特許第6812314号(P6812314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812314
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】鉄道システムの制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B60M 3/00 20060101AFI20201228BHJP
   B60M 3/06 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   B60M3/00 D
   B60M3/06 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-141783(P2017-141783)
(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公開番号】特開2019-18824(P2019-18824A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮内 努
(72)【発明者】
【氏名】田端 宣克
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小熊 賢司
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−154355(JP,A)
【文献】 特開2015−036280(JP,A)
【文献】 特開2015−107699(JP,A)
【文献】 特開2012−105407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 3/00
B60M 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の変電所と地上蓄電装置から架線を介して車両に給電するための鉄道システムの制御装置であって、
複数の前記変電所の稼働状況と電圧および前記地上蓄電装置の充電量を管理する電力管理装置と、電力管理装置からの放電電流指令に応じて放電を行う地上蓄電装置を備え、
前記電力管理装置は、複数の前記変電所の一部が不稼働状態になった時に、前記地上蓄電装置に最も近い位置の稼働している変電所を抽出し、抽出した変電所の電圧に応じて前記地上蓄電装置に与える放電電流指令を定め、前記地上蓄電装置の放電量を決定することを特徴とする鉄道システムの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道システムの制御装置であって、
前記変電所からの電力を受けて走行する複数の車両の在線状況を管理する運行管理装置を備え、前記電力管理装置は、複数の前記変電所の一部が不稼働状態になった時に、前記地上蓄電装置に最も近い位置の稼働している変電所を抽出し、当該変電所の電圧と前記運行管理装置が有する車両在線状況に応じて前記地上蓄電装置に与える放電電流指令を定め、前記地上蓄電装置の放電量を調整することを特徴とする鉄道システムの制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄道システムの制御装置であって、
前記電力管理装置は、複数の変電所の中で稼働かつ前記地上蓄電装置に最も近い変電所の電圧と、前記運行管理装置が有する車両在線状況と、地上蓄電装置の充電量を用いて地上蓄電装置の放電量を調整することを特徴とする鉄道システムの制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鉄道システムの制御装置であって、
前記電力管理装置は、前記地上蓄電装置が放電を行う閾値である放電開始電圧と、放電を継続するかどうかを判定する放電継続判定電圧を充電量が小さくなるほど低くするように定めることを特徴とする鉄道システムの制御装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の鉄道システムの制御装置であって、
記電力管理装置は、前記地上蓄電装置が放電を行う閾値である放電開始電圧と、放電を継続するかどうかを判定する放電継続判定電圧を在線する車両数が少なくなるほど高くするように定めることを特徴とする鉄道システムの制御装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の鉄道システムの制御装置であって、
放電開始電圧および放電継続判定電圧は、駅中間に在線しているすべての車両が隣接駅に到達できるまでの時間、蓄電装置が稼働するように定めることを特徴とする鉄道システムの制御装置。
【請求項7】
複数の変電所と地上蓄電装置から架線を介して車両に給電するための鉄道システムの制御方法であって、
前記地上蓄電装置は、通常運転状態において前記架線との間で電力の授受を行うとともに、複数の前記変電所の一部が不稼働状態になった時に、前記地上蓄電装置に最も近い位置の稼働している変電所における端子電圧に応じて放電量が決定されることを特徴とする鉄道システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所などの電力供給設備からの電力供給を受けて動作する鉄道システムの制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の供給を受けて車両が走行するトロリーバスシステムや鉄道システムにおいて、電力の供給を担う電力供給設備の一部が動作不能になった場合、その他の稼働している電力供給設備の負荷が増大することが考えられる。
【0003】
このような場合に、電力供給設備である変電所の過負荷状態を判定し、過負荷状態と判定したときに、同一電力網に存在する地上蓄電装置あるいは車両に備えた蓄電装置から放電を行うことで電力供給設備である変電所の保護動作を抑制し、電力供給設備を安定的に稼働させるシステムが、例えば特許文献1により開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−79454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で述べている手法では、蓄電装置の充電量を見ておらず、蓄電装置の充電量がなくなった場合には、需要を満たせなくなる。特に、稼働している変電所数が、全体の半数以下となる場合には、この可能性は十分にある。その結果として、車両が駅間に停車することとなり、乗客サービスの低下へとつながる。このような事象を避けるために、稼働している電力供給設備および蓄電装置を最大限活用し、同一電力網の駅間に停車している車両全てを隣接の駅まで運ぶことが求められる。
【0006】
以上のことから本発明においては、電力供給設備の一部が動作不能になった場合に同一路線上の駅間に停車している車両を隣接の駅まで運転することを可能とする鉄道システムの制御装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のことから本発明においては、「複数の変電所と地上蓄電装置から架線を介して車両に給電するための鉄道システムの制御装置であって、複数の変電所の稼働状況と電圧および地上蓄電装置の充電量を管理する電力管理装置と、電力管理装置からの放電電流指令に応じて放電を行う地上蓄電装置を備え、電力管理装置は、複数の変電所の一部が不稼働状態になった時に、地上蓄電装置に最も近い位置の稼働している変電所を抽出し、当該変電所の電圧に応じて地上蓄電装置に与える放電電流指令を定め、地上蓄電装置の放電量を決定することを特徴とする鉄道システムの制御装置」としたものである。
【0008】
また本発明においては、「複数の変電所と地上蓄電装置から架線を介して車両に給電するための鉄道システムの制御方法であって、地上蓄電装置は、通常運転状態において架線との間で電力の授受を行うとともに、複数の変電所の一部が不稼働状態になった時に、地上蓄電装置に最も近い位置の稼働している変電所における端子電圧に応じて放電量が決定されることを特徴とする鉄道システムの制御方法。」としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同一路線上の駅間に停車している車両を隣接の駅まで運転することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1に係る鉄道システムの制御装置の構成例を示す図。
図2】本発明の実施例1に係る電力管理装置105の構成例を示す図。
図3】本発明の実施例1に係る電力管理装置内の放電判定部201の処理フロー例を示す図。
図4】本発明の実施例1に係る地上蓄電装置の充電量に対する放電開始電圧VXおよび放電継続判定電圧VCのグラフの例を示す図。
図5】本発明の実施例1に係る放電電流指令決定部202の処理内容例を示す図。
図6】本発明の制御を鉄道システムに適用した場合の時々刻々の状態を示す図。
図7】本発明の実施例2に係る鉄道システムの制御装置の構成例を示す図。
図8】本発明の実施例2に係る電力管理装置105の構成例を示す図。
図9】本発明の実施例2に係る電力管理装置内の放電判定部201の処理フロー例を示す図。
図10】本発明の実施例2に係る地上蓄電装置の充電量に対する放電開始電圧VXおよび放電継続判定電圧VCのグラフの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明を実現するための鉄道システムの制御装置の構成例を示す図である。
【0013】
図1の鉄道システムの制御装置は、同一電力網を走行する複数の車両101A、101B、101C(以下、車両101と記載したものはこれらの総称とする)に対して架線102を経由して電力を供給する変電所103A、103B、103C、103D(以下、変電所103と記載したものはこれらの総称とする)および電力の授受を行う地上蓄電装置104と、変電所103A、103B、103C、103Dの状態情報151A、151B、151C、151D(以下、状態情報151と記載したものはこれらの総称とする)、地上蓄電装置104の電圧および充電量情報152を基に、地上蓄電装置104に対する放電電流153を決定する電力管理装置105で構成される。状態情報151には、各変電所103の稼働状態と電圧が含まれる。
【0014】
なお、図1において、本来は全ての変電所103A、103B、103C、103Dにより複数の車両101A、101B、101Cに対して架線102を経由して電力を供給しているが、ここでは電力網内の何らかの事故により、変電所103C、103Dは停止されて不稼働状態であり、変電所103A、103Bおよび地上蓄電装置104で車両101に対して電力の供給を行う状態を示している。このように鉄道システムでは、架線102の延長上に沿って、架線102の適宜箇所に変電所103が設けられて、架線102に電力供給を行っている。
【0015】
また図1において、地上蓄電装置104は、架線102に接続されて架線102との間で電力の授受を行う。通常状態における地上蓄電装置104の制御は、電力管理装置105からの指令により、あるいは地上蓄電装置104内の制御装置により、適宜、架線102との間で電力の授受を行うものであるが、先に述べた変電所103C、103Dの不稼働状態では、電力管理装置105から不稼働状態に移行したことの指令を受け、以降の制御は電力管理装置105からの制御指令に従う。
【0016】
図2は、電力管理装置105の機能について示している。電力管理装置105は変電所103C、103Dの不稼働状態の発生前後でその処理内容が相違していてもよいが、少なくとも発生後は以下のように作動する。図2は、変電所103C、103Dの不稼働状態の発生後における処理機能を示している。
【0017】
図2の電力管理装置105は、変電所103の状態情報151と地上蓄電装置104の充電量152を基に、稼働している変電所の中で最も地上蓄電装置104に近い変電所の電圧VSと、地上蓄電装置104から放電するかどうかを判定するための電圧である放電開始電圧VXと、放電開始後、放電を継続するかどうかを判定する電圧である放電継続判定電圧VCと、地上蓄電装置104に対する放電指令254を決定する放電判定部201と、変電所103の電圧VSと記放電開始電圧VXと放電指令254とから地上蓄電装置104に対する放電電流指令153を決定する放電電流指令決定部202とで構成される。
【0018】
図3は、電力管理装置105内の放電判定部201の処理フローについて示している。放電判定部201の処理フローの開始を指示する処理ステップS300は、変電所103C、103Dの不稼働状態の発生を基準として行われる。なお変電所の103の不稼働状態の発生は、変電所103からの通信を介しての変電所停止の連絡による検知、変電所停止に伴う通信途絶による検知、変電所103の架線102側端子電圧の低下による検知などにより電力管理装置105での確認が可能であり、この不稼働状態の発生は、そのまま地上蓄電装置104にも転送されるのがよい。
【0019】
図3に示す電力管理装置105内の放電判定部201の処理フローにおける次の処理ステップS301では、状態情報151を基に、同一電力網上で稼働しつつ地上蓄電装置104に最も近い変電所103Bを選択し、変電所103Bの端子電圧VSを抽出する。なお図3の処理フローの開始条件は、変電所103C、103Dの不稼働状態の発生の確認であることから、地上蓄電装置104に最も近い変電所103として103Bを特定することが可能である。次に処理ステップS302に進む。
【0020】
なお地上蓄電装置104は、一般的には変電所103内に併設されて設けられることが多く、この場合に併設する変電所自体が不稼働状態である場合と、稼働状態である場合が想定されるが、ここではそのいずれであってもよく、併設する変電所以外の最も近い位置の稼働変電所の端子電圧を監視対象とするものとする。
【0021】
処理ステップS302では、地上蓄電装置104の充電量152を基に、放電開始電圧VXと放電開始後、放電を継続するかどうかを判定する電圧である放電継続判定電圧VCを決定する。なお、放電開始電圧VX≦放電継続判定電圧VCが必ず成立する。放電開始電圧VXおよび放電継続判定電圧VCの決定手法について、図4を用いて後述する。次に処理ステップS303に進む。
【0022】
処理ステップS303では、処理ステップS301で得られた変電所103Bの電圧VSと処理ステップS302で算出した放電開始電圧VXとを比較し、変電所電圧VS≦放電開始電圧VXを満たしたならば、処理ステップS304に進む。満たさなければ処理ステップS305に進む。
【0023】
処理ステップS304では、地上蓄電装置104に対する放電指令254として放電指令を与える。処理ステップS304の処理後は、放電判定部201における一連の処理は以上で終了となる。
【0024】
処理ステップS305では、処理ステップS301で得られた変電所103Bの電圧VSと処理ステップS302で算出した電圧VCとを比較し、電圧VS≧放電継続判定電圧VCを満たしたならば、処理ステップS306に進む。満たさなければ、処理ステップS307に進む。
【0025】
処理ステップS306では、地上蓄電装置104に対する放電指令254として放電中止を与える。処理ステップS306の処理後は、放電判定部201における一連の処理は以上で終了となる。
【0026】
処理ステップS307では、地上蓄電装置104に対する放電指令254として前回と同じ指令を用いる。処理ステップS307の処理後は、放電判定部201における一連の処理は以上で終了となる。
【0027】
なお、図3における地上蓄電装置104に対する放電指令254の初期状態は、放電中止とする。
【0028】
図4は、図3の処理ステップS302で使用する地上蓄電装置104の充電量152(以下SOCと表記する)に対する放電開始電圧VXおよび放電継続判定電圧VCのグラフの例である。放電開始電圧VXおよび放電継続判定電圧VCは充電量SOCが小さくなるほど低くすることで充電量SOCに応じた制御が可能となる。放電開始電圧VXの設定方法としては、地上蓄電装置104の使用充電量範囲をSOCa〜SOCb(SOCa<SOCb)とし、変電所の定格出力時の電圧をHV、変電所の200%出力時の電圧をHV2とした場合、以下の(1)(2)(3)式のように設定する方法が考えられる。
[数1]
VX=(HV−HV2)/(SOCb−SOCa)×(充電量−SOCb)+HV
・・・(1)
[数2]
VC=VX+α・・・(2)
[数3]
α=(HV−HV2)/2・・・(3)
なお、HVおよびHV2の値は、駅中間に在線しているすべての車両が隣接駅に到達できるまでの時間、変電所が出力できる領域かつ、HV>HV2であれば任意に変えて良い。例えば、HVを変電所の150%出力時の電圧、HV2を変電所の250%出力時の電圧のようにしても良い。また、連続ではなく所定の充電量刻みに段階的に放電開始電圧VXを変更することでも良い。放電継続判定電圧VCの値を算出するために用いるαに関しても0よりも大きな値であれば任意に設定して良く、また、充電量に応じて変化させても良い。
【0029】
図5は、図2の放電電力指令決定部202で使用する放電電流設定テーブルの一例である。マトリクス上のテーブルの横軸には、今回および前回の放電指令254、電圧VS>放電開始電圧VX、放電電流指令153が示され、マトリクス上のテーブルの縦軸には、4つのケース(ケース1からケース4)ごとに、今回および前回の放電指令254に対応して放電中止および放電指令の区別、電圧VS>放電開始電圧VXに対応してyes、noの区別、放電電流指令153に対応して具体的な大きさを決定する考え方が示されている。
【0030】
図5に示す放電電流設定テーブルでは、地上蓄電装置104の充電量と電圧補償を両立することを目的としているため、放電電流指令153を制御して電圧VSが放電開始電圧VX近辺となるように作成している。
【0031】
具体的に言うと、ケース1では、前回放電指令の状態に係わらず、今回放電指令が放電中止となった状態であり、この時放電指令電流は0とされる。起動当初の状態での制御を表している。
【0032】
ケース2では、前回放電指令と今回放電指令254から、今回の放電指令254が初めてONとなった場合、電圧補償が必要となることから放電を行うことになる。この時、地上蓄電装置104からどの程度放電したら効果が分からないため、放電電流指令153を最大放電電流とする。
【0033】
またケース3では、前回と今回とで放電指令254がONを継続していて、電圧VSが放電開始電圧VXよりも大きい場合には、放電電流指令153を小さくしても、放電開始電圧VX近辺に保てる可能性があることから放電電流を小さくする。図5に示すテーブルでは、前回の放電電流×0.5倍にしている。
【0034】
ケース4では、前回と今回とで放電指令254がONを継続していて、電圧VSが放電開始電圧VXよりも小さい場合には、放電電流指令153が小さいことから放電電流を可能な限り増大する。図5に示すテーブルでは、min(最大放電電流、前回の放電電流×1.5倍)にしている。なお、電流がある一定未満(例えば10A未満)となった場合に0Aとしても良い。
【0035】
図1に示した鉄道システムの状態において、本制御を適用した場合の時々刻々の状態を図6に示す。
【0036】
図6は、4つの状態量を示すグラフであり、横軸は時間である。縦軸の状態量は、上から地上蓄電装置104の充電量、電圧、放電指令の有無、放電電流指令である。上から2番目の電圧では、制御対象とする変電所103Bの電圧、放電開始電圧VXおよび放電継続判定電圧VCを示す。なおすべての列車が隣接駅まで移動を完了した時刻をT11とする。以下、時間経過とともに説明を行う。なお図6では、時刻T0で変電所103C、103Dが停止して不稼働状態となり、変電所103Bの端子電圧が停止し始めた状態から記載している。
【0037】
時刻T0からT1までは、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所103Bの電圧VSが高いことから、地上蓄電装置104への放電指令は行われず、放電電流指令は0となる。また、地上蓄電装置104の充電量は初期値から変動しない。図5に示したテーブルのケース1がこの状態に対応する。
【0038】
時刻T1において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所Bの電圧VSが低くなったことから、地上蓄電装置104への放電指令が行われる。図5に示したテーブルのケース2から、地上蓄電装置104への放電電流は最大放電電流となる。その結果、地上蓄電装置104の充電量が下がる。
【0039】
時刻T2において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電継続判定電圧VCよりも変電所Bの電圧が低いことから、図3のフローに従い、地上蓄電装置104への放電指令が継続される。また、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所Bの電圧が高いことから、図5に示したテーブルのケース3から、地上蓄電装置104への放電電流が前回よりも半減する。さらに地上蓄電装置104から放電が行われているため地上蓄電装置104の充電量が下がる。
【0040】
時刻T3において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電継続判定電圧VCよりも変電所Bの電圧が低いことから、図3のフローに従い、地上蓄電装置104への放電指令が継続される。また、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所Bの電圧が低いことから、図5に示したテーブルのケース4から、地上蓄電装置104への放電電流が前回よりも1.5倍に増加する。さらに地上蓄電装置104から放電が行われているため地上蓄電装置104の充電量が下がる。
【0041】
時刻T4において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電継続判定電圧VCよりも変電所Bの電圧が低いことから、図3のフローに従い、地上蓄電装置104への放電指令が継続される。また、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所Bの電圧が高いことから、図5に示したテーブルのケース3から、地上蓄電装置104への放電電流が前回よりも半減する。さらに地上蓄電装置104から放電が行われているため地上蓄電装置104の充電量が下がる。
【0042】
時刻T5において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電継続判定電圧VCよりも変電所Bの電圧が高いことから、図3のフローに従い、地上蓄電装置104への放電指令が中止となる。これに伴い、図5に示したテーブルのケース1から、地上蓄電装置104への放電電流が0となる。以下、状況が変わる時刻T6までは、この状態が継続され、地上蓄電装置104の充電量は時刻T5からT6までの間で変動しない。
【0043】
時刻T6において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所Bの電圧が低くなったことから、地上蓄電装置104への放電指令が行われる。図5に示したテーブルのケース2から、地上蓄電装置104への放電電流は最大放電電流となる。その結果、地上蓄電装置104の充電量が下がる。
【0044】
時刻T7において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電継続判定電圧VCよりも変電所Bの電圧が低いことから、図3のフローに従い、地上蓄電装置104への放電指令が継続される。また、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所Bの電圧が高いことから、図5に示したテーブルのケース3から、地上蓄電装置104への放電電流が前回よりも半減する。さらに地上蓄電装置104から放電が行われているため地上蓄電装置104の充電量が下がる。
【0045】
時刻T8において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電継続判定電圧VCよりも変電所Bの電圧が低いことから、図3のフローに従い、地上蓄電装置104への放電指令が継続される。また、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所Bの電圧が高いことから、図5に示したテーブルのケース3から、地上蓄電装置104への放電電流が前回よりも半減する。さらに地上蓄電装置から放電が行われているため地上蓄電装置104の充電量が下がる。
【0046】
時刻T9において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電継続判定電圧VCよりも変電所Bの電圧が低いことから、図3のフローに従い、地上蓄電装置104への放電指令が継続される。また、地上蓄電装置104充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所Bの電圧が高いことから、図5に示したテーブルのケース3から、地上蓄電装置104への放電電流が前回よりも半減する。さらに地上蓄電装置104から放電が行われているため地上蓄電装置104の充電量が下がる。
【0047】
時刻T10において、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電継続判定電圧VCよりも変電所Bの電圧が低いことから、図3のフローに従い、地上蓄電装置104への放電指令が継続される。また、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電開始電圧VXよりも変電所Bの電圧が高いことから、図5に示したテーブルのケース3から、地上蓄電装置104への放電電流が前回よりも半減する。さらに地上蓄電装置104から放電が行われているため地上蓄電装置104の充電量が下がる。
【0048】
時刻T11において、すべての車両が隣接駅まで移動し終えたため、変電所Bの電圧が無負荷状態の電圧まで上昇する。この結果、地上蓄電装置104の充電量から定まる放電継続判定電圧VCよりも変電所Bの電圧が高いことから、図3のフローに従い、地上蓄電装置104への放電指令が中止となる。これに伴い、図5に示したテーブルのケース1から、地上蓄電装置104への放電電流が0となる。
【0049】
以上述べたように、稼働している中で最も近い変電所の電圧と地上蓄電装置104の充電量を考慮しながら地上蓄電装置104の放電を行うことで、地上蓄電装置104の充電量を使用範囲内に保った状態ですべての車両を隣接駅まで運ぶことが可能となる。
【0050】
実施例1では、電力管理装置105内で自動的に制御する処理を示したが、各種パラメータを電力管理装置の画面にて示し、その結果を基に指令員が、地上蓄電装置へ放電指令を行う構成でも良い。例えば、図6に示した4つのグラフのうち、上部にある2つのグラフを電力管理装置の画面に出力し、指令員が放電指令を行う構成でも良い。
【実施例2】
【0051】
実施例2では、実施例1の構成にさらに運行管理装置701を含めて鉄道システムの制御装置を構成している。
【0052】
図7の鉄道システムの制御装置は、同一電力網を走行する複数の車両101A、101B、101C(以下、車両101と記載したものはこれらの総称とする)に対して架線102を経由して電力を供給する変電所103A、103B、103C、103D(以下、変電所103と記載したものはこれらの総称とする)および電力の授受を行う地上蓄電装置104と、車両101の在線状況751を管理する運行管理装置701と、変電所103A、103B、103C、103Dの状態情報151A、151B、151C、151D(以下、状態情報151と記載したものはこれらの総称とする)、地上蓄電装置104の電圧および充電量情報152と前記運行管理装置701が有する在線状況751を基に、地上蓄電装置104に対する放電電流指令153を決定する電力管理装置105で構成される。状態情報151には、各変電所103の稼働状態と電圧が含まれる。
【0053】
なお、図7において、本来は全ての変電所103A、103B、103C、103Dにより複数の車両101A、101B、101Cに対して架線102を経由して電力を供給しているが、ここでは電力網内の何らかの事故により、変電所103C、103Dは不稼働状態であり、変電所103A、103Bおよび地上蓄電装置104で車両101に対して電力の供給を行う状態を示している。
【0054】
また図7において、地上蓄電装置104は、架線102に接続されて架線102との間で電力の授受を行う。通常状態における地上蓄電装置104の制御は、電力管理装置105からの指令により、あるいは地上蓄電装置104内の制御装置により、適宜、架線102との間で電力の授受を行うものであるが、先に述べた変電所103C、103Dの不稼働状態では、電力管理装置105から不稼働状態に移行したことの指令を受け、以降の制御は電力管理装置105からの制御指令に従う。なお、図1と同じものについては番号を同一としているため詳細な説明は省略する。
【0055】
図8は、実施例2に係る電力管理装置105の機能について示している。電力管理装置105は変電所103C、103Dの不稼働状態の発生前後でその処理内容が相違していてもよいが、少なくとも発生後は以下のように作動する。図8は、変電所103C、103Dの不稼働状態の発生後における処理機能を示している。
【0056】
図8の電力管理装置105は、変電所103の状態情報151と地上蓄電装置104の充電量152を基に、稼働している変電所の中で最も地上蓄電装置104に近い変電所の電圧VSと地上蓄電装置104と在線状況751から放電するかどうかを判定するための電圧である放電開始電圧VXと、放電開始後、放電を継続するかどうかを判定する電圧である放電継続判定電圧VCと、地上蓄電装置104に対する放電指令254を決定する放電判定部801と、変電所103の電圧VSと前記放電開始電圧VXと放電指令254とから地上蓄電装置104に対する放電電流指令153を決定する放電電流指令決定部202とで構成される。
【0057】
図9は、電力管理装置105内の放電判定部801の処理フローについて示している。放電判定部801の処理フローの開始は、変電所103C、103Dの不稼働状態の発生を基準として行われる。なお変電所の103の不稼働状態の発生は、変電所103からの通信を介しての変電所停止の連絡による検知、変電所停止に伴う通信途絶による検知、変電所103の架線102側端子電圧の低下による検知などにより電力管理装置105での確認が可能であり、この不稼働状態の発生は、そのまま地上蓄電装置104にも転送されるのがよい。
【0058】
なお図9では、処理ステップS302が処理ステップS901に置き換わる以外は、図3と同一であるため、同一のステップについては番号を統一するとともに説明を省略する。
【0059】
図9に示す電力管理装置105内の放電判定部801の処理フローにおける処理ステップS901では、地上蓄電装置104の充電量152と在線状況751を基に、放電開始電圧VXと放電開始後、放電を継続するかどうかを判定する電圧である放電継続判定電圧VCを決定する。なお、放電開始電圧VX≦放電継続判定電圧VCが必ず成立する。処理ステップS901では、放電開始電圧VXおよび放電継続判定電圧VCを決定するために、図10および実施例で使用した図4に示すデータを用いて行う。
【0060】
図10では、在線状況数に対する放電開始電圧VX2および放電継続判定電圧VC2を示している。放電開始電圧VX2および放電継続判定電圧VC2は在線車両数が小さくなるほど高くすることで在線車両数が多い場合は使用頻度を抑制し、在線車両数が少なくなるほど使用頻度を増やし速やかに移動させる制御が可能となる。放電開始電圧VX2の設定方法としては、在線車両数を0〜MAXTrain(MAXTrain>0)とし、変電所の定格出力時の電圧をHV、変電所の200%出力時の電圧をHV2とした場合、以下の(4)(5)(6)式ように設定する方法が考えられる。
[数4]
VX2=(HV−HV2)/(0−MAXTrain)×(在線車両数−0)+HV
・・・(4)
[数5]
VC2=VX2+α・・・(5)
[数6]
α=(HV−HV2)/2・・・(6)
なお、HVおよびHV2の値は、駅中間に在線しているすべての車両が隣接駅に到達できるまでの時間、変電所が出力できる領域かつ、HV>HV2であれば任意に変えて良い。例えば、HVを変電所の150%出力時の電圧、HV2を変電所の250%出力時の電圧のようにしても良い。また、連続ではなく所定の在線車両数刻みに段階的にVX2を変更するでも良い。VC2の値を算出するために用いるαに関しても0よりも大きな値であれば任意に設定して良く、また、在線車両数に応じて異なる値を設定しても良い。
【0061】
上記のように定めたVX2、VC2と図4で述べたVX、VXの小さい方の値を用いることで、在線車両数および蓄電装置の充電量を考慮した制御が可能となり、この構成においても、実施例1の図6で述べたような効果が得られることとなる。
【符号の説明】
【0062】
101、101A、101B、101C:車両
102:架線
103、103A、103B、103C、103D:変電所
104:地上蓄電装置
105:電力管理装置
151、151A、151B、151C、151D:変電所の状態情報
152:地上蓄電装置の電圧および充電量情報
153:地上蓄電装置の放電電流
201,801:放電判定部
202:放電電流指令決定部
VS:変電所の電圧
VX:放電開始電圧
254:放電指令
701:運行管理装置
751:在線状況
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10