特許第6812513号(P6812513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812513
(24)【登録日】2020年12月18日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】ディスクロータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20201228BHJP
   F16B 5/04 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   F16D65/12 R
   F16D65/12 E
   F16B5/04 C
   F16D65/12 T
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-142554(P2019-142554)
(22)【出願日】2019年8月1日
(62)【分割の表示】特願2016-14420(P2016-14420)の分割
【原出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2019-184071(P2019-184071A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】山口 智宏
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷口 豊明
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 義孝
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540938(JP,A)
【文献】 特開2012−184842(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0170073(US,A1)
【文献】 特表昭55−500365(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3061893(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3076508(JP,U)
【文献】 特開2010−106917(JP,A)
【文献】 特表2008−516173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00−5/12
F16B 17/00−19/14
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋部分を有する筒状をなし、車軸に設けられたハブが前記蓋部分の内側に取り付けられるハット部と、
前記ハット部の開放側端部から側方に延びる外周フランジ板部と、
環状をなす摺動部と、
を備え、
前記摺動部がその内周側で前記外周フランジ板部と接合して、その接合部で両者が連結されたディスクロータであって、
前記摺動部に、前記ハット部の接合面よりも前記外周フランジ板部の側へ突出するように設けられ、前記外周フランジ板部よりも高硬度の金属材料によりなる連結突起と、
前記外周フランジ板部の前記接合面に設けられ、前記連結突起を収容する孔部と、
を備え、
前記連結突起は、
前記摺動部の側に設けられた基部と、
前記基部よりも突出側で、車軸方向からみた外形が前記基部よりも小さく形成された先端部と、
前記先端部の基端に設けられた溝部と、
を有し、
前記孔部は、
前記基部を収容する第1孔部と、
前記先端部を収容する第2孔部と、
前記第2孔部の孔内面よりも内側に張り出して前記溝部に入り込み、前記溝部の溝内面に当接して前記連結突起が前記孔部から抜けることを規制する抜け止め部と、
を有し、
前記摺動部とは別に設けられた連結部材が前記連結突起を有し、
前記基部は、前記摺動部の内周側に車軸方向に沿って形成された貫通孔まで延長して設けられるとともに、その先には前記基部よりも大きい頭部が前記基部の周方向に延びる周溝を間に介することなく設けられており、
前記貫通孔には、前記頭部が収容される第1貫通孔と、前記基部の延長部分が収容される第2貫通孔と、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との段差に設けられ、前記頭部が当接する段差面とが形成されていることを特徴とするディスクロータ。
【請求項2】
前記溝部及び前記抜け止め部は、前記連結突起の外周方向全域に、車軸方向からみて環状をなすように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスクロータ。
【請求項3】
前記摺動部は一対の摺動面を有し、当該一対の摺動面のうち一方の摺動面が前記ハット部の前記外周フランジ板部と接合し、
記頭部は、前記一対の摺動面のうち他方の摺動面と面一となった状態で前記第1貫通孔に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスクロータ。
【請求項4】
前記貫通孔に収容された前記連結部材の周囲には空間部が形成され、
前記ハット部の接合面と前記摺動部の接合面との間には、ばね部材が介在していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスクロータ。
【請求項5】
蓋部分を有する筒状をなし、車軸に設けられたハブが前記蓋部分の内側に取り付けられるハット部と、
前記ハット部の開放側端部から側方に延びる外周フランジ板部と、
環状をなす摺動部と、
を備え、前記摺動部がその内周側で前記外周フランジ板部と接合され、その接合部に設けられた連結部材によって前記ハット部と前記摺動部とが連結されたディスクロータの製造方法であって、
前記連結部材を前記外周フランジ板部よりも高硬度の金属材料によって形成し、
前記摺動部の内周側には、車軸方向に沿った貫通孔が形成され、
前記外周フランジ板部における前記摺動部との接合面には、前記貫通孔よりも小さい孔部が前記車軸方向に沿って形成され、
前記連結部材は、前記貫通孔に挿入された場合に前記孔部の開口周縁部に当接する基部と、前記基部よりも大きい頭部と、前記孔部に入り込む先端部と、前記先端部の基端に設けられた溝部とを有し、前記頭部は前記基部との間に当該基部の周方向に延びる周溝を介することなく設けられており、
前記貫通孔には、前記連結部材の前記頭部が挿入される第1貫通孔と、前記基部が挿入される第2貫通孔と、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との段差に設けられた段差面とが形成され、
前記貫通孔と前記孔部とを合わせて前記連結部材を前記貫通孔に挿入し、前記基部を前記開口周縁部に当接させるとともに、前記頭部を前記貫通孔の前記段差面から離間させた状態とし、
そこから前記連結部材を、前記頭部が前記段差面に当接するまで押し込むことにより、前記基部が前記開口周縁部を押し込んで塑性変形させて前記溝部に充填し、前記溝部の溝内面に当接して前記連結部材が前記孔部から抜けることを規制する抜け止め部を形成することを特徴とするディスクロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクロータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の制動装置として、ディスクブレーキ装置が知られている。このディスクブレーキ装置は、ディスクロータとディスクパッドとを備えている。ディスクロータは、車軸に連結されるハット部と、そのハット部の外周側に設けられた環状の摺動部とを有している。そして、車両制動時には、車軸と共に回転するディスクロータの摺動部をディスクパッドで挟み込むことにより、両者の間に生じる摩擦によって車輪の回転が制動される。
【0003】
このディスクロータは、従前、ハット部と摺動部とが鋳鉄によって一体形成されていた。しかしながら、このような構成では、摺動部が車両制動時に摩擦熱をもつため、ハット部との温度差によって熱応力が生じる。そのため、摺動部が熱変形してしまい、車両制動時に振動を発生させる要因となっていた。
【0004】
そこで、ハット部と摺動部とを別部材とした上で、両者が連結された2ピース構造を採用したディスクロータが提案されている(例えば特許文献1参照)。この2ピース構造を採用すると、ハット部と摺動部との連結部分に空間部を形成し、摺動部の熱膨張を吸収する構成を採用することが可能となり、摺動部の熱変形を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−106917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたディスクロータでは、ハット部と摺動部とをカシメ固定による接合ピンを用いたり、ボルトとナットとを用いたりして連結される構成となっている。このような構成では、ディスクロータを製造する際に、ハット部と摺動部とに設けられた連結用の貫通孔に、一方の側から接合ピンやボルトを差し込んだ後、ディスクロータを反転させてカシメやナットで固定するという作業が必要となる。このような反転作業が必要な構造は、ディスクロータの生産性を低下させるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、2ピース構造を採用した構成であっても、製造時の反転作業を不要として、生産性を高めることができるディスクロータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明は、車軸に設けられたハブに取り付けられるハット部と、円環状をなす摺動部とを備え、前記摺動部がその内周側で前記ハット部の外周フランジ板部と接合して、その接合部で両者が連結されたディスクロータであって、前記摺動部に、前記ハット部の接合面よりも前記外周フランジ板部の側へ突出するように設けられ、前記外周フランジ板部よりも高硬度の金属材料によりなる連結突起と、前記外周フランジ板部に設けられ、前記連結突起を収容する孔部と、を備え、前記連結突起は、前記摺動部の側に設けられた基部と、前記基部よりも突出側で、車軸方向からみた外形が前記基部よりも小さく形成された先端部と、前記先端部の基端に設けられた溝部と、を有し、前記孔部は、前記基部を収容する第1孔部と、前記先端部を収容する第2孔部と、前記第2孔部の孔内面よりも内側に張り出して前記溝部に入り込み、前記溝部の溝内面に当接して前記連結突起が前記孔部から抜けることを規制する抜け止め部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記溝部及び前記抜け止め部は、前記連結突起の外周方向全域に、車軸方向からみて環状をなすように形成されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、上記第1の発明において、前記基部及び前記先端部は、車軸方向から見て四角形状に形成され、前記溝部及び前記抜け止め部は、一対の対辺部分に形成されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、上記第1乃至第3のいずれか1つの発明において、前記連結突起は、前記摺動部とは別に設けられた連結部材であり、前記抜け止め部を第1抜け止め部として、前記ハット部が前記摺動部に対して離間することを規制しており、前記基部は、前記摺動部に車軸方向に沿って設けられた貫通孔部まで延長されて設けられるとともに、その延長部分には、前記摺動部が前記ハット部に対して離間することを規制する第2抜け止め部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、上記第4の発明において、前記貫通孔部に収容された前記連結部材の周囲には空間部が形成され、前記ハット部の接合面と前記摺動部の接合面との間には、ばね部材が介在していることを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、車軸に設けられたハブに取り付けられるハット部と、環状をなす摺動部とを備え、前記摺動部がその内周側で前記ハット部の外周フランジ板部と接合され、その接合部に設けられた連結部材によって前記ハット部と前記摺動部とが連結されたディスクロータの製造方法であって、前記連結部材を前記外周フランジ板部よりも高硬度の金属材料によって形成するとともに、前記摺動部の内周側には、車軸方向に沿った貫通孔が形成され、前記外周フランジ板部には、前記貫通孔よりも小さい孔部が前記車軸方向に沿って形成され、前記連結部材は、前記貫通孔に挿入された場合に前記孔部の開口周縁部に当接する基部と、前記基部よりも大きい頭部と、前記孔部に入り込む先端部と、前記先端部の基端に設けられた溝部とを有しており、前記貫通孔と前記孔部とを合わせて前記連結部材を前記貫通孔に挿入し、前記基部を前記開口周縁部に当接させるとともに、前記頭部を前記摺動部の頭部当接面から離間させた状態とし、そこから前記連結部材を、前記頭部が前記頭部当接面に当接するまで押し込むことにより、前記基部が前記開口周縁部を押し込んで塑性変形させて前記溝部に充填することにより、前記溝部の溝内面に当接して前記連結部材が前記孔部から抜けることを規制する抜け止め部を形成することを特徴とする。
【0014】
第7の発明では、車軸に設けられたハブに取り付けられるハット部と、環状をなす摺動部とを備え、前記摺動部がその内周側で前記ハット部の外周フランジ板部と接合して、その接合部で両者が連結されたディスクロータの製造方法であって、前記摺動部を前記外周フランジ板部よりも高硬度の金属材料によって形成するとともに、前記外周フランジ板部には孔部が車軸方向に沿って形成され、前記摺動部の接合面には、前記孔部の開口周縁部に当接する基部と、前記孔部に入り込む先端部と、前記先端部の基端に設けられた溝部とを有し、前記摺動部と一体形成された連結突起が設けられており、前記基部を前記開口周縁部に当接させ、そこから前記連結突起を押し込むことにより、前記基部が前記開口周縁部を押し込んで塑性変形させて前記溝部に充填することにより、前記溝部の溝内面に当接して前記連結突起が前記孔部から抜けることを規制する抜け止め部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記第1の発明によれば、外周フランジ板部に設けられて連結突起を収容する孔部には、その連結突起の溝部に入り込んでその溝内面と当接する抜け止め部が設けられている。この抜け止め部によって、連結突起がハット部の孔部から抜けることが規制され、ディスクロータのハット部と摺動部とを連結することが可能となる。
【0016】
この構成では、連結突起の先端部が基部よりも外形が小さいため、基部と先端部との間には段差部が形成される。そのため、連結突起を外周フランジ板部よりも高硬度の材質によって形成すると、連結突起を孔部に挿入する際に、前記段差部が孔部の周囲を押圧し、外周フランジ板部を形成する材料が塑性変形し、溝部に入り込んで抜け止め部が形成される。このため、ディスクロータの製造時における連結作業としては、この連結突起を孔部に挿入して押圧するという作業だけで足り、カシメやボルト締めといった従来の連結構成に必要な反転作業が不要となる。これにより、本発明の構成を採用すれば、ディスクロータの生産性を高めることができる。
【0017】
第2の発明によれば、連結突起の溝部及び孔部の抜け止め部が、連結突起の外周方向全域に形成されているため、その外周方向全域にわたって抜け止め作用が得られる。これにより、確実な抜け止め効果が得られる。
【0018】
第3の発明によれば、連結突起の基部及び先端部が四角形状に形成された状態で、溝部及び抜け止め部が、一対の対辺部分に形成されている。このため、外周方向全域に溝部や抜け止め部が形成されないとしても、ハット部や摺動部の各接合面を離間させる方向に対して、抜け止め作用が一部に偏ることなく均等に作用させることができる。
【0019】
第4の発明によれば、連結突起が連結部材によって構成されるため、連結突起を形成する金属材料として、外周フランジ板部よりも高硬度な金属材料を、摺動部の金属材料と無関係に自由に選択できる。例えば、塑性変形によって抜け止め部を形成することが容易となる、より硬度が高い金属材料を採用することができる。
【0020】
そして、この連結部材において、第1の発明における抜け止め部は第1抜け止め部として、摺動部がハット部に対して離間することが規制される。そして、連結部材の基部が摺動部の貫通孔部まで延長された部分には、摺動部がハット部に対して離間することを規制する第2抜け止め部が設けられている。この両抜け止め部の存在により、ハット部や摺動部とは別部材の連結部材を用いても、ハット部と摺動部とを確実に連結できる。
【0021】
第5の発明によれば、摺動部の貫通孔部において、連結部材の周囲には空間部が形成されているため、車両制動時に、ディスクパッドの圧接を受けて摺動部に摩擦熱が生じ、摺動部が熱膨張したとしても、その膨張は空間部によって吸収される。これにより、摺動部の熱変形を抑制することができ、2ピース構造を採用したことの効果をより高めることができる。
【0022】
加えて、ハット部の接合面と摺動部の接合面との間に、ばね部材が介在しているため、摺動部の熱膨張や収縮に伴い、ばね部材との擦れによって接合面に摩耗が生じても、それによるガタ付きがばね部材の付勢力によって吸収される。これにより、車両制動時における振動発生をより一層低減できる。
【0023】
第6の発明によれば、ディスクロータの製造時に、ハット部と摺動部とを連結する上で、連結部材が用いられる。そして、摺動部の貫通孔とハット部の孔部とを合わせた状態で、その連結部材を貫通孔に挿入し、連結部材の基部を孔部の開口周縁部に当接させる。そこから連結部材を押し込むことにより、基部が開口周縁部を押し込んで塑性変形させ、それが溝部に充填される。これにより、連結部材の溝内に抜け止め部が形成される。この抜け止め部により、連結部材自身がハット部から抜け止めされた状態となる。それに加え、連結部材の頭部が摺動部の頭部当接面に当接することで、その部分では、摺動部がハット部に対して離間することが規制され、抜け止めされる。このようにディスクロータのハット部と摺動部とを連結部材によって連結し、上記第4の発明のディスクロータを好適に得ることができる。
【0024】
第7の発明によれば、ディスクロータの製造時に、摺動部と一体形成された連結突起が用いられる。連結突起の先端部をハット部の孔部に挿入し、基部を孔部の開口周縁部に当接させる。そこから連結突起を押し込むことにより、基部が開口周縁部を押し込んで塑性変形させ、溝部に充填される。これにより、連結突起の溝内に抜け止め部が形成される。この抜け止め部により、摺動部に設けられた連結突起がハット部の孔部から抜けることが規制され、ディスクロータのハット部と摺動部とを連結することできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ディスクロータの斜視図。
図2図1のA−A断面図。
図3図2におけるB部分の拡大断面図。
図4】連結部材を連結孔部に挿入する様子を示す斜視図。
図5】連結部材を連結孔部に挿入した状態を示す説明図。
図6】連結構造の第1の別例を示す断面図。
図7】連結構造の第2の別例を示す断面図。
図8】連結構造の第3の別例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1に示すディスクロータ10は、車両の制動装置であるディスクブレーキ装置に用いられる部品である。まずは、図2の断面図も参照しながら、ディスクロータ10の全体構成を説明すると、ディスクロータ10は、ハット部11及び摺動部12とを有する2ピース構造よりなり、ハット部11と摺動部12とは接合部13で接合されている。
【0028】
ハット部11は、車軸Sの端部に設けられたハブHに取り付けられる部分であり、アルミニウム合金によって形成されている。そのため、この実施形態では、アルミニウム合金がハット材となる。図2にも示すように、ハット部11は蓋部分を有する円筒状をなしている。その蓋部分は取付板部21となっており、取付板部21の中心部には取付孔22が設けられている。取付孔22の周囲には、複数のボルト挿通孔23が設けられている。これら取付板部21、取付孔22及びボルト挿通孔23を用いて、ディスクロータ10がハブHに取り付けられる。また、ハット部11には外周フランジ板部24が設けられている。外周フランジ板部24は、円筒の開放側端部から側方に延びるように形成されている。
【0029】
摺動部12は、車両制動時にディスクパッドによって挟み込まれて圧接される部分である。図1及び図2に示すように、摺動部12は、鋳鉄によって板状かつ環状をなすように形成されている。摺動部12の表裏両面は、ディスクパッドにより圧接される一対の摺動面31,32となっている。摺動部12の内周側には、ハット部11の外周フランジ板部24と重ね合わされる重ね板部33となっている。この外周フランジ板部24と重ね板部33とは、その接合面25,34(後述する図3参照)同士を互いに当接させて接合されている。この接合された部分が、ディスクロータ10の接合部13となっている。
ハット部11と摺動部12とは、接合部13で接合された状態で、連結部材40を用いて一体的に連結されている。連結部材40は、摺動面31,32に沿った横断面が円形状をなしている。そして、連結部材40は、環状をなす接合部13において、その周方向にわたり複数又は多数設けられている。この実施形態では、10個の連結部材40が等間隔で設けられている。連結部材40を用いて、ハット部11の外周フランジ板部24と摺動部12の重ね板部33とを連結する構成について、図2のB部分を拡大した図3を参照しながら説明する。
【0030】
図3に示すように、接合部13では、ハット部11の接合面25と、摺動部12の接合面34とが当接している。その状態の接合部13に、連結部材40がハット部11と摺動部12の両者にまたがるように設けられている。連結部材40は、ハット部11を形成するアルミニウム合金よりも高硬度な金属材料であるステンレス合金よりなり、全体として略円柱状に形成されている。そのため、車軸方向から見た外形は円形状をなしている。連結部材40は、頭部41、基部としての大径部42及び先端部としての小径部43を有している。
【0031】
頭部41は連結部材40の軸方向の一方に設けられ、重ね板部33の板厚よりも薄く形成されている。そのため、頭部41は、重ね板部33の板厚寸法内に設けられている。なお以下、この頭部41の側を基端とし、その反対側を先端として説明を進める。
【0032】
大径部42は頭部41の先端側に設けられ、頭部41よりも小さい径(直径)を有している。そのため、大径部42と頭部41との間には、円周方向にわたって環状の第1段差面44が形成されている。大径部42の軸方向長さは、摺動部12に設けられた頭部41の先端側から、接合面25,34をまたいでハット部11に至る長さを有している。
【0033】
小径部43は、大径部42の先端側で、その先端面43aが外周フランジ板部24の板厚寸法内に設けられ、大径部42よりも小さい径を有している。そのため、小径部43と大径部42との間には、円周方向にわたって環状の第2段差面45が形成されている。また、小径部43の基端には、円周方向の全域にわたって溝部46が形成されている。溝部46の溝断面は四角形状をなし、溝底面46aは小径部43よりも径が小さく形成されている。溝底面46aの周囲に環状に形成された溝内面46bは、接合面25,34と平行をなしている。
【0034】
上記の構成を有する連結部材40は、接合部13に形成された連結孔部14に設けられている。連結孔部14は、連結部材40と同じ数だけ、当該連結部材40が設けられる箇所ごとに形成されている。連結孔部14は接合面25,34に沿った断面が円形状をなし、車軸方向に沿って形成されている。連結孔部14は、有底孔部26と貫通孔部35とを有している。そのうち、有底孔部26はハット部11の外周フランジ板部24に設けられ、貫通孔である貫通孔部35は摺動部12の重ね板部33に設けられている。
【0035】
有底孔部26は孔部に相当し、第1孔部51と第2孔部52とを有している。第1孔部51は、有底孔部26の開口側に設けられ、連結部材40の大径部42と略同じ径(直径)を有している。この第1孔部51には、大径部42のうち、接合面25,34よりも先端側となる部分が設けられている。第2孔部52は、有底孔部26の底側に設けられ、連結部材40の小径部43と略同じ径を有している。この第2孔部52には小径部43が設けられ、小径部43の先端面43aが孔底面53に当接している。
【0036】
第2孔部52の開口端には、その開口縁部に沿って円環状をなす環状張出部54が設けられている。この環状張出部54は、第2孔部52の孔内面よりも内側に張り出し、連結部材40が有する溝部46の溝内に入り込んでいる。環状張出部54は抜け止め部又は第1抜け止め部に相当する。この環状張出部54は、ディスクロータ10の製造時において、ハット部11を形成するアルミニウム合金が塑性変形することにより、それが溝部46の内部に充填されて形成される。環状張出部54が溝部46に入り込むことにより、環状張出部54と先端側の溝内面46bとが面接触した状態となっている。
【0037】
貫通孔部35は、第1貫通孔部61と第2貫通孔部62とを有している。第1貫通孔部61は接合面25の反対側(反接合側)に設けられ、連結部材40の頭部41と略同じ径(直径)と軸方向長さを有している。この第1貫通孔部61に、頭部41が摺動部12の反接合側の面と面一となった状態で設けられている。
【0038】
第2貫通孔部62は、連結部材40の大径部42と略同じ径を有している。この第2貫通孔部62には、大径部42のうち、接合面25,34よりも基端側となる部分が設けられている。第2貫通孔部62は、第1貫通孔部61よりも径が小さいため、その両貫通孔部61,62との間には、環状の孔側段差面63が形成されている。この孔側段差面63は頭部当接面に相当し、連結部材40の第1段差面44が当接している。
【0039】
連結部材40は、以上説明した構成によって連結孔部14に設けられている。この構成においては、すでに述べたように、連結部材40の溝部46を形成する溝内面46bのうち、先端側の溝内面46bと、溝部46の内部に入り込んだ環状張出部54とが面接触している状態となっている。これにより、ハット部11は摺動部12から分離不能とされている。その一方で、連結部材40の第1段差面44が貫通孔部35に形成された孔側段差面63に面接触した状態となっている。この面接触により、摺動部12はハット部11から分離不能とされている。このため、第1段差面44は第2抜け止め部に相当する。
【0040】
接合部13では、連結部材40が設けられた箇所ごとで、このような構成によって分離不能とされ、これによりハット部11と摺動部12とが一体的に連結されている。なお、この実施形態では、連結部材40のうち、摺動部12の接合面34から突出して外周フランジ板部24へ入り込んだ部分、つまり大径部42の先端側と小径部43が連結突起に相当する。また、大径部42のうち、貫通孔部35に存在する部分が、その連結突起部分から貫通孔部35まで延長して設けられた延長部分に相当する。
【0041】
続いて、連結部材40を用いて連結されたディスクロータ10の製造方法について、図4の斜視図及び図5の説明図を参照しながら説明する。なお、ここでは、連結部材40を用いてハット部11と摺動部12とを連結する方法に特徴があるため、その特徴部分に絞って説明する。
【0042】
図4に示すように、連結の際の第1工程では、ハット部11の外周フランジ板部24に摺動部12の重ね板部33を接合させ、接合部13を形成する。その際、外周フランジ板部24に形成された有底孔部26と、重ね板部33に形成された貫通孔部35との軸線を合わせ、両者によって一つの連結孔部14を形成する。この連結孔部14は有底であり、摺動部12における反接合側の面で開口している。
【0043】
そして、図4に示すように、この最初の工程段階では、外周フランジ板部24に設けられて連結孔部14の底側にある有底孔部26には、連結部材40を用いた連結後に存在する第1孔部51と第2孔部52とがいまだ形成されていない。有底孔部26は、孔底面53から接合面25における開口端に至るまで、連結部材40の小径部43と略同じ径を有している。その一方で、摺動部12に形成された第2貫通孔部62は、連結部材40の大径部42と略同じ径を有するため、第2貫通孔部62の径は第2孔部52のそれよりも大きい。これにより、連結孔部14の内部において、有底孔部26の開口側には、環状をなす開口周縁部55が形成されている。
【0044】
この状態で、ハット部11及び摺動部12とは別に製造された連結部材40を、その軸線を連結孔部14の軸線に合わせて、小径部43の側から連結孔部14に挿入する。すると、図5に示すように、連結部材40の第2段差面45が、有底孔部26の開口周縁部55に当接し、連結部材40の挿入がそこでいったん規制される。この状態では、溝部46には有底孔部26の孔内面との間に空間領域R1が形成されている。また、連結部材40の第1段差面44と孔側段差面63とが離間し、小径部43の先端面43aと孔底面53との間も離間している。
【0045】
なお、小径部43の先端面43aと孔底面53との間の離間距離L2は、第1段差面44と孔側段差面63との間の離間距離L1や溝部46の軸方向長さL3(図3参照)と同じか、それらよりも長く設定されている。
【0046】
次いで、図5に示すように、外周フランジ板部24を台座Dに載せた状態で、連結部材40をその頭部41から軸方向に沿って加圧する。連結部材40は、ハット部11を形成するアルミニウム合金よりも高硬度のステンレス合金よりなり、ハット部11よりも硬い。そのため、連結部材40が押圧されると、その第2段差面45によって有底孔部26の開口周縁部55が押し込まれる。この押し込みによって、開口周縁部55よりも押し込み方向の側の領域R2に存在していたアルミニウム合金が塑性変形し、空間領域R1が形成されていた前記溝部46に流れ込んで充填される。このようにして、連結部材40は、第1段差面44が孔側段差面63に当接し、また、小径部43の先端面43aが孔底面53に当接し、頭部41全体が第1貫通孔部61に収容されるまで押し込まれる。
【0047】
その結果、連結部材40は、前述の図3に示したように、塑性変形によって溝部46の内部に入り込んだアルミニウム合金によって環状張出部54が形成され、その環状張出部54が溝内面46bと面接触した状態となる。また、連結部材40の第1段差面44が、孔側段差面63に当接し、面接触した状態となる。これらの面接触により、ハット部11及び摺動部12は互いに分離不能となる。連結部材40が設けられる箇所ごとに、このようにして連結部材40が設けられることにより、ハット部11と摺動部12とが一体的に連結されたディスクロータ10が得られる。
【0048】
本実施形態におけるディスクロータ10及びその製造方法は上記のとおりであり、これによれば、以下に示す効果が得られる。
【0049】
(1)ハット部11と摺動部12との接合部13において、連結孔部14に設けられた連結部材40により、ハット部11と摺動部12とが連結されている。その連結構成として、まず、有底孔部26に設けられた環状張出部54が、連結部材40の溝部46に入り込んでその溝内面46bと当接し、それにより、連結部材40が有底孔部26から抜けることが規制される。また、連結部材40の第1段差面44が、貫通孔部35に形成された孔側段差面63に当接し、これにより、摺動部12がハット部11から離間することが規制される。これらの規制によって、ディスクロータ10のハット部11と摺動部12とを連結することができる。
【0050】
(2)上記の連結構成は、連結部材40を連結孔部14に挿入し、そこからさらに連結部材40を押し込むことによって得られる。まず、摺動部12の貫通孔部35とハット部11の有底孔部26とで連結孔部14を形成し、その連結孔部14に連結部材40を挿入し、連結部材40の第2段差面45を有底孔部26の開口周縁部55に当接させる。そこから、第1段差面44が孔側段差面63に当接するまで連結部材40を押し込むと、第2段差面45が開口周縁部55を押し込んで塑性変形させ、それが溝部46に充填される。これにより、溝内に環状張出部54が形成される。
【0051】
この製造方法の場合、連結部材40を一方向に押圧するだけでハット部11と摺動部12とが連結されるため、連結作業において、カシメやボルト締めといった従来の連結構成のような反転作業が不要となる。これにより、ディスクロータ10の生産性を高めることができる。また、ハット部11と摺動部12とを鋳包みによって連結するのとは異なり、連結作業が冷間で行われるため、連結部材40を用いた連結部分に歪みが発生することも抑制できる。
【0052】
(3)溝内面46bは各接合面25,34と平行であり、環状張出部54はその溝内面46bと面接触している。このため、両接合面25,34を離間させる方向に対して垂直に抜け止め作用を働かせることが可能となり、確実な抜け止め効果が得られる。
【0053】
(4)連結部材40の溝部46及び環状張出部54は、外周方向全域にわたって環状に形成されている。このため、連結部材40の外周方向全域にわたって抜け止め作用が得られる。これにより、確実な抜け止め効果が得られる。
【0054】
(5)連結部材40は、摺動部12とは別部材として構成されている。このため、連結部材40を形成する金属材料として、ハット部11を形成する金属材料よりも高硬度な金属材料を、摺動部12の金属材料とは無関係に自由に選択できる。これにより、製造コストやディスクロータ10の性能等を考慮しながら、最適な金属材料を選択することができる。
【0055】
なお、本発明は、上記した実施形態に限らず、例えば次のような製造方法を実施してもよい。
【0056】
(a)本実施の形態では、連結突起を摺動部12とは別部材の連結部材40によって構成したが、第1の別例として図6に示すように、連結部材40を摺動部12の接合面34に一体形成された構成を採用してもよい。図6のうち、(a)は図5に相当する連結前の状態を示し、(b)は図3に相当する連結後の状態を示している。
【0057】
各図に示すように、連結突起としての突起部70は、摺動部12の接合面34に摺動部12と同じ材質で一体形成されている。この場合、摺動部12は、ハット部11よりも高硬度の金属材料により形成されている。突起部70は、接合面34から突出する大径部71と、大径部71の突出側に設けられ、大径部71よりも径の小さい小径部72とを有している。大径部71と小径部72と径の相違により段差面73が形成されるとともに、小径部72の基端には溝部74が形成されている。これらは、上記実施形態における連結部材40が摺動部12の接合面34から突出する部分と同様の構成となっている。
【0058】
この構成でも、図6(a)に示すように、摺動部12の突起部70を外周フランジ板部24の有底孔部26に挿入し、そこから摺動部12の重ね板部33を押圧すると、突起部70が有底孔部26に押し込まれる。これにより、段差面73が有底孔部26の開口周縁部55を押し込むと、図6(b)に示すように、ハット部11のアルミニウム合金が塑性変形によって溝部74に入り込み、環状張出部54が形成される。その環状張出部54が、溝部74を形成する一対の溝内面74bと面接触することで、ハット部11と摺動部12との分離が不能となり、両者が連結される。したがって、上記実施の形態と同様、反転作業が不要なため、ディスクロータ10の生産性を高めることができる。
【0059】
(b)上記実施の形態では、連結部材40を連結孔部14に挿入した状態で、その先端面43aと有底孔部26の孔底面53との間に形成される空間を閉鎖空間としたが、図6に例示したように、空気を抜く流通孔81を形成してもよい。連結部材40を押し込んだ時に、前記閉鎖空間の空気がこの流通孔81を通じて排出されるため、連結部材40の押し込みをより円滑に行うことができる。
【0060】
(c)上記実施の形態では、有底孔部26を連結突起が収容される孔部の一例として説明したが、その孔部としては有底である必要はなく、孔底面53そのものを省略して貫通孔部を形成してもよい。
【0061】
(d)上記実施の形態では、ハット部11と摺動部12とが連結部材40によって連結された状態では、図3に示すように、連結部材40の先端面43aと有底孔部26の孔底面53とが当接した状態となっている。その両面の間に空間が形成されていてもよい。
【0062】
(e)上記実施の形態では、摺動部12に設けられた貫通孔部35を、連結部材40の横断面形状と同じ形状としたが、貫通孔部35を、第2の別例として図7(a)に示すように、長円形状をなすように形成してもよい。この構成によると、連結孔部14に設けられた連結部材40は、長径方向両側には、貫通孔部35の孔内面との間に空間部82が形成される。この空間部82が存在することにより、ディスクパッドの圧接を受けて摺動部12に摩擦熱が生じ、摺動部12が熱膨張したとしても、その膨張は空間部82によって吸収される。これにより、摺動部12の熱変形を抑制することができ、2ピース構造を採用したことの効果をより高めることができる。
【0063】
また、このように貫通孔部35を長円形状に形成した上で、図7(b)に示すように、ハット部11の接合面25と摺動部12の接合面34との間に、連結部材40を中心として、皿ばね83を介在させた構成を採用してもよい。摺動部12がその熱膨張や収縮に伴ってその接合面34と平行にスライドすると、接合面25,34同士の擦れによって当該接合面25,34に摩耗が生じ、それがガタ付きの原因となって車両制動時の振動発生要因となる。そこで、皿ばね83を間に介在させることで、皿ばね83との擦れによって接合面34に摩耗が生じても、それによるガタ付きがばねの付勢力によって吸収される。これにより、車両制動時における振動発生をより一層低減できる。
【0064】
なお、図7(b)では、説明をわかりやすくするために、ハット部11の接合面25と摺動部12の接合面34との間に形成される隙間が、実際の寸法よりもずっと広く図示されている。また、介在されるばね部材としては、皿ばね83とは異なるばねを採用してもよい。
【0065】
(f)上記実施の形態では、連結部材40及び連結孔部14の横断面を円形状としたが、その形状は長円形状や四角形状等の角形状であってもよい。
【0066】
(g)上記実施の形態では、連結部材40における溝部46を外周方向全域にわたって環状に形成したが、連結部材40を角形状に形成した場合には、外周方向の一部に形成された構成を採用してもよい。図8は、第3の別例として、角形状をなす連結部材90を単体で示している。この連結部材90は、その横断面が角形状をなすように形成されている。連結部材90は、頭部91、基部92及び先端部93を有しており、先端部93に形成された溝部94は、角形状を形成する平行な対辺部分に形成されている。この連結部材90を用いた場合でも、上記実施の形態によって得られる効果と同様、ハット部11と摺動部12とを連結し、かつディスクロータ10の生産性を高めることができる。
【0067】
また、この連結部材90を用いた場合、上記実施の形態と異なり、連結部材90の外周方向全域に溝部46や環状張出部54が形成されない。ただ、一対の対辺部分に溝部94が形成されており、連結状態では、有底孔部26の孔内面に、その溝部94に入り込む一対の張出部が形成される。そのため、各接合面25,34を離間させる方向に対して、抜け止め作用が一部に偏ることなく均等に作用させることができる。
【0068】
なお、この構成においても、摺動部12の貫通孔部35を、溝部94が形成された方向に沿った長さが、連結部材90の寸法よりも長くなるように形成すれば、摺動部12の熱膨張を吸収することができる。
【0069】
(h)上記実施の形態では、連結部材40の頭部41が摺動部12の反接合側の面と面一となるように形成したが、当該面から頭部41が突出した構成を採用してもよい。また、頭部41を貫通孔部35に収容するのではなく、頭部41の第1段差面44が貫通孔部35の開口縁部に当接するように構成してもよい。これによっても、摺動部12の抜け止めが可能となる。
【0070】
(i)上記実施の形態では、外周フランジ板部24の接合面25と重ね板部33の接合面34とを直に当接させるように構成されているが、両接合面25,34の間に腐食抑制部材を介在させた構成を採用してもよい。ハット部11と摺動部12とを構成する金属材料がそれぞれ異なる場合に、その異種金属同士が接触することでその接触部分が腐食するおそれを低減できる。
【0071】
(j)上記実施の形態では、ハット部11をアルミニウム合金により形成し、連結部材40をステンレス合金によって形成している。ハット部11の金属材料が有する硬度よりも、連結部材40の金属材料が有する硬度が高ければ、用いる金属材料は特に問わない。例えば、ハット部11をマグネシウム合金等の軽合金により形成し、連結部材40を鋼材によって形成してもよい。
【0072】
(k)上記実施の形態では、ハット部11の全体が同じ金属材料(アルミニウム合金)によって形成されているが、少なくとも外周フランジ板部24が連結部材40によって塑性変形される材料によって形成されていれば足りる。
【符号の説明】
【0073】
10…ディスクロータ、11…ハット部、12…摺動部、13…接合部、24…外周フランジ板部、25…接合面、26…有底孔部(孔部)、34…接合面、35…貫通孔部(貫通孔)、40…連結部材、41…頭部、42…大径部(基部)、43…小径部(先端部)、44…第1段差面(第2抜け止め部)、46…溝部、46b…溝内面、51…第1孔部、52…第2孔部、54…環状張出部(抜け止め部)、55…開口周縁部、70…突起部(連結突起)、71…大径部(基部)、72…小径部(先端部)、74…溝部、74b…溝内面、82…空間部、83…皿ばね(バネ部材)、90…連結部材、94…溝部、H…ハブ、S…車軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8