特許第6812411号(P6812411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6812411車両用灯具、車両用灯具制御システムおよびこれらを備えた車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812411
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】車両用灯具、車両用灯具制御システムおよびこれらを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/147 20180101AFI20201228BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20201228BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20201228BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20201228BHJP
   F21S 41/65 20180101ALI20201228BHJP
   F21S 41/43 20180101ALI20201228BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20201228BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20201228BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20201228BHJP
   F21V 5/02 20060101ALI20201228BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20201228BHJP
   F21S 41/24 20180101ALI20201228BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20201228BHJP
   B60Q 1/00 20060101ALI20201228BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20201228BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20201228BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20201228BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20201228BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20201228BHJP
【FI】
   F21S41/147
   F21S41/16
   F21S41/25
   F21S41/20
   F21S41/65
   F21S41/43
   F21S41/153
   F21S41/148
   F21S41/663
   F21V5/02 400
   F21V5/00 320
   F21S41/24
   F21V5/04 600
   B60Q1/00 G
   B60Q1/04 Z
   F21W102:10
   F21W103:60
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】17
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-507414(P2018-507414)
(86)(22)【出願日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】JP2017011796
(87)【国際公開番号】WO2017164328
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2019年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-59877(P2016-59877)
(32)【優先日】2016年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-82004(P2016-82004)
(32)【優先日】2016年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕一
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/107678(WO,A1)
【文献】 特開2011−129376(JP,A)
【文献】 特開2008−262755(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/129251(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/147
B60Q 1/00
B60Q 1/04
F21S 41/148
F21S 41/153
F21S 41/16
F21S 41/20
F21S 41/24
F21S 41/25
F21S 41/43
F21S 41/65
F21S 41/663
F21V 5/00
F21V 5/02
F21V 5/04
F21W 102/10
F21W 103/60
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具左右方向よりも上下方向に長い光源像を形成可能な路面描画用の光源ユニットと、
前記光源像を形成する光を透過して、所定の配光パターンを路面に投影する投影レンズと、
を備え、
前記光源ユニットの発光面あるいは光透過面が前記投影レンズの後方焦点付近に配置され、
前記発光面あるいは前記光透過面が、前記投影レンズの光軸に直交する上下方向に対して傾斜し
前記光源ユニットは、前記後方焦点付近に配置されて前記光軸側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能な一つの発光素子を含み、
前記発光素子の発光面は、前記上方向に向かうにつれて前記後方焦点よりも後方側に離れるように傾斜して配置されている、車両用灯具。
【請求項2】
灯具左右方向よりも上下方向に長い光源像を形成可能な路面描画用の光源ユニットと、
前記光源像を形成する光を透過して、所定の配光パターンを路面に投影する投影レンズと、
を備え、
前記光源ユニットの発光面あるいは光透過面が前記投影レンズの後方焦点付近に配置され、
前記発光面あるいは前記光透過面が、前記投影レンズの光軸に直交する上下方向に対して傾斜し、
前記光源ユニットは、前記後方焦点付近に配置されて前記光軸側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能に配列された個別点消灯可能な複数の発光素子を含み、
前記複数の発光素子の発光面は、前記後方焦点付近に配置された発光素子から前記上方向側の発光素子に向かうにつれて前記後方焦点よりも後方側へ離れるように傾斜して配置されている、車両用灯具。
【請求項3】
灯具左右方向よりも上下方向に長い光源像を形成可能な路面描画用の光源ユニットと、
前記光源像を形成する光を透過して、所定の配光パターンを路面に投影する投影レンズと、
を備え、
前記光源ユニットの発光面あるいは光透過面が前記投影レンズの後方焦点付近に配置され、
前記発光面あるいは前記光透過面が、前記投影レンズの光軸に直交する上下方向に対して傾斜し、
前記光源ユニットは、少なくとも一つの発光素子と、前記少なくとも一つの発光素子と前記投影レンズとの間であって前記後方焦点上に配置された遮光部材とを含み、
前記遮光部材は、前記光軸側から上方向に向かって延びる開口部を備え、
前記遮光部材の光透過面は、前記開口部の上方向に向かうにつれて前記後方焦点よりも後方側に離れるように傾斜して配置されている、車両用灯具。
【請求項4】
幅が均一でない光源像を形成可能な路面描画用の光源ユニットと、前記光源像を形成する光を透過して、所定の配光パターンを路面に投影する投影レンズと、
を備え、
前記投影レンズの焦点面内における前記光源像のうち車両の遠方へ投影される部分の領域が、車両の近傍へ投影される部分の領域よりも、灯具左右方向の幅が細くなっている、車両用灯具。
【請求項5】
前記光源ユニットは、前記投影レンズの後方焦点付近に配置され、前記投影レンズの光軸側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能な一つの発光素子を含み、
前記発光素子は、前記後方焦点付近から上方側に向かうにつれて前記幅が太くなっている、請求項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記光源ユニットは、前記投影レンズの後方焦点付近に配置され、前記投影レンズの光軸側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能に配列された個別点消灯可能な複数の発光素子を含み、
前記複数の発光素子は、前記後方焦点付近に配置された発光素子から前記上方向側の発光素子に向かうにつれて、その数が増えるように配列されている、請求項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記光源ユニットは、少なくとも一つの発光素子と、前記少なくとも一つの発光素子と前記投影レンズとの間であって前記投影レンズの後方焦点付近に配置された遮光部材と、を含み、
前記遮光部材には、前記後方焦点付近から上方側に向かうにつれて前記幅が太くなっている開口部が形成されている、請求項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
請求項またはに記載の車両用灯具と、前記複数の発光素子の点灯を制御する点灯制御部と、
を備え、
前記点灯制御部は、前記投影レンズから路面に投影される配光パターンまでの距離に応じて各発光素子の光度を変更させる、車両用灯具制御システム。
【請求項9】
路面描画用のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を透過させる投影レンズと、
前記レーザ光源と前記投影レンズとの間に配置され、前記レーザ光が入射される光学部材と、
を備え、
前記光学部材は、その出射面において、その入射面よりも輝度が均一化された四角形状の光源像を形成するように構成され
前記光学部材は、前記投影レンズの後方焦点付近に配置された遮光部材から構成され、
前記遮光部材は、前記レーザ光の少なくとも一部を通過させる四角形状の開口部を備えている、車両用灯具。
【請求項10】
路面描画用のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を透過させる投影レンズと、
前記レーザ光源と前記投影レンズとの間に配置され、前記レーザ光が入射される光学部材と、
を備え、
前記光学部材は、その出射面において、その入射面よりも輝度が均一化された四角形状の光源像を形成するように構成され、
前記光学部材は、前記投影レンズの後方焦点付近であって前記レーザ光源に近接して配置された拡散部材から構成され、
前記拡散部材は、その出射面が四角形状を有している、車両用灯具。
【請求項11】
路面描画用のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を透過させる投影レンズと、
前記レーザ光源と前記投影レンズとの間に配置され、前記レーザ光が入射される光学部材と、
を備え、
前記光学部材は、その出射面において、その入射面よりも輝度が均一化された四角形状の光源像を形成するように構成され、
前記光学部材は、前記投影レンズの後方焦点付近に配置された付加レンズから構成され、
前記付加レンズは、その出射面が四角形状を有し
前記四角形状は、前記後方焦点から離れるにつれてその幅が広くなるような形状である、車両用灯具。
【請求項12】
前記レーザ光源は、励起光を出射するものであり、
前記付加レンズは、その入射面あるいは出射面に前記励起光により励起されて蛍光を発する蛍光体層を含む、請求項11に記載の車両用灯具。
【請求項13】
前記付加レンズは、ロッドインテグレータである、請求項11または12に記載の車両用灯具。
【請求項14】
路面描画用のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を透過させる投影レンズと、
を備え、
前記レーザ光源は、
レーザ出射部と、
前記レーザ出射部から出射された前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記レーザ出射部と前記集光レンズとを収容する筐体と、
前記投影レンズの後方焦点付近に配置された蛍光体と、
を含み、
前記蛍光体は、その出射面が四角形状を有し
前記四角形状は、前記後方焦点から離れるにつれてその幅が広くなるような形状である、車両用灯具。
【請求項15】
前記投影レンズの入射面または出射面には、前記レーザ光から形成される光源像を、灯具左右方向および灯具上下方向のいずれか一方を他方よりも大きくするステップが形成されている、請求項から14のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項16】
前記レーザ光源は、白色レーザダイオード、またはRGB光を合成して白色レーザ光を照射するための複数のレーザダイオードを含む、請求項から15のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項17】
請求項からから16のいずれか一項に記載の車両用灯具、または請求項に記載の車両用灯具制御システムを備えている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に路面描画用の配光パターンを照射可能な車両用灯具、車両用灯具制御システムおよびこれらを備えた車両に関する。
【0002】
また、本発明は、路面描画用のレーザ光源を備えた車両用灯具、および当該車両用灯具を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、位置検出装置によって検出された歩行者位置を取得して、歩行者位置と車速とを用いて車両が歩行者に衝突する危険度を判定し、危険度が高くなった場合には、照射幅の変更を繰り返しながら歩行者位置に向けて光が照射されるように車両用スポットランプによる光の照射を制御する車両用スポットランプシステムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、LED光源と、レーザ光源と、LED光源およびレーザ光源からそれぞれ出射した光により配光パターンを形成する光学系と、を有する車両用灯具が開示されている。LED光源および光学系は、すれ違いビーム用の配光パターンを形成するように構成され、レーザ光源および光学系は、配光パターンの中央部近傍であってカットオフラインを有する高輝度領域を形成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2013−82253号公報
【特許文献2】日本国特開2015−230768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の車両用スポットランプは、LEDからなる複数の発光素子が鉛直方向に3列で並列された発光素子ユニットを有しており、歩行者が存在する領域とその手前の領域に光を照射することにより、歩行者に向けて延在する配光パターンを形成して光の延在方向に歩行者が存在することを運転者に報知する。ところで、特許文献1においては、複数の発光素子の各々の発光面が投影レンズの後方焦点面に位置するよう配置されているため、特許文献1の図6図7に示すように車両の遠方を照射する光源像の照射幅が車両の近傍を照射する光源像の照射幅よりも広くなり、車両近傍から遠方まで均一な照射幅の配光パターンを得ることが困難であった。
【0007】
また、特許文献2に開示のようなレーザ光源を用いて、路面描画用のマークとして四角形状または線状の配光パターンを形成したいという要求がある。このとき、当該四角形状または線状の配光パターンは照度ムラのない均一な配光とさせることが望ましい。
【0008】
本発明の第一の目的は、簡便な構成で、車両近傍から遠方に亘って均一な照射幅の配光パターンを得ることが可能な車両用灯具、車両用灯具制御システムおよびこれらを備えた車両を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第二の目的は、レーザ光源を用いて照度ムラの少ない四角形状または線状の配光パターンを形成可能な車両用灯具および当該車両用灯具を備えた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第一の目的を達成するため、本発明に係る車両用灯具は、
灯具左右方向よりも上下方向に長い光源像を形成可能な路面描画用の光源ユニットと、
前記光源像を形成する光を透過して、所定の配光パターンを路面に投影する投影レンズと、を備え、
前記光源ユニットの発光面あるいは光透過面が前記投影レンズの後方焦点付近に配置され、
前記発光面あるいは前記光透過面が、前記投影レンズの光軸に直交する上下方向に対して傾斜している。
【0011】
この構成によれば、例えば、歩行者等の対象物を検知して検知された対象物がいる方向に向けて左右方向よりも前後方向により大きく延伸された配光パターンを路面描画する際に、簡便な構成で、車両近傍から遠方に亘って均一な照射幅の配光パターンを照射することができる。
【0012】
前記光源ユニットは、前記後方焦点付近に配置され、前記光軸側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能な一つの発光素子を含み、
前記発光素子の発光面は、前記上方向に向かうにつれて前記後方焦点よりも後方側に離れるように傾斜して配置されていてもよい。
【0013】
前記光源ユニットは、前記後方焦点付近に配置され、前記光軸側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能に配列された個別点消灯可能な複数の発光素子を含み、
前記複数の発光素子の発光面は、前記後方焦点付近に配置された発光素子から前記上方向側の発光素子に向かうにつれて前記後方焦点よりも後方側へ離れるように傾斜して配置されていてもよい。
【0014】
前記光源ユニットは、少なくとも一つの発光素子と、前記少なくとも一つの発光素子と前記投影レンズとの間であって前記後方焦点上に配置された遮光部材とを含み、
前記遮光部材は、前記光軸側から上方向に向かって延びる開口部を備え、
前記遮光部材の光透過面は、前記開口部の上方向に向かうにつれて前記後方焦点よりも後方側に離れるように傾斜して配置されていてもよい。
【0015】
これらの構成によれば、投影レンズの後方焦点面内において下端よりも上端の幅が広い光源像を形成することができる。
【0016】
また、上記第一の目的を達成するため、本発明に係る車両用灯具は、
幅が均一でない光源像を形成可能な路面描画用の光源ユニットと、
前記光源像を形成する光を透過して、所定の配光パターンを路面に投影する投影レンズと、を備え、
前記投影レンズの焦点面内における前記光源像のうち車両の遠方へ投影される部分の領域が、車両の近傍へ投影される部分の領域よりも、灯具左右方向の幅が細くなっている。
【0017】
この構成によれば、簡便な構成で、車両近傍から遠方に亘って均一な照射幅の配光パターンを路面描画することができる。
【0018】
前記光源ユニットは、前記投影レンズの後方焦点付近に配置され、前記投影レンズの光軸側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能な一つの発光素子を含み、
前記発光素子は、前記後方焦点付近から上方側に向かうにつれて前記幅が太くなっていてもよい。
【0019】
前記光源ユニットは、前記投影レンズの後方焦点付近に配置され、前記投影レンズの光軸側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能に配列された個別点消灯可能な複数の発光素子を含み、
前記複数の発光素子は、前記後方焦点付近に配置された発光素子から前記上方向側の発光素子に向かうにつれて、その数が増えるように配列されていてもよい。
【0020】
前記光源ユニットは、少なくとも一つの発光素子と、前記少なくとも一つの発光素子と前記投影レンズとの間であって前記投影レンズの後方焦点付近に配置された遮光部材と、を含み、
前記遮光部材には、前記後方焦点付近から上方側に向かうにつれて前記幅が太くなっている開口部が形成されていてもよい。
【0021】
これらの構成によれば、投影レンズの後方焦点面内において下端よりも上端の幅が広い光源像を形成することができる。
【0022】
また、上記第一の目的を達成するため、本発明に係る車両用灯具制御システムは、
上記に記載の車両用灯具と、
前記複数の発光素子の点灯を制御する点灯制御部と、を備え、
前記点灯制御部は、前記光学系から路面に投影される光源像までの距離に応じて各発光素子の光度を変更させる。
【0023】
この構成によれば、車両近傍から遠方に亘って均一な照度の線状配光パターンを得ることができる。
【0024】
また、上記第二の目的を達成するため、本発明に係る車両用灯具は、
路面描画用のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を透過させる投影レンズと、
前記レーザ光源と前記投影レンズとの間に配置され、前記レーザ光が入射される光学部材と、を備え、
前記光学部材は、その出射面において、その入射面よりも輝度が均一化された四角形状の光源像を形成するように構成されている。
【0025】
この構成によれば、レーザ光源を用いて、輝度ムラの少ない光源像を形成し、照度ムラの少ない四角形状の配光パターンを路面描画することができる。また、四角形状の光源像を延ばして投影することで照度ムラの少ない線状の配光パターンを得ることもできる。
【0026】
前記光学部材は、前記投影レンズの後方焦点付近に配置された遮光部材から構成され、
前記遮光部材は、前記レーザ光の少なくとも一部を通過させる四角形状の開口部を備えていてもよい。
【0027】
前記光学部材は、前記投影レンズの後方焦点付近であって前記レーザ光源に近接して配置された拡散部材から構成され、
前記拡散部材は、その出射面が四角形状を有していてもよい。
【0028】
前記光学部材は、前記投影レンズの後方焦点付近に配置された付加レンズから構成され、
前記導光体は、その出射面が四角形状を有していてもよい。
【0029】
これらの構成によれば、簡便な構成で、路面に描画される四角形状の配光パターンの照度の均一化を図ることができる。
【0030】
前記レーザ光源は、励起光を出射するものであり、
前記付加レンズは、その入射面あるいは出射面に前記励起光により励起されて蛍光を発する蛍光体層を含んでもよい。
【0031】
この構成によれば、蛍光体層により光の照度分布を均一化することができる。
【0032】
前記付加レンズは、ロッドインテグレータであってもよい。
【0033】
この構成によれば、レーザ光をロッドインテグレータの内部で全反射させて照度分布を均一化することができる。
【0034】
また、上記第二の目的を達成するため、本発明の別の例に係る車両用灯具は、
路面描画用のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を透過させる投影レンズと、を備え、
前記レーザ光源は、
レーザ出射部と、
前記レーザ出射部から出射された前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記レーザ出射部と前記集光レンズとを収容する筐体と、
前記投影レンズの後方焦点付近に配置された蛍光体と、を含み、
前記蛍光体は、その出射面が四角形状を有している。
【0035】
この構成によれば、レーザ光源と投影レンズとを備えた簡便な構成で、照度ムラの少ない四角形状または線状の配光パターンを路面描画することができる。
【0036】
前記四角形状は、前記後方焦点から離れるにつれてその幅が広くなるような形状であってもよい。
【0037】
この構成によれば、均一な照射幅の線状配光パターンを得ることができる。
【0038】
前記投影レンズの入射面または出射面には、前記レーザ光から形成される光源像を、灯具左右方向および灯具上下方向のいずれか一方を他方よりも大きくするステップが形成されていてもよい。
【0039】
この構成によれば、車両の左右方向あるいは前後方向に延伸された線状配光パターンを路面描画することで、運転者に所望の情報を報知することができ、運転の安全性の向上を図ることができる。
【0040】
前記レーザ光源は、白色レーザダイオード、またはRGB光を合成して白色レーザ光を照射するための複数のレーザダイオードを含んでもよい。
【0041】
この構成によれば、白色光からなる配光パターンを路面描画することができる。
【0042】
また、上記第一の目的および上記第二の目的を達成するため、本発明に係る車両は、
上記に記載の車両用灯具、または上記に記載の車両用灯具制御システムを備えている。
【0043】
この構成によれば、上記の車両用灯具や車両用灯具制御システムを搭載することで、車両における安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、簡便な構成で、車両近傍から遠方に亘って均一な照射幅の配光パターンを得ることが可能な車両用灯具、車両用灯具制御システムおよびこれらを備えた車両を提供することができる。
【0045】
また、本発明によれば、レーザ光源を用いて照度ムラの少ない四角形状または線状の配光パターンを形成可能な車両用灯具および当該車両用灯具を備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の第一実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図2】第一実施形態に係る光源の正面図である。
図3】第一実施形態に係る光源によって投影レンズの焦点面上に形成される光源像の一例を説明するための図である。
図4】第一実施形態に係る灯具を用いて路面上に投影された配光パターンの一例を説明するための図である。
図5】第一実施形態の変形例(変形例1)に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図6】第一実施形態の別の変形例(変形例2)に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図7図6に示す変形例2に係る遮光部材の正面図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図9】第二実施形態に係る光源の正面図である。
図10】第二実施形態の変形例(変形例3)に係る光源の正面図である。
図11】第二実施形態の別の変形例(変形例4)に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図12図11に示す変形例4に係る遮光部材の正面図である。
図13】本発明の第三実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図14】第三実施形態に係る遮光部材の正面図である。
図15】第三実施形態の灯具により形成される配光パターンの一例を示す図である。
図16】第三実施形態の灯具により形成される配光パターンの一例を示す図である。
図17】本発明の第四実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図18】第四実施形態に係る拡散部材の正面図である。
図19】本発明の第五実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図20】第五実施形態に係るロッドインテグレータの正面斜視図である。
図21】本発明の第六実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図22】本発明の第三から第六実施形態に係る灯具により形成される光源像の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図であり、図2は、図1に示す光源の正面図である。
本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯の少なくとも一方に搭載された路面描画用の灯具ユニット(路面描画装置)である。図1には車両用灯具1として一方の前照灯に搭載された路面描画用灯具ユニットの構造を示す。
【0048】
図1に示すように、車両用灯具1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、光源10(光源ユニットの一例)と、投影レンズ20と、が収容される。各構成要素は、図示しない支持機構によりランプボディ2に取り付けられる。
【0049】
図1および図2に示すように、光源10は、車両用灯具1の上下方向に沿って基板11のチップ搭載面11a上に密接して配列された複数(ここでは4個)のLEDチップ(発光素子の一例)12(12a〜12d)を備えている。なお、発光素子は、LEDチップ以外の半導体発光素子によって構成されていてもよい。図2に示すように、LEDチップ12のそれぞれは、略正方形の発光面を有する。なお、各LEDチップ12が、例えば長方形など正方形以外の発光面を有していても良い。各LEDチップ12からの光によって形成される光源像は、車両左右方向の幅を1とすると、左右方向の幅に対する上下方向の幅のアスペクト比が例えば0.5以上1.5以下であることが好ましい。また、各LEDチップ12は、制御部30からの制御信号に応じて個別に点消灯が可能である。
【0050】
図1に示すように、投影レンズ20は、例えば平凸レンズであって、平面状の入射面20aと、凸状の出射面20bとを備えている。入射面20aは、LEDチップ12に対向しており、出射面20bは、灯具前方に向けられている。投影レンズ20は、光軸Axと後方焦点面fpが交差する後方焦点fが複数のLEDチップ12のうち最下部のLEDチップ12d付近に位置するように配置される。なお、投影レンズ20の光軸Axは、投影レンズ20を透過した光が灯具前方の所定範囲の路面を照射するような方向に向けられていることが好ましい。
【0051】
基板11は、投影レンズ20の後方焦点fを通り光軸Axに直交する上下方向Dに沿って傾斜するように配置されている。すなわち、基板11は、上下方向Dにおいて、そのチップ搭載面11aが、投影レンズ20の入射面20aに対して傾斜する、具体的にはチップ搭載面11aの上側が投影レンズ20の後方焦点fから離れるように傾斜している。これにより、複数のLEDチップ12は、後方焦点f付近に配置されたLEDチップ12dから上方向側のLEDチップ12c,12b,12aに向かうにつれて、その発光面12Pが後方焦点fよりも灯具後方側へ離れるように傾斜して配置されている。
【0052】
各LEDチップ12a〜12dから出射された光は、投影レンズ20の入射面20aから入射され、出射面20bから出射される。このとき、基板11の上側に配置されたLEDチップ12aからの光Laは、灯具前方の近傍に照射され、LEDチップ12aよりも下側のLEDチップ12b〜12dからの光(例えば、光Lbや光Lc)は、LEDチップ12aからの光Laよりも灯具前方の遠方側に照射される。なお、投影レンズ20の入射面20aあるいは出射面20bに所定のステップを形成することにより、各LEDチップ12a〜12dからの光を光軸Axに対して上下に拡散した光線となるように屈折させてもよい。
【0053】
各LEDチップ12a〜12dの点消灯や、各LEDチップ12a〜12dからの光の出射強度調節、点滅速度調節は、制御部30によりなされる。これにより、制御部30は、複数のLEDチップ12a〜12dの個別点消灯や、各LEDチップ12a〜12dの光度や点滅速度を変化させることができる。制御部30は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUや記憶部などの素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。なお、制御部30は、図1では灯室3の外部に設けられているが、灯室3内に設けられてもよい。制御部30は、図示しないランプスイッチ等からの信号を受信し、受信した信号に応じて、各LEDチップ12a〜12dに各種の制御信号を送信する。
【0054】
図3は、第一実施形態に係る複数のLEDチップ12によって投影レンズ20の焦点面上に形成される光源像の一例を説明するための図であり、図4は、第一実施形態に係る光源10および投影レンズ20を用いて投影された配光パターンの一例を説明するための図である。
各LEDチップ12a〜12dから出射された光は、図1に示す投影レンズ20の焦点面fp上において、図3に示すような左右方向よりも上下方向に長い光源像Iを形成する。光源像Iは、各LEDチップ12a〜12dによってそれぞれ形成される各光源像Ia〜Idより構成されている。上述の通り、複数のLEDチップ12は、後方焦点f付近に配置されたLEDチップ12dから上方向側のLEDチップ12c,12b,12aに向かうにつれて後方焦点fよりも灯具後方側へ離れるように傾斜して配置されている。そのため、各LEDチップ12a〜12dの焦点面fp上の光源像Ia〜Idは、最下部の光源像Idから上側の光源像Iaに向かうにつれて左右方向の幅が広くなっている(すなわち、「光源像Iの最上部の幅Wa>光源像Iの最下部の幅Wd」となる)。
【0055】
このような光源像Ia〜Idが投影レンズ20を透過して路面上に投影されると、図4に示す配光パターンPa〜Pdがそれぞれ形成される。最上部のLEDチップ12aの光源像Iaは、車両Vから最も近傍の配光パターンPaを形成し、LEDチップ12aの下部に配置されたLEDチップ12bの光源像Ibは、配光パターンPaと接するように配光パターンPaより遠方に配置された配光パターンPbを形成する。また、LEDチップ12bの下部に配置されたLEDチップ12cの光源像Icは、配光パターンPbと接するように配光パターンPbより遠方に配置された配光パターンPcを形成し、最下部のLEDチップ12dの光源像Idは、配光パターンPcと接するように車両Vから最も遠方の配光パターンPdを形成する。これらの配光パターンPa〜Pdにより、車両Vの左右方向よりも車両Vの前後方向により大きく延伸された線状の配光パターンPが形成されている。
【0056】
上述の特許文献1のように、複数のLEDチップの各々の発光面が投影レンズの後方焦点面に位置するよう配置されていると、車両の近傍から遠方に向かうにつれて配光パターンの照射幅は広がる。これに対して、本実施形態においては、各LEDチップ12a〜12dによって形成される焦点面fp上の光源像Ia〜Idが最下部の光源像Idから上側の光源像Iaに向かうにつれてその幅が広くなっているため、図4に示すように、線状配光パターンPは、車両Vの前後方向におけるいずれの領域においても略均一な幅を有している。このように、本実施形態においては、車両Vの近傍から遠方に向かうにつれて均一な照射幅の線状配光パターンPを得ることができる。なお、均一な照射幅の線状配光パターンPを得るためには、光源像Iの左右方向の幅(例えば、図3の幅Waや幅Wd)と車両Vから配光パターンPまでの距離との積が光源像Iの上下方向のどの領域においても一定となるように、LEDチップ12a〜12dが傾斜して配置されていることが好ましい。また、各配光パターンPa〜Pdから形成される線状配光パターンPは、車両左右方向の幅を1とすると、当該左右方向の幅に対する車両前後方向の幅のアスペクト比が4以上となるようなパターンであることが好ましい。これにより、描画マーク(ライン)として、車両の10m前方から100m前方の範囲を照射可能である。
【0057】
なお、図4では、LEDチップ12a〜12dを全て点灯させた状態の配光パターンPa〜Pdを図示しているが、例えば、点消灯制御部30からの制御信号により、LEDチップ12a〜12dを順に点灯させてもよい。また、図4では、車両Vの左側前照灯に搭載された車両用灯具1により形成される線状配光パターンPが図示されているが、車両Vの右側前照灯にも車両用灯具1を搭載し、破線で示す線状配光パターンP1を形成することで、路面上に車両Vの車幅に沿った平行な2本のラインを描画することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態においては、車両用灯具1の左右方向よりも上下方向に長い光源像Iを形成可能な路面描画用の光源10と、光源10の光源像Iを形成する光を透過して、所定の配光パターンPを路面に投影する投影レンズ20と、を備えており、光源10の発光面12Pが投影レンズ20の後方焦点f付近に配置され、発光面12Pが、投影レンズ20の光軸Axに直交する上下方向Dに対して傾斜している。具体的には、光源10は、投影レンズ20の後方焦点f付近に配置されて投影レンズ20の光軸Ax側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能に配列された個別点消灯可能な複数のLEDチップ12を備え、複数のLEDチップ12は、投影レンズ20の後方焦点f付近に配置されたLEDチップ12dから上方向側のLEDチップ12c,12b,12aに向かうにつれて後方焦点fよりも後方側へ離れるように傾斜して配置されている。この構成によれば、例えば、車両Vの左右方向よりも前後方向により大きく延伸された2本の線状配光パターンP,P1を車幅に沿った平行線として路面描画する際に、車両V近傍から遠方に亘って均一な照射幅のパターンを照射することができる。また、さらに、例えば、複数のLEDチップ12のうち車両Vの近傍を照射するLEDチップ12aから車両Vの遠方を照射するLEDチップ12dに向かって順に点灯させることで、車両近傍から遠方へ向けて順に配光パターンPa〜Pdを路面描画することができる。
【0059】
また、制御部30からの制御信号により、各LEDチップ12は、その光度が可変とされているため、例えば車両Vから各配光パターンPa〜Pdまでの距離に応じて、LEDチップ12a〜12dの光度を変化させてもよい。各LEDチップ12a〜12dの光度が同一の場合は、車両近傍の配光パターンPaのほうが遠方の配光パターンPdよりも明るく照射されるが、近傍を照射するLEDチップの光度よりも遠方を照射するLEDチップの光度を高くすることで、各配光パターンPa〜Pdから形成される線状配光パターンPの照度を近傍から遠方に亘って均一化させることができる。
【0060】
なお、車両用灯具1の配光方向を左右に旋回させるスイブル機構を備え、スイブル機構が車両用灯具1を機械的に旋回させることで、配光方向(投影レンズ20の光軸Axの向き)を左右に移動させる構成としても良い。これにより、線状配光パターンPを形成する光の照射方向を任意に変更することができ、例えば歩行者等の対象物を検知して検知された対象物がいる方向に向けて線状配光パターンPを路面描画することができる。
【0061】
(変形例1)
図5は、本実施形態の変形例(変形例1)に係る車両用灯具の鉛直方向断面図である。
変形例1の車両用灯具1Aにおいては、第一実施形態のように基板11上に複数のLEDチップ12が縦方向に並列されている構成の代わりに、投影レンズ20の光軸Ax側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能な縦長の一つのLEDチップ12Aを備えている。当該LEDチップ12Aは、その下端側が投影レンズ20の後方焦点f付近に位置するように配置されている。図5に示すように、変形例1においても、基板11は、投影レンズ20の光軸Axに直交する上下方向Dに沿って傾斜するように配置されており、LEDチップ12Aは、上方向に向かうにつれて投影レンズ20の後方焦点fよりも後方側に離れるように傾斜している。この構成によれば、第一実施形態と同様に、投影レンズ20の焦点面fp(図1参照)上においては下側から上側に向かうにつれてその幅が広くなった光源像I(図3参照)を形成することができ、車両V近傍から遠方に亘って均一な照射幅の線状配光パターンP(図4参照)を路面描画することができる。
【0062】
(変形例2)
図6は、本実施形態の変形例(変形例2)に係る車両用灯具の鉛直方向断面図であり、図7は、図6に示す変形例2に係る遮光部材の正面図である。
変形例2の車両用灯具1Bは、光源ユニット10Bと、投影レンズ20と、を備えている。光源ユニット10Bは、基板11Bと、基板11B上に搭載された少なくとも一つのLEDチップ12Bと、リフレクタ13と、遮光部材40とを備えている。基板11Bは、そのチップ搭載面11Baが、投影レンズ20の光軸Axに沿うように配置されている。リフレクタ13は、基板11Bの上部に配置されており、LEDチップ12Bから出射した光を投影レンズ20に向けて反射する楕円反射面13aを有している。
【0063】
遮光部材40は、LEDチップ12Bから出射されリフレクタ13の楕円反射面13aにて反射された光の一部を遮光する部材である。図6および図7に示すように、遮光部材40は、リフレクタ13の楕円反射面13aにて反射された光の他方の部分を透過させる透光部41を備えている。透光部41は、例えば開口部であって、当該透光部41の下端が投影レンズと20の後方焦点fに配置されている。透光部41は、投影レンズ20の光軸Ax側から上方向に向かって延びるように略均一な幅で開口されている。この透光部41は、灯具左右方向の幅を1とすると、左右方向の幅に対する上下方向の幅のアスペクト比が4以上であることが好ましい。遮光部材40は、透光部41の光透過面41Pが、投影レンズ20の光軸Axに直交する上下方向Dに沿って傾斜するように配置されている。すなわち、透光部41は、上方向に向かうにつれて投影レンズ20の後方焦点fよりも後方側に離れるように傾斜している。なお、透光部41は開口部とは限られず、光を透過させる透明ガラスあるいは透明樹脂等であっても良い。
【0064】
このような車両用灯具1Bにおいて、LEDチップ12Bから出射され遮光部材40の透光部41を通過した光L1,L2は、投影レンズ20の焦点面fp上において、灯具左右方向よりも上下方向に長い光源像を形成する。そして、遮光部材40の光透過面41aが、上方向に向かうにつれて後方焦点fよりも後方側に離れるように傾斜して配置されている。そのため、変形例2においても、第一実施形態と同様に、投影レンズ20の焦点面(図1参照)上において、下側から上側に向かうにつれてその幅が広くなった光源像I(図3参照)を形成することができ、車両V近傍から遠方に亘って均一な照射幅の線状配光パターンP(図4参照)を路面描画することができる。
【0065】
なお、上記の変形例2においては、光源ユニット10Bが、少なくとも一つのLEDチップ12Bを含む構成としているが、これに限られない。例えば、基板11上に灯具前後方向に沿って複数のLEDチップを密接して配列しても良い。また、光源としては、LEDチップ12を用いるほか、光源バルブを用いても良い。光源バルブは、例えば、ハロゲンランプなどフィラメントを有する白熱灯によって構成され、カップ型に形成されてその中央にハロゲンランプが挿通される挿通孔が設けられたリフレクタを備えている。光源バルブを用いる場合は、リフレクタにより光源バルブからの光を前方に向けて反射させ、遮光部材40の透光部41を通過した光のみが投影レンズ20を介して前方に照射される。なお、光源バルブとしては、放電灯等他のタイプの光源が採用されても良い。
また、リフレクタ13を設けることなく、少なくとも一つのLEDチップ12の発光面を投影レンズ20の入射面20aと対向するように配置し、LEDチップ12からの光が遮光部材40に向けて直接出射される構成としても良い。
【0066】
(第二実施形態)
図8は、第二実施形態に係る車両用灯具の鉛直方向断面図であり、図9は、第二実施形態に係る光源の正面図である。
第二実施形態の車両用灯具100は、ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内において、光源110と、投影レンズ20とを備えている。光源110は、基板111と、基板111上に搭載された複数のLEDチップ112とを備えている。基板111は、そのチップ搭載面111aが、投影レンズ20の入射面20aと略平行となるように配置されている。
【0067】
図8および図9に示すように、基板111上には、複数(ここでは10個)のLEDチップ112が密接して配列されている。例えば、投影レンズ20の後方焦点f付近に1つのLEDチップ112が配置され、その上列に2つのLEDチップ112、さらに上列に3つのLEDチップ112、そして最上列に4つのLEDチップ112が配置されている。各LEDチップ112は、制御部30からの制御信号に応じて個別に点消灯が可能である。各LEDチップ112からの光によって形成される光源像は、車両左右方向の幅を1とすると、左右方向の幅に対する上下方向の幅のアスペクト比が例えば0.5以上1.5以下である。
【0068】
このような構成の車両用灯具100において、すべてのLEDチップ112から出射された光は、投影レンズ20の焦点面fp上において、左右方向よりも上下方向に長く、且つ下側から上側に向かうにつれて左右方向の幅が広くなっている(すなわち、幅が均一ではない)光源像を形成する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具100は、幅が均一でない光源像を形成可能な路面描画用の光源110と、光源像を形成する光を透過して、所定の配光パターンを路面に投影する投影レンズ20と、を備えており、投影レンズ20の焦点面fp内の光源像のうち車両の遠方へ投影される部分の領域が、車両の近傍へ投影される部分の領域よりもその幅が細くなっている。具体的には、光源110は、投影レンズ20の後方焦点f付近に配置され、投影レンズ20の光軸Ax側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能に配列された個別点消灯可能な複数のLEDチップ112から構成され、複数のLEDチップ112は、投影レンズ20の後方焦点f付近に配置されたLEDチップ112から上方向側のLEDチップ112に向かうにつれて、その数が増えるように配列されている。この構成によれば、例えば、歩行者等の対象物を検知して検知された対象物がいる方向に向けて車両Vの左右方向よりも前後方向により大きく延伸された線状配光パターンP(図4参照)を路面描画する際に、車両V近傍から遠方に亘って略均一な照射幅のパターンを照射することができる。また、例えば、複数のLEDチップ112のうち車両Vの近傍を照射する最上列のLEDチップ112から順に点灯させることで、歩行者等の対象物の方向へ向けて車両近傍から遠方へ向けて順に配光パターンPa〜Pdを路面描画することができる。
【0070】
また、制御部30からの制御信号により、車両Vから各配光パターンPa〜Pdまでの距離に応じて、LEDチップ112の光度を変化させる、具体的には、近傍を照射するLEDチップ112の光度よりも遠方を照射するLEDチップ112の光度を高くすることで、各配光パターンPa〜Pdから形成される線状配光パターンPの照度を近傍から遠方に亘って均一化させることができる。
【0071】
(変形例3)
図10は、本実施形態の変形例(変形例3)に係る車両用灯具の鉛直方向断面図である。
変形例1の車両用灯具においては、第二実施形態のように基板111上に複数のLEDチップ112が配列されている構成の代わりに、投影レンズ20の光軸Ax側から上方向に向かって延びる光源像を形成可能な一つのLEDチップ112Aを備えている。当該LEDチップ112Aは、その下端側が投影レンズ20の後方焦点f付近に位置するように位置されており、後方焦点f付近から上方側に向かうにつれて左右方向の幅が順次太くなっている。このような縦長台形状のLEDチップ112Aを用いることでも、投影レンズ20の焦点面fp上において幅が均一ではない、すなわち下側から上側に向かうにつれてその幅が広くなった光源像I(図3参照)を形成することができる。特に、変形例2のように縦長台形状のLEDチップ112Aを用いる場合は、第二実施形態のように四角形の複数のLEDチップ112を段階的に配列させた場合と異なり、直線的な側辺を有する光源像を形成することができる。この光源像を、投影レンズ20を透過させて灯具前方に照射することで、車両V近傍から遠方に亘って、より均一な照射幅の線状配光パターンP(図4参照)を路面描画することができる。
【0072】
(変形例4)
図11は、本実施形態の変形例(変形例4)に係る車両用灯具の鉛直方向断面図であり、図12は、図11に示す変形例4に係る遮光部材の正面図である。
変形例4の車両用灯具100Bは、変形例2の車両用灯具1Bと同様に、光源ユニット110Bと、投影レンズ20と、を備えている。光源ユニット110Bは、基板111Bと、基板111B上に搭載された少なくとも一つのLEDチップ112Bと、リフレクタ113と、遮光部材140とを備えている。基板111Bは、そのチップ搭載面111Baが、投影レンズ20の光軸Axに沿うように配置されている。リフレクタ113は、基板111Bの上部に配置されており、LEDチップ112Bから出射した光を投影レンズ20に向けて反射する楕円反射面113aを有している。
【0073】
遮光部材140は、LEDチップ112Bから出射されリフレクタ113の楕円反射面113aにて反射された光の一部を遮光する部材である。図11および図12に示すように、遮光部材140は、リフレクタ113の楕円反射面113aにて反射された光の他方の部分を透過させる透光部141を備えている。透光部141は、例えば開口部であって、当該透光部141の下端が投影レンズと20の後方焦点fに配置されている。透光部141は、投影レンズ20の後方焦点fから上方側に向かうにつれて左右方向の幅が順次太くなっている。遮光部材140は、透光部141の光透過面141aが、投影レンズ20の入射面20aと略平行となるように配置されている。なお、透光部141は、開口部とは限られず、光を透過させる透明ガラスあるいは透明樹脂等であっても良い。
【0074】
このような車両用灯具100Bにおいて、LEDチップ112Bから出射され遮光部材140の透光部141を通過した光は、投影レンズ20の焦点面fp上において、灯具左右方向よりも上下方向に長い光源像を形成する。そして、遮光部材140の透光部141が投影レンズ20の後方焦点fから上方側に向かうにつれてその左右方向の幅が順次太くなっていることで、本変形例においても、変形例3と同様に、投影レンズ20の焦点面fp上において幅が均一ではない、すなわち下側から上側に向かうにつれて左右方向の幅が広くなった直線的な側辺を有する光源像I(図3参照)を形成することができる。この光源像Iを、投影レンズ20を透過させて灯具前方に照射することで、変形例3と同様に、車両V近傍から遠方に亘って均一な照射幅の線状配光パターンP(図4参照)を路面描画することができる。
【0075】
なお、上記の変形例4においても、変形例2と同様に、光源として、図2に示すような上下方向に沿って密接して配列された複数のLEDチップ12を用いても良く、ハロゲンランプや放電灯などの光源バルブを用いても良い。
【0076】
以下、本発明の第三実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
(第三実施形態)
図13は、本発明の第三実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図であり、図14は、第三実施形態に係る遮光部材の正面図である。
本実施形態に係る車両用灯具200(以下、灯具200と称する。)は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯の少なくとも一方に搭載された路面描画用の灯具ユニット(路面描画装置)である。図13には灯具200として一方の前照灯に搭載された路面描画用灯具ユニットの構造を示す。
【0077】
図13に示すように、灯具200は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、レーザ光源210と、投影レンズ220と、遮光部材230(光学部材の一例)と、が収容されている。各構成要素は、図示しない支持機構によりランプボディ2に取り付けられる。
【0078】
レーザ光源210は、筐体211と、レーザチップ212と、集光レンズ213と、蛍光体214とを備えている。レーザチップ212は、筐体211内に載置されており、例えば、一つまたは複数の白色LDを並べたものから構成されている。集光レンズ213は、筐体211内に収容されており、レーザチップ212から出射したレーザ光を集光するために例えば両凸レンズから構成されている。筐体211において、集光レンズ213の出射面と対向する位置には、貫通部211aが形成されている。この貫通部211aには蛍光体214が設けられている。蛍光体214としては、例えば、蛍光物質を透明な封止部材に分散させたものや、板状の蛍光体セラミック等が用いられる。このように構成されたレーザ光源210においては、レーザチップ212からの光が集光レンズ213を透過して蛍光体214に向けて出射され、蛍光体214が励起発光されることで投影レンズ220側に向けて光が照射される。このとき、集光レンズ213により集光された光が蛍光体214に入射されるため、蛍光体214が励起発光されることで発生した光により形成される光源像は、その中心部の輝度よりも周囲の輝度が小さくなる、すなわち輝度にムラがある場合がある。
【0079】
図13に示すように、投影レンズ220は、入射面220aと、凸状の出射面220bとを備えている。入射面220aは、後述の遮光部材230を間にして、レーザ光源210の蛍光体214に対向して配置されており、出射面220bは、灯具前方に向けられている。投影レンズ220の光軸Axは、投影レンズ220を透過した光が灯具前方の所定範囲の路面を照射するような方向に向けられていることが好ましい。投影レンズ220の入射面220aには、所望の配光パターンを得るために、灯具上下方向に沿って並列されたシリンドリカル状の複数の拡散ステップSが形成されている。この拡散ステップSは、投影レンズ220の出射面220b側に形成されていてもよい。これにより、投影レンズ220に入射した光を上下方向に拡散させることができる。なお、拡散ステップは、シリンドリカル状のものに限られず、接線連続形状のステップ(接線連続性を有する凹凸形状)や曲率連続形状のステップ(曲率連続性を有する凹凸形状)であってもよい。また、拡散ステップは曲面に限定されず、三角形状等でもよい。
【0080】
図13および図14に示すように、遮光部材230は、レーザ光源210と投影レンズ220との間に配置された平板状の部材である。遮光部材230は、投影レンズ220の光軸Axに直交する平面に沿うように配置されている。遮光部材230は、その中心部が投影レンズ220の後方焦点fと略一致している。遮光部材230の中心部より上側には、レーザ光源210の蛍光体214と対向する位置に、当該蛍光体214から発生する光の一部が通過可能な開口部232が形成されている。なお、遮光部材230の開口部232に、光を透過させる透明ガラスあるいは透明樹脂等を配置して、透光部として構成しても良い。また、本実施形態においては、開口部232は、下側の幅よりも上側の幅が広い台形状に形成されている。開口部232がこのような台形状に開口されていることにより、当該開口部232を通過する光は、開口部232の出射面232bにおいて左右方向よりも上下方向により長く、且つ下側から上側に向かうにつれて左右方向の幅が広い台形状の光源像を形成する。
【0081】
レーザ光源210の点消灯や、レーザ光源210からの光の出射強度調節、点滅速度調節は、制御部240によりなされる。制御部240は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUや記憶部などの素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。なお、制御部240は、図13では灯室3の外部に設けられているが、灯室3内に設けられてもよい。制御部240は、図示しないランプスイッチ等からの信号を受信し、受信した信号に応じて、レーザ光源210に各種の制御信号を送信する。
【0082】
図13に示すように、レーザ光源210から出射された光Lは、その一部が遮光部材230の開口部232を通過する。上述の通り、蛍光体214から発生した光により形成される光源像は、その中心部と周辺部とで輝度にムラがある場合がある。本実施形態においては、このような光源像を形成する光について、光源像のうち輝度の低い傾向にある周辺部を構成する光(例えば、図13の光L)を遮光部材230で遮光するとともに、輝度の高い傾向にある中心部を構成する光のみを開口部232から通過させている。これにより、開口部232の出射面232bにおいて、その入射面232aよりも輝度ムラが少ない光源像が形成される。
【0083】
開口部232を通過した光Lは、開口部232の出射面232bにおいて下側から上側に向かうにつれて左右方向の幅が広い台形状の光源像を形成する。そして、この台形状の光源像は、平凸レンズである投影レンズ220の入射面220aから入射され、左右方向においては光軸Axに向けて収束する略平行光とされ、かつ、拡散ステップSにより上下方向においては光軸Axに対して拡がる略拡散光とされて、出射面220bから出射される。これにより、レーザ光源210から出射された光Lは、遮光部材230の開口部232を通過して投影レンズ220を透過することで、左右方向よりも上下方向により大きい縦長の線状配光パターン(後述の線状配光パターンP)を形成する。
【0084】
図15は、灯具200から照射された光により形成される配光パターンの一例を示す図である。
上述の通り、レーザ光源210から出射された光Lは、遮光部材230の開口部232を通過して投影レンズ220を透過することで、図15に示すような縦長の線状配光パターンPを路面上に描画する。平坦な路面上に描画された線状配光パターンPは、例えば、車両左右方向の幅を1とすると、左右方向の幅に対する前後方向の幅のアスペクト比が5以上である。線状配光パターンPのアスペクト比は、左右方向の幅に対する前後方向の幅のアスペクト比が1:10以上であることが特に好ましい。これにより、例えば、線状配光パターンPは、車両Vの10m前方から100m前方の範囲を照射可能である。上記の例よりもアスペクト比がより大きい、さらに縦長の線状配光パターンが必要な場合は、遮光部材230の開口部232の縦横のアスペクト比を大きくしたり、投影レンズ220による光源像の拡大率を変更させたりすることで対応可能である。なお、仮に遮光部材の開口部が均一な幅を有する矩形状に形成されている場合は、車両の近傍から遠方に向かうにつれて照射される配光パターンの照射幅は広がる。これに対して、本実施形態においては、台形状の開口部232により、その出射面232bにおいて下側から上側に向かうにつれて左右方向の幅が広い台形状の光源像が形成されるため、図15に示すように、線状配光パターンPは、車両Vの前後方向におけるいずれの領域においても略均一な幅を有している。
【0085】
なお、車両Vの左右前照灯にそれぞれ本実施形態に係る灯具200を搭載し、各灯具200により1本ずつの線状配光パターンPを形成することで路面上に車両Vの車幅に沿った平行な2本のラインを描画することができる。また、遮光部材230に2つの開口部を左右に並列させて形成することで、当該2つの開口部をそれぞれ通過した光により2本の線状配光パターンPを形成することもできる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態において、灯具200は、路面描画用のレーザ光源210と、レーザ光源210から出射されたレーザ光を透過させる投影レンズ220と、レーザ光源210と投影レンズ220との間に配置されてレーザ光の少なくとも一部を通過させる台形状の開口部232を備えた遮光部材230と、を備えている。この遮光部材230の開口部232は、その出射面232bにおいて、その入射面232aよりも輝度が均一化された四角形状の光源像を形成することができる。このような灯具200の構成により、レーザ光源210を用いて輝度ムラの少ない光源像を形成し、この光源像を投影レンズ220によって、灯具左右方向よりも上下方向に延伸させて投影することで、照度ムラの少ない線状配光パターンPを得ることができる。
【0087】
なお、灯具200の配光方向を左右に旋回させるスイブル機構を備え、スイブル機構が灯具200を機械的に旋回させることで、配光方向(投影レンズ220の光軸Axの向き)を左右に移動させる構成としても良い。これにより、灯具前方の路面に描画される線状配光パターンPを法線方向(放射状)に移動させることができる。図16に示すように、対象物である歩行者Wが左右に移動する場合には、歩行者Wの動きに合わせて灯具200をスイブルさせることで、歩行者Wのいる位置に向けて線状配光パターンPが照射されるようにその照射位置を変更することができる。
【0088】
(第四実施形態)
図17は、第四実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す斜視図であり、図18は、第四実施形態に係る拡散板を示す正面図である。
図17に示すように、灯具300は、レーザ光源210と、投影レンズ220と、拡散板330と、を備えている。各構成要素は、図示しない支持機構によりランプボディに取り付けられる。灯室3を構成する部材や、レーザ光源210および投影レンズ220の構成は、第三実施形態の構成と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0089】
拡散板330は、レーザ光源210と投影レンズ220との間であって、その入射面330aがレーザ光源210の蛍光体214に近接して配置された平板状の拡散部材である。蛍光体214から発生した光の全てが拡散板330に入射されるように、蛍光体214および拡散板330の入射面330aの大きさや、蛍光体214と入射面330aとの間隔が設定されている。拡散板330は、投影レンズ220の光軸Axに直交する平面に沿うように配置されており、その下端が投影レンズ220の後方焦点fと略一致している。拡散板330は、その内部に散乱剤が分散された透明部材から構成されている。なお、拡散板330内部に散乱剤を分散させる代わりに、拡散板330の入射面330aあるいは出射面330bに、光拡散ステップを形成したりシボ加工を施しても良い。
【0090】
図18に示すように、拡散板330は、下端側から上端側に向かってその幅が広くなる台形状に形成されている。これにより、拡散板330を透過した光は、拡散板330の出射面330bにおいて左右方向よりも上下方向により長く、且つ下側から上側に向かうにつれて左右方向の幅が広い台形状の光源像を形成する。
【0091】
このような灯具300においては、レーザ光源210の蛍光体214から発生した光は、その全てが拡散板330の入射面330aに入射される。拡散板330の内部には散乱剤が分散されているため、出射面330bにおける光の輝度ムラ(色度ムラ)を抑えられる。すなわち、本実施形態においては、レーザ光源210の蛍光体214で発生した光が拡散板330を透過することによって、拡散板330の出射面330bにおいて入射面330aよりも輝度ムラが少ない(輝度がより均一化された)光源像を形成することができる。したがって、本実施形態によれば、第三実施形態と同様に、照度ムラの少ない線状配光パターンPを車両前方の路面上に描画することができる。
【0092】
(第五実施形態)
図19は、第五実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す斜視図であり、図20は、第五実施形態に係るロッドインテグレータの斜視図である。
図19に示すように、灯具400は、レーザ光源410と、投影レンズ220と、ロッドインテグレータ430(付加レンズの一例)と、を備えている。各構成要素は、図示しない支持機構によりランプボディに取り付けられる。灯室3を構成する部材や、投影レンズ220の構成は、第三実施形態の構成と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0093】
レーザ光源410は、ベース部411と、レーザチップ412とを備えている。レーザチップ412はその出射面が、ロッドインテグレータ430を介して、投影レンズ220の入射面220aと対向するように配置されている。
【0094】
ロッドインテグレータ430は、レーザ光源410と投影レンズ220との間に配置されている。図20に示すように、ロッドインテグレータ430は、入射面430aと出射面430bとを有する四角柱状のレンズである。ロッドインテグレータ430は、その入射面430aがレーザチップ412に近接して配置され、その出射面430bが投影レンズ220の後方焦点f付近に配置されている。レーザチップ412から出射された光の全てがロッドインテグレータ430に入射されるように、レーザチップ412およびロッドインテグレータ430の入射面430aの大きさや、レーザチップ412と入射面430aとの間隔が設定されている。ロッドインテグレータ430の入射面430aには、レーザ光源410から出射された光により励起されて蛍光を発する蛍光体層431が形成されている。なお、蛍光体層431は、ロッドインテグレータ430の出射面430b側に形成されていても良い。
【0095】
このような灯具400においては、レーザ光源410のレーザチップ412から出射された光は、その全てがロッドインテグレータ430の入射面430aからロッドインテグレータ430内へ入射される。入射面430aに入射された光は蛍光体層431により励起発光される。そして、ロッドインテグレータ430は、この励起発光された光をその内部で全反射させ、出射面430bから灯具前方に向けて出射する。これにより、ロッドインテグレータ430の出射面430bにおける輝度分布を均一化させることができる。すなわち、本実施形態においては、レーザチップ412から出射される光がロッドインテグレータ430を透過されることによって、ロッドインテグレータ430の出射面430bにおいて入射面430aよりも輝度ムラが少ない光源像を形成することができる。したがって、本実施形態によれば、第三実施形態と同様に、照度ムラの少ない線状配光パターンPを車両前方の路面上に描画することができる。
【0096】
なお、レーザ光源として、第三実施形態のレーザ光源210と同様の構成の光源を用いることもできる。この場合は、ロッドインテグレータ430の入射面430aあるいは出射面431bに蛍光体層431を形成する必要はない。
【0097】
(第六実施形態)
図21は、第六実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図21に示すように、灯具500は、光源ユニット510と、投影レンズ220と、導光体530と、を備えている。各構成要素は、図示しない支持機構によりランプボディに取り付けられる。灯室3を構成する部材や投影レンズ220の構成は第三実施形態の構成と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0098】
光源ユニット510は、赤色レーザ光を出射する赤色レーザ光源510Rと、緑色レーザ光を出射する緑色レーザ光源510Gと、青色レーザ光を出射する青色レーザ光源510Bとから構成されている。赤色レーザ光源510Rは赤色光を出射するレーザチップ511Rを備え、緑色レーザ光源510Gは緑色光を出射するレーザチップ511Gを備え、青色レーザ光源510Bは青色光を出射するレーザチップ511Bを備えている。
【0099】
導光体530は、三股の分岐部分531と集光部分532とを備えている。各分岐部分531の入射面531aR,531aG,531aBが各レーザ素子511R,511G,511Bに近接して配置され、集光部分532側の出射面532aが投影レンズ220の後方焦点f付近に配置されている。赤色レーザ光源510Rから出射された赤色レーザ光は、三股の分岐部分531のうち最上部の分岐部分531の入射面531aRから入射され、集光部分532へと導光される。緑色レーザ光源510Gから出射された緑色レーザ光は、三股の分岐部分531のうち中央の分岐部分531の入射面531aGから入射され、集光部分532へと導光される。青色レーザ光源510Bから出射された青色レーザ光は、三股の分岐部分531のうち最下部の分岐部分531の入射面531aBから入射され、集光部分532へと導光される。このように各分岐部分531を導光されたRGBの各色レーザ光は、集光部分532により合成されて白色光を生成する。集光部分532で生成された白色光は出射面532aから投影レンズ320に向けて出射される。
【0100】
このように、本実施形態においては、各レーザ光源510R,510G,510Bから出射されるRGB光が導光体530内で合成されて白色光を生成することによって、導光体530の出射面532aにおいて、各分岐部分531の入射面531aR,531aG,531aBよりも輝度ムラが少ない光源像を形成することができる。したがって、本実施形態によれば、第三実施形態と同様に、照度ムラの少ない線状配光パターンPを車両前方の路面上に描画することができる。
【0101】
以上において本発明の各実施形態の例を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、必要に応じて他の構成を採用することが可能である。
【0102】
上記の第一実施形態においては、図4に示すような、車両左右方向よりも前後方向により大きく延伸された線状配光パターンPを形成しているが、路面描画される配光パターンは線状配光パターンPに限られない。例えば、矢印その他の任意の形状の配光パターンを路面描画する際に、車両近傍から遠方に亘って形の整った配光パターンを得るために、投影レンズ20の後方焦点f上の光源像が投影レンズ20の光軸Axに直交する上下方向Dに対して傾斜している構成としてもよい。
【0103】
上記の第三実施形態から第六実施形態においては、レーザ光源と投影レンズとの間に遮光部材や拡散板等を配置して、輝度ムラの少ない四角形状の光源像を形成しているが、この例に限られない。例えば、レーザ光源の筐体の貫通部に設けられた蛍光体(例えば、第三実施形態の蛍光体214)を四角形状とし、この蛍光体から発生した光により形成される四角形状の光源像を投影レンズに直接入射させる構成としても良い。このとき、蛍光体の発光面で形成される四角形状の光源像の輝度ムラを少なくするために、集光レンズを透過した光により形成される光源像のうち輝度の高い部分の光のみが蛍光体に入射されるように、集光レンズの形状や蛍光体の大きさを適宜設定することが望ましい。
【0104】
なお、四角形状の光源像としては、上記の実施形態に記載の形状の他に、例えば、図22の(a)〜(e)に示すような様々な形状の光源像を形成することができる。図22において、(a)は略正方形、(b)は前後方向よりも左右方向により延伸された長方形、(c)は平行な辺(上底および下底)が左辺および右辺を構成する横向きの台形、(d)は平行四辺形、(e)は角部が丸みを帯びた矩形である。これらの形状は、発光素子12や、開口部232、拡散板330、ロッドインテグレータ430の形状を適宜変更することで形成可能である。
【0105】
本出願は、2016年3月24日出願の日本特許出願2016−59877号と、2016年4月15日出願の日本特許出願2016−82044号とに基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図21
図22