特許第6812681号(P6812681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6812681-膨張剤用組成物及びそれを用いた膨張剤 図000003
  • 特許6812681-膨張剤用組成物及びそれを用いた膨張剤 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812681
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】膨張剤用組成物及びそれを用いた膨張剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20201228BHJP
   A61K 47/02 20060101ALN20201228BHJP
   A61K 9/00 20060101ALN20201228BHJP
【FI】
   C09K3/00 Z
   !A61K47/02
   !A61K9/00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-132223(P2016-132223)
(22)【出願日】2016年7月4日
(65)【公開番号】特開2018-2897(P2018-2897A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】姫嶋 智晴
(72)【発明者】
【氏名】楊 明
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−070868(JP,A)
【文献】 特開2016−019701(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/006647(WO,A1)
【文献】 特開2005−087994(JP,A)
【文献】 特開2011−057265(JP,A)
【文献】 特開平09−271661(JP,A)
【文献】 特開昭60−082152(JP,A)
【文献】 特開平11−029389(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/203770(WO,A1)
【文献】 特開2000−290635(JP,A)
【文献】 特開2005−319429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A61M 5/00
B01J 20/00
A23L 3/3436
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)鉄粉と、(B)金属塩と、(C)粉末潤滑剤とを含有し、前記(A)鉄粉の表面の少なくとも一部が(B)金属塩で被覆されており、かつ、前記(C)粉末潤滑剤の含有量が、前記(A)鉄粉100質量部に対して1質量部以上5質量部以下であり、前記(C)粉末潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウムである、膨張剤用組成物。
【請求項2】
前記(B)金属塩は、金属イオンとアニオンの塩であり、前記アニオンは、炭酸イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン及びケイ酸イオンからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の膨張剤用組成物。
【請求項3】
前記(C)粉末潤滑剤の平均粒子径が、0.01μm以上20μm以下である、請求項1又は2に記載の膨張剤用組成物。
【請求項4】
前記(B)金属塩を構成する金属イオンが、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、及び鉄イオンからなる群より選択される1種又は2種以上であり、
前記(B)金属塩を構成するアニオンが、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の膨張剤用組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の膨張剤用組成物を用いた、膨張剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張剤用組成物及びそれを用いた膨張剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電気等のエネルギーを必要とせず、物体自体の体積が膨張することにより他の物体に力を及ぼすことができる、アクチュエーターとして機能する膨張剤が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インシュリンを皮下投与するためのポンプ機能を有する装置が開示されている。その装置は、アクチュエーターとして機能する膨張剤としてヒドロゲルを用いている。ヒドロゲルは浸透により体積が増大し、外部からの電気エネルギーの供給を必要とせずにアクチュエーターとして駆動する。
【0004】
また、特許文献2及び特許文献3には、封入剤や薬剤を電気等のエネルギーを必要とせずに送出する装置が開示されている。その装置は、膨張剤が膨張することによって薬剤に圧力が付与されて、薬剤が送出孔から送出される。膨張剤は、鉄粉等の金属粉末を主成分として、食塩等の金属ハロゲン化物又は硫酸金属塩類等の反応助剤と水及び高分子吸収剤等の保水剤から成り、空気中の酸素及び水分により酸化鉄が生成されて膨張する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−514871号
【特許文献2】特許第5550775号
【特許文献3】特開2016−19701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した背景において、本発明者らは、アクチュエーターとして機能する膨張剤としては、単位体積当たりの体積膨張率が大きく、かつ膨張が長時間持続する膨張剤が、重要と考えた。この観点から、特許文献1〜3の開示する膨張剤は、十分ではなかった。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、単位体積当たりの体積膨張率が大きく、かつ膨張が長時間持続する膨張剤用組成物及びそれを用いた膨張剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、(A)鉄粉と、(B)金属塩と、(C)粉末潤滑剤とを含有し、前記(A)鉄粉の表面の少なくとも一部が(B)金属塩で被覆されており、かつ、前記(C)粉末潤滑剤の含有量が、前記(A)鉄粉100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である、膨張剤用組成物が、単位体積当たりの体積膨張率が大きく、かつ膨張が長時間持続することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下である。
[1](A)鉄粉、(B)金属塩と、(C)粉末潤滑剤とを含有し、前記(A)鉄粉の表面の少なくとも一部が(B)金属塩で被覆されており、かつ、前記(C)粉末潤滑剤の含有量が、前記(A)鉄粉100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である、膨張剤用組成物。
[2]前記(B)金属塩は、金属イオンとアニオンの塩であり、前記アニオンは、炭酸イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン及びケイ酸イオンからなる群より選択される1種又は2種以上である、[1]に記載の膨張剤用組成物。
[3]前記(C)粉末潤滑剤は、シリカ、疎水性シリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、活性炭、ゼオライト、パーライト、珪藻土、活性白土、カオリン、タルク、ベントナイト、アルミナ、石膏、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、黒鉛、カーボンブラック、水酸化アルミニウムからなる群より選択される1種又は2種以上を含有する、[1]又は[2]に記載の膨張剤用組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の膨張剤用組成物を用いた、膨張剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気等のエネルギーを必要とせず、物体自体の体積が膨張することにより他の物体に力を及ぼすことができるアクチュエーターとして機能し、単位体積当たりの体積膨張率が大きく、制御でき、かつ膨張が長時間持続する膨張剤用組成物及びそれを用いた膨張剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】膨張剤の膨張体積を測定するための装置の側面の概略図である。
図2】膨張剤の膨張体積を測定するための装置の平面図の写真である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で、適宜に変形して実施できる。
【0013】
本実施形態の膨張剤用組成物は、(A)鉄粉と、(B)金属塩と、(C)粉末潤滑剤とを含有し、前記(A)鉄粉の表面の少なくとも一部が(B)金属塩で被覆されており、かつ、前記(C)粉末潤滑剤の含有量が、前記(A)鉄粉100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である。このような膨張剤用組成物は、単位体積当たりの体積膨張率が大きく、かつ膨張が長時間持続する。また、組成物の成分比を制御することにより、体積膨張率や膨張速度を用途に応じて、制御することもできる特徴がある。以下、本実施形態の膨張剤用組成物を構成する成分について説明する。
【0014】
(A)鉄粉
本実施形態における(A)鉄粉は、金属鉄を成分として含む粉粒体であれば特に限定されない。(A)鉄粉は、酸素、二酸化炭素又は水蒸気と化学的に反応して、鉄の酸化物、炭酸化物、水酸化物又はそれらの複合物を形成することにより、膨張する。鉄粉(A)としては、例えば、還元鉄粉、電解鉄粉、噴霧鉄粉が、膨張率の観点から好ましい。その他の鉄粉として、鋳鉄等の粉砕物、切削品も使用できる。これらは、1種を単独で、又は、必要に応じて2種以上を併用して用いることができる。また、(A)鉄粉は、市販品を用いてもよい。
【0015】
(A)鉄粉の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、酸素、二酸化炭素又は水蒸気との接触を良好にする観点から、1.0mm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。なお、ここでいう、平均粒子径とは、メディアン径(D50)のことである。
【0016】
(A)鉄粉の形状は、特に限定されないが、例えば、球形、楕円形、及び円柱状のものが使用できる。中でも、充填性により優れ、かさ密度がより高くなる傾向にあることから、球形が好ましい。
【0017】
(A)鉄粉中の金属鉄の含有量は、特に限定されるものではないが、通常、50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0018】
(B)金属塩
本実施形態における(B)金属塩は、金属イオンとアニオンの塩であり、(A)鉄粉中の鉄成分と、酸素、二酸化炭素又は水蒸気との化学反応において触媒的作用をするものであれば、特に限定されない。
【0019】
(B)金属塩を構成する金属イオンとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、銅イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、スズイオン、鉄イオン、コバルトイオン、及びニッケルイオンからなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらの中で、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、及び鉄イオンが好ましい。
【0020】
(B)金属塩を構成するアニオンとしては、前記金属イオンと塩を形成することができるアニオンであれば特に限定されず、例えば、炭酸イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、ハロゲン化物イオン(例えば、Cl、Br、I又はF)、硫酸イオン、リン酸イオン、及びケイ酸イオン(例えば、オルトケイ酸イオン及びメタケイ酸イオン)が挙げられる。これらの中で、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンが好ましい。これらのアニオンは、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0021】
(B)金属塩は、1種を単独で、又は、必要に応じて2種以上を併用して用いることができる。また、これらの金属塩は、市販品を用いてもよい。
【0022】
本実施形態において、上述した(A)鉄粉の表面の少なくとも一部は、上述した(B)金属塩で被覆されていることが必須である。(A)鉄粉の表面の少なくとも一部が、(B)金属塩で被覆されていることにより、(A)鉄粉中の鉄成分と、酸素、二酸化炭素又は水蒸気との化学反応における触媒的作用が効果的に進行する。したがって、(B)金属塩で被覆される(A)鉄粉表面の割合は、特に限定されない。なお、ここでいう被覆とは、(A)鉄粉の表面に(B)金属塩が付着した形態、(A)鉄粉の表面に(B)金属塩が担持された形態も含む。
【0023】
表面の少なくとも一部が(B)金属塩で被覆された(A)鉄粉の作製方法は特に限定されないが、例えば、上述した(B)金属塩の水溶液を(A)鉄粉に滴下しながら混合した後、乾燥して水分を除去することで作る事ができる。(B)金属塩の水溶液における(B)金属塩の濃度は、特に限定されないが、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましい。(B)金属塩の濃度が5質量%以上であることにより、上述した鉄の化学反応を触媒する作用が小さくなることが抑制され、また、(B)金属塩の濃度が30質量%以下であることにより、(A)鉄粉の流動性が低下することが抑制される。
【0024】
(C)粉末潤滑剤
本実施形態における(C)粉末潤滑剤は、(A)鉄粉中の鉄成分と、酸素、二酸化炭素又は水蒸気との化学反応によって膨張した鉄の化合物(例えば、鉄の酸化物、炭酸化物、水酸化物又はそれらの複合物)を含む粉粒体同士が結合することを防ぐ機能を有するものであれば、特に限定されない。鉄の化合物を含む粉粒体同士の結合が起こると膨張が持続しなくなるが、(C)粉末潤滑剤を使用することにより、鉄の化合物を含む粉粒体同士の結合が抑制され、膨張が持続し、膨張剤組成物の体積膨張率も大きくなる。(C)粉末潤滑剤の具体例としては、シリカ、疎水性シリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、活性炭、ゼオライト、パーライト、珪藻土、活性白土、カオリン、タルク、ベントナイト、アルミナ、石膏、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、黒鉛、カーボンブラック、水酸化アルミニウムが挙げられる。(C)粉末潤滑剤は、所望する膨張剤組成物の体積膨張率、膨張速度に応じて、適宜選択することができる。上述した中で、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムが、単位体積当たりの体積膨張率、膨張の持続性、又はこれらの制御の容易さの点から好ましい。(C)粉末潤滑剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。(C)粉末潤滑剤は、市販品を用いてもよい。
【0025】
(C)粉末潤滑剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.001μm以上20μm以下が好ましく、0.01μm以上10μm以下がより好ましい。平均粒子径が0.001μm以上であることにより、(C)粉末潤滑剤の粉粒体同士が静電気等の力で結合して二次粒子、三次粒子化することが抑制される。また、平均粒子径が10μm以下であることにより、(C)粉末潤滑剤が、鉄の化合物を含む粉粒体間に挟まり、あるいは鉄の化合物を含む粉粒体の表面に付着して、鉄の化合物を含む粉粒体同士の結合を効果的に抑制できる。
【0026】
本実施形態の膨張剤用組成物における(C)粉末潤滑剤の含有量は、(A)鉄粉100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である。膨張剤用組成物における(C)粉末潤滑剤の含有量を、上記した範囲のなかで調整することで、膨張剤組成物の体積膨張率、膨張速度を制御できる。(C)粉末潤滑剤の含有量が0.1質量部以上であれば、(C)粉末潤滑剤が、鉄の化合物を含む粉粒体間に挟まり、あるいは鉄の化合物を含む粉粒体の表面に付着して、鉄の化合物を含む粉粒体同士が結合することによる単位体積当たりの体積膨張率の減少、あるいは膨張の持続性の低下が抑制される。また、(C)粉末潤滑剤の含有量が5質量部以下であれば、膨張剤用組成物に占める(C)粉末潤滑剤の体積割合が小さくなり、膨張剤用組成物(膨張剤)の単位体積当たりの体積膨張率が大きくなる。
【0027】
[膨張剤用組成物の製造方法]
本実施形態における膨張剤用組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、上述した(A)鉄粉、(B)金属塩、(C)粉末潤滑剤、及び必要に応じて本発明の効果を阻害しないその他の成分を、任意の順序で混合する公知の方法、公知の装置を用いて行うことができる。膨張剤用組成物の製造方法の一例を示す。まず、混合装置内に(A)鉄粉を投入する。続いて、(B)金属塩として、金属ハロゲン化物の水溶液を(A)鉄粉上に混合しながら数十秒かけて滴下し、(A)鉄粉が大気中の酸素と化学反応した際に生じた熱で水が蒸発して、乾燥するまで混合して、(A)鉄粉の表面の少なくとも一部が金属ハロゲン化物で被覆されている鉄粉を作成する。続いて、混合装置内に(C)粉末潤滑剤を投入して、数分間混合し、本実施形態の膨張剤用組成物を得ることができる。混合装置は、公知の装置を使用でき、ナウターミキサー(ホソカワミクロン株式会社製)、リボンミキサー(大野化学機械株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
本実施形態の膨張剤用組成物は、そのままの形態で膨張剤として使用できる。また、本発明の効果を阻害しない程度にその他の材料と混合して、膨張剤として使用することもできる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態を詳しく説明するが、本実施形態は本発明の作用効果を奏する限りにおいて適宜変更することができる。なお、実施例及び比較例中の「部」は、特に明記しない場合は質量部を意味する。
【0030】
(実施例1)
小袋形状の脱酸素剤FJ−30RW(三菱ガス化学株式会社製)の袋内に充填されている粉粒体(鉄粉表面の少なくとも一部が金属ハロゲン化物で被覆されている鉄粉、黒色)100部とステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製、白色)0.1部を乳鉢に加え、乳棒を用いて2つの粉粒体が混じり合い、均一の色となるまで十分に混合し、膨張剤用組成物(膨張剤)を得た。
【0031】
得られた膨張剤用組成物(膨張剤)の、所定時間経過後の膨張体積を図1図2に示した装置を用いて測定した。直径24mm、深さ4.5mmの凹構造を有する膨張剤用組成物の充填部位と、凹構造とは壁を隔て異なる空間を有し、その空間を水で満たした水充填部位、水充填部位と接続した内径φ2mmのゴム管で水吐出部位を設けたPDMS(ポリジメチルシロキサン)製の膜を作製した。続いて、得られたPMDS製の膜の底部を酸素プラズマ処理した後にガラス板に接着し、ガラス板を底側にして平面上に設置した。続いて、PMDS膜の膨張剤用組成物充填部位に、膨張剤用組成物を2cm充填し、膨張剤用組成物の充填部位の膨張剤用組成物投入口をステンレス網(10メッシュ、線直径0.47mm)で塞ぎ、ステンレス網上に膨張剤用組成物の投入口を塞がない大きさの800gの重りを置いた装置を作製した(図1図2)。作製した装置を25℃、90%RHで放置し、3時間、6時間及び9時間後に、膨張剤用組成物の体積膨張に伴い膨張剤用組成物の充填部位と水充填部位を隔てる壁が水充填部位側にくぼみ、水充填部位の体積が減少、水吐出部位であるゴム管内に移動した水の位置を測定して、0時間(初期)時の水の位置との変位を算出し、以下の式に基づいて、膨張剤用組成物の膨張体積を算出した。膨張剤用組成物の膨張体積(cm)=ゴム管の内面積(cm)×ゴム管内水面の変位の長さ(cm、所定時間後の水面の位置と0時間時の水面の位置の差異)。その結果を表1に示す。
【0032】
(実施例2)
実施例1のステアリン酸マグネシウムの使用量を0.1部から1部に変更した以外は、実施例1と同様にして膨張剤用組成物(膨張剤)を得た。得られた膨張剤用組成物の膨張体積を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例3)
実施例3のステアリン酸マグネシウムの使用量を0.1部から5部に変更した以外は、実施例1と同様にして膨張剤用組成物(膨張剤)を得た。得られた膨張剤用組成物の膨張体積を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0034】
表1に示すように、粉末潤滑剤(実施例1〜3はステアリン酸マグネシウム)の含有量により、膨張剤用組成物の膨張体積が異なり、実施例2の粉末潤滑剤1部で膨張剤用組成物の膨張体積が最大で、粉末潤滑剤の使用量により膨張剤用組成物の膨張体積が制御できることが確認された。また、いずれの含有量においても、持続的な膨張をすることがわかった。
【0035】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る膨張剤用組成物を用いれば、電気等のエネルギーを必要とせず、物体自体の体積が膨張することにより他の物体に力を及ぼすことができるアクチュエーターを製造することができる。
図1
図2