【文献】
SU W Y,INJECTABLE OXIDIZED HYALURONIC ACID/ADIPIC ACID DIHYDRAZIDE HYDROGEL FOR NUCLEUS 以下備考,ACTA BIOMATERIALIA,NL,ELSEVIER,2010年 8月,VOL:6, NR:8,PAGE(S):3044 - 3055,PULPOSUS REGENERATION,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.actbio.2010.02.037
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ヒドロゲルは,水溶液に溶解することなく大量の水を吸収することができる物理的に又は化学的に架橋されたポリマー構造を表わす。適切なレオロジーのパラメーターに関して,それらの特性を備えたヒドロゲルは生体組織に似ている。ヒドロゲルは,置換術におけるスキャホールドの形態で,又は組織損傷の場合の組織再生に使用される。細胞の組織化,細胞増殖又は形態形成の決定はヒドロゲルによって制御され得る。同時にヒドロゲルは細胞にとって適切なエネルギー源の代表例である。これらの不溶性の三次元の網状組織は,生理活性物質(アミノ酸,ペプチド,医薬品,酵素,成長因子等)の固定化,そしてそれに続くそれらの所望の濃度,時間及び空間での制御された放出を可能にする。特に最終用途が組織工学又は再生医療の領域を目的とし,信頼できる材料の高い生体適合性が保証されなければならない場合,ヒドロゲルの構築成分の中では合成高分子より生体高分子が好まれる (Slaughter V. B., Khurshid S. S., Fisher O. Z., Khademhosseini, Peppas, N. A. 2009. Adv Mater 21: 3307)。多糖類は,それらの入手容易性,比較的安い価格,優れた生体適合性,有用な機械的性質及び多様な構造的又は機能的可変性のため,適切な高分子である。製薬的及び生物医学的用途に最も頻繁に使用される多糖類は次のとおりである。
【0003】
ヒアルロン酸(HA)はβ(1−3)及びβ(1−4)O−グリコシド結合により相互に結合されたD−グルクロン酸サブユニット及びN−アセチル−D−グルコサミンサブユニットで形成されたグリコサミノグリカン類の天然のヘテロ多糖である。HAは,多くの結合組織,関節液,水性体液,皮膚及び軟骨に天然に見られる(Smeds K. A., Pfister-Serres A., Miki G., Dastqheib K., Inoue M., Hatchell D. L., Grinstaff M. W. 2001. J Biomed Mater Res 54: 115)。その生体適合性のおかげで,HAは生物医学,栄養,化粧及び製薬の産業で利用される。
【0004】
コンドロイチン硫
酸(CS)は,軟骨の細胞間マトリックス中に最大量で存在する,硫酸化されたN−アセチルガラクトサミン及びD−グルクロン酸からなるグリコサミノグリカン類である。CSは関節の代謝に関与し,変性関節炎に対する治療の手段として使用される。それは食品サプリメント(e.g. Hyalgel)として骨関節症の予防に重要な役割を果たす(Bottegoni C., Muzzarelli R. A. A., Giovannini F., Busilacchi A., Gigante A. 2014: CarbPol 109: 126)。
【0005】
キトサン(CH)はキチンの脱アセチル化によって調製されるカチオン性ホモ多糖類で,海甲殻類の外骨格から抽出される。CHは天然の再生可能で無毒で生物分解性の原料から生じるので,生態学的に許容され得る製品と考えられる。その品質と特性は,その純度及び脱アセチル化度(通常70-95%の範囲),さらに分子量及びその結晶度に依存する。CHは,コレステロール低下剤及び細菌発育阻止剤,医薬ビヒクル又は細胞スキャホールド形成のための材料として通常使用される(Pasqui D., De Cagna M., Barbucci, R. 2012. ポリマーs 4: 1517)。
【0006】
カルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMCNa)は,塩基性条件下で膨潤セルロース(β−D−グルコピラノースのホモポリマー)をクロロ酢酸でアルキル化することにより製造される親水性のセルロース誘導体である。CMCNaは様々な医薬品又は所望により共同賦形剤(co-excipients)と組み合わせて,医療用具(ガーゼ,包帯,創傷ドレッシング)の形態で,皮膚疾患の治療に使用される。それは糖尿病足,皮膚潰瘍,手術後の外科手術創傷の治療に,中毒性表皮壊死症に,及び皮膚移植としても利用される(Pasqui D., De Cagna M., Barbucci, R. 2012. ポリマーs 4: 1517)。
【0007】
天然型の多糖類はヒドロゲルを形成しない。そのため,それらの物理的性質の追加の修飾が必要である。それは,主として溶解度の減少,及び水溶液中での安定性の増加である。一つの選択は,化学的修飾により,例えばカルボキシル基をブロックしてエステル形成することにより(US4851521,US4965353),又は極性水酸基の疎水性化により(WO1996/035720,WO2010/105582,US3720662)多糖鎖の極性を減少させることである。
【0008】
第二の選択は多糖構造内の化学的架橋である。化学的架橋に導く最も利用されている反応は重合(Burdick J. A., Chung c., Jia X., Randolph M. A., Langer R. 2005. Biomacromolecules 6: 386),縮合反応(WO2008014787,WO2009/108100,WO2011/069474),二量化反応(EP0554898B1,EP0763754A2,US006025444),付加環化反応(CZ304072),所望により酵素反応(CZ303879)を含む。WO2011/069474及びWO2011/069475による多糖類の酸化反応を,架橋反応を含む追加の化学的修飾に適する多糖類前駆物質の合成に使用してもよい。そしてこれらの前駆物質の脱水反応は,α,β-不飽和類縁体の調製に使用された (CZ304512)。US7345117による多糖類の脱アセチル化は例えば求核付加のために必要なポリアミノ誘導体の調製に使用される。
【0009】
しかしながら,古典的な化学的架橋にはさらにいくつかの重要で明白な欠点がある。即ち,化学反応の制御しがたい成長,不十分な化学的選択性,架橋剤の使用,及び最終生産物の追加の精製の必要性である。古典的な多糖類の化学的架橋と光反応性のリンカーの使用の組み合わせにより,上記の弱点を克服することに成功した。この光反応性のリンカーは,それらの構造内に構築された光除去可能な保護基(PPG)を含む。一官能性の光除去可能なカルバマートリンカーの調製は,(Figueiredo R. M., Frohlich R., Christmann M. 2006 J OrgChem 71: 4147) 又は (Werner T., Barrett A. G. M. 2006 J OrgChem 71:4302 or Furuta, T., Hirayma Y., Iwamura M. 2001. OrgLett 3: 1809)に従い,過剰量の二官能性のアミノリンカーとPPGを有するアシル化剤との反応によって行なうことができる。
【0010】
PPGの利用の一つの例は,インビトロ又はインビボでの生物系内の認識,特定の薬剤の存在に対する生物学的応答のいわゆる誘発からの基質のマスキングである。これらのマスクされた基質はケージド分子と呼ばれ,使用されたPPGの場合にはケージング基(CG)の用語が使用される。CGはそれらの光開裂が穏やかな条件下で急速に正確に行なわれて,時間的かつ空間的に非常に良好に制御され得るので主に生物工学及び細胞生物学において役立つ。CGは,複合ペプチド,オリゴヌクレオチドのフォトリソグラフィー技術による製造の分野,又は細胞若しくは組織への生物活性化合物の放出の分野にも利用される(US2002/0016472)。
【0011】
PPGの別の実用例は,それらのうちの一つが光除去可能な保護基(PPG)でマスクされている限り進行しない二つの関連する官能基の化学反応であり得る。PPG除去後にもとの反応性基に戻り,それは反応混合物中の別の関与基と反応する。二段階の方法,即ちPPGの導入及び開裂の利点は,このように化学反応の進行の制御を可能にすることである。反応混合物中の基質がマスクされている(保護されている)と,化学反応は進まない。基質が反応混合物中で再生される(解放される(released))と,化学反応が進む。マスクされ解放される基質の量又は濃度は,電磁放射源を用いることにより,時間の観点(オンオフスイッチ,光インパルス),及び空間の観点(焦点を絞った光,レーザー,フォトマスクの使用等)の両方において決定することができる。光開裂の別の利点は,保護基導入の他のアプローチが失敗する場合に,高い信頼性で利用することができるということにある。それは例えばpH感受性又は熱感受性の基質,生体材料に対して,インビトロ又はインビボ用途で利用される。ここでこのように示されたアプローチは,架橋された材料の質的パラメーター(架橋精度及び密度)及び量的パラメーター(全量対試料の部分)の制御を可能にする。この理由で,最終的な架橋生成物は,粘稠溶液から,軟質,そして弾性ゲルに至るまで達することができる。
【0012】
光化学的に制御された化学反応という用語は,結合反応又は固定化を導く反応のみを意味するのではなく,逆にキャリア構造からの基質の放出への反応を意味することができる。このアプローチは,マスクされた基質の架橋反応を通じて架橋ポリマー構造の形成に利用することもできる。それはこの特許文献の主題である。
【0013】
この文献に光分解するPPGの実用例がさらにある(Green T. W. & Wuts P. G. M., 1999, John Wiley, 3rd edition)。これらの基における化学結合の光分解(化学的開裂)は,基質分子による光量子-光子吸収の結果である。保護基の光化学開裂は,望ましいエネルギーを有する単一光子の吸収後の直接の発色団の励起によって,又は多光子吸収及びそれに続く保護基への電子伝達によって行うことができる(US210/0207078)。アミン(ammines)の場合には,導入される保護基はカルバマート官能基である。最も使用されるPPGはアルコキシ基,さもなければ芳香族アルコールのニトロ誘導体であり(Klan P., Solomek T., Bochet Ch. G., Blanc A, Givens R., Rubina M., Popik V., Kostikov A., Wirz J. 2013: ChemRev 113: 119; US2008/0009630),そしてさらにクマリン,キノリン,キサンタン又はチオキサントンタイプの複素芳香族である(US2002/0016472)。カルバマートPPGの利用は,主としてコンビナトリアルペプチド合成又は核酸合成の分野にある(Piggot A.M. & Karuzo P. 2005. Tetr Lett 46: 8241)。さらに幾つかの特許文献が存在し(US2013309706A1,US20008028630A1,US20060216324A1),それは光分解を高分子材料の表面改質に使用するか,制御された生物活性化合物の制御放出又は逆にポリマー構造体への共有結合による固定化に使用するものである。しかしながら,制御された多糖類架橋のためのPPGの使用はまだ公表されていない。おそらくその理由は,複数因子,例えば,望ましい波長領域用の選択されたPPGの不十分な分子吸光係数,光分解の低い量子収量,PPGの遅い基質放出,低い安定性及び疎水性の性質,潜在的に有毒で吸収性崩壊性の光分解生成物の形成,それらと放出された基質又は生物学的材料との連続的な競合反応であると考えられる。
【0014】
発明の要約
本発明は,カルバマートPPGを使用する化学的架橋プロセスの光化学的制御に基づく,多糖溶液中で架橋反応を行なう方法を提供する。光化学的制御という用語は,電磁放射を使用した,それぞれのアミノ基(−NH
2)を形成するカルバマート結合(−NH−CO−O−)の光化学的開裂を表す。化学的架橋プロセスという用語は,イミノ基(−N=CH−)を形成する,解放されたたアミノ基とアルデヒド基との縮合反応を表わす。同時に進行する両プロセスは,生理学的に許容される条件下で行なうことができる。
【0015】
今まで使用されてきた多糖類の架橋方法と比較して,ここで示唆される解決法の利点は架橋の過程での時間的及び空間的制御であり,それにより組織工学用の先端材料の調製が可能になり,そこでは架橋結合密度,及びこれによりさらに物質構造中の機械的性質に影響を及ぼすことが可能である。光化学的制御は,与えられた環境で細胞増殖を制御することが望ましい場合には非常に有利であり,これは例えば神経組織の修復のために設計された生体材料 (Perale G. et. al 2011. ACS Chem. Neursci. 2: 336)に ,又は古典的侵襲手術の衝撃を最小にするための努力における注射可能なヒドロゲルの生産 (Pasqui D., De Cagna M., Barbucci R. 2012. Polymers 4: 1517)には不可欠である。
【0016】
古典的化学的架橋を光反応性の多糖誘導体と組み合わせることにより,各材料が電磁放射で照射される場合に限り反応が進むというような方法により架橋反応の進行の時間的制御の利点を達成することが可能である。通常の条件の下では,架橋反応は出発物質を使い果たすまで進み,それは架橋生成物の特別の性質,例えば材料テナシティー(tenacity),細孔径,透過性又は生分解性が望まれる場合は望ましくない。さらに,適切なフォトマスク又は焦点を合わせた光の形での反応進行に対する空間的制御により,反応混合物中の架橋反応の局所的な進行が確実になる。典型的な例は,光感受性物質に幾何学的なフォトマスクパターンを転写することに光を使用する,ヒドロゲル形成のフォトリソグラフィー的なアプローチである(Khetan S., Burdick J. A. (2010). Biomaterials, 31: 8228)。
【0017】
多糖類構造へのPPGの導入の別の利点は光分解そして次の架橋反応の化学特異的な(chemospecific)進行である。所望のエネルギーの光は,多糖類ポリマー構造体中の正確に定められた部位における次の架橋反応のための反応部位を光分解で生成するPPGのみを励起させる。さらに,光分解と架橋反応は,追加の架橋剤,有機溶媒,又は水性環境でゲルを形成し増強された加水分解安定性を有し,収着特性を示し,かつ液体及び本剤の停留を確実に行う最終架橋生成物の単離を必要とすることなく,生理学的条件の下で進む。これらの架橋された多糖類の利用は,スキャホールド,移植又は薬物キャリアの形態で,組織工学,再生医療又は生物医学的利用の領域に属する。
【0018】
本発明による多糖類のカルバマート誘導体は,それらの構造中に直接又はジアミン,アミノアルコール,ジヒドラジド,アミノ酸,アルコキシアミンに由来した適切なリンカーを介して,最終的には下記の基:−OH,−NH
2,−O−NH
2,−COOH,−CONHNH
2,−NH−NH
2,−SHの組み合わせを有するリンカーを介して構築されたカルバマートPPGを有する誘導体であると理解される。
【0019】
さらに,カルバマートPPG基は,320−400nm,好ましくは330−370nmの範囲の電磁放射の吸収を示す,芳香族又は複素芳香族のアルコールに由来することが定義される。
【0020】
カルバマートPPGは,電磁光の照射中に芳香族アルコール,二酸化炭素,及び解放されたアミン又はヒドラジド基を有する化合物に光分解される(光化学的に開裂される)。このアミン又はヒドラジド基は,別の(未置換の)多糖のアルデヒド基と相互作用してイミン又はヒドラゾン基を生じさせる。第一の多糖及び第二の多糖(polysaccharide 1とpolysaccharide 2)の両方は,ヒアルロナン,コンドロイチン硫
酸又はセルロースタイプの同一又は異なる構造であることができ,最終的には,薬学的に許容される誘導体及び/又はその塩類であり得る。多糖誘導体内の架橋は縮合反応により生じる。カルバマートPPG光分解は水の存在を必要とし,そして電磁放射による材料照射に基づき,かつその後にのみ進行する。さらに光分解は架橋反応と同時に進み,生理学的条件下で又は他の添加剤(有機,無機塩類又は緩衝剤)の存在下で行なうことができる。
【0021】
したがって,本発明は,光化学的に制御される多糖類水溶液中での架橋反応実現の方法を開示する。光化学的制御によると,カルバマート基が反応混合物中にある別の多糖類のアルデヒド基との早期又は望ましくない反応から多糖誘導体のアミノ基(NH
2)を保護するので,カルバマート光除去可能基 (PPG)の存在が必要である。アミノ基が保護されない場合,制御できない反応がその進行に影響を及ぼす手段なしに起きる。
【0022】
保護するPPG基が存在する場合,反応混合物が電磁放射,好ましくは320から400nmまでの範囲内の波長のUVAを受ける場合に限り,アミノ基とアルデヒド基の間の反応が水性反応混合物中で生じる。これは,例えば照射源スイッチ又は反応混合物の遮蔽により,反応の時間的制御を可能にする。架橋密度は照射時間の増加に伴い増大する。
図1,例8及び9参照。反応の空間的制御は,例えばフォトマスク又は光ビームにより,照射された場所でのみ起きる,
図2参照。
【0023】
本発明は,特に一般式(I):
polysaccharide 1-R
1-N=CH-polysaccharide 2 (I)
(式中,polysaccharide 1とpolysaccharide 2は同一又は異なる多糖類であり,R
1は,C
1-C
30アルキル残基,C
1-C
30アルキルアリール残基又は所望によりN,O,Sからなる群より選択された同一又は異なるヘテロ原子を1個又はそれ以上含むC
1-C
30アルキルヘテロアリール残基である)により架橋された多糖材料の調製法に関する。該方法は下記のように行なわれる:
一般式III: polysaccharide 2-CH=O (III)
(式中,polysaccharide 2中のアルデヒドの置換度は1〜50%の範囲内にある)によるpolysaccharide 2のアルデヒドの水溶液を,一般式(II):
polysaccharide 1-R
1−NH−CO−O−CH
2−R
2 (II)
(式中,R
1は上記で定義したとおりであり,R
2は芳香族系であり,カルバマートの置換度は1〜10%の範囲内にある)による光除去可能な基で修飾されたアミン基で置換されたpolysaccharide 1の水溶液に添加する。
【0024】
この反応混合物に電磁放射を行い,同時に該混合物の脱酸素が行われる。
【0025】
この反応は一般スキーム1で表すことができる:
スキーム1
【0026】
スキーム1は実際には2つの同時に進む反応,polysaccharide 1中のPPGの光分解,及びpolysaccharide 1のアミンとpolysaccharide 2のアルデヒドとの縮合/架橋反応を含んでいる:
【0027】
式(I)及び(II)の中の窒素又はNH基は,基R
1の一部であるが付加的に示されている。また,式(I)中の基CH又は式(III)の中のCH=Oもpolysaccharide 2の一部であるが,付加的に示されている。当業者は,該反応及び該反応基質のよりよい理解又は分かりやすさのためにのみ,それがなされていると理解するであろう。
【0028】
上記に示されるように,polysaccharide 1中のPPGの置換度は1〜10%,好ましくは3〜10%の範囲内であり,その分子量は10〜400kDa,好ましくは20〜300kDa,より好ましくは20〜100kDaである。polysaccharide 2のアルデヒドへの置換度は,1〜50%,好ましくは3〜25%の範囲内であり,その分子量は10〜800kDa,好ましくは50〜250kDaである。好ましい多糖類はヒアルロナン,コンドロイチン硫
酸,セルロース及びそれらの薬学的に許容される誘導体及び/又は塩類を含む。
【0029】
R
1は,好ましくはアジピン酸ジヒドラジド及びヘキサメチレンジアミンからなる群から選択され,R
2は好ましくは縮合した芳香族系であり,より好ましくはピレン,アントラセン,フェナントレン,ペリレン,アントラキノン,クマリン,及び原子C,H,O,S,Nをそれらの構造中に含んでいてもよく,かつ,電磁放射の吸収を示すそれらの置換誘導体からなる群から選択され,最も好ましくはR
2はピレンである。
【0030】
polysaccharide 1対polysaccharide 2の重量比は好ましくは1:2〜2:1の範囲内にある。polysaccharide 1及び2の水溶液は,さらに無機塩類又は緩衝剤,好ましくはリン酸塩緩衝剤からなる群から選択された水溶性物質を含んでいてもよく,この溶液のpHは6.5〜7.5の範囲内,好ましくは7.0である。
【0031】
本発明に記載された方法によって調製された反応混合物は,10〜50℃,好ましくは20〜35℃の温度で,0.25〜2時間,好ましくは0.5〜1時間電磁放射を受け,ここで使用される電磁放射は320−400nm,好ましくは330−370nmの範囲内の波長を有する。上記で述べたように,本発明の利点は,電磁放射源スイッチ又は電磁放射のパルス源又は反応混合物の遮蔽を使用して反応を時間的に制御し得ることである。本発明は,さらにまたフォトマスク,焦点を合わせた電磁放射又は電磁放射のビームを使用して反応の空間的制御を可能にする。
【0032】
本発明によって製造された材料は,組織工学又は再生医療の分野でスキャホールド,フィラーの形態で,又は生物医学の分野で生理活性物質の制御放出を伴う感光性材料に基づく薬物キャリアの形態で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】反応混合物中でゲル化の測定のため上下逆の方法(upside-down method)の使用を表わす。(a)光分解前の2成分反応混合物(Pmoc−DHA−HA及びHAアルデヒド)の溶液。(b)光分解後の架橋された生成物(HA−DHA−HA)のヒドロゲル。(c)PBS(pH=7.4,c=0.9w/v%)中で一時間後の架橋された生成物(HA−DHA−HA)のヒドロゲル。
【
図2】反応混合物の表面の50%に半円形のフォトマスクを使用した架橋反応(Pmoc−DHA−HA及びHAアルデヒド)の空間的制御を示す。(a) 光分解後の反応混合物,(b)PBS(pH=7.4,c=0.9w/v%)中で15分後かつPBS溶液をデカントした後の反応混合物,(c)PBS(pH=7.4,c=0.9w/v%)中で15分後かつ新しいPBSのポーション(portion)を追加した後の反応混合物。
【
図3】凍結乾燥された試料の顕微鏡写真を示す。(a):ヒドロゲル表面(100x),(b)ヒドロゲル断面(100x),(c)PBS(pH=7.4,c=0.9w/v%)中で一時間後のヒドロゲルの断面。
【0034】
実施例
ここで使用される用語である当量(eqv)は,特記しない限りヒアルロン酸の二糖,コンドロイチン硫
酸の二糖又はカルボキシルメチルセルロースナトリウムの単糖に関する。
【0035】
パーセンテージは特記しない限り,質量百分率として使用される。
【0036】
最初のヒアルロン酸(供給者:Contipro Pharma a.s., Dolni Dobrouc, CZ)の分子量は,10
4〜10
6 g.mol
-1の範囲内の平均分子量であり,SEC-MALLSによって測定された。
【0037】
最初のコンドロイチン硫
酸(供給者:Sigma-Aldrich s.r.o., Prague, CZ)の分子量は,4×10
4〜5×10
4Da又はg.mol
-1の範囲内の平均分子量で,SEC-MALLS法で測定された。コンドロイチ
ン4硫酸(C4S)とコンドロイチ
ン6硫酸(C6S)の比率は2:3であった。この材料は動物材料から単離された。
【0038】
最初のカルボキシルメチルセルロースナトリウム(供給者:Sigma-Aldrich s.r.o., Prague, CZ)の分子量は,22×10
4〜25×10
4g.mol
-1の範囲内の平均分子量で,SEC-MALLSで測定された。カルボキシメチル基によるアルキル化度は70%であった。
【0039】
グリコサミノグリカンの構造中の置換度又は修飾率は,次の計算によって決定された:
DS=置換度=100% *(結合した置換基又は修飾された二糖のモル量)/(すべての二糖のモル量)
カルボキシルメチルセルロースナトリウムの構造中の修飾率は,次の計算によって決定された:
DS=置換度=100%* (結合した置換基又は修飾された単糖のモル量)/ (すべての単糖のモル量)
PPG=光除去可能な保護基
DHA=アジピン酸ジヒドラジド
HMD=1,6−ヘキサメチレンジアミン
Pmoc=ピレン−1−イルメトキシカルボニル
UVA=公称λmax =365nmを有する長波紫外光源Black-Ray水銀スポットランプ,モデルB−100A(UVP)によって照射された波長320−400nmの範囲内の近紫外線(near ultraviolet radiation)
【0040】
凍結乾燥されたゲルの表面モフォロジーは走査電子顕微鏡Zeiss Ultra Plusで分析した。
【0041】
脱アセチル化ヒアルロン酸は,Buffa R., et al., CZ304512によりヒドラジンで脱アセチル化することによって調製された。
【0042】
多糖類の酸化はBuffa R, et al.: WO2011069474 及び WO2011069475によって行なわれた。
【0043】
実施例1:Pmoc−アジピン酸ジヒドラジドヒアルロナン(Pmoc−DHA−HA)の調製
HAアルデヒド(100mg,0.265mmol,DS=43%,Mw=1.35×10
5g/mol)を,5mLの蒸留水に溶解した(溶液I)。Pmoc−DHA(54mg,0.126mmol)を5mLのDMSOに溶解した(溶液II)。両溶液を混合して室温で24時間反応させた。
第二の工程で,PicBH
3(81mg,0.754mmol)を添加した。この反応混合物を室温で48時間撹拌した。生成物をIPAで沈殿させた。
DS=10%,Mw=0.34×10
5 g/mol,単離収率85%
1H NMR(D
2O): δ 1.60(bs,4H);2.21(bs,2H);2.25(bs,2H);2.98(bs,1H,ポリマー−N
6a);3.26(bs,1H,ポリマー−N
6b);5.89(s,2H,−
CH2−pyr);7.98−8.41(m,9H
Ar)ppm
H−H COSY(D
2O)クロスピーク: δ 1.60−2.21;1.60−2.25;2.98−3.26ppm
HSQC(D
2O)クロスピーク: δ 1.60(
1H)−24.6(
13C);2.21(
1H)−33.0(
13C);2.25(
1H)−33.1(
13C);2.98(
1H)−50.0(
13C);3.26(
1H)−50.0(
13C);5.89(
1H)−64.3(
13C);7.98(
1H)−124.2(
13C);8.05(
1H)−125.3(
13C);8.30(
1H)−129.6(
13C);8.41(
1H)−131.2(
13C)ppm
DOSY NMR(D
2O): logD(1.60ppm,2x−CH
2−リンカー)≒−10.70m
2/s
logD(2.03ppm,Me−CO−NH−ポリマー)≒−10.70m
2/s
logD(2.21ppm,−
CH2−CONHNH
2)≒−10.70m
2/s
logD(2.25ppm,−
CH2−CONHNH−ポリマー)≒−10.70m
2/s
logD(2.98ppm,ポリマー−N
6a)≒−10,70m
2/s
logD(3.26ppm,ポリマー−N
6b)≒−10,70m
2/s
logD(5.89ppm,−
CH2−pyr)≒−10.70m
2/s
logD(7.98−8,41ppm,−CH
2−
pyr)≒−10.70m
2/s
logD(4.72ppm,H
2O)≒−8.6m
2/s
UV/Vis(0,01%,H
2O):λ
max1,2=350,329nm
【0044】
実施例2:Pmoc−ヘキサメチレンジアミンヒアルロナン(Pmoc−HMD−HA)の調製
HAアルデヒド(100mg,0.265mmol,DS=10%,Mw=1.92×10
5g/mol)を,5mLの蒸留水に溶解した(溶液I)。Pmoc−HMD(19mg,0.05mmol)を5mLのDMSOに溶解した(溶液II)。両溶液を混合して室温で24時間反応させた。第二の工程で,PicBH
3(81mg,0.754mmol)を添加した。この反応混合物を室温で48時間撹拌した。生成物をIPAによる沈澱によって得た。
DS=7%,Mw=1.92x10
5g/mol,単離収率71%。
1H NMR (D
2O): δ 1.34(bs,4H);1.45(bs,2H);1.66(bs;2H;2H);3.05(bs;2H;−
CH2−NHCO−pyr);3.15(bs;2H;−CH
2−NH−ポリマー);3.26(bs;1H;ポリマー−N
6a);3.48(bs;1H;ポリマー−N
6b);5.83(bs,2H,−CH
2−pyr),8.00−8.45(m,9H
Ar)ppm
H−H COSY(D
2O)クロスピーク: δ 1.34−1.45;1.34−1.66;1.66−3.05;1.45−3.15;3.26−3.48ppm
HSQC(D
2O)クロスピーク: δ 1.34(
1H)−26.3(
13C);1.45(
1H)−28.7(
13C);1.66(
1H)−26.1(
13C);3.05(
1H)−48.2(
13C);3.15(
1H)−41.3(
13C);3.26(
1H)−48.5(
13C);3.48(
1H)−48.5(
13C);5.83(
1H)−64.3(
13C);8.00(
1H)−124.2(
13C);8.09(
1H)−125.7(
13C);8.26(
1H)−130.1(
13C);8.45(
1H)−131.7(
13C)ppm
DOSY NMR(D
2O): logD(1.34ppm,2x−CH
2−リンカー)≒−10.60m
2/s
logD(1.45ppm,−CH
2−リンカー)≒−10.60m
2/s
logD(1.66ppm,−CH
2−リンカー)≒−10.60m
2/s
logD(2.03ppm,Me−CO−NH−ポリマー)≒−10.60m
2/s
logD(3.05ppm,
−CH2−NHCO−)≒−10.60m
2/s
logD(3.15ppm,−
CH2−NH−ポリマー)≒−10.60m
2/s
logD(3.26ppm,ポリマー−N
6a)≒−10.60m
2/s
logD(3.48ppm,ポリマー−N
6b)≒−10.60m
2/s
logD(5.83ppm,−CH
2−pyr)≒−10.60m
2/s
logD(8.00−8.45ppm,H
Ar)≒−10.60m
2/s
logD(4.72ppm,H
2O)≒−8.6m
2/s
UV/Vis(0.01%,H
2O) :λ
max1,2=348,330nm
【0045】
実施例3:Pmoc−アジピン酸ジヒドラジドコンドロイチン硫
酸(Pmoc−DHA−CS)の調製
CSアルデヒド(50mg,0.10mmol,DS=14%,Mw=3.0−4.0×10
5g/mol)を,2.5mLの蒸留水に溶解した(溶液I)。Pmoc−DHA(8.7mg,0.02mmol,0.2当量)を2.5mLのDMSOに溶解した(溶液II)。両溶液を混合して室温で24時間反応させた。第2工程で,PicBH
3(32mg,0.3mmol,3当量)を添加した。この反応混合物を室温で48時間撹拌した。生成物をIPAによる沈澱によって得た。
DS=5−6%,Mw=3.0−4.0×10
5g/mol,単離収率84%
1H NMR(D2O): δ1.66(bs,4H);2.25−2.32(m,4H);3.00(bs,1H,ポリマー−N
6a);3.25(bs,1H,ポリマー−N
6b);5.89(bs,2H,−
CH2−pyr);8.15−8.38(m,9H
Ar)ppm
H−H COSY(D
2O)クロスピーク: δ 1.66−2.25;1.66−2.32;3.00−3.25ppm
HSQC(D
2O)クロスピーク: δ 1.66(
1H)−25.0(
13C);2.25(
1H)−31.2(
13C);2.32(
1H)−32.8(
13C);3.00(
1H)−50.6(
13C);3.25(
1H)−50.6(
13C);5.89(
1H)−64.6(
13C);8.16(
1H)−124.8(
13C);8.38(
1H)−125.6(
13C);8.30(
1H)−129.6(
13C)ppm
DOSY NMR(D
2O): logD(1.66ppm,2x−CH
2−リンカー)≒−10.50m
2/s
logD(2.04ppm,Me−CO−NH−ポリマー)≒−10.50m
2/s
logD(2.25−2.32ppm,
−CH2−CONHNH
2,−
CH2−CONHNHポリマー)≒−10.50m
2/s
logD(3.00ppm,ポリマー−N
6a)≒−10.50m
2/s
logD(3.25ppm,ポリマー−N
6b)≒−10.50m
2/s
logD(5.89ppm,−CH
2−pyr)≒−10.50m
2/s
logD(8.15−8.38ppm,−CH2−
pyr)≒−10.50m
2/s
logD(4.72ppm,H
2O)≒−8.6m
2/s
UV/Vis(0.01%,H
2O): λ
max1,2=343,328nm
【0046】
実施例4:Pmoc−カルボキシルメチルセルロースナトリウムのアジピン酸ジヒドラジド(Pmoc−DHA−CMCNa)の調製
CMCNaアルデヒド(100mg,0.45mmol,DS=4−5%,Mw=8.2×10
5g/mol)を,蒸留水5mLに溶解した(溶液I)。Pmoc−DHA(19.4mg,0.045mmol,0.1当量)を5mLのDMSOに溶解した(溶液II)。両溶液を混合して室温で24時間反応させた。
第2工程で,PicBH
3(144mg,1.345mmol,3当量)を添加した。この反応混合物を室温で48時間撹拌した。生成物をIPAによる沈澱によって得た。
DS=2%,Mw=0.80×10
5g/mol,単離収率88%
1H NMR(D
2O): δ 1.60−1.65(bs,4H);2.22(bs,2H);2.38(bs,2H);3.00(bs,1H,ポリマー−H
6a);3.37(bs,1H,ポリマー−H
6b);5.84−5.87(bs,2H,
−CH2−pyr);8.05−8.33(m,9H
Ar)ppm
H−H COSY(D
2O)クロスピーク: δ 1.60−2.22;1.65−2.38;3.00−3.37ppm
HSQC(D
2O)クロスピーク: δ 1.60−1.65(
1H)−25.3(
13C);2.22(
1H)−33.6(
13C);2.38(
1H)−32.7(
13C);3.00(
1H)−50.1(
13C);3.37(
1H)−51.3(
13C);5.84−5.87(
1H)−64.2(
13C);8.05(
1H)−123.5(
13C);8.30(
1H)−125.1(
13C);8.33(
1H)−129.4(
13C)ppm
DOSY NMR(D
2O): logD(1.60−1.65ppm,2x−CH
2−リンカー)≒−10.60m
2/s
logD(2.22−2.38ppm,−
CH2−CONHNH
2,−CH
2−CONHNHポリマー)≒−10.60m
2/s
logD(3.00ppm,ポリマー−N
6a)≒−10.60m
2/s
logD(3.37ppm,ポリマー−N
6b)≒−10.60m
2/s
logD(4.55−4.61ppm,H1aH1‘−ポリマー)≒−10,60m
2/s
logD(5,84−5,87ppm,
−CH2−pyr)≒−10.60m
2/s
logD(8.05−8.33ppm,−CH
2−
pyr)≒−10.60m
2/s
logD(4.72ppm,H
2O)≒−8.6m
2/s
FT−IR(KBr):C=O st 1750−1680cm
−1(炭酸塩)
N−CO−O st as 1270−1210cm
−1(炭酸塩)
st sy 1050−850cm
−1(炭酸塩)
UV/Vis(0,01%,H
2O): λ
max1,2=344,329nm
【0047】
実施例5:Pmoc−HMD−HAの調製
20mLのTHFに溶解したPmoc−1−H−イミダゾールカルボキシラート(326mg,1mmol)を,HMD−HA(200mg,0.5mmol,DS=36%)の水溶液20mLに添加し,その反応混合物を室温で24時間撹拌した。生成物(DS=8%,Y=40%)を,IPAによる沈澱によって得た。
この生成物の構造分析は実施例2に示される。
【0048】
実施例6:Pmoc−DHA−HAの調製
20mLのTHFに溶解したPmoc−1−H−イミダゾールカルボキシラート(326mg,1mmol)を,DHA−HA(200mg,0.5mmol,DS=25%)の水溶液20mLに添加し,その反応混合物を室温で24時間撹拌した。生成物(DS=6%及びY=45%)を,IPAによる沈澱によって得た。
生成物の構造分析は実施例1において示される。
【0049】
実施例7:Pmoc−脱アセチル化ヒアルロナン(Pmoc−DEA−HA)の調製
THF20mLに溶解したPmoc−1−H−イミダゾールカルボキシラート(326mg,1mmol)を,DEA−HA(200mg,0.5mmol,DS=32%,Mw=0.37×10
5g/mol)の水溶液20mLに添加し,その反応混合物を40℃で24時間撹拌した。生成物をIPAによる沈澱によって得た。
DS=7%,単離収率35%
1H NMR(D
2O): δ3.70(bs,1H,N2);5.86(bs,2H,−CH
2−pyr);8.10−8.35(m,9H,pyr)ppm
HSQC(D
2O)クロスピーク: δ 3.70(
1H)−56.3(
13C);5.86(
1H)−63.90(
13C);8.10(
1H)−124.0(
13C);8.20(
1H)−125.4(
13C);8.30(
1H)−129.0(
13C);8.35(
1H)−131.8(
13C)ppm
UV/Vis(0.01%,H
2O): λ
max1,2=348,329nm
【0050】
実施例8:HAアルデヒドの存在下でのPmoc−DHA−HAの光分解及び架橋
方法1:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中の2mLのD
2Oに溶解した。HAアルデヒド(10mg,0.025mmol,DS=11%,Mw=0.66×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流を用いて脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射し,その間試料を
1H NMR分析のために15分間隔で取り出した。
架橋密度(δ=7.49ppm,HA−CH=N−HA)の増加を,特定の時間間隔(15/30/45/60分)でモニターし,各々レベル(18/31/66/85%)であった。
【0051】
実施例9:α,β−不飽和HAアルデヒドの存在下でのPmoc−DHA−HAの光分解及び架橋
方法1:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中の2mLのD
2Oに溶解した。α,β−不飽和HAアルデヒド(10mg,0.025mmol,DS=5%,Mw=0.68×10
5g/mol)を添加した。試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射し,その間
1H NMR分析のための試料を15分間隔で取り出した。架橋結合密度(δ=7.58ppm(H6)及び5.60ppm(H4),HA−CH=N−HA)の増加を,特定の時間間隔(15/30/45/60分)でモニターし,各々レベル(20/32/48/75%)であった。
【0052】
実施例10:飽和HAアルデヒドの存在下でのPmoc−DHA−HAの光分解及び架橋
方法1:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中の2mLのD
2Oに溶解した。HAアルデヒド(10mg,0.025mmol,DS=11%,Mw=0.66×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流を用いて脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射し,その間
1H NMR分析のためのアリコートを15分間隔で取り出した。60分間のUV照射の後,ヒドラゾンが85%生成した(δ=7.49ppm,HA−CH=N−HA)。
方法2:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中の2mLのD
2Oに溶解した。HAアルデヒド(10mg,0.025mmol,DS=45%,Mw=0.35×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射し,
1H NMR分析のために15分間隔で試料を取り出した。60分間UV照射の後,ヒドラゾンが95%形成された(δ=7.49ppm,HA−CH=N−HA)。
方法3:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中の2mLのPBS(c=0.9%,pH=7.4)に溶解した。HAアルデヒド(10mg,0.025mmol,DS=11%,Mw=5.10×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら37℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。1時間のUVA照射の後,溶液の粘性が増加した。
方法4:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(c=0.9%,pH=7.4)2mLに溶解した。HAアルデヒド(10mg,0.025mmol,DS=11%,Mw=5.1×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら50℃,25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。1時間のUVA照射の後,溶液の粘性が増加した。
方法5:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(c=0.9%,pH=7.4)3mLに溶解した。HAアルデヒド(20mg,0.050mmol,DS=11%,Mw=5.10×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。1時間のUVA照射の後,ゲルが形成された。
方法6:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(c=0.9%,pH=7.4)3mLに溶解した。HAアルデヒド(20mg,0.050mmol,DS=11%,Mw=5.10×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=6.5,N
2下,UVA中で0.25時間照射した。1時間のUVA照射の後,溶液の粘性が増加した。
方法7:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(c=0.9%,pH=7.4)3mLに溶解した。HAアルデヒド(20mg,0.050mmol,DS=11%,Mw=5.10×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7.5,N
2下,UVA中で2時間照射した。2時間のUVA照射の後,ゲルが形成された。
DS=3%,ヒドラゾン基
1H NMR(D
2O): δ 7.49(bs,1H,−N=CH−)ppm
HSQC(D
2O)クロスピーク: δ 7.49(
1H)−146.6(
13C)ppm
DOSY NMR(D
2O): logD(2.04ppm,Ac−NH−ポリマー)≒−11.5m
2/s
logD(7.49ppm,−N=CH−)≒−11.5m
2/s
logD(4.75ppm,H
2O)≒−8.6m
2/s
【0053】
実施例11:α,β−不飽和のHAアルデヒドの存在下でのPmoc−DHA−HAの光分解及び架橋
方法1:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中の2mLのD
2Oに溶解した。α,β−不飽和のHAアルデヒド(10mg,0.025mmol,DS=5%,Mw=0.68×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射し,その間
1H NMR分析のための試料を15分間隔で取り出した。60分間のUVA照射の後,ヒドラゾン(δ=7.58ppm(H6)及び5.60ppm(H4),HA−CH=N−HA)が75%形成された。
方法2:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(0.9%,pH=7.4)2mLに溶解した。α,β−不飽和のHAアルデヒド(10mg,0.025mmol,DS=4%,Mw=2.05×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。1時間のUVA照射の後,溶液の粘性が増加した。
方法3:Pmoc−DHA−HA(10mg,0.025mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(0.9%,pH=7.4)3mLに溶解した。α,β−不飽和HAアルデヒド(20mg,0.05mmol,DS=4%,Mw=2.05×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。1時間のUVA照射の後,溶液の粘性が増加した。
方法4:Pmoc−DHA−HA(20mg,0.05mmol,DS=10%,Mw=2.64×10
5g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(0.9%,pH=7.4)3mLに溶解した。α,β−不飽和HAアルデヒド(10mg,0.025mmol,DS=4%,Mw=2.05×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。1時間のUVA照射の後,溶液の粘性が増加した。
DS=3%,ヒドラゾン基
1H NMR (D
2O): δ 7.58(bs,1H,−N=CH−);5.60(bs,1H,−CH=C−)ppm
HSQC(D
2O)クロスピーク: δ 7.58(
1H)−147.3(
13C);5.60(
1H)−110.30(
13C)ppm
DOSY NMR(D
2O):logD(2.04ppm,Ac−NH−ポリマー)≒−11.2m
2/s
logD(5.60ppm,−CH=C−)≒−11.2m
2/s
logD(7.58ppm,−N=CH−)≒−11.2m
2/s
logD(4.75ppm,H
2O)≒−8.6m
2/s
【0054】
実施例12:飽和HAアルデヒドの存在下でのPmoc−DHA−CSの光分解及び架橋
方法1:Pmoc−DHA−CS(10mg,0.020mmol,DS=5%,Mw=2−4×10
4g/mol)を,石英フラスコ中の1mLのD
2Oに溶解した。HAアルデヒド(8mg,0.020mmol,DS=33%,Mw=0.40×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。60分間のUVA照射の後,ヒドラゾンが100%生成した(δ=7.60ppm,HA−CH=N−DHA−CS)。
方法2:Pmoc−DHA−CS(10mg,0.020mmol,DS=5%,Mw=2−4×10
4g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(c=0.9%,pH=7.4)1mLに溶解した。HAアルデヒド(8mg,0.025mmol,DS=33%,Mw=0.40×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。1時間のUVA照射の後,ヒドラゾンが70%生成した。
DS=5%,ヒドラゾン基
1H NMR(D
2O): δ 7.60(bs,1H,−N=CH−)ppm
HSQC(D
2O)クロスピーク: δ7.60(
1H)−145.0(
13C)ppm
DOSY NMR(D
2O):logD(2.04ppm,Ac−NH−ポリマー)≒−11.2m
2/s
logD(7.60ppm,−N=CH−)≒−11.2m
2/s
logD(4.75ppm,H
2O)≒−8.6m
2/s
【0055】
実施例13:飽和HAアルデヒドの存在下でのPmoc−DHA−CMCNaの光分解及び架橋
方法1:Pmoc−DHA−CMCNa(10mg,0.038mmol,DS=3−4%,Mw=6−8×10
4g/mol)を,石英フラスコ中の1mLのD
2Oに溶解した。HAアルデヒド(15mg,0.038mmol,DS=33%,Mw=0.40×10
5g/mol)。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。60分間UVA照射の後,ヒドラゾンが100%生成した(δ=7.55及び7.60ppm,HA−CH=N−DHA−CMC)。
方法2:Pmoc−DHA−CMCNa(10mg,0.038mmol,DS=3−4%,Mw=6−8×10
4g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(c=0.9%,pH=7.4)1mLに溶解した。HAアルデヒド(15mg,0.038mmol,DS=33%,Mw=0.40×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。1時間のUVA照射の後,ヒドラゾンが90%形成された。
DS=4%,ヒドラゾン基
1H NMR(D
2O): δ 7.55及び7.60(bs,1H,−N=CH−)ppm
HSQC(D
2O)クロスピーク: δ 7.55(
1H)−148.2(
13C);7.60(
1H)−148.2(
13C);ppm
DOSY NMR(D
2O):logD(2.04ppm,Ac−NH−HA)≒−11.4m
2/s
logD(4.55−4,60ppm,H1aH1‘−CMCNa)≒−11.4m
2/s
logD(7.55及び7.60ppm,−N=CH−)≒−11.4m
2/s
logD(4.75ppm,H
2O)≒−8.6m
2/s
【0056】
実施例14:飽和CSアルデヒドの存在下でのPmoc−DHA−CSの光分解及び架橋
Pmoc−DHA−CS(10mg,0.020mmol,DS=5%,Mw=2−4×10
4g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(c=0.9%,pH=7.4)1mLに溶解した。CS(10mg,0.02mmol,DS=5%)を添加した。この試料を窒素流中で脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。60分間のUVA照射の後,粘性が増加した。
1H NMR(D
2O): δ 7.55−7.60(bs,1H,−N=CH−)ppm
【0057】
実施例15:CMCNaアルデヒドの存在下でのPmoc−DHA−CMCNaの光分解及び架橋
Pmoc−DHA−CMCNa(10mg,0.038mmol,DS=3−4%,Mw=0.60−0.80×10
5g/mol)を,石英フラスコ中のPBS(c=0.9%,pH=7.4)1mLに溶解した。CMCNa−アルデヒド(9mg,0.038mmol,DS=3−4%,Mw=0.6×10
5g/mol)を添加した。この試料を窒素流を用いて脱酸素し,撹拌しながら25℃,pH=7,N
2下,UVA中で1時間照射した。60分間のUVA照射の後,粘性が増加した。
1H NMR(D
2O): δ 7.55−7.60(bs,1H,−N=CH−)ppm