特許第6812340号(P6812340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812340
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】体外血液回路のフラッシング方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   A61M1/36 121
   A61M1/36 153
【請求項の数】17
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-506298(P2017-506298)
(86)(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公表番号】特表2017-522986(P2017-522986A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】EP2015001619
(87)【国際公開番号】WO2016020062
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年8月6日
(31)【優先権主張番号】102014011671.9
(32)【優先日】2014年8月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ウォジェク ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィニケ パウル
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−275213(JP,A)
【文献】 特開2007−222668(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19704564(DE,A1)
【文献】 特表平11−506962(JP,A)
【文献】 特表2001−514938(JP,A)
【文献】 特表2008−518739(JP,A)
【文献】 MUJAIS S K,HEPARIN FREE HEMODIALYSIS USING HEPARIN COATED HEMOPHAN,ASAIO JOURNAL,米国,LIPPINCOTT WILLIAMS & WILKINS / ASAIO,1996年 9月,VOL:42, NR:5,PAGE(S):M538 - M541,URL,http://journals.lww.com/asaiojournal/Citation/1996/09000/Heparin_Free_Hemodialysis_Using_Heparin_Coated.44.aspx
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液処理ユニットの制御ユニットにより実行される、体外血液回路をフラッシング液でフラッシングする方法であって、
上記フラッシング液は、抗凝固剤を含み、
上記フラッシング液を、静脈ポートとは異なる流出部を通じて上記体外血液回路から流出させ
上記体外血液回路は、静脈クランプを有し、
上記静脈クランプを、少なくとも該方法の間は閉じる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記体外血液回路をフラッシング液で完全に満たすか、
および/または、
フラッシング液を、所定の休止時間にわたって上記回路内に留まらせておき、必要に応じて動かすかまたは短絡回路内で循環させる
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2において、
上記休止時間は、4〜15分間である
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2または3において、
上記休止時間の終了時に、上記回路からフラッシング液を除去する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記除去を、同様に抗凝固剤を含むフラッシング液を用いて行うか、
または、
上記除去を、上記抗凝固剤を含まないフラッシング液を用いて行う
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4または5において、
フラッシング液を残しておいて引き続き除去するプロセスを少なくとも2回繰り返す
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
上記体外血液回路は、透析器および該透析器に対応する上記流出部を有し、
または、
上記流出部は、静脈ラインに設けられている
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
フラッシング液を、該フラッシング液が上記体外血液回路に入る前または入った後に、上記抗凝固剤と混合する
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項において、
上記方法を、プライミング工程の枠組みの中で実行する
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において、
上記体外血液回路は、透析装置の体外血液回路である
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項において、
上記抗凝固剤はヘパリンである
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
体外血液回路および制御ユニットを備えた体外血液処理ユニットであって、
上記制御ユニットは、処理の開始前および/または間欠的に処理中に、請求項1〜11のいずれか1項に記載のフラッシング方法を実行するように構成されている
ことを特徴とする体外血液制御ユニット。
【請求項13】
請求項12において、
上記制御ユニットは、間欠的な上記フラッシング方法を実行する前に処理を自動的に中断するように構成されているか、
および/または、
上記制御ユニットは、間欠的な上記フラッシング方法を実行した後に処理を自動的に継続するように構成されている
ことを特徴とする体外血液処理ユニット。
【請求項14】
請求項12または13において、
上記制御ユニットは、処理中に周期的な時間インターバルをおいて間欠的な上記フラッシング方法を始めるように構成され、
上記時間インターバルは、30分間〜2時間である
ことを特徴とする体外血液処理ユニット。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項において、
上記制御ユニットは、処理特有パラメータの決定において、上記方法によって供給されたフラッシング液および/または上記方法によって排出された血液の量を考慮に入れるように構成されている
ことを特徴とする体外血液処理ユニット。
【請求項16】
請求項15において、
上記処理特有パラメータの決定は、限外濾過容量の決定である
ことを特徴とする体外血液処理ユニット。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1項において、
上記体外血液処理ユニットは、透析装置である
ことを特徴とする体外血液処理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液回路をフラッシング液でフラッシングする方法、ならびに、体外血液回路および制御ユニットを備えた体外血液処理ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
体外血液回路における血餅の形成を回避することが体外血液処理の主な目的である。様々な解決コンセプトが一般に考えられる。
【0003】
一つの可能性は、例えば体外血液回路へのヘパリン注入により、患者にヘパリンのような抗凝固剤を投与することである。これは連続的かつ効果的な凝固抑止の利点を有するが、とりわけ患者に投与されるヘパリンの投与量が多いという欠点をも有する。
【0004】
また、回路の表面に付着するよう意図された抗凝固剤で体外血液回路を処理の開始前にフラッシングすることも考えられる。これは患者に投与されるヘパリンの投与量が少ないという利点を有するが、処理が長くなるにつれて効果が低下して最終的には実質的に失われるという欠点を有する。また、抗凝固剤を含む溶液で処理中に回路をフラッシングすることも考えられる。これは抗凝固効果が定期的にリフレッシュされるという利点を有するが、プロセス管理が複雑であるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最後の二つに挙げた選択肢は、しかしながら、血餅の形成の回避という点において、患者へのヘパリン投与と比較して概して効果が低い。しかしながら、ヘパリンを含まないまたは少なくともヘパリンをあまり含まない透析処理が、急性腎不全またはESRDを患った患者の最大7%に対して様々な医療的理由のために目標とされている。
【0006】
本発明の目的は、患者に対して全身的に効果的に投与される抗凝固剤の量を減らすと同時に、体外血液回路における血餅の形成を効率的に回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この背景に対して、本発明は、体外血液回路をフラッシング液でフラッシングする方法であって、当該フラッシング液は抗凝固剤を含む、方法に関する。
【0008】
この態様では、抗凝固剤は、それが所定の処理時間にわたって付着して血餅の形成を抑止し得るように、体外血液回路のホース壁および透析器の膜に接触するよう意図されている。
【0009】
体外血液回路は、好ましくは透析装置の体外血液回路である。また、その他の体外処理システム、例えば限外濾過装置および心肺装置における当該方法の使用も考えられる。
【0010】
ある実施形態では、抗凝固剤はヘパリンである。ヘパリンは特に有効であって優れた親和性を有するので、医療において頻繁に使用される。さらに、それが本発明に係る方法の枠組みの中で体外血液回路に導入されると、ヘパリンは体外血液回路のホース壁および透析器に十分に付着して所定の処理時間にわたって血餅の形成を抑止する。
【0011】
ある実施形態では、体外回路はフラッシング液で完全に満たされる。よって、体外血液回路の全ての部分がフラッシング液および抗凝固剤と接触することが確保され得る。
【0012】
ある実施形態では、フラッシング液は、所定の休止時間にわたって回路内に留まったままにされる。このことは、例えば、連続動作よりも少ない消費によるより強い付着をもたらす。共通のインターバルおよび抗凝固剤濃度を伴う適当な休止時間は、例えば4〜15分間または8〜12分間である。ある実施形態では、フラッシング液は、休止時間の間において動かされ、例えば往復するように輸送され、または短絡回路内を循環させられる。
【0013】
ある実施形態では、フラッシング液は、休止時間の終了時に回路から除去される。それにより、抗凝固剤を含むフラッシング液が別工程において患者の血流内に移動すること、およびよって抗凝固剤が患者に本質的に投与されることが抑止される。この程度まで、抗凝固剤を含まないフラッシング液を用いて除去が行われ得る。当該方法が処理中に間欠的に実行されるならば、血液を用いて除去が行われてもよい。
【0014】
ある実施形態では、フラッシング液を残しておいて引き続き除去するプロセスが少なくとも2回および必要に応じて複数回繰り返される。この場合、同様に抗凝固剤、好ましくはヘパリンを含むフラッシング液で除去を実行することが有効であり得る。必要に応じてのプロセスの複数回の繰り返しは、凝固抑止に関する結果を改善し得る。
【0015】
ある実施形態では、フラッシング液の少なくとも一部は、静脈ポートとは異なる流出部を通じて体外回路から流出する。患者に導かれるフラッシング液の量および患者に導かれる抗凝固剤の量が、よって、処理中における間欠的なプロセス管理において低減され得る。
【0016】
ある実施形態では、体外血液回路は、透析器と、この透析器に対応する流出部とを有する。流出部としての透析器の使用は、特にフラッシングプロセスが血液透析濾過ユニットまたは血液濾過ユニットにおいて実行される場合に提供されてもよい。
【0017】
ある実施形態では、流出部は静脈ラインに設けられている。流出部は静脈ポートに近いことが好ましい。このことは、少ない余剰量のフラッシング液および抗凝固剤を患者に戻すだけのプロセス管理を簡略化する。
【0018】
ある実施形態では、体外血液回路は、少なくともプロセスの間は閉じられる静脈クランプを有する。この場合におけるクランプの語は、逆止弁または三方弁をも含む。弁は、例えば、中央制御ユニットを用いてアクチュエータによって操作されてもよい。静脈クランプは流出部と静脈ポートとの間に設けられていることが好ましい。流出部が同様にプロセスの間は閉じられるクランプを有していてもよく、ここで当該クランプは充填段階のプロセス開始時および除去段階のプロセス終了時に開かれてもよい。
【0019】
ある実施形態では、フラッシング液の少なくとも一部は、動脈ポートとは異なる流入部を通じて体外血液回路へ流入する。この流入部は動脈ラインに設けられていてもよい。ある実施形態では、流入部は血液ポンプの上流に設けられる。流入部は、その代わりに、血液ポンプの下流に設けられてもよい。ある実施形態では、既存のインターフェース、例えば前希釈ポートが流入部として使用される。
【0020】
ある実施形態では、フラッシング液は、当該フラッシング液が体外血液回路に入る前または入った後に抗凝固剤と混合される。例えば、抗凝固剤は、体外血液回路への導入前または導入時に別個のタンクから直接にフラッシング液に添加されてもよい。
【0021】
ある実施形態では、当該方法は、体外血液処理の開始前に体外血液回路のプライミングの枠組みの中で実行されてもよく、また例えば、プライミング工程の最終ステップであっ
てもよい。体外回路は、例えばプログラム制御を介して、ヘパリンポンプによってヘパリン化された置換溶液で透析前に(ことによると循環態様で)満たされてもよく、また例えば所定の休止時間後に透析液でフラッシングされてもよい。このプロセスは一回または複数回実行されてもよい。ヘパリン化された表面が体外回路内に自動的に作り出される。
【0022】
それに代えてまたは加えて、体外血液処理中における間欠的なプロセス管理が可能である。この場合、プロセス管理は次のステップを含んでいてもよい。(a)血液ポンプを維持してこれまで閉じていた別個の流入部を開く。(b)体外血液回路の少なくとも一部の抗凝固剤を含むフラッシング液による充填を完了する。(c)流入部およびこれまで開いていた静脈クランプを閉じる。(d)休止時間を通して待機する。(e)静脈ラインに設けられていてこれまで閉じていた別個の流出部を開く。(f)血液ポンプを始動させてフラッシング液を除去する。(g)流出部を閉じて静脈クランプを開く。(h)処理を継続する。この場合において、流入部は血液ポンプの下流に設けられていることが好ましい。
【0023】
本発明は、さらに、体外血液回路および制御ユニットを備えた体外血液処理ユニットであって、制御ユニットが、処理の開始前および/または間欠的に処理中に、本発明に係るフラッシング方法を実行するように構成されている、体外血液処理ユニットに関する。
【0024】
制御ユニットが前述の請求項のいずれか1項に係る方法を実行するように構成されているという特徴は、対応するルーチンが制御ユニットに格納されていること、および制御ユニットが当該方法を実行するために必要とされるアクチュエータ(例えば、ポンプおよび弁)に接続されていることを意味する。
【0025】
ある実施形態では、体外血液処理ユニットは透析装置である。透析装置は、血液透析、血液透析濾過、血液濾過および/または限外濾過(液体除去のみ)を実行するのに適していてそのように意図されていてもよい。さらに、本発明に係る体外血液処理ユニットは他の処理システム、例えば限外濾過装置または心肺装置であってもよい。体外血液処理ユニットは、本発明に係る方法に関連して上述した構造的特徴を有してもよい。体外血液回路は、例えば、体外血液回路の静脈ポートとは異なるフラッシング液のための流出部を有してもよい。
【0026】
ある実施形態では、制御ユニットは、間欠的なフラッシングプロセスを実行する前に処理を自動的に中断するように構成される。フラッシングプロセスの引き起こしおよび制御は、制御ユニットに格納されたルーチンによって自動的に行われる。中断は、例えば、フィルタの初期詰まりの結果を認める特定のセンサ情報に応じて行われてもよい。
【0027】
ある実施形態では、制御ユニットは、間欠的なフラッシングプロセスの実行後に処理を自動的に継続するように構成される。
【0028】
ある実施形態では、制御ユニットは、処理中に周期的な時間インターバルをおいて間欠的なフラッシングプロセスを始めるように構成され、当該時間インターバルは、好ましくは30分間〜2時間である。経験的には、抗凝固剤による抗凝固作用は先のフラッシング後における最も遅くとも2時間後には著しく低下することがわかっており、そのためインターバルを2時間未満に選択することが有効である。同時に、30分間未満の時間インターバルにおける処理の中断は適当でない。
【0029】
ある実施形態では、制御ユニットは、プロセスによって供給されたフラッシング液および/またはプロセスによって排出された血液の量を、処理特有パラメータの決定において、特に限外濾過容量の決定において考慮に入れるように構成される。
【0030】
血液ポンプおよび/またはフラッシングポンプは蠕動ポンプ、例えば完全閉塞ローラポンプであってもよい。フラッシング液は、例えば、置換溶液またはプライミング溶液であってもよい。例は生理食塩水およびリンガー溶液を含む。溶液は、さらに任意に、ヘパリンのような抗凝固手段を含んでいてもよい。
【0031】
さらなる細部および利点は、以下の図面から、および実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る透析装置の流体回路の概略図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態に係る透析装置の流体回路の概略図である。
図3図3は、本発明の第3実施形態に係る透析装置の流体回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態に係る透析装置の流体回路の概略図である。透析装置は、膜4によって互いに隔てられた血液室2および透析液室3を有する透析器1を備えている。血液室2は体外血液回路5の構成要素である。透析液室3は、限外濾過ポンプ7が設けられた透析液のための流出部6に接続されている。透析液供給源のような透析液室に接続されるその他のラインは、図示されていないが設けられていてもよい。血液回路5は、血液ポンプ9が設けられた動脈ライン8と、透析器の血液側に接続された静脈ライン10とを有する。この静脈ラインの下流側端部には静脈クランプ11が設けられている。
【0034】
置換ポンプ13が設けられた前希釈ライン12が、動脈ラインにおける血液ポンプの下流に通じている。さらに、動脈ラインにおける血液ポンプ9と前希釈ラインとの間にヘパリンポンプ14が接続されている。前希釈ラインおよびヘパリンポンプの別の配置がもちろんまた考えられ、本発明によって含まれる。
【0035】
本発明に係る方法は、処理の開始前に次のようにして実行されてもよい。動脈ラインおよび静脈ラインは患者に接続されていない。体外血液回路が、例えば前希釈ラインを用いてまたは動脈ラインもしくは静脈ラインを通じて生理学的フラッシング溶液で完全に満たされ、それに続いて動脈ラインと静脈ラインとが短絡される。ヘパリンポンプを用いて回路内の溶液にヘパリンが添加される。引き続き、溶液が10分間循環させられる。この方法ステップの終了後、短絡回路は開放され、ヘパリンを含むフラッシング溶液はフレッシュなフラッシング溶液によって置換される。ここで、フレッシュなフラッシング溶液は、例えば前希釈ラインまたは動脈ラインを通じて回路内に浸透でき、またヘパリンを含むフラッシング溶液は、例えば静脈ラインを通じて回路から除去され得る。プロセスは必要に応じて繰り返されてもよい。すなわち、動脈および静脈ラインが再び短絡され、ヘパリンが再び注入され、溶液が再び循環させられてもよい。
【0036】
図2は、本発明の第2実施形態に係る透析装置の流体回路の概略図である。図1から既知の構成要素には対応する参照番号が付されている。
【0037】
この実施形態は、ヘパリンポンプ14が動脈ラインではなく前希釈ライン12に通じているという点において、図1に示す実施形態とは異なる。よって、フラッシング液は、体外血液回路に入る前にヘパリン化され得る。
【0038】
透析処理の間における本発明に係る方法の間欠的な実行の例は、本実施形態を参照して次のように説明される。90分間の周期的な時間インターバルの後に、本発明に係るフラッシングプロセスは処理中に制御ユニットによって自動的に実行される。この目的のために、置換ポンプ13が起動され、血液ポンプが維持される。フラッシング液は、ライン12を介して体外回路に入る前にヘパリンポンプ14によってヘパリン化される。体外血液
回路のうちライン12の連通箇所よりも下流に位置する部分がヘパリン化されたフラッシング液で満たされるとすぐに、置換ポンプが同様に維持され、静脈クランプ11が閉じられて溶液が回路内で10分間静止状態に保たれる。その後、静脈クランプが開かれ、血液ポンプが起動されて処理が継続される。ヘパリンの長い休止時間が、よって患者への適度なヘパリン投与を伴って実現され得る。
【0039】
図3は、本発明の第3実施形態に係る透析装置の流体回路の概略図である。図1および図2から既知の構成要素には対応する参照番号が付されている。
【0040】
この実施形態は、体外血液回路がフラッシング液のための別個の流出部15をさらに有するという点において、図2に示す実施形態とは異なる。よって、フラッシング液は、静脈ラインを介して流れ去ることができないが、別個の流出部15を介して流れ去ることができる。別個の流出部15は流入側にクランプ16を有する。
【0041】
透析処理の間における本発明に係る方法の間欠的な実行の別の例は、本実施形態を参照して次のように説明される。この例は、体外血液回路におけるヘパリン化溶液の休止時間の後に開かれるのが静脈クランプ11ではなく流出クランプ16である点において、前述の例とは異なる。そして、血液ポンプは、ヘパリン化されたフラッシング溶液が流出部15を介して回路外へ排出され、血液が流出部の入口の領域にほぼ到達するまで駆動される。このことは適当なセンサを用いて検出され得る。流出クランプ16が引き続き閉じられ、静脈クランプ11が開かれて処理が継続される。ヘパリンの長い休止時間が、よって少ないヘパリン消費を伴って実現され得、また患者へのヘパリン投与が処理間欠プロセス管理にも関わらずほとんど回避され得る。
【0042】
静脈分岐における別個の流出部は、透析前のフラッシングおよび透析中のフラッシングの両方において有用である。流出部は通常は(例えばカセットシステム内のクランプを介して)閉じられているが、必要に応じて(例えばヘパリンフラッシュ制御アルゴリズムによって圧力制御された態様で)自動的に開かれる。ヘパリン化されたフラッシング溶液のうちいくらかは、よって排出される。適当な制御を通じて、ヘパリン化された置換溶液は、動脈分岐、透析器および静脈分岐に滞留でき、またUFポンプおよび流出部を介して排出され得る。UFポンプおよび流出部によって除去されなかったヘパリン化された置換溶液のみが患者に到達する。制御アルゴリズムの要素は流出クランプによって拡張される。制御アルゴリズムの入力パラメータは、よって例えば、動脈圧、静脈圧および透析液側(流入部/流出部)の圧力を含む。例示的な出力パラメータは、血液ポンプ、ヘパリンポンプ、限外濾過ポンプまたは置換ポンプの輸送速度、ならびに静脈クランプ、動脈クランプまたは流出クランプの制御を含む。
【0043】
要約すると、本発明は、完全自動の透析前抗凝固プライミングおよび透析中フラッシングのための、ならびに、例えばHD法またはHDF法を伴う急性および慢性の腎移植治療における体外回路の凝固抑止表面処理のための、方法および装置を提供すると言うことができる。
【0044】
体外回路における、および特に低ヘパリンまたはヘパリンフリーの透析の枠組みにおける凝固が低減されるかまたは防止される。アイデアのある態様は、プライミングおよびフラッシングによる患者の全身液体充填および抗凝固剤充填を伴わない自動化された二相の抗凝固作用に関する。一方では、ヘパリン化溶液による体外回路の透析前フラッシングが提示され、他方では、プライミングの疲労効果を打ち消すために処理を停止してのヘパリン化溶液による回路の間欠フラッシングが提示される。別の態様は、溶液で完全に満たされ、特定の休止時間後に再び空にされる体外回路を含む。ある実施形態では、循環が省略されてもよい。別のコア態様は、上に詳しく述べたプロセスの自動化である。本発明に係
るアイデアのある態様では、血流は大幅に低減されあるいは停止され、フラッシング容量は患者にあまり負荷が掛からないように透析器を介してまたは追加的な流出部を介して流れ出る(流出部と静脈接続部との間のホース部分からの容量)。
図1
図2
図3