(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凝固時間測定器は、凝固促進剤を混合した血液の粘性を測定することによって凝固時間を計測する粘性測定モジュールまたは前記凝固促進剤が配置された細管内で血液の流動特性を測定することによって凝固時間を計測する流動測定モジュールである、請求項3に記載の血液検査システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る血液検査システム10を説明する。
【0016】
第1実施形態に係る血液検査システム10は、例えば、人工心肺装置を使用して肺や心臓を補助しながら手術を行っている際中に、血液検査を所定の間隔で自動的に行うことによって血液の状態を認識するための情報を得るものである。本実施形態では、血液検査として、活性化凝固時間(ACT)(以下、単に「凝固時間」と称する。)を測定する凝固検査を例に挙げて説明する。
【0017】
図1に示すように、血液検査システム10は、血液やフラッシュ液(洗浄液に相当)等の流体が流通する経路を形成するカテーテル100と、カテーテル100にフラッシュ液を供給する供給部210と、流体を吸引する吸引ポンプ(吸引部に相当)220と、流体の流れの方向を切り替えるバルブ230と、血液の凝固検査を行う複数の検査部300と、血液検査システム10各部の動作を制御する制御部400と、を有している。血液検査システム10は、カテーテル100内の流体中に含まれる血液の濃度を検出するセンサーSと、カテーテル100に配置される分岐コネクタCと、廃棄する流体を貯留する廃液タンクTと、検査部300による検査結果の計測および計測結果の表示をする測定装置M1と、をさらに有している。以下、各部の構成について詳細に説明する。
【0018】
カテーテル100は、生体に穿刺される採血針110と、採血針110の基端側に接続されて流体を流通する主流路121を形成する第1チューブ120と、主流路121から分岐して、検査部300に血液を導流する複数の分岐流路131を形成する第2チューブ130と、主流路121から流体の少なくとも一部を排出する排出流路141を形成する第3チューブ140と、主流路121と複数の分岐流路131との連通状態および主流路121と排出流路141との連通状態を選択的に切り替え可能な切り替え部150と、を有している。
【0019】
採血針110は、血管に穿刺される中空の針112と、針112の基端側に配置される採血針ハブ114とを有している。針112は、先端に鋭利な針先を有している。採血針110は、例えば、金属や樹脂材料から形成することができる。
【0020】
第1チューブ120は、採血針ハブ114と接続可能な接続部122を備えている。第1チューブ120、第2チューブ130および第3チューブ140は、例えば、ウレタン、ポリウレタン、シリコン、塩化ビニル等の公知の樹脂により形成することができる。
【0021】
主流路121は、接続部122を介して第1チューブ120と採血針ハブ114とを接続した状態で、採血針110と、後述する供給部210のフラッシュ液保持部212と、切り替え部150との間を流体が流通可能な流路を構成している。
【0022】
主流路121は、採血針110と連通する第1主流路121aと、第1主流路から分岐コネクタCを介して分岐する第2主流路121bおよび第3主流路121cとを有している。第2主流路121bは、供給部210のフラッシュ液保持部212に連通している。第3主流路121cは、切り替え部150と連通している。
【0023】
分岐流路131および排出流路141は、主流路121の第3主流路121cから分岐している。第3主流路121cと、分岐流路131および排出流路141との間には、切り替え部150が配置されている。
【0024】
分岐流路131は、切り替え部150を介して、検査部300と第3主流路121cとを連通する。分岐流路131は、検査部300と同じ数だけ複数個設けられている。一の分岐流路131は、一の検査部300と連通している。本実施形態では、分岐流路131および検査部300の数は、それぞれ8個としている。なお、分岐流路131および検査部300の数は、特に限定されず、所望の検査回数等に応じて適宜変更可能である。
【0025】
排出流路141は、切り替え部150を介して、廃液タンクTと第3主流路121cとを連通する。
【0026】
切り替え部150は、電磁弁等の公知の切り替え弁により構成されている。切り替え部150は、複数の分岐流路131および排出流路141のうちから一の流路を択一的に選択し、一の分岐流路131または排出流路141を第3主流路121cと連通した状態に切り替える。これにより、切り替え部150は、第3主流路121cへ導流された流体を、一の分岐流路131または排出流路141に導流する。
【0027】
供給部210は、フラッシュ液を保持するフラッシュ液保持部212と、フラッシュ液保持部212からフラッシュ液をカテーテル100に供給する供給ポンプ214とを備えている。
【0028】
フラッシュ液保持部212は、フラッシュ液等の医療用の液体を保持する医療用バッグである。フラッシュ液は、例えば、生理食塩水を使用することができる。
【0029】
供給ポンプ214は、第2主流路121bに配置されて、フラッシュ液保持部212から供給されたフラッシュ液を第1主流路121aおよび第3主流路121cへ向けて導流する。
【0030】
吸引ポンプ220は、第3主流路121cに配置されて、第1主流路121aまたは第2主流路121bから第3主流路121cへ向けて流体を導流する。
【0031】
バルブ230は、第1主流路121aに配置され、流体の流れの方向や流量を調整する。
【0032】
検査部300は、分岐流路131から導流された血液の凝固検査を行う。検査部300は、
図3(A)に示すように、血液の凝固時間を計測する凝固時間測定器310を備えている。複数の凝固時間測定器310のうちの一の凝固時間測定器310は、複数の分岐流路131のうちの一の分岐流路131に接続されている。
【0033】
凝固時間測定器310は、凝固促進剤を混合して活性化した血液の粘性を測定することによって凝固時間を計測する粘性測定モジュールである。凝固時間測定器310は、血液を活性化させて凝固を促進する凝固促進剤312と、検査棒314と、凝固促進剤312および検査棒314が収容された試験管316と、を有している。
【0034】
凝固促進剤312は、例えば、珪素、セライト、カオリン、ガラス等を使用することができる。検査棒314は、例えば、鉄製の棒を使用することができる。試験管316は、例えば、円筒形で上端が開口した細長い容器である。
【0035】
センサーSは、例えば、発光素子と受光素子とを備える公知の光センサーにより構成されている。センサーSは、第1主流路121aに配置され、第1主流路121a内の流体中に含まれる血液の濃度を検出する。血液検査に際して、主流路121内のフラッシュ液による洗浄状態や血液による置換状態を判断する判断基準となる血液の濃度のしきい値を予め定めておく。しきい値は、主流路121がフラッシュ液で満たされたことを判断する基準である第1しきい値と、主流路121が血液で満たされたことを判断する基準である第2しきい値とがある。
【0036】
分岐コネクタCは、第1主流路121aを第2主流路121bおよび第3主流路121cに分岐する。分岐コネクタCは、例えば、T字コネクタにより構成することができる。
【0037】
測定装置M1は、
図3(B)に示すように、血液の凝固時間を測定する凝固時間測定装置として公知のものを使用することができる。本実施形態に係る測定装置M1は、複数の凝固時間測定器310の試験管316を計測位置に保持する複数の試験管保持部M11と、試験管316を駆動して回動させる駆動部M12と、検査棒314の動きを検知する検知部M13と、計測結果を表示する表示部M14と、術者が所定の入力操作を行なう操作部M15と、を有している。
【0038】
制御部400は、入出力部410、記憶部420および演算部430を備えており、各部は信号を送受信する電気配線などを介して相互に接続されている。
【0039】
入出力部410は、切り替え部150、供給ポンプ214、吸引ポンプ220、検査部300およびセンサーSの各部に接続されている。記憶部420は、ROMやRAMから構成し、供給ポンプ214の初期供給圧力、吸引ポンプ220の初期吸引圧力、血液の濃度のしきい値などのデータを予め記憶する。
【0040】
演算部430は、CPUを主体に構成され、検査部300における検査情報、センサーSにより検出されたデータなどを受信する。演算部430は、記憶部420から読み出したデータおよび入出力部410から受信したデータを基に切り替え部150による流路の切り替え方向、供給ポンプ214の供給圧力、吸引ポンプ220の吸引圧力などを算出する。
【0041】
算出データを基にした制御信号は、切り替え部150、供給ポンプ214、吸引ポンプ220、検査部300の各部に送信する。このようにして、制御部400は、検査部300による血液検査に際して、主流路121と一の分岐流路131または排出流路141とを選択的に連通した状態と、主流路121と選択された一の分岐流路131または排出流路141以外の流路との連通を遮断した状態とに、切り替え部150を動作させて振り分ける。
【0042】
(血液検査システムの制御方法)
以下、第1実施形態に係る血液検査システム10の制御方法について、
図2を参照して詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る血液検査システム10の制御方法を示す図である。
【0043】
第1実施形態に係る血液検査システム10の制御方法は、
図2に示すように、概して、主流路121をフラッシュ液で満たして流路内を洗浄する洗浄工程(ステップS10、S20)と、検査開始まで待機状態を維持する待機工程(ステップS30、S40)と、フラッシュ液で満たされた主流路121を生体から採取した血液で置換する血液置換工程(ステップS50、S60)と、一の検査部300によって血液を検査する一の検査工程(ステップS70、S80)と、上記工程(ステップS10〜S80)を繰り返して未使用の他の検査部300によって血液を検査する他の検査工程(ステップS90)とを有している。以上の制御により、複数の検査部300によって複数の検査結果を得る。以下、各工程について詳細に説明する。
【0044】
まず、洗浄工程(ステップS10、S20)において、制御部400は、供給ポンプ214を作動させて、主流路121にフラッシュ液を供給する。これと同時に、制御部400は、切り替え部150を作動させて、主流路121と排出流路141とを連通する弁を開弁して、フラッシュ液の一部とともに主流路121内の空気や血液等の残渣を排出流路141から廃液タンクTへ排出する(ステップS10)。ここで、切り替え部150は、排出流路141を選択して開弁しているため、主流路121と複数の分岐流路131とを連通する弁は、閉弁した状態となる。主流路121内がフラッシュ液に置換されるまでフラッシュ液の供給を続ける。主流路121内がフラッシュ液に置換されると、主流路121内の洗浄が完了する。
【0045】
ここで、制御部400は、センサーSから送信されるデータを基に主流路121内がフラッシュ液に置換されたか否かを判断する。具体的には、センサーSが検出する第1主流路121a内の血液の濃度が予め定めた第1しきい値に到達するまでは、主流路121内がフラッシュ液に満たされていないと判断し、洗浄動作(ステップS10)を継続する(ステップS20:NO)。主流路121内の血液の濃度が予め定めた第1しきい値に到達したら、主流路121内がフラッシュ液に置換されたと判断し、次の工程へ移行する(ステップS20:YES)。
【0046】
次に、待機工程(ステップS30、S40)において、制御部400は、供給ポンプ214を停止し、切り替え部150を作動させて、主流路121と排出流路141とを連通する弁を閉弁する(ステップS30)。これにより、主流路121と他の流路との連通を閉鎖して、主流路121内がフラッシュ液で満たされた待機状態を維持する。洗浄工程(ステップS10、S20)から一の検査を開始するまでの間や、一の検査から次の検査を開始するまでの間は、主流路121内がフラッシュ液で満たされた待機状態にして待機する(ステップS40:NO)。これにより、血液等の残渣が主流路121内に滞留することを阻止し、主流路121内で血栓等が形成されることを防止することができる。所定時間が経過して検査を開始する際は、次の工程に移行する(ステップS40:YES)。
【0047】
検査を開始する際は、まず血液置換工程(ステップS50、S60)を行う。制御部400は、供給ポンプ214を停止し、吸引ポンプ220を作動させて、生体に留置されている採血針110から血液を吸引して主流路121内に血液を導流する。この際、制御部400は、主流路121と排出流路141とを連通する弁を開弁した状態を維持し、主流路121内のフラッシュ液を廃液タンクTへ排出する。また、制御部400は、バルブ230を切り替えて、第1主流路121aにおける流体の流れを、採血針110へ向かう方向から吸引ポンプ220へ向かう方向へと切り替える。主流路121内がフラッシュ液から血液に置換されるまで血液の導流を続ける。
【0048】
ここで、制御部400は、センサーSから送信されるデータを基に主流路121内がフラッシュ液から血液に置換されたか否かを判断する。具体的には、主流路121内の血液の濃度が予め定めた第2しきい値に到達するまでは、主流路121内が血液に置換されていないと判断し、血液の導流を続ける(ステップS60:NO)。センサーSが検出する第1主流路121a内の血液の濃度が予め定めた第2しきい値に到達した後、所定時間血液の導流を続ける。これにより、主流路121内の血液の濃度が第2しきい値に到達したら、主流路121内がフラッシュ液から血液に置換されたと判断し、次の工程へ移行する(ステップS60:YES)。
【0049】
次に、一の検査工程(ステップS70、S80)において、制御部400は、供給ポンプ214を停止し、吸引ポンプ220を作動させた状態を維持したまま、切り替え部150を作動させて、主流路121と一の分岐流路131とを連通する弁を開弁する(ステップS70)。本実施形態では、分岐流路131および検査部300の数は、それぞれ8個としているため、8個の分岐流路131のうち、一の分岐流路131を選択する。
【0050】
次に、制御部400は、凝固時間測定器310を用いて、試験管316内へと流入した血液の凝固検査を行う(ステップS80)。術者は、予め分岐流路131と接続された状態の試験管316を測定装置M1の試験管保持部M11に配置しておく。主流路121と一の分岐流路131とを連通する弁を開弁すると、一の分岐流路131を介して血液が一の検査部300が備える一の凝固時間測定器310の試験管316内へと流入する。
【0051】
次に、測定装置M1を駆動して凝固時間を測定する。術者は、試験管保持部M11に配置されている試験管316の数や試験条件等のデータを操作部M15によって予め入力しておく。まず、制御部400は、駆動部M12を作動して、血液が流入した試験管316を加振し、血液と凝固促進剤312とを混合して検査を開始する。さらに、駆動部M12を作動して、試験管316を円筒軸周りに回動させる。血液の凝固が進むと血液の粘度が増すため、試験管316内の検査棒314が試験管316の回動に合わせて徐々に回動を始める。次に、検知部M13を作動して、検査棒314の回動を検知する。検査を開始したときから検査棒314の回動を検知したときまでの時間が凝固時間として表示部M14に表示される。なお、血液の凝固検査中は、ヒーター等によって試験管316内の温度を体温に近い37度程度に保つことが好ましい。
【0052】
次に、他の検査工程(ステップS90)において、制御部400は、洗浄工程(ステップS10、S20)、待機工程(ステップS30、S40)を行い、待機状態にする。他の検査を開始する際は、血液置換工程(ステップS50、S60)を行い、主流路121内を新たな血液で満たす。検査部300は、この血液を使用して、血液の凝固検査を行う。
【0053】
本実施形態に係る単回使用の凝固時間測定器310では、検査によって試験管316内の血液が凝固するため、再度同じ凝固時間測定器310を使用することはできない。このため、制御部400は、切り替え部150を作動させて、主流路121と他の分岐流路131とを連通する弁を開弁して、未だ検査を行っていない未使用の検査部300により血液の凝固検査を行う。
【0054】
制御部400は、洗浄工程(ステップS10、S20)、待機工程(ステップS30、S40)、血液置換工程(ステップS50、S60)を残りの未使用の検査部300に対してそれぞれ行い(ステップS90:NO)、全ての検査部300において測定が完了すると、8つの凝固時間を検査結果として得る(ステップS90:YES)。得られた全ての検査結果は、表示部M14にまとめて表示される。表示方法は、特に限定されないが、例えば、横軸に時間、縦軸に凝固時間の検査結果の値をプロットする。これにより、術者は、凝固時間の経時的な変化を視覚的に素早く読み取ることができる。
【0055】
以上の制御により得られた検査結果に基づいて、治療中に患者に投与するヘパリン等の抗凝固剤の量を調整する。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る血液検査システム10は、供給部210と、複数の検査部300と、検査部300に血液を導流する複数の分岐流路131と、血液を分岐流路131へ導流する吸引部220と、主流路121から流体の一部を排出する排出流路141と、主流路121と複数の分岐流路131との連通状態および主流路121と排出流路141との連通状態を選択的に切り替え可能な切り替え部150と、当該システム各部の動作を制御する制御部400と、を有している。さらに、制御部400は、検査部300による血液検査に際して、主流路121と複数の分岐流路131のうちの一の分岐流路131とを連通させて、複数の検査部300のうちの未だ検査を行っていない一の検査部300に血液を導流する。
【0057】
このように構成された血液検査システム10によれば、未だ検査を行っていない検査部300のうちから一の検査部300を選択して血液の凝固検査を行う制御をすることができる。当該制御によって、血液の凝固時間を所望の間隔およびタイミングで自動的に複数回繰り返して測定することができるため、凝固時間の経時的変化を測定することができる。また、単回使用の検査部300を使用することができるため、より簡便かつ短時間で検査を行なうことができる。これにより、血栓の形成を防止するとともに、抗凝固剤の過剰投与を防止して患者への負担を軽減することができる。
【0058】
また、排出流路141は、主流路121から分岐しており、切り替え部150は、主流路121と、複数の分岐流路131のうちの一の分岐流路131または排出流路141とを連通した状態に切り替える。主流路121と一の分岐流路131とを連通した状態で、一の検査部300により血液の凝固検査を行うことができる。また、主流路121と排出流路141とを連通した状態にすることによって、フラッシュ液によって主流路121内の洗浄を行うことができる。これにより、切り替え部150は、カテーテル100内の洗浄状態と、検査部300によって血液検査を行う状態とを容易に切り替えることができる。
【0059】
また、主流路121内の流体中に含まれる血液の濃度を検出するセンサーSをさらに有するため、主流路121内がフラッシュ液で満たされている状態にあるのか、あるいは血液で満たされた状態にあるのかを容易に認識することができる。これにより、カテーテル100内の洗浄が完了したことを確認するとともに、血液の凝固検査を開始するタイミングを確認することができる。
【0060】
また、複数の検査部300は、分岐流路131から導流された血液の凝固時間を計測する凝固時間測定器310を含むため、血液の凝固検査をより円滑に行うことができる。
【0061】
また、凝固時間測定器310は、凝固促進剤312を混合して活性化した血液の粘性を測定することによって凝固時間を計測する粘性測定モジュールであるため、より短時間で正確な凝固時間を測定することができる。
【0062】
本実施形態に係る血液検査システム10の制御方法によれば、主流路121にフラッシュ液を供給しながら主流路121から流体を排出して主流路121内を洗浄する洗浄工程(ステップS10、S20)と、主流路121と複数の分岐流路131のうちの一の分岐流路131とを連通させて、複数の検査部のうちの一の検査部により血液を検査する一の検査工程(ステップS70、S80)と、複数の検査部300のうちの未だ検査を行っていない他の検査部300により血液を検査する他の検査工程(ステップS90)と、を有している。
【0063】
このように構成された血液検査システム10の制御方法によれば、検査を開始する前に主流路121内の空気や血液等の残渣を排出することができるため、血液検査のために新鮮な血液を採取することができる。また、未だ検査を行っていない検査部300のうちから一の検査部300を選択して血液の凝固検査を行う制御をすることができる。当該制御によって、血液の凝固時間を所望の間隔およびタイミングで自動的に複数回繰り返して測定することができるため、凝固時間の経時的変化を測定することができる。また、単回使用の検査部300を使用することができるため、より簡便かつ短時間で検査を行なうことができる。これにより、血栓の形成を防止するとともに、抗凝固剤の過剰投与を防止して患者への負担を軽減することができる。
【0064】
〈検査部および測定装置の変形例1〉
以下、変形例1に係る検査部および測定装置について
図4(A)、(B)を参照しながら説明する。
図4(A)は、変形例1に係る検査部500を示す概略図であり、
図4(B)は、変形例1に係る測定装置M2を示す概略図である。検査部500および測定装置M2以外の構成は、前述した第1実施形態と同様なので、その説明を省略する。
【0065】
検査部500は、凝固時間測定器510を備えている。凝固時間測定器510は、凝固促進剤を添加した血液を流動させて活性化した血液の流動特性を測定することによって凝固時間を計測する流動測定モジュールである。
【0066】
変形例1に係る凝固時間測定器510は、
図4(A)に示すように、血液を活性化させて凝固を促進する凝固促進剤512と、平らな上面を備える基板514と、基板514の上面に配置され、血液が流動可能な細管516と、を有している。
【0067】
凝固促進剤512は、細管516の内壁の一部に塗布されている。凝固促進剤512は、前述した第1実施形態と同様のものを使用することができる。
【0068】
細管516は、一端に血液を流入可能な流入口516aと、他端に血液を排出可能な排出口516bと、を備えている。流入口516aは、一の分岐流路131に接続されている。排出口516bは、後述する排液流路M23に連通されている。なお、細管516とは別に、流入口516aおよび/または排出口516bと連通し、血液の凝固前粘度測定、圧力測定や不要な血液の排出などを行うための管をさらに設けてもよい。
【0069】
細管516は、外側からセンサーや視認等で細管516内の血液を認識できる材料、例えば、透明な樹脂やガラス等の材料から形成されている。
【0070】
測定装置M2は、
図4(B)に示すように、複数の凝固時間測定器510を計測位置に保持する複数の保持部M21と、細管516内の血液を排出口516bから吸引する吸引ポンプM22と、排出口516bと吸引ポンプM22とを連通する排液流路M23と、血液の流動特性を検知する検知部M24と、計測結果を表示する表示部M25と、術者が所定の入力操作を行なう操作部M26と、を有している。
【0071】
次に、
図2を参照して、変形例1に係る検査部500を備える血液検査システムの制御方法について説明する。変形例1に係る血液検査システムの制御方法は、血液の凝固検査を行う(ステップS80)工程のみが前述した第1実施形態と異なり、他の工程は同様なので説明を省略する。
【0072】
血液の凝固検査を行う工程(ステップS80)において、まず、血液が一の分岐流路131を介して細管516の流入口516aに流入する。次に、吸引ポンプM22を作動して、排出口516b側から細管516内を吸引することにより、陰圧を利用して血液を細管516内に引き込む。
【0073】
細管516内に流入した血液は、流入口516aから排出口516bへ向かって流動し、細管516の内壁に配置された凝固促進剤512と混合される。これにより、血液は徐々に粘性を増し、流動特性が変化する。検知部M24を作動して、血液の流動特性を測定し、解析処理等により凝固時間を計測する。計測により得られた凝固時間は、表示部M25に表示される。なお、流入口516a側および排出口516b側のそれぞれに吸引ポンプを設けることによって、血液が細管516内を流入口516aと排出口516bとの間を往復流動するように構成してもよい。また、前述した第1実施形態と同様に血液の凝固検査中は、ヒーター等によって凝固時間測定器510内の温度を体温に近い37度程度一定に保つことが好ましい。
【0074】
以上のように、変形例1に係る検査部500の凝固時間測定器510は、凝固促進剤512が配置された細管516内で血液の流動特性を測定することによって凝固時間を計測する流動測定モジュールである。これにより、より簡単かつ短時間で血液の凝固時間を測定することができる。
【0075】
〈検査部および測定装置の変形例2〉
以下、変形例2に係る検査部について
図5(A)、(B)を参照しながら説明する。
図5(A)は、変形例2に係る検査部600を示す概略図であり、
図5(B)は、変形例2に係る測定装置M3を示す概略図である。
【0076】
変形例2に係る検査部600は、変形例1に係る複数の凝固時間測定器510に加えて、分岐流路131から導流された血液の血糖値を測定する複数の血糖値測定器610をさらに備えている。
【0077】
変形例2に係る測定装置M3は、血液の凝固時間を測定する凝固時間測定装置と、血液中の血糖値を測定する血糖値測定装置の両方の機能を兼ね備えている。血糖値測定装置は、グルコース等の血液に含まれる成分を分析する血液成分分析装置を例示して説明する。
【0078】
血糖値測定器610は、
図5(A)に示すように、分岐流路131と接続する接続部611と、接続部611が設けられた筐体612と、筐体612の内部に配置され、酵素剤や校正液を含む試薬614と、を有している。
【0079】
測定装置M3は、
図5(B)に示すように、複数の凝固時間測定器510および複数の血糖値測定器610をそれぞれ計測位置に保持する複数の第1保持部M31aおよび複数の第2保持部M31bと、凝固時間測定器510の細管516内の血液を排出口516b側から吸引する吸引ポンプM32と、凝固時間測定器510の細管516内の血液の流動を検知する第1検知部M33と、血液中のグルコース濃度を検知する第2検知部M34と、計測結果を表示する表示部M35と、術者が所定の入力操作を行なう操作部M36と、を有している。
【0080】
第1検知部M33は、前述した変形例1に係る検知部M24と同様の構成を備えている。第2検知部M34は、血液中のグルコースが反応して生成した過酸化水素が電気化学的に分解されることによって生じる電流を測定し、グルコース濃度に換算することによって血液中の血糖値を検知する。
【0081】
以上のように、変形例2に係る血液検査システムは、前述した第1実施形態と同様の構成により、血液の凝固時間および血糖値を所望の間隔およびタイミングで自動的に複数回繰り返して測定することができるため、凝固時間および血糖値の経時的変化を測定することができる。
【0082】
また、変形例2に係る検査部600は、分岐流路131から導流された血液の血糖値を測定する血糖値測定器610を備えている。これにより、血液の血糖値を測定することができるため、術中に血糖値を最適な状態に近づける管理を行うことができる。
【0083】
<第2実施形態>
図6を参照して、第2実施形態に係る血液検査システム20を説明する。
図6は、第2実施形態に係る血液検査システム20の全体を概略的に示す図である。
【0084】
第2実施形態に係る血液検査システム20は、
図6に示すように、分岐流路131から分岐する複数の排出流路741および複数の検査流路761と、第1切り替え部(切り替え部に相当)751および第2切り替え部(切り替え部に相当)752の2つの切り替え部とを備えている点で、前述した第1実施形態と異なる。なお、前述した第1実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0085】
排出流路741は、前述した第1実施形態に係る排出流路141と同様の構成を有し、同様の機能を備えているが、各分岐流路131にそれぞれ配置されている点で前述した第1実施形態と異なる。これにより、主流路121および分岐流路131から流体を排出可能に構成されている。排出流路741の数は、分岐流路131の数と同じである。
【0086】
検査流路761は、第2切り替え部752を介して、複数の検査部300と複数の分岐流路131とを連通する。検査流路761は、各検査部300まで血液を導流する。
【0087】
第1切り替え部751は、主流路121に接続され、主流路121からの流路を一の分岐流路131に切り替える。第1切り替え部751は、前述した第1実施形態に係る切り替え部150と同様の構成を有し、同様の機能を備えている。
【0088】
第2切り替え部752は、分岐流路131に接続され、分岐流路131からの流路を排出流路741または検査流路761に切り替える。これにより、第2切り替え部752は、分岐流路131へ導流された流体を排出流路741または検査流路761に導流する。
【0089】
以上のように、第2実施形態に係る血液検査システム20は、主流路121および分岐流路131から流体の少なくとも一部を排出する排出流路741と、主流路121と複数の分岐流路131との連通状態を選択的に切り替え可能な第1切り替え部751と、分岐流路131と排出流路741または検査流路761との連通状態を選択的に切り替え可能な第2切り替え部752と、を有している。
【0090】
このように構成された血液検査システム20によれば、分岐流路131が排出流路741と、検査流路761とに分かれているため、第2切り替え部752によって、より高精度に血液とそれ以外の流体の導流を分けることができる。これにより、より純度が高い血液を検査部300まで導流することができる。
【0091】
以上、実施形態および変形例を通じて本発明に係る血液検査システムおよび血液検査システムの制御方法を説明したが、本発明は実施形態および変形例において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0092】
例えば、血液検査システムにより行う血液検査は、血液の凝固検査や血糖値の測定等の成分検査に限られず、生化学的検査などの血液を利用して病状などを調べる臨床検査が広く含まれる。
【0093】
また、検査部は、血液凝固時間測定器や血糖値測定器を備える構成に限られず、例えば、乳酸値、pHやO
2、K
+等を測定する血液ガス分析器や電解質測定器、血圧を測定する血圧測定器などの他の測定器を備える構成としてもよい。
【0094】
また、血液検査システムが備える供給ポンプ、吸引ポンプ、バルブの配置や数は特に限定されず、適宜変更可能である。
【0095】
また、血糖値測定器を使用する測定装置は、血液成分分析装置の機能を備える構成に限定されず、グルコース等の血液に含まれる成分と反応した試薬の色の変化に基づいて血糖値を分析する比色式血糖測定装置などの機能を備えることができる。比較的安価な単回使用の試薬を使用することによって、治療費を抑えることができる。
【0096】
本出願は、2016年5月18日に出願された日本国特許出願第2016−099755号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。