【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係るパワーユニット110の斜視図である。
図2は、このパワーユニット110を筐体外のバスバ入出力端子から見た斜視図である。
図3は、このパワーユニット110の側面図である。
【0018】
パワーユニット110は、冷却器150、複数のパワーモジュール1、複数の平滑用コンデンサ120、正極バスバ40、負極バスバ50、制御信号線3(
図4で後述)、駆動回路基板130、交流バスバ60、ブレーキチョッパ相バスバ70、放電抵抗30および冷却器150に接続された冷媒出入口151から構成される。
【0019】
複数の平滑用コンデンサ120、および、これら平滑用コンデンサ120に接続された複数の正極バスバ40と負極バスバ50が、複数のパワーモジュール1をその両面に搭載した冷却器150の両側に配置される。筐体外のバスバ入出力端子が冷却器150のパワーモジュール搭載面とは異なる側面に配置される。
【0020】
また、冷却器150と一体となっている冷媒出入口151が、冷却器150の残りの側面に配置される。ここで、冷却器150は、図示しないU字の流路を内部に構成するものである。冷却器150の下面には、パワーモジュール1に制御信号線3を介して信号を授受するために備える駆動回路の基板130が配置されている。さらに、冷却器150の冷媒出入口151に近い部位には、放電抵抗30が、平滑用コンデンサ120が搭載された空間から突出する態様で配置されている。
すなわち、冷却器150の側面には、複数のパワーモジュール1が搭載される面とは別に、筐体外のバスバ入出力端子が搭載される面と冷媒出入口151が搭載される面とが、互いに反対面となるように配置されていることになる。
【0021】
また、冷却器150の下面に、パワーモジュール1に制御信号線3を介して信号を授受するための駆動回路基板130を設けることで、電磁ノイズに弱い制御信号線3を大電流が流れ強磁場を発生するバスバから物理的に離すことができ、さらに、導電性の冷媒を介して他の水冷ユニットにノイズを伝搬する懸念をなくす効果がある。
【0022】
ここで、バスバの種類としては、
図1および
図2に示すとおり、正極バスバ40、負極バスバ50、交流バスバ60(U相交流バスバ61、V相交流バスバ62およびW相交流バスバ63)に加えて、ブレーキチョッパ相バスバ70を含む。ブレーキチョッパは、回生負荷が足りない時にその不足分だけをブレーキ抵抗器で消費することを目的とし、上下アームの内、片方のアームだけダイオードにしたパワーモジュールに接続される。
【0023】
放電抵抗30は、平滑用コンデンサ120の蓄積電荷を放電するために設け、
図1〜3に示すように、冷却器150の冷媒出入口151のそれぞれの近傍(すなわち、冷媒入口の近傍および冷媒出口の近傍)の両面に1つずつ、合計4つ搭載する構成を採ることができる。この場合には、
図3に示すように、同じパワーモジュール搭載面側に配置した2つの放電抵抗30を、同じパワーモジュール搭載面側に位置する平滑用コンデンサ120の放電用として直列に接続する態様をすることができる。ただし、この構成に限定されるものではなく、冷媒入口の近傍または冷媒出口の近傍の両面に1つずつ、合計2つ搭載する構成としてもよい。
【0024】
このように、全ての放電抵抗30を、冷却器150の片側の側面に寄せた冷媒出入口151の近傍に配置することで、放電抵抗30と平滑用コンデンサ120との距離を最小限にして、省配線化を図り、小型化を実現している。
【0025】
なお、本実施例1では、平滑用コンデンサ120とパワーモジュール1との距離も小さくできるため、両者を接続する正極バスバ40および負極バスバ50から構成される主回路インダクタンスを小さくすることが可能となる。これにより、低インダクタンス化による過電圧を抑制し、また電気的振動を抑制する効果もある。
【0026】
図4は、電気鉄道車両900と、搭載する電力変換装置100の回路ブロック構成を示す図である。
図示のように、移動体である電気鉄道車両900は、遮断器200、インバータ回路を構成する電力変換装置100および4個の電動機500を備え、これら誘導電動機500は、電気鉄道車両900の4つの車輪にそれぞれ接続されている。
【0027】
電力変換装置100は、架線300とレールや車体などの接地部400との間に接続され、誘導電動機500に交流電力を供給して駆動する。
図4の架線300は、直流電力を供給する例を示す。架線300からの電力が交流の場合、電気鉄道車両900は、平滑用コンデンサ120の前段に交流を直流に変換するコンバータモジュールを備え、変換した直流電力を電力変換装置100に供給する。
【0028】
また、電力変換装置100は、異常時の緊急停止用の遮断器200、直流電流から所定の周波数の交流電流に変換するパワーユニット110およびパワーユニット110に対して状態に応じた制御信号を供給する制御回路基板140から構成される。その内のパワーユニット110は、供給される直流電流を安定化し平滑化するための平滑用コンデンサ120、半導体素子2を搭載したパワーモジュール1および制御回路基板140からの制御指令に応じてパワーモジュール1を駆動制御するドライバ回路を搭載した駆動回路基板130から構成される。
【0029】
パワーユニット110については、1in1のパワーモジュール1が6台分で6つのアームからなるインバータ回路を含んで構成される。
図4では、1in1パワーモジュールが6台の例で示しているが、2in1パワーモジュールであれば3台、もしくは6in1パワーモジュールであれば1台でもよい。
図1〜3に示す構成では、冷却器150の片面にU相とV相の各パワーモジュール1、反対面にW相とブレーキチョッパ相の各パワーモジュール1を搭載している。
【0030】
各パワーモジュール1は、半導体素子2であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(metal−oxide−semiconductor field−effect transistor)とダイオードとの並列接続回路からなる上アーム側の電流スイッチ回路と、IGBTやMOSFETとダイオードとの並列接続回路からなる下アーム側の電流スイッチ回路とを、直列に配置することにより構成される。ここで、ブレーキチョッパ相の場合は、片方のアームがダイオードだけで構成される。
【0031】
パワーモジュール1の正極バスバ40側のインターフェースは、モジュール正極端子であり、負極バスバ50側のインターフェースは、モジュール負極端子である。モジュール正極端子は、パワーユニット110内で正極バスバ40を介して平滑用コンデンサ120の正極に接続される。同様に、モジュール負極端子は、負極バスバ50を介して平滑用コンデンサ120の負極に接続される。
【0032】
また、正極バスバ40と負極バスバ50は、跳ね上がり電圧抑制を目的としてインダクタンス低減を実現するために、互いに隣接して実装されている。パワーユニット110は、このようなパワーモジュール1が3組設けられた3相ブリッジ回路として構成される。
【0033】
パワーモジュール1の上アーム電流スイッチ回路と下アーム電流スイッチ回路との接続部分は、モジュール交流端子である。パワーモジュール1のモジュール交流端子からは、交流電流が出力され、3相の交流電流U、VおよびWが、U相交流バスバ61、V相交流バスバ62およびW相交流バスバ63を介して、電動機500へ供給される。
【0034】
平滑用コンデンサ120の蓄積電荷を放電するための放電抵抗30は、平滑用コンデンサ120と並列に正極バスバ40と負極バスバ50との間に配置する。ここでは、放電抵抗30の耐圧を考慮して回路図上の抵抗を2つ直列にしているが、1つにしてもよい。
【0035】
ドライバ回路を搭載した駆動回路基板130からパワーモジュール1に対して出力されるゲート信号は、ゲート信号線3aを介して、各相の半導体素子2に供給される。ゲート信号線3aにより、交流電流U、VおよびWの振幅や位相などが制御される。
【0036】
ソース信号は、各相の半導体素子2のソース信号端子から、ソース信号線3bを介して、駆動回路基板130へ供給される。このソース信号線3bを使って過電流や過電圧を駆動回路基板130で検知し、半導体素子2を保護するか否かなど、次の瞬間の動作を判断しながら制御が行われる。
【0037】
このように、ゲート信号線3aおよびソース信号線3bは、半導体素子2のスイッチング駆動を制御するための制御信号線である。以下では、これらを総称して制御信号線3と記載する場合がある。
【0038】
制御回路基板140は、上アームの半導体素子2と下アームの半導体素子2のスイッチングタイミングを演算処理するマイクロコンピュータ(図示せず)を備え、駆動回路基板130を介して、半導体素子2をスイッチング動作させるための指令を出す。
【0039】
また、駆動回路基板130は、上述したように、ソース信号線3bを使ってそれぞれの半導体素子2のソース電極における過電流検知を行い、過電流が検知された半導体素子2については、そのスイッチング動作を停止させて過電流から保護する。
【0040】
さらに、制御回路基板140には、パワーモジュール1に設けられた温度センサ(図示せず)や、半導体素子2のドレインとソース間の両端に印加される直流電圧を検出する電圧検出回路(図示せず)などからの信号が入力される。制御回路基板140は、それらの制御信号線3に基づき、過温度、過電流および過電圧などの異常を検知する。そして、過温度、過電流および過電圧などの異常を検知した場合には、全ての半導体素子2のスイッチング動作を停止させ、パワーモジュール1を過温度、過電流および過電圧などの異常から保護する。
【0041】
実施例1に係るパワーユニット110は、電動機側のトルクに応じて要求される出力電流がパワーモジュール1あたりの許容出力電流よりも大きい場合には、パワーモジュール1の個数を増やして並列接続してもよい。さらに、電力変換装置100は、
図4に示す回路構成に加え、電池に充放電する機能を有する装置構成であってもよい。また、インバータ回路を2つ備えた回路や、インバータ回路に加えコンバータ回路を追加してもよい。
【0042】
図5は、
図3に示す平滑用コンデンサ120および各バスバ(40、50、61〜63および70)を取り外した側面図で、実施例1に係る電力変換装置に搭載されるパワーモジュール1のレイアウトを示している。
ここでは、冷却器150に対して、片面に1in1パワーモジュール1を4台搭載した例を示す。図示の面の反対面にも、同様に1in1パワーモジュール1を4台搭載している。1in1パワーモジュール1を2台で1相分を構成するため、片面にU相およびV相、反対面にW相およびブレーキチョッパ相を配置することにより、無駄スペースのない実装としている。また、放電抵抗30に関しては、それを水冷することで小型化を実現し、U字状の流路のインレットとアウトレットの両面に合計4台搭載することで省スペース化を図っている。
【0043】
図6は、
図5に示す冷却器150およびその固定方法を示す図である。
冷却器150は、図示しない筐体に片面で4か所、両面で8か所の冷却器固定ボルト160で固定する。これにより、耐振性を確保している。また、冷却器固定ボルト160それぞれに付随する絶縁部材170は、パワーモジュール1で発生した電磁ノイズが筐体を介して周辺部材や鉄道車両全体に伝搬させない目的で設けたものである。これにより、万が一発生したノイズをパワーユニット110の中に留め置くことが可能となる。