特許第6812438号(P6812438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812438
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】衝撃レンチの回転検出
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20201228BHJP
   B25B 21/02 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   B25B23/14 610K
   B25B21/02 J
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-530554(P2018-530554)
(86)(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公表番号】特表2019-502566(P2019-502566A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】EP2016080450
(87)【国際公開番号】WO2017102585
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年9月18日
(31)【優先権主張番号】1551633-9
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】フリベルイ ヨン ロベルト クリスティアン
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/139952(WO,A1)
【文献】 特表2013−542081(JP,A)
【文献】 特開平08−323639(JP,A)
【文献】 特開平07−308864(JP,A)
【文献】 特開2002−321165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
B25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃型パワーレンチによって締め付けられているねじ継手中に実際に得られる角変位量と、前記パワーレンチのパワーレンチハウジング(10)と衝撃ユニット(12)との間で測定された角変位量との偏差を検出する方法において、
・第1の送り出された衝撃(A)の終了点(AEに対応する角度引き続く第2の送り出された衝撃(B)の終了点(BEに対応する角度との間の第1の角度間隔を求めるステップ(301)と、
・前記第2送り出し衝撃(B)の開始点(BSに対応する角度引き続く第3の送り出された衝撃(C)の開始点(CSに対応する角度との間の第2の角度間隔を求めるステップ(303)と、
・前記第1の角度間隔を前記第2の角度間隔と比較して前記第1の角度間隔と前記第2の角度間隔との差を求めるステップ(305)と、
・前記第1および前記第2の角度間隔相互間の前記求めた差に基づいて、衝撃型パワーレンチによって締め付けられているねじ継手中に実際に得られる角度変位量と、前記パワーレンチの前記パワーレンチハウジング(10)と前記衝撃ユニット(12)との間で測定された角度変位量との偏差が存在するかどうかを判定するステップ(307)とを含む、方法。
【請求項2】
前記引き続く送り出しトルク衝撃(A,B,C)の前記終了点および前記開始点(AE,BEおよびBS,CS)を前記パワーレンチの前記衝撃ユニットの回転速度変化に基づき決定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記偏差が存在するかどうかの前記判定は、前記第1および前記第2の角度間隔相互間の前記求めた差とあらかじめ設定されたしきい値との比較に基づく、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の角度間隔と前記第2の角度間隔との間の偏差が存在すると判定された時点で警告信号を出力するステップ(309)を更に含む、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
衝撃型パワーレンチによって締め付けられているねじ継手中に実際に得られる角変位量と、前記パワーレンチのパワーレンチハウジング(10)と衝撃ユニット(12)との間で測定された角変位量との偏差を検出するためのコンピュータ命令を記憶している非一過性コンピュータ可読媒体を搭載したコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータ上での実行時に、前記コンピュータが次のステップ、すなわち、
・第1の送り出された衝撃(A)の終了点(AEに対応する角度引き続く第2の送り出された衝撃(B)の終了点(BEに対応する角度との間の第1の角度間隔を求めるステップ(301)、
・前記第2送り出し衝撃(B)の開始点(BSに対応する角度引き続く第3の送り出された衝撃(C)の開始点(CSに対応する角度との間の第2の角度間隔を求めるステップ(303)、
・前記第1の角度間隔を前記第2の角度間隔と比較して前記第1の角度間隔と前記第2の角度間隔との差を求めるステップ(305)、および
・前記第1および前記第2の角度間隔相互間の前記求めた差に基づいて、衝撃型パワーレンチによって締め付けられているねじ継手中に実際に得られる角変位量と、前記パワーレンチのパワーレンチハウジング(10)と衝撃ユニット(12)との間で測定された角変位量との偏差が存在するかどうかを判定するステップ(307)を実行するようにする命令を含
コンピュータプグラム製品。
【請求項6】
衝撃型パワーレンチによって締め付けられているねじ継手中に実際に得られる角変位量と、前記パワーレンチのパワーレンチハウジング(10)と衝撃ユニット(12)との間で測定された角変位量との偏差を検出する装置において、
・第1の送り出された衝撃(A)の終了点(AEに対応する角度引き続く第2の送り出された衝撃(B)の終了点(BEに対応する角度との間の第1の角度間隔を求めるようになった算定回路と、
・前記第2送り出し衝撃(B)の開始点(BSに対応する角度引き続く第3の送り出された衝撃(C)の開始点(CSに対応する角度との間の第2の角度間隔を求めるようになった算定回路と、
・前記第1の角度間隔を前記第2の角度間隔と比較して前記第1の角度間隔と前記第2の角度間隔との差を求めるようになった比較器と、
・前記第1および前記第2の角度間隔相互間の前記求めた差に基づいて、衝撃型パワーレンチによって締め付けられているねじ継手中に実際に得られる角変位量と、前記パワーレンチのパワーレンチハウジング(10)と衝撃ユニット(12)との間で測定された角変位量との偏差が存在するかどうかを判定するようになった判定回路とを有する、装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置を有するパワーレンチ。
【請求項8】
請求項6記載の装置を有するパワーレンチコントローラユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃型パワーレンチによって締め付けられているねじ継手中に実際に得られる角変位量と、パワーレンチのパワーレンチハウジングと衝撃ユニットとの間で測定された角変位量との偏差を検出する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送り出されたトルクインパルスの続く時間が短いという動的特性のゆえに、この種のパワーレンチにおいて実際に送り出された出力トルクの大きさを測定する上で問題がある。ねじ継手中の漸変摩擦抵抗に起因して、トルクレベルは、実際に得られた圧締め力の決定的な測定結果では全くあり得ない。したがって、ねじ継手に加えられたトルクを求めようとする代わりに、トルクインパルスの繰り返しによってねじ継手に加えられた回転増分の合計を測定してこれを定めることによってより信頼性の高い圧締め力を求める。実際のねじ継手のあらかじめ定められた角度と圧締め力の関係、すなわち、ねじ継手のねじ山のピッチを考慮して、回転増分合計は、ねじ継手中に得られるある特定の圧締め力に対応している。したがって、出力シャフトの全回転移動量は、パワーレンチの衝撃ユニットのところに設けられた角度エンコーダによって指示できる回転増分を集計することによって得られる。
【0003】
実際には、これは、パワーレンチハウジングに対する衝撃ユニットの慣性駆動部材の回転増分を測定し、そしてこれら増分の合計を求めることによって行われていた。しかしながら、これは、パワーレンチハウジングが締め付け作業中、絶対に動かないままの状態である場合にのみ締め付け中のねじ継手に課される回転量の正確な情報を与える。しかしながら、パワーレンチハウジングの幾分かの回転変位が起こった場合、パワーレンチ衝撃ユニットにおける角度の測定は、誤りを招く場合があり、しかもねじ継手の実際に得られる回転移動量に対応していない。このことは、衝撃ユニットで測定される回転増分がねじ継手中に実際に得られる締め付けレベルについて誤った情報を与える。
【0004】
したがって、ねじ継手に課される真の回転量を確認する上での問題があり、というのは、この種の手動支持式ツールがトルク送り出し中にレンチハウジングを動かない状態に保つオペレータの能力にかかっているからである。幾つかの場合において、衝撃レンチは、トルク送り出し中にレンチハウジングに伝達される反力に起因して逆方向に幾分か回転する傾向のある場合がある。他の場合、オペレータは、意識的であるにせよそうでないにせよいずれにせよ、締め付け方向にレンチハウジングを回す場合があり、これによっても、レンチの角度エンコーダにより指示される回転増分を締め付け中のねじ継手に課される実際の回転移動量に関して誤認させる。
【0005】
このことは、オペレータがパワーレンチハウジングを動かないようにするのをうまく行わず、すなわち、締め付け中、ハウジングの回転変位を阻止するのをうまく行わない場合、衝撃機構体の角度エンコーダから得られたデータは、得られたねじ継手回転およびかくしてねじ継手の締め付けレベルに関する真の情報を与えることがないことを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、手動支持式衝撃型パワーレンチにより締め付け中にねじ継手に実際に課される回転移動量がレンチの衝撃ユニットのところに設けられた角度エンコーダによって指示されるレンチの出力シャフトの回転増分の合計に対応するかどうかを判定する方法を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、引き続く衝撃の送り出し時にレンチハウジングに対する衝撃ユニットの角度変位量を互いに比較することによって手動支持式衝撃型パワーレンチにより締め付け中にねじ継手に実際に課される回転移動量がレンチの衝撃ユニットのところに設けられた角度エンコーダによって指示されるレンチの出力シャフトの回転増分の合計に対応するかどうかを判定することを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これら目的または他の何らかの目的は、添付の特許請求の範囲に記載された方法および装置によって達成される。
【0009】
本発明は、締め付け中のねじ継手に実際に課される回転移動量とパワーレンチの衝撃発生ユニットについて測定された角変位量との偏差を検出し、それによりねじ継手締め付け作業中におけるパワーレンチハウジングの生じている回転変位量を検出することを目的としている。具体的に言えば、本発明は、作業中に衝撃レンチのトルク衝撃発生ユニットの個々の移動量を研究して分析し、それにより送り出されたトルクインパルスによって達成される締め付け結果を検証するのを可能にする。個々の移動量を研究して分析すると、ジャイロを用いないで偏差を求めることができる。
【0010】
一実施形態によれば、衝撃型パワーレンチによって締め付けられているねじ継手中に実際に得られる角変位量と、パワーレンチのパワーレンチハウジングと衝撃ユニットとの間で測定された角変位量との偏差を検出する方法が提供される。この方法では、第1の送り出された衝撃の終了点と引き続く第2の送り出された衝撃の終了点との間の第1の角度間隔を求め、第2送り出し衝撃の開始点と引き続く第3の送り出された衝撃の開始点との間の第2の角度間隔を求める。第1の角度間隔を第2の角度間隔と比較して第1の角度間隔と第2の角度間隔との差を求める。次に、第1および第2の角度間隔(ΔΦ1,ΔΦ2)相互間の求めた差に基づいて、衝撃型パワーレンチによって締め付けられているねじ継手中に実際に得られる角度変位量と、パワーレンチのパワーレンチハウジングと衝撃ユニットとの間で測定された角度変位量との偏差が存在するかどうかを判定する。それゆえ、継手の締め付け中におけるパワーレンチの回転運動によって生じるねじ、ナットまたはボルトの測定された角度回転量と実際の角度回転量の偏差は、第1の角度間隔と第2の角度間隔の差を検出することによって検出できる。これら測定値を追加のセンサ、例えばジャイロを用いないで記録することができ、そしてかくして、検出をそれほど追加のコストなしで実施できる。
【0011】
一実施形態によれば、引き続く送り出しトルク衝撃の終了点および開始点をパワーレンチの衝撃ユニットのある特定の回転速度変化レベルとして選択する。
【0012】
一実施形態によれば、第1および第2の角度間隔相互間の求めた差とあらかじめ設定されたしきい値との比較に基づく偏差が存在するかどうかの判定は比較に基づく。
【0013】
一実施形態によれば、第1の角度間隔と第2の角度間隔との間の偏差が存在すると判定された時点で警告信号を出力する。
【0014】
本発明はまた、本方法を実施するための命令を含むコンピュータプログラム製品および本方法を利用することができる様々な装置、例えばパワーレンチまたはパワーレンチに連結された制御ユニットおよびパワーレンチを制御する装置に及ぶ。本発明の更に別の目的および更に別の利点は、以下の説明および特許請求の範囲の記載された明らかであろう。
【0015】
次に、添付の図面を参照して以下の説明および特許請求の範囲において本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】衝撃型パワーレンチの部分断面概略側面図であり、角度エンコーダ付きのインパルス発生ユニット示す図である。
図2】パワーレンチハウジングに対するパワーレンチ衝撃発生ユニットの慣性駆動部材の経時的な角速度を示すグラフ図である。
図3】角度偏差を検出する際に実施される幾つかの手順としてのステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法は、回転モータおよび衝撃発生ユニット12を備えた手動支持式ハウジング10を有するインパルス型パワーレンチに利用されるようになっている。衝撃発生ユニット12は、モータに結合されるとともに運動エネルギーを典型的には手持ち型のパワーレンチの出力シャフト14に連結されたアンビル部材に間欠的に伝えるよう構成された慣性駆動部材13を有する。エネルギー伝達は、衝撃発生ユニット内に閉じ込められた油圧媒体を介して達成される。衝撃発生ユニットがありふれた周知形式および設計のものなので、それ以上の詳細な説明は本明細書では差し控える。
【0018】
衝撃発生ユニットは、発生させた各トルク衝撃中にハウジング10に対する衝撃ユニット12の慣性駆動部材13の回転移動量を指示して測定し、それにより出力シャフト14の回転変位量およびかくして締め付け中のねじ継手の段階的角変位量の測定を可能にする角度センサ、例えば角度エンコーダ16を更に含む。これら角変位量の合計は、ねじ継手中に得られる圧締め力に対応している。これは、ねじ継手のねじ山ピッチを考慮すると容易に計算できる。図1に示されている実施形態としての角度エンコーダ16は、従来形式のものであり、この角度エンコーダは、慣性駆動部材13に取り付けられていて多数の磁化横方向ストライプを有する円周方向バンド17を有する。他の角度センサを他の実施形態において使用することができる。センサ18が慣性駆動部材13の回転時にバンド17の磁化ストライプによって活性化される状態でハウジング10内に固定されている。
【0019】
図2の回転速度/時間のグラフ図は、3つの引き続くトルク衝撃の部分を示しており、これら衝撃の開始点ならびに終了点が指示されている。グラフ図の左側には、第1の衝撃Aの終了点AEがハウジングに対する慣性駆動部材のある程度の回転速度増加度として選択されている。次の衝撃Bの次に、慣性部材の加速段階Xが示され、衝撃Bの開始点BSは、慣性部材の慣性速度の減少として選択されている。衝撃Bは、終了点BEで完了し、そして次に第3の衝撃Cが生じ、この第3の衝撃Cの次に加速段階Yが示されている。衝撃Cは、開始点CSで始まっている。
【0020】
点AS,AE,BS,BEおよびCS,CEの各々は、ハウジング10に対する慣性駆動部材13の角度位置を表しており、このことは、衝撃Aの終了点AEと衝撃Bの終了点BEとの間の角度間隔ΔΦ1ならびに衝撃Bの開始点BSと衝撃Cの開始点CSとの間の角度間隔ΔΦ2を求めることができるということを意味している。
【0021】
衝撃送り出し中におけるパワーレンチハウジングがトルク衝撃A,B,Cの発生中に完全に動かない状態に保たれた場合、角度間隔ΔΦ1と角度間隔ΔΦ2は、同一のはずである。したがって、パワーレンチハウジングの角変位が衝撃送り出し中に起こった場合、角度間隔ΔΦ1,ΔΦ2相互間の差を観察することができる。角変位量のかかる差により、パワーレンチハウジングの運動が生じたことおよび慣性駆動部材の角変位量の合計の測定値と計算値が締め付け中のねじ継手に実際に課される角変位量に真の意味では一致していないことが分かる。このことは、ねじ継手の達成された圧締め力または締め付けレベルが衝撃ユニットの慣性駆動部材の角変位量の合計の指示および計算値に真の意味では一致しないことおよび実際に得られた締め付けレベルがねじ継手の品質および安全性を確認するためにチェックされなければならないことを意味している。幾つかの実施形態によれば、ねじ継手を点検すべきことを指示するために表示器、例えば光または音発生装置がパワーレンチに取り付けた状態で設けられまたはパワーレンチを作動するオペレータの近くに設けられる。
【0022】
図3の流れ図は、本明細書において説明するように本方法を実施する際にコンピュータプログラムによって実行できる幾つかの手順としてのステップを示している。最初に、ステップ301では、第1の送り出された衝撃Aの終了点AEと次の第2の送り出された衝撃Bの終了点BEとの第1の角度間隔ΔΦ1を求める。
【0023】
次に、ステップ303では、上述の第2の送り出し衝撃Bの開始点BSと次の第3の送り出された衝撃Cの開始点CSとの間の第2の角度間隔ΔΦ2を求める。しかる後、ステップ305では、第1の角度間隔ΔΦ1を第2の角度間隔ΔΦ2と比較して第1の角度間隔ΔΦ1と第2の角度間隔ΔΦ2との差を求める。第1の角度間隔ΔΦ1と第2の角度間隔ΔΦ2との生じている差は、パワーレンチハウジング(10)と衝撃ユニット(12)との間で測定された角変位量と締め付け中のねじ継手に実際に課された角変位量との偏差を指示している。ステップ305において第1の角度間隔ΔΦ1と第2の角度間隔ΔΦ2との間に差が存在することが判定された場合、パワーレンチハウジング10と衝撃ユニット12との間で測定された角変位量と締め付け中のねじ継手に実際に課された角変位量との偏差がステップ307において存在すると判定される。次に、ステップ309において、オペレータまたは制御システムに警告する信号を出力してパワーレンチのオペレータにねじ継手に潜在的な劣化を知らせるのが良い。
【0024】
例示の一実施形態によれば、ステップ307において、差があらかじめ設定されたしきい値を超えた場合に、差が存在すると判定される。あらかじめ設定されたしきい値を異なるねじ継手について異なった値に設定することができ、それにより互いに異なるねじ継手について許容できる互いに異なる許容誤差を補償することができる。
【0025】
幾つかの実施形態によれば、ねじ継手の潜在的に劣化の判定に関するデータもまた、追跡目的でログ記録して特定のパワーレンチまたは特定のオペレータに関する統計データの基礎を作り、それにより特定のパワーレンチまたは特定オペレータに問題があるかどうかを判定するのが良い。これは、例えば、ねじ継手の潜在的な劣化を測定する頻度をある所定の値と比較することによって決定できる。ログ記録されたデータは、例えば、時間、パワーレンチの同一性、オペレータの同一性、および求めた差の大きさのうちの1つまたは2つ以上を含むのが良い。
【0026】
本発明の方法および装置によって、例えばジャイロの形態をした余分の機器をパワーレンチに追加しないで、締め付け中のねじ継手に課された送り出し締め付け運動の不確実性およびかくしてねじ継手の最終的に得られた締め付けレベルを検出することが可能である。インパルス送り出し中におけるパワーレンチハウジングの生じている角変位量を衝撃ユニット内に設けられた角度センサ、例えば角度エンコーダによって検出することができ、この角度エンコーダは、今日における大抵の衝撃レンチにおける標準機器である。
【0027】
コンピュータ上で実行される適当なソフトウェアを用いて本方法を実施することができる。ソフトウェアを非揮発性デバイス上に記憶させるのが良い。幾つかの実施形態によれば、パワーレンチはそれ自体、ハードウェア、例えば中央プロセッサユニットおよび本明細書において説明した方法の実施を可能にするソフトウェアを含む関連メモリを収容している。幾つかの他の実施形態によれば、本方法は、パワーレンチから見て遠隔に配置されたパワーツールコントローラで実施される。
図1
図2
図3