ過又は遠心分離等により、処理水中の担体を回収する方法を用いることもできる。
【0038】
担体回収部4において、担体と分離された処理水は、ラインL8を介して分離水と混合した状態で後段の処理槽等に導入する構成としてもよい。また、図3において破線のラインL9として示すように、油脂分離部1の前段のラインL1に返送する構成としてもよい。さらに、担体回収部4から図示しないラインを介して系外に排出する構成としてもよい。
【0039】
第3実施形態に係る油脂含有排水処理装置300によれば、嫌気性処理部2からの処理水を担体回収部4に導入し、担体回収部4において、担体から未分解の油脂成分を剥離することで、処理水と担体とを分離する。そして、担体を回収して嫌気性処理部2に対して返送する。したがって、油脂含有物から得られる処理水と担体とが混在した状態で処理水が外部に排出することによって、嫌気性処理部2内の油脂分解菌が固定された担体の数量が減少することを防ぐことができる。したがって、嫌気性処理部2での油脂処理効率の低下を防ぐことができる。なお、担体回収の方法によっては、油脂成分が十分に行われない状態で担体が回収される場合もあるが、その場合であっても、嫌気性処理部2内の油脂分解菌が固定された担体の数量が減少することを防ぐことができる。
【0040】
以上、本発明の一形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず様々な変形態様が可能である。例えば、油脂分離部1、嫌気性処理部2、及び、担体回収部4を構成する各槽の形式は特に限定されず、種々の形態を取ることができる。
【0041】
また、上記実施形態では、第1〜第3実施形態として説明したが、各実施形態で説明した構成を組み合わせた装置構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…油脂分離部、2…嫌気性処理部、3,5…乳化剤添加部、4…担体回収部、100,200,300…油脂含有排水処理装置。
図1
図2
図3