特許第6812462号(P6812462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812462
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】バックル
(51)【国際特許分類】
   A44B 11/25 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   A44B11/25
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-561152(P2018-561152)
(86)(22)【出願日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2017000792
(87)【国際公開番号】WO2018131113
(87)【国際公開日】20180719
【審査請求日】2019年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 翼
(72)【発明者】
【氏名】西田 泰隆
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3196242(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0366989(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1246501(KR,B1)
【文献】 仏国特許出願公開第02948856(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結および連結解除可能なオス部材(1)とメス部材(1a)であって且つ連結解除した状態では第1の直線方向(Z)に重ね合せおよび離隔可能であると共に連結状態では前記第1の直線方向(Z)に対して直交する第2の直線方向(X)を引張方向(X)とする前記オス部材(1)と前記メス部材(1a)とを備え、
前記メス部材(1a)は、前記第1の直線方向(Z)を厚み方向とすると共にそのうち一方向の表方向に前記オス部材(1)を重ね合わせるメスベース(2a)と、前記第1の直線方向(Z)に対して直交する第3の直線方向(Y)に離隔すると共にメスベース(2a)の外周部よりも内側から表方向に突出する前後のメス案内壁部(32a,33a)と、前後の前記メス案内壁部(32a,33a)の間に形成されると共に前後の前記メス案内壁部(32a,33a)によって部分的に囲われるメス開口部(4a)と、前記メスベース(2a)の外周部よりも内側から表方向に突出するメスフック(6a)とを備え、
前記オス部材(1)は、前記メスベース(2a)の外周部の表側に重なり合うと共に前後の前記メス案内壁部(32a,33a)を囲む枠状のオスベース(2)と、前記オスベース(2)の内側に形成されると共に連結状態では表側から前記メス部材(1a)を視認可能なオス開口部(4)と、紐部材を取り付けるために前記オスベース(2)に設けられるオス取付部(7)と、前記オス開口部(4)の内側において前記メスフック(6a)に対して連結および連結解除可能なオスフック(6)であって連結状態では前記メス開口部(4a)に対してその内側に配置され、且つ表側に配置されるように前記第1の直線方向(Z)に延長する前記オスフック(6)と、前記オスフック(6)と前記オスベース(2)とを接合すると共に前記オスフック(6)を弾性変形可能に支えるオス接合部(8)であって前記オスフック(6)を前記メス開口部(4a)の表側の部分において操作する弾性変形により前記オスフック(6)を前記メス開口部(4a)の内側の部分において前記メスフック(6a)から連結解除させる弾性変形を支える前記オス接合部(8)とを備えることを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記メスフック(6a)は、前記第3の直線方向(Y)に離隔する一対のメスフック(6a,6a)であり、
前記オスフック(6)は、前記第3の直線方向(Y)に離隔すると共に一対の前記メスフック(6a,6a)に対して連結および連結解除可能な一対のオスフック(6,6)であり、
一対の前記オスフック(6,6)は、前記メス開口部(4a)の表側の部分において接近させる弾性変形により前記メス開口部(4a)の内側の部分において一対の前記メスフック(6a,6a)から連結解除させるものであることを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
一対の前記オスフック(6,6)は、連結状態では前記メス開口部(4a)に対してその内側に配置され、且つ表側に配置されるように前記第1の直線方向(Z)に延長する一対のオスフック本体(61,61)と、一対の前記オスフック本体(61,61)から互いに離隔する方向に張り出す一対のオス爪(66,66)とを備え、
一対の前記メスフック(6a,6a)は、前記メスベース(2a)の外周部よりも内側から表方向に突出すると共に前記第3の直線方向(Y)に離隔する一対のメスフック本体(61a,61a)と、一対の前記オス爪(66,66)に対して連結および連結解除可能である一対のメス爪(66a,66a)であって前後の前記メス案内壁部(32a,33a)よりも内側に配置されると共に一対の前記メスフック本体(61a,61a)から互いに接近する方向に張り出す一対の前記メス爪(66a,66a)とを備え、
前後の前記メス案内壁部(32a,33a)と一対の前記メスフック本体(61a,61a)とは同一物であることを特徴とする請求項2記載のバックル。
【請求項4】
一対の前記オスフック(6,6)は、前記第3の直線方向(Y)に離隔すると共に連結状態では前記メス開口部(4a)に対してその内側と表側に配置されるように前記第1の直線方向(Z)に延長する一対のオスフック本体(61,61)と、一対の前記オスフック本体(61,61)から互いに接近する方向に張り出す一対のオス爪(66,66)とを備え、
一対の前記メスフック(6a,6a)は、前後の前記メス案内壁部(32a,33a)よりも内側から表方向に突出すると共に前記第3の直線方向(Y)に離隔する一対のメスフック本体(61a,61a)と、前後の前記メス案内壁部(32a,33a)よりも内側に配置されると共に一対の前記メスフック本体(61a,61a)から互いに離隔する方向に張り出す一対のメス爪(66a,66a)とを備え、
前後の前記メス案内壁部(32a,33a)と一対の前記メスフック本体(61a,61a)とは別物であることを特徴とする請求項2に記載のバックル。
【請求項5】
前記第2の直線方向(X)と前記第3の直線方向(Y)は直交することを特徴とする請求項3または4に記載のバックル。
【請求項6】
前記オス接合部(8)は、一対の前記オスフック本体(61,61)を前記第3の直線方向(Y)に接合すると共に一対の前記オスフック本体(61,61)を弾性変形可能に支えるオスフック支持部(80)と、前記オスフック支持部(80)と前記オスベース(2)とを前記第2の直線方向(X)に接合する接合部本体(85)とを備えることを特徴とする請求項5に記載のバックル。
【請求項7】
連結状態において前記メスベース(2a)と前記オスベース(2)は、前記第3の直線方向(Y)の幅が揃う部分を備えていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のバックル。
【請求項8】
前記第2の直線方向(X)である引張方向(X)の力に耐えるために衝突可能なメス衝突部(5a)とオス衝突部(5)を備え、
前記メス衝突部(5a)は、前記メスベース(2a)から表方向に突出するものであり、
前記オス衝突部(5)は、前記オスベース(2)の一部であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のバックル。
【請求項9】
一対の前記オスフック本体(61,61)と前記オス接合部(8)のうち少なくとも一方は、前記オスベース(2)のうち前記メスベース(2a)に重ね合わせる裏面よりも、裏側に突出する部分を備えることを特徴とする請求項3〜6の何れかに記載のバックル。
【請求項10】
前記オスベース(2)と前記メスベース(2a)を重ね合わせるときに位置決めをするオス位置決め部(9)とメス位置決め部(9a)であって前記オス接合部(8)と前記メスベース(2a)に設けられると共に前記第1の直線方向(Z)に抜き差し可能な前記オス位置決め部(9)と前記メス位置決め部(9a)を備え、前記メス位置決め部(9a)は、前記メスベース(2a)から表方向に突出すると共に前記第1の直線方向(Z)から視て前記メス開口部(4a)の範囲内で且つ中心に配置されるものであり、
前記オス位置決め部(9)は、前記オス接合部(8)の裏面に設けられることを特徴とする請求項2〜7の何れかに記載のバックル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結および連結解除可能なオス部材とメス部材とを備えるバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
バックルの一例として、連結および連結解除可能なオス部材とメス部材を備えるものが存在する(特許文献1)。より詳しく言えば、メス部材はその底面において凹んだ凹部と、凹部に通じる一対の係合穴を備えるものとし、オス部材は、凹部に収容されるオス係合部と、一対の係合穴に嵌合する一対の係合ブロックであってオス係合部から突出する一対の係合ブロックを備えるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3196242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記した特許文献1には、凹部をメス部材の底面に形成してあることが記載されている。底面という記載から判断すると、オス部材とメス部材を連結するときには、オス部材を下、メス部材を上という配置関係にしたうえで、バックルの使用者はメス部材の凹部を視ずに、オス部材の係合部にメス部材の凹部を嵌め合わせるように、メス部材をオス部材に接近させることになる。したがってオス部材とメス部材とを連結するときに、使用者からは凹部を視認することができず、操作性が悪い。
【0005】
また仮に配置関係を逆にすると、つまりメス部材を下、オス部材を上という配置関係にすると、バックルの使用者はメス部材の凹部を視て、オス部材をメス部材に接近させることができる。しかし係合部を摘まんでオス部材をメス部材に接近させると、係合部を凹部に嵌め嵌め合わせるときに、指が邪魔になり、嵌め合わせづらく、操作性が悪い。
【0006】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的はオス部材とメス部材を連結するときの操作性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバックルは、連結および連結解除可能なオス部材とメス部材であって且つ連結解除した状態では第1の直線方向に重ね合せおよび離隔可能であると共に連結状態では第1の直線方向に対して直交する第2の直線方向を引張方向とするオス部材とメス部材とを備える。
メス部材は、第1の直線方向を厚み方向とすると共にそのうち一方向の表方向にオス部材を重ね合わせるメスベースと、第1の直線方向に対して直交する第3の直線方向に離隔すると共にメスベースの外周部よりも内側から表方向に突出する前後のメス案内壁部と、前後のメス案内壁部の間に形成されると共に前後のメス案内壁部によって部分的に囲われるメス開口部と、メスベースの外周部よりも内側から表方向に突出するメスフックとを備える。
オス部材は、メスベースの外周部の表側に重なり合うと共に前後のメス案内壁部を囲む枠状のオスベースと、オスベースの内側に形成されると共に連結状態では表側からメス部材を視認可能なオス開口部と、紐部材を取り付けるためにオスベースに設けられるオス取付部と、オス開口部の内側においてメスフックに対して連結および連結解除可能なオスフックであって連結状態ではメス開口部に対してその内側に配置され、且つ表側に配置されるように第1の直線方向に延長するオスフックと、オスフックとオスベースとを接合すると共にオスフックを弾性変形可能に支えるオス接合部であってオスフックをメス開口部の表側の部分において操作する弾性変形によりオスフックをメス開口部の内側の部分においてメスフックから連結解除させる弾性変形を支えるオス接合部とを備える。
【0008】
メスフックとオスフックは1つであるか否かを問わないが、次のようにすることが連結解除の操作性の向上には望ましい。
すなわちメスフックは、第3の直線方向に離隔する一対のメスフックであり、オスフックは、第3の直線方向に離隔すると共に一対のメスフックに対して連結および連結解除可能な一対のオスフックである。そして一対のオスフックは、メス開口部の表側の部分において接近させる弾性変形によりメス開口部の内側の部分において一対のメスフックから連結解除させるものである。
【0009】
一対のオスフックと一対のメスフックのより具体的な構成としては、以下の1)、2)が例示される。
1)一対のオスフックは、第3の直線方向に離隔すると共に連結状態ではメス開口部に対してその内側と表側に配置されるように第1の直線方向に延長する一対のオスフック本体と、一対のオスフック本体から互いに離隔する方向に張り出す一対のオス爪とを備える。一対のメスフックは、メスベースの外周部よりも内側から表方向に突出すると共に第3の直線方向に離隔する一対のメスフック本体と、一対のオス爪に対して連結および連結解除可能である一対のメス爪であって一対のメス案内壁部よりも内側に配置されると共に一対のメスフック本体から互いに接近する方向に張り出す一対のメス爪とを備え、一対のメス案内壁部と一対のメスフック本体とは同一物である。
【0010】
2)一対のオスフックは、第3の直線方向に離隔すると共に連結状態ではメス開口部に対してその内側と表側に配置されるように第1の直線方向に延長する一対のオスフック本体と、一対のオスフック本体から互いに接近する方向に張り出す一対のオス爪とを備える。一対のメスフックは、一対のメス案内壁部よりも内側から表方向に突出すると共に第3の直線方向に離隔する一対のメスフック本体と、一対のメス案内壁部よりも内側に配置されると共に一対のメスフック本体から互いに離隔する方向に張り出す一対のメス爪とを備え、一対のメス案内壁部と一対のメスフック本体とは別物である。
【0011】
また第2の直線方向と第3の直線方向との関係は問わないが、連結解除するときに一対のオスフックを摘まむ操作性を向上するには次のようにすることが望ましい。
すなわち第2の直線方向と第3の直線方向は直交することである。
【0012】
またオス接合部のより具体的な構成としては、以下の例がある。
すなわち、オス接合部は、一対のオスフック本体を第3の直線方向に接合すると共に一対のオスフック本体を弾性変形可能に支えるオスフック支持部と、オスフック支持部とオスベースとを第2の直線方向に接合する接合部本体とを備えるものである。
【0013】
またメスベースとオスベースは、第3の直線方向の幅を問わないが、連結するときの操作性を向上させるには次のようにすることが望ましい。
すなわち連結状態においてメスベースとオスベースは、第3の直線方向の幅が揃う部分を備えていることである。
【0014】
またバックルは、引張方向の力に耐える構成が望ましい。
すなわちバックルは、第2の直線方向である引張方向の力に耐えるために衝突可能なメス衝突部とオス衝突部を備え、メス衝突部は、メスベースから表方向に突出するものであり、オス衝突部は、オスベースの一部である。
【0015】
また一対のオスフック本体とオス接合部と、オスベースのうちメスベースに重ね合わせる裏面との関係は、問わないが、連結するときの操作性を向上させるには次のようにすることが望ましい。
すなわち一対のオスフック本体とオス接合部のうち少なくとも一方は、オスベースのうちメスベースに重ね合わせる裏面よりも、裏側に突出する部分を備えることである。
【0016】
またオス接合部とメスベースとの関係は問わないが、オス部材とメス部材との連結状態を安定させ、連結強度を向上させるには次のようにすることが望ましい。
すなわちオス部材とメス部材は、オスベースとメスベースを重ね合わせるときに位置決めをするオス位置決め部とメス位置決め部であってオス接合部とメスベースに設けられると共に第1の直線方向に抜き差し可能なオス位置決め部とメス位置決め部を備えるものとするメス位置決め部は、メスベースから表方向に突出すると共に第1の直線方向から視てメス開口部の範囲内で且つ中心に配置されるものである。オス位置決め部は、接合部の裏面に設けられるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバックルは、オス部材とメス部材を連結するときに、オス開口部からメス部材を視認可能であると共に、オス部材の枠状のオスベースを摘まむことができるので、連結するときの操作性が向上する。
【0018】
一対のメスフックと一対のオスフックを備えるバックルによれば、オス部材とメス部材とを連結解除するときに、一対のオスフックをメス開口部の表側の部分において接近させる操作、つまり一対のオスフックを挟む操作をすることにより、一対のオスフックを一対のメスフックから連結解除できるので、連結解除し易い。
【0019】
第2の直線方向と第3の直線方向が直交するバックルによれば、バックルの引張り方向と一対のオスフックを挟む方向とが直交するので、連結解除するときに一対のオスフックを摘まむ操作性が向上する。
【0020】
連結状態においてメスベースとオスベースに第3の直線方向の幅が揃う部分を備えているバックルによれば、メスベースとオスベースの当該揃う部分を指で挟めば、第1の直線方向の位置決めがし易くなり、連結するときの操作性が向上する。
【0021】
一対のオスフック本体とオス接合部のうち少なくとも一方がオスベースのうちメスベースに重ね合わせる裏面よりも裏側に突出する部分を備えるバックルによれば、オス部材とメス部材を連結するときに、メス開口部に当該突出する部分を差し込むことにより、オス部材とメス部材の大まかな位置決めができるので、連結するときの操作性が向上する。
【0022】
オス接合部とメスベースに第1の直線方向に抜き差し可能なオス位置決め部とメス位置決め部を備えるバックルによれば、接合部がメスベースに位置決めされるので、オス部材とメス部材との連結状態が安定し、連結強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一実施形態のバックルを示す分解斜視図である。
図2】第一実施形態のバックルを示す平面図である。
図3】第一実施形態のバックルを示す下面図である。
図4】第一実施形態のバックルを示す正面図である。
図5図2のV−V線断面図である。
図6図2のVI−VI線断面図である。
図7】メス部材を示す平面図である。
図8】メス部材を示す正面図である。
図9】メス部材を示す右側面図である。
図10図7のX−X線断面図である。
図11図7のXI−XI線断面図である。
図12】オス部材を示す平面図である。
図13】オス部材を示す正面図である。
図14】オス部材を示す左側面図である。
図15】オス部材を示す下面図である。
図16図12のXVI−XVI線断面図である。
図17図12のXVII-XVII線断面図である。
図18図12のXVIII−XVIII線断面図である。
図19図12のXIX-XIX線断面図である。
図20】本発明の第二実施形態のバックルを示す分解斜視図である。
図21】第二実施形態のバックルを示す平面図である。
図22図21のXXII-XXII線断面図である。
図23図21のXXIII-XXIII線断面図である。
図24】メス部材の平面図である。
図25】メス部材の正面図である。
図26図24のXXVI-XXVI線断面図である。
図27図24のXXVII-XXVII線断面図である。
図28】オス部材の平面図である。
図29】オス部材の平面図である。
図30図28のXXX-XXX線断面図である。
図31図28のXXXI-XXXI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第一実施形態のバックルは図1〜6に示すように、連結および連結解除可能なオス部材1とメス部材1aとを備える。また本発明の第一実施形態のバックルは、連結解除した状態ではオス部材1とメス部材1aが第1の直線方向Zに重ね合せ及び離隔可能であると共に、連結状態では第1の直線方向Zに対して直交する第2の直線方向Xをオス部材1とメス部材1aに対する引張り方向Xとするものである。また本発明の第一実施形態のバックルは、連結状態から連結解除状態にするときに、メス部材1aに対して挟む操作をするものである。この挟むときの直線方向Yを第3の直線方向Yとする。
【0025】
オス部材1とメス部材1aは、それぞれ例えば弾性変形可能な樹脂材料で成型された一体の成型品である。またオス部材1とメス部材1aは、アンダーカットのない成型品であり、金型の製造を容易にするものである。なお金型の型開き方向は、第1の直線方向Zである。
【0026】
第2の直線方向Xと第3の直線方向Yは、同一方向であるか異なる方向であるかを問わないが、好ましくは異なる方向、つまり交差する方向であり、本実施形態では直交する方向である。従って本実施形態では第1〜第3の直線方向Yは、互いに直交するものである。以後の説明において方向を次のように定める。
第1の直線方向Zは、重ね合わせ方向Zまたは表裏方向Zと言う。表方向とは、図2を基準にして紙面に直交する方向のうち手前側を向く方向である。裏方向とは図2を基準にして紙面に直交する方向のうち奥側を向く方向である。
第2の直線方向Xは、引張方向Xまたは左右方向Xと言う。左方向とは図2を基準にして左方向であり、右方向とは図2を基準にして右方向である。
第3の直線方向Yは、挟む方向Yまたは前後方向Yと言う。前方向とは図2を基準にして下方向である。後方向とは図2を基準にして上方向である。
【0027】
オス部材1とメス部材1aは、互いに対応する部分と、対応しない部分を備えるものである。そしてオス部材1とメス部材1aは対応する部分に関して主たる部分として、重ね合わせ及び連結解除可能なオスベース2とメスベース2aと、オスベース2とメスベース2aを重ね合わせるときに位置決めをする第1のオス位置決め部3と第1のメス位置決め部3aであってオスベース2とメスベース2aのうち少なくともメスベース2aから表側に突出すると共に第1の直線方向Zから視て枠状であって且つ口径方向(枠が縮小および拡大する方向)の内側と外側に別々に配置される第1のオス位置決め部3と第1のメス位置決め部3aと、第1のメス位置決め部3aと第1のオス位置決め部3の内側においてそれぞれ第1の直線方向Zに開口するオス開口部4とメス開口部4aと、引張方向Xの力に耐えるために衝突可能なオス衝突部5とメス衝突部5aであってオスベース2とメスベース2aに対して設けられるオス衝突部5とメス衝突部5aと、互いに連結および連結解除可能な一対のオスフック6,6と一対のメスフック6a,6aであって連結状態において第1の直線方向Zから視てオス開口部4の内側に配置される一対のオスフック6,6と一対のメスフック6a,6aと、別々の紐部材を取り付けるオス取付部7とメス取付部7aであってオスベース2とメスベース2aに設けられるオス取付部7とメス取付部7aとを備える。
一方、対応しない部分に関してオスベース2は、一対のオスフック6,6をオスベース2に接合するオス接合部8を備える。
【0028】
またオス部材1とメス部材1aは、対応する部分に関して上記した主たる部分の他に、オスベース2とメスベース2aを重ね合わせるときに位置決めをする第2のオス位置決め部9と第2のメス位置決め部9aであってオス接合部8とメスベース2aに設けられると共に第1の直線方向Zに抜き差し可能な第2のオス位置決め部9と第2のメス位置決め部9aとを備える。以下、オス部材1とメス部材1aの詳細について説明する。
【0029】
メス部材1aは図7〜11に示すように、第1の直線方向Zを厚み方向とする板状のメスベース2aと、メスベース2aの枠状の外周部よりも内側から表方向に突出すると共に枠状の第1のメス位置決め部3aと、第1のメス位置決め部3aにおける枠状の内側に形成されるメス開口部4aと、メスベース2aから表方向に突出すると共に第1の直線方向Zから視てメス開口部4aの範囲内に配置される第2のメス位置決め部9aと、メスベース2aの外周部よりも内側から表方向に突出する一対のメスフック6a,6aであって挟む方向Yに離隔する一対のメスフック6a,6aと、メスベース2aに設けられる(から枠状の外側に突出する)メス取付部7aと、メスベース2aから表方向に突出するメス衝突部5aを備える。
【0030】
メスベース2aは、重ね合わせ方向Zから視て、外周がほぼ矩形状である。またメスベース2aは板状である。より詳しく言えばメスベース2aは、前後左右のメス辺部21a,22a,23a,24aを備える枠状のメス外板部25aと、前後のメス辺部21a,22aの前後方向Yにおける中間部の間を接合する内板部26aとを備える。
【0031】
メス外板部25aは、前後の面における左右方向Xの中間部に、凹んだ凹部27aを備えている。第1の直線方向Zから視ると、各凹部27aは円弧状に凹むと共に、円弧長の中間部において最も凹んでいる。
メス外板部25aの厚みは、内板部26aの厚みよりも厚い。またメス外板部25aと内板部26aの裏面は、同一の平面に位置するものである。従ってメス外板部25aの表面は、内板部26aの表面よりも表方向に突出している。
内板部26aの表面から表方向に突出するのが、第2のメス位置決め部9aである。
【0032】
第2のメス位置決め部9aは、先細り形状であって、より詳しく言えば表側に向かうにつれて前後方向Yの幅が狭くなると共に、前後対称的に前面と後面を傾斜させた形状である。
【0033】
第1のメス位置決め部3aは、前後左右を包囲する枠状であって、前後左右のメス案内壁部32a,33a,34a,35aを備える。そして前後のメス案内壁部32a,33aの間には、前述したメス開口部4aが形成されると共に、前後のメス案内壁部32a,32bによってメス開口部4aが部分的に(その前後を)囲まれている。また本実施形態では前後左右のメス案内壁部32a,33a,34a,35aの間にメス開口部4aが形成され、前後左右のメス案内壁部32a,33a,34a,35aによってメス開口部がその全周を囲まれている。
また前後の案内壁部32a,33aは、本実施形態では、一対のメスフック6a,6aの一部(後述の一対のメスフック本体61a)でもある。つまり前後の案内壁部32a,33aと一対のメスフック本体61aとは同一物である。
第1のメス位置決め部3aは、表側から視ると、矩形状であり、その外径が表側に向かうにつれて狭くなる形状である。また第1のメス位置決め部3aは、その四隅の外周面を円弧状に膨らむ曲面(丸く面取りしたかのような曲面)にしてある。また前後左右のメス案内壁部32a,33a,34a,35a外周面は何れも表方向に向かうにつれてメス開口部4aの中心部側へ向かうように傾斜しており、オス部材1のオス開口部4を案内し易くしてある。前後のメス案内壁部32a,33aの内周面も表方向に向かうにつれてメス開口部4aの中心側へ向かうように第1の直線方向Zに対して傾斜している。一方、左右のメス案内壁部34a,35aの内周面は、第1と第3の直線方向Z,Yに平行である。なお前後左右のメス案内壁部32a,33a,34a,35aにおける表方向の先部は、表方向に向かって円弧状に膨らむ曲面にしてあり、オス部材1のオス開口部4を案内し易くしてある。
【0034】
一対のメスフック6a,6aは、第3の直線方向Yに離隔する一対のメスフック本体61a,61aと、一対のメスフック本体61a,61aの対向面から互いに接近する方向に張り出す一対のメス爪66a,66aを備える。
【0035】
一対のメスフック本体61a,61aは、前後のメス案内壁部32a,33aを兼用するもので、それゆえメスベース2aの外周部よりも内側から表方向に突出している。
【0036】
メス爪66aは、メスフック本体61a(より詳しくはメスフック本体61aの表方向の先部)の左右方向Xの全長に亘って形成される。また一対のメスフック6a,6aは、前後のメスフック本体61a,61a(前後のメス案内壁部32a,33a)から互いに接近する方向に張り出すものなので、前後のメス案内壁部32a,33aよりも内側に配置される。
前側のメス爪66aの外面66a−1は後面であり、後側のメス爪66aの外面66a−1は前面である。そして前後のメス爪66a,66aの外面66a−1,66a−1は、互いに傾斜面である。一対のメス爪66a,66aの傾斜面66a−1,66a−1は、互いの間隔が裏方向に向かうにつれて狭くなるものである。
【0037】
メス取付部7aは、メスベース2aの外周から、より詳しくはメスベース2aの外周のうち引張方向Xの一方側(図では左側)から、その外側に突出するものである。第1の直線方向Zから視ると、メス取付部7aは、矩形の三辺に沿う形状である。またメス取付部7aは、前後に離隔する一対のメス腕部71a,71aであってメスベース2aのメス外板部25aの左右側面の一方における前後端部から側方に延長する一対のメス腕部71a,71aと、紐部材を止めるメス止め部75aであって一対のメス腕部71a,71aの先部間をメス外板部25aとは左右に間隔をあけて接合するメス止め部75aとを備える。
【0038】
一対のメス腕部71a,71aは、裏面をメスベース2aの裏面と同一平面上に位置するものとし、表面をメスベース2aの表面よりも表方向に突出すると共に、第1のメス位置決め部3aの表面(最も表側の頂部)よりも裏側に位置するものとしてある。より詳しく言えば、第1のメス位置決め部3aと一対のメス腕部71a,71aとの対向面は、メス部材1aとオス部材1とを連結するときに互いを位置決めし易くするために、オスベース2を案内する面となっている。前述したように第1の直線方向Zから視て、第1のメス位置決め部3aはほぼ矩形状で、その外周面の四隅を円弧状に膨らむ曲面にしてあり、それに対応させてメス腕部71aの対向面(第1のメス位置決め部3aの隅に対向する面)72aは円弧状に凹む曲面にしてある。なお円弧状に膨らむ曲面と円弧状に凹む曲面72aの半径の中心点は同じである。また円弧状に凹む曲面72aは表方向に向かうにつれて円弧長さが短くなっている曲面である。
【0039】
メス止め部75aは、メス腕部71aの表面よりも裏方向に凹むと共に、メス腕部71aの裏面よりも表方向に凹んでいる。これらの凹む位置関係により、メス止め部75aに止められた紐部材がメス腕部71aよりも表面や裏面に配置されないようにしてある。
【0040】
メス衝突部5aは前後方向に延長する板である。また表方向の先端の位置に関して、メス衝突部5aは、第1のメス案内部よりも裏側に位置するものとなっている。このようなメス部材1aに連結及び連結解除可能なのが、オス部材1である。
【0041】
オス部材1は図12〜19に示すように、枠状で且つ第1の直線方向Zを厚み方向とするオスベース2と、オスベース2の内周部および当該内周部から表方向に突出すると共に枠状の第1のオス位置決め部3と、第1のオス位置決め部3の内側に形成されるオス開口部4であって連結状態ではオス部材1の表側からメス部材1aを視認可能なオス開口部4と、オス開口部4の内側において挟む方向Yに離隔する一対のオスフック6,6と、一対のオスフック6,6を弾性変形可能に支えると共に一対のオスフック6,6とオスベース2とを接合するオス接合部8と、オスベース2に設けられるオス取付部7と、オス接合部8の裏面に設けられる第2のオス位置決め部9と、オスベース2に設けられるオス衝突部5を備える。
【0042】
オスベース2は、枠状であり、連結状態ではメスベース2aのメス外板部25aの表側に重なり合うと共に第1のメス位置決め部3aの一部(裏側の端部)をまとめて囲むものである。
オスベース2は、重ね合わせ方向Zから視て、外周がほぼ矩形状であり、その四隅の外周面のうちオス取付部7とは反対側の二隅を円弧状に膨らむ曲面にしてある。またオスベース2は、前後左右のオス辺部21,22,23,24を備えるものである。
オスベース2は、メスベース2aと同様に、前後の面における左右方向Xの中間部に、凹んだ凹部27を備えている。第1の直線方向Zから視ると、各凹部27は円弧状に凹むと共に、円弧長の中間部において最も凹んでいる。またオス部材1とメス部材1aの連結状態において、第1の直線方向Zから視て、オスベース2とメスベース2aは、前面と後面において凹部27,27aが揃っている。つまり連結状態においてオスベース2とメスベース2aは、互いの左右方向Xの中間部において挟む方向Yの幅が揃う部分を備えている。
オスベース2の内側には、オス開口部4の一部(裏側の端部)が形成される。
【0043】
第1のオス位置決め部3の内周の口径は、その内側に配置される第1のメス位置決め部3aの内周の口径に対応させて、表側に向かうにつれて狭まるものである。また第1のオス位置決め部3は、オスベース2の内周部と、オスベース2の内周部から表方向に突出する第1のオス案内部31と、第1のオス案内部31の表方向の端部から内側に張り出す張出部30を備える。
【0044】
第1のオス案内部31は、前後左右を包囲する枠状であって、前後左右のオス案内壁部32,33,34,35を備える。これら前後左右のオス案内壁部32,33,34,35の内側にはオス開口部4の一部(表側部分)が形成される。
第1のオス案内部31は、表側から視ると、矩形状であり、その四隅の外周面のうちオス取付部7とは反対側の二隅を円弧状に膨らむ曲面にしてある。また前後と左のオス案内壁部32,33,34の外周面と内周面は何れも表方向に向かうにつれてオス開口部4の中心部側へ向かうように傾斜している。右のオス案内壁部35と右のオス辺部24とは共同して、前後方向Yに延長する一枚の板状となり、その内周面と外周面を引張方向Xに直交する平面としてある。また本実施形態では右のオス案内壁部35と右のオス辺部24とは共同して、オス衝突部5を形成する。つまりオス衝突部5は、右のオス辺部(オスベース2の一部)24を兼用している。
【0045】
張出部30は、第1のオス案内部31の表方向の端部の四隅から内側にそれぞれ張り出している。連結状態において4つの張出部30は、第1のメス位置決め部3aの表面側の四隅を重なり合うようにして覆う。張出部30は、一対のオスフック6が互いに離隔する方向に広がったときに、オスフック6に接触して、それ以上の移動(広がり)を阻止し、これによりオスフック6が折れるなどの破壊を防止することができる。
【0046】
一対のオスフック6,6は、前後方向Yに離隔する一対のオスフック本体61,61と、一対のオスフック本体61,61から互いに離隔する方向に張り出す一対のオス爪66,66を備える。
【0047】
一対のオスフック本体61,61は、重ね合わせ方向Zから視てオス開口部4の内側、より詳しく言えば第1のオス位置決め部3の内周面よりも内側に間隔をあけて配置されると共に、オス開口部4を貫通するように重ね合わせ方向Zに延長している。オスフック本体61は、挟む方向Yを厚み方向とする平板状で、挟む方向Yから視て、オス開口部4に対して表側の部分を指で操作する操作部62とし、操作部62よりも裏側の部分を操作部62の変位を伝達する伝達部64とする。
【0048】
操作部62は、挟む方向Yから視て、伝達部64よりも引張方向Xの両方向(左右方向X)に張り出す幅広い矩形状である。また操作部62は、引張方向Xの中間部と、当該中間部に対して引張方向Xに間隔をあけた両端部に、前または後のオス案内壁部32,33に向かって突出する3つの突起部63,63,63を備えている。
【0049】
伝達部64は、その前後方向の外面(連結状態において、前または後のメス案内壁部32,33に対向する面)から、より詳しく言えばその外面における裏面側の部分から、オス爪66を張り出している。
また伝達部64は、挟む方向Yから視て、裏面の左右方向X中間部において表方向に凹む伝達凹部65を備える。
【0050】
前側のオス爪66は前側のオス案内壁部32よりも後側に配置され、後側のオス爪66は後側のオス案内壁部33よりも前側に配置される。したがって一対のオス爪66,66は、オス案内壁部よりも内側に(前後方向に間隔をあけて)配置される。
オス爪66は、伝達凹部65に対して左右に離隔して配置される左オス爪67と右オス爪68を備える。左オス爪67と右オス爪68の前後方向Yの外面67−1,68−1は、前または後のメス案内壁部32,33に対向する面であり、傾斜面である。また左オス爪67と右オス爪68の傾斜面67−1,68−1は、オス爪66の傾斜面66−1である。そして一対のオス爪66,66の傾斜面66−1,66−1は、互いの距離が表方向に向かうにつれて離隔するものである。
またオス爪66の表面は、オス開口部4に対しては上下方向の中間部に配置され、オスベース2よりも表側に配置されている。オス爪66の表面66−2は、メス爪66aの裏面66a−2と対向する面であり、オス部材1とメス部材1aの連結状態を確保する面である。
【0051】
オス接合部8は、連結状態において、一対のオスフック本体61,61を挟む方向Yに接合すると共に一対のオスフック本体61,61を弾性変形可能に支えるオスフック支持部80と、オスフック支持部80とオスベース2とを引張方向Xに接合する接合部本体85とを備える。
【0052】
接合部本体85は、左側のオス案内壁部34から表方向に突出する左接合部86と、右側のオス案内壁部35から表方向に突出する右接合部87と、左接合部86と右接合部87を互いの表方向の端部であって且つ前後方向Yの中間部で接合する中接合部88と、中接合部88の左右方向Xの中間部から裏方向に垂下する垂下部89とを備える。
左接合部86は、左側のオス案内壁部34と左側のオス辺部23と共同して一枚の板状になり、表方向に向かうにつれて右側へ向かうように傾斜している。
右接合部87は、右側のオス案内壁部35と左側のオス辺部24と共同して一枚の板状になり、前後方向Yに延長する一枚の板状となり、その内周面と外周面を引張方向Xに直交する平面としてある。
垂下部89の裏面には第2のオス位置決め部9が形成される。
【0053】
第2のオス位置決め部9は、垂下部89の裏面に対して表側に凹むものであり、第2のメス位置決め部9aを嵌め込むものである。つまり第2のオス位置決め部9の内面は、第2のメス位置決め部9aの外面よりも僅かに大きな形状であって、より詳しく言えば表側に向かうにつれて前後方向Yの幅が狭くなると共に、前後対称的に前面と後面を傾斜させた形状である。
【0054】
オスフック支持部80は、裏側から視てH字状であり、前後に離れる2つの左オス爪67,67の近傍において前後のオスフック本体61,61を接合する左支持部81と、前後に離れる2つの右オス爪68,68の近傍において前後のオスフック本体61,61を接合する右支持部82と、左支持部81と右支持部82を互いの前後方向の中間部で接合する中支持部83とを備える。左支持部81と右支持部82は垂下部89と直交し、中支持部83は垂下部89の裏側の端部でもある。
左支持部81と右支持部82は、前後方向に延長するものであり、中支持部83は左右方向Xに延長するものである。
左支持部81と右支持部82と垂下部89と一対のオスフック本体61,61の伝達部63,63の各裏面は、いずれもオスベース2の裏面よりも裏側に突出している。
【0055】
オス取付部7は、オスベース2の外周から、より詳しくはオスベース2の外周のうち引張方向Xの他方側(メスベース2aに対するメス取付部7aの配置とは反対側、図では右側)から、その外側に突出するものである。重ね合わせ方向Zから視ると、オス取付部7は、梯子状である。またオス取付部7は、前後に離隔する一対のオス腕部71,71であってオスベース2の左右側面の一方における前後端部から側方に延長する一対のオス腕部71,71と、紐部材を止めるオス止め部75であってオスベース2とは側方に間隔をあけて一対のオス腕部71,71の間を接合する複数のオス止め部75と、オス接合部8の右接合部87から張り出すように一対のオス腕部71,71の間を接合する補強部76とを備える。
【0056】
オス腕部71は、オスベース2から離れた方の端部をオスベース2に近い方の端部に比べて裏側に突出する形状である。オス腕部71は板状であり、自身の厚み方向と挟む方向Yとが一致するものである。
一対のオス腕部71,71の裏面をオスベース2の裏面よりも裏側に位置するものとし、連結状態においてメスベース2aの裏面とほぼ同じ平面上に位置するものとしてある。
オス腕部71はその表面をオスベース2の表面よりも表方向に突出すると共に、第1のオス位置決め部3の表面(最も表側の頂部)よりも表側であって且つオス接合部8の表面(最も表側の頂部)よりも裏側に位置するものとしてある。
【0057】
オス止め部75は、オス腕部71の表面よりも裏方向に凹むと共に、オス腕部71の裏面よりも表方向に凹んでいる。これらの凹む位置関係により、オス止め部75に巻かれた紐部材がオス腕部71よりも表面や裏面に配置されないようにしてある。
【0058】
上記した第一実施形態のバックルは、オス部材1とメス部材1aを連結するために接近させると、オス爪66がメス爪66aに衝突して、オスフック本体61が弾性変形してオスフック支持部80を支点としてオス開口部4の中心部側に移動する。さらにオス部材1とメス部材1aを接近させると、オス爪66がメス爪66aに対してちょうど表側の位置よりもオス開口部4の中心側に移動し、最終的にはオス爪66がメス爪66aよりも裏側に移動して、オスフック本体61が復元力によって元の形状に戻り、オス爪66がメス爪66aの裏側に配置されると共に、一対のオスフック6,6と一対のメスフック6a,6aが連結され、メスベース2aとオスベース2とが重なり合う。またメスベース2aから突出する第2のオス位置決め部9と、接合部8の裏面において凹む第2のメス位置決め部9aとが嵌合し、接合部8がメスベース2aに位置決めされるので、オス部材1とメス部材1aとの連結状態が安定し、連結強度が向上する。
【0059】
上記した第一実施形態のバックルは、オス部材1とメス部材1aを連結した状態から連結解除するために一対のオスフック6,6の操作部62,62を挟んで接近させると、オスフック本体61が弾性変形してオスフック支持部80を支点としてオス開口部4の中心部側に移動して、オス爪66がメス爪66a対してちょうど裏側の位置よりもオス開口部4の中心側に移動し、一対のオスフック6,6と一対のメスフック6a,6aが連結解除される。さらにオス部材1をそのまま表側に移動させると、オス爪66がメス爪66aよりも表側に移動する。そこで一対のオスフック6,6の操作部62,62から指を離すと、オスフック本体61が復元力によって元の形状に戻る。
【0060】
上記した第一実施形態のバックルは、オス部材1とメス部材1aを連結するときの操作性が、以下1)〜4)の理由により向上する。
1)第一実施形態のバックルは、オス開口部4からメス部材1aを視認可能であると共に、オス部材1の枠状のオスベース2を摘まむことができる。
2)第一実施形態のバックルは、連結状態においてメスベース2aとオスベース2に重ね合わせ方向Zの幅が揃う部分(凹部27,27a)を備えているので、連結するときにメスベース2aとオスベース2の当該揃う部分を指で挟めば、オス部材1とメス部材1aとの第1の直線方向Zの位置決めがし易くなる。しかもメスベース2aの凹部27aとオスベース2の凹部27は、連結状態において最も凹む部分が一致するように重ね合わせ方向Zから視て円弧状に形成されているので、オス部材1とメス部材1aとの引張方向Xの位置決めがし易くなる。
3)第一実施形態のバックルは、一対のオスフック本体61,61の裏側の端部とオス接合部8の裏側の端部がオスベース2の裏面よりも裏側に突出する部分になるので、オス部材1とメス部材1aを連結するときに、メス開口部4aに当該突出する部分を差し込むことにより、オス部材1とメス部材1aの大まかな位置決めができる。
4)しかも第一実施形態のバックルは、メス開口部4aに当該突出する部分を差し込んだ後、そのままオス開口部4の内側(第1のオス位置決め部3の裏側の端部)に第1のメス位置決め部3aの表側の端部を差し込むことにより、オス部材1とメス部材1aとが正確に位置決めされる。
なお連結状態を表側から視たときに、オス開口部4の内側に前後と左側のメス案内壁部32a,33a,34aが配置されていることを視認できる。
【0061】
また第一実施形態のバックルは、オス部材1とメス部材1aを分離するときの操作性が、以下1)〜2)の理由により向上する。
1)第一実施形態のバックルは、引張方向Xと挟む方向Yとが直交するので、引張方向Xと挟む方向Yとが一致する場合に比べて、一対のオスフック6,6を摘まむ操作性が向上する。
2)第一実施形態のバックルは、オス衝突部5とメス衝突部5aを備えているので、連結状態において引張方向Xの力が加わったときに、オス衝突部5とメス衝突部5aとが衝突して引張力に耐え、その結果、一対のオスフック6,6を接近するように挟む操作に引張力が影響しない。
【0062】
本発明の第二実施形態のバックルは図20〜23に示すように、一対のオスフック6,6と一対のメスフック6a,6a、オス接合部8において、第一実施形態のバックルとは相違する。相違点の要点は、一対のオスフック6,6のオス爪66,66と一対のメスフック6a,6aのメス爪66a,66aの向きが前後逆になっており、オス接合部8が一対のオスフック6,6よりも表側に配置されていることである。以下では、これら相違点を中心に説明する。
【0063】
一対のメスフック6a,6aは図24〜27に示すように、一対のメスフック本体61a,61aと一対のメス爪66a,66aとを備える点では、第一実施形態と共通するが、一対のメスフック本体61a,61aがメスベース2aの中央部から突出している点と、一対のメス爪66a,66aがメスフック本体61a,61aの前後方向Yの外面から互いに離隔する方向に張り出す点が第一実施形態とは相違する。
【0064】
一対のメスフック本体61a,61aは、メスベース2aの内板部26aの左右方向X中間部から前後方向Yに間隔をあけて表方向に突出するもので、それゆえメスベース2aの外周部よりも内側から、より詳しく言えば前後のメス案内壁部32a,33aよりも内側から表方向に突出している。
【0065】
一対のメス爪66a,66aは、前述したように前後のメスフック本体61a,61aから互いに離隔する方向に張り出すものなので、前後のメス案内壁部32a,33aと間隔をあけて対向するものである。
一対のメス爪66a,66aのうち前側のメス爪66aの外面66a−1は前面であり、後側のメス爪66aの外面66a−1は後面である。そして前後のメス爪66aの外面66a−1,66a−1は、互いに傾斜面である。一対のメス爪66a,66aの傾斜面66a−1,66a−1は、互いの距離が裏方向に向かうにつれて長くなるものである。
【0066】
一対のオスフック6,6は図28〜31に示すように、一対のオスフック本体61,61と一対のオス爪66,66とを備える点では、第一実施形態と共通するが、一対のオス爪66,66が一対のオスフック本体61,61から互いに離隔する方向に張り出す点が第一実施形態とは相違する。
【0067】
オスフック本体61は、前後方向Yを厚み方向とする平板状で、前後方向Yから視て、表裏方向Zと左右方向Xに平行な矩形状である。またオスフック本体61は、オス開口部4に対して表側の部分を指で操作する操作部62とし、裏側の部分を操作部62の変位を伝達する伝達部64とする。
【0068】
前側のオス爪66と後側のオス爪66は前後に間隔をあけて対向する。またオス部材1とメス部材1aの連結状態においては前側のオス爪66と後側のオス爪66の間に一対のメスフック本体61a,61aが配置される。
【0069】
オス爪66は、第一実施形態と同様に、左オス爪67と右オス爪68を備える。左オス爪67と右オス爪68の前後方向Yの外面67−1,68−1は、傾斜面である。また左オス爪67と右オス爪68の傾斜面はオス爪66の傾斜面66−1である。そして一対のオス爪66,66の傾斜面は、互いの距離が表方向に向かうにつれて接近するものである。
【0070】
オス接合部8は、オスフック支持部80と接合部本体85を備える点では、第一実施形態と共通するが、オスフック支持部80と接合部本体85の構造の点では、第一実施形態と相違する。
【0071】
接合部本体85は、左接合部86と右接合部87と中接合部88を備える点では、第一実施形態と共通するが、左接合部86と右接合部87と中接合部88のみを備える点では、第一実施形態とは相違する。つまり接合部本体85は、第一実施形態での垂下部89を備えていない。
【0072】
オスフック支持部80は、裏側から視て直線状である点で、第一実施形態と相違する。そしてオスフック支持部80は、前後に離れる一対のオスフック本体61,61を前後左右方向Y,Xの中央部で接合するものであると共に、中接合部88と直交する。
【0073】
上記した第二実施形態のバックルは、オス部材1とメス部材1aを連結するために接近させると、オス爪66がメス爪66aに衝突して、オスフック本体61が弾性変形してオスフック支持部80を支点として、一対のオスフック本体61,61の操作部62,62同士が接近すると共に、一対のオスフック本体61,61の伝達部64,64同士が離隔する。さらにオス部材1とメス部材1aを接近させると、オス爪66がメス爪66aに対してちょうど表側の位置よりもオス開口部4の外周側に移動し、最終的にはオス爪66がメス爪66aよりも裏側に移動して、オスフック本体61が復元力によって元の形状に戻り、オス爪66がメス爪66aに対してちょうど裏側に配置されて、一対のオスフック6,6と一対のメスフック6a,6aが連結されると共に、メスベース2aとオスベース2とが重なり合う。
【0074】
上記した第二実施形態のバックルは、オス部材1とメス部材1aを連結した状態から分離するために一対のオスフック6,6の操作部62,62を挟んで接近させると、オスフック本体61が弾性変形してオスフック支持部80を支点として、一対のオスフック本体61,61の伝達部64,64同士が離隔し、一対のオスフック6,6と一対のメスフック6a,6aが連結解除される。さらにオス部材1をそのまま表側に移動させると、オス爪66がメス爪66aよりも表側に移動する。そこで一対のオスフック6,6の操作部62,62から指を離すと、オスフック本体61が復元力によって元の形状に戻る。
【0075】
上記した第二実施形態のバックルは、第一実施形態のバックルと同じ理由により、オス部材1とメス部材1aを連結するときの操作性が向上すると共に、オス部材1とメス部材1aを分離するときの操作性が向上するものである。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば第1のメス位置決め部3aは、本実施形態では、前後左右のメス案内壁部32a,33a,34a,35aを備えるものであったが、本発明ではこれに限らず、前後のメス案内壁部32a,33aのみを備えるもの、つまり左右のメス案内側壁部34a,35aを備えないものであっても良い。
また第1のオス位置決め部3の第1の案内部31と第1のメス位置決め部3aとは、本実施形態では第1の直線方向Zから視て、いわゆる矩形状であったが、本発明ではこれに限らず、円形状、正多角形状等の他形状であってもよい。なお第1のメス位置決め部が円形状であった場合、前後のメス案内壁部と左右のメス案内壁部との境界が曖昧になる。この場合、円の中心を通過する第2の直線方向Xと第3の直線方向Yからなる2本の直線を引き、当該2本の直線を円の中心を基準として45度回転させる。この45度回転させた2本の直線で仕切られた領域を基準にして前後左右のメス案内壁部を確定する。
【0077】
またメス部材1aはメス取付部7aをメスベース2aに対して外側に張り出すものとし、メス取付部7aをメスベース2aとは外観上明らかに別のものとしてあったが、本発明ではこれに限らず、メスベース2aをメス取付部7aとして兼用するものであっても良い。たとえばメスベース2aの外周部をメス取付部7aとし、取付対象物に固定する。
【符号の説明】
【0078】
1 オス部材
2 オスベース
21 前側のオス辺部
22 後側のオス辺部
23 左側のオス辺部
24 右側のオス辺部
25 オス外板部
27 凹部
3 第1のオス位置決め部
30 張出部
31 第1のオス案内部
32 前側のオス案内壁部
33 後側のオス案内壁部
34 左側のオス案内壁部
35 右側のオス案内壁部
4 オス開口部
5 オス衝突部
6 オスフック
61 オスフック本体
62 操作部
63 突起部
64 伝達部
65 伝達凹部
66 オス爪
66−1 傾斜面
66−2 表面
67 左オス爪
67−1 外面
67−2 表面
68 右オス爪
68−1 外面
68−2 表面
7 オス取付部
71 オス腕部
75 オス止め部
76 補強部
8 オス接合部
80 オスフック支持部
81 左支持部
82 右支持部
83 中支持部
85 接合部本体
86 左接合部
87 右接合部
88 中接合部
89 垂下部
9 第2のオス位置決め部
1a メス部材
2a メスベース
21a 前側のメス辺部
22a 後側のメス辺部
23a 左側のメス辺部
24a 右側のメス辺部
25a メス外板部
26a 内板部
27a 凹部
3a 第1のメス位置決め部
32a 前側のメス案内壁部
33a 後側のメス案内壁部
34a 左側のメス案内壁部
35a 右側のメス案内壁部
4a メス開口部
5a メス衝突部
6a メスフック
61a メスフック本体
66a メス爪
66a−1 外面
66a−2 裏面
7a メス取付部
71a メス腕部
72a 凹む曲面
75a メス止め部
9a 第2のメス位置決め部
X 第2の直線方向,引張方向,左右方向
Y 第3の直線方向,挟む方向,前後方向
Z 第1の直線方向,重ね合わせ方向,表裏方向
図1
図2
図3
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